説明

液体材料吐出方法及び装置

【課題】浮きを入れずにシリンジ内部の液体材料の液面を検出することが可能な、液体材料吐出方法及び装置提供する。
【解決手段】光学センサ7はシリンジ501の側方で上下方向に移動自在に支持される。シリンジ501の内部に液体材料が無い場合にセンサ光が発光部701から反射部材514の光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から受光部702に至るまでの第2経路との双方が水平であり、かつシリンジ501の内部を通過する。第1経路711及び第2経路712のうちシリンジ501の内部を通過する通過部分に液体材料が無いときはセンサ光が受光部702に到達して受光部702で受光される一方、当該通過部分に液体材料があるときはセンサ光が受光部702に到達しない。光学センサ7を上下方向に駆動することで液面検出が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の材料や接着剤等の粘性流体を含む液体材料を対象物に吐出する液体材料吐出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する工程において用いられる、所定の液体材料を対象物に対して吐出し塗布等する液体材料吐出装置として、例えばディスペンサを備える装置が一般に用いられている。ディスペンサ50は、図14に示すように、液体材料60を内部に保持するシリンジ51と、シリンジ内部に加圧空気を供給するチューブ52と、加圧空気の圧力を制御する圧力制御部53と、液体材料の温度を検出する温度センサ54と、当該温度を制御する温度制御部55とから構成される。
【0003】
ディスペンサ50においては、液体材料60に対して加圧空気を介して加えられる圧力(圧力の値と加圧時間)を制御することで、吐出させる液体材料の体積を制御している。一般的には、シリンジ51の内部を、チューブ52及び圧力制御部53の内部に設けられたバルブ56を介して所定の圧力を有する外部の圧力空気源61と接続し、このバルブ56を解放する時間によって加圧時間の制御を行っている。さらにバルブ56とシリンジ51との間に減圧弁57を設置し、この減圧弁57を用いてシリンジ51内部に付加される圧力を制御している。
【0004】
ここで、シリンジ51の下方先端に設けられた開口に存在する液体材料に加えられる吐出圧力は、加圧空気によって付加される圧力とシリンジ51内部の液体材料の重量により付加される圧力とからなる。従って、シリンジ51内部の液体材料の総重量が減少した場合、加圧空気によって付加される圧力が同じであれば液体材料に加えられる吐出圧力が減少する(水頭差)。一定体積の液体材料を吐出するためには、開口に存在する液体材料に対して一定の吐出圧力が付加されなければならない。このため、液体材料が減少した場合には、その重量減少分に応じた圧力を付加する必要がある。
【0005】
従来技術においては、必要な吐出体積に対するシリンジ51内の液体材料の残量と供給空気の圧力との関係を各種液体材料について予め得て、その関係から吐出体積を一定にするための圧力の補正係数を求め、その補正係数に応じて随時空気の圧力を制御している(水頭差補正)。
【0006】
液体材料の残量を導出する方法としては、例えば、シリンジ内部の液面に浮きを設け、磁気的、静電的に液面を検出する方法が知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−115469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリンジ内部に浮きを入れることが必須であると、その作業が煩雑であるだけでなく、液体材料の減少時に、粘性との関係等で浮きが液面と一致して下降しない場合も考えられる。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、浮きを入れずにシリンジ内部の液体材料の液面を検出することが可能な、液体材料吐出方法及び装置提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、液体材料吐出方法である。この方法は、
シリンジの内部の圧力を制御して前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出部から吐出する方法であって、
前記シリンジの外側に配置され、光反射面が前記シリンジと対向する反射部材に向けて、光学センサの発光部からセンサ光を発光するステップと、
前記光学センサの受光部における前記センサ光の受光状況に応じて前記シリンジの内部の圧力を制御するステップとを有し、
