説明

液体試料測定方法

【課題】本発明の目的は、液体試料の分析を、より簡便に行うことのできる液体試料測定方法を提供することにある。
【解決手段】細管10の先端を液体試料12中に付けて該細管10内に該液体試料12を導入する試料導入工程(S10)と、前記試料導入工程(S10)で液体試料12の導入された細管10を水平状態にして、測定装置の中での所定光路14上に位置するところにセットするセット工程(S12)と、前記セット工程(S12)でセットされた細管10内の液体試料12に測定光16を照射し、その透過光16a又は拡散反射光16bの検出を前記測定装置により行う検出工程(S14)と、を備え、前記検出工程(S14)で得られた透過光16a又は拡散反射光16bのスペクトル情報に基づき該液体試料12の分析を行うことを特徴とする液体試料測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体試料測定方法、特に液体試料の測定セル内への導入手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば食品や医薬品等の品質管理、受け入れ検査、工程管理等に用いられる種々の分析分野では、物質の分析を行うため、近赤外測定装置による近赤外測定が行われている。そして、粉末やペレット状の物質は、セルに入れられて、また試験管や試料瓶に入れられたまま、拡散反射法による近赤外測定を行うこともできるので、測定が簡便である。
【0003】
一方、液体試料の測定にも近赤外測定装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。そして、液体試料は例えばセル長1〜3mm程度の薄い角セルに入れられて、またクイックフローサンプラを用いてフローセルに入れられて、透過法による近赤外測定が行われている。
【特許文献1】特開平6−341951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような物質の分析においては、高い簡便性が求められており、粉体やペレット状の物質は、簡便な測定がなされている。
しかしながら、液体試料に関しては、簡便性は未だ改善の余地が残されていた。すなわち、液体試料の測定に用いられる一般的な角セルは使用後に洗浄して再使用するのが一般的である。このため液体試料の測定に前記角セルを用いたのでは、洗浄等の作業が大変である。特に前述のような品質管理等に用いられる測定では、サンプル数が多いこともあるので、この問題はより深刻となる。一方、クイックフローサンプラを用いたのでは、ランニングコストが高く、また、試料量が多く必要である。
【0005】
このように液体試料の測定において簡便性は未だ改善の余地が残されていたものの、従来はこれを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、液体試料の分析を、より簡便に行うことのできる液体試料測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明にかかる液体試料測定方法は、試料導入工程と、セット工程と、検出工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記試料導入工程は、液体試料中に細管の先端を付けて、該細管内に該液体試料を導入し保持させる。
また、前記セット工程は、前記試料導入工程で液体試料の導入された細管を水平状態にして、測定装置の中での所定光路上に位置するところにセットする。
前記検出工程は、前記セット工程でセットされた細管内の液体試料に測定光を照射し、その透過光又は拡散反射光の検出を、前記測定装置により行う。
そして、前記検出工程で得られた透過光又は拡散反射光のスペクトル情報に基づき、該液体試料の分析を行う。
なお、本発明において、前記試料導入工程は、毛管現象を利用して前記液体試料を前記細管内に導入することが好適である。
【0007】
また、本発明において、前記検出工程は、近赤外測定を行うことが好適である。すなわち、本発明の細管によれば、液体試料量を極めて微少量とすることができるが、その分、測定時に目的物質の示す信号強度も弱くなることがあるので、夾雑物の影響を低減することが非常に重要であり、近赤外領域では他の領域に比較し夾雑物の影響が非常に少なく、目的物質のスペクトル解析を、より容易に行うことができるからである。
