液体遮断弁装置
【課題】 簡易な形状によって液体の飛散を抑制し、かつ外部への液体の流出を確実に防止する。
【解決手段】 開口部17を有する仕切板13を隔てて上部室21と下部室11とに分けられたハウジング1と、下部室11内に摺動自在に収容されたフロート40とを備える。上部室21には、外部と連通する排気ポート22が周壁に開口しており、フロート40の上端部には、当該フロート40の上昇に伴い、仕切板13の開口部17を閉塞する可動弁50が設けてある。上部室21内において、開口部17の周縁から上方向に円筒状の隔壁18が延出して設けてあり、この隔壁18が排気ポート22の開口と対向しており、更に当該排気ポート22の開口と対向しない部位に切欠部18aが形成してある。
【解決手段】 開口部17を有する仕切板13を隔てて上部室21と下部室11とに分けられたハウジング1と、下部室11内に摺動自在に収容されたフロート40とを備える。上部室21には、外部と連通する排気ポート22が周壁に開口しており、フロート40の上端部には、当該フロート40の上昇に伴い、仕切板13の開口部17を閉塞する可動弁50が設けてある。上部室21内において、開口部17の周縁から上方向に円筒状の隔壁18が延出して設けてあり、この隔壁18が排気ポート22の開口と対向しており、更に当該排気ポート22の開口と対向しない部位に切欠部18aが形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密封容器内の上部に外部と連通する機能を有して設置され、供給される液体にともなって容器内の気体を排気する液体遮断弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体遮断弁装置は、例えば自動車などの燃料タンク内上部に配置され、外部のキャニスタと連通するように構成される。この液体遮断弁装置は、燃料タンク内への燃料の供給にともなって蒸発ガスをキャニスタに排気する。そして、燃料の供給が所定の水準位に達すると、キャニスタとの連通を自動的に遮断する。これにより、液体遮断弁装置は燃料量を検知するとともに燃料の流出を防止することができる。この種の装置としては、特許文献1に開示された燃料遮断弁などがあげられる。
【0003】
ここで、特許文献1の燃料遮断弁について簡単に説明すると、燃料遮断弁は、弁室を有したケーシングと、フロート及びシート部材を有する弁体機構と、スプリングとを備え、燃料タンクの燃料液位に応じてフロートを昇降させることによりキャニスタへの接続通路を開閉する構成となっている。
【0004】
燃料タンクに燃料が供給されると、燃料タンク内の燃料液位の上昇につれて溜まっていた燃料蒸気をケーシングの接続通路を通じてキャニスタ側へ逃がすことができる。さらに、燃料が所定の燃料液位に達すると、弁室に燃料が流入し、これによりフロートが上昇して接続通路が閉じられる。このような構成によって、燃料タンクからの燃料蒸気を逃すとともに燃料が燃料タンク外へ流出することを防止している。
【0005】
さて、液体遮断弁装置は、フロートが接続通路を閉じる際に、急激な密閉によって燃料の飛沫が接続通路の内側に吹き込むことがある。これを防止するために、特許文献1の装置では、第1の接続通路及び第2の接続通路を設け、燃料液位の上昇に応じてシート部材が段階的に接続通路を閉じる構成となっている。しかし、このような構成によって閉塞時における燃料の飛散を防止できたとしても、振動等によって燃料タンクが揺動した場合には、シート部材と接続通路との間にわずかな隙間が生じ、燃料の飛沫が接続通路の内側に吹き込むおそれがあった。
【0006】
また、以上のような燃料の飛沫の吹き込みを防止するため、特許文献2の止め弁では燃料飛沫流出防止板を設けた構成としてある。燃料飛沫はこの燃料飛沫流出防止板に衝突することで流出が抑制される。しかし、特許文献2の止め弁では、燃料の飛沫が燃料飛沫流出防止板を越えて流出した場合、流出した燃料を回収することができず時間とともに燃料タンク外に流出することになっていた。
【0007】
さらに、特許文献3の液体遮断弁装置では、特許文献2のような筒部を設けるとともに、流出した燃料を回収するための第2開口部が備えられている。しかし、特許文献3の液体遮断弁装置は、フロートの他にも第2開口部を閉じる遮断弁を設ける必要があるなど構造が複雑になっていた。
【特許文献1】特開2005−297787号公報
【特許文献2】特開平8−159318号公報
【特許文献3】特開2003−185046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡易な形状によって液体の飛散を抑制し、かつ外部への液体の流出を確実に防止することができる液体遮断弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体を収容する密封容器内の上部空間に設けられ、外部との間で気体を流出入させるとともに、前記密封容器からの液体の漏出を遮断する液体遮断弁装置であって、
開口部を有する仕切板を隔てて上部室と下部室とに分けられたハウジングと、前記下部室内に摺動自在に収容され前記密封容器内の液体から浮力を受けて上昇するフロートとを備え、
前記上部室には、前記密封容器の外部と連通する排気ポートが周壁に開口しており、
前記フロートの上端部には、当該フロートの上昇に伴い、前記仕切板の開口部を閉塞する弁手段が設けてあり、
且つ、前記上部室内において前記開口部の周縁から上方向に円筒状の隔壁を延出して設け、この隔壁が前記排気ポートの開口と対向しており、更に当該排気ポートの開口と対向しない部位に、少なくとも前記開口部の周縁に接する切欠部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明を前提として、前記上部室が、前記仕切板の上面により床面が形成されており、当該床面は、前記上部室内に侵入した液体が前記切欠部を介して前記開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2を前提として、前記上部室に、前記仕切板の開口部が前記弁手段によって閉塞されているとき、前記密封容器内の気体を取り込み前記排気ポートへ導く気体導入ポートが周壁に開口しており、
前記切欠部は、前記気体導入ポートの開口にも対向しない部位に形成してあることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項4の発明は、請求項1乃至3を前提として、前記排気ポートの開口は、前記上部室の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてあることを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明によれば、仕切板の開口部から上部室内に設けた排気ポートへ液体が直接入り込む現象を、開口部周縁に設けた円筒状の隔壁により確実に防止できる。また、仮に仕切板の開口部から上部室内に液体が入り込んだ場合でも、隔壁に形成した切欠部を通して開口部へ速やかに液体を導くことができる。
【0014】
ここで、請求項2の発明のごとく、上部室の床面が切欠部を介して開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていれば、液体が移動しやすくなり、より速やかに開口部へ液体を導くことができる。
【0015】
また、請求項3の発明のごとく、切欠部を気体導入ポートの開口に対向しない部位に形成すれば、円筒状の隔壁が気体導入ポートの開口に対向することになる。よって、気体導入ポートから液体が進入してきても、当該液体が排気ポートへ直接入り込むことを、隔壁により確実に防止できる。
【0016】
さらに、請求項4の発明によれば、例えば、液体遮断弁装置が傾いた場合に、上部室内の液体は内周面に沿って溜まるため、当該内周面よりも突き出した排気ポートの開口から当該液体が漏れ出すことを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な形状によって液体の飛散を抑制し、かつ外部への液体の流出を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図16は、本発明の実施形態に係る液体遮断弁装置の構成を示す図である。また、図1は、液体遮断弁装置の全体構成を示す斜視図であり、図2は、液体遮断弁装置を燃料タンクに設置した状態を示す側面断面図である。
図1に示すように、液体遮断弁装置は円筒状に樹脂成形されたハウジング1によって外殻が形成されている。この液体遮断弁装置は、図2に示すように、自動車等の液体燃料(以下、単に燃料と称する)を収容する燃料タンク2(密封容器)内の上部空間に設けられ、排気用接続通路3を介して外部のキャニスタ4に連通している。燃料タンク2内に燃料を給油する際には、燃料タンク2内に充満する燃料蒸気等の気体(以下、蒸発ガスと称する)を、液体遮断弁装置を通して外部のキャニスタ4に排出する。また、給油燃料が満タンに近づいた際には、液体遮断弁装置内の気体排出経路が閉塞されて、燃料の漏出が遮断される。
【0019】
〔液体遮断弁装置の各部材の構成について〕
図3は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す展開図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。また、図4は、液体遮断弁装置の全体構成を示す断面図であり、(a)は正面断面図、(b)は図3のA−A線断面図、(c)は図3のB−B線断面図である。さらに、図5は、液体遮断弁装置の全体構成を示す分解斜視図、図6は、ハウジング本体とキャップ部材の構成を示す斜視図である。
