説明

液晶セルとその製造方法

【課題】光ピックアップ装置等の収差補正手段としての液晶セルにおいて、小型でありながら多数の接続端子を備えた高性能な液晶セルと、その製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板2、3に形成された電極パターン4、5に接続して、枠状シール10の外側まで延出する引き出し配線7a〜7fと、枠状シール10の外側で露出する引き出し配線に接続して基板端面2a、2bから導出する導電材15とを有し、枠状シール10は、基板端面2a、2bに至り、引き出し配線7a〜7fを露出する複数個の切り欠き部11a〜11fを有して形成されており、切り欠き部のそれぞれに導電材15を充填することで、基板端面2a、2bで引き出し配線7a〜7fとの導通を取る構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に搭載されて、収差補正等に用いられる小型の液晶セルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、DVD等の光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置に搭載される光ピックアップ装置は、種々の要因により発生する波面収差の影響を受けて性能が劣化することが問題となっている。この波面収差には、光ディスクのチルト角等に起因するコマ収差や、光ディスクのカバー層の厚み誤差や情報記録面の多層化に伴う球面収差などがあり、また、光学系に起因する非点収差も存在する。
【0003】
これらの収差は、特に光ディスクの記録密度の高密度化に伴って影響が大きくなり、この収差を相殺して高精度に補正する収差補正手段が、光ディスクの高密度化、高容量化に向けて不可欠な技術となっている。そして、この収差補正手段として、光ピックアップ装置の光路中に液晶セルを配置し、この液晶セルに所定の電圧を印加することによって液晶の屈折率を変化させ、通過する光ビームに位相差を与えて各種の収差を補正する収差補正用の液晶セルが開発されている。
【0004】
また、光ピックアップ装置が搭載される光ディスク装置は、ノートパソコン等の小型化薄型化に伴って小型化や軽量化の要求がますます高まっており、この光ピックアップ装置に組み込まれる収差補正手段としての液晶セルの小型化は、極めて重要な開発要素である。このような背景から、光ピックアップ装置の収差補正手段としての小型の液晶セルとその製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下、収差補正手段としての液晶セルを搭載した光ピックアップ装置の概略と、特許文献1に開示されている収差補正手段としての従来の液晶セルの概略を図面に基づいて説明する。ここで、図13は光ピックアップ装置の概略を模式的に示す構成図である。
【0006】
図13において、100は収差補正手段としての液晶セルを搭載した光ピックアップ装置である。101は、レーザ光源であり、コリメータレンズ103は、レーザ光源101から出射される光ビームを平行光に変換する。また、偏光ビームスプリッタ105は、レーザ光源101から出射される直線偏光を透過し、光ディスク110から反射するそれと直交する方向の直線偏光を反射するように設定されている。
【0007】
そして、120は収差補正手段としての液晶セルであり、液晶への印加電圧を制御することにより、レーザ光源101から出射された光ビームに対して、例えばコマ収差等の収差補正を行う。
【0008】
また、レーザ光源101から出射されたそれぞれの光ビームに対して、直線偏光で入射した光ビームを円偏光に変換するλ/4波長板107を、液晶セル120の光ディスク110側に設けている。これにより、レーザ光源101から出射された光ビームの往路光と、光ディスク110で反射される復路光の偏光方向を90度変換させる。
【0009】
また、対物レンズ111は、レーザ光源101からの光ビームを集光して光ディスク110上にビームスポットを形成する。また、集光レンズ112は、偏光ビームスプリッタ105で反射されてきた光ビームを受光器114に集光する働きを備えている。受光器114は、入射して来た光ビームをそれぞれ電気信号に変換し、光ディスク110に記録さ
れている情報を読み出す。
【0010】
以上のように光ピックアップ装置100は、収差を補正する液晶セル120を搭載することにより、光ディスクの高密度化、高容量化に対応する高性能な光ピックアップ装置を実現することが出来る。
【0011】
次に、このような光ピックアップ装置100に搭載される液晶セルの一例として、特許文献1に開示されている液晶セルを図14(a)、図14(b)に基づいて説明する。図14(a)は従来の液晶セル120の断面図であり、図14(b)は、その平面図である。なお、本図(a)は、(b)図のC−C断面図である。
【0012】
図14(a)(b)に示すように、液晶セル120は、一方の面に電極パターンを有する第1の透明基板121と第2の透明基板123を、電極パターン122、124を対向させて枠状シール125によって所定の隙間を有して固着して形成されている。この第1、第2の透明基板121、123の隙間、すなわち、第1、第2の透明基板121、123に形成された電極パターン122、124によって挟まれたスペースに、液晶126が注入口127から注入して形成されている。尚、電極パターン122には、コマ収差補正を行うためのパターンが形成されている。
【0013】
また、この電極パターン122には、枠状シール125の外側に導出する引き出し配線130、131が形成されている。この引き出し配線130、131は、外部からの駆動信号を枠状シール125の内側の電極パターン122に供給するための配線パターンである。そして、この液晶セル120は、第1、第2の透明基板121、123に同形状で同サイズの基板を使用し、第1、第2の透明基板121、123の基板端面が位置を同じくして貼り合せて構成されている。なお、電極パターン124には、図示しない他の接続用配線および接続端子に繋がっており、電極パターン122、124にそれぞれ給電できるようになっている。
【0014】
また、枠状シール125の外側から第1、第2の透明基板121、123の基板端面までの隙間に、引き出し配線130、131に電気的に接続する導電材132がそれぞれ充填され、更に、第1、第2の透明基板121、123の基板端面の外側には導電ペーストから成る接続端子133が固着されて導電材132と電気的に接続されている。また、この接続端子133には、それぞれに接続用配線135、136が固着され、接続端子133と接続用配線135、136とは電気的に接続される。また、補強材138によって、接続端子133と接続用配線135、136を被覆して、接続用配線135、136と第1、第2の透明基板121、123の端面が確実に固定されるように補強されている。
【0015】
