説明

液圧供給ポンプ

【課題】 複数台のポンプの吐出量を安定、且つ、均一にすることができる液圧供給ポンプを提供すること。
【解決手段】 アキシャルピストンポンプ10の吐出量を変化させるリリーフ弁20と、アキシャルピストンポンプ10の斜板13の斜板角度を検出する斜板角度検出器17と、斜板角度検出器17に検出された斜板角度に基づいてリリーフ弁20を制御してアキシャルピストンポンプ10の吐出量を調整する制御コントローラ18とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧供給ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関において、燃料噴射ポンプ及び排気弁駆動装置を畜圧した作動油を用いて駆動させるものが種々提供されている。機関のクランク軸に連動する液圧供給ポンプにより加圧された作動油が蓄圧器に供給され、この蓄圧された作動油の供給を電磁弁により制御することで、燃料噴射ポンプ及び排気弁駆動装置は、負荷ごとに自由に作動タイミングを調整できるようになっている。
【0003】
液圧供給ポンプには作動油の吐出圧力を一定に保つための機構が設けられている。これは、吐出圧力と予め設定されたパイロット液圧力やスプリングのばね力等とでバランスをとることにより、ポンプ吐出圧を一定に制御するためであり、通常、機関運転中においては、このパイロット液圧力やばね力は一定に保たれている。このような、従来の圧力一定機構を有する液圧供給ポンプは、例えば、特許文献1,2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−82353号公報
【特許文献2】特開2000−18131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図6に示すように、圧力一定機構を有する液圧供給ポンプの吐出量(容量)は、最大吐出量(最大容量)と最小吐出量(最小容量)との間で可変になっており、吐出圧力が設定圧力P(一定)よりも低い場合には吐出量は最大で運転される一方、吐出圧力が設定圧力Pよりも高い場合には吐出量は最小で運転される。しかし、液圧供給ポンプの圧力一定機構は、完全に設定圧力Pを一定に保つことはできず、実際には、図7に示すような傾きθ0を有している。このような特性を垂下特性という。
【0006】
設定圧力Pそのものはパイロット液圧力やばねのセット長を変化させることで調整が可能であるが、垂下特性の傾きθ0はポンプ制御部のばね特性やバルブクリアランス等の機械的特性等により決まってしまうために、任意の傾きに微調整(任意の設定圧力Pに対して、任意の吐出量を設定)することは困難である。そして、垂下特性が機械的特性により、例えば、限りなくZ字形に近い圧力−吐出量特性になった場合には、吐出量が不安定に変動する現象、所謂、ハンチング現象が発生するおそれがある。つまり、従来の液圧供給ポンプでは、上述したように、垂下特性の傾きθ0を修正することが困難であるために、設定圧力に対して吐出量が安定しない現象(ハンチング現象)を防ぐことが困難であった。
【0007】
そして、垂下特性の傾きθ0は、ポンプ構成部品の微妙な個体差に由来し、同じ型式のポンプであってもばらつきがでてしまう。そこで、複数の液圧供給ポンプを併用する際には、吐出量の大小はポンプの寿命に影響を与えるので、各ポンプの寿命の均一化を図るためには、各ポンプを略同じ条件で運転し、各ポンプの吐出量を略同じにすることが最良とされる。また、ポンプ制御部のばね特性に非線形性を持たせるなどして機械的に工夫することで、垂下特性の傾きθ0を極端に大きくし、ハンチング現象や個体差のばらつきを相対的に小さくすることは可能である。しかし、垂下特性の傾きθ0が大きすぎると、吐出量の変化による吐出圧力の変化が大きくなり、本来の目的である圧力一定機構の性能が悪化してしまうおそれがある。つまり、これらのことからも、任意の設定圧力に対し、各ポンプの吐出量を安定化、且つ、均一化させるには、液圧供給ポンプの垂下特性を微調整できる(各ポンプの圧力−吐出量特性を揃える)ようにすることが必要であると考えられる。
【0008】
従って、本発明は上記問題を解決するものであって、複数台のポンプの吐出量を安定、且つ、均一にすることができる液圧供給ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る液圧供給ポンプは、
ポンプの吐出圧力を制御する液圧供給ポンプにおいて、