【0020】
図3乃至図6に示すように、液体遮断弁装置を外殻を形成しているハウジング1は、ハウジング本体10の一端部(上端部)に蓋頭部材20を装着するとともに、ハウジング本体10の他端部(下端部)にキャップ部材30を装着した構成となっている。ハウジング1の内部は、蓋頭部材20の内側に相当する部分に上部室21が、ハウジング本体10の内側に相当する部分に下部室11がそれぞれ形成されている(図4(a)参照)。ハウジング1の下部室11にはフロート40及びスプリング41が収容される(図5参照)。
【0021】
ハウジング本体10は、図6に示すように、筒状に形成された外筒12と、この外筒12の上端面を覆う仕切板13と、外筒12の内部に軸方向に延在する内壁14と、を備えた構成である。上述した下部室11は、外筒12の内部空間によって形成されている。外筒12の側周面には、対向する位置にそれぞれ第1の通気孔15が穿設してある。さらに、第1の通気孔15の下方位置には、第2の通気孔16が穿設してある。これら各通気孔15、16は、燃料タンク2内の蒸発ガス及び燃料を、外筒12の内部空間に流出入させるためのものである。
【0022】
ハウジング1の上部室21と下部室11とは、仕切板13によって分断されている(図4(a)参照)。仕切板13の中央部には、開口部17が設けられている。この開口部17によって、ハウジング1の上部室21と下部室11とが連通される構成である。仕切板13の上面側には、図6に示すように、開口部17の周縁から上方向に円筒状の隔壁18が延出して形成してある。この隔壁18には、切欠部18aが形成されている。切欠部18aは、隔壁18の上端から開口部17の周縁に接するまでを軸方向に切除するように形成されている。
【0023】
また、仕切板13は、図5に示すように、外周縁が外筒12よりも外側に延設されており、さらに仕切板13の上面には、外周縁から一定の距離内側に入った位置に、環状凸部13aが突設されている。この環状凸部13aは、後述する蓋頭部材20と仕切板13を溶着する際に出るバリを防ぐものである。さらに、仕切板13の開口部17は、下面側(下部室側)の開口端周縁から下方に突き出す凸部17aが形成されている。
【0024】
図6に示すように、ハウジング本体10の内壁14は、下部室11において、仕切板13の底面から下方向に略垂下した構成である。この内壁14は、外筒12の内側に一定の隙間をあけて同芯円状に設けられる。内壁14は、相互に対向する位置にそれぞれ設けられている。これら一対の内壁14は、図4(c)に示すように、円弧状に湾曲した内面がフロート案内支持面14aを形成しており、下部室11内に収容されるフロート40を摺動自在に案内支持する機能を有している。これら内壁14の内周面には軸方向に延在する複数本のリブ14b(本実施形態では計6本)が形成してある。
【0025】
一対の内壁14は、図6に示すように、外筒12に穿設した第1の通気孔15と対向する位置に配置されている。両内壁14の幅は、第1の通気孔15の開口幅よりも大きい。よって、第1の通気孔15が開口する内側には、全領域にわたり内壁14が配置されている。
ここで、内壁14の外周面と外筒12の内周面との間は、軸方向に延在する連結壁19を介して連結されている。そして、この連結壁19は、第1の通気孔15の中間部を軸方向に延びており、この連結壁19によって第1の通気孔15の開口が左右に分断されている。よって、燃料タンク2内の蒸発ガスは、連結壁19の左右方向に分かれて第1の通気孔15から外筒12の内部に流入する。このように分かれて流入した蒸発ガスは、内壁14の左右両端から回り込むようにして、ハウジング1の下部室11内に流入していく。
【0026】
ハウジング1の蓋頭部材20は、カップ状に樹脂成形され、下端の開口面がハウジング本体10の仕切板13の上面に溶着固定される。蓋頭部材20の内部空間は、上部室21を形成する。蓋頭部材20には、図2に示す排気用接続通路3を介して燃料タンク2の外部と連通する排気ポート22と、気体導入用接続通路5を介して燃料タンク2内の蒸発ガスを取り込み排気ポート22へ導く気体導入ポート23とが、それぞれ外周壁に設けてある。
【0027】
ここで、燃料タンク2内に設けられた各装置や部品の機能について説明すると、液体遮断弁装置は、燃料が満タンの際に、後述するように仕切板13の開口部17を閉塞して燃料の漏出を防止している。しかし、開口部17を閉塞した状態では、蒸発ガスの排出も遮断され、燃料タンク2内の内圧が上昇することになる。これを防止するため、満タン時でも蒸発ガスが排出可能となるように、燃料タンク2内には、カット弁6及びチェック弁7が設けられている(図2参照)。カット弁6は、燃料タンク2内の蒸発ガスを取り込む機能を有しており、チェック弁7は、カット弁6から受ける圧力が一定値以上に上昇したとき、カット弁6から送られてくる蒸発ガスを液体遮断弁装置へ導入する安全弁の機能を有している。
【0028】
蓋頭部材20の気体導入ポート23は、上記カット弁6及びチェック弁7から送られてくる蒸発ガスを、上部室21内に受け入れる機能を有している。なお、満タン時の蒸発ガスの排出は、液体遮断弁装置を介さずに直接外部のキャニスタ4に排気してもよい。この場合、液体遮断弁装置に気体導入ポート23を設ける必要はなくなる。
【0029】
また、蓋頭部材20の内周面には、外周壁から連通した排気ポート22及び気体導入ポート23の開口22a、23aが穿設されている(図4(a)参照)。排気ポートの開口22aは、上部室21の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてある。一方、気体導入ポートの開口23aは、排気ポートの開口22aと対向しない位置へ周方向にずらして設けてある。
【0030】
ハウジング1のキャップ部材30は、有底筒状に樹脂成形され、ハウジング本体10の組み付け時において、外筒12の下端開口面を閉塞する構成である。このキャップ部材30の底壁には、図6に示すように、ハウジング本体10の内壁14の内径よりも外側に第1の孔群31が穿設され、内壁14の内径よりも内側に第2の孔群32が穿設されている。第1の孔群31は、比較的大きな径をした透孔の集合であり、一方、第2の孔群32は、第1の孔群31よりも小さな透孔の集合である。第1の孔群31を構成する透孔の開口面積の総和は、第2の孔群32を構成する透孔の開口面積の総和よりも大きい。したがって、特に蒸発ガスは第1の孔群31からハウジング1の下部室11内に流入し易くなっている。
【0031】
また、キャップ部材30の周面には、外筒12の周壁に設けられた第2の通気孔16を開口させる通気孔用切開部33が設けられている(図3(a)、図6参照)。さらに、キャップ部材30の内部底面には、フロート40及びスプリング41を載置する弁座34が設けられている(図4(a)参照)。
【0032】
フロート40は、ハウジング1の下部室11内に摺動自在に収容され、燃料タンク2内の燃料から浮力を受けて上昇する機能を備えている(図4(a)参照)。このフロート40の上端部には、フロート40の上昇に伴い、仕切板13の開口部17を閉塞する可動弁50(弁手段)が設けてある。
【0033】
フロート40は、上端側が閉塞された略円筒状に樹脂成形された部材である。フロート40の内部空間には、ばね座42が形成してあり、フロート40を下部室11に収容する際には内部空間にスプリング41が挿入される。このフロート40は、供給される燃料による浮力と、スプリング41による弾性力を得て適宜に上昇するように任意の重さで構成されている。また、フロート40の外径は、ハウジング本体10内に形成した内壁14の内径よりもわずかに小さい寸法に設定してある。
【0034】
図7は、本実施形態に係る液体遮断弁装置のフロートを示す分解斜視図である。
同図に示すように、フロート40の外周面には、4本のリブ43が軸方向に設けてあり、さらに、下部室11内への収容時に位置決め基準となる平坦面44が一対設けられている。フロート40の上端部には、所定の内径をもって軸方向に延出するガイド壁45と、ガイド壁45内の上端面中央部に凸部46と、が形成されている。本実施形態のフロート40の凸部46は頂部が円弧面に形成してある。また、フロート40の上端部には、可動弁50の他にも、付勢部材47、可動弁保持キャップ48が備えられる。
【0035】
付勢部材47は、フロート40の上端部に設けられた凸部46の周囲に配置され、ガイド壁45の内側に収容される可動弁50を付勢する。可動弁保持キャップ48は、中心部が開口した環状の樹脂成形部材である。この可動弁保持キャップ48は、可動弁50がガイド壁45の内側に収容された状態において、フロート40のガイド壁45の外周面に装着される。
【0036】
弁手段となる可動弁50は、可動弁本体51、弁部材52とを含む構成である。可動弁本体51は、フロート40の凸部46に当接する凹部53が下面に形成される第1の床板54と、この第1の床板54の上方に所定隙間を介して設けられる第2の床板55とを有している(図7参照)。可動弁50の凹部53はフロート40の凸部46に対して曲率の大きい円弧面に形成してある。また、可動弁本体51の第2の床板55には、上下両面を貫通する装着孔56が形成してある。さらに、第2の床板55の上面には、装着孔56の孔縁から第2の床板55の外周縁まで径方向に延びる複数の溝部55a(本実施形態では計6本)が放射状に形成されている。
【0037】
