説明

液晶組成物

本発明は、液晶組成物、ならびに、この組成物を含むポリマーネットワークおよび物品に関する。組成物は、本明細書に定義されている、以下の式(IV)、(V)および(VI)の各々の構造
【化1】


により表される化合物の群の少なくとも1種の化合物を含む。組成物の形成方法もまた提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基化化合物と非官能基化化合物との混合物を含有する液晶組成物、液晶組成物の調製方法、および、組成物から製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモトロピック液晶は、一般に、形状に顕著な異方性を有する結晶性化合物である。すなわち、分子レベルで、これらは、ロッド様またはディスク様構造によって特徴付けられる。これらは、加熱されると、典型的には、段階的に溶融して、結晶から最終的な等方相への1回以上の熱転移を示す。メソフェーズとして知られる中間相は、分子が全体的に層に拘束されている数種のスメクチック相;および、分子が位置的な長距離秩序を伴わずに互いに平行に配向されているネマチック相を含むことが可能である。液晶相は、加熱サイクルで達成されることが可能であり、または、等方相からの冷却で到達可能である。一般的な液晶、および、特にねじれネマチック液晶の構造は、非特許文献1にさらに検討されている。
【0003】
ネマチック相の重要な変形例は、ねじれネマチック相またはコレステリック相と称されるキラル部分が存在するものである。この場合、分子は、ネマチック相のように相互に平行であるが、分子の配向ベクトル(ロッド様分子の平均方向)は、層の厚さを通じて方向が変化してネマチック分子のらせん状のパッキングをもたらす。らせんのピッチは、分子の長軸に直交している。異方性分子のこのらせん状のパッキングは、円偏光二色性、高度の偏光能;ならびに、紫外光、可視光、および、近赤外光を含む光の選択的な反射を含む、ねじれネマチック相の重要で、特徴的な光学特性をもたらす。可視域における反射は、鮮やかに呈色する層をもたらす。らせんの向きは、右手または左手方向であることが可能であり、および、回転の向きは材料の重要な特徴である。キラル部分は、例えば、コレステロールエステルのように液晶性分子自体の中に存在し得、または、コレステリック相の誘起を伴うネマチック相にドーパントとして添加されることが可能である。この現象は、非特許文献2などの資料においてさらに検討されている。
【0004】
固定ネマチックおよび/またはコレステリック光学特性を示す安定なポリマー層の調製に関心が集まっている。1つのアプローチは、溶融時にネマチックまたはコレステリック相を示す単官能反応性モノマーおよび/または多官能反応性モノマーの合成、低融点液晶組成物の配合、ならびに、ネマチック相またはコレステリック相の安定な光学特性を示すポリマーネットワークをもたらすためのそのネマチックまたはコレステリック相における液晶組成物の合成である。これは、単官能性反応性モノマーおよび/または多官能反応性モノマーの混合物を含む組成物の調製をもたらし、ならびに、特許文献1には、例えば、以下の式の少なくとも2種の異なる化合物を含む液晶性混合物が開示されている。
【化1】

