説明

液体洗浄剤組成物

【課題】台所等の硬表面用として好適な液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 界面活性剤を1〜50重量%の範囲で含有する液体洗浄組成物であって、該液体洗浄物組成物には、(a)アニオン界面活性剤1〜35質量%と、(b)炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩0.1〜15質量%と、(c)アミン0.005〜1質量%を含有することを特長とする液体洗浄剤組成物。
更に、(d)ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤1〜15質量%を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【効果】油汚れ洗浄力、低温及び高温時の保存安定性に優れると共に、泡質が向上した茶渋除去効果に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物に関し、更に詳しくは、台所等の硬表面用として好適な液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台所用洗剤等の液体洗浄剤としては、洗浄性、泡立ち性等の基本性能を有するものが必要とされているが、近年、特に少量で且つ油汚れを手軽に除去できる液体洗浄剤が望まれている。
従来から知られている液体洗浄剤としては、種々の界面活性剤を多量に配合することによる安全性、供給性、コストの面を課題とし、少量で油汚れ洗浄力に優れる液体洗浄剤組成物に関するものが多い。
【0003】
例えば、(a)陰イオン性界面活性剤、(b)両性界面活性剤、(c)非イオン性界面活性剤、(d)分子内に複数の水酸基を有する化合物を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物(例えば、特許文献1参照)や、(a)界面活性剤、(b)1個のカルボキシル基を有する有機酸またはその塩を含有し、25℃におけるpHが6.0未満の液体洗浄剤組成物であって、該液体洗浄剤組成物の10質量%水溶液のpHが該液体洗浄剤組成物のpHより0.1以上低いことを特徴とする液体洗浄剤組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの液体洗浄剤組成物は、洗浄力を強化する成分を配合した場合、系中で強固な会合体を作りやすく、濁りを生じてしまうことや、冬場などの低温時に析出してしまうなどの課題が若干ある。更に、夏場の高温時や長期保存における液体洗浄剤の色調が若干劣化する問題も生じてしまう現状がある。すなわち、硬表面の油汚れに対する充分な洗浄力と低温、高温及び長期保存における液安定性を両立させることが難しいという課題がある。
【0005】
また、湯飲みや茶碗やカップなどに堆積した茶渋汚れ、更に、普段の洗い方や日々の使用によってできてしまった食器表面の傷部分に紅茶やコーヒーなどに含まれる有色成分の蓄積、更には含浸によって生成した茶渋汚れは、通常は漂白剤または研磨材による洗浄が必要であり、漂白剤や物理的な方法なしで茶渋を落すことはできないものである。
【特許文献1】特開2003−27099号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2003−129086号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解決しようとするものであり、油汚れ洗浄力、低温及び高温時の保存安定性、更に、泡質が向上した茶渋除去効果に優れた液体洗浄剤組成物、特に、台所等の硬表面用に好適な液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、界面活性剤を1〜50重量%の範囲で含有する液体洗浄物組成物であって、該液体洗浄剤組成物中に、アニオン界面活性剤と、特定のポリカルボン酸及びその塩と、アミンを夫々特定量含有することにより、更に、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤を特定量含有することにより、上記目的の液体洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) 界面活性剤を1〜50重量%の範囲で含有する液体洗浄剤組成物であって、該液体洗浄剤組成物には、(a)アニオン界面活性剤1〜35質量%と、(b)炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩0.1〜15質量%と、(c)アミン0.005〜1質量%を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
(2) 更に、(d)ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤1〜15質量%を含有することを特徴とする上記(1)記載の液体洗浄剤組成物。
