説明

液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法

【課題】液晶性ポリエステル含有廃液を簡便な方法で迅速に処理し得る方法を提供する。
【解決手段】下記の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%であり、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%であり、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%である液晶性ポリエステルと、アミド系溶媒とを含有する廃液を、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒中に、撹拌下に滴下して、液晶性ポリエステルを析出させ、析出した液晶性ポリエステルを固液分離する。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)―X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は2,6−ナフタレンを表わし、Ar2は1,3−フェニレンを表わし、Ar3は1,4−フェニレンを表わし、Xは−NH−を表わし、Yは−O−を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステルは、優れた高周波特性、低吸湿性を有することから、エレクトロニクス基板材料等として注目されている。液晶性ポリエステルから押出成形により製造される液晶性ポリエステルフィルムは、押出方向に著しく配向するため、縦方向(押出方向)に比べて、横方向(押出方向に対して直角方向)の異方性が大きくなり、機械的強度が低くなるという問題があった。この問題は、液晶性ポリエステルを含む溶液組成物を支持体上に流延し、該流延物から溶媒を除去することによって、異方性の小さい液晶性ポリエステルフィルムを得ることにより解消し得るが、この溶媒としては、腐食性が低く、取り扱いが容易なものを使用する必要があった。
【0003】
本出願人は、先に、異方性の小さい液晶性ポリエステルフィルムを得ることができる液晶性ポリエステルを含む溶液組成物であって、用いる溶媒が、腐食性が低く、取り扱いが容易な液晶性ポリエステル溶液組成物を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−315678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の液晶性ポリエステル溶液組成物について、これを含有する廃液の処理方法が必ずしも確立されてはいなかった。
従って、本発明の目的は、特定の液晶性ポリエステル含有廃液を、簡便な方法で、迅速に処理し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、特定の液晶性ポリエステル含有廃液を、特定の溶媒中に滴下して、液晶性ポリエステルを析出させ、ついで固液分離することによって、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法は、下記の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%であり、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%であり、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%である液晶性ポリエステルと、アミド系溶媒とを含有する廃液を、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒中に、撹拌下に滴下して、液晶性ポリエステルを析出させ、析出した液晶性ポリエステルを固液分離する、ことを特徴とする。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)―X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は2,6−ナフタレンを表わし、Ar2は1,3−フェニレンを表わし、Ar3は1,4−フェニレンを表わし、Xは−NH−を表わし、Yは−O−を表わす。)
【0008】
前記液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法において、廃液は、液晶性ポリエステルを廃液総量に対して1〜50重量%含有するのがよい。
【0009】
前記液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法において、滴下する前記廃液(a)と、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒(b)との容量割合は、a:b=1:1.5〜2.5であるのがよい。
【0010】
前記液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法において、撹拌動力は0.05〜1.0kw/m3であるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記特定の液晶性ポリエステル含有廃液を、簡便な方法で、迅速に処理し得るという効果がある。また、析出した液晶性ポリエステルを固液分離後も、例えば乾燥、焼却するなどして、簡便に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明方法で用いられる滴下撹拌装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(液晶性ポリエステル含有廃液)
本発明における液晶性ポリエステルは、下記の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%であり、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%であり、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%である。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)―X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は2,6−ナフタレンを表わし、Ar2は1,3−フェニレンを表わし、Ar3は1,4−フェニレンを表わし、Xは−NH−を表わし、Yは−O−を表わす。)
【0014】
上記液晶性ポリエステルと、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドに溶解して溶液組成物(ワニス)を調製し、この溶液組成物を基板上に流延し、N,N−ジメチルアセトアミドを除去することにより、液晶性ポリエステルフィルムが得られる。
本発明において処理対象とする液晶性ポリエステル含有廃液は、上記の液晶性ポリエステルの溶液組成物が不要となった場合や、保存期限を超えた場合などに発生するものである。
【0015】
上記特定の液晶性ポリエステルをアミド系溶媒に溶解してなる液晶性ポリエステル溶液組成物は、特開2004−315678号公報に記載されている方法によって調製することができる。
【0016】
すなわち、上記構造単位(1)は、芳香族ヒドロキシ酸である2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位であり、構造単位(2)は、芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸由来の構造単位であり、構造単位(3)は、水酸基を有する芳香族アミンである4−アミノフェノール由来の構造単位であるが、これらの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を用いてもよい。
