説明

液吐出装置

【課題】微細気泡を効率的かつ高密度に発生させることにより、微細気泡による活性化作用を気軽に享受できる液吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の液吐出装置10は、液が導入される液導入路11Aと、液導入路に連通し、液流旋回翼16cが配置されてなる液流旋回路16Aと、液流旋回路の前端に接続され、前方へ向け縮径状とされた縮流路18Aと、縮流路の前端に接続され、縮流路より拡径して液吐出口19bに連通する拡流路18Bと、外部に連通する外部開口11cを背面上に備え、液流旋回路を背面側から前面側へ貫通し、液流旋回路16A若しくは縮流路18A内において前方へ開口する内部開口を備えた気流導入路13Aと、前方より拡流路内に臨み、縮流路の開口範囲に対向して拡流路内に導出された液流を周囲へ飛散させるテーパ状の液流飛散面19aと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液吐出装置に係り、特に、泡沫流を放出可能に構成された液吐出装置の放水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、泡沫流を大気中へ吐出可能に構成した液吐出装置が知られており、このような液吐出装置は、例えば、風呂場などで用いられるシャワーヘッド、水道の蛇口に取り付けられる吐水栓、ホースの先端部に装着される洗浄器具などとして用いられている。
【0003】
上記の液吐出装置には、泡沫流を吐出するために、例えば、後方から水流を前方の吐出口へ向けて噴出させつつ、吐出口に隣接した取入口より空気を吸入し、水流中に空気を巻き込むことによって泡沫流を発生させるものが知られている。(例えば、以下の特許文献1乃至3参照)。また、ヘッド背面側に空気取入口を開口し、内部に設けた切換弁の後方から空気を導入して、泡沫流を発生させるようにしたシャワーヘッドも知られている(例えば、以下の特許文献4参照)。さらに、前部の本体に対してスプラインを介して係合し、後部の切換えハンドルと螺合するスリーブを設け、当該スリーブに設けられた旋回流チャンバによって旋回流を形成し、この旋回流をスリーブの前方へ向けて円錐状に広がるように噴射するとともに、前端中央に設けられた整流を吐出するための集中吐水孔から吸入した空気を巻き込むことで、集中吐水孔の周囲に設けられた散水孔より泡沫流を放出するように構成されたシャワーヘッドも提案されている(例えば、以下の特許文献5参照)。
【0004】
ところが、前述の従来文献に記載の液吐出装置においては、泡沫流によって洗浄効果を多少は高めることができるものの、例えば気泡径(気泡の球換算径、以下同様)が50μm以下(好ましくは10μm以下)の微細気泡(マイクロバブル)を高密度に含む泡沫流を形成することができず、また、吐出口から離間するほど気泡径が増大し、気泡密度も低下するため、十分な洗浄効果を得ることが難しいという問題点がある。
【0005】
一方、一般に微細気泡を生成する構造として、旋回流中に空気を導入することで気流がせん断されて微細気泡が生ずるように構成された種々のノズル構造が、浴槽などの水中へ微細気泡を含む水流を噴出させる目的で提案されている(例えば、以下の特許文献6乃至9参照)。特に、特許文献9に示すように、上記原理を利用して肌の洗浄効果を高めるようにした吸引洗浄器としては、水流を側方から装置内部に導入することにより旋回流を発生させながら、この旋回流により生ずる負圧により背後の気体自吸口から空気を自吸させ、装置先端に設けた拡径状の気液噴出ガイド部内にて微細気泡を含む泡沫流を生成させて肌へ当てることができるものが知られている。このような装置は、例えば非特許文献1にも記載されている、微細気泡を水中で発生させる装置構造に基づくものである。また、水中に配置したタービン翼で旋回流を形成しつつ空気を導入し、その先に内径を絞って縮径させた後に拡径するノズルを設けることにより、小径部分を通過した先の拡流路分で渦崩壊(渦の構造が急激に変化する現象)を生じさせることで、微細気泡を生成する方法も知られている(以下の非特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2003/040481