(3) 上記(b)成分を含有することで茶渋除去効果に優れた上記(1)又は(2)記載の液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油汚れ洗浄力、低温及び高温時の保存安定性に優れると共に、泡質が向上した茶渋除去効果に優れた液体洗浄剤組成物、特に、台所等の硬表面用に好適な液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物は、界面活性剤を1〜50重量%の範囲で含有する液体洗浄物組成物であって、該液体洗浄物組成物には、(a)アニオン界面活性剤1〜35質量%と、(b)炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩0.1〜15質量%と、(c)アミン0.005%〜1質量%と、(d)ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤1〜15質量%を含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる(a)成分のアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、脂肪酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアミノ酸系アニオンなどが挙げられ、これらは、単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
好ましくは、油洗浄力、泡立ちの点から、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が望ましい。
【0012】
これらの(a)成分のアニオン界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、1〜35質量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、3〜30%とすることが望ましい。
この(a)成分のアニオン界面活性剤の含有量が1%未満であると、油汚れ洗浄力の持続が不十分となり、一方、35%を越えると、低温安定性に悪影響を与えることとなり、好ましくない。
【0013】
本発明に用いる(b)成分の炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩は、この範囲に入るものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、アジピン酸、イタコン酸、シクロプロパン−1、3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸、クエン酸、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、メチルグリシン二酢酸(以下MGDA)、グルタミン酸2酢酸、タウリン−N、N−2酢酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンコハク酸、またはこれらの塩などが挙げられ、これらは単独で或いは2種類以上の組み合わせで含有することができる。
好ましくは、更なる茶渋除去効果の点から、クエン酸、MGDA、リンゴ酸、グルタミン酸2酢酸が望ましい。
【0014】
これらの(b)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、0.1〜15%含有することが必要であり、下限として、好ましくは、0.5%、より好ましくは、3%、上限として、好ましくは7%、より好ましくは5%である。
この(b)成分の含有量が0.1%未満であると、高温安定性及び長期保存における液外観の色調の劣化に影響を与え、一方、15%を越えると、低温安定性に悪影響を与えることとなり、好ましくない。
なお、液体洗浄剤組成物中に(b)成分が上記含有量(0.1〜15%)含有されることにより、茶渋除去効果が向上するものとなる。
【0015】
本発明に用いる(c)成分のアミンとしては、例えば、、脂肪族アミン、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンなど、特に限定されないが、アミンの含有により、上記(a)成分のアニオン界面活性剤との相乗効果で油汚れ洗浄力が更に向上し、更に起泡性も向上するものとなる。
用いることができるアミンとしては、一般に下記式(I)に示されるものが挙げられる。
【化1】

【0016】
上記式(I)中、R1は、炭素数4〜22(以下、単に「C4〜C22」という)のアルキル基、アルケニ
ル基、脂環式または多環式基であり、アミド基、エステル基、水酸基等を有していてもよく、R2及びR3は、互いに独立して水素原子またはC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基であり、R2及びR3は同一であっても、異なってもよい。
好ましくは、前記式(I)中、R1はC4〜C20のアルキル基またはアルケニル基であり、R2及びR3
は各々C1〜C5のアルキル基またはアルケニル基で、更に好ましくは、R1はC6〜C18のアルキル基またはアルケニル基であり、特に好ましくは、R1はC8〜C16のアルキル基またはアルケニル基である。上記R1は、C4未満であれば、油汚れ洗浄力が低下し、一方、C22を超えると、低温安定性に悪影響を与えることとなる。また、R2及びR3は、C6以上を超えると、低温安定性に悪影響を与える。
【0017】
具体的に用いることができる第1級アミン、即ち、前記式(I)中、R2及びR3が両方とも水素原子であ
るものとしては、例えば、1−ヘキシルアミン、1−オクチルアミン、ラウリルアミン、パルミチルアミン、ステアロイルアミン、オレオイルアミン、ココナツアルキルアミン、タローアルキルアミン、6−アミノ−1−ヘキサノール、3−イソプロオキシプロピルアミン、3−(2−メトキシエトキシ)−プロピルアミン、2−(2−アミノエトキシ)−エタノール及びシクロヘキシルアミン、ラウリルメチルアミンなどが挙げられる。