また、本発明において、前記検出工程は、フーリエ変換赤外分光光度計により前記液体試料の測定を行うことが好適である。すなわち、本発明の細管によれば、液体試料量を極めて微少量とすることができるが、その分、光測定を効率的に行うことも重要であり、分散型赤外分光光度計に比較し、フーリエ変換赤外分光光度計は効率的な光測定に優れているので、目的物質の光測定を、より効率的に行うことができるからである。
【0008】
<透過法>
また、本発明において、前記セット工程は、透過用ホルダに設けられたスリット上に前記細管内の液体試料が位置するように、該透過用ホルダの固定部位に該細管を水平状態に保持させ、
前記検出工程は、前記透過用ホルダのスリットを介して前記細管内の液体試料に測定光を照射して得られた透過光を検出し、
前記検出工程で得られた透過光のスペクトル情報に基づき、該細管内の液体試料の分析を行うことが好適である。
【0009】
<拡散反射法>
また、本発明において、前記セット工程は、拡散反射用ホルダでの所定光路上に前記細管内の液体試料が位置するように、該拡散反射用ホルダの固定部位に該細管を水平状態に保持させ、
前記検出工程は、前記拡散反射用ホルダの固定部位に水平状態に保持された細管内の液体試料に測定光を照射して得られた拡散反射光を検出し、
前記検出工程で得られた拡散反射光のスペクトル情報に基づき、該細管内の液体試料の分析を行うことが好適である。
【0010】
<固定溝>
また、本発明において、前記試料導入工程は、円筒状の前記細管内に前記液体試料を導入し、
前記セット工程は、前記ホルダの固定部位である固定溝に、前記円筒状の細管を固定することが好適である。
本発明の固定溝としては、凹の字状、U字状ないしV字状が好ましいが、円筒状の細管をしっかり固定することができる点で、V字状のものが特に好ましい。
【0011】
<液体試料>
本発明の液体試料としては、例えば水、醤油、ブランディ、クロロホルム、ワイン、エタノール等を用いることができる。また、本発明の液体試料は、ペースト状のものも含み、例えば練り製品、発酵品、味噌、ケチャップ類、ジャム類、ヨーグルト類等が一例として挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる液体試料測定方法によれば、液体試料中に細管先端を付けて細管内に液体試料を導入する試料導入工程と、該細管を水平状態にセットするセット工程と、該細管内の液体試料のスペクトル測定を行う検出工程と、を備えることとしたので、液体試料の測定を、簡便に行うことができる。
また、本発明においては、毛管現象を利用して液体試料を細管内に導入することにより、液体試料の測定を、より簡便に行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記検出工程では、近赤外測定を行うこと、ないしフーリエ変換赤外分光光度計により測定を行うことにより、液体試料の測定を、より簡便に行うことができる。
また、本発明において、前記セット工程では透過用ホルダの固定部位に細管を水平状態に保持させ、前記検出工程では透過用ホルダのスリットを介して細管内の液体試料に測定光を照射して得られた透過光のスペクトル情報に基づき液体試料の分析を行うことにより、液体試料の測定を、より簡便に行うことができる。
【0014】
本発明において、前記セット工程では拡散反射用ホルダの固定部位に細管を水平状態に保持させ、前記検出工程では拡散反射用ホルダに保持された細管内の液体試料に測定光を照射して得られた拡散反射光のスペクトル情報に基づき液体試料の分析を行うことにより、液体試料の測定を、より簡便に行うことができる。
本発明において、前記セット工程では前記ホルダの固定部位である固定溝に細管を固定することにより、液体試料の測定を、より簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる液体試料測定方法の処理手順を示すフローチャートが示されている。
同図に示す液体試料測定方法は、試料導入工程(S10)と、セット工程(S12)と、検出工程(S14)と、を備える。
ここで、試料導入工程(S10)では、セルとして、円筒状の毛細管(細管)10を用いている。毛細管10は、毛管現象を利用して液体試料12を吸引することのできる内径を有する。このため、同図(A)の側面図に示されるように、毛細管10の先端を液体試料12中に付けると、毛管現象を利用して液体試料12が毛細管10内に導入される。