【0017】
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0018】
フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0019】
アミノ基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0020】
全構造単位に対して、構造単位(1)は30〜80モル%であり、30〜45モル%であることが好ましく、35〜40モル%であることがより好ましい。構造単位(1)が80モル%を超えると溶解性が著しく低下する傾向があり、30モル%未満では液晶性を示さない傾向がある。
【0021】
全構造単位に対して、構造単位(2)は10〜35モル%であり、27.5〜35モル%であることが好ましく、30〜32.5モル%であることがより好ましい。構造単位(2)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
【0022】
全構造単位に対して、構造単位(3)は、10〜35モル%であり、27.5〜35モル%であることが好ましく、30〜32.5モル%であることがより好ましい。構造単位(3)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
【0023】
構造単位(3)は構造単位(2)と実質的に等量用いられることが好ましいが、構造単位(3)を構造単位(2)に対して、−10モル%〜+10モル%とすることにより、液晶性ポリエステルの重合度を制御することもできる。
【0024】
本発明で使用される液晶性ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、構造単位(1)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、構成単位(3)に対応する水酸基を有する芳香族アミンのフェノール性水酸基やアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、構造単位(2)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる。アシル化物としては、予めアシル化して得た脂肪酸エステルを用いてもよい(特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報参照)。
【0025】
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、エステル交換(重縮合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶性ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0026】
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水竈−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
【0027】
エステル交換においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。エステル交換は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
【0028】
アシル化して得た脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換させる際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0029】
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行なってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、Nッメチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、Nッメチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003参照)。該触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行なうことができる。
【0030】
エステル交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固層重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶性ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形してもよい。液晶性ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
【0031】
液晶性ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲で、公知のフィラー、添加剤等を添加してもよい。フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、スチレン樹脂などの有機系フィラー、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウムなどの無機フィラーなどが挙げられる。添加剤としては、公知のカップリング剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
【0032】
また、液晶性ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体などのエラストマーなどを一種または二種以上添加してもよい。
【0033】
本発明における液晶性ポリエステルを溶解させる溶媒としては、腐食性が低い非プロトン性溶媒であるアミド系溶媒が使用される。アミド系溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。アミド系溶媒の使用量は、前記液晶性ポリエステルを溶解できれば、特に限定されない。
本発明における液晶性ポリエステル含有廃液においては、液晶性ポリエステルを、廃液総量に対して約1〜50重量%、好ましくは約5〜40重量%含有するのがよい、廃液中の液晶性ポリエステルの含有量が1重量%未満であると溶媒量が大きくなって、処理効率が低下する傾向があり、50重量%を超えると、ろ過や遠心分離などによる固液分離が困難になるおそれがある。
【0034】
(液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法)
本発明の液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法は、前記液晶性ポリエステルとN,N−ジメチルアセトアミドとを含有する廃液を、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒中に、撹拌下に滴下して、液晶性ポリエステルを析出させ、ついで析出した液晶性ポリエステルを固液分離するものである。固液分離した固体分は、例えば、乾燥後、焼却処分される。
【0035】
前記溶媒は、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれるものであり、単独でまたは2種以上の溶媒を組み合わせて使用することができる。2以上の溶媒を組み合わせて用いる場合、上記溶媒の組み合わせや混合割合は、特に限定されない。
また、液晶性ポリエステル含有廃液と、前記溶媒との割合も、特に限定されないが、通常、廃液:溶媒が、容量割合で1:0.5〜1:5.0程度、好ましくは1:1.5〜1:2.5の範囲内とするのが好ましい。