また、第2級アミン、即ち、前記式(I)中、R2及びR3の1つだけが水素原子であるものとしては、例
えば、ジココナツアルキルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、及びジタロ−アルキルアミン、ジメチルアミン、n−ドデシルメチルアミンなどが挙げられる。
更に、第3級アミン、即ち、前記式(I)中、R2及びR3のどちらも水素原子でないものとしては、例え
ば、ココナツアルキルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、デシルジエチルアミン、ラウリルジメチルアミン、ラウリルジエチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジ−n−デシルメチルアミン、ジココナツアルキルメチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ラウリル酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミスチン酸ジメチルアミノプロピルアミドが挙げられる。
これらのアミンは、単独で或いは2種類以上の組み合わせで含有することができる。
【0018】
これらの(c)成分のアミン含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、0.005〜1%含有することが必要であり、下限として、0.005%、0.01%、0.02%が好ましく、上限として1%、0.5%、0.1%とすることが望ましい。
この(c)成分アミン含有量が0.005%未満であると、油汚れ洗浄力、泡立ち性と泡質が低下し、一方、1%を越えると、低温安定性に悪影響を与えることとなり、好ましくない。
【0019】
本発明において、低温安定性の更なる改善と洗浄力の更なる向上の点から、(d)成分としてポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤を含有せしめることが望ましい。
用いる(d)成分のポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤としては、例えば、下記一般式(II)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸アミドを含むポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤であり、(d)成分の含有により低温安定性が更に改善する。
【化2】

【0020】
上記一般式(II)で示される前記ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤は、下記一般式(III)で表される脂肪酸アルカノールアミドを、アルカノールアミン及び脂肪酸エステルから、アルカリ金属触媒の存在下で反応させ縮合反応により得られるものが好ましく、実質的に下記一般式(IV)で示されるアミドエステルを実質的に含まないものが特に好ましい。
【化3】

【化4】

【0021】
前記アルカノールアミンとしては、例えば、グリコールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。このアルカノールアミンは、1種単独で高純度のものを使用するのが好ましく、具体的には、純度が90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましい。
前記脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及び、パラフィン酸化やオキソ法で得られる合成脂肪酸等の高級脂肪酸を用いて得ることができる。前記脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜24の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基またはアルケニル基であり、前記脂肪酸のうち炭素数8〜14の脂肪酸を用いて得られたものが好ましく、該炭素数8〜14の脂肪酸とメタノール、エタノール等の低級アルコールとを用いて得られたものがより好ましく、該炭素数8〜14の脂肪酸とメタノールとを用いて得られた脂肪酸エステルが特に好ましい。炭素数が6未満の場合は疎水性が不足するため十分な洗浄力が得られない。また、炭素数が24を超えて大きい場合は界面活性剤自体の溶解度が減少するため、水に対する溶解性が低下したり、保存時に析出が生じたりしやすい。これらの脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記一般式(II)中のAOで示されるアルキレンオキサイド基としては、C3〜4のものがあげられる。炭素鎖長が2以下では実質的な効果が無く、C5以上では疎水性が強くなりすぎ安定性に問題が残る。また、n1、n2はそれぞれ0〜2の範囲、0〜5の範囲であり以下式を満たすものである。また、n1およびn2が1≦n1+n2≦5の範囲外であると、洗浄剤組成物として洗浄力と安定性の両立が困難となる。
【0023】
脂肪酸アルカノールアミドを、アルカノールアミン及び脂肪酸エステルから、アルカリ金属触媒の存在下で反応させ縮合反応を行う際のアルカリ金属触媒としては、アルカリ金属アルコラートが好ましく、具体的には、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、及び、カリウムエチラート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、工程全般の反応がスムーズである点で、ナトリウムメチラート等が特に好ましい。
