液化天然ガスタンクを備えた浮体式構造物の製造方法
【課題】LNG船のLNGタンクを再利用して浮体式構造物を製造するときにLNGタンクが海水に接することが防止される浮体式構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】クレーン61を用いて液化天然ガス運搬船の船体10から液化天然ガスタンク11を取り除くステップと、クレーン61を用いて液化天然ガスタンクを船体10とは異なる船体20に搭載するステップとを具備する。液化天然ガスタンクの取り除き及び搭載にクレーンを用いるため、液化天然ガスタンクが海水に接することが防止される。
【解決手段】クレーン61を用いて液化天然ガス運搬船の船体10から液化天然ガスタンク11を取り除くステップと、クレーン61を用いて液化天然ガスタンクを船体10とは異なる船体20に搭載するステップとを具備する。液化天然ガスタンクの取り除き及び搭載にクレーンを用いるため、液化天然ガスタンクが海水に接することが防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス運搬船(LNG船)の液化天然ガスタンク(LNGタンク)を再利用して浮体式構造物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガス運搬船では、長年の使用により船体が老朽化した場合であっても、低温液化ガスタンクは不活性雰囲気にあったことからほとんど老朽化しておらず再利用が可能である。
【0003】
特許文献1は、低温液化ガスタンクの再利用に関連して、低温液化ガス運搬船の船体新替工法を開示している。この船体新替工法において、老朽した低温液化ガス運搬用の旧船体から再利用可能な低温液化ガスタンク及びその上部の上甲板、隣り合うタンク間に位置する横隔壁を一体状態で取り出すために旧船体の少なくとも上部ウイングタンクを切断撤去する。その後、旧船体を沈めてタンク及び上甲板等を一体状態で洋上に浮上させ、これを半潜水状態の或いは沈めた新船体の二重底上に導き新船体に搭載させる。
【0004】
特許文献2は、余剰タンカー又は余剰バルクキャリアの船体と老朽低温液化ガス運搬船の低温液化ガスタンクとを用いて洋上備蓄タンクを製造する方法を開示している。この製造方法において、余剰タンカー又は余剰バルクキャリアの船体としての余剰船体の船首にタンク挿入用開口部を形成し、余剰船体の横隔壁を適宜に切除し、余剰船体内のタンク配置予定箇所の底面にコンクリート壁と断熱材とを有するセカンダリーバリヤを形成する。老朽低温液化ガス運搬船から取り出した低温液化ガスタンクを海上に浮かせた状態でタンク挿入用開口部から余剰船体内に挿入してセカンダリーバリヤ上に載置した後、タンク挿入用開口部を密閉して余剰船体を浮体構造とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−184083号公報
【特許文献2】特開昭59−184084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、LNG船のLNGタンクを再利用して浮体式構造物を製造するときにLNGタンクが海水に接することが防止される浮体式構造物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による浮体式構造物の製造方法は、第1クレーン(61、71)を用いて第1液化天然ガス運搬船の第1船体(10)から液化天然ガスタンク(11、11A、11B)を取り除くステップと、前記第1クレーンと同一又は異なるクレーンとしての第2クレーン(61、71)を用いて前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる船体(20、30)に搭載するステップとを具備する。
【0009】
液化天然ガスタンクの取り除き及び搭載にクレーンを用いるため、液化天然ガスが海水に接することが防止される。
【0010】
前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップ及び前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップを、前記第1船体と前記船体とを建造ドック(60)内に並べて配置した状態で実行する。
【0011】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1船体から前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップと前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載する前記ステップとの間に、前記液化天然ガスタンクを海上輸送するステップを更に具備する。
【0012】
前記第1クレーン又は前記第2クレーンの少なくとも一方はクレーン船(70)のクレーン(71)である。
【0013】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1液化天然ガス運搬船から居住区(13)又は荷役設備(12)を取り除くステップと、前記居住区又は前記荷役設備を前記船体に搭載するステップとを更に具備する。
【0014】
浮体式構造物の製造方法において、前記船体は、バルクキャリアの船体(20)である。浮体式構造物の製造方法は、前記バルクキャリアの船体の上甲板(21)に開口部(22)を形成するステップと、前記バルクキャリアの船体の貨物船倉(23)内にタンク支持部(25、26)を設けるステップとを更に具備する。前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップは、前記液化天然ガスタンクを前記開口部から前記貨物船倉に入れるステップと、前記液化天然ガスタンクを前記タンク支持部に載せるステップとを備える。
【0015】
浮体式構造物の製造方法は、ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント(31)、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラント(31)を前記船体に搭載するステップを更に具備する。