【0016】
また、セット工程(S12)では、試料導入工程(S10)で液体試料12の導入された毛細管10を、同図(B)の側面図に示されるような水平状態にして、測定光路14上に位置するところにセットする。
検出工程(S14)では、セット工程(S12)で水平置きにセットされた毛細管10内の液体試料12に、同図(C)の斜視図に示されるように、近赤外光である測定光16を照射し、その透過光16aないし拡散反射光16bを検出する。
そして、本実施形態においては、検出工程(S14)で得られた透過光16aないし拡散反射光16bのスペクトル情報に基づき、液体試料12の分析を行う。
【0017】
この結果、本実施形態にかかる液体試料測定方法によれば、液体試料12の近赤外測定を簡便に行うことができる。
すなわち、試料導入工程(S10)では、同図(A)に示されるように液体試料12中に、毛細管10の先端のみを付けるだけで、液体試料12は毛管現象を利用して毛細管10内に吸い込まれるので、一般的な試料導入方式に比較し、液体試料12を容易にセル内に導入することができる。また、本実施形態においては、セルとして毛細管10を用いているので、試料量を微少量とすることもできる。
【0018】
また、液体試料12の導入時、毛細管10の先端部分のみが汚れるだけであり、測定光16の入出射部位は汚れないので、測定時、毛細管10に付着した余分な液体試料12の拭き取り作業が不要となる。また、測定後は、従来必須であったセルの洗浄作業等も必要ない。
【0019】
また、セット工程(S12)では、同図(B)に示されるように液体試料12を吸い上げた毛細管10をそのまま水平にしてセットするだけで、同図(C)に示されるような検出工程(S14)を開始することができるので、液体試料12の近赤外測定を、より簡便に行うことができる。
しかも、本実施形態の毛細管10を用いて得られた測定結果も、一般的な角セルや全反射測定(ATR)での測定結果と比較しても同等の精度が得られる。
【0020】
したがって、本実施形態は、液体試料12に関しても満足のゆく簡便な分析を行うことができるので、試料導入工程(S10)、セット工程(S12)及び検出工程(S14)を順次、繰り返すことにより、つまり毛細管10に液体試料12を導入して測定することを繰り返すことで、液体試料12の受け入れ検査、工程管理や定量等にも幅広く利用することができる。また、本実施形態の測定方法では、ランニングコストもかなり抑えられる。
【0021】
簡便性の更なる向上
ところで、本実施形態にかかる液体試料測定方法の更なる簡便化を図るためには、本実施形態の毛細管を下記のホルダに保持させることも好ましい。すなわち、本実施形態において、毛細管内の液体試料の透過測定を行う場合は下記の透過用ホルダ、拡散反射測定を行う場合は下記の拡散反射用ホルダを用いることが好ましい。
以下に、前記各ホルダについて説明する。
【0022】
(1)透過用ホルダ
図2(A)には本発明の一実施形態にかかる液体試料測定方法において好適な透過用ホルダの概略構成が示されている。
同図に示す透過用ホルダ20は、ホルダ本体22と、スリット24と、ストッパ26と、を備える。
ここで、ホルダ本体22は、板状のものとする。
また、スリット24は、ホルダ本体22の中での光路上に位置するところに設けられ、毛細管10の水平配置に合わせて、水平方向に設定されている。
ストッパ26は、ホルダ本体22に設けられ、ホルダ本体22に毛細管10を水平状態に保持する、同図(B)に示されるようなV字状の固定溝(固定部位)28を有する。
【0023】
そして、本実施形態のセット工程(S12)では、同図(C)に示されるように、スリット24上に毛細管10内の液体試料12が位置するように、透過用ホルダ20の固定溝28に、毛細管10を水平状態に固定している。
また、本実施形態の検出工程(S14)では、同図(D)に示されるように、透過用ホルダ20のスリット24を介して、毛細管10内の液体試料12に測定光16を照射して得られた透過光16aの検出を行う。
そして、本実施形態の透過法では、透過光16aのスペクトル情報に基づき、毛細管10内の液体試料12の分析を行っている。
【0024】
すなわち、本実施形態においては、同図(E)に示されるようなフーリエ変換赤外分光光度計(測定装置、近赤外測定装置)30の試料室32に透過用ホルダ20をセットし、毛細管10を水平置きにして測定することで、毛細管10内に入れられた液体試料12の透過測定を、より簡便に行うことができる。
