説明

液圧ユニット用のウェブのないバルブプレート

【課題】 ウェブを用いずにバルブプレートの耐圧能力を強化することができる液圧ユニットを提供する。
【解決手段】 液圧ユニットは、バルブプレートの弧状流入口および弧状吐出口へのウェブの使用を排除するために、第1および第2の支持体を備えている。具体的には、バルブプレート本体は、内縁と外縁との間に広がっており、第1の状態において、外縁は、第1の支持体のごく近傍に配置され、内縁は、第2の支持体のごく近傍に配置されている。したがって、弧状流入口および弧状吐出口を通って流れる液体の圧力が、外縁または内縁を、それぞれ、第1または第2の支持体に係合するまで撓ませる。その結果、バルブプレート本体に働く応力の一部が、第1または第2の支持体に移されて、バルブプレートが強化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ユニットに関する。より詳細には、本発明は、液圧ユニット用のウェブのないバルブプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプおよびモータを含む軸方向ピストン液圧ユニット、または斜軸液圧ユニットのような液圧ユニットは公知である。これらのタイプの液圧ユニットは、その内部に、吸入口および吐出口となる弧状孔を有するバルブプレートを備えている。これらの各孔は、図1に示すように、孔の間に、バルブプレートを補強するためのウェブを備えているが、これが、現在の液圧ユニットにおいて公知の圧力変化を起こす原因となっている。
【0003】
液圧ユニットが最初に設計された時、特許文献1に示すように、バルブプレートは、弧状の、何らの制限もない吸入流路および吐出流路を有しており、ウェブを備えていなかった。より高い動作圧力での液圧ユニットの利用が増すのに伴い、このような設計のバルブプレートは、加圧された吐出口流路のエリアで故障を起こすことが多くなった。この故障をなくすために、図1に示すような補強用のウェブが加えられた。この例は、特許文献2にも記載されている。
【0004】
ウェブは、バルブプレートの加圧された吐出流路の故障を防止するのには役立つが、液圧ユニット内の流量を制限して、動作効率を低下させる。流量に対するウェブの影響を最小にするために、ウェブ自体に孔を設けたり、特殊な強度材料を用いて、バルブプレート自体を強化し、かつ作動効率の低下を防止する試みがなされている。
【特許文献1】米国特許第2915985号公報
【特許文献2】米国特許第3249061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの改良にもかかわらず、当技術分野には、依然として問題が残っている。具体的には、ウェブに関連した問題を克服するために、単に、ウェブ内に余分の孔を設けると、バルブプレートは弱くなり、バルブプレートは故障し易くなる。さらに、ウェブは、バルブプレートから、完全には除外されず、したがって、液圧ユニット内の液流を妨害して、効率の低下をもたらす。特殊な強度材料を用いたバルブプレートに関しては、製造プロセスに余分なステップが加えられるため、バルブプレートの製造が複雑になり、そのため、必要な費用および時間が増す。
【0006】
したがって、本発明は、液圧ユニットに、液圧ユニットの効率を最大にするバルブプレートを提供することを、主要な目的としている。
【0007】
本発明は、さらに、液圧ユニットに、バルブプレートの耐圧能力を強化したバルブプレートアセンブリを提供することを別の目的としている。
【0008】
本発明の上記の目的およびその他の目的、特徴、および利点は、明細書および請求項から明白になると思う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
液圧ユニットは、内部に孔を有する第1の支持体を備えている。バルブプレートは、第1の支持体の孔の内部に、第1の支持体に取外し可能に配置されている。具体的には、バルブプレートは、内縁および外縁を有し、それらの間に、バルブプレート本体が広がっている。内縁は、バルブプレートの孔を囲んでおり、第1の状態において、外縁は、第1の支持体のごく近くに隣接して配置されている。
【0010】
さらに、バルブプレート本体は、その内部に、弧状流入口および弧状吐出口を有している。第2の支持体は、バルブプレートの孔の内部に、バルブプレートの内縁を係脱可能しうるようにして配置されている。
【0011】