前記ポンプの吐出量を変化させる吐出量可変手段と、
ポンプ容量あるいは吐出量を検出する検出手段と、
前記検出手段に検出されたポンプ容量あるいは吐出量に基づき前記吐出量可変手段を制御して前記ポンプの吐出圧を調整する制御手段とを備える
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る液圧供給ポンプは
第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量を予め設定し、該制御量に基づき前記ポンプの吐出圧を制御する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る液圧供給ポンプは、
第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に応じて制御する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る液圧供給ポンプは、
第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段はポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量を予め設定する一方、該制御量に検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に応じた偏差制御量を加味して制御する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係る液圧供給ポンプは、
第1乃至4のいずれかの発明に係る液圧供給ポンプにおいて、
前記ポンプの吸入通路と吐出通路とを接続する接続通路を備え、
前記接続通路に一方向のみ流動を許容するときには逆方向の流動を規制する弁を設け、
前記弁を前記吐出量可変手段と接続させる
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係る液圧供給ポンプは、
第1乃至5のいずれかの発明に係る液圧供給ポンプにおいて、
検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に基づき前記吐出量可変手段としてのリリーフ弁を制御して前記ポンプの吐出圧を調整するようにした
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る液圧供給ポンプによれば、ポンプの吐出圧力を制御する液圧供給ポンプにおいて、前記ポンプの吐出量を変化させる吐出量可変手段と、ポンプ容量あるいは吐出量を検出する検出手段と、前記検出手段に検出されたポンプ容量あるいは吐出量に基づき前記吐出量可変手段を制御して前記ポンプの吐出圧を調整する制御手段とを備えることにより、安定したポンプ吐出量を得ることができる。
【0016】
第2の発明に係る液圧供給ポンプによれば、第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量に補正量を加味し、該制御量に基づき前記ポンプの吐出圧を制御することにより、前記ポンプに意図的に垂下特性を持たせることが可能であり、ハンチング現象を防止することができる。
【0017】
第3の発明に係る液圧供給ポンプによれば、第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量(例えば、複数ポンプの吐出量の平均値)との偏差に応じて制御することにより、複数の前記ポンプを同時に使用する場合でも、それぞれの吐出圧を略一定にすることができる。
【0018】
第4の発明に係る液圧供給ポンプによれば、第1の発明に係る液圧供給ポンプにおいて、前記制御手段はポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量に補正量を加味し、該制御量に基づき前記ポンプの吐出圧を制御することにより、前記ポンプに意図的に垂下特性を持たせると共に、該制御量に検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に応じた偏差制御量を加味して制御することにより、個体ごとの機械的特性による垂下特性にばらつきがある複数のポンプを同時に使用する場合であっても、それぞれの吐出圧を略一定にすることができ、吐出量も略一定にすることが容易である。
【0019】