図8は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の可動弁を拡大して示す図であり、(a)は弁部材の側面図、(b)は弁部材の側面断面図、(c)は可動弁の側面断面図、(d)は可動弁の斜視図である。
図8(a)、(b)に示すように、可動弁50の弁部材42は、弾性材料で成形されており、可動弁本体51の第2の床板55上面に装着される。この弁部材52は上面が平坦面となった板状の弾性弁部57と、この弾性弁部57の下面中央部分に形成された装着用凸部58と備えた構成である。
【0038】
次に、本実施形態に係る液体遮断弁装置の構成を、組み立て手順に沿って更に詳細に説明する。
図7、図8(c)に示すように、可動弁50は、弁部材52の装着用凸部58を可動弁本体51の装着孔56に上面から押し込んで固定させる構成である。このとき、可動弁50は、この装着孔56の下面から押し出された装着用凸部58の一部分が第1、第2の床板54、55間に形成された隙間に配置されることになる。
【0039】
以上のように組み付けられた可動弁50は、フロート40の上端部に形成されたガイド壁45の内側に付勢部材47とともに収容される。この付勢部材47によって可動弁50は、上方向に常に付勢した状態となる。さらに、フロート40の上端部には上部から可動弁保持キャップ48が嵌め込まれる。この可動弁保持キャップ48によって、可動弁50は上下方向の移動範囲が制限され、フロート40上端部から脱落することが防止される。
【0040】
また、可動弁50の組み込み状態では、第1の床板54の凹部53とフロート40の凸部46が当接して、可動弁50の揺動支点を構成している。このため、可動弁50は、移動許容範囲内において、フロート40の中心軸と直交する径方向に移動自在である。また、可動弁50の移動許容範囲はフロート40のガイド壁45の内周面よって形成され、このガイド壁45に可動弁50の周面が当接することで規制される。
なお、本実施形態ではフロート40の上端に凸部46を設け、可動弁本体51の底面に凹部53を設けているが、この凹凸部の設置箇所が逆になってもよいことは勿論である。
【0041】
図9は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図3のC−C線断面図であり、(c)は図4のD部分の拡大図である。
図4、図9に示すように、ハウジング1の上部は、ハウジング本体10の仕切板13の上面に、蓋頭部材20の開口面が溶着することで上部室21が形成される。この上部室21は、仕切板13上に設けられた環状凸部13aと、蓋頭部材20の内周面によって形成される。また、図9(c)に示すように、本実施形態のハウジング本体10と蓋頭部材20の溶着は振動溶着によって強固に固定される。ハウジング本体10には、蓋頭部材20との振動溶着位置の両側にバリ溜り13bが設けてあり、振動溶着によって発生するおそれのあるバリの流入を防止している。これにより、液体遮断弁装置の上部室21内や外観を損なうことなく蓋頭部材20が溶着される。
【0042】
図9(a)、(b)に示すように、ハウジング本体10と蓋頭部材20の溶着位置は、円筒状の隔壁18に設けられた切欠部18aの位置関係によって決定される。すなわち、上部室21内において、切欠部18aは、排気ポートの開口22aと対向しない逆側にくるように調整してある。また、この切欠部18aの位置は、既述した気体導入ポートの開口23aとも対向しない位置になる。これにより、気体導入ポートから液体が送られてきても上部室内において防止され、液体を排気ポートに流出させることがない。
なお、排気ポート及び気体導入ポートの開口22a、23aと切欠部18aの位置関係は、本実施形態に限定されないことはもちろんであり、例えば、仕切板13の開口部17を中心として、排気ポートの開口22a、気体導入ポートの開口23a、切欠部18aをそれぞれ120°間隔に位置決めしてもよい。
【0043】
また、図4、図5に示すように、液体遮断弁装置は、可動弁50が組み付けられたフロート40とスプリング41がハウジング1の下部室11に収容され、キャップ部材30によって閉塞される。フロート40は、ハウジング本体10の内壁14のフロート案内支持面14aに沿って挿入され、側周面に形成された平坦面44が対になった内壁14の間隙に位置するように配置される。このとき、フロート40はキャップ部材30の弁座34に載置してあることになり、キャップ部材30の第2の孔群32がちょうどフロート40の真下に位置している。また、スプリング41はキャップ部材30の弁座34とフロート40内部のばね座42の間に弾力的に介在している。
【0044】
また、フロート40の下部室11収容時において、フロート40と内壁14との間には一定のクリアランスCが形成されている。このクリアランスCには、フロート40の側周面に設けられたリブ43、または内壁14側に設けられたリブ14bが介在することになり、フロート40の揺動時等に互いの対向する周面に対して線接触される構成である。これにより、フロート40の摺動時において、フロート40自体の回転を防止するとともに、内壁14との接触摩擦が抑えられることになる。
【0045】
〔液体遮断弁装置の動作について〕
図10は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の燃料供給時の動作を示す側面断面図であり、(a)は燃料が液体遮断弁装置に達する前の状態、(b)は燃料が液体遮断弁に達した初期状態、(c)は燃料が満タンになった状態である。
図10(a)に示すように、燃料タンク2内の上部に設置された液体遮断弁装置は、燃料が装置に達していない場合、下部室11内のフロート40がキャップ部材30の弁座34に載置された状態にある。このとき、上部室21と下部室11を連通する開口部17は開放されており、蒸発ガスが流入自在な状態となっている。したがって、燃料タンク2内に燃料が給油されると、タンク内の内圧が上昇して蒸発ガスを下部室11、上部室21の順に導き外部に排出することができる。
【0046】
図10(b)及び図6に示すように、給油された燃料は、燃料遮断弁装置に達すると、キャップ部材30の第1の孔群31及び第2の孔群32から下部室11内に流入する。既述したように、キャップ部材30は第1の孔群31が第2の孔群32よりも開口面積の総和が大きく構成されている。したがって、下部室11に流入する燃料は、第1の孔群31の方が第2の孔群32よりも流入の勢いが強くなる。このため、下部室11内における燃料は、フロート40の周囲から中心に向かう対流を作り出し、フロート40を直下から急激に押し上げることを防止する。これにより、液体遮断弁装置は、下部室11に燃料が流入してもフロート40を安定的に摺動させることができる。
【0047】
さらに、燃料が給油されると、下部室11には外筒12の第2の通気孔16、第1の通気孔15の順に側面からも燃料が流入することになる。それぞれの通気孔15、16は下部室11内の連結壁19によって左右対称となっており、各通気孔15、16から流入した燃料は均等に左右に分かれ、さらに内壁14によって横方向に迂回するように対流する。このため、下部室11に燃料がスムーズに流れ、フロート40に大きな外力がかかることを防止できる。
【0048】
燃料タンク2内の燃料が満タンに近づいた状態では、燃料の浮力やスプリング41の付勢によってフロート40が内壁14上を上昇する。内壁14内では、フロート40と内壁14とがそれぞれのリブ43、14bを介して線接触することで摩擦抵抗が小さくなっており、フロート40を容易に摺動させることができる。さらに、図10(c)に示すように、満タンの状態では、フロート40の上端部にある可動弁50の弁部材52が仕切板13の開口部17に対して当接する。これにより開口部17が閉塞されるので、下部室11から上部室21への蒸発ガスの流入はなくなる。
【0049】
図11は、本実施形態に係る液体遮断弁装置による弁手段の遮断状態を示した拡大側面断面図である。
図11に示すように、フロート40による開口部17の遮断時には、弁部材52の弾性弁部57が弾性的に撓んで密閉状態を形成する。このとき、フロート40上端面の凸部46が可動弁本体51の第1の床板54の凹部53を押圧して、可動弁50をフロート40と開口部17によって狭持した状態となっている。ここで、フロート40の凸部46は可動弁本体51の凹部53よりも円弧面の曲率が小さいため、可動弁50を揺動自在に支持している。また、可動弁本体51内の付勢部材47は、可動弁50の上下の揺動を弾力的に付勢している。可動弁50は、これら凹部53と凸部46の当接や付勢部材47によって、三次元的に揺動自在に支持され、たとえば燃料タンクが傾いた場合なども可動弁50の閉塞状態を保ちやすくなる。
【0050】
可動弁50の揺動は、可動弁本体51の側周面とフロート40のガイド壁45の側周面に形成される隙間によって、その移動許容範囲Sが制限されている。また、フロート40による開口部17の遮断時には、フロート40と内壁14との間に自在に摺動するためのクリアランスCが形成されている。このクリアランスCは、ハウジング1に対しフロート40が径方向へ移動可能な範囲となっている。
【0051】
図12は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の弁手段の遮断状態において、揺動時の動作を示した側面断面図である。
燃料タンク2は、自動車の運転時に路面状態や急ブレーキなどによって大きな振動がかかることがある。このとき、燃料タンク2とともに液体遮断弁装置及び燃料も揺動する。図12に示すように、液体遮断弁装置が揺動した場合、下部室11はハウジング1とフロート40のクリアランスCによってフロート40が内壁14内を左右方向に移動する。従来は、この液体遮断弁装置の揺動によって、弁手段による開口部17の遮断に隙間が生じることが多くあった。このような場合、開口部17と弁手段との隙間から燃料の飛沫が飛散しやすくなり、上部室21に燃料が吹き込む恐れがあった。