【0016】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1船体と第2液化ガス運搬船の第2船体(10)とを平行に並べて固定するステップと、ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント(41)、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラント(41)を前記第1船体又は前記第2船体に搭載するステップとを更に具備する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、LNG船のLNGタンクを再利用して浮体式構造物を製造するときにLNGタンクが海水に接することが防止される浮体式構造物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法の概念図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法において既存LNG船の船体からLNGタンクを取り除く工程の概念図である。
【図3A】図3Aは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の概念図である。
【図3B】図3Bは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の変形例の概念図である。
【図3C】図3Cは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の他の変形例の概念図である。
【図4A】図4Aは、本発明の第3の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクが搭載されるべき既存バルクキャリアの改造前の船体の断面図である。
【図4B】図4Bは、独立球形タンクを搭載するために改造された既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4C】図4Cは、独立球形タンクを搭載した既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4D】図4Dは、独立方形タンクを搭載するために改造された既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4E】図4Eは、独立方形タンクを搭載した既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法の概念図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法において製造される浮体設備の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明による浮体式構造物の製造方法を実施するための形態を以下に説明する。ここで、浮体式構造物は、LNG船、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)、浮体式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)のようなLNGタンクを備えた海上に浮かぶ構造物を意味する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、浮体式構造物としてLNG船が製造される。
【0021】
はじめに、既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する。既存LNG船の船体10にはLNGタンク11、荷役設備12、及び居住区13が搭載されている。LNGタンク11は、液化天然ガス(LNG)を貯蔵するためのタンクであって、密閉機能、耐圧機能、重量支持機能、及び断熱機能を有する。LNG11タンクは、例えば、独立球形タンク又は独立方形タンクである。荷役設備12は、LNGの荷役を行うために用いられる。荷役設備12は、ローディングアームを備えてもよい。居住区13は、例えばブリッジを備える。ここで、既存LNG船の船体10は長年の使用により船殻構造が老朽化しているが、LNGタンク11は不活性雰囲気にあったことからほとんど老朽化していない。新造LNG船の船体20は、新規に製造された船体である。
【0022】
既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法としては、既存LNG船の船体10を建造ドック60内に引き入れて建造ドック60を排水した後に船体10の隣で新造LNG船の船体20を建造してもよく、進水後の新造LNG船の船体20と既存LNG船の船体10とを建造ドック60内に引き入れて建造ドック60を排水してもよい。
【0023】
その後、陸上に設けられたクレーン61を用いて、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載する。
【0024】
更に、荷役設備12及び居住区13が老朽化していない場合は、クレーン61を用いて既存LNG船の船体10から荷役設備12及び居住区13を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載する。尚、既存LNG船を建造するときに居住区13をフローティング構造にして船体10から居住区13に歪みが伝わらないようにすれば、居住区13の老朽化が防止される。
【0025】
本実施形態によれば、LNGタンク11、荷役設備12及び居住区13が再利用されるため、新造LNG船の建造工程が短縮され、資源が有効活用され、新造LNG船の建造エネルギーが削減される。特に、LNGタンク11は製造に時間がかかるため、LNGタンク11を再利用することで新造LNG船の建造工程が大幅に短縮される。更に、LNGタンク11がアルミニウム合金製の場合はLNGタンク11の製造に多くの電力が必要であるため、LNGタンク11を再利用することで新造LNG船の建造エネルギーが大幅に削減される
【0026】
本実施形態によれば、クレーン61を用いて既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載するため、LNGタンク11が海水に接することが防止される。
【0027】
本実施形態によれば、建造ドック60内で既存LNG船を解撤するため、解撤時の環境汚染が防止される。
【0028】
本実施形態においては、既存LNG船の解撤と新造LNG船の建造とが建造ドック60内で並行して行われる。したがって、既存LNG船の解撤と新造LNG船の建造とを異なるドックで行う場合に比べて、既存LNG船の解撤コストと新造LNG船の建造コストの合計が抑制される。
【0029】
(第2の実施形態)
図2及び図3Aを用いて、本発明の第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。
【0030】