式中、ZおよびZは、互いに独立して、重合性基であり、YおよびYは、互いに独立して、各々、直接結合、−O−、−COO−、−OCO−または−S−であり、AおよびAは、互いに独立して、スペーサであり、ならびに、R、RおよびRは、互いに独立して、文献に定義されているとおりであるが、ただし、少なくとも一方の物
質中の−A−Y−および−A−Y−は異なるO−アルキレンラジカルである。
【0005】
特許文献2は、メソゲン含有分子、末端重合性官能基を含有する2つの側鎖を有するメソゲン、少なくとも2〜20個のスペーサ原子を有するスペーサ基によって分離され、両方のスペーサ基が異なる鎖長を有するメソゲンおよび官能基を含む二反応性メソゲン化合物またはその混合物に関する。
【0006】
特許文献3には、式Z−Y−A−Y−M−Y−A−Y−Zの重合性液晶化合物(式中、ZおよびZは、反応性基であって、これを介して重合に作用することが可能である基を含有するラジカルであり、Y−Yは、一重化学結合、酸素、硫黄、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−または−NR−CO−NR−であり、ここで、基YおよびYの少なくとも一方は−O−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−または−NR−CO−NR−であり、AおよびAは、炭素鎖がエーテル酸素、チオエーテル硫黄によって、または、隣接していないイミノもしくはC〜C−アルキルイミノ基によって分断されていてもよい2〜30個の炭素原子を有するスペーサであり、Mはメソゲン基であり、RはC〜C−アルキルである)、ならびに、これらを含む組成物が開示されている。
【0007】
特許文献4には、ビス(メタ)アクリレート液晶化合物の化学合成、ならびに、ネマチックおよびコレステリック特性を有するポリマーネットワークをもたらす液晶組成物の重合が開示されている。特許文献5は、コレステリック特性を有するポリマーネットワークをもたらす、ビス(メタ)アクリレートキラル化合物、キラル化合物を含む液晶組成物の化学合成、および、液晶組成物の重合に関する。
【0008】
それにもかかわらず、サーマルウィンドウ(thermal windows)、低い融点、および、結晶化に対する良好な相安定性を有すると共に、調製が容易であり、所望の特性を与えるために調整可能である液晶組成物に対する需要がいまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,833,880号明細書
【特許文献2】米国特許第6,090,308号明細書
【特許文献3】米国特許第6,136,225号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0228326号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0267599号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「The Physics of Liquid Crystals」,Gennes and Prost,Oxford University Press,1995年
【非特許文献2】BasslerおよびLabes,J.Chem.Phys.,52,631(1970年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、以下の式(IV)、(V)および(VI)の各々の構造
【化2】

(式中、
n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜20の整数であり;
mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;
Aは、群:
【化3】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−から選択される二価ラジカルであり;ならびに、各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである)
から選択される二価ラジカルである)
により表される化合物の群の少なくとも1種の化合物を含有する組成物を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む液晶組成物であり、さらなる実施形態において、液晶組成物は少なくとも1種のキラル化合物を含む。
【0013】
本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む液晶組成物の重合に由来するポリマーネットワークであり、さらなる実施形態において、このポリマーネットワークは、少なくとも1種のキラル化合物を含む液晶組成物の重合に由来する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、液晶組成物を含む物品であって、さらなる実施形態において、この物品は、光学素子として製造される。本発明の他の実施形態は、液晶組成物の重合に由来するポリマーネットワークを含む物品であって、さらなる実施形態において、この物品は、光学素子として製造される。
【0015】
本発明の他の実施形態は:
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供する工程;
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、
(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;および、nは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;および、
(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;YはHであり;および、tは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;
と第1の反応溶剤中に第1の反応温度で反応させて、中間体組成物と第1の使用済反応混合物とを含む混合物を提供する工程であって、中間体組成物が、以下の式(I)、(II)および(III)の各々の構造
【化4】

(式中、n1、n2、n3、n4、n5、n6、A、B、B、mおよびpは上記に定義されているとおりである)により表される化合物の群の少なくとも1種の化合物を含む工程;ならびに
(c)中間体組成物を(メタ)アクリレート塩と、相間移動触媒および第2の反応溶剤の存在下に、第2の反応温度で反応させて、組成物および第2の使用済反応混合物を含む生成物混合物を提供する工程
を含むものを製造する方法である。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、上記に開示されている方法により調製された組成物を提供し;ならびに、他の実施形態において、上記に開示されている方法により調製された組成物は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む。
【0017】
本明細書に記載の組成物は重合性液晶組成物において多様な用途を有する。組成物の各化合物が、例えば、対称または非対称であるよう、種々のラジカルおよび置換基について規定の範囲内から選択がなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態において生成された式(IV)、(V)および(VI)化合物の総体的な割合のチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、以下の式(IV)、(V)および(VI)の各々の構造
【化5】