この構成によって、外部からの駆動信号が接続用配線135、136に入力されると、接続端子133、導電材132を介して引き出し配線130、131に伝達され、駆動信号は液晶セル120の電極パターン122、124に供給されて液晶セル120を駆動することが出来る。この液晶セル120によるならば、外部から液晶セルの電極パターン122、124に駆動信号を供給するための接続領域を設ける必要がなくなり、その分だけ液晶セル120の内側領域140(破線で囲んだ領域)に対する外形サイズを小さく出来るので、小型の収差補正用液晶セルを実現できる。
【0016】
【特許文献1】特開2005−215358号公報(第6頁、第1(a)、1(b)、6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この特許文献1の液晶セルは、2枚の第1、第2の透明基板121、123の隙間に充填された導電材132が、枠状シール125の外側で基板端面に沿って広がり、一辺の大部分が導電材132の領域となる。この様に、導電材132の配設領域が基板端面に対して広くなると、第1、第2の透明基板121、123の一辺に複数の接続用配線135、136を設けることが困難となり、基本的にセルの一辺には一つの配線だけしか設けることが出来なくなる。このため、小型の液晶セルを実現できても、液晶セルへ多くの駆動信号を供給できないので、複数の収差を一つの液晶セルで補正することが出来ず、また、細かい電極パターンを形成して高精度に収差補正を行うことも困難となる。
【0018】
そこで、本発明は上記課題を解決し、光ピックアップ装置等の収差補正手段としての液晶セルにおいて、小型でありながら多数の接続端子を備えた高性能な液晶セルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の液晶セルは、下記記載の構成と製造方法を採用する。
【0020】
本発明の液晶セルは、透明基板と、他の透明基板と、透明基板と他の透明基板の内面に、分割して形成された電極パターンと、透明基板と他の透明基板の間隙であって、外延部を囲んで形成された枠状シールと、当該枠状シールの内側領域に配する液晶と、電極パターンに外部信号を給電する為の、複数本の引き出し配線とを備え、透明基板と他の透明基板とは、基板端面を一致させて、枠状シールでもって貼り合わされており、枠状シールは、基板端面に至り、当該基板端面に至る領域において、複数本の引き出し配線のそれぞれを露出させる、当該基板端面から複数個の切り欠き部を有する形状となっており、この複数個の切り欠き部のそれぞれに導電材を充填することで、基板端面で引き出し配線との導通を取ることができる様にしたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の液晶セルによれば、枠状シールは基板端面に至り、引き出し配線を露出する複数個の切り欠き部を有しているので、その切り欠き部に導電材を充填することによって、導電材が枠状シールの切り欠き部から外にはみ出すことが無い。このため、引き出し配線のピッチを狭くしても、導電材が隣接する他の引き出し配線の導電材と繋がって電気的にショートすることが無くなり、透明基板の基板端面に複数の引き出し線を形成することが出来る。これにより、小型液晶セルでありながら、多くの配線をセルの外側に引き出すことが出来、液晶セルへ多くの駆動信号を供給することが可能となる。この結果、複数の収差を補正するための複合収差補正電極パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度な収差補正を行う高性能な液晶セルを、極めて小型に実現することが出来る。
【0022】
また、複数個の切り欠き部が形成された領域は、基板外周の内の少なくとも一部の領域であることを特徴とする。
【0023】
これにより、基板外周の内の少なくとも一部の領域に複数個の切り欠きが形成されるので、多くの配線をセルの外側に引き出すことが可能となり、小型でありながら多くの電極パターンを有する液晶セルを実現することが出来る。
【0024】
また、枠状シールは、閉環形状のシールであることを特徴とする。
【0025】
これにより、液晶滴下方式で液晶セルを製造することが出来、製造工程を増やすことなく、多数の接続端子を有する信頼性に優れた液晶セルを実現することが出来る。
【0026】
また、基板端面で露出する導電材を被覆する接続端子を、更に設けることを特徴とする。
【0027】
この様に構成することで、基板端面で露出する導電領域が広がり、外部からの駆動信号の取り込みが容易となり、信頼性に優れた液晶セルを実現することが出来る。
【0028】
本発明の液晶セルの製造方法は、透明基板と他の透明基板と、透明基板と他の透明基板の内面に、分割して形成された電極パターンと、透明基板と他方の透明基板の間隙であって、外延部を囲んで形成された枠状シールと、当該枠状シールの内側領域に配する液晶と、電極パターンに外部信号を給電する為の、複数本の引き出し配線とを備える液晶セルの製造方法において、電極パターンと、当該電極パターンに接続する複数本の引き出し配線とを、透明基板と他方の透明基板のそれぞれに形成するパターン形成工程と、透明基板の基板端面に至り、当該基板端面に至る領域において、複数本の引き出し配線のそれぞれが露出する複数個の切り欠き部を有する前記枠状シールを、透明基板に形成するシール形成工程と、複数個の切り欠き部で露出する複数本の引き出し配線に接続する導電材を、複数個の切り欠き部のそれぞれに充填する導電材充填工程と、透明基板と他の透明基板における基板端面を一致させて形成した基板の間隙に液晶を挟持する工程と、透明基板と他の透明基板とで挟持された、枠状シールおよび導電材を硬化する硬化工程と、を有することを特徴とするものである。
【0029】
本発明の液晶セルの製造方法により、枠状シールは基板端面まで形成され、引き出し配線を露出する複数個の切り欠き部を有しているので、その切り欠き部に導電材を充填することによって、導電材が枠状シールの切り欠き部から外にはみ出すことが無い。これにより、小型液晶セルでありながら、多くの配線をセルの外側に引き出すことが出来るので、液晶セルへ多くの駆動信号を供給することが出来る。この結果、複数の収差を補正するための複合収差補正電極パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度な収差補正を行う高性能な液晶セルを極めて小型に製造することが出来る。
【0030】
また、シール形成工程では、枠状シールを閉環形状で形成する工程であり、液晶を挟持する工程は、枠状シールの内側領域に液晶を滴下した透明基板と、他の透明基板とを貼り合わせる、または枠状シールを設けた透明基板と、液晶を滴下した他の透明基板とを貼り合わせて行う工程であることを特徴とする。
【0031】
上記工程によれば、枠状シールを閉環形状で形成し、液晶を透明基板に滴下する方法で液晶を封入し透明基板で挟持することが出来るので、製造工程を増やすことなく、多数の接続端子を有する信頼性に優れた液晶セルを製造することが出来る。
【0032】