【0036】
液晶性ポリエステルの析出工程は、例えば、図1に示すような滴下撹拌装置1を用いて行うことができる。すなわち、この滴下撹拌装置1の液晶性ポリエステル含有廃液の滴下位置2から、液晶性ポリエステル含有廃液を、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒3中に、撹拌羽根4を回転させて撹拌しつつ、滴下する。滴下撹拌装置1において、撹拌羽根の直径dと滴下撹拌装置の内径Dとの割合d/Dは、特に限定されないが、通常、0.1〜0.9程度、好ましくは0.4〜0.8であるのが、撹拌効率が高い点から、好ましい。
撹拌回転数は、撹拌装置の大きさ、廃液や溶媒の量、撹拌羽根の大きさ等によって応じて適宜決定すればよい。撹拌動力としては、特に限定されないが、強すぎると析出する液晶性ポリエステルの粒子径が小さくなって濾過性が低下するので、通常、0.05〜1.0kw/m3程度、好ましくは0.15〜0.60kw/m3と弱めにして、析出物の粒子径を大きくし濾過性を高めるのが好ましい。滴下撹拌を行う雰囲気温度は常温でよい。上記廃液を滴下する溶媒の温度も常温でよい。滴下時間は、廃液や溶媒の量等に応じて、適宜決定すればよい。滴下撹拌によって、液晶性ポリエステルが析出し沈降する。沈降性は、固液の境界が明確であり、良好である。
【0037】
析出した液晶性ポリエステルは、ついで固液分離される。固液分離は、例えば、濾紙、濾布、濾材等を用いて行う濾過や、遠心分離によって行うことができる。この固液分離によって、固体分である液晶性ポリエステルと、液体分であるN,N−ジメチルアセトアミドおよび、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む混合液が分離される。
【0038】
上記で分離した固体分は、乾燥後、焼却処分される。固体分である液晶性ポリエステルの乾燥、焼却は、常法によって行えばよい。なお、分離された液体分であるN,N−ジメチルアセトアミド、および水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む混合液は、通常の廃水処理によって処理され、または回収る。
【0039】
かくして、本発明の処理方法によって、前記特定の液晶性ポリエステル含有廃液を、簡便な方法で、迅速に処理することができる。
【実施例】
【0040】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。
【0041】
(製造例1)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)および無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。この液晶ポリエステルの粉末について、(株)島津製作所製のフローテスター「CFT-500」を用いて流動開始温度を測定したところ、235℃であった。この液晶ポリエステルの粉末を窒素雰囲気において223℃で3時間加熱処理することにより、液晶ポリエステルの固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
こうして得られた液晶ポリエステル2200gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して液状組成物を得た。
【0042】
(実施例1)
処理対象の液晶性ポリエステル含有廃液として、製造例1で得られた芳香族液晶性ポリエステル溶液を用いて、廃液の処理を行った。
すなわち、図1に示した滴下撹拌装置(容量1.0L)の容器内に水300gを収容し、ついで水を攪拌しながら、滴下撹拌装置の滴下位置より、上記液晶性ポリエステル溶液300gを1時間かけて容器内の水に滴下した。
ここで、撹拌羽根4の回転数は300rpmで、撹拌動力は0.15km/m3とした。撹拌羽根の直径dは70mmであり、滴下撹拌装置の内径Dは115mmであり、d/Dは0.61であった。また、雰囲気温度は9.0℃であった。溶媒である水の温度は、滴下前が12.9℃、滴下後が28.9℃であった。
【0043】
上記滴下撹拌によって、液晶性ポリエステルが析出し、沈降した。析出物の沈降性は良好であった。沈降性は、目視により、固液の境界が明確であるものを「良好」と判断した(以下同じ)。
【0044】
次いで、上記で滴下撹拌した処理液を、濾紙(Advantec社製、品番「定量濾紙No.7」、穴サイズ4μm)を用いて、濾過して、固液分離した。濾過時間は20分であった。固体分であるWケーキ(ウエットケーキ)重量は、262gであった。Wケーキは、乾燥および焼却処理した。また、液体分は、通常の廃液処理によって処理した。
【0045】
(実施例2〜9)
実施例1において、液晶性ポリエステル含有廃液を滴下する溶媒の種類、液晶性ポリエステル溶液の量、撹拌回転数、撹拌動力を、表1に示す種類、量および条件に代えた以外は、実施例1と同様にして、液晶性ポリエステル含有廃液の処理を行った。
【0046】
表1に、実施例1〜9における滴下撹拌条件、沈降性の評価結果、濾過時間およびWケーキ重量を示した。
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1 滴下撹拌装置
2 液晶性ポリエステル含有廃液の滴下位置
3 液晶性ポリエステル含有廃液を滴下する溶媒
4 撹拌羽根
d 撹拌羽根の直径
D 滴下撹拌装置の内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、全構造単位に対して、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%であり、式(2)で示される構造単位が10〜35モル%であり、式(3)で示される構造単位が10〜35モル%である液晶性ポリエステルと、アミド系溶媒とを含有する廃液を、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒中に、撹拌下に滴下して、液晶性ポリエステルを析出させ、
析出した液晶性ポリエステルを固液分離する、ことを特徴とする液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)―X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は2,6−ナフタレンを表わし、Ar2は1,3−フェニレンを表わし、Ar3は1,4−フェニレンを表わし、Xは−NH−を表わし、Yは−O−を表わす。)
【請求項2】
前記廃液が、液晶性ポリエステルを、廃液総量に対して1〜50重量%含有する請求項1に記載の液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法。
【請求項3】
滴下する前記廃液(a)と、水、アセトン、メタノール、トルエンおよびキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒(b)との容量割合が、a:b=1:1.5〜2.5である請求項1または2に記載の液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法。
【請求項4】
撹拌動力が、0.15〜0.60kw/m3である請求項1〜3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル含有廃液の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−158690(P2012−158690A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19678(P2011−19678)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】