フーリエ変換赤外分光光度計30は、近赤外光射出手段34と、試料室32と、検出器36と、データ処理器38とを備える。
そして、近赤外光射出手段34からの近赤外光である測定光16は、試料室32にセットされた透過用ホルダ20のスリット24を介して、毛細管10内の液体試料12に照射される。さらに、液体試料12からの透過光16aを集光して検出器36へと送る。検出器36からの検出信号は、データ処理器38へと送られ、その透過光16aのスペクトル情報に基づいて、液体試料12の濃度が推定される。
【0025】
なお、近赤外光射出手段34は、近赤外光源40と、干渉計42と、を備えており、近赤外光源40からの近赤外光は干渉計42を通って近赤外干渉光となり射出される。これを本実施形態では測定光16といっている。
【0026】
<スリット調節機構>
なお、前記図2に示した透過用ホルダ20においては、スリット24の大きさ、ないし高さ位置の調節を行うため、図3、4に示されるようなスリット調節機構を設けることも好ましい。
図3は透過用ホルダ20の組立図であり、同図(A)は透過用ホルダ20の全体を正面より見た図、同図(B)は透過用ホルダ20の主要部分の縦断面図である。
図4は透過用ホルダ20の分解図であり、同図(A)はホルダ本体22を正面より見た図、同図(B)はスリット24を正面より見た図である。
本実施形態において、透過用ホルダ20は、スリット板50を備えている。
また、ホルダ本体22が、固定棒52と、測定穴54と、を備える。
スリット板50は、固定棒52に沿って上下方向に移動自在に設けられた調整孔56を備える。スリット板50は、スリットサイズの異なる複数のスリット部24a〜24cを有し、このうちのいずれかのスリットを、スリット24として用いる。
また、ストッパ26は、固定棒52に調整孔56を設け、所望のスリット部をスリット24として測定穴54に対向させた状態で、ホルダ本体22にスリット板50を固定している。
この結果、透過用ホルダ20においては、このようなスリット調節機構を用いることにより、毛細管10に合わせて、スリット部24a〜24cの中から所望のスリット24の大きさを容易に選択することができ、またフーリエ変換赤外分光光度計30の試料室32の中での測定光路14の高さに合わせて、スリット24の上下方向位置を容易に調節することができる。したがって、前記透過用ホルダ20に保持された毛細管10内の液体試料12の近赤外測定を、より簡便に行うことができる。
【0027】
(2)拡散反射用ホルダ
図5(A)には本実施形態にかかる液体試料測定方法において好適な拡散反射用ホルダの概略構成が示されている。なお、前記透過用ホルダと対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。
同図に示す拡散反射用ホルダ120は、円柱状のホルダ本体122よりなる。ホルダ本体122は、中空部160と、固定溝128と、を備える。
【0028】
ここで、中空部160は、ホルダ本体122の中心軸方向に設けられている。
また、固定溝128は、毛細管110を水平状態に固定し、かつ該毛細管110が測定光16の光路上となる中空部160の中央に位置するように、ホルダ本体122の上部に水平方向に設けられている。
この拡散反射用ホルダ120は、拡散反射測定装置162に設けられ、拡散反射測定装置162はフーリエ変換赤外分光装置130の試料室132に設置される。毛細管110を拡散反射用ホルダ120の固定溝128に合わせて水平置きにして、液体試料112の分析が行われる。
【0029】
すなわち、同図(B)に示されるような本実施形態のセット工程(S112)では、拡散反射用ホルダ120での測定光路上である中空部160に、毛細管110内の液体試料112が位置するように、拡散反射用ホルダ120の固定溝128に、毛細管110を水平状態に保持させている。この結果、同図(C)の縦断面図に示されるように、毛細管110は、拡散反射用ホルダ120の固定溝128にしっかり固定される。
また、本実施形態の検出工程(S114)では、同図(D)に示されるように、拡散反射用ホルダ120の固定溝128に水平状態に保持された毛細管110内の液体試料112に測定光116を照射して得られた拡散反射光116bを検出している。
【0030】