【特許文献2】特開2005−290686号公報
【特許文献3】実公昭51−134号公報
【特許文献4】実用新案登録公報第2590832号公報
【特許文献5】特開平4−306331号公報
【特許文献6】特開2003−181258号公報
【特許文献7】特開2003−225546号公報
【特許文献8】特開2006−142300号公報
【特許文献9】特開2003−38382号公報
【非特許文献1】大成博文著、「マイクロバブルのすべて」、株式会社日本実業出版社、2006年10月20日、P.144〜164
【非特許文献2】京藤敏達(筑波大学システム情報工学研究科)、"渦崩壊を利用した翼型気泡発生装置"、[online]、[平成18年11月24日検索]、インターネット<http://surface.kz.tsukuba.ac.jp/~kyotoh/MicroBubbleHome.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献6乃至9並びに非特許文献1及び2に記載された装置では、水中で旋回流を形成した上でこの流れの中心に空気を導入して微細気泡を発生させ、これを水中へ噴出させるようにしたものであり、大気中に泡沫流を噴出させる場合にはそのまま適用することができない。これは、上記装置ではノズルから旋回流を水中へ放出する時に大量の微細気泡が発生するように構成されているため、大気中へ微細気泡を含む泡沫流を噴出させる場合には微細気泡の発生効率がきわめて低く、十分小径で高密度の微細気泡を生じさせることができないからである。例えば、上記非特許文献2に記載された装置では、上記小径部分までは水中において渦流が進むが、これに続く上記拡流路分では水流
が大気中に放出されるため、当該拡流路分での渦崩壊を水中の場合と同様に生じさせることが難しい。また、大気中へ水流を吐出させると、大気を巻き込むことできわめて短い時間内に微細気泡が消失し、所望の作用が得られないことも予測される。
【0007】
一方、本願出願人は、先に、液導入口から液流が導入される後部に設けられた環状断面の液流収容部と、外部に連通する外部開口を備え、前記液流収容部の内部を後方から前方へ貫通し、前記液流収容部より前方において前方へ向いた内部開口を備えた気流導入路と、前記液流収容部に連通するとともに前記液流収容部より縮径されて前記気流導入路の周囲を前方へ向けて伸び、前記気流導入路の前記内部開口に至るまでは環状断面を備え、前記内部開口に臨む部分から円形断面となる渦流形成路と、該渦流形成路に連通し、最前部に設けられた液吐出口と、を具備する液吐出装置を提案している。この液吐出装置によれば、微細気泡を容易に生じさせることができ、しかも、吐出された微細気泡が維持されやすくなることにより、微細気泡の高い活性化作用を容易に得ることができるという効果が得られる。しかしながら、より高い密度で微細気泡を生じさせることで活性化作用をさらに向上させること、並びに、部品コストの低減や組立性の向上を図ることで製造コストを抑制できる構造とすることが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、より効率的かつ高密度に微細気泡を発生させることにより、微細気泡による活性化作用をさらに向上できる液吐出装置を実現することにある。また、他の課題は、部品コストの低減や組立性の向上を図ることにより液吐出装置の製造コストを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる実情に鑑み、本発明の液吐出装置は、液が導入される液導入路と、前記液導入路に連通し、液流旋回翼が配置されてなる液流旋回路と、該液流旋回路の前面側に接続され、前方へ向け縮径状とされた縮流路と、該縮流路の前面側に接続され、前記縮流路より拡径して前記液吐出口に連通する拡流路と、外部に連通する外部開口を背面上に備え、前記液流旋回路を背面側から前面側へ貫通し、前記液流旋回路若しくは前記縮流路内において前方へ開口する内部開口を備えた気流導入路と、前方より前記拡流路内に臨み、前記縮流路の開口範囲に対向して前記拡流路内に導出された液流を周囲へ飛散させるテーパ状の液流飛散面と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、液流が液導入路に導入され、さらに液流旋回路を通過することで液旋回翼により旋回流が発生し、その後にさらに縮径された縮流路に進む過程において旋回流の流速及び旋回周波数が増大し、この高速な旋回流中に気流導入路の内部開口から気流が導入されることにより、旋回流中心の減圧領域に気流(気柱)を含む渦流が形成され、その後、旋回流による気流のせん断作用で徐々に微細気泡が生成されていく。