第5の発明に係る液圧供給ポンプによれば、第1乃至4のいずれかの発明に係る液圧供給ポンプにおいて、前記ポンプの吸入通路と吐出通路とを接続する接続通路を備え、前記接続通路に一方向のみ流動を許容するときには逆方向の流動を規制する弁を設け、前記弁を前記吐出量可変手段と接続させることにより、前記ポンプの吸入と吐出しを変更することができる。
【0020】
第6の発明に係る液圧供給ポンプによれば、第1乃至5のいずれかの発明に係る液圧供給ポンプにおいて、前記ポンプはアキシャルピストンポンプであり、該アキシャルピストンポンプの斜板角度に基づき前記吐出量可変手段としてのリリーフ弁を制御して前記ポンプの吐出圧を調整するようにしたことにより、簡素な構成で精度良く吐出量を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る液圧供給ポンプの実施形態を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る液圧供給ポンプの概略構成図、図2は制御コントローラのブロック図、図3は他の制御コントローラのブロック図、図4は更に他の制御コントローラのブロック図、図5は本発明の他の実施例に係る液圧供給ポンプの概略構成図である。
【0022】
図1に示す液圧供給ポンプ1は、例えば、正逆転可能な船舶用内燃機関に3個設けられ、この機関のクランク軸に連動して駆動されるものである。そして、この液圧供給ポンプ1は、内燃機関に設けられた燃料噴射を行う燃料噴射ポンプ及び排気弁を駆動させる動弁装置等に、機関の負荷に応じて作動油を供給するものである。
【0023】
図1に示すように、液圧供給ポンプ1はその外形がケーシング2により形成されている。ケーシング2の上部には切換弁3が設けられており、切換弁3はスプリング4とスプール5とから構成されている。切換弁3の外側のケーシング2には、スプリング4の図中左方向への所定量以上の移動を規制するストッパ6が支持されている。また、ケーシング2の中央部には制御器ピストン7が設けられており、その両側のケーシング2には、制御器ピストン7の図中左方向への所定量以上の移動を規制するストッパ8と、同じく図中右方向への所定量以上の移動を規制するストッパ9とが支持されている。
【0024】
更に、ケーシング2の下部には可変吐出量形のアキシャルピストンポンプ10が設けられており、アキシャルピストンポンプ10はシリンダ11,ピストン12a,12b及び斜板13から構成されている。シリンダ11は、一端において軸受け14に支持されると共に他端において軸受け15に支持されることにより、ケーシング2に回転可能に支持されている。また、その一端は内燃機関のクランク軸と連結されている。そして、斜板13は連結部材16を介して制御器ピストン7に連結されており、制御器ピストン7が図中左方向に移動すると斜板角度を大きくし、図中右方向に移動すると斜板角度を小さくする。ピストン12a,12bは斜板13の回転運動に基づきシリンダ11の軸方向に往復運動するもので、その往復運動により圧縮室11a,11bが形成される。即ち、斜板13が図中左方向に傾くと吐出量が大きくなり、図中右方向に傾くと吐出量が小さくなる。
【0025】
連結部材16には斜板13の斜板角度を検出する斜板角度検出器17が接続されており、この斜板角度検出器17には制御コントローラ18が接続されている。そして、制御コントローラ18は、内燃機関のクランク軸に設けられ機関回転を検出するクランク角センサ19と接続される一方、切換弁3に設定圧力を付与するリリーフ弁20と接続されている。
【0026】
作動油は吸入ライン21から圧縮室11bに供給され、加圧されて圧縮室11aから吐出ライン22を通って燃料噴射ポンプ及び動弁装置等へ供給される。このとき、作動油は吐出ライン22から分岐した分岐ライン23にも流れることになり、油路24を通り、制御器ピストン7の一端側に形成されるA室にも供給される。A室には切換弁3側と連通する油路25が接続されており、切換弁3にはその一端側に形成されるB室と連通する油路3aが形成されている。油路25と油路3aとは常に連通される。一方、切換弁3が図中左方向に移動する場合には、油路25は、制御器ピストン7の他端側に形成されるC室と接続する油路26と連通される。また、油路26の中間部には、ドレンライン27に連通するためのオリフィス28が設けられている。
【0027】
そして、リリーフ弁20には切換弁3側と連通する油路29が接続されており、この油路29は切換弁3側に形成されたD室に連通する油路29aと、スプリング4が配置されたE室に連通する油路29bとに分岐されている。また、リリーフ弁20の油路29が接続される反対側にはドレンライン27と連通する油路30が接続されている。