また、シール形成工程は、枠状シールに光硬化型樹脂を用いて行う工程であり、導電材充填工程は、導電材に熱硬化型樹脂を用いて行う工程であり、硬化工程は、枠状シールを光照射して硬化させた後に、導電材を加熱して形成する工程であることを特徴とする。
【0033】
上記工程によれば、光硬化型樹脂の枠状シールは粘度が高いので、枠状シールの切り欠き部に充填された導電材が切り欠き部から流れ出すことを極力防ぐことが出来る。また、光硬化型樹脂の枠状シールは、光の照射によって短時間で硬化するので、硬化工程の時間短縮が可能となり、また、導電材の流れ出しを更に防ぐことが出来る。また、光の照射による枠状シールの硬化は、液晶が高温にならないので液晶のダメージを防ぐことが出来、信頼性に優れた液晶セルを製造出来る。また、導電材の加熱工程は、枠状シールの硬化後に行われるので、導電材は切り欠き部の中に充填された状態で確実に硬化し、これにより、導電材は引き出し配線と電気的に結合した状態で硬化して、基板端面で露出させることが出来る。また、導電材の加熱温度は低く設定できるので、液晶にダメージを与えること
なく、また、枠状シールを更に硬化させて透明基板の貼り合わせを確実にし、液晶セルの信頼性を更に高めることが出来る。
【0034】
また、導電材充填工程は、他方の透明基板における切り欠き部に対応した位置に導電材を塗布する工程であることを特徴とする。
【0035】
これにより、導電材の塗布と枠状シールの形成を2枚の透明基板で別々の工程で実施出来、その後、2枚の透明基板を貼り合わせることによって導電材を切り欠き部に充填させることが出来る。この結果、導電材を枠状シールの切り欠き部に確実に充填することが出来る。
【0036】
また、硬化工程の後に、基板端面で露出する導電材を被覆する接続端子を形成する接続端子形成工程を、更に有することを特徴とする。
【0037】
上記工程によれば、基板端面で露出する導電領域が広がり、外部からの駆動信号の取り込みが容易となり、信頼性に優れた液晶セルを製造することが出来る。
【0038】
また、接続端子形成工程は、接続端子を印刷して形成する工程であることを特徴とする。
【0039】
上記工程によれば、基板端面で露出している導電材に対して、接続端子を簡単に、且つ、確実に被覆出来るので、信頼性の高い接続端子を液晶セルの基板端面に形成することが出来る。
【発明の効果】
【0040】
上記の如く本発明によれば、小型液晶セルでありながら、多数の配線をセルの外側に引き出すことが出来るので、液晶セルへ多くの駆動信号を供給することが可能となる。これにより、複数の収差を補正するための複合収差補正電極パターンが形成された液晶セルや、高精度な収差補正を行う高性能な液晶セルを、極めて小型に実現し提供することが出来る。また、小型で多数の接続端子を有する液晶セルを、製造工程を増やすことなく短時間で製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下図面により本発明の液晶セルの具体的な構成、その変形例および製造方法を詳述する。
【実施例1】
【0042】
まず、本発明の実施例1の液晶セルの構成を図1(a)、図1(b)に基づいて説明する。実施例1の特徴は、液晶滴下方式(以下、ODF方式と略す)で液晶を封入する液晶セルを本発明に適応したことである。図1(a)は実施例1の液晶セル1の平面図であり、図1(b)は液晶セル1を平面図の断面線A−Aで断面した断面図である。
【0043】
図1(a)、図1(b)において、液晶セル1は、略長方形状の第1の透明基板2と第2の透明基板3が、スペーサ(図示せず)によって、例えば、5μm〜10μmの間隔を置いて枠状シール10によって固着され、周囲の基板端面を一致して貼り合わされている。この第1、第2の透明基板2、3は、略同一形状となっている。
【0044】
そして、第1、第2の透明基板2、3は、その表面にインジウム錫酸化物(ITO)等からなる電極パターン4、5がそれぞれ形成され、対向して配置されている。この第1、第2の透明基板2、3の隙間、すなわち、電極パターン4、5によって挟まれたスペース
には液晶6が封入され、この液晶6は、第1、第2の透明基板2、3によって挟持されている。
【0045】
また、電極パターン4、5には、収差補正のための特定のパターンが分割してそれぞれ形成されている。例えば、図1(a)においては、電極パターン4としてコマ収差補正のために分割された電極パターン4a〜4eが形成され、電極パターン5として電極パターン4a〜4eに対向するベタパターンで形成されている。尚、電極パターン4、5は、コマ収差補正に限定されず、球面収差や非点収差を補正するパターンでも良い。
【0046】
また、図1(a)の7a〜7eは、それぞれ電極パターン4a〜4eに接続して枠状シール10の外側に向けて延出して形成された引き出し配線である。また、図1(b)の7fは、他方の対向する電極パターン5に接続して、枠状シール10の外側に向けて延出して形成された引き出し配線である。これらの引き出し配線7a〜7fは、外部からの駆動信号を枠状シール10の内側の電極パターン4a〜4e、電極パターン5に供給するための配線パターンである。
【0047】
また、枠状シール10は、第1、第2の透明基板2、3の外周を囲うように形成される閉環形状のシールであり、従来例のような液晶を注入するための注入口は存在しない。すなわち、実施例1の液晶セル1は、ODF方式によって液晶6を封入し、液晶6は枠状シール10の内側に封入されて第1、第2の透明基板2、3に挟持されている。尚、本発明のODF方式による製造方法は後述する。
【0048】
また、枠状シール10は、第1、第2の透明基板2、3の基板端面2a、2bまで至って延伸して形成され、基板端面2a側の枠状シール10は、枠状シール10の外側に向けて延出している引き出し配線7a〜7eを露出する複数の切り欠き部11a〜11eを有している。また、基板端面2b側の枠状シール10は、電極パターン5の引き出し配線7fを露出する切り欠き部11fを有している。
【0049】
また、枠状シール10のこれらの切り欠き部11a〜11fには、カーボンペースト等の導電材15がそれぞれ充填され、これによって、第1、第2の透明基板2、3の基板端面2a、2bから導電材15が導出し、基板端面2a、2bの隙間から導電材15を露出させることが出来る。
【0050】
この導電材15は、切り欠き部11a〜11fの内部で引き出し配線7a〜7fとそれぞれ導通を取り、これによって、基板端面2a、2bで露出するそれぞれの導電材15は、引き出し配線7a〜7fを介して、枠状シール10の内部に形成される電極パターン4a〜4e、電極パターン5に電気的に接続される。尚、第1、第2の透明基板2、3は、一例として約0.4mmの白板ガラスで成り、液晶6が封入される隙間は前述した如く5μm〜10μm程度であるので、図1(b)の断面図の第1、第2の透明基板2、3の隙間、及び、電極パターン4、5、液晶6等の厚みは、説明を分かりやすくするために実際のスケールより拡大して描いている。
【0051】
次に、図2(a)の平面図と図2(b)の側面図に基づいて、実施例1の液晶セル1の枠状シール10と導電材15の構成を詳細に説明する。尚、図2(b)は基板端面2a側から見た液晶セル1の側面図である。