そして、渦流が縮流路から拡流路へ進んで吐出される途中で不安定化して崩壊し、十分小径で高密度の微細気泡が混入された泡沫流が形成される。本発明の場合、液流旋回路から小径の縮流路に進むことで高速な旋回流が生ずるとともに、この高速な旋回流が形成されている縮流路の中心部にのみ気流が導入されることで、その先の円形断面内に渦流が安定した状態で形成されることから、気泡の微細化が効率的に進むとともに、縮流路から拡流路へ出て液吐出口を経て大気中に噴出される過程で急激な渦崩壊が生じて気泡のさらなる微細化が生じるので、大気中に放出される場合でも微細気泡が維持されやすくなり、その結果、従来の泡沫流よりも高い活性化作用(洗浄作用、生物活性作用など)を容易に得ることができる。
【0011】
なお、縮流路の背面側部分(入口側)がテーパ状に構成され、前面側部分(出口側)が同径状に構成されることが旋回流の高速化及び渦流の安定化を両立させる上で好ましい。これは、背面側部分で流速が高速化されるとともに旋回周波数が増大し、前面側部分でその状態が維持されることで微細気泡が徐々に生成され、微細気泡の数及び密度を高めやすくなるとともに、縮流路内において渦流の完全な崩壊が抑制されることで、その後の渦崩壊後において微細気泡が消失しにくくなるからである。ここで、縮流路は入口の断面積に比べて出口の断面積が15〜60%の範囲内で減少していることが望ましく、25〜45%の範囲内となっていることがさらに望ましい。
【0012】
本発明においては、前方より前記拡流路内に臨み、前記縮流路の開口範囲に対向して前記拡流路内に導出された液流を周囲へ飛散させるテーパ状の液流飛散面を有することにより、縮流路から導出された旋回流が大径の拡流路に放出されることで渦流の不安定化が生じて急激に渦崩壊が生ずるとともに、旋回流が液流飛散面によって周囲に飛散されることで渦崩壊が促進されることから、液吐出口から吐出された泡沫流中の微細気泡の小径化や形成密度をさらに向上させることができ、その結果、微細気泡の維持性能をさらに高めることができる。
【0013】
本発明の一の態様においては、ケース体と、該ケース体の内部に収容され、前記気流導入路を貫通させた内筒部と、該内筒部の周囲に前記液流旋回翼を介して設けられた外筒部とを有し、前記内筒部と前記外筒部との間に該液流旋回翼に沿った螺旋状の流路を構成する液流旋回部材と、前記ケース体に直接若しくは間接的に当接する背面側フランジ部、及び、該背面側フランジ部の中央より前面側に突出する保持筒部を備え、該保持筒部内にて前記液流旋回部材を保持する保持部材と、該保持部材の前面側に配置され、前記縮流路を画成するとともに、前記保持部材の前記保持筒部内に挿入されて前記液流旋回路に前記縮流路を接続する背面側筒状部、及び、該背面側筒状部の前端より周囲に拡がる前面側フランジ部を備えた中間部材と、該中間部材の前面側に配置されて前記複数の液吐出口及び前記液流飛散面を備えた前面を構成するとともに、前記中間部材の前記前面側フランジ部との間に前記拡流路を画成する前面側部材と、を具備する。これによれば、ケース内において、液流旋回部材に内筒部を設けることで、その内部に気流導入路を配することができるとともに、外筒部を設けることで液流旋回部材を外側から容易に保持固定することが可能になる。また、液流旋回部材を保持固定する保持部材と、液流旋回部材によって構成される液流旋回路に接続される縮流路を画成する中間部材とをそれぞれ別の部材で構成でき、さらに、縮流路に接続される拡流路が中間部材の前面側フランジ部と液吐出口及び液流飛散面を備えた前面側部材との間に画成されるため、各部品の形状を簡易化できるとともに部品点数も最小限とすることができることから、部品コストの低減や組立容易性の向上を図ることができ、製造コストを抑制できる。
【0014】