前記シリンジの内部に液体材料が無い場合に前記センサ光が前記発光部から前記光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から前記受光部に至るまでの第2経路との少なくともいずれかが前記シリンジの内部を通過し、
前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に液体材料が無いときは前記第1経路及び前記第2経路を通り、前記受光部に到達して前記受光部で受光される一方、同部分に液体材料があるときは前記受光部に到達しないことを特徴としている。
【0011】
第1の態様の方法において、前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に透明な液体材料があるときは、前記液体材料の界面での屈折により前記第1経路及び前記第2経路の少なくともいずれかから逸脱して、前記受光部に到達しないとよい。
【0012】
第1の態様の方法において、1つの液体材料について複数通りの液量並びに各液量に対応する吐出圧力及び吸引圧力を関連づけてテーブルとして記憶するステップをさらに有し、前記テーブルを参照して前記シリンジの内部の圧力を制御するとよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、液体材料吐出装置である。この装置は、
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出する吐出部と、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジの外側に配置され、光反射面が前記シリンジと対向する反射部材と、
前記光反射面に向けてセンサ光を発光する発光部と、前記光反射面で反射したセンサ光を受光するための受光部とを有する光学センサとを備え、
前記シリンジの内部に液体材料が無い場合に前記センサ光が前記発光部から前記光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から前記受光部に至るまでの第2経路との少なくともいずれかが前記シリンジの内部を通過し、且つ前記第1経路と前記第2経路が前記光反射面で所定の角度を成すように前記発光部と前記受光部が配置され、
前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に液体材料が無いときは前記受光部に到達して前記受光部で受光される一方、同部分に液体材料があるときは前記受光部に到達せず、
前記圧力制御部は、前記受光部における前記センサ光の受光状況に応じて前記シリンジの内部の圧力を制御することを特徴としている。
【0014】
第2の態様の装置において、前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に透明な液体材料があるときは、前記液体材料の界面での屈折により前記第1経路及び前記第2経路の少なくともいずれかから逸脱して、前記受光部に到達しないとよい。
【0015】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記光学センサは、前記シリンジに対して、前記シリンジの高さ方向について相対移動可能であるとよい。
【0016】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記シリンジを保持するシリンジケースをさらに備え、前記シリンジケースの内面に前記反射部材があり、前記シリンジケースは前記反射部材と対向する部分が所定範囲で光透過可能であるとよい。
【0017】
この場合、光透過可能な前記所定範囲は、前記第1経路と前記第2経路が、前記光学センサと前記シリンジの前記相対移動の範囲で前記発光部からの光を前記受光部で受光可能な範囲であるとよい。
【0018】
第2の態様の液体材料吐出装置において、1つの液体材料について複数通りの液量並びに各液量に対応する吐出圧力及び吸引圧力を相互に関連づけてテーブルとして記憶した記憶部をさらに備え、前記圧力制御部は前記テーブルを参照して前記シリンジの内部の圧力を制御するとよい。
【0019】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記吐出部を所定位置に保持するホルダをさらに備え、前記吐出部の先端部材が前記ホルダの押し付け面に側方から押し付けられていて、前記シリンジと前記吐出部とが相互に着脱自在であるとよい。
【0020】
この場合、前記押し付け面は、前記先端部材が嵌る凹部形状であるとよい。
【0021】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記吐出部の先端を撮像する撮像部をさらに有し、前記撮像部は前記吐出部と一体に動いて前記吐出部の先端を常時撮像可能であるとよい。