【0052】
図2(a)において、枠状シール10は、液晶セル1の外周を囲むように形成され、第1、第2の透明基板2、3の対面する基板端面2a、2bにまで至って形成されている。尚、図2(a)では、枠状シール10の形状を分かりやすくするために、電極パターンと導電材を図示していない。
【0053】
そして、基板端面2aに至る枠状シール10には、その基板端面2aに切り欠き部11a〜11eが形成されている。この切り欠き部11a〜11eは、基板端面2aに対して凹形状を有しており、基板端面2aに沿って略等間隔に複数の小さな切り欠きが形成されている。この切り欠き部11a〜11eに、導電材15が充填されることにより、図2(b)で示すように、基板端面2aから導電材15が略等間隔で露出させることが出来る。
【0054】
また、基板端面2aに対面する基板端面2b側の切り欠き部11fも、切り欠き部11a〜11eと同様な形状であり、その切り欠き部11fにも導電材15が充填され、図示しないが基板端面2bから導電材15を露出させる。このように、枠状シール10の切り欠き部11a〜11fに導電材15を充填することによって、導電材15は切り欠き部11a〜11fに隣接する他の切り欠き部の方向に、流れ出したり、はみ出したりすることが無い。
【0055】
このため、切り欠き部11a〜11eのピッチ、すなわち、引き出し配線7a〜7e(図1(a)参照)のピッチをある程度狭くしたとしても、導電材15が隣接する他の引き出し配線の導電材15と繋がって電気的にショートすることが無くなり、液晶セルの基板端面に多数の配線を引き出すことが出来る。
【0056】
また、実施例1の液晶セル1は、ODF方式の液晶セルであるので、従来例のような液晶の注入口が不要である。このため、基板端面2aに集約して設けた、枠状シール10の切り欠き部11a〜11eを液晶セル1の4辺すべての基板端面に形成することが出来、これによって、より多くの配線を基板端面に引き出すことが出来る。よって、枠状シール10に切り欠き部11a〜11fを有する本発明の液晶セル1は、ODF方式による製造方法と組み合わせることによって、より大きな効果を発揮することが出来る。
【0057】
この様に、実施例1において枠状シール10の切り欠き部11a〜11fは、第1、第2の透明基板2、3の外周の一部にのみ形成されているが、この構成に限定されず、枠状シール10は透明基板2、3のすべての外周の基板端面にまで至り、切り欠き部は第1、第2の透明基板2、3のすべての外周、すなわち、4辺の基板端面すべてに形成されても良い。また、切り欠き部11a〜11fの形状は、略長方形の凹形状で示しているが、この形状に限定されず、導電材15を充填出来るならば、半円形や三角形等どのような形状でも良い。また、図2(b)の側面図での第1、第2の透明基板2、3の隙間は、説明を分かりやすくするために、実際のスケールより拡大して描いている。
【0058】
次に、図3に基づいて、基板端面で露出している導電材15と、この導電材15を被覆する接続端子16について説明する。図3は液晶セル1の基板端面2a側から見た拡大側面図である。
【0059】
図3に示すように、第1、第2の透明基板2、3の隙間には、枠状シール10が形成され、この枠状シール10に略等間隔に形成された切り欠き部11a〜11eに導電材15が充填されて、基板端面2aから露出する形態となっている。尚、第1、第2の透明基板2、3の隙間は、説明を分かりやすくするために、実際のスケールより拡大して描いている。
【0060】
ここで16は、露出している導電材15を被覆する導電ペースト等で成る接続端子である。この接続端子16は、説明を分かりやすくするために半透過で図示しており、接続端子16が導電材15に密着して被覆し、接続端子16と基板端面2aから露出している導電材15が電気的に接続されている。尚、接続端子16は、液晶セル1の厚み程度まで広げて導電材15を被覆しても良く、または、液晶セル1の厚みを多少越えた形態としても
良い。尚、切り欠き部11a〜11eのピッチは、一例として800μm程度であるので、接続端子16のピッチも800μm程度となる。
【0061】
ここで、基板端面2aから露出している導電材15は、前述したように、第1、第2の透明基板2、3の、5μm〜10μm程度の隙間から露出しているだけで、導電材15の露出面積は非常に狭い。この導電材15に外部からの駆動信号を供給するための接続用配線を結合するには、結合面積が狭過ぎるので、信頼性の高い結合を行うことは難しい。そこで、図3に示すように、接続端子16によって導電材15を被覆することで、基板端面で露出する導電領域が広がり、接続用配線を結合することが容易となるのである。
【0062】
以上のように本発明の液晶セル1は、枠状シール10が、第1、第2の透明基板2、3の外周を囲う閉環形状のシールであって、少なくとも枠状シール10の一部が基板端面に至り、引き出し配線7a〜7fを露出する複数個の切り欠き部11a〜11fを有している。そして、その切り欠き部11a〜11fに導電材15を充填することによって、その導電材15と引き出し配線7a〜7fが導通するので、小型液晶セルでありながら、多くの配線を液晶セルの外側に引き出すことが出来、液晶セルへ多くの駆動信号を供給することが可能となる。
【0063】
この結果、複数の収差を補正するための複合収差補正パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度の収差補正を行う高性能な液晶セルを極めて小型に実現することが出来る。また、上述したように接続端子16で導電材15を被覆することによって、基板端面で露出する導電領域が広がり、外部からの駆動信号の取り込みが容易となり、信頼性に優れた液晶セルを実現することが出来る。
【実施例2】
【0064】
次に、本発明の実施例2の液晶セルの構成を図4(a)と図4(b)に基づいて説明する。図4(a)は実施例2に係わる本発明の液晶セル20の平面図である。図4(b)はこの液晶セル20の側面図である。
【0065】
実施例2の特徴は、注入口からの注入によって液晶を封入する注入方式の液晶セルを本発明に適応したことである。尚、基本的な構成は実施例1と同様であるので、実施例1と同一要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0066】
図4(a)、図4(b)において、20は本発明の実施例2の液晶セルである。液晶セル20は、第1、第2の透明基板2、3が、スペーサ(図示せず)によって、例えば、5μm〜10μmの間隔を置いて枠状シール21によって固着され貼り合わされる。
【0067】
この枠状シール21は、第1、第2の透明基板2、3の外周を囲うように形成され、基板端面2c側に液晶(図示せず)を枠状シール21の内側領域に注入するための注入口22を有している。また、この注入口22から液晶を注入後、液晶を封止するために注入口22は封止材23で封止される。また、枠状シール21は実施例1と同様に、第1、第2の透明基板2、3の基板端面2a、2bまで至って形成され、基板端面2a側の枠状シール21は、複数の切り欠き部11a〜11eを有し、さらに、基板端面2b側の枠状シール21は切り欠き部11fを有している。
