説明

液晶パネルの再資源化方法およびガラス分離回収装置

【課題】廃液晶パネルから、少ない労力とエネルギーにて、大がかりな設備を使用せず、安全に素材を分離し、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスを素材として再生利用することが可能である液晶パネルの再資源化方法の提供。
【解決手段】偏光板が貼付された状態の液晶パネルを破砕する工程であって、液晶パネルを構成するパネルガラスと偏光板に異なる移動速度を与えることにより、液晶パネルの破砕と同時にパネルガラスと偏光板とを剥離する破砕工程S4と、破砕工程により剥離した偏光板とパネルガラスとを分離する分離工程S5とを含む液晶パネルの再資源化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの廃棄物(廃液晶パネル)の再資源化方法およびガラス分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫などの地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0003】
このような状況を受け、たとえば、2001年4月より家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、2010年3月現在において、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン70%以上、ブラウン管式テレビ55%以上、薄型テレビ50%以上、冷蔵庫60%以上、洗濯機65%以上の法定基準値が定められている。
【0004】
ところで、近年、表示部品として液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル、電界放出型ディスプレイパネルなどの薄型パネルを搭載した薄型テレビの需要が、省電力、省スペース、軽量かつデジタル放送の受像に適するといった特性から、近年の地球環境問題への関心の高まり、ならびにテレビ放送のデジタル化と相俟って、急激に増加している。特に、大型の液晶パネルを搭載した大画面薄型テレビの需要が劇的に拡大している。これに伴い、薄型テレビの廃棄量も今後急激に増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上などの要求が高くなってきている。
【0005】
現在、薄型テレビのパネル(液晶パネル)は、比較的新しい製品であること、また、廃棄物の量としては少ないこともあり、廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストなどと共に、埋立処理あるいは焼却処理されている。
【0006】
本発明に供される液晶パネルの典型的な構造について、説明する。図5は、典型的な一例の液晶パネル1を模式的に示す断面図である。図5には、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた液晶パネル1を示している。図5に示す例の液晶パネル1は、たとえば、対向配置された厚み0.4〜1.1mm程度の2枚のパネルガラス(カラーフィルタ側パネルガラス2a、TFT側パネルガラス2b)を備える。これらパネルガラス(ガラス基板)2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらパネルガラス2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、厚み4〜6μm程度の液晶層4が形成されている。
【0007】
また、典型的な液晶パネル1では、図5に示すように、各パネルガラス2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、厚み0.2〜0.4mm程度の偏光板(偏光フィルターおよび位相差フィルムなどの光学フィルム)5が粘着剤により貼着されている。さらに、液晶パネルの周縁部には、液晶駆動用のドライバーICが接続され、周縁部の外側がベゼル・プラスチックで覆われている(図示せず)。
【0008】
典型的な液晶パネル1では、図5に示すように、カラーフィルタ側パネルガラス2aの内面側に、カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。カラーフィルタ6は有機物を主体とした材料からなる。反射防止膜7は炭素を主成分とした薄膜などからなる。透明導電膜8はインジウムなどを含む薄膜からなる。配向膜9はポリイミドなどの有機物からなる。
【0009】
また、典型的な液晶パネル1では、図5に示すように、TFT側パネルガラス2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。透明導電膜8は、インジウムなどを含む薄膜からなる。画素電極10およびバス電極11はタンタル、モリブデン、アルミニウム、チタンなどの金属を主成分とする薄膜からなる。前記カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のパネルガラス2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。
【0010】
