説明

液体肥料の製造方法

【課題】従来のバイオガス生産に伴う液体肥料生産システムでは、有機系廃棄物1が粉砕異物除去装置2により異物除去され、発酵槽3に運ばれ、バイオガス4が取り出され、残渣の液体が固液分離機5により分離され、液体肥料としていた。しかし、このような液体肥料は、各栄養素量が不適当であるため液体肥料として利用できず、施肥する場所までの輸送コストが非常にかかっていた。
【解決手段】バイオガス4を取り出した後の残渣から固液分離機5により原液6を得、これを蒸散装置7に運び水分を調節し、イオン交換樹脂8に供給して富カリウム画分9(溶液A)と、富窒素−リン画分10(溶液B)とに分画した。続いて、溶液AおよびBをそれぞれ水分蒸発機11および12に供給し濃縮し、濃縮液体肥料13(カリベース)および14(窒素−リンベース)を得、施肥前に両者の所定量を混合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料の製造方法およびそのための装置に関するものであり、詳しくは、有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から、植物の生育に有効な栄養素のバランスを具備する液体肥料を低コストで製造することのできる方法、およびそのための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
循環型社会形成推進基本法のもと食品リサイクル法が施行されるなか、有機系廃棄物(食品廃棄物、家畜ふん尿、下水汚泥、廃木材など)のリサイクル化が問われている。有機系廃棄物のリサイクルは主にコンポスト化、バイオガス化、飼料化、建材化などがあり、循環社会推進のためリサイクル率を高めていく必要がある。
従来、有機系廃棄物からバイオガスを取り出した後の残渣は、固形はコンポスト化され堆肥に、液体は液体肥料としての利用が考えられている。
【0003】
図3は、従来のバイオガス生産に伴う液体肥料生産システムを説明するための図である。
図3において、有機系廃棄物1は、粉砕異物除去装置2により粉砕され異物が除去された後、発酵槽3に運ばれ、バイオガス4が取り出される。
生じた残渣は固液分離機5により固体と液体とに分離され、液体は液体肥料36として取り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように生産された液体肥料は、各栄養素量が変動しやすく、また窒素やリンが過剰に含まれるためこのままでは液体肥料として利用できないという欠点がある。さらに、大量の水分を含むために、施肥する場所までの輸送コストが非常にかかるという欠点もある。
このような理由から、前記液体肥料は肥料としての利用が限定され、そのほとんどが水処理施設で処理され廃棄されているのが現状である。
したがって本発明の目的は、有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から、植物の生育に有効な栄養素のバランスを具備する液体肥料を低コストで製造することのできる方法、およびそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から液体肥料を製造する方法であって、前記残渣から液体を分離する液体分離工程と、前記液体分離工程で分離された液体に含まれる水分を蒸散させる蒸散工程と、前記蒸散工程で濃縮された原液を富カリウム画分と富窒素−リン画分とに分画する分画工程と、前記各画分に含まれる水分を蒸発する水分蒸発工程とを有することを特徴とする。
また本発明は、有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から液体肥料を製造する装置であって、前記残渣から液体を分離する固液分離機と、前記固液分離機で分離された液体に含まれる水分を蒸散させる蒸散装置と、前記蒸散装置で濃縮された原液を、富カリウム画分と富窒素−リン画分とに分画するイオン交換樹脂と、前記各画分に含まれる水分を蒸発する水分蒸発機とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から、植物の生育に有効な栄養素のバランスを具備する液体肥料を低コストで製造することのできる方法、およびそのための装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の製造方法の一実施態様を説明するための概略図である。
【図2】本発明の製造方法を実施可能な装置の一例を説明するための図である。
【図3】従来のバイオガス生産に伴う液体肥料生産システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の製造方法の一実施態様を説明するための概略図である。
図1において、有機系廃棄物1は、粉砕異物除去装置2により粉砕され異物が除去された後、発酵槽3に運ばれ、バイオガス4が取り出される。
生じた残渣は固液分離機5により固体と液体とに分離され、液体は原液6として取り出される。なお、前記の粉砕異物除去装置2、発酵槽3、バイオガス4の取り出し方法、固液分離機5については当業界でよく知られている内容なので、ここでの詳しい説明は省略する。
続いて、原液6は、蒸散装置7に運ばれ水分が調節され、イオン交換樹脂8に供給され、カリウムに富む富カリウム画分9(溶液A)と、窒素およびリンに富む富窒素−リン画分10(溶液B)とに分画される。
続いて、溶液AおよびBはそれぞれ水分蒸発機11および12に供給され濃縮され、濃縮液体肥料13(カリベース)および14(窒素−リンベース)が得られる。
なお、イオン交換樹脂8による分画を容易にするために、原液6に多く含まれるアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する必要がある。
【0009】
図2は、本発明の製造方法を実施可能な装置の一例を説明するための図である。
図2において、固液分離機により分離された原液は、原液タンク21に貯えられている。なお、原液タンク21にはブロワー22を設置して原液を曝気し、BODを低減させておくのが好ましい。