【0028】
即ち、予め設定されたスプリング4のばね力とリリーフ弁20によりE室に供給された圧力とを合わせた力が、B室に導かれる吐出圧力によるスプール5の図中左方向の作用力よりも大きくなる場合には、切換弁3が図中右方向に移動され、油路25から油路26への通路は閉状態となるのでC室への作動油供給は遮断され、一方、制御器ピストン7はA室圧力により図中左方向に押され、C室の作動油はオリフィス28を通ってドレンライン27に徐々に排出される。また、予め設定されたスプリング4のばね力とリリーフ弁20によりE室に供給された圧力とを合わせた力が、B室に導かれる吐出圧力によるスプール5の図中左方向の作用力よりも小さくなる場合には、切換弁3が図中左方向に移動され、油路25から油路26への通路は開状態となるのでC室への作動油が供給され、制御器ピストン7は右に移動する。
【0029】
従って、吐出ライン22の吐出圧力が上昇すると、スプール5のB室圧力による図中左方向の作用力はスプリング4のばね力とリリーフ弁20の圧力とを合わせた力よりも大きくなり、切換弁3が図中左側に移動され、A室に導かれている作動油をC室に供給させる。これにより、制御器ピストン7が図中右方向に移動され、斜板13の斜板角度を小さくし、吐出量を減少される。また、吐出ライン22の吐出圧力が低下すると、スプール5のB室圧力による図中左方向の作用力はスプリング4のばね力とリリーフ弁20の圧力とを合わせた力よりも小さくなり、切換弁3が図中右側に移動され、C室に導かれている作動油をオリフィス28を介してドレンライン27から排出させる。これにより、制御器ピストン7が図中左方向に移動され、斜板13の斜板角度を大きくし、吐出量を増加させる。
【0030】
ここで、本発明の液圧供給ポンプ1では、リリーフ弁20の設定圧力は作動油の吐出量に基づいて随時変更されており、連結部材16の揺動位置に基づき斜板13の斜板角度を検出し、制御コントローラ18により斜板角度から現在の吐出量を算出すると共にその吐出量に応じてリリーフ弁20の設定圧力を制御するようにしている。
【0031】
次に、図2乃至4を用いて制御コントローラ18の構成及び処理方法について説明する。
【0032】
先ず、図2に示すように、制御コントローラ18には、クランク角センサ19に接続される基準吐出圧力算出部31と、この基準吐出圧力算出部31と斜板角度検出器17とに接続される垂下特性算出部32とが設けられている。
【0033】
即ち、クランク角センサ19では、所定期間ごとに検出されたクランク角に基づき機関の回転数Nが検出され、この回転数Nを基準吐出圧力算出部31に出力する。基準吐出圧力算出部31では、回転数と吐出圧力との関係がマップにより予め設定されており、このマップから回転数Nに基づいて基準吐出圧力Poを算出する。垂下特性算出部32では、斜板角度に対する垂下特性の補正量(以下、垂下量とする)のマップが予め設定(具体的には、斜板角度、即ち、吐出量(ポンプ容量)が大きくなると吐出圧力が小さくなるような設定)されており、このマップから斜板角度検出器17により検出された斜板13の斜板角度δ1に応じて垂下量を算出し、基準吐出圧力Poから目標吐出圧力Psを決定する。目標吐出圧力Psは電気信号として出力され、リリーフ弁20を制御する。なお、複数台のポンプにて液圧を供給している場合、このような制御は、それぞれの液圧供給ポンプ1において同時に行われている。
【0034】
従って、斜板13の斜板角度δ1を検出、即ち、吐出量を検出し、それに応じた目標吐出圧力Psでリリーフ弁20を制御するので、図7の一点鎖線に示すように垂下特性の傾きθを任意に設定することができる。つまり、固体ごとの機械特性による垂下特性にばらつきがあっても、垂下特性を微調整して任意に設定することができるので、目標吐出圧力Psに対して安定した吐出量を得ることが可能(ハンチング防止)である。更に、複数台を運転する場合には、各ポンプに対して設定する垂下特性を同一にすることで、目標吐出圧力Psに対する各ポンプの吐出量の均一化を図ることができる。
【0035】
また、制御コントローラ18は図3に示すような構成であっても構わない。なお、図2に示すものと同様のものには同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