液晶パネルの製造工場から排出される不良の廃液晶パネルや家電製品および情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルの処理方法として、たとえば、特開2000−84531号公報(特許文献1)には、液晶パネルの製造工場や廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕後、非鉄精錬炉に投入し珪石の代替材料として処理する方法が開示されており、一部で実施されている。この特許文献1に開示された方法では、有機物は炉内で完全燃焼され、二酸化炭素や水素などに分解される。
【0011】
液晶パネルには、通常、透明電極材料として有価物であるインジウムを含むITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。インジウムはITO透明導電膜として液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどに使用されており、近年の薄型テレビの急激な普及により需要が増加し、供給が逼迫しており、原材料の確保が重要となっている。したがって、希少資源有効活用の観点から、インジウムについても、不要となった液晶パネルから高収率で回収することが望まれている。液晶パネルの重量の大半を占めるガラスについても、廃棄物の低減と資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。また、ITOは微粉末状態で毒性が懸念されており、適切に回収することが望ましい。
【0012】
液晶パネルから資源を回収し、有効に再利用するためには、液晶パネルを部材ごとに分離することが望まれる。また、液晶パネルの重量の大部分を占めるパネルガラスをリサイクルするためには、パネルガラスを適切なサイズに破砕し、カレット化または粉体化することが望まれる。さらに、有価物であるインジウムを回収するためには、パネルガラスを適切なサイズに粉砕し、酸性溶液などを用いて、パネルガラスの内面からITOを溶出することが望ましい。しかしながら、液晶パネルを破砕する際に、パネルガラスの外面に光学フィルムが付着したままであると、パネルガラスの外面に光学フィルムの弾性のため効率よく破砕することができない。したがって、前記観点から、液晶パネルの有効な再資源化のためには、パネルガラスから光学フィルムを剥離することが望まれている。
【0013】
液晶パネルから偏光板を剥離する方法として、たとえば特開2002−159955号公報(特許文献2)には、偏光板をパネルに付いたままカットした後、カットした偏光板を粘着テープに粘着させ剥離する方法が開示されている。
【0014】
また、ガラス板をフィルムを介して接着してなる合わせガラスなどから、ガラスを分離する合わせガラスの分離方法として、たとえば特開2004−181321号公報(特許文献3)には、ロールクラッシャーにてフィルム上のガラスの一次破砕を行なった後フィルムに引張り歪みを与えガラスを剥離する方法が開示されている。
【0015】
また、液晶パネルに付着した偏光板、液晶、カラーフィルターなどの樹脂類を除去する方法として、たとえば特開2000−51829号公報(特許文献4)には、液晶表示装置の廃棄物を固体熱媒体が流動している流動層に投入し、樹脂類を酸化する流動化ガスにより加熱流動させることにより、液晶表示装置の廃棄物から純度の高くリサイクル可能なガラスを回収する方法が開示されている。
【0016】
また、偏光板が貼り付いたままの液晶パネルから偏光板を剥離する方法として、たとえば特開2000−189939号公報(特許文献5)には、液晶パネルを破砕し、偏光板の付いたままのパネルガラス片を溶剤を用いて偏光板とガラス基板に分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−84531号公報
【特許文献2】特開2002−159955号公報
【特許文献3】特開2004−181321号公報
【特許文献4】特開2000−51829号公報
【特許文献5】特開2000−189939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
液晶パネルは、省電力・省資源に貢献できる表示装置であるので、今後、高度情報化社会の進展に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、液晶パネルの廃棄物(廃液晶パネル)も、数・量ともに急激に増大すると予想される。
【0019】
従来は、適切な液晶パネルの処理方法が確立されておらず、CRT(Cathode Ray Tube)その他の家電製品や部品と比較して技術確立などが遅れているのが実情である。したがって、今後、廃液晶パネルの増加に備えた処理方法の確立が早急に要求される。
【0020】
しかしながら上述した特許文献1に開示された方法は、液晶パネルの製造工場から排出される不良の廃液晶パネルや家電製品および情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルを、液晶パネルの製造工場や廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕後、非鉄精錬炉に投入し珪石の代替材料として処理する方法である。この特許文献1に開示された方法では、光学フィルムなどの有機物は炉内で完全燃焼され、二酸化炭素や水素などに分解される。また、液晶パネルのガラスはスラグとなりセメント材料として再利用することを意図しているため、ガラス自体として再生利用することはできない。さらに、インジウムはスラグに含まれ、インジウム材料として再生利用することはできない。
【0021】