前記縮合反応の反応条件としては、反応に用いる原料等によって適宜選択されるが、モル比(脂肪酸エステル1モルに対するアルカノールアミンのモル比)で0.9〜1.5モルであるのが好ましく、1〜1.3モルであるのがより好ましい。前記モル比が、0.9未満であると、得られる脂肪酸アミド量が少なくなり、また原料の脂肪酸エステルの影響により、製品の臭気が悪くなることがある一方、1.5モルを超えると、アルカノールアミンの残存量が多くなり、製品配合時に製品外観が経時的に変化し着色してしまうことがある。
【0024】
前記縮合反応の際の、脂肪酸エステルに対するアルカリ金属触媒の配合量としては、アミドエステルの副生の抑制効果に優れる点で、0.08質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましい。具体的には、アルカノールアミンとして、ジグリコールアミンを使用した場合、前記配合量としては、1.5質量%以上であるのが好ましく、2.0質量%以上であるのがより好ましい。また、アルカノールアミンとして、モノエタノールアミンを使用した場合、前記配合量としては、0.1質量%以上であるのが好ましく、1.0質量%以上であるのがより好ましい。
【0025】
前記縮合反応の際の、反応の温度としては、90℃以下であるのが好ましく、70℃以上90℃未満であるのがより好ましい。前記反応の温度が90℃を超えると、前記アルカリ金属触媒を、前述の好ましい配合量以上配合した場合であっても、アミドエステルが副生し製品中の澱の原因となることがある。一方、90℃以下という比較的低温で反応させることにより、色調・臭気の良好な脂肪酸アルカノールアミドが効率良く得られる。
前記縮合反応の際の反応圧力としては、1〜300mmHgが好ましく、5〜250mmHgがより好ましい。前記反応圧力が、前記数値範囲内であると、副生するアルコールを適度に留出させることができ、反応を進める上で特に好ましい。前記縮合反応の際の反応時間としては、通常1〜7時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。また、反応方式としては、通常攪拌槽型反応器を用いるが、特に制限はなく、縮合反応に適用可能な公知の反応方式が総て好適に挙げられる。前記縮合反応の際、原料の仕込み方式としては、特に制限はなく、適宜選択されるが、例えば、一括仕込みやアルカノールアミンを仕込んだ後、脂肪酸エステルを分割添加する方法等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸アルカノールアミドとエチレンオキサイドの付加反応では、90℃以下で反応させる。本発明においては、この反応(以下、「エチレンオキサイド付加反応」と称することがある。)の温度が極めて重要であり、90℃以下で行うことにより、不均化によるアミドエステルの副生が抑制され、かつ臭気・色調が良好なポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤を効率良く得ることができる。又、前記脂肪酸アルカノールアミドを得る際、使用するアルカリ金属触媒の配合量を、好ましい数値範囲内に調節することにより、極めて効率良く前記エチレンオキサイド付加反応を進行させることができる。更に、使用したアルカリ金属触媒を、そのままエチレンオキサイド付加反応の触媒として利用することにより、反応液を一旦固化させずに90℃以下の温度でエチレンオキサイド付加反応をスムースに進行させることができる。
【0027】
また、エチレンオキサイド付加反応の反応温度としては、不均化によるアミドエステル副生の抑制、及び、臭気・色調が良好となる点で、55〜88℃が好ましく、60〜85℃がより好ましい。
エチレンオキサイド付加反応において、エチレンオキサイドの平均付加モル数としては、脂肪酸アルカノールアミド1モルに対し、0.1〜10モルが好ましく、0.5〜5モルがより好ましい。前記平均付加モルが、脂肪酸アルカノールアミド1モルに対し0.1モル未満である場合には、製品の低温安定性が充分でないことがある一方、10モルを超えると、付加量に見合うだけの効果が得られず経済上好ましくない。
【0028】
上記一般式(IV)で示されるアミドエステルを実質的に含むか否かについては、GC分析(ガスクロマトクラフィー)により以下の条件にて測定し、アミドエステルが検出されなかった場合を「アミドエステルを実質的に含まない」と判断した。
<GC分析>
(1) 試料約10mg、及び、内部標準物質としてn−ドデカン約10mgを各々秤量し、これに、シリル化剤BSTFA0.6ml、ピリジン0.6mlを加え、80℃で30分間加熱処理を行い、分析用試料とした。
(2) カラムとしては、Ultra1(HEWLETT PACKARD)0.2mmφ×25m×0.11μmを用い、以下の温度条件で測定した。
(温度条件)
・カラム:60℃(2min)→(15℃/min)→300℃(20min)
・Inj:320℃
・Det:FID300℃(検出限界:0.05%)
【0029】