【0068】
また、枠状シール21のこれらの切り欠き部11a〜11fには、実施例1と同様にカーボンペースト等の導電材15がそれぞれ充填され、第1、第2の透明基板2、3の基板端面2a、2bでそれぞれの引き出し配線7a〜7f(本図では、対向する電極パターンと電気的に接続される引き出し配線7fは現れていない)と導通を取り、これによって、導電材15は枠状シール21の内部に形成される各電極パターンに電気的に接続される。
この導電材15は、実施例1と同様に、図示しない接続端子によって被覆されるが、ここでの説明は省略する。尚、図4(b)の側面図での第1、第2の透明基板2、3の隙間は、説明を分かりやすくするために、実際のスケールより拡大して描いている。
【0069】
以上のように本発明の実施例2の液晶セル20は、実施例1と同様に、枠状シール21が基板端面2a、2bにまで至って形成され、複数個の切り欠き部11a〜11fに充填される導電材15が基板端面2a、2bで露出した形態となっている。そして、この導電材15と引き出し配線7a〜7fとが導通しているので、小型液晶セルでありながら、多くの配線を液晶セルの外側に引き出すことが出来る。これにより、複数の収差を補正するための複合収差補正パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度の収差補正を行う高性能な液晶セルを極めて小型に実現することが出来る。
【0070】
尚、実施例1の液晶セルは、ODF方式によって液晶を封入し、実施例2の液晶セルは、注入方式によって液晶を封入するが、本発明は、どちらの方式の液晶セルにおいても適応することが出来る。ただし、実施例2の液晶セル20は、図示するように、注入口22のある基板端面2cは、切り欠き部を形成して配線を引き出すことが難しく、引き出し配線の数(すなわち、接続端子数)は減ることになる。
【実施例3】
【0071】
次に、本発明の実施例3の液晶セルの構成を図5(a)と図5(b)に基づいて説明する。図5(a)は実施例3に係わる本発明の液晶セル30の平面図である。図5(b)はこの液晶セル30の側面図である。
【0072】
実施例3の特徴は、ODF方式で液晶を封入する円形状の液晶セルを本発明に適応したことである。尚、実施例3の液晶セル30の外形形状は前述の実施例1と異なるが、基本的な構成は実施例1と同様であるので、重複する説明は一部省略する。
【0073】
図5(a)、図5(b)において、30は本発明の実施例3の液晶セルである。液晶セル30は、略円形状の第1の透明基板31と第2の透明基板32が、スペーサ(図示せず)によって、例えば、5μm〜10μmの間隔を置いて枠状シール33によって固着され貼り合わされる。この第1、第2の透明基板31、32は略同一形状であり、全周の基板端面31a、32aを一致させて貼り合わされている。そして、第1、第2の透明基板31、32の内側領域34は、その表面にITO等からなる分割された電極パターンが形成され、この電極パターンが対向する隙間には液晶が封入されるが、ここでは図示を省略する。
【0074】
また、枠状シール33は、第1、第2の透明基板31、32の外周を囲うように円形に形成される閉環形状のシールであり、ODF方式によって封入された液晶(図示せず)を第1、第2の透明基板31、32で挟持して形成される。この枠状シール33は、第1、第2の透明基板31、32の外周の基板端面31a、32aまで至って形成され、電極パターン(図示せず)に接続される複数の引き出し配線35を露出する複数の切り欠き部36a〜36jを有している。
【0075】
また、この切り欠き部36a〜36jには、カーボンペースト等の導電材37がそれぞれ充填され、基板端面31a、32aで引き出し配線35と導通を取り、これによって、基板端面31a、32aで露出するそれぞれの導電材37は、引き出し配線36a〜36jを介して、枠状シール33の内側領域34に形成される電極パターン(図示せず)と電気的に接続される。この導電材37は、実施例1と同様に、接続端子(図示せず)によって被覆されるが、ここでの説明は省略する。
【0076】
尚、切り欠き部36a〜36jは、本実施例においては、第1、第2の透明基板31、32の外周の全周に略等間隔に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、外周の一部に形成されても良い。また、切り欠き部の個数も限定されず、形成される電極パターンに応じて、任意に形成して良い。また、図5(b)の側面図での第1、第2の透明基板31、32の隙間は、説明を分かりやすくするために、実際のスケールより拡大して描いている。
【0077】
以上のように本発明の実施例3の液晶セルは、実施例1と同様に、枠状シール33は基板外周の基板端面31a、32aにまで至って形成され、複数個の切り欠き部36a〜26jに充填される導電材37が基板端面31a、32aで露出して形成されている。そして、この導電材37と引き出し配線36a〜36jとが導通しているので、小型液晶セルでありながら、多くの配線を液晶セルの外側に引き出すことが出来る。これにより、複数の収差を補正するための複合収差補正パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度の収差補正を行う高性能な液晶セルを極めて小型に実現することが出来る。
【0078】
尚、本発明の液晶セル30は、光ピックアップ装置のレーザ光源から出射される光ビームの光路中に配置されるが、光ビームの光路の断面は略円形であるので、その光ビームの断面形状に合わせて本実施例のように液晶セルを円形状とすることで、液晶セルの面積効率が向上し、無駄な領域が無く、より小型の液晶セル30を実現することが出来る。また、光ピックアップ装置に搭載される対物レンズ等は外形が円形状であるので、液晶セルを円形状とすることによって、これら光学レンズとの組み合わせが容易となり、光ピックアップ装置の更なる小型化を実現できる。
【実施例4】
【0079】
次に、接続用配線が固着された本発明の実施例4に係わる液晶セルの構成を図6(a)と図6(b)に基づいて説明する。図6(a)は実施例4に係わる液晶セル1に接続用配線60を固着したことを示す平面図である。図6(b)はこの液晶セル1に接続用配線60を固着したことを示す断面図である。尚、図6(b)は平面図におけるB−B断面図である。
【0080】
図6(a)、図6(b)において、液晶セル1は実施例1で示した液晶セルであり、枠状シート10は、第1、第2の透明基板2、3の基板端面2a、2bに沿って切り欠き部11a〜11fを有し、この切り欠き部11a〜11fに導電材15が充填されている。そして、導電材15は基板端面2a、2bで露出し、導電ペースト等で成る接続端子16によって被覆されている。60はリード線などの接続用配線であり、その先端を接続端子16によって覆われ、液晶セル1の基板端面2a、2bにそれぞれ固着されている。