図2を参照して、本実施形態に係る浮体式構造物の製造方法における既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除く工程を説明する。クレーン船70のクレーン71を用いて、岸壁65に係留された既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いてバージ75に載せる。そのため、岸壁65の近くに陸上のクレーンがない場合や、岸壁65の近くに陸上のクレーンがあってもそのクレーンの高さがLNGタンク11を船体10から取り除いてバージ75に載せるのに不足する場合であっても、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いてバージ75に載せることが可能である。
【0031】
図3Aを参照して、本実施形態に係る浮体式構造物の製造方法におけるLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。バージ75を用いて、LNGタンク11をドック60の近くの岸壁66まで海上輸送する。クレーン61を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載する。
【0032】
本実施形態によれば、既存LNG船の船体10から取り除いたLNGタンク11を海上輸送するため、建造ドック60に既存LNG船の船体10を引き入れなくても既存LNG船の船体10から取り除いたLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載することが可能である。建造ドック60に既存LNG船の船体10を引き入れないために建造ドック60の工程混乱が発生するおそれが少ない。
【0033】
図3Bを参照して、LNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程の変形例を説明する。変形例では、クレーン船70のクレーン71を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載する。変形例は、建造ドック60及び岸壁66の近くに陸上のクレーンがない場合や、建造ドック60及び岸壁66の近くに陸上のクレーンがあってもそのクレーンの高さがLNGタンク11をバージ75から吊り上げて新造LNG船の船体20に搭載するのに不足する場合に好適である。尚、クレーン船70とは別のクレーン船を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載してもよい。
【0034】
図3Cを参照して、LNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程の他の変形例を説明する。バージ75を用いて、LNGタンク11を艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20の近傍まで海上輸送する。他の変形例では、クレーン船70のクレーン71を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20に搭載する。尚、クレーン船70とは別のクレーン船を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20に搭載してもよい。
【0035】
上述した第2の実施形態、第2の実施形態の変形例、及び第2の実施形態の他の変形例において、バージ75以外の海上輸送手段を用いてもよい。また、LNGタンク11の場合と同様に、荷役設備12及び居住区13を海上輸送してもよい。
【0036】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法は、新造LNG船の船体20として既存バルクキャリアのような貨物部に大きな空間がある既存船舶の船体を利用する点を除いて第1及び第2の実施形態と同様である。新造LNG船の船体20として既存バルクキャリアの船体を用いる場合を例として、本実施形態に係るLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。
【0037】
はじめに、図4A〜4Cを用いて、独立円形タンクとしてのLNGタンク11を既存バルクキャリアの船体としての新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。以下、既存バルクキャリアの船体としての新造LNG船の船体20を既存バルクキャリアの船体20と称し、独立円形タンクとしてのLNGタンク11をLNGタンク11Aと称する。
【0038】
図4Aを参照して、既存バルクキャリアの船体20は、上甲板21と、貨物船倉23と、貨物船倉23の床を形成する二重底24とを備える。
【0039】
図4Bを参照して、上甲板21に開口部22を形成し、貨物船倉23内にタンク支持部25を設ける。タンク支持部25は、例えばスカートである。ここで、タンク支持部25は二重底24上に設置される。二重底24のタンク支持部25が設置される部分を補強することが好ましい。
【0040】
図4Cを参照して、LNGタンク11Aを開口部22から貨物船倉23に入れ、LNGタンク11Aをタンク支持部25に載せる。タンク支持部25はLNGタンク11Aの赤道部を支持する。
【0041】
次に、図4D及び4Eを用いて、独立方形タンクとしてのLNGタンク11を既存バルクキャリアの船体20に搭載する工程を説明する。以下、独立方形タンクとしてのLNGタンク11をLNGタンク11Bと称する。
【0042】
図4Dを参照して、上甲板21に開口部22を形成し、貨物船倉23内にタンク支持部26を設ける。ここで、タンク支持部26は二重底24上に設置される。二重底24のタンク支持部26が設置される部分を補強することが好ましい。
【0043】
図4Eを参照して、LNGタンク11Bを開口部22から貨物船倉23に入れ、LNGタンク11Bをタンク支持部26に載せる。タンク支持部26はLNGタンク11Bの底面を支持する。
【0044】
本実施形態によれば、バルクキャリアの需要が低くLNG船の需要が高い場合に、不要なバルクキャリアの船体と船殻構造が老朽化したLNG船のLNGタンクとを用いて新たなLNG船を短期間且つ低コストで建造することができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図5を参照して、本発明の第4の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、FPSO及びFSRUのような浮体設備が浮体式構造物として製造される。
【0046】