液晶パネルから有価物であるインジウムやガラスを回収し再資源化するためには、液晶パネルを構成する部材ごとに分離し、それぞれの素材ごとに適切に再資源化することが望ましい。液晶パネルを部材ごとに分離するためには、パネルガラスの外面に接着剤を用いて貼り付けられている偏光板などの光学フィルムを分離する必要がある。光学フィルムは、接着剤により広い面積にわたりパネルガラスに貼り付けられており、手作業などにより引き剥がして分離することは非常に困難である。
【0022】
また、最終製品として使用した液晶パネルの光学フィルムの接着剤は、製品として使用中に熱や光により劣化しており、硬化している。また、光学フィルム自体も熱や光により劣化しており、力を加えた場合に裂けやすくなっている。これにより、最終製品として使用した液晶パネルの光学フィルムを引き剥がしてパネルガラスと分離することは、さらに困難となるとともに、引き剥がし作業が危険となる。
【0023】
また、一度最終製品として使用され不要となった液晶パネルや製造工程で排出される不良品などの液晶パネルの中には、パネルガラスが破損しているものがある。そのため、不要となった液晶パネルの再資源化のためには、パネルガラスが破損した状態の液晶パネルから光学フィルムを分離することも望まれている。
【0024】
上述のように液晶パネルから光学フィルムを分離することにより、インジウムやガラスを資源として有効に利用することができるようになる。また、パネルガラスが破損した液晶パネルから光学フィルムを分離することにより、製造工程で排出されるパネルガラスが破損した不良品などの液晶パネルを再資源化することが可能となる。
【0025】
ここで、上述した特許文献2に開示された方法は、液晶パネルに貼り付けられた光学フィルムをパネルガラスに付いたままカットした後、カットした光学フィルムを粘着テープに粘着させ剥離する方法である。しかしながらこのような特許文献2に開示された方法は、光学フィルムをパネルガラスに付いたままカットするため、パネルガラスが破損した液晶パネルに適用することは困難である。さらに、最終製品として使用した液晶パネルに適用した場合、偏光板の劣化により、剥離中に光学フィルムが裂けてしまうなどの危険がある。
【0026】
また上述した特許文献3に開示された方法においても、光学フィルム自体が熱や光により劣化しており、力を加えた場合に裂けやすくなっている。一次破砕を行なった後の光学フィルムに引張り歪みを与えた際には、光学フィルム自体の断裂または破損により所望の引っ張り歪みを与えることが難しく、またパネルガラスが破損している場合においても適用が困難である。
【0027】
また、上述した特許文献4に開示された方法は、液晶表示装置の廃棄物を固体熱媒体が流動している流動層に投入し、樹脂類を酸化する流動化ガスにより加熱流動させることにより、液晶表示装置の廃棄物から純度の高くリサイクル可能なガラスを回収する方法である。しかしながらこのような特許文献4に開示された方法は、光学フィルムなどの樹脂類が熱分解または酸化する温度まで熱媒体を加熱するため、多大なエネルギーを消費する。
【0028】
さらに、上述した特許文献5に開示された方法は、液晶パネルを破砕し、偏光板の付いたままのパネルガラス片を溶剤を用いて偏光板とガラス基板に分離する方法であるが、薬液の処理コストと、人体に有害な溶剤を使用するため安全面からリサイクルプラントなどでの運用は困難である。
【0029】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、廃液晶パネルから、少ない労力とエネルギーにて、大がかりな設備を使用せず、安全に素材を分離し、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスを素材として再生利用することが可能である液晶パネルの再資源化方法、ならびに当該方法に好適に用い得る装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の液晶パネルの再資源化方法は、偏光板が貼付された状態の液晶パネルを破砕する工程であって、液晶パネルを構成するパネルガラスと偏光板に異なる移動速度を与えることにより、液晶パネルの破砕と同時にパネルガラスと偏光板とを剥離する破砕工程と、破砕工程により剥離した偏光板とパネルガラスとを比重分離する比重分離工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
本発明の液晶パネルの再資源化方法は、前記比重分離工程において、サイクロンまたは薄流選別を用いて偏光板とパネルガラスとを比重分離することが好ましい。
【0032】
本発明はまた、上述した本発明の液晶パネルの再資源化方法における破砕工程に用いられる装置であって、二本一対のロールを有し、一方のロール表面の円周方向に大径突起列が形成され、かつ対向した他方のロール表面に一方のロール表面の大径突起列に干渉しないよう円周方向に小径突起列が形成され、さらに前記大径突起列および前記小径突起列が互い違いになるよう前記ロールそれぞれの表面に軸方向にずらして配置し組み合わせ、さらに前記ロール間に周速度差を与える手段を有するガラス分離回収装置についても提供する。
【0033】
本発明のガラス分離回収装置において、前記周速度差は1.5〜10倍の範囲内であることが好ましい。
【0034】