【0022】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記シリンジ及び前記吐出部が複数設けられているとよい。
【0023】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過するものは、前記シリンジの内部に存在する液体材料の液面に平行であるとよい。
【0024】
第2の態様の液体材料吐出装置において、前記第1経路及び前記第2経路の双方が前記シリンジの内部を通過するとよい。
【0025】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前記シリンジの内部に液体材料が無い場合に前記センサ光が前記発光部から前記光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から前記受光部に至るまでの第2経路との少なくともいずれかが前記シリンジの内部を通過し、前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に液体材料が無いときは前記受光部に到達して前記受光部で受光される一方、同部分に液体材料があるときは前記受光部に到達しないので、浮きを入れずにシリンジ内部の液体材料の液面を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の要部側断面図。
【図2A】同液体材料吐出装置の要部平面図。
【図2B】同液体材料吐出装置の要部正面図。
【図3A】同液体材料吐出装置のニードル503の下端周辺の拡大側断面図。
【図3B】同底面図。
【図4A】同液体材料吐出装置のニードル503の下端の押さえ付け状態の一例を示す底断面図。
【図4B】同状態の別の例を示す底断面図。
【図4C】同液体材料吐出装置のプランジャー537の形状の一例を示す断面図。
【図4D】同プランジャー537の形状の別の例を示す断面図。
【図5A】同液体材料吐出装置における液面検出の原理説明図。
【図5B】同液体材料吐出装置における液面検出の原理説明図。
【図5C】同液体材料吐出装置における液面検出の原理説明図。
【図5D】同液体材料吐出装置における液面検出の原理説明図。
【図6】吐出圧補正テーブルの作成手順を示すフローチャート。
【図7】真空圧補正テーブルの作成手順を示すフローチャート。
【図8】補正テーブル作成後の自動運転動作の一例を示すフローチャート。
【図9】1つのニードル503に対して1つ設けられた小型カメラ585の配置説明図。
【図10】本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の平面図。
【図11】同液体材料吐出装置の正面図。
【図12】同液体材料吐出装置の右側面図。
【図13】同液体材料吐出装置のディスペンサユニット5内の配管説明図。
【図14】シリンジを有するディスペンサの一般的な概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
まず、図10〜図13を参照して本装置の全体構成を説明した後に、図1〜図9により要部を詳細に説明する。
【0030】
図10は、本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の平面図である。図11は、同液体材料吐出装置の正面図である。図12は、同液体材料吐出装置の右側面図である。図13は、同液体材料吐出装置のディスペンサユニット5内の配管説明図である。この液体材料吐出装置は、基台1と、載置台2と、XYZテーブル3と、ディスペンサユニット5と、光学センサ7と、光学センサ駆動系8と、搬送ユニット9と、主制御部12とを備える。なお、水平面内で直交する2方向をX方向及びY方向、鉛直方向をZ方向と定義している。
【0031】
載置台2は基台1の上面に固定され、XYZテーブル3は載置台2に固定され、ディスペンサユニット5はXYZテーブル3によってXYZの各方向に移動自在に支持される。光学センサ駆動系8は基台1の上面に固定され、液面検出用の光学センサ7が光学センサ駆動系8によってZ方向に移動自在に支持される。搬送ユニット9は基台1の上面に固定され、塗布対象物としての基板11が搬送ユニット9によってX方向に搬送される。なお、塗布対象物としては、半導体実装基板等の基板のほか、LCD(Liquid Cristal Display)パネルやLED(発光ダイオード)等がある。主制御部12は、基台1(筐体)の内部にあって装置全体の動作を制御するもので、記憶部13と演算部15と圧力制御部17とを有する。
【0032】
XYZテーブル3は、台板301と、X軸スライドガイド303と、X軸スライダ305と、Y軸支持フレーム311と、Y軸スライドガイド313と、Y軸スライダ315と、Z軸支持フレーム321と、Z軸スライドガイド323と、Z軸スライダ325とを有する。