はじめに、既存LNG船の船体10と新造浮体設備の船体30とを建造ドック60内に平行に並べて配置する。既存LNG船の船体10と新造浮体設備の船体30とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法は、既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法と同様である。
【0047】
その後、クレーン61を用いて、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造浮体設備の船体30に搭載する。クレーン61を用いて既存LNG船の船体10から荷役設備12及び居住区13を取り除いて新造浮体設備の船体30に搭載してもよい。更に、新造浮体設備の船体30に追加設備31を搭載する。追加設備31は、例えば、ガス田から採掘された天然ガスからLNGを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵したLNGを再ガス化する再ガス化プラントである。
【0048】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
尚、第2の実施形態、第2の実施形態の変形例、及び第2の実施形態の他の変形例を新造浮体設備の製造に適用してもよい。
【0050】
(第5の実施形態)
図6を参照して、本発明の第5の実施形態に係る浮体構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、FPSO及びFSRUのような新造浮体設備40が浮体式構造物として製造される。
【0051】
上述の実施形態のいずれかにおいてLNGタンク11が取り除かれた二隻の既存LNG船の船体10を用いて新造浮体設備40が製造される。既存LNG船の船体10において、LNGタンク11、荷役設備12、及び居住区13が取り除かれた箇所が破線で示されている。一方の船体10において、LNGタンク11と、荷役設備12と、居住区13とが取り除かれずに残されている。他方の船体10において、LNGタンク11と、荷役設備12とが取り除かれずに残されている。本実施形態に係る浮体構造物の製造方法においては、二隻の既存LNG船の船体10を平行に並べて固定する。すなわち、一方の船体10の右舷が他方の船体10の左舷に隣接するように船体10どうしを固定する。更に、船体10に追加設備41を搭載する。追加設備41は、例えば、ガス田から採掘された天然ガスからLNGを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵したLNGを再ガス化する再ガス化プラントである。
【0052】
本実施形態によれば、LNGタンク11を取り除いた後の既存LNG船の船体10が解撤されずに新造浮体設備40の製造に使用されるため、解撤作業が最小化される。
【0053】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に様々な変更を行うことが可能であり、上記実施の形態どうしを組み合わせることが可能である。例えば、クレーン61を用いて、岸壁66に係留された既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除き、建造ドック60に配置された新造LNG船の船体20又は新造浮体設備の船体30に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…既存LNG船の船体
11(11A、11B)…LNGタンク
12…荷役設備
13…居住区
20…新造LNG船の船体
21…上甲板
22…開口部
23…貨物船倉
24…二重底
25、26…タンク支持部
30…新造浮体設備の船体
31…追加設備
40…新造浮体設備
41…追加設備
60…建造ドック
61…クレーン
65、66…岸壁
67…艤装岸壁
70…クレーン船
71…クレーン
75…バージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス運搬船(LNG船)の液化天然ガスタンク(LNGタンク)を再利用して浮体式構造物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガス運搬船では、長年の使用により船体が老朽化した場合であっても、低温液化ガスタンクは不活性雰囲気にあったことからほとんど老朽化しておらず再利用が可能である。
【0003】
特許文献1は、低温液化ガスタンクの再利用に関連して、低温液化ガス運搬船の船体新替工法を開示している。この船体新替工法において、老朽した低温液化ガス運搬用の旧船体から再利用可能な低温液化ガスタンク及びその上部の上甲板、隣り合うタンク間に位置する横隔壁を一体状態で取り出すために旧船体の少なくとも上部ウイングタンクを切断撤去する。その後、旧船体を沈めてタンク及び上甲板等を一体状態で洋上に浮上させ、これを半潜水状態の或いは沈めた新船体の二重底上に導き新船体に搭載させる。
【0004】
特許文献2は、余剰タンカー又は余剰バルクキャリアの船体と老朽低温液化ガス運搬船の低温液化ガスタンクとを用いて洋上備蓄タンクを製造する方法を開示している。この製造方法において、余剰タンカー又は余剰バルクキャリアの船体としての余剰船体の船首にタンク挿入用開口部を形成し、余剰船体の横隔壁を適宜に切除し、余剰船体内のタンク配置予定箇所の底面にコンクリート壁と断熱材とを有するセカンダリーバリヤを形成する。老朽低温液化ガス運搬船から取り出した低温液化ガスタンクを海上に浮かせた状態でタンク挿入用開口部から余剰船体内に挿入してセカンダリーバリヤ上に載置した後、タンク挿入用開口部を密閉して余剰船体を浮体構造とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−184083号公報
【特許文献2】特開昭59−184084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、LNG船のLNGタンクを再利用して浮体式構造物を製造するときにLNGタンクが海水に接することが防止される浮体式構造物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による浮体式構造物の製造方法は、第1クレーン(61、71)を用いて第1液化天然ガス運搬船の第1船体(10)から液化天然ガスタンク(11、11A、11B)を取り除くステップと、前記第1クレーンと同一又は異なるクレーンとしての第2クレーン(61、71)を用いて前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる船体(20、30)に搭載するステップとを具備する。
【0009】