【0081】
この様に、接続用配線60は、接続端子16を介して導電材15と電気的に接続すれば十分広い導電領域で確実に導電材15と接続でき、電気的にも機械的にも信頼性の高い接続が可能となる。また、接続用配線60は、液晶セル1の基板端面2a、2bに固着されるので、図示するように平面上の接続領域をほとんど必要とせず、平面積を広げることなく多数の接続が可能となり、この接続用配線60によって多くの駆動信号を液晶セルへ供給することが出来る。
【0082】
また、図示しないが、従来例の液晶セル(図14(a)参照)で示したように、接続端子16と接続用配線60を補強材によって被覆し、接続用配線60が更に確実に液晶セル1の基板端面2a、2bに固定されるようにしても良い。
【0083】
以上のように本実施例によるならば、接続用配線60は、接続端子16を介して基板端
面2a、2bから露出している導電材15と接続した形態となるので、液晶セル1は外部から駆動信号を供給するために広い接続領域を設ける必要がなくなり、狭い領域で多数の接続用配線60を液晶セルの基板端面に配置出来る様になる。これにより、極めて小型でありながら、複数の収差を補正するための複合収差補正パターンが形成された液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度な収差補正を行う液晶セルを提供することが出来る。
【実施例5】
【0084】
次に、本発明の実施例5に係わるFPC70が固着される液晶セルの構成を図7に基づいて説明する。図7は実施例5に係わる複合液晶セル40にFPC70を固着することを示す斜視図である。
【0085】
図7において、40は略円形状の複合液晶セルであり、実施例3の液晶セル30(図5(a)(b)参照)と同様な略円形状の液晶セルを複数枚重ねて製造される。この複合液晶セル40は、例えば、4枚の透明基板41〜44が重ね合わされ、その隙間に枠状シール45〜47が形成され、液晶(図示せず)が封入されている。この枠状シール45〜47は、実施例3と同様に、透明基板41〜44の基板端面に切り欠き部が形成され、導電材50が充填されて、複合液晶セル40の外周の基板端面に3列の接続ライン51〜53が形成される。尚、ここでは図示していないが、導電材50は接続端子(図3参照)で被覆することが好ましい。
【0086】
また、70はFPC(フレキシブルプリント基板)であり、その内側に、接続用配線としての銅箔等によって成る接続パターン71が形成されている。この接続パターン71は、複合液晶セル40の基板端面で露出している接続ライン51〜53上の導電材50と同じピッチで形成されている。そして、FPC70を複合液晶セル40に巻き付け、その外側を熱収縮チューブ(商品名:ヒシチューブ)(図示せず)で覆うことによって、接続パターン71と導電材50を密着して導通させることが出来る。尚、導電材50に接続端子(図示せず)を被覆すれば、導電材50と接続パターン71との結合は更に確実となる。
【0087】
この構造により、複合液晶セル40は、外部からの駆動信号を最小限のスペースで効率よく入力できるので、複合液晶セル40が組み込まれる光ピックアップ装置の小型化に大きく貢献できる。また、このようなFPC70が接続された複合液晶セル40は、それぞれの透明基板41〜44に、例えば、コマ収差、球面収差、非点収差などの各収差を補正する電極パターンや、λ/4波長板としての電極パターンを形成することにより、光ビーム72を入射して複合収差補正や偏光変換等を行う多機能型液晶セルを実現出来る。
【0088】
尚、本実施例の複合液晶セル40は、4枚の透明基板41〜44によって構成されるが、この基板枚数は限定されず、任意で良い。また、FPC70による接続は、本実施例のような円形状の液晶セルに限定されず、図示しないが、実施例1で示した略長方形状の液晶セルを重ねた複合液晶セルを用い、液晶セルの周囲を直角に曲げたFPCで覆って、外部からの駆動信号を供給する構造でも良い。
【0089】
以上のように本実施例によるならば、外部からの多数の駆動信号をFPC70によって最小限のスペースで効率よく入力できるので、極めて小型でありながら、多機能な収差補正液晶セルや、細かい電極パターンによって高精度の収差補正を行う高性能な液晶セルを提供することが出来る。
【実施例6】
【0090】
次に、本発明の実施例6として、本発明の液晶セルの製造方法の一例を説明する。
尚、本発明の液晶セルの製造方法は、ODF方式の液晶セルと注入方式の液晶セルの何
れの製法にも適応されるが、特に本発明に好適であるODF方式の液晶セルの製造方法を中心に説明する。
【0091】
ここで、本発明の液晶セルの製造方法は、第1、第2の透明基板へのパターン形成工程、配向膜形成工程、ラビング工程、一方の透明基板へのシール形成工程、他方の透明基板への導電材充填工程、スペーサ散布工程、第1、第2の透明基板に液晶を挟持する工程、枠状シール及び導電材を硬化する硬化工程、及び、接続端子形成工程の各工程を有するものである。また、以下の説明で示す液晶セルは、実施例3で示した略円形状の液晶セルであり、形成される電極パターンは、コマ収差、球面収差、非点収差を補正する複合収差補正パターンが形成された液晶セルである。尚、符号は実施例3と同一要素には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0092】
最初に、パターン形成工程と配向膜形成工程について説明する。図8(a)、図8(b)は、液晶に給電するための電極パターンと、この電極パターンに接続する引き出し配線とを第1、第2の透明基板31、32に形成するパターン形成工程を示している。
【0093】
図8(a)に示すように、略円形状の第1の透明基板31における内側領域34に、ITOによって球面収差補正用の輪帯電極パターン38を形成する。なお、図示しないが、この輪帯電極パターン38から3本の引き出し配線が基板端面31aに向かって放射状に引き出されている。
【0094】
次に、図8(b)に示すように、略円形状の第2の透明基板32の内側領域34に、ITOによって非点収差補正とコマ収差補正の複合補正電極パターン39を形成する。ここでも図示しないが、この複合補正電極パターン39から計7本の引き出し配線が基板端面32aに向かって放射状に引き出されている。
【0095】
次に、上述したパターンを形成した後に、配向膜形成工程によって、第1の透明基板31、第2の透明基板32共に、ポリイミドの配向膜を印刷法で形成する。続けてこの配向膜を約200℃で焼成した後、配向処理を施すラビング工程(図示せず)を実施するが、詳細は省略する。
【0096】
次に、枠状シールを透明基板に形成するシール形成工程と、導電材を透明基板に充填する導電材充填工程を行う。図9(a)は第1の透明基板31表面に枠状シール33を形成する枠状シール形成工程を示す図面である。図9(b)は第2の透明基板32に導電材15を充填する導電材充填工程を示す図面である。
【0097】