この場合に、前記ケース体の内部において前記液流旋回部材の背面側には背面側部材が配置され、該背面側部材に構成された液通路を介して前記液導入路が前記液流旋回路に連通される場合がある。ただし、当該背面側部材はケース体と一体に構成されてもよい。背面側部材を設けることで、液導入路の位置、形状、構造に拘わらず、液流旋回路への流路を最適化できる。
【0015】
また、前記気流導入路は、前記ケース体の背面に開口する外部開口側から前面の内部開口側に伸び、前記ケース体、前記背面側部材(ケース体とは別体に設けられる場合)、又は、前記液流旋回部材を貫通する管材を少なくとも構成要素の一部とするものであってもよく、或いは、前記ケース体、前記背面側部材(前記ケース体と別体に設けられる場合)、又は、前記液流旋回部材に設けられた軸孔を少なくとも構成要素の一部とするものであってもよい。
【0016】
本発明の他の態様においては、前記外部開口には、前記気流導入路に連通し背面上に開口する開口凹部と、該開口凹部の内部に形成された雌ネジと、該雌ネジに螺合する雄ネジとが設けられ、前記雌ネジと前記雄ネジとの螺合構造の隙間を介して前記気流導入路が外部と連通することで、前記螺合構造の螺合深さにより気流の導入量が調整可能に構成される。この場合には、雌ネジと雄ネジの螺合構造に或る程度の遊びを設けるだけで、螺合深さに応じた螺旋状隙間の経路長を容易に調整できるため、気流導入路を介して内部開口から旋回流へ導入される気流量を高精度に調整することができる。なお、雌ネジは、ケース体と別体に構成されていても、一体に構成されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の液吐出装置を示す概略縦断面図である。この液吐出装置(シャワーヘッド)10には、液導入口11iから水、湯等の液体を導入するための液導入路11Aを備えた液導入ケース領域11aと、この液導入ケース領域11aに接続され、内部が上記液導入路11Aに連通した背面側ケース領域11bとを含み、背面側ケース領域11bが背面側から後述する内部構造を覆うように構成されてなるケース体11が設けられている。
背面側ケース領域11bの背面中央には外側に開いた開口凹部11cが形成されている。この開口凹部11cの内側にはケース11と一体に構成された管支持部12が設けられ、この管支持部12には軸線10xの方向に伸びる気流導入管13が固定されている。この気流導入管13は後述する気流導入路13Aを構成するもので、背面側の外側端13aが上記開口凹部11cに連通し、前面側の部分が後述する液流旋回部材16の内筒部16aの内部に導入されてその内側端13bが液流旋回部材16の内部で開口するか、液流旋回部材16の前端にて開口している。
【0018】
ケース体11の内部には、中央に上記軸線10xに沿った軸孔14aを備えた背面側部材14が配置され、この背面側部材14は、ケース体11の背面内側に嵌合するように構成されている。具体的には、ケース体11の背面内側の軸線10xの周囲には、複数(図示例では3つ)のネジ穴11d付きのボス11eが突設され、背面側部材14にはボス11eに嵌合する嵌合孔14bが設けられている。この背面側部材14は上記管支持部12に嵌合する形状を有するとともに、上記液導入路11Aに連通する液通路14Aを備えている。図示例の場合、この液通路14Aは、軸線10xに沿って貫通した軸孔部12aと、当該軸孔部12aから液導入路11A側に設けられた切り欠き部12cとを有し、この切り欠き部12cから軸孔部12aの前面側に向けて液の流通経路が確保されると同時に、軸孔部12aの背面側が上記管支持部12と嵌合するように構成される。軸孔部14aの中心には管支持部12に固定された気流導入管13が前方へ向けて横断している。
【0019】
背面側部材14の軸孔部14aの前面側の開口縁には整流板15が嵌合されている。この整流板15には、中心部に上記気流導入管13を挿通する軸孔15aが設けられるとともに、当該軸孔15aの周囲に複数(図示例では4つ)の液通孔15bが設けられる。当該液通孔15bは、上記流通路14Aと、後述する液流旋回部材16で構成される螺旋状の流路16Aとを連通させる。なお、整流板15が、背面側部材14、或いは、液流旋回部材16と一体に構成されていてもよい。
【0020】