流体が、弧状流入口および弧状吐出口を通って流れると、内縁が第2の支持体に係合するように、また、外縁が第1の支持体に係合するように、バルブプレート本体が撓んで、第2の状態が形成される。この第2の状態においては、バルブプレート本体に働く応力の一部が、バルブプレート本体から、第1または第2の支持体に移される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図2は、第1の状態における液圧ユニットのバルブプレートアセンブリ10の断面図である。液圧ユニットは、図示されていないが、ともに本明細書に組み込まれる、フランツ等による米国特許第6640687号明細書、およびハンセルによる米国特許第6688417号明細書に示されているような、斜板を使用するアキシアルピストン液圧ユニットのような任意のタイプの液圧ユニットであってよい。
【0013】
同様に、液圧ユニットは、やはり本明細書に組み込まれる、フレミング等による米国特許第6203283号明細書、およびプラットによる米国特許第1137283号明細書に示されているような斜軸液圧ユニットであってよい。さらに、液圧ユニットは、本明細書における開示の範囲内に含まれるポンプまたはモータのいずれかであればよい。
【0014】
バルブプレートアセンブリ10は、内部に円孔14を有する、第1の支持体12を備えている。斜軸液圧ユニットにおける第1の支持体12はヨークである。一方、別の一実施形態においては、第1の支持体12は、アキシアルピストン液圧ユニットにおけるエンドキャップである。
【0015】
第1の支持体12の円孔14の内部に、バルブプレート16が配置されている。バルブプレート16は、内縁20と外縁22との間に広がるバルブプレート本体18を有している。内縁20は、バルブプレートの中心孔24の外周である。バルブプレート本体18の内縁20と外縁22との間に、弧状吸入口26および弧状吐出口28が設けられている。流体が、弧状吸入口26および弧状吐出口28を通過するとき、それらの周辺に応力が作用する。
【0016】
バルブプレート中心孔24の内部には、第2の支持体30が配置されている。一実施形態においては、第2の支持体30は、斜軸液圧ユニットにおけるスピンドルである。別の一実施形態においては、第2の支持体30は、アキシアルピストン液圧ユニットにおける軸受である。
【0017】
バルブプレート16は、第1の支持体12の円孔14(図2)の内部に配置して、第1の状態としたとき、バルブプレート16と、第1の支持体12および第2の支持体30との間に、それぞれ、第1および第2のクリアランス32および34が形成されるようなサイズおよび形状に作製される。
【0018】
図2に示すような第1の状態において、ごく小さな圧力が、弧状吸入口26および弧状吐出口28に加えられたときには、外縁22は、円孔14の内部に、係脱可能に、第1の支持体12と隣接する位置となる。したがって、第1の状態において、バルブプレート本体18の外縁22は、第1の支持体12のごく近くにある。
【0019】
外縁22と第1の支持体12との間の距離を、第1のクリアランス32とする。好適な一実施形態においては、第1のクリアランス32は、0.1mm以下である。
【0020】
同様に、図2に示すような第1の状態にあるとき、バルブプレート16は、内縁20が、第2の支持体30に隣接するように配置されている。具体的には、内縁20と第2の支持体30との間の距離を、第2のクリアランス34とすると、好適な一実施形態においては、第2のクリアランス34は、0.1mm以下である。
【0021】
液圧ユニットの作動中に、弧状吸入口26および弧状吐出口28を通って流体が流れると、バルブプレート本体18に応力が加えられる。その応力が閾値応力レベルに達するまで、外縁22および内縁20は、それぞれ、第1の支持体12および第2の支持体30に向かって撓んでいく。内縁20は、第2の支持体30に係合するまで撓んでいき、他方、外縁22は、第1の支持体12に係合するまで撓んでいく。外縁22または内縁20が、それぞれ、第1の支持体12または第2の支持体30に係合したとき、バルブプレートアセンブリ10は、第2の状態になったとする。
【0022】
図3に示すように、第2の状態においては、外縁22または内縁20が、第1の支持体12または第2の支持体30に係合しているから、バルブプレート本体18の剛性が高まる。したがって、第2の状態にあるとき、応力の一部は、バルブプレート本体18から、第1の支持体12または第2の支持体30に移される。したがって、弧状吸入口26および弧状吐出口28におけるバルブプレート16の故障は防止される。