この結果、本実施形態においては、毛細管110に入れられた液体試料112の拡散反射測定を、より簡便に行うことができる。このために本実施形態においては、同図(D)に示されるようなフーリエ変換赤外分光光度計130の試料室132に、拡散反射用ホルダ120を含む拡散反射測定装置162をセットし、毛細管110を水平に置き測定することで、毛細管110に入れられた液体試料112の拡散反射測定を、より簡便に行うことができる。
すなわち、同図(D)に示されるように、フーリエ変換赤外分光光度計110は、拡散反射測定装置162を備える。
【0031】
そして、近赤外光射出手段134からの測定光116は、拡散反射測定装置162によって拡散反射用ホルダ120の毛細管110内の液体試料112に照射される。さらに、拡散反射測定装置162によって液体試料112からの拡散反射光116bを集光して検出器136へと送る。検出器136からの検出信号は、データ処理器138へと送られ、その拡散反射光のスペクトル情報に基いて、液体試料112の濃度が推定される。
【0032】
本実施形態では、拡散反射測定装置162は、筐体170内部に、照射部である凹レンズ172及びミラー174と、集光部である凹レンズ176及びミラー178と、を備える。筐体170側面には、入射窓180、出射窓184、測定口184を設けている。
そして、筐体170の測定口184に拡散反射用ホルダ120を設けた状態で、近赤外測定が行われる。すなわち、近赤外光射出手段134からの測定光116は、入射窓180から筐体170内に導光され、測定口184を通して拡散反射用ホルダ120の液体試料120に照射され、液体試料112からの拡散反射光116bを、前記集光部によって集め、出射窓182から検出器136へと送る。
拡散反射光116bは検出器136で検出され、その検出信号は、データ処理器138へと送られる。データ処理器138は、拡散反射スペクトルデータに基づいて、液体試料112の濃度を推定する。
【0033】
定量性
本実施形態の毛細管による定量性を確認するため、水中のアルコール濃度の検量モデルを作成した。
<試験例1>
試験例1では、近赤外測定装置として前記図2(E)に示したフーリエ変換赤外分光光度計30を用い、透過スペクトルの測定を行った。該フーリエ変換赤外分光光度計30で測定した透過スペクトルデータを用いて、透過法による検量モデルを作成した。この結果、図6(A)に示されるような検量カーブが得られた。
【0034】
<試験例2>
本試験例では、近赤外測定装置として前記図5(D)に示したフーリエ変換赤外分光光度計130を用い、前記試験例1での試料と同一試料で、拡散反射スペクトルの測定を行った。該フーリエ変換赤外分光光度計130で測定した拡散反射スペクトルデータを用いて、拡散反射法による検量モデルを作成した。この結果、図6(B)に示されるような検量カーブが得られた。
【0035】
図6(A)に示す透過法を用いた場合と同図(B)に示す拡散反射法を用いた場合のいずれの場合においても、相関係数の値が0.998〜0.999と非常に高く、定良性(直線性)の良い結果が得られた。つまり、従来、液体試料の測定法は透過法のみが一般的であったのに対し、本実施形態は、同一の液体試料に対して透過法と拡散反射法の双方で満足のゆく結果が得られた。
【0036】
<液体試料>
なお、本実施形態にかかる液体試料測定方法は、透過法と拡散反射法の双方の方法で測定することができるので、完全な液体の試料だけではなく、食品分析等の分野で多いペースト状の試料、例えば練り製品、発酵品、味噌、ケチャップ類、ジャム類、ヨーグルト類等の測定にも有効である。
そして、ペースト状の試料の場合は、試料導入工程において、毛管現象を利用して液体試料を毛細管内に導入するというよりは、試料中に毛細管の先端を突き刺すことで、試料を毛細管内に導入することもできる。
【0037】
本実施形態にかかる液体試料測定方法は、近赤外領域以外の領域にも適用可能であるが、夾雑物の影響が非常に少なく目的物質のスペクトル解析が容易に行える点で、近赤外領域での適用が特に好ましい。また、本発明の測定装置としては、分散型赤外分光光度計を用いることも可能であるが、スペクトル測定がより効率的に行える点で、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)が特に好ましい。
【0038】
<細管>