背面側部材14及び整流板15の前面側には液流旋回部材16が配置される。液流旋回部材16は、内部に気流導入管13を挿通する軸孔を備えた内筒部16aと、該内筒部16aを包含し、その外側に筒状に構成された外筒部16bと、内筒部16aと外筒部16bの間に形成された液流旋回翼16cとを具備する。図4の背面図(a)及び斜視図(b)に示すように、液流旋回翼16cは軸線10xに沿って軸線周りに螺旋状に湾曲した翼壁を備えたもので、その内外縁が内筒部16aと外筒部16bに接続されている。この液流旋回翼16cは、内筒部16aと外筒部16bの間に複数枚(図示例では4枚)形成されていることが好ましい。そして、当該液流旋回翼16cによって、上記内筒部16a及び外筒部16bとの間に軸線方向に貫通した螺旋状の流路で構成される液流旋回路16A(図1参照)が構成される。
【0021】
上記液流旋回部材16は、前面側から挿入配置された保持部材17によって前方から保持されている。保持部材17は、上記ケース体11の背面側ケース領域11b及び背面側部材14に当接する背面側フランジ部17aと、当該背面側フランジ部17aの中央から軸線10xに沿って前面側に突出する保持筒部17bとを有する。保持部材17は、背面側フランジ部17aに設けられた開口を通して固定ネジ17dを上記ボス11eのネジ穴11dに螺合させることで、ケース体11に固定される。なお、保持部材17はケース体11に固定されず、単にケース体11の内側部分や背面側部材14に当接するだけとし、後述する中間部材18や前面側部材19に保持されるようにしてもよい。保持部材17に背面側フランジ部17aを設けることで、ケース体11に背面側部材14を安定的に保持できる。また、保持筒部17bの内周面には保持段部17cが設けられ、この保持段部17cの背面側に上記液流旋回部材16を嵌合させることで、保持筒部17bの内部に液流旋回部材16が保持固定される。当該保持筒部17cを保持部材17に設けることで、液流旋回部材16の位置決めを最小限の占有容積で果たすことができる。
【0022】
上記保持部材17のさらに前面側には、上記保持部材17の保持筒部17bに前面側から挿入されて液流旋回部材16の前端部に当接する背面側筒状部18aと、該背面側状部18aの前端から周囲に拡がるように形成された前面側フランジ部18bとを有する中間部材18が配置される。中間部材18は、上記背面側筒状部18aが保持部材17の保持筒部17bの内面と螺合することで接続固定されるように構成されているが、これに特に限定されるものではなく、単に背面側筒状部18aが保持筒部17bの内側に挿入されるように構成されていてもよい。いずれにしても、背面側筒状部18aの内部には縮流路18Aが画成され、この縮流路18Aは液流旋回部材16の液流旋回路(螺旋状の流路)16Aに接続される。背面側筒状部18aの軸孔は軸線方向10xに沿って前面側に向けて徐々に縮径する部分(背面側部分)を有し、これによって縮流路18A内の流速や旋回流の旋回周波数が増大するようになっている。また、背面側筒状部18aの軸孔のうち、上記背面側部分より前面側にある部分(前面側部分)が軸線方向10xに沿って等径に構成されている。
【0023】
上記背面側筒状部18aは、縮流路18Aを液流旋回路16Aに接続するために背面側に突設されたものであり、前面側に突設された液流旋回部材16又は保持部材17の筒状部17bと接続されて簡易な構成で上記の流路を構成できる。さらに、中間部材18の前面側フランジ部18bの前方に縮流路18Aより拡径された拡流路18Bが設けられ、上記縮流路18Aが拡流路18Bに接続された構造となっている。この拡流路18Bは、前面側フランジ部18bと、中間部材18のさらに前方に配置された前面側部材19との間に画成されている。すなわち、上記の前面側フランジ部18bは拡流路18Bの背面側の隔壁を構成する。なお、前面側フランジ部18bの中央寄りの部分は、図示例のように、縮流路28Aから前方へ向けて開くようにテーパ状に構成された部分を有することが旋回流を拡流路18B内の周囲にスムーズに導くことができる点で好ましい。
【0024】
前面側部材19は、螺合、嵌合などの適宜の方法(図示例では螺合)でケース体11の背面側ケース領域11bに接続固定される。なお、図示例では前面側部材19の周囲内面と、ケース体11及び中間部材18の前面側フランジ部18bの外周縁部との間にパッキン19dが介挿され、拡流路18Bの外周部を水密に構成している。