【0023】
図4は、圧力35Aと、作動中にバルブプレート本体18に働く応力35Bとの関係を示すグラフである。線分36で示されている第1の状態においては、外縁および内縁は、第1および第2の支持構造と係合していない。したがって、圧力上昇とともに、応力も、急速に増加する。
【0024】
外縁22または内縁20が、第1または第2の支持体と係合している第2の状態に、バルブプレート16が到達したことを表わす点38における圧力よりも大きな圧力では、応力の増加率は、線分40によって示されているように、非常に小さくなる。
【0025】
第1および第2の支持体12および30を、それぞれ、バルブプレート本体18の外縁22および内縁20のごく近くに係脱可能に配置することによって、第2の状態において、バルブプレート本体18は、第1の支持体12または第2の支持体30と係合することができる。したがって、支持が付加されて、故障が防止される。そのため、弧状吸入口26または弧状吐出口28内にウェブを配置する必要はなくなり、したがって、最大限の流量が、弧状吸入口26および弧状吐出口28を通って流れることが可能になり、液圧ユニットの効率は最大となる。
【0026】
さらに、設計において、所定の圧力レベルを超過すると、支持が行われるように、第1および第2のクリアランス32および34、および、バルブプレートおよび支持体の剛性を最適化することによって、供給する支持量を最大とすることができる。したがって、少なくとも上述の目的の全てが満たされる。
【0027】
当業者であれば、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の装置に種々の変形および変更をなすことができることを認識するはずである。そのような変形例および変更例は、全て請求項の範囲内にあり、請求項に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のウェブを備えたバルブプレートの底面図である。
【図2】液圧ユニットの、第1の状態におけるバルブプレートアセンブリの底面の断面図である。
【図3】液圧ユニットの、第2の状態におけるバルブプレートアセンブリの底面の断面図である。
【図4】圧力とバルブプレートに働く応力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
10 バルブプレートアセンブリ
12 第1の支持体
14 円孔
16 バルブプレート
18 バルブプレート本体
20 内縁
22 外縁
24 中心孔
26 弧状吸入口
28 弧状吐出口
30 第2の支持体
32 第1のクリアランス
34 第2のクリアランス
35A 圧力
35B 応力
36 線分
38 点
40 線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体の開口の内部に、第1の支持体と係脱可能に配置されており、かつ、バルブプレートの開口と、バルブプレートの開口を囲む内縁と、第1の状態において、前記第1の支持体のごく近くに隣接している外縁とを有するバルブプレートであって、
前記内縁と外縁との間に広がっており、かつ、弧状流入口および弧状吐出口を有する本体を備えているバルブプレートと、
前記バルブプレートの開口の内部に、前記内縁が係脱可能に配置され、かつ、前記第1の状態において、前記内縁のごく近くに隣接している第2の支持体とを備えている液圧ユニットであって、
前記本体に働く応力が、閾値応力レベルに達すると、第2の状態となって、前記内縁は、前記第2の支持体に係合するまで撓み、および/または、前記外縁は、前記第1の支持体に係合するまで撓み、そして、
前記第2の状態においては、前記本体に働く応力の一部が、前記本体から、前記第1および/または第2の支持体に移されるようになっている液圧ユニット。
【請求項2】
前記第1の支持体はヨークである、請求項1に記載の液圧ユニット。
【請求項3】
前記第2の支持体はスピンドルである、請求項2に記載の液圧ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−309154(P2008−309154A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151385(P2008−151385)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】