本発明のガラス分離回収装置は液晶パネルを加熱する手段をさらに備えることが好ましく、この場合、当該手段により液晶パネルを加熱する温度は60〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、多大なエネルギーを消費せず、破損した液晶パネルにも適用可能な、液晶パネルを素材ごとに分離することが可能となり、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスなど、それぞれの素材を再生利用することが可能となる液晶パネルの再資源化方法を提供することができる。また本発明は、上述した本発明の液晶パネルの再資源化方法における破砕工程に好適に用いられるガラスの分離回収装置についても提供する。このような本発明のガラスの分離回収装置によれば、液晶パネルのパネルガラスと偏光板を安全に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の液晶パネルの再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。
【図2】本発明の液晶パネルの再資源化方法における破砕工程に好適に用いられるガラス分離回収装置を模式的に示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は上面図、図2(c)はパネルガラスを破砕する状態を示す上面図である。
【図3】本発明における比重分離工程に好適に採用され得る薄流選別法を模式的に示す図である。
【図4】本発明における比重分離工程に好適に用いられるサイクロン式分離装置51を示す図であり、図4(a)は模式上面図、図4(b)は模式断面図である。
【図5】典型的な一例の液晶パネル1を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の液晶パネルの再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。本発明は、偏光板が貼付された状態の液晶パネルを破砕する工程であって、液晶パネルを構成するパネルガラスと偏光板に異なる移動速度を与えることにより、液晶パネルの破砕と同時にパネルガラスと偏光板とを剥離する破砕工程と、破砕工程により剥離した偏光板とパネルガラスとを比重分離する比重分離工程とを含むことを特徴とする。このような本発明の液晶パネルの再資源化方法によれば、液晶パネルの部材を素材ごとに分離することが可能となり、資源として有効に利用できる処理方法を提供することができる。
【0038】
本発明の液晶パネルの再資源化方法には、上述した図5に示したTFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた液晶パネル1のような従来公知の適宜の構造の液晶パネルを特に制限されることなく供することができ、図5に示した例の他にも、TN(Twisted Nematic)液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)液晶パネルなどのデューティ液晶パネルも勿論適用可能である。また、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネルも適用可能である。以下、図5に示した構造の液晶パネルを供する場合を例に挙げて、本発明の液晶パネルの再資源化方法の各工程について図1を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
本発明の液晶パネルの再資源化方法は、図1に示す例のように、廃液晶パネルを偏光板が貼付された状態で液晶パネルの破砕を行なう破砕工程(ステップS4)と、破砕工程により剥離した偏光板とパネルガラスとを比重分離する比重分離工程(ステップS5)を基本的に含む。また、図1に示す例のように、破砕工程(ステップS4)の前に、液晶パネルをパネルガラスの品種ごとに選別するガラス品種選別工程(ステップS1)と液晶パネルパネルガラスを貼り合わされた2枚のガラス基板を分離するガラス基板分離工程(ステップS2)と露出した液晶を回収する液晶回収工程(ステップS3)をさらに含むことが好ましい。また、図1に示す例のように、比重分離工程(ステップS5)の後に、パネルガラスからインジウムをガラス分離回収するパネルガラス処理工程(ステップS6)をさらに含むことが好ましい。
【0040】
上述したように、図1に示した手順には限定されず、一部が省略されていても順序が入れ替わっていてもよく、また本発明の効果を阻害しない範囲で適宜の他のステップが追加されていてもよいが、図1に示す手順にて行なわれることが好ましい。以下、図1に示す各ステップについて詳細に説明する。
【0041】
〔1〕ガラス品種選別工程
図1に示す例では、まず、ガラス品種選別工程として、使用しているパネルガラスの種類(品種)別に、液晶パネルを選別する(ステップS1)。パネルガラスは、ガラスメーカによって、あるいはガラス品種、品番などによって組成が異なる。したがって、回収したガラスをたとえばパネルガラス用の材料として再利用するためには、多種多様なガラスを品種別に選別することが必要となる。また、回収したガラスをたとえば一般ガラス用の材料として再利用する場合にも、ある程度、ガラスを品種別に選別することが要求される場合がある。
【0042】
本発明においては、蛍光X線装置を用いて、液晶パネルのパネルガラスを品種別に選別するようにしてもよい。この場合、具体的には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用い液晶パネルに軟X線を直接照射する。これにより、液晶パネルのパネルガラスに含まれるそれぞれの元素に特有なエネルギーをもった蛍光X線が発せられる。この蛍光X線を蛍光X線センサにてエネルギーごとにカウントすることで、液晶パネルのパネルガラスにどのような元素がどのような割合で含まれているかを測定(分析)する。パネルガラスの化学組成を品種ごとに予め調べておき、それらの値と液晶パネルのパネルガラスでの測定値とを比較することにより、パネルガラスをガラス品種ごとに短時間で、確実に、かつ経済的に選別することができる。また、液晶パネルのパネルガラスにガラス品種の表示を予め設けておくようにしてもよい。