【0033】
台板301は載置台2の上面に固定され、X軸スライドガイド303は台板301の上面に固定され、Xスライダ305はボールネジ駆動機構で駆動されてX軸スライドガイド303に沿って移動可能である。なお、ボールネジ駆動機構は、ボールネジ軸をモータで回転駆動することで、該ボールネジ軸に螺合するボールネジナットを該ボールネジ軸の軸方向に移動するものである。
【0034】
Y軸支持フレーム311はX軸スライダ305に固定され、Y軸スライドガイド313はY軸支持フレーム311に固定され、Y軸スライダ315はボールネジ駆動機構で駆動されてY軸スライドガイド313に沿って移動可能である。Z軸支持フレーム321はY軸スライダ315に固定され、Z軸スライドガイド323はZ軸支持フレーム321に固定され、Z軸スライダ325はボールネジ駆動機構で駆動されてZ軸スライドガイド323に沿って移動可能である。したがって、Z軸スライダ325はXYZの各方向に移動自在であり、Z軸スライダ325に取り付けられたディスペンサユニット5もXYZの各方向に移動自在である。
【0035】
ディスペンサユニット5は、シリンジ501及び吐出部としてのニードル503並びにこれらに対する配管を4系統有する。図13に示すように、各系統のシリンジ501は、切替弁551を介して圧空源591及び真空源592に接続されている。切替弁551と圧空源591及び真空源592との間にはそれぞれ調圧弁596,597があり、シリンジ501内の圧力を調整可能である。負圧は遮蔽弁561によって遮蔽可能である。また、開放弁562を開くことでシリンジ501の内部圧力を大気圧に等しくできる。各々の弁は圧力制御部17によって制御される。
【0036】
ニードル503を側方から撮像するために横カメラ580が基台1に取り付けられ、ニードル503の下端に保持された液摘を撮影可能である。また、下カメラ581は基台1に固定され、ニードル503を下方から撮影可能である。
【0037】
本装置の全体的な動作を概説する。まず、図10の搬送ユニット9の搬入部91に塗布対象物としての基板11が供給される。基板11は、搬入部91から塗布部95まで搬送されて所定位置に位置決めされる。ディスペンサユニット5は、XYZテーブル3の支持により塗布部95上(基板11上)に移動し、液体材料を基板11に塗布する。塗布作業が終了すると、基板11は搬出部97に搬送されて排出される。なお、必要に応じて、塗布部95の前段に予熱部を設けてヒータ等の予熱手段で基板11の温度を上げ、塗布部95の後段に冷却部を設けて基板11の温度を下げ、塗布された液体を凝固、安定させるようにしてもよい。所定数の基板11に対して塗布作業を実行後、ディスペンサユニット5はY方向に後退し、ここで光学センサ7によりディスペンサユニット5の残存液量(液面)検出が行われる。検出方法の詳細は後述する。残存液量に応じて必要があれば液体材料の吐出圧力を補正する(水頭差補正)。補正に必要なデータは主制御部12内の記憶部13に格納されている。データの取得方法の詳細は後述する。こうして液体材料の量に応じた適当な吐出圧力が維持される。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態に係る液体材料吐出装置の要部側断面図である。図2Aは、同液体材料吐出装置の要部平面図である。図2Bは、同液体材料吐出装置の要部正面図である。図3Aは、同液体材料吐出装置のニードル503の下端周辺の拡大側断面図である。図3Bは、同底面図である。図4Aは、同液体材料吐出装置のニードル503の下端の押さえ付け状態の一例を示す底断面図である。図4Bは、同状態の別の例を示す底断面図である。図4Cは、同液体材料吐出装置のプランジャー537の形状の一例を示す断面図である。図4Dは、同プランジャー537の形状の別の例を示す断面図である。図5A及び図5Bは、同液体材料吐出装置における液面検出の原理説明図である。
【0039】
シリンジ501とニードル503は、相互に着脱自在に取り付けられる(シリンジ501下端部の雄ネジとニードル503上端部の雌ネジとが螺合されている)。ニードル503はニードルホルダ533に保持され、シリンジ501はシリンジケース511に保持される。ニードルホルダ533はシリンジケース511に固定されており、シリンジ交換時はシリンジケース511からシリンジ501のみを取り外すことができる。
【0040】