図9(a)に示すように、第1の透明基板31に、その外周を囲うように閉環形状の枠状シール33を形成する。この枠状シール33には、紫外線等の照射によって硬化する光硬化型樹脂を用いており、第1の透明基板31の外周の基板端面31aまで至って形成する。このとき、輪帯電極パターン38に接続される3本の引き出し配線(図示せず)と、第2の透明基板32に形成される7本の引き出し配線(図示せず)をそれぞれ露出する10個の切り欠き部36a〜36jを基板端面31aに沿って形成することが肝要である。
【0098】
次に、図9(b)に示すように、第2の透明基板32における、第1の透明基板31に形成される枠状シール33の切り欠き部36a〜36jに対応した位置に、導電材15を塗布する。すなわち、第1の透明基板31の切り欠き部36a〜36jは10個形成されているので、第2の透明基板32の対応する位置の10箇所に、それぞれ導電材15を塗布する。これにより、第1の透明基板31と第2の透明基板32を後工程において貼り合わせることによって、枠状シール33の切り欠き部36a〜36jに導電材15が充填されることになる。
【0099】
次に、液晶の滴下工程を行う。図10は、枠状シール33の内側領域34に液晶81を滴下する液晶滴下工程を示す図面である。
【0100】
図10に示すように、第1の透明基板31に形成される枠状シール33の内側領域34に、液晶滴下ディスペンサ80によって適量の液晶81を滴下する。尚、ここでの液晶81の滴下は、内側領域34に対応する箇所の他方の基板である第2の透明基板32の表面に滴下しても良い。
【0101】
次に、第1、第2の透明基板で液晶を挟持する工程を行う。図11(a)は、第1、第2の透明基板を貼り合わせる工程を示している。
【0102】
図11(a)に示すように、液晶が滴下された一方の透明基板である第1の透明基板31と他方の透明基板である第2の透明基板32を、真空チャンバー内で位置合わせしながら所定の加重Cを加えて貼り合わせる。このとき、第1の透明基板31に形成された枠状シール33の切り欠き部36a〜36jと、第2の透明基板32に塗布された導電材15との位置合わせを行い、切り欠き部36a〜36jに導電材15を充填させることが重要である。
【0103】
尚、枠状シール33は、光硬化型樹脂であって樹脂の粘度が高いので、第1、第2の透明基板31、32を貼り合わせたとき、導電材15が切り欠き部36a〜36jから流れ出すことはほとんど無い。また、第1、第2の透明基板31、32は所定の加重Cで加圧されるので、枠状シール33と導電材15は潰れて基板端面31a、32aの方向に広がり、導電材15は基板端面31a、32aから露出する。
【0104】
次に、貼り合わされた第1、第2の透明基板に挟持された枠状シールと導電材を硬化する硬化工程を行う。図11(b)は、この硬化工程を示す図面である。
【0105】
図11(b)に示すように、まず、第1、第2の透明基板31、32を貼り合わせた液晶セル30に、紫外線(図示せず)を約40秒間照射し(光照射工程)、挟持された枠状シール33を硬化させる。これによって、まず枠状シール33だけが硬化するので、導電材15が切り欠き部36a〜36jから隣接する他の切り欠き部の方向に流れ出すことが無い。また、この紫外線照射では、液晶セル30が高温になることはないので、封入される液晶にダメージを与えることが無く、信頼性に優れた液晶セルを製造出来る。
【0106】
次に、この光照射工程を行った後、液晶セル30を加熱して、第1、第2の透明基板31、32に挟持された導電材15を硬化させる。ここで、導電材15の材料を選定することによって、硬化する加熱温度を120℃程度に低く設定できるので、液晶セル30に封入されている液晶にダメージを与えることはほとんどない。また、この加熱工程は、導電材15を硬化させると共に、枠状シール33を更に硬化させるので、液晶の封止がより確実となり、液晶セルの信頼性を向上させることが出来る。
【0107】
このように、本実施例の液晶セルの製造方法は、液晶の封入をODF方式とし、光硬化型樹脂である枠状シール33を用いることによって、液晶セルの製造工程を増やすことなく、むしろ、一般の注入方式による製造工程より短時間で信頼性に優れた液晶セルを製造することが出来る。
【0108】
次に接続端子形成工程について説明する。図12は、液晶セル30に接続端子16を形成する接続端子形成工程を示している。
【0109】
図12に示すように、硬化工程によって完成した液晶セル30の基板端面31a、32aに略等間隔で露出している導電材15(図11(b)参照)に導電ペースト等で成る接続端子16を印刷等の手法で被覆する。ここで、接続端子16を印刷によって形成することにより、簡単に、且つ位置精度良く確実に導電材15(図11(b)参照)を被覆出来、信頼性の高い接続端子16を液晶セル30に形成することが出来る。尚、接続端子形成工程の前にダイシング工程を追加し、液晶セル30の基板端面31a、32aを研磨することによって、接続端子16の形成をより確実にし、更に信頼性の高い接続端子16を形成することが出来る。
【0110】
また、本実施例においては、円形状の液晶セル30を例として、ODF方式の液晶セル製造方法を説明したが、液晶セルは例えば実施例1で示した略長方形の液晶セルでも、その製造方法は同様である。また、実施例2で示したような注入方式の液晶セルの製造方法においては、一方の透明電極に切り欠き部を有する枠状シールを形成する工程と、他方の透明電極に導電材を塗布する工程が異なるだけで、他の工程は一般の液晶セル製造工程と同様であるので説明は省略する。
【0111】
以上のように本発明の液晶セルの製造方法は、ODF方式の液晶セルであっても、注入方式の液晶セルであっても適応することが出来るが、ODF方式の液晶セルに対して、最も効果的に、多数の接続端子16を有する信頼性に優れた小型の液晶セルを短時間で製造することが出来る。尚、本発明の実施例で示した構成図等は、この構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、どのような構成であっても良い。また、本発明の実施例においては、略長方形状や略円形状の液晶セルを提示したが、本発明の液晶セルは、これらの形状に限定されず、多角形状や楕円形状であっても適応される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施例1に係わる液晶セルの平面図および断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる液晶セルの枠状シールの切り欠き部を示す平面図および側面図である。
【図3】本発明の実施例1に係わる液晶セルの基板端面で露出する導電材を被覆する接続端子を示す拡大側面図である。
【図4】本発明の実施例2に係わる液晶セルの平面図および側面図である。
【図5】本発明の実施例3に係わる液晶セルの平面図および側面図である。
【図6】本発明の実施例4に係わる液晶セルに接続用配線を固着したことを示す平面図および断面図である。