【0052】
本実施形態の液体遮断弁では、この燃料の飛散を抑止するために、フロート40と可動弁50を別体とし、かつフロート40と可動弁50の径方向の移動許容範囲SをクリアランスCよりも大きく設定してある(図11参照)。したがって、フロート40がクリアランスCに対して揺動しても、可動弁50の移動許容範囲S内に抑えられるため、可動弁50自体がフロート40と一体的に揺動することがない。これにより可動弁50と開口部17の閉塞状態を維持することができる。
【0053】
また、図8(d)に示すように、可動弁本体51の第2の床板55の上面には溝部55aが形成してあり、弁部材52の弾性弁部57が可動弁本体51の上面に付着されない構成としてある。弾性弁部57の付着が防止されることによって、仮にフロート40と同時に可動弁50が僅かに揺動したとしても、弾性弁部57は開口部17への閉塞状態を維持することができる。
【0054】
さらに、燃料タンク2が揺動した場合、貯油されている燃料に波が発生する。この場合、ハウジング本体10の第1の通気孔15などから燃料の波が入り込むおそれがあるが、ハウジング本体10の内壁14を対向させることで、効果的に波の進入を抑制することができる。
【0055】
図13は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す拡大断面図であり、(a)は弁手段閉塞時、(b)は液体遮断弁装置の傾斜時である。
図13(a)に示すように、フロート40の上昇によって開口部17を閉塞する際や、液体遮断弁装置の揺動などによって、下部室11内の燃料を飛沫として飛散させることがある。本実施形態の液体遮断弁装置では、既述したとおり、上部室21内に円筒状の隔壁18が排気ポートの開口22aに対向して設けられている。よって、開口部17から飛散してきた燃料の飛沫は、円筒状の隔壁18に衝突することになり、排気ポート22への流入が防止される。
また、円筒状の隔壁18を越えて飛散した燃料や、隔壁18の切欠部18aから流入した燃料は、上部室21内の平坦な床面(仕切板13の上面)によって燃料が開口部17側に導かれ、切欠部18aを通過させて燃料を返還させることができる。
なお、本実施形態では仕切板13の上面を平坦に形成したが、これに限定されず、例えば、開口部17が最も低い底部となるようなすり鉢形状に形成してもよい。このように形成すれば、上部室21内に入り込んだ燃料をいっそう円滑に開口部17へ導くことができる。
【0056】
図13(b)に示すように、例えば自動車が坂道などにある場合、液体遮断装置も同時に傾いた状態となる。このとき燃料が液体遮断弁装置の上部室21内に流入していたとしても、排気ポートの開口22aは、上部室21内において排気ポートの開口22が突き出した分だけ燃料を一定量溜めることが可能である。この排気ポートの開口22aの構造により、燃料が排気ポート22から流出することをより確実に防止することができる。また、下部室側の可動弁による開口部の閉塞も、フロートに対し可動弁が揺動支点から追随して傾き、開口部の閉塞を維持することができる。
【0057】
燃料タンク2内の燃料が使用され、燃料の液位が減少すると、上部室21と下部室11の遮断は解除される。一般にガソリンなどの燃料は揮発性が高く蒸発ガスを排気するため、速やかに上部室21と下部室11の遮断が解除されることが好ましい。しかしながら、燃料タンク2内の内圧の影響などによって、弁手段が開口部17の閉塞を維持し続ける恐れがあった。したがって、液体遮断弁装置は、開口部17の閉塞を解除する再開弁圧が低いほうが好ましい。
【0058】
また、燃料の減少によって、下部室11から燃料が燃料タンク2内へ流出する場合、キャップ部材30の第1及び第2の孔群31、32、または外筒12の第1及び第2の通気孔15、16から流出する。燃料の流出は、燃料の流入時とは逆に、中心よりも外側から勢いよく流れ出る対流がつくり出され、フロート40を安定的に下降させることができる。また、キャップ部材30は、ハウジング本体10に対し通気孔用切開部33をずらし、第2の通気孔16を開口させないように取り付けることもできる。これは特に下部室11からの燃料の流出入を緩やかにしたい場合など適用でき、汎用性の広い液体遮断弁装置を提供することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態の液体遮断弁装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。例えば、円筒状の隔壁18に設けられる切欠部18aは、本実施形態では上端部から軸方向に切り欠いた構成としたが、基本的には開口部と接する位置に穿設してあればよく、その形状や大きさは任意に設定してよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る液体遮断弁装置を燃料タンクに設置した状態を示す側面断面図である。
【図3】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す展開図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。
【図4】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す断面図であり、(a)は正面断面図、(b)は図3のA−A線断面図、(c)は図3のB−B線断面図である。
【図5】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【図6】本実施形態に係る液体遮断弁装置のハウジング本体とキャップ部材を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る液体遮断弁装置のフロートを示す分解斜視図である。
【図8】本実施形態に係る液体遮断弁装置の可動弁を拡大して示す図であり、(a)は弁部材の側面図、(b)は弁部材の側面断面図、(c)は可動弁の側面断面図、(d)は可動弁の斜視図である。
【図9】本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図3のC−C線断面図であり、(c)は図4のD部分の拡大図である。
【図10】本実施形態に係る液体遮断弁装置の燃料供給時の動作を示す側面断面図であり、(a)は燃料が液体遮断弁装置に達する前の状態、(b)燃料が液体遮断弁に達した初期状態、(c)は燃料が満タンになった状態である。
【図11】本実施形態に係る液体遮断弁装置による弁手段の遮断状態を示した拡大側面断面図である。
【図12】本実施形態に係る液体遮断弁装置の弁手段の遮断状態において、揺動時の動作を示した拡大側面断面図である。
【図13】本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す拡大断面図であり、(a)は弁手段閉塞時、(b)は液体遮断弁装置の傾斜時である。
【符号の説明】
【0061】
1:ハウジング、2:燃料タンク、3:排気用接続通路、4:キャニスタ、5:気体導入用接続通路、6:カット弁、7:チェック弁、
10:ハウジング本体、11:下部室、12:外筒、13:仕切板、13a:環状凸部、14:内壁、14a:フロート案内支持面、14b:リブ、15:第1の通気孔、16:第2の通気孔、17:開口部、17a:凸部、18:円筒状の隔壁、18a:切欠部、19:連結部、
20:蓋頭部材、21:上部室、22:排気ポート、22a:排気ポートの開口、23:気体導入ポート、23a:気体導入ポートの開口、
30:キャップ部材、31:第1の孔群、32:第2の孔群、33:通気孔用切開部、34:弁座、
40:フロート、41:スプリング、42:ばね座、43:リブ、44:平坦面、45:ガイド壁、46:凸部、47:付勢部材、48:可動弁保持キャップ、
50:可動弁、51:可動弁本体、52:弁部材、53:凹部、54:第1の床板、55:第2の床板、56:装着孔、57:弾性弁部、58:装着用凸部、
C:クリアランス、S:移動用許容範囲
【技術分野】
【0001】
この発明は、密封容器内の上部に外部と連通する機能を有して設置され、供給される液体にともなって容器内の気体を排気する液体遮断弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体遮断弁装置は、例えば自動車などの燃料タンク内上部に配置され、外部のキャニスタと連通するように構成される。この液体遮断弁装置は、燃料タンク内への燃料の供給にともなって蒸発ガスをキャニスタに排気する。そして、燃料の供給が所定の水準位に達すると、キャニスタとの連通を自動的に遮断する。これにより、液体遮断弁装置は燃料量を検知するとともに燃料の流出を防止することができる。この種の装置としては、特許文献1に開示された燃料遮断弁などがあげられる。
【0003】
ここで、特許文献1の燃料遮断弁について簡単に説明すると、燃料遮断弁は、弁室を有したケーシングと、フロート及びシート部材を有する弁体機構と、スプリングとを備え、燃料タンクの燃料液位に応じてフロートを昇降させることによりキャニスタへの接続通路を開閉する構成となっている。
【0004】