ニードル503の先端部材(針状部)は、図4A及び図4Bに示すように、ニードルホルダ533の押し付け面535にプランジャ537(バネを内蔵した付勢力を持つツール)で側方から押し付けられている。これにより、シリンジ交換時のニードル503の位置ずれを防止でき、かつニードル交換時のニードル503の位置再現性を高めることができる。押し付け面535は、ニードル503の先端部材が嵌る凹部形状であるとよく、例えば図4Aに示すような円弧面(半円周面)若しくは楕円弧面又は図4Bに示すようなV溝面であってもよい。また、プランジャー537の先端面のうちニードル503の先端部材を押す部分は、図4A及び図4Bのように平面であってもよいし、ニードル503の先端部材が嵌る凹部形状、例えば図4Cに示すような円弧面(先端部材よりも大径)若しくは楕円弧面又は図4Dに示すようなV溝面であってもよい。
【0041】
図1に示すように、基台1の上面に固定された光学センサ駆動系8は、ボールネジ駆動機構によって光学センサ7をシリンジ501の側方でZ方向(シリンジ501の高さ方向)に移動自在に支持する。図2Aに示すように、光学センサ7は、シリンジ501の本数に対応して4系統設けられており、それぞれ発光部701及び受光部702を有する。また、シリンジケース511は、内面に反射部材514(平面鏡や鏡面金属板等)が取り付けられていて、反射部材514と対向する部分が開口515となっている。反射部材514の光反射面はシリンジ501の側面と対向する。発光部701及び受光部702は開口515のある側にあって反射部材514と対向する。発光部701は、反射部材514の光反射面に向けてセンサ光(例えばレーザ光のような指向性のある光)を発光する。受光部702は、前記光反射面で反射したセンサ光を受光するためのものであり、センサ光の受光時と非受光時とで異なる信号を出力する。
【0042】
発光部701及び受光部702は、シリンジ501の内部に液体材料が無い場合にセンサ光が発光部701から反射部材514の光反射面に至るまでの第1経路711(図5A参照)と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から受光部702に至るまでの第2経路712(同)との双方が略水平(液面に略平行)となる配置が望ましく、かつ双方がシリンジ501の内部を通過する配置である。第1経路711及び第2経路712の成す角度(発光部701の光軸と受光部702の光軸とが成す角度)は例えば30°±10°の範囲で条件設定が可能である。
【0043】
また、発光部701及び受光部702は、図5Aに示すように第1経路711及び第2経路712のうちシリンジ501の内部を通過する通過部分に液体材料が無いとき、つまり当該通過部分の高さにまで液面が至らない量のときはセンサ光が受光部702に到達して受光部702で受光される一方、図5Bに示すように当該通過部分に液体材料があるとき、つまり当該部分の高さを液面が超えているときはセンサ光が液体材料の界面で屈折して受光部702に到達しない配置である。
【0044】
このような配置は、センサ光が液体材料の界面で屈折して経路がずれることを考慮して、シミュレーションや実験により定めることができる。なお、当該通過部分に液体材料があるときは、液体材料が不透明であればセンサ光が受光部702に到達しないことは言うまでもない。また、シリンジ501自体による屈折は、シリンジ501の側面が十分に薄いためその影響は考えなくてもよい。
【0045】
光学センサ7を用いることで、シリンジ501の内部の液体材料の液面の高さを検出することができる。つまり、上記配置の場合、受光部702においてセンサ光が受光できれば液面の高さは第1経路711及び第2経路712よりも下であり、受光できなければ上である。そして、光学センサ7を光学センサ駆動系8でZ方向(上下方向)に駆動することで受光部702による受光可否の切替り高さを特定することができ、この切替り高さが液面の高さである。シリンジ501の内部の液体材料の液面の高さから残量(液量)は一意に求められる。なお、光学センサ7は固定しておき、シリンジ501をXYZテーブル3によってZ方向に駆動することによっても、同様に液面の高さを特定することが可能である。つまり、光学センサ7とシリンジ501は互いに対し相対的にZ方向に移動可能であればよい。
【0046】
以上、図5A及び図5Bを用いて、第1経路711及び第2経路712の双方がシリンジ501の内部を通過する配置を例に、センサ光通過部分の液体材料有無の各場合について説明を行なったが、応用例として図5C及び図5Dのような光学センサ7とシリンジ501の配置も可能である。図5C及び図5Dは第1経路711のみがシリンジ501の内部を通過する配置であるが、第2経路712のみがシリンジ501の内部を通過する配置も可能である。要するに第1経路711と第2経路712の少なくとも何れかがシリンジ501の内部を通過する配置とすれば、センサ光が液体材料の界面で屈折するので受光部702に到達しないことは言うまでもない。
【0047】
図2に示す記憶部13は、1つの液体材料について複数通りの液量並びに各液量に対応する吐出圧力及び吸引圧力を、相互に関連づけて補正テーブルとして記憶している。圧力制御部17は、記憶部13の補正テーブルを参照してシリンジ501の内部の圧力を制御する。補正テーブルは、吐出圧補正テーブルと真空圧補正テーブルとに分かれる。以下、各テーブルの作成手順について説明する。