(式中、n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜20の整数であり;mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;ならびに、Aは、群:
【化6】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−から選択される二価ラジカルであり;ならびに、各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである)
から選択される二価ラジカルである)
により表される少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供する。
【0020】
「各BおよびBは、群・・・から独立して選択される二価ラジカルである」という句において、m=2の場合、2つのBユニットは各々独立して選択され、すなわち、これらは、同一であっても異なっていてもよく;ならびに、p=2の場合、2つのBユニットは各々独立して選択され、すなわち、これらは、同一であっても異なっていてもよい。加えて、C〜C基は、C、C、C、C、C、C、CまたはCのいずれか1つ以上であり得る。明細書全体を通じて、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)において、−A−がt−シクロヘキシル部分であると共に、mおよびpの一方または両方が0に等しい整数である場合、「アリールアルカノエートエステル」という用語は、シクロヘキシルアルカノエートエステルを指すことが可能である。
【0021】
組成物中の式(IV)の各化合物について、RおよびRは、HおよびCHから独立して選択され得、より好ましくは、RおよびRはHである。組成物中の式(V)の各化合物について、Rは、HおよびCHから選択され得、より好ましくは、Hである
。組成物中の各化合物について、n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜10の整数であり得る。組成物中の各化合物について、mおよびp=2の場合、BおよびBは、各々独立してR11置換−1,4−フェニルであり得る。
【0022】
他の実施形態において、組成物の式IV、VおよびVIの各々の少なくとも1種の化合物について、mは0であると共にpは0である。他の実施形態において、組成物の式IV、VおよびVIの各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0である。他の実施形態において、組成物の式IV、VおよびVIの各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。他の実施形態において、組成物の式IV、VおよびVIの各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり;ならびに、組成物の式IV、VおよびVIの各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。他の実施形態において、n1、n2およびn4は同一である。他の実施形態において、組成物は式(IV)の化合物を1つだけ含む。他の実施形態において、組成物は、式(IV)の化合物を1つだけ含み、ならびに、n1、n2およびn4は同一である。
【0023】
本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供し、ここで、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは0であると共にpは0であり、および、式(IV)化合物は、以下の式(VIIa〜VIIf)の構造:
【化7】

によって表される化合物の群から選択される。
【0024】
この実施形態において、式(V)化合物は、以下の式(XVIIIa〜XVIIIf)の構造:
【化8】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(VI)化合物は、以下の式(XIXa〜XIXf)の構造:
【化9】

によって表される化合物の群から選択される。
【0025】
式(VIIa〜VIIf)、(VIIIa〜VIIIf)、および、(XIXa〜XIXf)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、液晶組成物のための重合性希釈剤および粘度変性剤として有用である。これらの組成物の合成が以下に記載されている。好ましい組成物は、R〜RがHである式(VIIa〜VIId)に記載の少なくとも1種の化合物;R〜RがHであると共にRがCHである式(VIIa)に記載の少なくとも1種の化合物;ならびに、Xが−C(CH−または−O−である式(VIIe)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。
【0026】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供し、ここで、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり、および、式(IV)化合物は、以下の式(VIIIa〜VIIIe)の構造:
【化10】

によって表される化合物の群から選択される。
【0027】
この実施形態において、式(V)化合物は、以下の式(XXa〜XXe)の構造:
【化11】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(VI)化合物は、以下の式(XXIa〜XXIe)の構造:
【化12】

によって表される化合物の群から選択される。
【0028】
式(VIIIa〜VIIIe)、(XXa〜XXe)、および、(XXIa〜XXIe)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、重合性液晶組成物において有用である。このような組成物は、式(VIIIa〜VIIIe)に記載の少なくとも1種の化合物を含む場合、室温またはその付近で(RT、約25℃)ネマチック相を示す。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。他の組成物は、この群の中の少なくとも1種の化合物を含む場合、低い融点を示し得ると共に、液晶混合物において反応性希釈剤および粘度変性剤として用いられることが可能である。好ましい組成物は、式(VIIIa)(式中、R〜RはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。他の好ましい組成物は、式(VIIIa)(式中、RおよびRはHであり;基R〜Rの1つがCHであり;ならびに、基R〜Rの3つがHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。これらの組成物の合成が以下に記載されている。特に好ましい組成物は、式(VIIIa)(式中、R〜RはHであると共に、RおよびRはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含むものである。
【0029】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供し、ここで、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1であり、および、式(IV)化合物は、以下の式(IXa〜IXe)の構造:
【化13】