【0043】
なお、複数の品種のパネルガラスが混合していても問題ない用途に、パネルガラスを再生利用する場合には、当該ガラス品種選別工程は省略してもよい。
【0044】
〔2〕ガラス基板分離工程
次に、貼り合わされたガラス基板2a,2bを、2枚に分離する(ステップS2)。分離方法としては、たとえばシール樹脂体3を加熱する方法、ガラス基板2a,2bの周縁部を切断する方法などが挙げられる。ガラス基板2a,2bを分離すると、ガラス基板2a,2bの隙間に封入されていた液晶層4が表面に露出する。
【0045】
シール樹脂体3を加熱して分離する方法では、シール樹脂体3を加熱し、シール樹脂体3の強度を低下させることにより分離する。上述したように、ガラス基板2a,2bは、通常、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。シール樹脂体3としては、通常、エポキシ系樹脂などが用いられ、加熱することでシール樹脂体3の強度を低下させることができる。シール樹脂体3の加熱温度としては、シール樹脂体3の形成材料に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、たとえばエポキシ系樹脂のシール樹脂体3の場合には、300℃以上が望ましく、400℃以上がより望ましい。加熱の方法としては、たとえば、ランプ加熱、赤外線加熱、ヒートプレスなどが挙げられる。加熱によりシール樹脂体3の強度を低下させることで、手作業で容易にガラス基板2a,2bを分離することが可能となる。
【0046】
また、ガラス基板2a,2bの周縁部を切断することによってガラス基板2a,2bを分離する場合には、ガラス基板2a,2bの内側の四辺を切断することで、それぞれ1枚ずつガラスを切り出すようにすればよい。ガラス基板2a,2bの切断には、たとえばガラスカッター、ダイヤモンドソー、スクライバーなどを用いることができる。
【0047】
また、ガラス基板の分離と同時に、液晶パネルに接続されているドライバーICを取り外す。ドライバーICは、通常、液晶パネルの周縁部に、導電性の接着剤を用いて、接続されている。取り外しの方法としては、手作業で、ドライバーICを引き剥がす。導電性の接着剤の接着力は弱いため、外力を加えることにより接続部を容易に引き剥がすことができる。また、カッターナイフのような刃物で接続部を切断することもできる。取り外したドライバーICは、非鉄精錬所などで適切な処理を施すことで、含有される金属を回収することができる。ドライバーICは、手作業で容易に取り外すことが可能なため、このドライバーICの取り外しは、破砕工程(ステップS4)の前のいずれの工程で行なってもよい。また、ガラス基板2a,2bの周縁部を切断することによってガラス基板2a,2bを分離する場合には、ドライバーICも同時に取り外される。
【0048】
〔3〕液晶回収工程
次に、上述のようにして分離されたガラス基板2a,2b上に露出する液晶を回収する(ステップS3)。液晶は、たとえば、ガラス基板2a,2bの表面を液晶回収用のスクレーパを用いてスクレーピングすることによって回収することができる。液晶回収用のスクレーパとしては、ガラス基板2a,2b上に形成されている配向膜9よりも柔らかいポリプロピレンゴム、ポリエチレンゴムなどで形成されたスクレーパを好適に用いることができる。また、ゴム製のスキージを用いることにより、配向膜9を削り取らずに液晶のみを回収することができる。
【0049】
〔4〕破砕工程
図1に示す例では、続く破砕工程において、液晶パネルを破砕と同時にガラスと偏光板とを剥離する(ステップS4)。図1に示す例のようにガラス品種選別工程(ステップS1)の後に当該破砕工程を行なう場合には、上述したようにして選別された単一の品種のパネルガラスを使用している液晶パネルごとに行なう。偏光板(光学フィルム)5を有したままのカラーフィルタ側パネルガラスおよびTFT側パネルガラスについてそれぞれ破砕を行なう。
【0050】
当該破砕工程では、偏光板とガラスの間に移動速度の差を与え、偏光板とパネルガラスとを剥離させる。これにより、偏光板とパネルガラスを素材ごとに分離回収することが可能となる。また、パネルガラスから弾性のある偏光板を分離することにより、パネルガラスを再生利用する際に、容易に粉砕することが可能となる。
【0051】
ここで、図2は本発明における破砕工程に好適に用いられるガラス分離回収装置21を模式的に示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は上面図、図2(c)はパネルガラスを破砕する状態を示す上面図である。このように本発明は、本発明の液晶パネルの再資源化方法における破砕工程に好適に用いられ得るガラス分離回収装置についても提供する。
【0052】
本発明のガラス分離回収装置21は、図2(b)に示されるように、一方のロール22a表面の円周方向に大径突起列22bが形成され、かつ対向した他方のロール23a表面に一方のロール22a表面の大径突起列22bに干渉しないよう円周方向に小径突起列23cが形成されている。さらにロール22aには、軸方向に大径突起列22bおよび小径突起列22cが交互に配置され、かつ対向したロール23aには、軸方向に小径突起列23cおよび大径突起列23bが交互に配置され、それぞれの突起列(大径突起列22b,23b、小径突起列22c,23c)は、互いに干渉しない間隔で設置している。さらに、本発明のガラス分離回収装置21は、ロール22aとロール23aに異なる周速度差を与える手段(図示せず)を有する。