【0048】
図6は、吐出圧補正テーブルの作成手順を示すフローチャートである。まず、液体材料としての樹脂の充填率をそれぞれ100%及び20%とした2つのシリンジ501を液体材料吐出装置にセットする(S11)。操作者は検出ボタンを押下する(S12)。光学センサ7により、シリンジ501内の樹脂量検出を実施する(S13)。これは正確な充填率を知るためである。次に、所定の吐出圧力でシリンジ501のニードル503からワンショット吐出を行い、その重量を例えば精密天秤で測定する(S14)。充填率100%及び20%の場合のワンショット吐出の重量を比較し(S15)、両者が相違すれば本図の場合は充填率20%の側のシリンジ501の吐出圧を変更し(S16)、両者が同じになるまでワンショット吐出と重量測定、比較を繰り返す。そして両者が同じになったときの吐出圧値を記憶する(S17)。演算部15は、充填率100%〜20%までの間の吐出圧値を所定の関数で補間(例えば直線補間)し、吐出圧補正テーブルを作成する(S18)。補間に用いる関数は実験的に定めることができる。
【0049】
図7は、真空圧補正テーブルの作成手順を示すフローチャートである。まず、液体材料としての樹脂の充填率をそれぞれ100%及び20%とした2つのシリンジ501を液体材料吐出装置にセットする(S31)。操作者は検出ボタンを押下する(S32)。光学センサ7により、シリンジ501内の樹脂量検出を実施する(S33)。ニードル503の先端(下端)に所定量の液摘を吐出させた後、横カメラ580で液摘を撮影しながら画像処理により真空校正を実施する(S34)。真空校正ではニードル503の下端の球状液摘が充填率100%及び20%で同じように引き込まれるように吸引圧力(真空値)を決定し(S35)、決定した真空値を記憶する(S36)。真空校正には例えば本出願人提案の特開2007−29912号に開示の技術が利用可能である。簡単に説明すると、ニードル503の下端に液滴が保持された状態で横カメラ580にて撮影し、撮像した液滴の形状から当該液滴の下端とニードル503の基準位置(下端)との距離を演算部15で算出する。算出した距離が一定時間設定された範囲内にとどまるように圧力制御部17で真空値を調整する。演算部15は、充填率100%〜20%までの間の真空値を所定の関数で補間(例えば直線補間)し、真空値補正テーブルを作成する(S37)。補間に用いる関数は実験的に定めることができる。
【0050】
なお、吐出圧補正テーブル及び真空圧補正テーブルのいずれの作成手順においても、シリンジ501の樹脂充填率100%及び20%に替えて又は加えて、例えば40%及び60%の充填率としたものについて吐出圧値及び真空値を決定してもよい。
【0051】
吐出圧補正及び真空圧補正を含めた自動運転動作の流れについて説明する。図8は、補正テーブル作成後の自動運転動作の一例を示すフローチャートである。本図の例では、基板一枚について塗布が終了するごとに(S51)、光学センサ7による樹脂量検出を実施する(S52)。樹脂量が十分であれば吐出圧補正の要否を判断し(S53)、必要があれば吐出圧を補正する(S54)。樹脂残量が十分でなければシリンジ交換を行い(S55)、シリンジイニシャル(充填率100%のシリンジを取り付けたことを装置に認識させる操作)を実施し(S56)、樹脂量検出(S57)の後、真空圧補正の要否を判断する(S58)。必要があれば真空圧を補正し(S59)、次の基板の塗布を実行する。なお、真空圧の補正は、S54のステップにおいて吐出圧の補正と併せて行ってもよい。
【0052】
図9に示すように、小型カメラ585がニードル503とともにZ軸スライダ325に取り付けられており、小型カメラ585はXYZ各方向にニードル503とともに移動可能である。これにより、小型カメラ585でニードル503の下端を図示の例では斜め上方から常時撮影することができ、例えば操作者がニードル503の下端の汚れ等を監視するのに便利である。小型カメラ585は全てのニードル503に対して各々1個ずつ設けられている。小型カメラ585は、カメラ部分(レンズ、鏡筒、撮像素子)が径9mm×長さ23.5mm、カメラ部分を取り付けるカメラケースの最大径が19mm、カメラケースを他の部品に取り付けるフランジが19mm×34mmと小型のものである。
【0053】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0054】
(1) 光学センサ7のセンサ光の経路に液体材料が存在しないときはセンサ光が受光部702に到達する一方、経路に液体材料が存在するときは屈折により受光部702に到達しない構成としたことで、従来のように浮きを設けずに、受光部702へのセンサ光の到達可否からシリンジ501の内部の液体材料の液面を検出することができる。