【図7】本発明の実施例5に係わる液晶セルにFPCを固着することを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例6に係わる液晶セルの製造工程において、電極パターンを一方および他方の透明基板に形成するパターン形成工程を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の実施例6に係わる液晶セルの製造工程において、一方の透明基板に枠状シールを形成する枠状シール形成工程、および他方の透明基板に導電材を充填する導電材充填工程を説明するための斜視図である。
【図10】本発明の実施例6に係わる液晶セルの製造工程において、透明基板の間に液晶を挟持する工程で液晶を滴下する工程を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の実施例6に係わる液晶セルの製造工程において、透明基板の間に液晶を挟持する工程で2枚の透明基板を貼り合わせる工程、および枠状シールと導電材を硬化する硬化工程を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の実施例6に係わる液晶セルの製造工程において、接続端子を形成する接続端子形成工程を説明する斜視図である。
【図13】光ピックアップ装置の概略を示す構成図である。
【図14】従来の液晶セルの断面図および平面図である。
【符号の説明】
【0113】
1、20、30 液晶セル
2、31 第1の透明基板
3、32 第2の透明基板
41〜44 透明基板
2a、2b、2c、31a、32a 基板端面
4、4a〜4e、5 電極パターン
6、81 液晶
7a〜7f、35 引き出し配線
10、21、33、45〜47 枠状シール
11a〜11f、36a〜36j 切り欠き部
15、37、50 導電材
16 接続端子
22 注入口
23 封止材
34 内側領域
38 輪帯電極パターン
39 複合補正電極パターン
40 複合液晶セル
51〜53 接続ライン
60 接続用配線
70 FPC
71 接続パターン
72 光ビーム
80 液晶滴下ディスペンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
他の透明基板と、
前記透明基板と他の透明基板の内面に、分割して形成された電極パターンと、
前記透明基板と他の透明基板の間隙であって、外延部を囲んで形成された枠状シールと、
当該枠状シールの内側領域に配する液晶と、
前記電極パターンに外部信号を給電する為の、複数本の引き出し配線と、を備え、
前記透明基板と他の透明基板とは、基板端面を一致させて、前記枠状シールでもって貼り合わされており、
前記枠状シールは、前記基板端面に至り、当該基板端面に至る領域において、前記複数本の引き出し配線のそれぞれを露出させる、当該基板端面から複数個の切り欠き部を有する形状となっており、
この複数個の切り欠き部のそれぞれに導電材を充填することで、前記基板端面で前記引き出し配線との導通を取ることができる様にした
ことを特徴とする液晶セル。
【請求項2】
前記複数個の切り欠き部が形成された領域は、基板外周の内の少なくとも一部の領域である
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶セル。
【請求項3】
前記枠状シールは、閉環形状のシールである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶セル。
【請求項4】
前記基板端面で露出する前記導電材を被覆する接続端子を、更に設ける
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶セル。
【請求項5】
透明基板と他の透明基板と、前記透明基板と他の透明基板の内面に、分割して形成された電極パターンと、前記透明基板と他方の透明基板の間隙であって、外延部を囲んで形成された枠状シールと、当該枠状シールの内側領域に配する液晶と、前記電極パターンに外部信号を給電する為の、複数本の引き出し配線と、を備える液晶セルの製造方法において、
前記電極パターンと、当該電極パターンに接続する前記複数本の引き出し配線とを、前記透明基板と他方の透明基板のそれぞれに形成するパターン形成工程と、
前記透明基板の基板端面に至り、当該基板端面に至る領域において、前記複数本の引き出し配線のそれぞれが露出する複数個の切り欠き部を有する前記枠状シールを、前記透明基板に形成するシール形成工程と、
前記複数個の切り欠き部で露出する前記複数本の引き出し配線に接続する導電材を、前記複数個の切り欠き部のそれぞれに充填する導電材充填工程と、
前記透明基板と前記他の透明基板における前記基板端面を一致させて形成した基板の間隙に液晶を挟持する工程と、
前記透明基板と前記他の透明基板とで挟持された、前記枠状シールおよび前記導電材を硬化する硬化工程と、を有する
ことを特徴とする液晶セルの製造方法。
【請求項6】
前記シール形成工程では、前記枠状シールを閉環形状で形成する工程であり、
前記液晶を挟持する工程は、前記枠状シールの内側領域に前記液晶を滴下した前記透明基板と他の透明基板とを貼り合わせる、または前記枠状シールを設けた前記透明基板と、前記液晶を滴下した前記他の透明基板とを貼り合わせて行う工程である
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶セルの製造方法。
【請求項7】
前記シール形成工程は、前記枠状シールに光硬化型樹脂を用いて行う工程であり、
前記導電材充填工程は、前記導電材に熱硬化型樹脂を用いて行う工程であり、
前記硬化工程は、前記枠状シールを光照射して硬化させた後に、前記導電材を加熱して形成する工程である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の液晶セルの製造方法。
【請求項8】
前記導電材充填工程は、前記他方の透明基板における前記切り欠き部に対応した位置に前記導電材を塗布する工程である
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の液晶セルの製造方法。
【請求項9】
前記硬化工程の後に、前記基板端面で露出する前記導電材を被覆する接続端子を形成する接続端子形成工程を、更に有する
ことを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の液晶セルの製造方法。
【請求項10】
前記接続端子形成工程は、前記接続端子を印刷して形成する工程である
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶セルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−180775(P2009−180775A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17311(P2008−17311)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】