燃料タンクに燃料が供給されると、燃料タンク内の燃料液位の上昇につれて溜まっていた燃料蒸気をケーシングの接続通路を通じてキャニスタ側へ逃がすことができる。さらに、燃料が所定の燃料液位に達すると、弁室に燃料が流入し、これによりフロートが上昇して接続通路が閉じられる。このような構成によって、燃料タンクからの燃料蒸気を逃すとともに燃料が燃料タンク外へ流出することを防止している。
【0005】
さて、液体遮断弁装置は、フロートが接続通路を閉じる際に、急激な密閉によって燃料の飛沫が接続通路の内側に吹き込むことがある。これを防止するために、特許文献1の装置では、第1の接続通路及び第2の接続通路を設け、燃料液位の上昇に応じてシート部材が段階的に接続通路を閉じる構成となっている。しかし、このような構成によって閉塞時における燃料の飛散を防止できたとしても、振動等によって燃料タンクが揺動した場合には、シート部材と接続通路との間にわずかな隙間が生じ、燃料の飛沫が接続通路の内側に吹き込むおそれがあった。
【0006】
また、以上のような燃料の飛沫の吹き込みを防止するため、特許文献2の止め弁では燃料飛沫流出防止板を設けた構成としてある。燃料飛沫はこの燃料飛沫流出防止板に衝突することで流出が抑制される。しかし、特許文献2の止め弁では、燃料の飛沫が燃料飛沫流出防止板を越えて流出した場合、流出した燃料を回収することができず時間とともに燃料タンク外に流出することになっていた。
【0007】
さらに、特許文献3の液体遮断弁装置では、特許文献2のような筒部を設けるとともに、流出した燃料を回収するための第2開口部が備えられている。しかし、特許文献3の液体遮断弁装置は、フロートの他にも第2開口部を閉じる遮断弁を設ける必要があるなど構造が複雑になっていた。
【特許文献1】特開2005−297787号公報
【特許文献2】特開平8−159318号公報
【特許文献3】特開2003−185046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡易な形状によって液体の飛散を抑制し、かつ外部への液体の流出を確実に防止することができる液体遮断弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体を収容する密封容器内の上部空間に設けられ、外部との間で気体を流出入させるとともに、前記密封容器からの液体の漏出を遮断する液体遮断弁装置であって、
開口部を有する仕切板を隔てて上部室と下部室とに分けられたハウジングと、前記下部室内に摺動自在に収容され前記密封容器内の液体から浮力を受けて上昇するフロートとを備え、
前記上部室には、前記密封容器の外部と連通する排気ポートが周壁に開口しており、
前記フロートの上端部には、当該フロートの上昇に伴い、前記仕切板の開口部を閉塞する弁手段が設けてあり、
且つ、前記上部室内において前記開口部の周縁から上方向に円筒状の隔壁を延出して設け、この隔壁が前記排気ポートの開口と対向しており、更に当該排気ポートの開口と対向しない部位に、少なくとも前記開口部の周縁に接する切欠部を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明を前提として、前記上部室が、前記仕切板の上面により床面が形成されており、当該床面は、前記上部室内に侵入した液体が前記切欠部を介して前記開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2を前提として、前記上部室に、前記仕切板の開口部が前記弁手段によって閉塞されているとき、前記密封容器内の気体を取り込み前記排気ポートへ導く気体導入ポートが周壁に開口しており、
前記切欠部は、前記気体導入ポートの開口にも対向しない部位に形成してあることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項4の発明は、請求項1乃至3を前提として、前記排気ポートの開口は、前記上部室の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてあることを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明によれば、仕切板の開口部から上部室内に設けた排気ポートへ液体が直接入り込む現象を、開口部周縁に設けた円筒状の隔壁により確実に防止できる。また、仮に仕切板の開口部から上部室内に液体が入り込んだ場合でも、隔壁に形成した切欠部を通して開口部へ速やかに液体を導くことができる。
【0014】
ここで、請求項2の発明のごとく、上部室の床面が切欠部を介して開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていれば、液体が移動しやすくなり、より速やかに開口部へ液体を導くことができる。
【0015】
また、請求項3の発明のごとく、切欠部を気体導入ポートの開口に対向しない部位に形成すれば、円筒状の隔壁が気体導入ポートの開口に対向することになる。よって、気体導入ポートから液体が進入してきても、当該液体が排気ポートへ直接入り込むことを、隔壁により確実に防止できる。
【0016】
さらに、請求項4の発明によれば、例えば、液体遮断弁装置が傾いた場合に、上部室内の液体は内周面に沿って溜まるため、当該内周面よりも突き出した排気ポートの開口から当該液体が漏れ出すことを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な形状によって液体の飛散を抑制し、かつ外部への液体の流出を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図16は、本発明の実施形態に係る液体遮断弁装置の構成を示す図である。また、図1は、液体遮断弁装置の全体構成を示す斜視図であり、図2は、液体遮断弁装置を燃料タンクに設置した状態を示す側面断面図である。
図1に示すように、液体遮断弁装置は円筒状に樹脂成形されたハウジング1によって外殻が形成されている。この液体遮断弁装置は、図2に示すように、自動車等の液体燃料(以下、単に燃料と称する)を収容する燃料タンク2(密封容器)内の上部空間に設けられ、排気用接続通路3を介して外部のキャニスタ4に連通している。燃料タンク2内に燃料を給油する際には、燃料タンク2内に充満する燃料蒸気等の気体(以下、蒸発ガスと称する)を、液体遮断弁装置を通して外部のキャニスタ4に排出する。また、給油燃料が満タンに近づいた際には、液体遮断弁装置内の気体排出経路が閉塞されて、燃料の漏出が遮断される。
【0019】
〔液体遮断弁装置の各部材の構成について〕
図3は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す展開図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。また、図4は、液体遮断弁装置の全体構成を示す断面図であり、(a)は正面断面図、(b)は図3のA−A線断面図、(c)は図3のB−B線断面図である。さらに、図5は、液体遮断弁装置の全体構成を示す分解斜視図、図6は、ハウジング本体とキャップ部材の構成を示す斜視図である。
【0020】
図3乃至図6に示すように、液体遮断弁装置を外殻を形成しているハウジング1は、ハウジング本体10の一端部(上端部)に蓋頭部材20を装着するとともに、ハウジング本体10の他端部(下端部)にキャップ部材30を装着した構成となっている。ハウジング1の内部は、蓋頭部材20の内側に相当する部分に上部室21が、ハウジング本体10の内側に相当する部分に下部室11がそれぞれ形成されている(図4(a)参照)。ハウジング1の下部室11にはフロート40及びスプリング41が収容される(図5参照)。
【0021】
ハウジング本体10は、図6に示すように、筒状に形成された外筒12と、この外筒12の上端面を覆う仕切板13と、外筒12の内部に軸方向に延在する内壁14と、を備えた構成である。上述した下部室11は、外筒12の内部空間によって形成されている。外筒12の側周面には、対向する位置にそれぞれ第1の通気孔15が穿設してある。さらに、第1の通気孔15の下方位置には、第2の通気孔16が穿設してある。これら各通気孔15、16は、燃料タンク2内の蒸発ガス及び燃料を、外筒12の内部空間に流出入させるためのものである。
【0022】
ハウジング1の上部室21と下部室11とは、仕切板13によって分断されている(図4(a)参照)。仕切板13の中央部には、開口部17が設けられている。この開口部17によって、ハウジング1の上部室21と下部室11とが連通される構成である。仕切板13の上面側には、図6に示すように、開口部17の周縁から上方向に円筒状の隔壁18が延出して形成してある。この隔壁18には、切欠部18aが形成されている。切欠部18aは、隔壁18の上端から開口部17の周縁に接するまでを軸方向に切除するように形成されている。
【0023】
また、仕切板13は、図5に示すように、外周縁が外筒12よりも外側に延設されており、さらに仕切板13の上面には、外周縁から一定の距離内側に入った位置に、環状凸部13aが突設されている。この環状凸部13aは、後述する蓋頭部材20と仕切板13を溶着する際に出るバリを防ぐものである。さらに、仕切板13の開口部17は、下面側(下部室側)の開口端周縁から下方に突き出す凸部17aが形成されている。
【0024】
図6に示すように、ハウジング本体10の内壁14は、下部室11において、仕切板13の底面から下方向に略垂下した構成である。この内壁14は、外筒12の内側に一定の隙間をあけて同芯円状に設けられる。内壁14は、相互に対向する位置にそれぞれ設けられている。これら一対の内壁14は、図4(c)に示すように、円弧状に湾曲した内面がフロート案内支持面14aを形成しており、下部室11内に収容されるフロート40を摺動自在に案内支持する機能を有している。これら内壁14の内周面には軸方向に延在する複数本のリブ14b(本実施形態では計6本)が形成してある。