本発明に用いる(d)成分のポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン(1.5)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(2)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(3)ヤシ油脂肪酸モノエタノ−ルアミド、ポリオキシエチレン(5)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(1.5)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(3)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(5)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(8)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(1.5)ミリスチン酸モノエタノールアミド、及び、ポリオキシエチレン(1.5)オレイン酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレン(1.5)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレン(1)ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレン(1.5)ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド、などが挙げられる。これらは、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤において、1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、特、に低温安定性と洗浄力のバランスに優れる点で、ポリオキシエチレン(1.5〜3)ラウリン酸モノエタノールアミドが好ましい。
これらの(d)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは1〜15%、より好ましくは、2〜10%であることが望ましい。この(d)成分の含有量が1%未満であると、更なる低温安定性に劣り、一方、15%を超えると、洗浄力が劣ることがある。
【0030】
本発明に用いる界面活性剤は、上記(a)成分のアニオン界面活性剤の他に、洗浄性能の更なる向上、安定性の点から本発明の効果を損なわない範囲で、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤等のその他の界面活性剤を含有することができる。
用いることができるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、フェノールエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンアシルエステル)、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、cap−Nonion、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトールエステル、蔗糖脂肪酸エステル、脂肪酸グルコシドエステル、脂肪酸メチルグルコシド、脂肪酸メチマンノシドエステル、アルキルメチルグルカミド、N−メチルグルカミド、環状N−メチルグルカミド、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸グルコシドエステルなどが挙げられ、これらは単独で或いは2種類以上の組み合わせで含有することができる。
【0031】
用いることができる両性界面活性剤及び半極性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド、アルキルヒドロキシアミンオキサイドカルボキシベタイン、アミノカルボン酸、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン、ヒドロキシアルキルスルホベタイン、アルキルメチルグルカミド、アルキルイミダゾリニウムベタイン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシドなどが挙げられ、これらは単独で或いは2種類以上の組み合わせで含有することができる。
アルキル基の鎖長としては、C8〜C16、好ましくはC12、C14、C14とC12の混合が望ましい。
【0032】
これらの上記(a)成分を含めた界面活性剤の合計含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、1〜50%含有することが必要であり、好ましくは、10〜50%とすることが望ましい。
この界面活性剤の合計含有量が1%未満であると、十分な洗浄性能が得られず、一方、50%を超えると、長期保存時に沈殿などが生じやすいため、好ましくない。
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物には、上記(a)〜(c)成分、更に(d)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、液体洗浄剤組成物に従来から添加されている他の成分(任意成分)を適宜含有することができる。
好ましい添加成分としては、例えば、マグネシウム塩やカルシウム塩、硫酸亜鉛等の無機金属塩、低級アルコールやプロピレングリコールなどの有機溶剤、BHT、アスコルビン酸等の酸化防止剤、芳香族スルホン酸などの液性調整剤、ポリリジンなどの殺菌剤、天然多糖類や粘度鉱物などの粘度調整剤、着色剤、消炎剤、植物抽出物、酵素等の薬効成分、pH調整剤、香料、香料用溶剤、香料安定化等の通常用いられる物質が挙げられる。また溶媒として、水(精製水、イオン交換水、純水、常水、上水など)が使用される。