【0025】
前面側部材19の中央部には、上記背面側筒状部18aの前面側の開口(縮流路18Aの出口)に対向し、錐面状(図示例では円錐面状、但し、角錐状でもよい。)に構成された液流飛散面19aが形成されている。この液流飛散面19aは、縮流路18Aから拡流路18Bに放出された旋回流が衝突して拡流路18B内の周囲に飛散するように構成するもので、後述するように重要な役割を果たすものである。また、この液流飛散面19aの周囲には、複数の液吐出口19bが前面側部材19を前後に貫通するように設けられている。上述のように飛散された液流は液吐出口19bを通して外部に放出される。複数の液吐出口19bは液流飛散面19aの外周側にほぼ均等に分散して形成されている。
【0026】
気流導入管13の内部は外部(ケース11の後方)から気流を導入する気流導入路13Aの一部を形成する。この気流導入路13Aは気流導入管13の内部である上記外側端13aから内側端13bまでにおいては直線状に伸びている。気流導入路13Aの外部開口は、上記開口凹部11cと、この開口凹部11c内において、必要に応じてパッキン11hを介して固定された筒状の雌ネジ11fと、この雌ネジ11fに螺合する雄ネジ11gによって構成される。雌ねじ11fと雄ネジ11gとは螺合し、その螺合構造の螺合隙間が外部と上記開口凹部11cの内部とを連通した状態とされ、これによって気流導入路13Aが外部に開口した状態となる。雌ネジ11fに対する雄ネジ11gの螺合深さを変えることで、気流導入路の外部開口の螺旋状の経路の長さが増減するため、気流導入路13Aの導入抵抗が増減するので、内部開口より導入される気流の量を調整することができる。
【0027】
当該気流導入路13Aは上記外部開口からケース11の内部を軸線10x方向へ直線状に伸び、その先端に内部開口を備える。上記気流導入管13の内側端13bが液流旋回部材16の内部若しくは前端に配置されるとき、気流導入路13Aの内部開口は液流旋回部材16の前端、すなわち、液流旋回路16Aと縮流路18Aとの境界位置に形成される。ただし、本発明の気流導入路13Aの内部開口の位置はこれに限定されるものではなく、当該内部開口は、例えば気流導入管13の内側端13bを前面側に延長することで縮流路18Aの内部に配置されるようにしてもよく、液流旋回部材16の内筒部16aの前端を凹状に構成して気流導入管13の内側端13bとともに背面側に移動させることで液流旋回路16Aの内部に配置されるようにしてもよい。
【0028】
なお、内部開口の軸線10xに沿った位置は上述のように調整可能であり、この調整によって液流旋回路16A及び縮流路18A内における気流が導入される位置が変わるため、後述する微細気泡の発生状態を適宜に設定することが可能になる。
【0029】
以上のように構成された第1実施形態の液吐出装置10においては、液導入路11Aから液通路14Aに液体が導入され、整流板15の液通孔15bを通過して液流旋回路16A内に導入されることにより、この液流旋回路16A内において液流旋回翼16cにより旋回流が発生する。この旋回流は縮流路18A内に導入され、そこで気流導入路13Aの内部開口より気流が導入される。
【0030】
ここで、液体の旋回流が気流導入路13Aの内部開口を前方へ向けて通過することで生ずる減圧作用により気流導入路13Aを通して気流が内部に吸引される。縮流路18Aでは流路の内径が減少することで流速及び旋回周波数が増大し、この高速な旋回流は遠心力によって軸線10xに沿った中央部に減圧領域を生じさせるので、導入された気流は当初軸線10xに沿って気柱状となり、旋回流の中心部を流れながら徐々に旋回流のせん断力で分離されることで周囲に微細気泡を生ずる。このようにして、縮流路18A内では旋回流中に気流及びその周辺の微細気泡によって形成される渦流が形成される。
【0031】
この渦流は小径の縮流路18A内においては高速な旋回流によって比較的安定な状態にあり、当初は軸線10xに沿って旋回流の中心部を流れるとともに旋回流によるせん断力で徐々に微細気泡が形成されていくが、縮流路18Aの出口近傍から拡流路18Bに導入されたときに遠心力による旋回流の分散等に起因する不安定化により渦崩壊を生ずる。この渦崩壊によって渦流中の気流は急激に微細化され、小径及び高密度の微細気泡が形成される。