【0025】
一対の内壁14は、図6に示すように、外筒12に穿設した第1の通気孔15と対向する位置に配置されている。両内壁14の幅は、第1の通気孔15の開口幅よりも大きい。よって、第1の通気孔15が開口する内側には、全領域にわたり内壁14が配置されている。
ここで、内壁14の外周面と外筒12の内周面との間は、軸方向に延在する連結壁19を介して連結されている。そして、この連結壁19は、第1の通気孔15の中間部を軸方向に延びており、この連結壁19によって第1の通気孔15の開口が左右に分断されている。よって、燃料タンク2内の蒸発ガスは、連結壁19の左右方向に分かれて第1の通気孔15から外筒12の内部に流入する。このように分かれて流入した蒸発ガスは、内壁14の左右両端から回り込むようにして、ハウジング1の下部室11内に流入していく。
【0026】
ハウジング1の蓋頭部材20は、カップ状に樹脂成形され、下端の開口面がハウジング本体10の仕切板13の上面に溶着固定される。蓋頭部材20の内部空間は、上部室21を形成する。蓋頭部材20には、図2に示す排気用接続通路3を介して燃料タンク2の外部と連通する排気ポート22と、気体導入用接続通路5を介して燃料タンク2内の蒸発ガスを取り込み排気ポート22へ導く気体導入ポート23とが、それぞれ外周壁に設けてある。
【0027】
ここで、燃料タンク2内に設けられた各装置や部品の機能について説明すると、液体遮断弁装置は、燃料が満タンの際に、後述するように仕切板13の開口部17を閉塞して燃料の漏出を防止している。しかし、開口部17を閉塞した状態では、蒸発ガスの排出も遮断され、燃料タンク2内の内圧が上昇することになる。これを防止するため、満タン時でも蒸発ガスが排出可能となるように、燃料タンク2内には、カット弁6及びチェック弁7が設けられている(図2参照)。カット弁6は、燃料タンク2内の蒸発ガスを取り込む機能を有しており、チェック弁7は、カット弁6から受ける圧力が一定値以上に上昇したとき、カット弁6から送られてくる蒸発ガスを液体遮断弁装置へ導入する安全弁の機能を有している。
【0028】
蓋頭部材20の気体導入ポート23は、上記カット弁6及びチェック弁7から送られてくる蒸発ガスを、上部室21内に受け入れる機能を有している。なお、満タン時の蒸発ガスの排出は、液体遮断弁装置を介さずに直接外部のキャニスタ4に排気してもよい。この場合、液体遮断弁装置に気体導入ポート23を設ける必要はなくなる。
【0029】
また、蓋頭部材20の内周面には、外周壁から連通した排気ポート22及び気体導入ポート23の開口22a、23aが穿設されている(図4(a)参照)。排気ポートの開口22aは、上部室21の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてある。一方、気体導入ポートの開口23aは、排気ポートの開口22aと対向しない位置へ周方向にずらして設けてある。
【0030】
ハウジング1のキャップ部材30は、有底筒状に樹脂成形され、ハウジング本体10の組み付け時において、外筒12の下端開口面を閉塞する構成である。このキャップ部材30の底壁には、図6に示すように、ハウジング本体10の内壁14の内径よりも外側に第1の孔群31が穿設され、内壁14の内径よりも内側に第2の孔群32が穿設されている。第1の孔群31は、比較的大きな径をした透孔の集合であり、一方、第2の孔群32は、第1の孔群31よりも小さな透孔の集合である。第1の孔群31を構成する透孔の開口面積の総和は、第2の孔群32を構成する透孔の開口面積の総和よりも大きい。したがって、特に蒸発ガスは第1の孔群31からハウジング1の下部室11内に流入し易くなっている。
【0031】
また、キャップ部材30の周面には、外筒12の周壁に設けられた第2の通気孔16を開口させる通気孔用切開部33が設けられている(図3(a)、図6参照)。さらに、キャップ部材30の内部底面には、フロート40及びスプリング41を載置する弁座34が設けられている(図4(a)参照)。
【0032】
フロート40は、ハウジング1の下部室11内に摺動自在に収容され、燃料タンク2内の燃料から浮力を受けて上昇する機能を備えている(図4(a)参照)。このフロート40の上端部には、フロート40の上昇に伴い、仕切板13の開口部17を閉塞する可動弁50(弁手段)が設けてある。
【0033】
フロート40は、上端側が閉塞された略円筒状に樹脂成形された部材である。フロート40の内部空間には、ばね座42が形成してあり、フロート40を下部室11に収容する際には内部空間にスプリング41が挿入される。このフロート40は、供給される燃料による浮力と、スプリング41による弾性力を得て適宜に上昇するように任意の重さで構成されている。また、フロート40の外径は、ハウジング本体10内に形成した内壁14の内径よりもわずかに小さい寸法に設定してある。
【0034】
図7は、本実施形態に係る液体遮断弁装置のフロートを示す分解斜視図である。
同図に示すように、フロート40の外周面には、4本のリブ43が軸方向に設けてあり、さらに、下部室11内への収容時に位置決め基準となる平坦面44が一対設けられている。フロート40の上端部には、所定の内径をもって軸方向に延出するガイド壁45と、ガイド壁45内の上端面中央部に凸部46と、が形成されている。本実施形態のフロート40の凸部46は頂部が円弧面に形成してある。また、フロート40の上端部には、可動弁50の他にも、付勢部材47、可動弁保持キャップ48が備えられる。
【0035】
付勢部材47は、フロート40の上端部に設けられた凸部46の周囲に配置され、ガイド壁45の内側に収容される可動弁50を付勢する。可動弁保持キャップ48は、中心部が開口した環状の樹脂成形部材である。この可動弁保持キャップ48は、可動弁50がガイド壁45の内側に収容された状態において、フロート40のガイド壁45の外周面に装着される。
【0036】
弁手段となる可動弁50は、可動弁本体51、弁部材52とを含む構成である。可動弁本体51は、フロート40の凸部46に当接する凹部53が下面に形成される第1の床板54と、この第1の床板54の上方に所定隙間を介して設けられる第2の床板55とを有している(図7参照)。可動弁50の凹部53はフロート40の凸部46に対して曲率の大きい円弧面に形成してある。また、可動弁本体51の第2の床板55には、上下両面を貫通する装着孔56が形成してある。さらに、第2の床板55の上面には、装着孔56の孔縁から第2の床板55の外周縁まで径方向に延びる複数の溝部55a(本実施形態では計6本)が放射状に形成されている。
【0037】
図8は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の可動弁を拡大して示す図であり、(a)は弁部材の側面図、(b)は弁部材の側面断面図、(c)は可動弁の側面断面図、(d)は可動弁の斜視図である。
図8(a)、(b)に示すように、可動弁50の弁部材42は、弾性材料で成形されており、可動弁本体51の第2の床板55上面に装着される。この弁部材52は上面が平坦面となった板状の弾性弁部57と、この弾性弁部57の下面中央部分に形成された装着用凸部58と備えた構成である。
【0038】
次に、本実施形態に係る液体遮断弁装置の構成を、組み立て手順に沿って更に詳細に説明する。
図7、図8(c)に示すように、可動弁50は、弁部材52の装着用凸部58を可動弁本体51の装着孔56に上面から押し込んで固定させる構成である。このとき、可動弁50は、この装着孔56の下面から押し出された装着用凸部58の一部分が第1、第2の床板54、55間に形成された隙間に配置されることになる。
【0039】
以上のように組み付けられた可動弁50は、フロート40の上端部に形成されたガイド壁45の内側に付勢部材47とともに収容される。この付勢部材47によって可動弁50は、上方向に常に付勢した状態となる。さらに、フロート40の上端部には上部から可動弁保持キャップ48が嵌め込まれる。この可動弁保持キャップ48によって、可動弁50は上下方向の移動範囲が制限され、フロート40上端部から脱落することが防止される。
【0040】
また、可動弁50の組み込み状態では、第1の床板54の凹部53とフロート40の凸部46が当接して、可動弁50の揺動支点を構成している。このため、可動弁50は、移動許容範囲内において、フロート40の中心軸と直交する径方向に移動自在である。また、可動弁50の移動許容範囲はフロート40のガイド壁45の内周面よって形成され、このガイド壁45に可動弁50の周面が当接することで規制される。
なお、本実施形態ではフロート40の上端に凸部46を設け、可動弁本体51の底面に凹部53を設けているが、この凹凸部の設置箇所が逆になってもよいことは勿論である。
【0041】
図9は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図3のC−C線断面図であり、(c)は図4のD部分の拡大図である。
図4、図9に示すように、ハウジング1の上部は、ハウジング本体10の仕切板13の上面に、蓋頭部材20の開口面が溶着することで上部室21が形成される。この上部室21は、仕切板13上に設けられた環状凸部13aと、蓋頭部材20の内周面によって形成される。また、図9(c)に示すように、本実施形態のハウジング本体10と蓋頭部材20の溶着は振動溶着によって強固に固定される。ハウジング本体10には、蓋頭部材20との振動溶着位置の両側にバリ溜り13bが設けてあり、振動溶着によって発生するおそれのあるバリの流入を防止している。これにより、液体遮断弁装置の上部室21内や外観を損なうことなく蓋頭部材20が溶着される。