によって表される化合物の群から選択される。
【0030】
この実施形態において、式(V)化合物は、以下の式(XXIIa〜XXIIe)の構造:
【化14】

によって表される化合物の群から選択されると共に、式(VI)化合物は、以下の式(XXIIIa〜XXIIIe)の構造:
【化15】

によって表される化合物の群から選択される。
【0031】
式(IXa〜IXe)、ならびに、式(V)類似体および式(VI)類似体に記載の化合物を含む組成物は、重合性液晶組成物において有用である。このような組成物は、式(IXa〜e)に記載の少なくとも1種の化合物を含む場合、幅広いネマチック相を示す。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。好ましい組成物は、式(IXa)(式中、BおよびBはR11置換−1,4−フェニルであり;ならびに、RおよびRは、各々独立して、HまたはCHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。組成物のこの群において、さらに好ましい組成物は、基R〜Rの1つがClまたはCHであり;ならびに、基R〜Rの3つがHであり;以下の式(XXIV)の構造
【化16】

によって表される化合物によって例示される少なくとも1種の化合物をさらに含む。
【0032】
これらの好ましい組成物において、n1およびn2が、独立して、3〜10の整数である化合物を含むものがさらに好ましい。これらの組成物の合成が以下に記載されている。
【0033】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を提供し、ここで、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり;ならびに、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。このような組成物は、重合性液晶組成物において有用であると共に、室温(RT)またはその付近でネマチック相を示すことが可能である。他の液晶モノマーを組成物に添加して、広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすことが可能である。好ましい組成物は、式(VIIIa)および/または式(IXa)(式中、R〜RはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。他の好ましい組成物は、式(XXIV)の化合物の少なくとも1種を含む。他の好ましい組成物は、式(VIIIa)および/または式(IXa)(式中、RおよびRはHであり;基R〜Rの1つはCHであり;ならびに、基R〜Rの3つはHである)に記載の少なくとも1種の化合物を含む。これらの組成物の調製は以下に記載されている。
【0034】
他の実施形態において、式(IV)の化合物は、組成物基準で、約0.1モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(IV)の化合物は、約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(IV)の化合物は、約20モルパーセント〜約80モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0035】
他の実施形態において、式(V)の化合物は、組成物基準で、約5〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(V)の化合物は、約10モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0036】
他の実施形態において、式(VI)の化合物は、組成物基準で、約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態において、式(VI)の化合物は、約0.1モルパーセント〜約60モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0037】
化合物の各々を個別に合成し、次いで、これらを組み合わせて所望の組成物を形成するのではなく、本発明の組成物が本明細書に記載の方法の一実施形態(以下に開示のものなど)により調製される場合、方法の実施形態を用いることによる1つの結果は、組成物中の式(IV)、(V)および(VI)の各々の化合物の相対量が、この方法によって実施される一定の関係によって決定されることである。組成物が本明細書に記載の方法のその実施形態によって調製される場合、式(IV)、(V)または(VI)の1つの化合物の所望の量は予め選択されており、および、反応体の適切な比が採用されてその式の化合物が所望の量で生成される。式(IV)、(V)または(VI)化合物の1つを所望の量で生成するために選択された反応体の比はまた、しかしながら、一定の関係に従って一定量の他の2つの化合物をも生成することとなる。例えば、プロセスのこの実施形態において、反応体中で用いられた臭素脱離基の量に関連して生成される式(IV)、(V)または(VI)化合物の各々の量は、予め決定され得る一定の関係に従うこととなる。用いられた脱離基の量に関連して生成される各化合物の量の変化は図示され得、一例が図1にチャートにされており、ここでは、生成される式(IV)化合物の相対的な割合が曲線1によって表されており、生成される式(V)化合物の相対的な割合が曲線2によって表されており、および生成される式(VI)化合物の相対的な割合が曲線3によって表されている。
【0038】
どの式(VI)、(V)または(VI)の化合物についてどれくらいの量が予め選択されるかは、組成物の所望される最終用途(例えば所望される柔軟性または脆性の程度)に応じる。例えば、式(V)および(VI)の化合物をより少ない量で含む組成物は、より高密度のポリマーネットワークおよびより硬質の材料をもたらすことが可能であり、一方で、式(V)および(VI)の化合物をより多量で含む組成物は、より低密度のポリマーネットワークおよびより軟質の材料をもたらすことが可能である。式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む本明細書に記載の組成物の本明細書に記載の方法による調製は、それ故、式(IV)、(V)および(VI)化合物の各々の相対的な含有割合を調節することにより本明細書に記載の組成物の物理特性を調整し得るため、単一の化合物を含む組成物、式(IV)、(V)および(VI)の化合物の一部を含む組成物、または、個別に形成された化合物をブレンドすることにより調製された組成物を超える利点を提供することが可能である。例えば、本明細書に記載の組成物の結晶速度、熱特性または架橋度(それ故、柔軟性または脆性)はこのような様式において調整され得る。
【0039】
本明細書に記載の本発明の他の実施形態は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を調製する方法である。一実施形態においては、組成物は、中間体組成物が形成される方法によって調製されることが可能であり、この中間体組成物は、以下の式(I)、(II)および(III)の各々の構造
【化17】