図3に示すように、制御コントローラ18には、クランク角センサ19に接続される基準吐出圧力算出部31と、各液圧供給ポンプ1に設置された斜板角度検出器17に接続される平均値算出部33と、減算器34を介して平均値算出部33に接続されるPID算出部35と、基準吐出圧力算出部31とPID算出部35とに接続される加算器36とが設けられている。
【0037】
平均値算出部33は各液圧供給ポンプ1に設けられた斜板角度検出器17により検出された斜板角度δ1,δ2,δ3の平均値δmを求めるものである。PID算出部35は比例算出部37、積分算出部38、微分算出部39及び加算器40から構成されており、減算器34で求められた平均値δmと斜板角度δ1との差Δδに基づき比例制御,積分制御及び微分制御を行い、その各制御の和を補正値として算出するものである。
【0038】
即ち、クランク角センサ19では、所定期間ごとに検出されたクランク角に基づき機関の回転数Nが検出され、この回転数Nを基準吐出圧力算出部31に出力する。一方、各斜板角度検出器17により検出された斜板角度δ1,δ2,δ3が平均値算出部33に出力される。平均値算出部33により斜板角度の平均値δmが算出された後、減算器34において平均値δmと斜板角度δ1の差Δδ1が算出されPID算出部35に出力される。
【0039】
PID算出部35では差Δδ1に基づきPID制御を行い、例えば、比例算出部37においては差Δδ1に比例して制御を行う比例項αpを算出し、積分算出部38においてはわずかな差Δδ1を時間的に累積して所定量の差になったところで制御を行う積分項αiを算出し、微分算出部39においては前回算出した差Δδ1との変化差をみて制御を行う微分項αdを算出する。そして、加算器40により比例項αp,積分項αi及び微分項αdの和が加算器36に出力される。
【0040】
加算器36では、基準吐出圧力算出部31で算出された基準吐出圧力Poに比例項αp,積分項αi及び微分項αdを加算してリリーフ弁設定圧力Pfを算出する。そして、リリーフ弁設定圧力Pfになるようにリリーフ弁20を制御する。
【0041】
なお、他の2つの液圧供給ポンプ1においても同様の制御が行われており、2つめの液圧供給ポンプ1においては基準吐出圧力Poに差Δδ2に応じたPID制御量を加味し、3つめの液圧供給ポンプ1においては基準吐出圧力Poに差Δδ3に応じたPID制御量を加味している。また、本実施例においては、液圧供給ポンプ1を3つ備えているが、この数量に限定されることはなく、2つ以上備えていれば制御は可能である。
【0042】
従って、複数の液圧供給ポンプ1を同時に使用する場合には、斜板13の斜板角度δ1,δ2,δ3を検出、即ち、吐出量を検出し、それぞれの吐出量を比較することにより、略同一の吐出量を安定して得ることができるので、いずれかの液圧供給ポンプ1の寿命だけが短くなるといった問題を防止することができる。
【0043】
また、制御コントローラ18は図4に示すような構成であっても構わない。なお、図2,3に示すものと同様のものには同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
図4に示すように、制御コントローラ18には、クランク角センサ19に接続される基準吐出圧力算出部31と、この基準吐出圧力算出部31と斜板角度検出器17とに接続される垂下特性算出部32と、各液圧供給ポンプ1に設置された斜板角度検出器17に接続される平均値算出部33と、減算器34を介して平均値算出部33に接続されるPID算出部35と、基準吐出圧力算出部31とPID算出部35とに接続される加算器36とが設けられている。
【0045】
即ち、クランク角センサ19では、所定期間ごとに検出されたクランク角に基づき機関の回転数Nが検出され、この回転数Nを基準吐出圧力算出部31に出力する。基準吐出圧力算出部31では、回転数と吐出圧力との関係がマップにより予め設定されており、このマップから回転数Nに基づいて基準吐出圧力Poを算出して垂下特性算出部32に出力する。垂下特性算出部32では、斜板角度に対する垂下量が予め設定されており、このマップから斜板角度検出器17により検出された斜板13の斜板角度δ1に応じて垂下量を算出し、基準吐出圧力Poから目標吐出圧力Psを決定する。算出された目標吐出圧力Psは加算器36に出力される。
【0046】
一方、各斜板角度検出器17により検出された斜板角度δ1,δ2,δ3が平均値算出部33に出力される。平均値算出部33により斜板角度の平均値δmが算出された後、減算器34において平均値δmと斜板角度δ1の差Δδ1が算出されPID算出部35に出力される。PID算出部35では、差Δδ1に基づいてPID演算を行い、比例算出部37,積分算出部38,微分算出部39により比例項αp,積分項αi,微分項αdが演算され、それぞれが加算器40に出力される。