【0053】
本発明のガラス分離回収装置21は、液晶パネル24の両側を挟みこみ、パネルガラス26と偏光板25に移動速度の差を与えることによって、液晶パネル破砕と同時にパネルガラス26と偏光板25の剥離を行なう。このメカニズムを図2(c)の模式図によって説明する。図2(c)において、ロール22aおよびロール23aに回転を与え、液晶パネル24をロール22aおよびロール23aの間を通すことにより、液晶パネル24は、ロール22aおよびロール23aに巻き込まれながら、大径突起列22bと大径突起列23bとの間で挟まれ、せん断力により破砕される。このせん断力によりパネルガラス26の破砕されているものの大半は偏光板25に付着している状態である。さらに、既にロール22aとロール23aに異なる周速度差が与えられているので、たとえば、ロール23aがロール22aより大きい周速度の場合であれば、ロール22a上の大径突起列22bおよび小径突起列22cに接している偏光板25の移動速度よりも、ロール23a上の大径突起列23bおよび小径突起列23cに接しているパネルガラス26の移動速度が大きくなり、偏光板25に付着している状態のパネルガラス26は、ロール23aの回転方向に力を受けて、偏光板25とパネルガラス26が剥離する。剥離した偏光板25とパネルガラス26ともに下方に設置された回収容器27に回収することができる。
【0054】
前記プロセスは、突起列に挟まれることによるせん断と移動速度差の応力印加が同時に行なわれることで、パネルガラスと偏光板とに効率的に大きな応力を与える効果があり、短時間で分離させることができる。
【0055】
本発明の液晶パネルの再資源化方法では、このようなガラス分離回収装置21を用いて前記破砕工程を複数回行なうことも可能である。この際には、偏光板を完全に裁断しないよう、大径突起列および小径突起列の高さ、密度、幅、ロール間距離を設定する。偏光板を裁断しない場合には、偏光板は大きなサイズで取り出すことができ、後述する比重分離工程(ステップS5)を省略することができる。
【0056】
ロール22aおよびロール23aの回転数としては、5〜100rpmの範囲内であることが好ましく、10〜80rpmの範囲内であることがより好ましい。ロール22aおよびロール23aの回転数が5rpm未満である場合には処理時間が長くなる傾向にあるためであり、またロール22aおよびロール23aの回転数が100rpmを超える場合には、ロール間の通過時間が短くなり十分な応力が付加されないという傾向にあるためである。
【0057】
また、ロール22aおよびロール23aの周速度差は、1.5〜10倍の範囲内であることが好ましく、2〜8倍の範囲内であることがより好ましい。10倍を超える周速度差を設けると、突起列と液晶パネルとの間のすべりが顕著になり摩擦力が低下し十分な応力が付加されない虞がある。突起列とパネルガラスとの間および、突起列と偏光板との間の摩擦力が十分大きい範囲で周速度差を設定することで、パネルガラスと偏光板の移動速度差を与えることができ、偏光板とパネルガラスの分離を容易にすることができる。
【0058】
また、突起列の形状としては、特に制限はなく、たとえば山形突起形状、歯車凹凸形状などが含まれ、パネルガラスと偏光板の摩擦力が最大限に得られるよう一方と他方のロールそれぞれ異なった突起列形状を用いてもよい。
【0059】
また本発明における破砕工程では、上述したガラス分離回収装置21を用いずに、表面に凹凸などの突起のないロールを用いてもよい。この場合、凹凸などの突起のないロールでは表面に突起物がなく破砕が難しいため、予め液晶パネルの粗破砕を行なうことが好ましい。液晶パネルの粗破砕のサイズとしては、1〜10mmが好ましい。液晶パネルの粗破砕のサイズを1mm未満とすると、ロールと液晶パネルの接触面積が少なくなりすべりが生じ十分な応力が付加されない場合がある。また液晶パネルの粗破砕のサイズが10mmを超えると、パネルガラスと偏光板の接着面積が大きいため、剥離しにくくなる傾向にある。
【0060】
本発明における破砕工程では、液晶パネル24を加熱することが好ましい。加熱を行なうことで、偏光板25とパネルガラス26との接着力を弱め、破砕工程で効率的に剥離を行なうことができる。偏光板は、パネルガラス表面に、たとえば、アクリル系の接着剤を用いて貼り付けられている。アクリル系の接着剤を40〜150℃に加熱することにより、偏光板を軟化し背着力を弱めることができ、さらには、ロール上の突起列との密着性および摩擦力が向上し、移動速度差が効率的に伝わることで、偏光板とパネルガラスの分離を容易にすることができる。
【0061】
上述した本発明のガラス分離回収装置21を用いる場合には、当該装置が液晶パネルを加熱する手段(図示せず)をさらに備えていてもよい。加熱する手段としては、たとえば、ホットプレートなどを好適に用いることができる。加熱温度としては、40〜150℃が好ましく、70〜120℃がより好ましい。加熱温度が40℃未満の場合には、接着剤の軟化が十分に得られない虞がある。加熱温度が150℃を超える場合には、偏光板の耐熱温度近くに達してしまい偏光板が破損し、破砕工程で突起列と偏光板間の摩擦力が低下し十分な応力が付加されない。
【0062】