(式中、Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;ならびに、YはHである)
によって表される少なくとも1種の化合物を含む。式(I)、(II)および(III)において、基および下付文字n1、n2、n3、n4、n5、n6、m、p、A、B、およびBは、式(IV)、(V)および(VI)について上記に定義されているとおりである。
【0040】
本明細書において用いられるところ、略記「−OTf」とは、トリフレートまたはトリフルオロメタンスルホネート基とも称される、式CFSO−を有する官能基を指す。本明細書において用いられるところ、略記−OTs」とは、トシレート基とも称される、式CHSO−を有する官能基を指す。本明細書において用いられるところ、略記「−OMs」とは、メシレートまたはメタンスルホン酸基とも称される、式CHSO−を有する官能基を指す。式(VI)は、YがHである場合、式(III)と同一であることに注目すべきである。
【0041】
本明細書に記載の方法は、例えば、以下のステップ(a)、(b)および(c)を含み得る:
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供するステップ;
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;および、nは3〜20に等しい整数である)
によって表される1種以上の官能基化アルキル酸またはアルキル酸ハロゲン化物;ならびに、(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;YはHであり;および、tは3〜20に等しい整数である)により表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;と、第1の反応溶剤中に、第1の反応温度で反応させて、中間体組成物および第1の使用済反応混合物を含む混合物を提供する工程であって、中間体組成物が、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含むステップ;ならびに、
(c)中間体組成物を(メタ)アクリレート塩と、相間移動触媒および第2の反応溶剤の存在下に、第2の反応温度で反応させて、組成物および第2の使用済反応混合物を含む混合物を提供する工程であって、組成物は、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含むステップ。
【0042】
他に特定的に定義されていない限りにおいて、(メタ)アクリレート塩、(メタ)アクリレートエステル、(メタ)アクリレート酸等という用語は、本明細書において用いられるところ:(i)例えばRおよび/またはRがメチルであるメタクリレート;(ii)Rおよび/またはRがHであるアクリレート;(iii)Rおよび/またはRがClであるクロロアクリレート;ならびに、(iv)Rおよび/またはRがFであるフルオロアクリレートを含む材料および部分を包含する。
【0043】
特定の実施形態において、XがOHである場合、この方法は、カルボジイミド脱水剤の使用をさらに含み;ステップ(c)、1種以上のラジカル抑制剤の使用をさらに含み得;および/または、第2の反応溶剤は、第1の使用済反応混合物であり得る。
【0044】
他の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIIa〜XIIf)の構造によって表される化合物の群:
【化18】

から選択され得、式中、R〜R10およびXは上記のとおりである。本明細書に記載の方法のこれらの実施形態を用いて、上記のとおり式(VIIa〜VIIf)の化合物を含む組成物を提供することが可能である。この方法における使用に好適な式(XIIa〜XIIf)の特定のジオールの例としては:ハイドロキノン、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA、6F−ビスフェノールA、4,4’−オキシジフェノール、および、t−1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0045】
本明細書に記載の方法の他の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIIIa〜XIIIg)の構造:
【化19】