液化天然ガスタンクの取り除き及び搭載にクレーンを用いるため、液化天然ガスが海水に接することが防止される。
【0010】
前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップ及び前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップを、前記第1船体と前記船体とを建造ドック(60)内に並べて配置した状態で実行する。
【0011】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1船体から前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップと前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載する前記ステップとの間に、前記液化天然ガスタンクを海上輸送するステップを更に具備する。
【0012】
前記第1クレーン又は前記第2クレーンの少なくとも一方はクレーン船(70)のクレーン(71)である。
【0013】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1液化天然ガス運搬船から居住区(13)又は荷役設備(12)を取り除くステップと、前記居住区又は前記荷役設備を前記船体に搭載するステップとを更に具備する。
【0014】
浮体式構造物の製造方法において、前記船体は、バルクキャリアの船体(20)である。浮体式構造物の製造方法は、前記バルクキャリアの船体の上甲板(21)に開口部(22)を形成するステップと、前記バルクキャリアの船体の貨物船倉(23)内にタンク支持部(25、26)を設けるステップとを更に具備する。前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップは、前記液化天然ガスタンクを前記開口部から前記貨物船倉に入れるステップと、前記液化天然ガスタンクを前記タンク支持部に載せるステップとを備える。
【0015】
浮体式構造物の製造方法は、ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント(31)、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラント(31)を前記船体に搭載するステップを更に具備する。
【0016】
浮体式構造物の製造方法は、前記第1船体と第2液化ガス運搬船の第2船体(10)とを平行に並べて固定するステップと、ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント(41)、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラント(41)を前記第1船体又は前記第2船体に搭載するステップとを更に具備する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、LNG船のLNGタンクを再利用して浮体式構造物を製造するときにLNGタンクが海水に接することが防止される浮体式構造物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法の概念図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法において既存LNG船の船体からLNGタンクを取り除く工程の概念図である。
【図3A】図3Aは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の概念図である。
【図3B】図3Bは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の変形例の概念図である。
【図3C】図3Cは、第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクを新造LNG船の船体に搭載する工程の他の変形例の概念図である。
【図4A】図4Aは、本発明の第3の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法においてLNGタンクが搭載されるべき既存バルクキャリアの改造前の船体の断面図である。
【図4B】図4Bは、独立球形タンクを搭載するために改造された既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4C】図4Cは、独立球形タンクを搭載した既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4D】図4Dは、独立方形タンクを搭載するために改造された既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図4E】図4Eは、独立方形タンクを搭載した既存バルクキャリアの船体の断面図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法の概念図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法において製造される浮体設備の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明による浮体式構造物の製造方法を実施するための形態を以下に説明する。ここで、浮体式構造物は、LNG船、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)、浮体式貯蔵再ガス化ユニット(FSRU)のようなLNGタンクを備えた海上に浮かぶ構造物を意味する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、浮体式構造物としてLNG船が製造される。
【0021】
はじめに、既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する。既存LNG船の船体10にはLNGタンク11、荷役設備12、及び居住区13が搭載されている。LNGタンク11は、液化天然ガス(LNG)を貯蔵するためのタンクであって、密閉機能、耐圧機能、重量支持機能、及び断熱機能を有する。LNG11タンクは、例えば、独立球形タンク又は独立方形タンクである。荷役設備12は、LNGの荷役を行うために用いられる。荷役設備12は、ローディングアームを備えてもよい。居住区13は、例えばブリッジを備える。ここで、既存LNG船の船体10は長年の使用により船殻構造が老朽化しているが、LNGタンク11は不活性雰囲気にあったことからほとんど老朽化していない。新造LNG船の船体20は、新規に製造された船体である。