【0047】
そして、加算器36では、垂下特性演算算出部32で算出された目標吐出圧力Psに比例項αp,積分項αi及び微分項αdを加算してリリーフ弁設定圧力Pfを算出する。そして、リリーフ弁設定圧力Pfになるようにリリーフ弁20を制御する。
【0048】
なお、他の2つの液圧供給ポンプ1においても同様の制御が行われており、2つめの液圧供給ポンプ1においては目標吐出圧力Psに差Δδ2に応じたPID制御量を加味し、3つめの液圧供給ポンプ1においては目標吐出圧力Psに差Δδ3に応じたPID制御量を加味している。また、本実施例においては、液圧供給ポンプ1を3つ備えているが、この数量に限定されることはなく、2つ以上備えていれば制御は可能である。更に、液圧供給ポンプ1が1つである場合には、平均値δmに相当する基準値(目標値)を設定しておき、検出した斜板角度δ1とその基準値との差をPID算出部35に出力させるようにしても構わない。
【0049】
従って、斜板13の斜板角度δ1を検出、即ち、吐出量を検出し、それに応じた目標吐出圧力Psを算出し、更に、平均値δmに対するPID制御量を目標吐出圧力Psに加味することで、各ポンプの吐出圧がより正確に均一化され、ひいては、各ポンプの吐出量を安定的、且つ略同一に制御することができる。よって、いずれかの液圧供給ポンプ1の寿命だけが短くなるといった問題を防止することができる。
【0050】
また、液圧供給ポンプ1が正逆転可能な船舶用内燃機関に設けられた場合は、図5に示すような構成にしても構わない。
【0051】
この構成は吸入ライン21と供給ライン22とを連通する接続ライン41を接続させ、この接続ライン41上に設けられたシャトル弁42に分岐ライン23を接続したものである。シャトル弁42は、一方向のみ作動油の流動を許容するときには逆方向の流動を規制するものである。
【0052】
例えば、機関が正回転する場合には、作動油は吸入ライン21から圧縮室11bに供給され、加圧されて圧縮室11aから吐出ライン22を通って燃料噴射ポンプ及び動弁装置等へ供給されると共に、シャトル弁42を通り分岐ライン23に流れる。また、機関が逆回転する場合には、作動油は吐出ライン22から圧縮室11aに供給され、加圧されて圧縮室11bから吸入ライン21を通って燃料噴射ポンプ及び動弁装置等へ供給されると共に、シャトル弁42を通り分岐ライン23に流れる。なお、機関の正回転時及び逆回転時の作動油の流れは逆であっても構わない。従って、このような、シャトル弁42を設けた構成であっても、上述した作用効果を得ることができる。
【0053】
従って、本発明の液圧供給ポンプによれば、アキシャルピストンポンプ10の吐出量を変化させるリリーフ弁20と、アキシャルピストンポンプ10の斜板13の斜板角度を検出する斜板角度検出器17と、斜板角度検出器17に検出された斜板角度に基づいてリリーフ弁20を制御してアキシャルピストンポンプ10の吐出量を調整する制御コントローラ18とを備えたことにより、機械的特性を有するスプリング4を用いてもリリーフ弁20の設定圧力を容易に制御することができるので、安定したポンプ吐出量を得ることができる。
【0054】
また、斜板角度に応じてリリーフ弁20の設定圧力を予め設定し、該設定圧力に基づきアキシャルピストンポンプ10の吐出量を制御することにより、垂下特性の傾きを任意に設定することができるので、個体ごとの機械的特性による垂下特性にばらつきがあっても、ハンチング現象を防止することができる。
【0055】
また、複数の前記ポンプを同時に使用する場合でも、1つの斜板角度と平均斜板角度との偏差に応じて制御することにより、それぞれの吐出量を略一定にすることができる。
【0056】
また、斜板角度に応じてリリーフ弁20の設定圧力を予め設定する一方、該設定圧力に斜板角度と平均値との偏差に応じたPID制御量を加味することにより、垂下特性の傾きを任意に設定することができるので、個体ごとの機械的特性による垂下特性にばらつきがあってもハンチング現象を防止することができる。しかも、それぞれの吐出量を略一定にすることができるので、いずれかの液圧供給ポンプ1の寿命だけが短くなるといった問題を防止することができる。
【0057】
また、吸入ライン21と吐出ライン22とを接続する接続ライン41を備え、該接続ライン41に一方向のみ流動を許容するときには逆方向の流動を規制するシャトル弁42を設け、該シャトル弁にリリーフ弁20側に連通する分岐ライン23を接続することにより、アキシャルピストンポンプ10の吸入と吐出しを変更することができるので、正逆転可能な船舶用内燃機関に容易に設けることが可能になる。