破砕工程を経た後、液晶パネルからは、偏光板と破砕されたパネルガラスとの混合物が得られる。パネルガラスは偏光板から剥離され、破砕された状態であるため、後述のパネルガラス処理工程(ステップS6)で、インジウムを塩酸などで溶出する際に、塩酸が浸透しやすく高い溶出効率が得られる。また、破砕片サイズに応じて分級し、粒径に応じて、種々のガラスのリサイクル用途に再生利用することができる。たとえば、粒径の比較的大きな破砕片は、そのまま溶融窯に投入することができ、ガラスを再溶融する用途などに用いることができる。また、微粉はセメント材料および建材などに再生利用することができる。
【0063】
得られた偏光板と液晶パネルガラスの混合物は、後述する比重分離工程(ステップS5)で偏光板とパネルガラスとに分離され、素材ごとに回収し、それぞれの素材ごとに適切に再生利用することができる。
【0064】
〔5〕比重分離工程
図1に示す例では、続く比重分離工程において、破砕工程(ステップS4)で得られた偏光板とパネルガラスとの混合物から、偏光板とパネルガラスに分離する(ステップS5)。偏光板は、基材がTAC(トリアセチルセルロース)フィルムなどからなり、比重は1.2〜1.4である。したがって、パネルガラスの比重2.3〜2.6と比較し小さいため、比重差を用いることで、偏光板とパネルガラスとを分離することができる。比重分離の具体的な方法としては、たとえば、サイクロン、浮遊選別など従来公知の技術を挙げることができる。
【0065】
図3は、本発明における比重分離工程に好適に採用されうる薄流選別法を模式的に示す図である。比重差を利用した分離方法として、たとえば、薄流選別法を利用することができる。傾斜した振動テーブル31上をテーブル面に沿って流れる水の中に、偏光板とパネルガラスとの混合物を投入する方法が挙げられる。このような方法において、軽比重粒子、すなわち偏光板は、薄流に乗ってより遠くまで流れるため、重比重粒子すなわちパネルガラスと分離することが可能となる。振動テーブルに複数の桟32が平行に設けられた、図3に示すようなウィルフレーテーブルを用いることで、重比重粒子が桟の隙間に沈降するようにした方法を使用することもできる。
【0066】
図3に示す例のようにウィルフレーテーブルを用いて薄流選別を行なう場合、振動テーブル31は、そのテーブル面(上面)が、図3の右側から左側へ向かうにつれて上方から下方へと3〜5°傾斜しており、上方から供給された水が下方へと流れるように構成されている。また、振動テーブルには、低い複数の桟32が水平方向に並んで設けられており、また、振動テーブルの図3右側の部分の上方に、偏光板とパネルガラスとの混合物を供給するための供給口33が設けられている。
【0067】
このようなウィルフレーテーブルを用いた薄流選別において、供給された偏光板とパネルガラスとの混合物のうち、パネルガラスは桟の隙間へと沈降する。桟の隙間に沈降したパネルガラスは、振動テーブル31の左右の揺動速度が、左へ速く動き、右へゆっくりと動くため、慣性力により左側へと移動する。それに対し偏光板は、沈降せず薄流に乗って水とともに下方へと流れる。このようにして、振動テーブルの図3の左方にパネルガラス、下方に偏光板と分離される。
【0068】
また、本発明における比重分離工程では、図3に示した薄流選別法に代えて、サイクロンを用いてもよい。ここで、図4は、本発明における比重分離工程に好適に用いられるサイクロン式分離装置41を示す図であり、図4(a)は模式上面図、図4(b)は模式断面図である。図4に示すように、粉末導入口41から導入された偏光板とパネルガラスとの混合物を含む気流は、装置内面の側面に沿って旋回しながら下方へと流れ、装置下部の円錐部で加速される。加速された気流は、装置下端に達し反転上昇する。上昇した気流は、中央部を同一方向に旋回し、排出口42から排出される。このとき、比重の大きいパネルガラスは、遠心力によって分離され、側面に沿って落下し、沈降する。沈降したパネルガラスは、排出口42から排出される。比重の小さい偏光板は、気流とともに上昇し、排気口43から排出される。
【0069】
また本発明における比重分離工程では、比重差を利用した分離方法として、たとえばジグ選別機、エアテーブルなどを利用してもよい。
【0070】
このようにして、破砕工程(ステップS4)で得られた偏光板とパネルガラスとの混合物を、比重差を利用した分離方法によって、偏光板とパネルガラスとに分けることができる。分離された偏光板は素材ごとに分別して再生利用することができる。また、偏光板は熱回収することもできる。パネルガラスは後述のパネルガラス処理工程で希少金属を回収、ガラスを回収することができる。
【0071】
〔6〕パネルガラス処理工程
図1には、上述した比重分離工程(ステップS5)で分離回収されたパネルガラスを処理し、パネルガラスからインジウムを分離回収するパネルガラス処理工程(ステップS6)をさらに含む例が示されている。比重分離工程(ステップS5)で分離回収されたパネルガラスには、透明電極として希少金属であるインジウムを含むインジウムスズ酸化物(ITO)が付着している。このため、たとえば塩酸に浸漬してITOを溶解し、インジウム含有塩酸溶液を中和することで、水酸化インジウムとして回収することができる。インジウム含有塩酸溶液を得ることにより、アニオン交換樹脂を用いた方法などによりインジウムを濃縮し回収することが可能となる。
【0072】