本実施形態の毛細管としては、例えば以下のヘマトクリット毛細管等を一例として用いることができる。
(1)材質:ガラス又は樹脂製
(2)サイズ:1.4mm×75mm(内径0.9mm)等
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかる液体試料測定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態の液体試料測定方法において透過法を用いる際に好適な透過用ホルダの説明図である。
【図3】図2に示した透過用ホルダの、より具体的な説明図(組立図)である。
【図4】図2に示した透過用ホルダの、より具体的な説明図(分解図)である。
【図5】本実施形態の液体試料測定方法において拡散反射法を用いる際に好適な拡散反射用ホルダの説明図である。
【図6】本実施形態の液体試料測定方法による検量モデルの一例である。
【符号の説明】
【0040】
10 毛細管(細管)
20 透過用ホルダ
120 拡散反射用ホルダ
28,128 固定溝(固定部位)
30,130 フーリエ変換赤外分光光度計(近赤外測定装置,測定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中に細管の先端を付けて、該細管内に該液体試料を導入する試料導入工程と、
前記試料導入工程で液体試料の導入された細管を水平状態にして、測定装置の中での所定光路上に位置するところにセットするセット工程と、
前記セット工程でセットされた細管内の液体試料に測定光を照射し、その透過光又は拡散反射光の検出を、前記測定装置により行う検出工程と、
を備え、前記検出工程で得られた透過光又は拡散反射光のスペクトル情報に基づき、該液体試料の分析を行うことを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の液体試料測定方法において、
前記試料導入工程は、毛管現象を利用して前記液体試料を前記細管内に導入することを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体試料測定方法において、
前記検出工程は、近赤外測定を行うことを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体試料測定方法において、
前記検出工程は、フーリエ変換赤外分光光度計により測定を行うことを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液体試料測定方法において、
前記セット工程は、透過用ホルダに設けられたスリット上に前記細管内の液体試料が位置するように、該透過用ホルダの固定部位に該細管を水平状態に保持させ、
前記検出工程は、前記透過用ホルダのスリットを介して前記細管内の液体試料に測定光を照射して得られた透過光を検出し、
前記検出工程で得られた透過光のスペクトル情報に基づき、該細管内の液体試料の分析を行うことを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項6】
請求項請求項1〜4のいずれかに液体試料測定方法において、
前記セット工程は、拡散反射用ホルダでの所定光路上に前記細管内の液体試料が位置するように、該拡散反射用ホルダの固定部位に該細管を水平状態に保持させ、
前記検出工程は、前記拡散反射用ホルダの固定部位に水平状態に保持された細管内の液体試料に測定光を照射して得られた拡散反射光を検出し、
前記検出工程で得られた拡散反射光のスペクトル情報に基づき、該細管内の液体試料の分析を行うことを特徴とする液体試料測定方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の液体試料測定方法において、
前記試料導入工程では、円筒状の前記細管内に前記液体試料を導入し、
前記セット工程は、前記ホルダの固定部位である固定溝に、前記円筒状の細管を固定することを特徴とする液体試料測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−51747(P2008−51747A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230496(P2006−230496)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】