【0034】
香料安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、香料組成物中に0.0001〜15%含有することができるが、好ましくは、0.001〜10%含有することが望ましい。
【0035】
本発明において、液体洗浄剤組成物の原液pHは、使用性、安全性の点などから、3.0〜9.0とすることが好ましく、下限として原液pH3.0、原液pH4.0、原液pH5.0が好ましく、上限として原液pH9.0、原液pH8.0、原液pH7.0に調整することが望ましい。
この原液pHが3.0未満及び9.0超過であると、手肌マイルド性に悪い影響を与えると共に、安全性の点などより好ましくない。
【0036】
このように構成される液体洗浄剤組成物では、界面活性剤を1〜50%の範囲で含有すると共に、該液体洗浄物組成物中に、(a)アニオン界面活性剤1〜35%と、(b)炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩0.1〜15%と、(c)アミン0.005〜1質量%を含有することにより、上記(a)成分のアニオン界面活性剤と(c)成分のアミンとの相乗効果で油汚れ洗浄力が向上し、更に起泡性も向上するものとなり、かつ、(b)成分の含有により、茶渋除去効果に優れたものとなり、上記(a)〜(c)成分の含有量を夫々特定の範囲とすることにより、油汚れ洗浄力、低温及び高温時の保存安定性、及び泡質が向上した茶渋除去効果に共に優れた液体洗浄剤組成物、特に、台所等の硬表面用に好適な液体洗浄剤組成物が得られるものとなる。
更に、(d)成分として、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤1〜15%を更に含有することにより、低温時の保存安定性が更に改善されると共に、更に洗浄力が向上した台所等の硬表面用に好適な液体洗浄剤組成物が得られるものとなる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〜21及び比較例1〜5〕
下記表1及び表2に示される配合組成により各種液体洗浄剤組成物(全量100質量%)を調製した。得られた各種液体洗浄剤組成物について、原液pH(25℃)をpHメーター(東亜電波工業社製、HM−30G)にて測定すると共に、下記の評価方法により、油洗浄力、茶渋洗浄力、泡立ち性、泡質、低温時及び高温時の保存安定性について評価した。
これらの結果を下記表1及び下記表2に示す。また、表1及び表2に記載の香料A、Bは下記表3に示す組成(質量%)を用いた。なお、香料組成は、これに限定されるものではない。
【0039】
(油洗浄力の評価方法)
牛脂1gを10×15×5(cm)のタッパ容器に均一になるように塗布し、激しく汚れた疎水表面を汚垢とした。食器洗い用スポンジに38gの水と2gの洗浄剤組成物をとり、数回手で揉んだ後、汚染したタッパ容器を25℃、通常家庭で行われるのと同様にして洗浄し、水でよくすすぎ、その時のタッパ容器が汚染されていた表面を手で触ったときの触感で、洗浄力を下記評価基準に基づき評価した。
評価基準:
○:タッパ容器のいずれの部位を触っても、キュッキュと音がするような摩擦感があり、油の残留によるヌルツキは全く感じない。
△:タッパ容器の平滑な表面を触ると摩擦感があり、油の残留は認められないが、端や角の部位に僅かにヌルツキが残っている。
×:タッパ容器全体にヌルツキが感じられ、明らかに油が残留していることがわかる
【0040】
(茶渋洗浄力の評価方法)
市販紅茶ティーバック(BBLジャパン社製リプトンイエローラベルティーバッグ等)2個を500mlの沸騰した水道水中で30分間抽出したものを、直径60mmの白色陶器製マグカップに200ml注ぎ、60℃恒温槽で24時間静置し、蒸発乾固したものを激しく茶渋の付着したモデル汚垢とした。上記油洗浄力の評価に用いたものと同一の洗浄剤組成物を含んだスポンジにより、通常家庭で行われるのと同様にして洗浄し、水でよくすすぎ、以下の評価基準に従って、目視により官能評価した。
評価基準:
○:マグカップ内面のいずれの部位にも、茶渋の残存が認められない。
△:マグカップ内面の底面若しくは側面の一部分に茶渋の残存が認められる。
×:マグカップ内面の底面若しくは側面の半分以上に茶渋の残存が認められる。
【0041】
(泡立ち性及び泡質の評価方法)
11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに38gの水と2gの洗浄剤組成物をとり、10回手で揉んだ後の泡の立ち方を下記評価基準で評価した。
泡立ち性評価基準:
○:豊富な泡が立つ
△:泡が若干立つ
×:泡がほとんど立たない
泡質評価基準:
○:きめ細かくクリーミーな泡
△:荒く軽い泡
×:水っぽく流れ落ちる泡
【0042】
(高温時の液安定性の評価方法)
各液体洗浄剤組成物100gをガラス瓶に密閉し、50℃で1ヶ月間静置したときの外観(色調)の変化を下記評価基準にて目視評価した。
外観評価基準:
○:常温静置品と比較して、50℃静置後の色調が変化しない
△:常温静置品と比較して、50℃静置後の色調がやや変化する
×:常温静置品と比較して、50℃静置後の色調が著しく変化する
【0043】
(低温保存時の液安定性の評価方法)