【0022】
既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法としては、既存LNG船の船体10を建造ドック60内に引き入れて建造ドック60を排水した後に船体10の隣で新造LNG船の船体20を建造してもよく、進水後の新造LNG船の船体20と既存LNG船の船体10とを建造ドック60内に引き入れて建造ドック60を排水してもよい。
【0023】
その後、陸上に設けられたクレーン61を用いて、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載する。
【0024】
更に、荷役設備12及び居住区13が老朽化していない場合は、クレーン61を用いて既存LNG船の船体10から荷役設備12及び居住区13を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載する。尚、既存LNG船を建造するときに居住区13をフローティング構造にして船体10から居住区13に歪みが伝わらないようにすれば、居住区13の老朽化が防止される。
【0025】
本実施形態によれば、LNGタンク11、荷役設備12及び居住区13が再利用されるため、新造LNG船の建造工程が短縮され、資源が有効活用され、新造LNG船の建造エネルギーが削減される。特に、LNGタンク11は製造に時間がかかるため、LNGタンク11を再利用することで新造LNG船の建造工程が大幅に短縮される。更に、LNGタンク11がアルミニウム合金製の場合はLNGタンク11の製造に多くの電力が必要であるため、LNGタンク11を再利用することで新造LNG船の建造エネルギーが大幅に削減される
【0026】
本実施形態によれば、クレーン61を用いて既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造LNG船の船体20に搭載するため、LNGタンク11が海水に接することが防止される。
【0027】
本実施形態によれば、建造ドック60内で既存LNG船を解撤するため、解撤時の環境汚染が防止される。
【0028】
本実施形態においては、既存LNG船の解撤と新造LNG船の建造とが建造ドック60内で並行して行われる。したがって、既存LNG船の解撤と新造LNG船の建造とを異なるドックで行う場合に比べて、既存LNG船の解撤コストと新造LNG船の建造コストの合計が抑制される。
【0029】
(第2の実施形態)
図2及び図3Aを用いて、本発明の第2の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。
【0030】
図2を参照して、本実施形態に係る浮体式構造物の製造方法における既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除く工程を説明する。クレーン船70のクレーン71を用いて、岸壁65に係留された既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いてバージ75に載せる。そのため、岸壁65の近くに陸上のクレーンがない場合や、岸壁65の近くに陸上のクレーンがあってもそのクレーンの高さがLNGタンク11を船体10から取り除いてバージ75に載せるのに不足する場合であっても、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いてバージ75に載せることが可能である。
【0031】
図3Aを参照して、本実施形態に係る浮体式構造物の製造方法におけるLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。バージ75を用いて、LNGタンク11をドック60の近くの岸壁66まで海上輸送する。クレーン61を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載する。
【0032】
本実施形態によれば、既存LNG船の船体10から取り除いたLNGタンク11を海上輸送するため、建造ドック60に既存LNG船の船体10を引き入れなくても既存LNG船の船体10から取り除いたLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載することが可能である。建造ドック60に既存LNG船の船体10を引き入れないために建造ドック60の工程混乱が発生するおそれが少ない。
【0033】
図3Bを参照して、LNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程の変形例を説明する。変形例では、クレーン船70のクレーン71を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載する。変形例は、建造ドック60及び岸壁66の近くに陸上のクレーンがない場合や、建造ドック60及び岸壁66の近くに陸上のクレーンがあってもそのクレーンの高さがLNGタンク11をバージ75から吊り上げて新造LNG船の船体20に搭載するのに不足する場合に好適である。尚、クレーン船70とは別のクレーン船を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて建造ドック60内に配置された新造LNG船の船体20に搭載してもよい。
【0034】
図3Cを参照して、LNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程の他の変形例を説明する。バージ75を用いて、LNGタンク11を艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20の近傍まで海上輸送する。他の変形例では、クレーン船70のクレーン71を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20に搭載する。尚、クレーン船70とは別のクレーン船を用いて、バージ75からLNGタンク11を吊り上げて艤装岸壁67に係留された新造LNG船の船体20に搭載してもよい。
【0035】
上述した第2の実施形態、第2の実施形態の変形例、及び第2の実施形態の他の変形例において、バージ75以外の海上輸送手段を用いてもよい。また、LNGタンク11の場合と同様に、荷役設備12及び居住区13を海上輸送してもよい。