【0042】
図9(a)、(b)に示すように、ハウジング本体10と蓋頭部材20の溶着位置は、円筒状の隔壁18に設けられた切欠部18aの位置関係によって決定される。すなわち、上部室21内において、切欠部18aは、排気ポートの開口22aと対向しない逆側にくるように調整してある。また、この切欠部18aの位置は、既述した気体導入ポートの開口23aとも対向しない位置になる。これにより、気体導入ポートから液体が送られてきても上部室内において防止され、液体を排気ポートに流出させることがない。
なお、排気ポート及び気体導入ポートの開口22a、23aと切欠部18aの位置関係は、本実施形態に限定されないことはもちろんであり、例えば、仕切板13の開口部17を中心として、排気ポートの開口22a、気体導入ポートの開口23a、切欠部18aをそれぞれ120°間隔に位置決めしてもよい。
【0043】
また、図4、図5に示すように、液体遮断弁装置は、可動弁50が組み付けられたフロート40とスプリング41がハウジング1の下部室11に収容され、キャップ部材30によって閉塞される。フロート40は、ハウジング本体10の内壁14のフロート案内支持面14aに沿って挿入され、側周面に形成された平坦面44が対になった内壁14の間隙に位置するように配置される。このとき、フロート40はキャップ部材30の弁座34に載置してあることになり、キャップ部材30の第2の孔群32がちょうどフロート40の真下に位置している。また、スプリング41はキャップ部材30の弁座34とフロート40内部のばね座42の間に弾力的に介在している。
【0044】
また、フロート40の下部室11収容時において、フロート40と内壁14との間には一定のクリアランスCが形成されている。このクリアランスCには、フロート40の側周面に設けられたリブ43、または内壁14側に設けられたリブ14bが介在することになり、フロート40の揺動時等に互いの対向する周面に対して線接触される構成である。これにより、フロート40の摺動時において、フロート40自体の回転を防止するとともに、内壁14との接触摩擦が抑えられることになる。
【0045】
〔液体遮断弁装置の動作について〕
図10は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の燃料供給時の動作を示す側面断面図であり、(a)は燃料が液体遮断弁装置に達する前の状態、(b)は燃料が液体遮断弁に達した初期状態、(c)は燃料が満タンになった状態である。
図10(a)に示すように、燃料タンク2内の上部に設置された液体遮断弁装置は、燃料が装置に達していない場合、下部室11内のフロート40がキャップ部材30の弁座34に載置された状態にある。このとき、上部室21と下部室11を連通する開口部17は開放されており、蒸発ガスが流入自在な状態となっている。したがって、燃料タンク2内に燃料が給油されると、タンク内の内圧が上昇して蒸発ガスを下部室11、上部室21の順に導き外部に排出することができる。
【0046】
図10(b)及び図6に示すように、給油された燃料は、燃料遮断弁装置に達すると、キャップ部材30の第1の孔群31及び第2の孔群32から下部室11内に流入する。既述したように、キャップ部材30は第1の孔群31が第2の孔群32よりも開口面積の総和が大きく構成されている。したがって、下部室11に流入する燃料は、第1の孔群31の方が第2の孔群32よりも流入の勢いが強くなる。このため、下部室11内における燃料は、フロート40の周囲から中心に向かう対流を作り出し、フロート40を直下から急激に押し上げることを防止する。これにより、液体遮断弁装置は、下部室11に燃料が流入してもフロート40を安定的に摺動させることができる。
【0047】
さらに、燃料が給油されると、下部室11には外筒12の第2の通気孔16、第1の通気孔15の順に側面からも燃料が流入することになる。それぞれの通気孔15、16は下部室11内の連結壁19によって左右対称となっており、各通気孔15、16から流入した燃料は均等に左右に分かれ、さらに内壁14によって横方向に迂回するように対流する。このため、下部室11に燃料がスムーズに流れ、フロート40に大きな外力がかかることを防止できる。
【0048】
燃料タンク2内の燃料が満タンに近づいた状態では、燃料の浮力やスプリング41の付勢によってフロート40が内壁14上を上昇する。内壁14内では、フロート40と内壁14とがそれぞれのリブ43、14bを介して線接触することで摩擦抵抗が小さくなっており、フロート40を容易に摺動させることができる。さらに、図10(c)に示すように、満タンの状態では、フロート40の上端部にある可動弁50の弁部材52が仕切板13の開口部17に対して当接する。これにより開口部17が閉塞されるので、下部室11から上部室21への蒸発ガスの流入はなくなる。
【0049】
図11は、本実施形態に係る液体遮断弁装置による弁手段の遮断状態を示した拡大側面断面図である。
図11に示すように、フロート40による開口部17の遮断時には、弁部材52の弾性弁部57が弾性的に撓んで密閉状態を形成する。このとき、フロート40上端面の凸部46が可動弁本体51の第1の床板54の凹部53を押圧して、可動弁50をフロート40と開口部17によって狭持した状態となっている。ここで、フロート40の凸部46は可動弁本体51の凹部53よりも円弧面の曲率が小さいため、可動弁50を揺動自在に支持している。また、可動弁本体51内の付勢部材47は、可動弁50の上下の揺動を弾力的に付勢している。可動弁50は、これら凹部53と凸部46の当接や付勢部材47によって、三次元的に揺動自在に支持され、たとえば燃料タンクが傾いた場合なども可動弁50の閉塞状態を保ちやすくなる。
【0050】
可動弁50の揺動は、可動弁本体51の側周面とフロート40のガイド壁45の側周面に形成される隙間によって、その移動許容範囲Sが制限されている。また、フロート40による開口部17の遮断時には、フロート40と内壁14との間に自在に摺動するためのクリアランスCが形成されている。このクリアランスCは、ハウジング1に対しフロート40が径方向へ移動可能な範囲となっている。
【0051】
図12は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の弁手段の遮断状態において、揺動時の動作を示した側面断面図である。
燃料タンク2は、自動車の運転時に路面状態や急ブレーキなどによって大きな振動がかかることがある。このとき、燃料タンク2とともに液体遮断弁装置及び燃料も揺動する。図12に示すように、液体遮断弁装置が揺動した場合、下部室11はハウジング1とフロート40のクリアランスCによってフロート40が内壁14内を左右方向に移動する。従来は、この液体遮断弁装置の揺動によって、弁手段による開口部17の遮断に隙間が生じることが多くあった。このような場合、開口部17と弁手段との隙間から燃料の飛沫が飛散しやすくなり、上部室21に燃料が吹き込む恐れがあった。
【0052】
本実施形態の液体遮断弁では、この燃料の飛散を抑止するために、フロート40と可動弁50を別体とし、かつフロート40と可動弁50の径方向の移動許容範囲SをクリアランスCよりも大きく設定してある(図11参照)。したがって、フロート40がクリアランスCに対して揺動しても、可動弁50の移動許容範囲S内に抑えられるため、可動弁50自体がフロート40と一体的に揺動することがない。これにより可動弁50と開口部17の閉塞状態を維持することができる。
【0053】
また、図8(d)に示すように、可動弁本体51の第2の床板55の上面には溝部55aが形成してあり、弁部材52の弾性弁部57が可動弁本体51の上面に付着されない構成としてある。弾性弁部57の付着が防止されることによって、仮にフロート40と同時に可動弁50が僅かに揺動したとしても、弾性弁部57は開口部17への閉塞状態を維持することができる。
【0054】
さらに、燃料タンク2が揺動した場合、貯油されている燃料に波が発生する。この場合、ハウジング本体10の第1の通気孔15などから燃料の波が入り込むおそれがあるが、ハウジング本体10の内壁14を対向させることで、効果的に波の進入を抑制することができる。
【0055】
図13は、本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す拡大断面図であり、(a)は弁手段閉塞時、(b)は液体遮断弁装置の傾斜時である。
図13(a)に示すように、フロート40の上昇によって開口部17を閉塞する際や、液体遮断弁装置の揺動などによって、下部室11内の燃料を飛沫として飛散させることがある。本実施形態の液体遮断弁装置では、既述したとおり、上部室21内に円筒状の隔壁18が排気ポートの開口22aに対向して設けられている。よって、開口部17から飛散してきた燃料の飛沫は、円筒状の隔壁18に衝突することになり、排気ポート22への流入が防止される。
また、円筒状の隔壁18を越えて飛散した燃料や、隔壁18の切欠部18aから流入した燃料は、上部室21内の平坦な床面(仕切板13の上面)によって燃料が開口部17側に導かれ、切欠部18aを通過させて燃料を返還させることができる。
なお、本実施形態では仕切板13の上面を平坦に形成したが、これに限定されず、例えば、開口部17が最も低い底部となるようなすり鉢形状に形成してもよい。このように形成すれば、上部室21内に入り込んだ燃料をいっそう円滑に開口部17へ導くことができる。
【0056】