【0032】
拡流路18B内に出た旋回流は渦流とともに周囲に拡がるとともにその一部は液流飛散面19aに衝突し、ここで渦流は完全に破壊されるとともに、さらに微細気泡が形成される。このようにして小径(50μ以下、好ましくは10μm以下)できわめて高密度の微細気泡が水中に含まれたまま、拡流路18Bで形成された泡沫流が液吐出口19bより外部へ吐出される。
【0033】
本実施形態では、液流旋回路16Aで発生した旋回流は、縮径された小径の縮流路16A内で高速な旋回流となり、この旋回流内に気流導入路13Aの内部開口から気流が導入され、ここで渦流が形成されるため、安定した渦流を形成することができるとともに、その後に、拡流路18Bにおける渦崩壊の発生及び液流飛散面19aへの衝突により、微細気泡の小径化及び高密度化がさらに促進される。したがって、従来のシャワーヘッド等から吐出される泡沫流に比べてより小径の微細気泡が高密度に含まれるため、液吐出口19bから吐出された後においても微細気泡が失われにくく、大気中に放出された泡沫流であっても微細気泡が従来よりも長く維持されるので、十分な活性化作用、例えば、洗浄作用、血流増大作用(マッサージ効果に起因するもの)等を奏することが可能になる。
【0034】
図3は、上記第1実施形態の分解斜視図である。本実施形態を製造する場合には、ケース体11の背面ケース領域11b内に背面側部材14を前面側から挿入して嵌合し、その後、整流板15を背面側部材14の前端に装着してから液流旋回部材16を介在させて保持部材17を前面側からケース体11に固定することによって液流旋回部材16を保持固定し、さらに前面側から中間部材18を装着した後に、前面側部材19をケース体11に取り付ける。一方、ケース体11の背面には、パッキン11hを介して雌ネジ11fを接着剤等により開口凹部11c内に固定し、その後、雄ネジ11eを雌ネジ11fに螺入する。このように、本実施形態では、各部材を順次に前面側に組み付けていくことで簡単に組み立てることができる。
【0035】
図2は、上記第1実施形態の基本構成を踏襲しつつ、細部を変形させた第2実施形態の液吐出装置20の構造を示す縦断面図である。この第2実施形態の液吐出装置20は、第1実施形態と基本的に同様のケース体21、背面側部材24、整流板25、液流旋回部材26、保持部材27、中間部材28、前面側部材29、雌ネジ21f、及び、雄ネジ21gを有するので、同様の部分の説明は省略し、以下に異なる部分のみを説明する。
【0036】
この実施形態では、ケース体21の背面側ケース領域21bに設けられた軸支持部22が軸線20xに沿って前面側に突出し、整流板25に直接当接している。また、背面側部材24は軸支持部22を取り巻く液通路24Aを構成し、液導入路21Aから液通路24A内に導入された液流は、軸支持部22の周囲に構成された環状の液通路24Aを通過して整流板25の液通孔25aから液流旋回路26A内に導入される。
【0037】
さらに、上記軸支持部22の内部には開口凹部21cに連通する気流導入孔23が形成され、この気流導入孔23は整流板25の軸孔25aを介して液流旋回路26の内筒部26aに形成された軸孔に連通している。したがって、本実施形態では第1実施形態の気流導入管13が設けられていないが、上記気流導入孔23、軸孔25a、内筒部26aの軸孔によって第1実施形態と同様の気流導入路23Aが構成される。
【0038】
本実施形態では、第1実施形態の気流導入管13等によって気流導入路13Aを構成する代わりに、ケース体21、背面側部材24、整流板25及び液流旋回部材のそれぞれに軸孔を形成して相互に連続するように構成することで、気流導入路23Aを構成しているので、作用効果上は第1実施形態と何ら変わるものではない。
【0039】
尚、本発明の液吐出装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。たとえば、上記各実施形態はいずれも図1及び図2に示すように液導入路を構成するネック部と、該ネック部に接続されたヘッド部を有するシャワーヘッド形状を有するものであるが、本発明はこのような形状に限定されるものではなく、実体的に上記液導入路、液流旋回路、縮流路、拡流路を順次に接続してなる流路を構成するものであれば、種々の形状を有する液吐出装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態の液吐出装置の断面斜視図。