【0058】
更に、アキシャルピストンポンプ10の斜板角度に基づいてリリーフ弁20を制御して吐出量を調整するようにしているので、簡素な構成で精度良く吐出量を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
圧力を一定に保つ機構を備えた液圧供給ポンプに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例に係る液圧供給ポンプの概略構成図である。
【図2】制御コントローラのブロック図である。
【図3】他の制御コントローラのブロック図である。
【図4】更に他の制御コントローラのブロック図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る液圧供給ポンプの概略構成図である。
【図6】圧力一定時における吐出圧力と吐出量との関係を示す図である。
【図7】垂下特性を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 液圧供給ポンプ
2 ケーシング
3 切換弁
3a 油路
4 スプリング
5 スプール
6,8,9 ストッパ
7 制御器ピストン
10 アキシャルピストンポンプ
11 シリンダ
11a,11b 圧縮室
12a,12b ピストン
13 斜板
14,15 軸受け
16 連結部材
17 斜板角度検出器
18 制御コントローラ
19 クランク角センサ
20 リリーフ弁
21 吸入ライン
22 吐出ライン
23 分岐ライン
24,25,26,29,30 油路
27 ドレンライン
28 オリフィス
31 基準吐出圧力算出部
32 垂下特性算出部
33 平均値算出部
34 減算器
35 PID算出部
36,40 加算器
37 比例算出部
38 積分算出部
39 微分算出部
41 接続ライン
42 シャトル弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの吐出圧力を制御する液圧供給ポンプにおいて、
前記ポンプの吐出量を変化させる吐出量可変手段と、
ポンプ容量あるいは吐出量を検出する検出手段と、
前記検出手段に検出されたポンプ容量あるいは吐出量に基づき前記吐出量可変手段を制御して前記ポンプの吐出圧を調整する制御手段とを備える
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量を予め設定し、該制御量に基づき前記ポンプの吐出圧を制御する
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段は、検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に応じて制御する
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の液圧供給ポンプにおいて、
前記制御手段はポンプ容量あるいは吐出量に応じて前記吐出量可変手段の制御量を予め設定する一方、該制御量に検出したポンプ容量あるいは吐出量と目標量との偏差に応じた偏差制御量を加味して制御する
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液圧供給ポンプにおいて、
前記ポンプの吸入通路と吐出通路とを接続する接続通路を備え、
前記接続通路に一方向のみ流動を許容するときには逆方向の流動を規制する弁を設け、
前記弁を前記吐出量可変手段と接続させる
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液圧供給ポンプにおいて、
前記ポンプはアキシャルピストンポンプであり、該アキシャルピストンポンプの斜板角度に基づき前記吐出量可変手段としてのリリーフ弁を制御して前記ポンプの吐出圧を調整するようにした
ことを特徴とする液圧供給ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−51622(P2007−51622A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239067(P2005−239067)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】