インジウムを回収した後のパネルガラスは、上述したガラス品種選別工程(ステップS1)を行なっている場合には、当該工程において既にガラス品種別に選別されている。このため、回収されたパネルガラスは、単一の品種のガラスであり、パネルガラスを原料ガラスに添加混合することにより、または、原料ガラスに置き換えて、再使用(マテリアルリサイクル)することができる。すなわち、破砕片サイズに応じて分級し、粒径に応じて種々のガラスのリサイクル用途に再生利用することができる。たとえば、粒径の比較的大きな破砕片は、そのまま溶融窯に投入することができ、ガラスを再溶融し板ガラスなどの用途に用いることができる。また、微粉はセメント材料および建材などに再生利用することができる。
【0073】
この方法によれば、燃焼などのように多大なエネルギーを消費せず、強酸や強アルカリなどの処理困難な薬液も使用しないため、低環境負荷の方法であり、家電リサイクルプラントなどにおいて実施可能であり、効率的な分離が可能となる。また、有価物であるインジウムやガラスなどを効率的に回収することができ、資源有効利用が可能となる。
【0074】
なお、本発明の液晶パネルの再資源化方法は、上述したように、破砕工程(ステップS4)と、比重分離工程(ステップS5)を少なくとも含んでいればよく、図1のフローチャートに示した手順に限定されるものではなく、図1に示したステップの一部が削除または置換されていてもよく、また、図1に示されていないステップが必要により付加されてもよい。
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
<実施例1>
2本のロール直径63mm、大径突起列が高さ5mm、幅3mmおよび小径突起列が高さ4mm、幅3mm、ロール間距離0.3mmである本発明のガラス分離回収装置に、100mm×100mmのパネルガラス厚み0.7mm、偏光板厚み0.2mmである液晶パネルを投入した。突起列の形状は山形突起形状とした。2本のロール回転数は、一方を6rpmとし、他方の回転数比を1、3、5で変化させた。破砕後、得られた偏光板とパネルガラスの混合物を分離しガラス収率を求めた結果、それぞれ、60%、72%、88%であった。
【0077】
<実施例2>
実施例1において偏光板自体は裁断されておらず、再度破砕処理が可能であったため、それぞれ1回目と同一条件にて2回目の破砕処理を行なった。破砕後、得られた偏光板とパネルガラスの混合物を分離しガラス収率を求めた結果、それぞれ、65%、75%、90%と収率が向上した。
【0078】
<実施例3>
実施例1と同一構成にて、2本のロール回転数を、一方を6rpm、他方の回転数を30rpmとし、100mm×100mmのパネルガラス厚み0.7mm、偏光板厚み0.2mmである液晶パネルを80℃に加熱したのち投入した。破砕後、得られた偏光板とパネルガラスの混合物を分離しガラス収率を求めた結果、94%であり、高度なガラス分離効果が達成できた。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 液晶パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 偏光板、6 カラーフィルタ、7 反射防止膜、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜、21 ガラス分離回収装置、22a ロール、22b 大径突起列、22c 小径突起列、23a ロール、23b 大径突起列、23c 小径突起列、24 液晶パネル、25 偏光板、26 パネルガラス、27 回収容器、31 振動テーブル、32 桟、33 供給口、41 サイクロン式分離装置、42 排出口、43 排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板が貼付された状態の液晶パネルを破砕する工程であって、液晶パネルを構成するパネルガラスと偏光板に異なる移動速度を与えることにより、液晶パネルの破砕と同時にパネルガラスと偏光板とを剥離する破砕工程と、
破砕工程により剥離した偏光板とパネルガラスとを比重分離する比重分離工程とを含む、液晶パネルの再資源化方法。
【請求項2】
前記比重分離工程において、サイクロンを用いて偏光板とパネルガラスとを比重分離することを特徴とする請求項1に記載の液晶パネルの再資源化方法。
【請求項3】
前記比重分離工程において、薄流選別を用いて偏光板とパネルガラスとを比重分離することを特徴とする請求項1に記載の液晶パネルの再資源化方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶パネルの再資源化方法における破砕工程に用いられる装置であって、
二本一対のロールを有し、一方のロール表面の円周方向に大径突起列が形成され、かつ対向した他方のロール表面に一方のロール表面の大径突起列に干渉しないよう円周方向に小径突起列が形成され、さらに前記大径突起列および前記小径突起列が互い違いになるよう前記ロールそれぞれの表面に軸方向にずらして配置し組み合わせ、さらに前記ロール間に周速度差を与える手段を有するガラス分離回収装置。
【請求項5】
前記周速度差が1.5〜10倍の範囲内である、請求項4に記載のガラス分離回収装置。
【請求項6】
液晶パネルを加熱する手段をさらに備える、請求項4または5に記載のガラス分離回収装置。
【請求項7】
前記手段により液晶パネルを加熱する温度が60〜150℃の範囲内である、請求項6に記載のガラス分離回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224475(P2011−224475A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96982(P2010−96982)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】