各液体洗浄剤組成物100gをガラス瓶に密閉し、−5℃で1ヶ月間静置したときの外観の変化を下記評価基準にて目視評価した。
評価基準:
◎:沈殿、液分離が全く生じない
○:沈殿または液分離が僅かに生じる
×:沈殿または液の分離が生じる
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
上記表1及び2中の略号等は、下記のとおりである。
AES(3):C12アルキルエトキシ(EO=3)硫酸エステルナトリウム塩(テイカ社製 テイカポールNE1270)
AOS:α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン社製リポランLB−440)
LAS:アルキルベンゼンスルホン酸(ライオン社製ライポンLH−200)
AS:アルキル硫酸ナトリウム(ライオン社製 サンノールLM−1130)
クエン酸:クエン酸(扶桑化学工業社製 精製クエン酸(無水))
MGDA:メチルグリシン酢酸3ナトリウム(BASF Torilon M)
リンゴ酸:リンゴ酸 試薬1級(関東科学社製)
DDAO*1:ラウリル,N−ジメチルアミンオキシド〔ライオン・アクゾ社製アロモックスDM1 2D−W(C)〕 *1:C12ジメチルアミン含有
CDAO1*2:ミリスチル,N−ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ社製アロモックスDM14 D−N) *2:C14ジメチルアミン含有
CDAO2*3:ヤシ−ジメチルアミンオキシド(ライオン・アクゾ社製 アロモックスDMC―W) *3:C8ジメチルアミン含有
LME(2):ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド:平均EO付加モル数2モル(川研ファインケミカル社製 アミゾール2L)
CME(5):ポリオキシエチレン(5)椰子脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル社製 アミゼット5C)
LDE:ラウリン酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製 アミゾールLDE)
APG:アルキルポリグルコシド(Dow Chemical社製 TRITON CG−110)
AE(7):ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル(日本エマルジョン社製EMALEX 707)
AE(15):ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(ライオンケミカル社製 レオックスLC−150)
EtOH:エタノール、純正化学社製、試薬特級
SB:安息香酸ナトリウム(伏見製薬社製)
PTS−H:パラトルエンスルホン酸(テイカ社製 テイカトックス300)
CS:クメンスルホン酸ナトリウム(テイカ社製 テイカストックN5040)
PEG:ポリエチレングリコール(平均分子量1000)(ライオン社製 PEG#1000)
PG:プロピレングリコール (旭ガラス社製)
ソルビトール:70%、ソルビット液(東和化成工業社製)
ZnSO4:硫酸亜鉛七水和物(三井金属鉱業社製)
MgSO4:硫酸マグネシウム(純正化学社製 試薬特級)
【0047】
【表3】

【0048】
上記表1〜表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜21は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、油洗浄力、茶渋洗浄力、泡立ち性、泡質、低温時及び高温時の保存安定性に優れていることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1は(a)成分のアニオン界面活性剤を含有しない場合、比較例2は(a)成分のアニオン界面活性剤の含有量が超過(40質量%)場合、比較例3は、(b)成分の含有量が超過(18質量%)の場合、比較例4及び5は、(c)成分の含有量が少ない場合(0.005質量%未満)の場合であり、これら本発明の範囲外となる場合は、本発明の効果(油洗浄力、茶渋洗浄力、泡立ち性、泡質、低温時及び高温時の保存安定性に優れるという効果)を発揮できないことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を1〜50重量%の範囲で含有する液体洗浄組成物であって、該液体洗浄物組成物には、(a)アニオン界面活性剤1〜35質量%と、(b)炭素数2〜15のポリカルボン酸及びその塩0.1〜15質量%と、(c)アミン0.005〜1質量%を含有することを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に、(d)ポリオキシエチレン脂肪酸アミド型界面活性剤1〜15質量%を含有することを特徴とする請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(b)成分を含有することで茶渋除去効果に優れた請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。


【公開番号】特開2006−193726(P2006−193726A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359326(P2005−359326)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】