【0036】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法は、新造LNG船の船体20として既存バルクキャリアのような貨物部に大きな空間がある既存船舶の船体を利用する点を除いて第1及び第2の実施形態と同様である。新造LNG船の船体20として既存バルクキャリアの船体を用いる場合を例として、本実施形態に係るLNGタンク11を新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。
【0037】
はじめに、図4A〜4Cを用いて、独立円形タンクとしてのLNGタンク11を既存バルクキャリアの船体としての新造LNG船の船体20に搭載する工程を説明する。以下、既存バルクキャリアの船体としての新造LNG船の船体20を既存バルクキャリアの船体20と称し、独立円形タンクとしてのLNGタンク11をLNGタンク11Aと称する。
【0038】
図4Aを参照して、既存バルクキャリアの船体20は、上甲板21と、貨物船倉23と、貨物船倉23の床を形成する二重底24とを備える。
【0039】
図4Bを参照して、上甲板21に開口部22を形成し、貨物船倉23内にタンク支持部25を設ける。タンク支持部25は、例えばスカートである。ここで、タンク支持部25は二重底24上に設置される。二重底24のタンク支持部25が設置される部分を補強することが好ましい。
【0040】
図4Cを参照して、LNGタンク11Aを開口部22から貨物船倉23に入れ、LNGタンク11Aをタンク支持部25に載せる。タンク支持部25はLNGタンク11Aの赤道部を支持する。
【0041】
次に、図4D及び4Eを用いて、独立方形タンクとしてのLNGタンク11を既存バルクキャリアの船体20に搭載する工程を説明する。以下、独立方形タンクとしてのLNGタンク11をLNGタンク11Bと称する。
【0042】
図4Dを参照して、上甲板21に開口部22を形成し、貨物船倉23内にタンク支持部26を設ける。ここで、タンク支持部26は二重底24上に設置される。二重底24のタンク支持部26が設置される部分を補強することが好ましい。
【0043】
図4Eを参照して、LNGタンク11Bを開口部22から貨物船倉23に入れ、LNGタンク11Bをタンク支持部26に載せる。タンク支持部26はLNGタンク11Bの底面を支持する。
【0044】
本実施形態によれば、バルクキャリアの需要が低くLNG船の需要が高い場合に、不要なバルクキャリアの船体と船殻構造が老朽化したLNG船のLNGタンクとを用いて新たなLNG船を短期間且つ低コストで建造することができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図5を参照して、本発明の第4の実施形態に係る浮体式構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、FPSO及びFSRUのような浮体設備が浮体式構造物として製造される。
【0046】
はじめに、既存LNG船の船体10と新造浮体設備の船体30とを建造ドック60内に平行に並べて配置する。既存LNG船の船体10と新造浮体設備の船体30とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法は、既存LNG船の船体10と新造LNG船の船体20とを建造ドック60内に平行に並べて配置する方法と同様である。
【0047】
その後、クレーン61を用いて、既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除いて新造浮体設備の船体30に搭載する。クレーン61を用いて既存LNG船の船体10から荷役設備12及び居住区13を取り除いて新造浮体設備の船体30に搭載してもよい。更に、新造浮体設備の船体30に追加設備31を搭載する。追加設備31は、例えば、ガス田から採掘された天然ガスからLNGを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵したLNGを再ガス化する再ガス化プラントである。
【0048】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
尚、第2の実施形態、第2の実施形態の変形例、及び第2の実施形態の他の変形例を新造浮体設備の製造に適用してもよい。
【0050】
(第5の実施形態)
図6を参照して、本発明の第5の実施形態に係る浮体構造物の製造方法を説明する。本実施形態において、FPSO及びFSRUのような新造浮体設備40が浮体式構造物として製造される。
【0051】
上述の実施形態のいずれかにおいてLNGタンク11が取り除かれた二隻の既存LNG船の船体10を用いて新造浮体設備40が製造される。既存LNG船の船体10において、LNGタンク11、荷役設備12、及び居住区13が取り除かれた箇所が破線で示されている。一方の船体10において、LNGタンク11と、荷役設備12と、居住区13とが取り除かれずに残されている。他方の船体10において、LNGタンク11と、荷役設備12とが取り除かれずに残されている。本実施形態に係る浮体構造物の製造方法においては、二隻の既存LNG船の船体10を平行に並べて固定する。すなわち、一方の船体10の右舷が他方の船体10の左舷に隣接するように船体10どうしを固定する。更に、船体10に追加設備41を搭載する。追加設備41は、例えば、ガス田から採掘された天然ガスからLNGを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵したLNGを再ガス化する再ガス化プラントである。
【0052】
本実施形態によれば、LNGタンク11を取り除いた後の既存LNG船の船体10が解撤されずに新造浮体設備40の製造に使用されるため、解撤作業が最小化される。
【0053】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に様々な変更を行うことが可能であり、上記実施の形態どうしを組み合わせることが可能である。例えば、クレーン61を用いて、岸壁66に係留された既存LNG船の船体10からLNGタンク11を取り除き、建造ドック60に配置された新造LNG船の船体20又は新造浮体設備の船体30に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…既存LNG船の船体
11(11A、11B)…LNGタンク
12…荷役設備
13…居住区
20…新造LNG船の船体
21…上甲板
22…開口部
23…貨物船倉
24…二重底
25、26…タンク支持部
30…新造浮体設備の船体
31…追加設備
40…新造浮体設備
41…追加設備
60…建造ドック
61…クレーン
65、66…岸壁
67…艤装岸壁
70…クレーン船
71…クレーン