図13(b)に示すように、例えば自動車が坂道などにある場合、液体遮断装置も同時に傾いた状態となる。このとき燃料が液体遮断弁装置の上部室21内に流入していたとしても、排気ポートの開口22aは、上部室21内において排気ポートの開口22が突き出した分だけ燃料を一定量溜めることが可能である。この排気ポートの開口22aの構造により、燃料が排気ポート22から流出することをより確実に防止することができる。また、下部室側の可動弁による開口部の閉塞も、フロートに対し可動弁が揺動支点から追随して傾き、開口部の閉塞を維持することができる。
【0057】
燃料タンク2内の燃料が使用され、燃料の液位が減少すると、上部室21と下部室11の遮断は解除される。一般にガソリンなどの燃料は揮発性が高く蒸発ガスを排気するため、速やかに上部室21と下部室11の遮断が解除されることが好ましい。しかしながら、燃料タンク2内の内圧の影響などによって、弁手段が開口部17の閉塞を維持し続ける恐れがあった。したがって、液体遮断弁装置は、開口部17の閉塞を解除する再開弁圧が低いほうが好ましい。
【0058】
また、燃料の減少によって、下部室11から燃料が燃料タンク2内へ流出する場合、キャップ部材30の第1及び第2の孔群31、32、または外筒12の第1及び第2の通気孔15、16から流出する。燃料の流出は、燃料の流入時とは逆に、中心よりも外側から勢いよく流れ出る対流がつくり出され、フロート40を安定的に下降させることができる。また、キャップ部材30は、ハウジング本体10に対し通気孔用切開部33をずらし、第2の通気孔16を開口させないように取り付けることもできる。これは特に下部室11からの燃料の流出入を緩やかにしたい場合など適用でき、汎用性の広い液体遮断弁装置を提供することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態の液体遮断弁装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。例えば、円筒状の隔壁18に設けられる切欠部18aは、本実施形態では上端部から軸方向に切り欠いた構成としたが、基本的には開口部と接する位置に穿設してあればよく、その形状や大きさは任意に設定してよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る液体遮断弁装置を燃料タンクに設置した状態を示す側面断面図である。
【図3】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す展開図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。
【図4】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す断面図であり、(a)は正面断面図、(b)は図3のA−A線断面図、(c)は図3のB−B線断面図である。
【図5】本実施形態に係る液体遮断弁装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【図6】本実施形態に係る液体遮断弁装置のハウジング本体とキャップ部材を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る液体遮断弁装置のフロートを示す分解斜視図である。
【図8】本実施形態に係る液体遮断弁装置の可動弁を拡大して示す図であり、(a)は弁部材の側面図、(b)は弁部材の側面断面図、(c)は可動弁の側面断面図、(d)は可動弁の斜視図である。
【図9】本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図3のC−C線断面図であり、(c)は図4のD部分の拡大図である。
【図10】本実施形態に係る液体遮断弁装置の燃料供給時の動作を示す側面断面図であり、(a)は燃料が液体遮断弁装置に達する前の状態、(b)燃料が液体遮断弁に達した初期状態、(c)は燃料が満タンになった状態である。
【図11】本実施形態に係る液体遮断弁装置による弁手段の遮断状態を示した拡大側面断面図である。
【図12】本実施形態に係る液体遮断弁装置の弁手段の遮断状態において、揺動時の動作を示した拡大側面断面図である。
【図13】本実施形態に係る液体遮断弁装置の上部室を示す拡大断面図であり、(a)は弁手段閉塞時、(b)は液体遮断弁装置の傾斜時である。
【符号の説明】
【0061】
1:ハウジング、2:燃料タンク、3:排気用接続通路、4:キャニスタ、5:気体導入用接続通路、6:カット弁、7:チェック弁、
10:ハウジング本体、11:下部室、12:外筒、13:仕切板、13a:環状凸部、14:内壁、14a:フロート案内支持面、14b:リブ、15:第1の通気孔、16:第2の通気孔、17:開口部、17a:凸部、18:円筒状の隔壁、18a:切欠部、19:連結部、
20:蓋頭部材、21:上部室、22:排気ポート、22a:排気ポートの開口、23:気体導入ポート、23a:気体導入ポートの開口、
30:キャップ部材、31:第1の孔群、32:第2の孔群、33:通気孔用切開部、34:弁座、
40:フロート、41:スプリング、42:ばね座、43:リブ、44:平坦面、45:ガイド壁、46:凸部、47:付勢部材、48:可動弁保持キャップ、
50:可動弁、51:可動弁本体、52:弁部材、53:凹部、54:第1の床板、55:第2の床板、56:装着孔、57:弾性弁部、58:装着用凸部、
C:クリアランス、S:移動用許容範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する密封容器内の上部空間に設けられ、外部との間で気体を流出入させるとともに、前記密封容器からの液体の漏出を遮断する液体遮断弁装置であって、
開口部を有する仕切板を隔てて上部室と下部室とに分けられたハウジングと、前記下部室内に摺動自在に収容され前記密封容器内の液体から浮力を受けて上昇するフロートとを備え、
前記上部室には、前記密封容器の外部と連通する排気ポートが周壁に開口しており、
前記フロートの上端部には、当該フロートの上昇に伴い、前記仕切板の開口部を閉塞する弁手段が設けてあり、
且つ、前記上部室内において前記開口部の周縁から上方向に円筒状の隔壁を延出して設け、この隔壁が前記排気ポートの開口と対向しており、更に当該排気ポートの開口と対向しない部位に、少なくとも前記開口部の周縁に接する切欠部を形成したことを特徴とする液体遮断弁装置。
【請求項2】
前記上部室は、前記仕切板の上面により床面が形成されており、当該床面は、前記上部室内に侵入した液体が前記切欠部を介して前記開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていることを特徴とする請求項1の液体遮断弁装置。
【請求項3】
前記上部室には、前記仕切板の開口部が前記弁手段によって閉塞されているとき、前記密封容器内の気体を取り込み前記排気ポートへ導く気体導入ポートが周壁に開口しており、
前記切欠部は、前記気体導入ポートの開口にも対向しない部位に形成してあることを特徴とする請求項1又は2の液体遮断弁装置。
【請求項4】
前記排気ポートの開口は、前記上部室の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体遮断弁装置。
【請求項1】
液体を収容する密封容器内の上部空間に設けられ、外部との間で気体を流出入させるとともに、前記密封容器からの液体の漏出を遮断する液体遮断弁装置であって、
開口部を有する仕切板を隔てて上部室と下部室とに分けられたハウジングと、前記下部室内に摺動自在に収容され前記密封容器内の液体から浮力を受けて上昇するフロートとを備え、
前記上部室には、前記密封容器の外部と連通する排気ポートが周壁に開口しており、
前記フロートの上端部には、当該フロートの上昇に伴い、前記仕切板の開口部を閉塞する弁手段が設けてあり、
且つ、前記上部室内において前記開口部の周縁から上方向に円筒状の隔壁を延出して設け、この隔壁が前記排気ポートの開口と対向しており、更に当該排気ポートの開口と対向しない部位に、少なくとも前記開口部の周縁に接する切欠部を形成したことを特徴とする液体遮断弁装置。
【請求項2】
前記上部室は、前記仕切板の上面により床面が形成されており、当該床面は、前記上部室内に侵入した液体が前記切欠部を介して前記開口部へ導く平坦形状又はすり鉢形状に形成されていることを特徴とする請求項1の液体遮断弁装置。
【請求項3】
前記上部室には、前記仕切板の開口部が前記弁手段によって閉塞されているとき、前記密封容器内の気体を取り込み前記排気ポートへ導く気体導入ポートが周壁に開口しており、
前記切欠部は、前記気体導入ポートの開口にも対向しない部位に形成してあることを特徴とする請求項1又は2の液体遮断弁装置。
【請求項4】
前記排気ポートの開口は、前記上部室の内周面よりも内側へ突き出した位置に設けてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体遮断弁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−333136(P2007−333136A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167364(P2006−167364)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】
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