によって表される化合物の群から選択される1種以上のエステルジオールを含み得、R〜R11は上記のとおりである。本明細書に記載の方法のこれらの実施形態を用いて、上記の式(VIIIa〜VIIIe)の化合物を含む組成物を提供することが可能である。この方法における使用に好適な特定の式(XIIIa〜XIIIg)のエステルジオールの例としては:4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、2−フェニル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシベンゾエート、6−ヒドロキシナフチル4−ヒドロキシベンゾエート、5−ヒドロキシナフチル4−ヒドロキシベンゾエート、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)4−ヒドロキシベンゾエート、t−4−ヒドロキシシクロヘキシル4−ヒドロキシベンゾエート、t−4−ヒドロキシシクロヘキシル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾエート、4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエート、および3−メチル−4−ヒドロキシフェニル4−ヒドロキシ−3−メチルベンゾエートが挙げられる。
【0046】
6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸に由来する式(XIIIe)により記載される特定の化合物を含む組成物をもたらす他のエステルジオールは:6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸4−ヒドロキシフェニルエステル(CAS No.[17295−17−9])、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸2−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸3−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸2−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステル、および6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステルである。
【0047】
4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸に由来する式(XIIIg)に記載されている特定の化合物を含む組成物をもたらす他のエステルジオールとしては:4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸2−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸3−メチル−4−ヒドロキシフェニルエステル、4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸2−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステル、および4’−ヒドロキシビフェニル−4−カルボン酸3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルエステルが挙げられる。
【0048】
本明細書に記載の方法の他の実施形態において、ポリオールは、以下の式(XIVa〜XIVf)の構造:
【化20】