【図2】第2実施形態の液吐出装置の断面斜視図。
【図3】第1実施形態の液吐出装置の分解斜視図。
【図4】第1実施形態の液流旋回部材の背面図(a)及び斜視図(b)。
【符号の説明】
【0041】
10、20…液吐出装置、11、21…ケース、11A、21A…液導入路、11a,21a…液導入ケース領域、11b、21b…背面側ケース領域、11c、21c…開口凹部、11f…雌ネジ、11g…雄ネジ、12、22…管支持部、13…気流導入管、23…気流導入孔、13A、23A…気流導入路、13a…外側端、13b…内側端、14、24…背面側部材、14A、24A…液通路、15、25…整流板、15b…液通孔、16、26…液流旋回部材、16a、26a…内筒部、16b、26b…外筒部、16c、26c…液流旋回翼、17、27…保持部材、17a,27a…背面側フランジ部、17b、27b…保持筒部、18、28…中間部材、18a,28a…背面側筒状部、18b、28b…前面側フランジ部、18A、28A…縮流路、18B、28B…拡流路、19、29…前面側部材、19a,29a…液流飛散面、19b、29b…液吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液が導入される液導入路と、前記液導入路の前面側に接続され、液流旋回翼が配置されてなる液流旋回路と、該液流旋回路の前面側に接続され、前方へ向け縮径状とされた縮流路と、該縮流路の前面側に接続され、前記縮流路より拡径して前記液吐出口に連通する拡流路と、外部に連通する外部開口を背面上に備え、前記液流旋回路を背面側から前面側へ貫通し、前記液流旋回路若しくは前記縮流路内において前方へ開口する内部開口を備えた気流導入路と、前方より前記拡流路内に臨み、前記縮流路の開口範囲に対向して前記拡流路内に導出された液流を周囲へ飛散させるテーパ状の液流飛散面と、を具備することを特徴とする液吐出装置。
【請求項2】
ケース体と、該ケース体の内部に収容され、前記気流導入路を貫通させた内筒部と、該内筒部の周囲に前記液流旋回翼を介して設けられた外筒部とを有し、前記内筒部と前記外筒部との間に前記液流旋回翼に沿った螺旋状の流路を構成する液流旋回部材と、前記ケース体に直接若しくは間接的に当接する背面側フランジ部、及び、該背面側フランジ部の中央より前面側に突出する保持筒部を備え、該保持筒部内にて前記液流旋回部材を保持する保持部材と、該保持部材の前面側に配置され、前記縮流路を画成するとともに、前記保持部材の前記保持筒部内に挿入されて前記液流旋回路に前記縮流路を接続する背面側筒状部、及び、該背面側筒状部の前端より周囲に拡がる前面側フランジ部を備えた中間部材と、該中間部材の前面側に配置されて前記複数の液吐出口及び前記液流飛散面を備えた前面を構成するとともに、前記中間部材の前記前面側フランジ部との間に前記拡流路を画成する前面側部材と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の液吐出装置。
【請求項3】
前記ケース体の内部において前記液流旋回部材の背面側には背面側部材が配置され、該背面側部材に構成された液通路を介して前記液導入路が前記液流旋回路に連通されることを特徴とする請求項2に記載の液吐出装置。
【請求項4】
前記外部開口は、前記気流導入路に連通し背面上に開口する開口凹部と、該開口凹部の内部に形成された雌ネジと、該雌ネジに螺合する雄ネジとを備え、前記雌ネジと前記雄ネジとの螺合構造の隙間に沿った気流経路が構成されて、該螺合構造の螺合深さにより気流の導入量が調整可能に構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178661(P2009−178661A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20439(P2008−20439)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(502200405)
【Fターム(参考)】