【0055】
(2) 光学センサ7をZ方向に駆動する(センサ光でシリンジ501をZ方向に走査する)ので、受光部702におけるセンサ光の受光可否の切替り高さからシリンジ501の内部の液体材料の液面の高さを正確に検出することができる。
【0056】
(3) 検出した液面の高さに応じて吐出圧と真空圧を補正するので、シリンジ501の内部の液体材料が減少しても一定の吐出圧力を付加することができる。
【0057】
(4) 空気圧達成時間によりシリンジ液体体積を演算する方法やシリンジZ軸(高さ方向)駆動モータの電流値により液体重量を演算する方法では換算による誤差が大きくなりやすいところ、本実施の形態では直接的に液面を検出するので、高精度化を図りやすい。
【0058】
(5) ニードル503の先端部材がニードルホルダ533の押し付け面535にプランジャ537で側方から押し付けられているため、シリンジ交換時のニードル503の位置ずれを防止でき、かつニードル交換時のニードル503の位置再現性を高めることができる。
【0059】
(6) 1つのニードル503に対して1つの小型カメラ585がニードル503とともにZ軸スライダ325に取り付けられているので、操作者はモニタでニードル503の下端の状況を常時監視することができて便利である。
【0060】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0061】
実施の形態ではシリンジケース511に開口515を設けてセンサ光を透過可能としたが、変形例では開口515に替えて透明板(ガラス等)の光透過可能部材を設けてもよい。
【0062】
実施の形態ではシリンジケース511の内面に平面鏡や鏡面金属板等の反射部材514が取り付けられる場合を説明したが、変形例では反射部材514は例えば筒状鏡面であってシリンジ501の側面に取り付けられてもよい。
【0063】
実施の形態では、便宜上センサ光の第1経路711及び第2経路712の双方が水平(液面に平行)である場合を説明したが、液体材料がない状態で、発光部701から発光したセンサ光が反射部材514で反射した後、受光部702に到達し、かつ発光部701と反射部材514との間、及び反射部材514と受光部702との間の少なくともいずれかでシリンジ501の内部を通過する配置であれば、第1経路711及び第2経路712の双方が水平(液面に平行)であることを限定するものではない。
【0064】
実施の形態では1基板の塗布が終了するごとに光学センサ7による樹脂量検出を実施する例を説明したが、樹脂量検出は複数基板あるいはロット単位の塗布が終了するごと実施してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 基台
2 載置台
3 XYZテーブル
5 ディスペンサユニット
7 光学センサ
8 光学センサ駆動系
9 搬送ユニット
12 主制御部
13 記憶部
15 演算部
17 圧力制御部
501 シリンジ
503 ニードル
511 シリンジケース
533 ニードルホルダ
701 発光部
702 受光部
514 反射部材
515 開口
535 押し付け面
537 プランジャー
585 小型カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの内部の圧力を制御して前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出部から吐出する方法であって、
前記シリンジの外側に配置され、光反射面が前記シリンジと対向する反射部材に向けて、光学センサの発光部からセンサ光を発光するステップと、
前記光学センサの受光部における前記センサ光の受光状況に応じて前記シリンジの内部の圧力を制御するステップとを有し、
前記シリンジの内部に液体材料が無い場合に前記センサ光が前記発光部から前記光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から前記受光部に至るまでの第2経路との少なくともいずれかが前記シリンジの内部を通過し、
前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に液体材料が無いときは前記第1経路及び前記第2経路を通り、前記受光部に到達して前記受光部で受光される一方、同部分に液体材料があるときは前記受光部に到達しないことを特徴とする、液体材料吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に透明な液体材料があるときは、前記液体材料の界面での屈折により前記第1経路及び前記第2経路の少なくともいずれかから逸脱して、前記受光部に到達しない、液体材料吐出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、1つの液体材料について複数通りの液量並びに各液量に対応する吐出圧力及び吸引圧力を関連づけてテーブルとして記憶するステップをさらに有し、前記テーブルを参照して前記シリンジの内部の圧力を制御する、液体材料吐出方法。