次に、原液は原液タンク21から濃縮液貯蔵タンク28に送られる。さらに、ポンプ23により蒸散装置24に運ばれ、ここで水分が調節される。水分は、カリウム、窒素、リン濃度が原液中にそれぞれ1%程度になるように蒸発させるのが好ましい(通常、原液の水分の80%が蒸散する)。
また、図2の蒸散装置24は、公知の溶液噴霧蒸散方式の装置であって、原液を噴霧器25から装置下方に噴霧するとともに、フィルターでろ過された外気をブロワー26により装置下部から取り入れて上部に排出させる構成となっている。
【0010】
図2の態様によれば、原液に多く含まれるアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換するバイオフィルター27が設けられている。バイオフィルター27には、微生物(例えばNitrosomonas(ニトロソモナス)属やNitrobacter(ニトロバクター)属)が固定され、原液と接触できるようになっている。前記微生物は、原液に多く含まれるアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換可能であるとともにBODも低減できるため好ましい。原液と微生物の接触により、続くイオン交換塔30による分画が容易となる。
【0011】
バイオフィルター27を通過した原液は、濃縮液貯蔵タンク28に貯えられ、ポンプ29によりイオン交換塔30に運ばれる。なお濃縮液貯蔵タンク28に貯えられた原液は、その一部を再び蒸散装置24に循環させてもよい。
イオン交換塔30は、原液をカリウムに富む富カリウム画分と、窒素およびリンに富む富窒素−リン画分とに分画するものである。
イオン交換塔には、この目的を達成するイオン交換樹脂が充填されている。
前記イオン交換樹脂としては、例えばH型強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。このイオン交換樹脂は、陽イオンのKを固定して、陰イオンのNOおよびPOは通過させる。NOおよびPO通過後は、NaClタンク31からNaClをイオン交換塔30に供給し、固定されたKを溶出させる。各画分は画分ごとに貯留タンク32、33に貯えられた後、水分蒸発機34、35に供給され濃縮される。水分蒸発機34、35は、温度が例えば80℃に設定され、各栄養素の設計量への微調整と、殺菌を同時に行うことができる。なお、水分蒸発機34、35としては、前記の公知の溶液噴霧蒸散方式の装置を利用することができる。水分蒸発後は、濃縮液体肥料として製品タンク36、37にそれぞれ各画分が貯えられる。なお、濃縮液貯蔵タンク28に貯えられた原液のイオン交換塔30への供給のためのポンプの稼動、およびNaClタンク31からNaClのイオン交換塔30への供給のためのポンプの稼動は、制御盤38により制御されている。ここで、NaClタンク31からNaClのイオン交換塔30への供給のためのポンプの稼動は、イオン交換塔30の出口部付近に設けられたNaセンサー39から送信された信号に基づいている。さらに制御盤38は、弁40,41,42を制御し、貯留タンク32,33への各画分の流入量も制御することができる。なお、43は廃液タンクである。
【0012】
このようにして製造されたカリベースの濃縮液体肥料と窒素−リンベースの濃縮液体肥料は、水分が大幅に減じられ質量および嵩も減少しているため、施肥する場所までの輸送コストがかさむことがない。
また、施肥前に前記各濃縮液体肥料を所定の割合で混合すれば、植物の生育に有効な栄養素のバランスを具備する液体肥料を簡単に得ることができる。
【符号の説明】
【0013】
1 有機系廃棄物
2 粉砕異物除去装置
3 発酵槽
4 バイオガス
5 固液分離機
6 原液
7、24 蒸散装置
8 イオン交換樹脂
9 富カリウム画分
10 富窒素−リン画分
11、12、34、35 水分蒸発機
21 原液タンク
27 バイオフィルター
30 イオン交換塔
38 制御盤
39 Naセンサー
40、41、42 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から液体肥料を製造する方法であって、
前記残渣から液体を分離する液体分離工程と、
前記液体分離工程で分離された液体に含まれる水分を蒸散させる蒸散工程と、
前記蒸散工程で濃縮された原液を富カリウム画分と富窒素−リン画分とに分画する分画工程と、
前記各画分に含まれる水分を蒸発する水分蒸発工程と、
を有することを特徴とする液体肥料の製造方法。
【請求項2】
前記液体分離工程で分離された液体に含まれるアンモニア態窒素を、硝酸態窒素に変換させた後、得られた液体を前記分画工程に供することを特徴とする請求項1に記載の液体肥料の製造方法。
【請求項3】
前記分画工程が、液体分離工程で分離された液体をイオン交換樹脂に接触させる工程からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液体肥料の製造方法。
【請求項4】
有機系廃棄物を発酵させてバイオガスを取り出した後の残渣から液体肥料を製造する装置であって、
前記残渣から液体を分離する固液分離機と、
前記固液分離機で分離された液体に含まれる水分を蒸散させる蒸散装置と、
前記蒸散装置で濃縮された原液を、富カリウム画分と富窒素−リン画分とに分画するイオン交換樹脂と、
前記各画分に含まれる水分を蒸発する水分蒸発機と、
を有することを特徴とする液体肥料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25659(P2012−25659A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198951(P2011−198951)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【分割の表示】特願2001−172145(P2001−172145)の分割
【原出願日】平成13年6月7日(2001.6.7)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】