によって表される化合物の群から選択される1種以上のジエステルジオールを含み得、式中、R〜R11は上記のとおりである。この方法のこれらの実施形態を用いて、上記の式(IXa〜IXe)に記載の化合物を含む組成物をもたらすことが可能である。この方法において有用であると共に好ましい式(XIVa〜XIVf)の特定のジエステルジオールとしては、式(XIVa〜XIVf)の化合物の特定の例である表1に列挙されている化合物が挙げられる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
2種以上のポリオールの混合物を用いることが得られる組成物の生成物分布の複雑さを高める一手段である。これは、組成物の特性またはその最終用途の特性を調整するための方法であることが可能である。ポリオールは、例えば、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mが1であると共にpが0である組成物、および、これらの式の各々の少なくとも1種の化合物について、mが1であると共にpが1である組成物といった、2つ以上のメソゲンを有する組成物を提供するために選択されることが可能である。ポリオールの他の組み合わせもまた用いられることが可能である。
【0052】
式(X)に記載されている好ましい官能基化アルキル酸ハロゲン化物は、酸塩化物(X=Cl)である。式(X)における一実施形態において、ZはBrである。式(XI)に記載されている好ましい非官能基化アルキル酸ハロゲン化物は酸塩化物(X=Cl)である。
【0053】
有機ポリオールがジオールである場合、官能基化アルキル酸ハロゲン化物および非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の総量は、ジオールの量に基づいて、好ましくは約1.8〜約2.5当量、および、より好ましくは約2.0当量である。用いられた官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が、組成物中に得られた式(IV)、(V)および(VI)の化合物の相対量を決定する。例えば、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との1:1混合物(モル基準で)は、式(IV)、(V)および(VI)の化合物の相対的なモル量が、それぞれ、1:2:1である組成物をもたらす。あるいは、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物と(例えば、ジオールに対して、1.6当量の官能基化アルキル酸ハロゲン化物と0.4当量の非官能基化アルキル酸ハロゲン化物)の4:1混合物(モル基準で)は、64mol%式(IV)の化合物、32mol%式(V)の化合物、および、4mol%式(VI)の化合物を有する組成物をもたらす。官能基化アルキル酸ハロゲン化物対非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の所与の比について、生成物の分布は、すべての可能性の統計学的な混合物である。官能基化アルキル酸ハロゲン化物および/または非官能基化アルキル酸ハロゲン化物の総数を高めることが、生成物分布の複雑さ、すなわち、得られる組成物中の各式の化合物の数を高める一手段である。
【0054】
一実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(IV)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約0.1モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(IV)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(IV)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約20〜約80モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0055】
他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(V)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約5モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(V)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約10〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0056】
他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物が提供され、ここで、式(VI)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の総量で存在する。他の実施形態においては、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との相対量が選択されて組成物が提供され、ここで、式(VI)の化合物は、総組成物の含有量に基づいて、約0.1モルパーセント〜約60モルパーセントの範囲の総量で存在する。
【0057】
この方法、または、数々の非官能基化アルキル酸ハロゲン化物と併せて数々の官能基化アルキル酸ハロゲン化物を用いるその変形例は、ステップ(b)において複雑な中間体組成物を提供し、これを、ステップ(c)において式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む複雑な組成物に転換する簡便であると共に好ましい方法である。
【0058】
第1の反応溶剤は、アルコールとの酸ハロゲン化物縮合を実施するために有用である技術分野において公知である任意の溶剤であることが可能であり、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンまたはジメトキシエタンなどのアルキルエーテル;酢酸エチルまたは酢酸ブチルなどのアルキルエステル;キシレンまたはトルエンなどの炭化水素;1,2−ジクロロエタンまたはジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;ならびに、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセタミド(DMAc)などのアミドが挙げられる。好ましい第1の反応溶剤はTHFである。
【0059】