【請求項4】
シリンジと、
前記シリンジの内部に存在する液体材料を吐出する吐出部と、
前記シリンジの内部の圧力を制御する圧力制御部と、
前記シリンジの外側に配置され、光反射面が前記シリンジと対向する反射部材と、
前記光反射面に向けてセンサ光を発光する発光部と、前記光反射面で反射したセンサ光を受光するための受光部とを有する光学センサとを備え、
前記シリンジの内部に液体材料が無い場合に前記センサ光が前記発光部から前記光反射面に至るまでの第1経路と、同場合に前記センサ光が前記光反射面から前記受光部に至るまでの第2経路との少なくともいずれかが前記シリンジの内部を通過し、且つ前記第1経路と前記第2経路が前記光反射面で所定の角度を成すように前記発光部と前記受光部が配置され、
前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に液体材料が無いときは前記受光部に到達して前記受光部で受光される一方、同部分に液体材料があるときは前記受光部に到達せず、
前記圧力制御部は、前記受光部における前記センサ光の受光状況に応じて前記シリンジの内部の圧力を制御することを特徴とする、液体材料吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、前記センサ光は、前記第1経路及び前記第2経路のうち前記シリンジの内部を通過する部分に透明な液体材料があるときは、前記液体材料の界面での屈折により前記第1経路及び前記第2経路の少なくともいずれかから逸脱して、前記受光部に到達しない、液体材料吐出装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液体材料吐出装置において、前記光学センサは、前記シリンジに対して、前記シリンジの高さ方向について相対移動可能である、液体材料吐出装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の液体材料吐出装置において、前記シリンジを保持するシリンジケースをさらに備え、前記シリンジケースの内面に前記反射部材があり、前記シリンジケースは前記反射部材と対向する部分が所定範囲で光透過可能である、液体材料吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体材料吐出装置において、光透過可能な前記所定範囲は、前記第1経路と前記第2経路が、前記光学センサと前記シリンジの前記相対移動の範囲で前記発光部からの光を前記受光部で受光可能な範囲である、液体材料吐出装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれかに記載の液体材料吐出装置において、1つの液体材料について複数通りの液量並びに各液量に対応する吐出圧力及び吸引圧力を相互に関連づけてテーブルとして記憶した記憶部をさらに備え、前記圧力制御部は前記テーブルを参照して前記シリンジの内部の圧力を制御する、液体材料吐出装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれかに記載の液体材料吐出装置において、前記吐出部を所定位置に保持するホルダをさらに備え、前記吐出部の先端部材が前記ホルダの押し付け面に側方から押し付けられていて、前記シリンジと前記吐出部とが相互に着脱自在である、液体材料吐出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の液体材料吐出装置において、前記押し付け面は、前記先端部材が嵌る凹部形状である、液体材料吐出装置。
【請求項12】
請求項4から11のいずれかに記載の液体材料吐出装置において、前記吐出部の先端を撮像する撮像部をさらに有し、前記撮像部は前記吐出部と一体に動いて前記吐出部の先端を常時撮像可能である、液体材料吐出装置。
【請求項13】
請求項4から12のいずれかに記載の液体材料吐出装置において、前記シリンジ及び前記吐出部が複数設けられている、液体材料吐出装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−147838(P2011−147838A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8913(P2010−8913)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】