75…バージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クレーンを用いて第1液化天然ガス運搬船の第1船体から液化天然ガスタンクを取り除くステップと、
前記第1クレーンと同一又は異なるクレーンとしての第2クレーンを用いて前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる船体に搭載するステップと
を具備する
浮体式構造物の製造方法。
【請求項2】
前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップ及び前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップを、前記第1船体と前記船体とを建造ドック内に並べて配置した状態で実行する
請求項1の浮体式構造物の製造方法。
【請求項3】
前記第1船体から前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップと前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載する前記ステップとの間に、前記液化天然ガスタンクを海上輸送するステップを更に具備する
請求項1の浮体式構造物の製造方法。
【請求項4】
前記第1クレーン又は前記第2クレーンの少なくとも一方はクレーン船のクレーンである
請求項1又は3の浮体式構造物の製造方法。
【請求項5】
前記第1液化天然ガス運搬船から居住区又は荷役設備を取り除くステップと、
前記居住区又は前記荷役設備を前記船体に搭載するステップと
を更に具備する
請求項1乃至4のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項6】
前記船体は、バルクキャリアの船体であって、
前記バルクキャリアの船体の上甲板に開口部を形成するステップと、
前記バルクキャリアの船体の貨物船倉内にタンク支持部を設けるステップと
を更に具備し、
前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップは、
前記液化天然ガスタンクを前記開口部から前記貨物船倉に入れるステップと、
前記液化天然ガスタンクを前記タンク支持部に載せるステップと
を備える
請求項1乃至5のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項7】
ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラントを前記船体に搭載するステップを更に具備する
請求項1乃至5のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項8】
前記第1船体と第2液化ガス運搬船の第2船体とを平行に並べて固定するステップと、
ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラントを前記第1船体又は前記第2船体に搭載するステップと
を更に具備する
請求項1乃至7のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項1】
第1クレーンを用いて第1液化天然ガス運搬船の第1船体から液化天然ガスタンクを取り除くステップと、
前記第1クレーンと同一又は異なるクレーンとしての第2クレーンを用いて前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる船体に搭載するステップと
を具備する
浮体式構造物の製造方法。
【請求項2】
前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップ及び前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップを、前記第1船体と前記船体とを建造ドック内に並べて配置した状態で実行する
請求項1の浮体式構造物の製造方法。
【請求項3】
前記第1船体から前記液化天然ガスタンクを取り除く前記ステップと前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載する前記ステップとの間に、前記液化天然ガスタンクを海上輸送するステップを更に具備する
請求項1の浮体式構造物の製造方法。
【請求項4】
前記第1クレーン又は前記第2クレーンの少なくとも一方はクレーン船のクレーンである
請求項1又は3の浮体式構造物の製造方法。
【請求項5】
前記第1液化天然ガス運搬船から居住区又は荷役設備を取り除くステップと、
前記居住区又は前記荷役設備を前記船体に搭載するステップと
を更に具備する
請求項1乃至4のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項6】
前記船体は、バルクキャリアの船体であって、
前記バルクキャリアの船体の上甲板に開口部を形成するステップと、
前記バルクキャリアの船体の貨物船倉内にタンク支持部を設けるステップと
を更に具備し、
前記液化天然ガスタンクを前記第1船体とは異なる前記船体に搭載するステップは、
前記液化天然ガスタンクを前記開口部から前記貨物船倉に入れるステップと、
前記液化天然ガスタンクを前記タンク支持部に載せるステップと
を備える
請求項1乃至5のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項7】
ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラントを前記船体に搭載するステップを更に具備する
請求項1乃至5のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【請求項8】
前記第1船体と第2液化ガス運搬船の第2船体とを平行に並べて固定するステップと、
ガス田から採掘された天然ガスから液化天然ガスを生成、貯蔵する液化天然ガス生成・貯蔵プラント、又は、貯蔵した液化天然ガスを再ガス化する再ガス化プラントを前記第1船体又は前記第2船体に搭載するステップと
を更に具備する
請求項1乃至7のいずれかに記載の浮体式構造物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−86768(P2012−86768A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237076(P2010−237076)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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