ステップ(c)において有用な(メタ)アクリレート塩は、メタクリル酸、アクリル酸、2−クロロアクリル酸および2−フルオロアクリル酸を含む、対応する(メタ)アクリレート酸の中和から誘導されることが可能である。中和に用いられる塩基は、アルカリ金属(メタ)アクリレート塩をもたらす、例えば炭酸カリウムおよび重炭酸カリウム;炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム;炭酸リチウムおよび重炭酸リチウム;ならびに、炭酸セシウムおよび重炭酸セシウムといったアルカリ金属塩基であることが可能である。塩基は、アルカリ土類金属(メタ)アクリレート塩をもたらす、アルカリ土類金属塩基、例えばマグネシウム、カルシウムまたは炭酸バリウムであることが可能である。塩基はまた、アミン塩基であることが可能であり、特に、アンモニウム(メタ)アクリレート塩をもたらす、上記の第3級脂肪族、芳香族または複素環式アミンなどのヒンダードアミン塩基であることが可能である。ステップ(c)に好ましい(メタ)アクリレート塩は、群:カリウム(メタ)アクリレートから選択され、および、群:トリエチルアンモニウムから選択されるアンモニウム(メタ)アクリレートである。
【0060】
(メタ)アクリレート塩は、市販されている供給源から入手することが可能であり、または、個別のプロセスステップで調製して、直接的に用いるか、または、洗浄、ろ過、乾燥、再結晶化、あるいは、塩の析出などの技術分野において公知である1種以上の方法により精製することが可能であり;または、インサイチュで、(メタ)アクリレート酸の塩基での中和により形成することが可能である。本発明の好ましい実施形態において、(メタ)アクリレート塩は、(メタ)アクリル酸と、群:炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムから選択されるアルカリ金属炭酸塩とを、それぞれ、約1:1〜約1:5のモル比で第2の反応溶剤中で混合することによりもたらされる。
【0061】
本明細書に記載の方法の他の実施形態において、用いられるべき(メタ)アクリレート塩の量は、式(I)および(II)の化合物の総Z末端基の1当量当たり約1.0〜約10.0当量である。好ましくは、(メタ)アクリレート塩はアクリレート塩である。
【0062】
ステップ(c)において用いられ得る相間移動触媒は、第1の相中の反応体と、通常は水性相または固体相である第2の相から第1の相に移動される反応体との反応を促進させる、第1の(通常は有機)相中に少なくとも部分的に存在しているか、または、第1の(通常は有機)相によって濡らされている物質である。反応の後、相間移動触媒は、さらなる反応体を移動させるために放出される。相間移動触媒は、有機相中に可溶性であるよう、通常はアルキルまたはアラルキル基といった嵩高い有機基を含有していることが好ましい、第4級アンモニウムまたはホスホニウム塩であることが好適である。相触媒は、各窒素またはリン原子に結合する炭素原子の総数が少なくとも4個である、テトラアルキルまたはアラルキル(例えばベンジル)トリアルキルアンモニウムまたはホスホニウム塩であることが好ましい。相間移動触媒として本明細書における使用に好適な他の物質としては、E.V.Dehmlowによって、Angewante Chemie,(International Edition),13,170(1974年)において概説されているものが挙げられる。
【0063】
本明細書における相間移動触媒としての使用に好適な第4級アンモニウム塩としては:臭化セチルトリメチルアンモニウム、ジセチルジメチル塩化アンモニウム、臭化オクチルトリブチルアンモニウム、トリオクチルメチル塩化アンモニウム(Aliquat(商標)336として入手可能)、ベンジルジメチルラウリル塩化アンモニウム、ベンジルトリエチル塩化アンモニウム、ジラウリルジメチル塩化アンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、および、ヨウ化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。本明細書における相間移動触媒としての使用に好適な第4級ホスホニウム塩としては、臭化セチルトリプロピルホスホニウムおよび臭化トリフェニルエチルホスホニウムが挙げられる。用いられ得る他の相間移動触媒としては、クラウンエーテルおよびポリエチレングリコール変異体が挙げられる。相間移動触媒は、式(I)および(II)の化合物の、約0.001〜約0.9モル当量、および、好ましくは約0.1〜約0.7モル当量の範囲の量で存在し得る。好ましい相間移動触媒は、群:ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、および、臭化テトラヘプチルアンモニウムから選択され;ならびに、群:18−クラウン−6、CAS No.[17455−13−9];ベンゾ−18−クラウン−6、CAS No.[14078−24−9];15−クラウン−5、CAS No.[33100−27−5];ならびに、ベンゾ−15−クラウン−5、CAS No.[140−44−3]から選択されるクラウンエーテルである。
【0064】
第2の反応溶剤は、Zの(メタ)アクリレート塩での求核性置換の実施に有用であるとされている技術分野において公知である任意の溶剤であることが可能である。しかしながら、非プロトン性の構造であり、および、約3.5以下の磁気双極子モーメントを有する特定の第2の反応溶剤が好ましい。構造が非プロトン性である溶剤は、ヒドロキシルまたは酸官能基などの活性水素を有していないものである。これらの特徴を有する溶剤は、望ましくないエステル開裂生成物をきわめて低レベルに維持しながら、多官能化アリールアルカノエートエステルの生成物への高い転換速度をもたらす。好ましい第2の反応溶剤としては、群:テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシエタンを含むアルキルエーテル;アセトンおよび2−ブタノンを含むケトン;酢酸ブチルおよび酢酸エチルを含むアルキルエステル;ならびに、アセトニトリルから選択されるものが挙げられる。一実施形態においては、第2の反応溶剤は第1の使用済反応混合物であってもよい。
【0065】
第1の反応温度および第2の反応温度は、副生成物が最低で適切な反応速度が得られる温度である。第1の反応温度は、一般に、−30℃〜約50℃であり、および、好ましくは約0℃〜室温(RT、例えば25℃)である。第2の反応温度は、一般に、約室温〜約120℃であり、および、好ましくは約50℃〜100℃である。
【0066】
ステップ(b)において任意により用いられる場合、塩基は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、あるいは、炭酸水素塩といった無機塩基;または、少なくとも2個の脂肪族基を有するか、もしくは、N原子の周囲に立体的な混み合いを誘起するよう置換される脂環式もしくは芳香族環にN原子があるアミン塩基などの有機塩基を含むことが可能である。典型的には、アミン塩基は、水溶解度が低く、かつ、約10の共役酸のpKを有するものであろう。それ故、アミン塩基は、例えば2,6−ジメチルピリジンといったピリジンもしくは置換ピリジンなどの芳香族複素環式塩基であり得;または、充分な立体傷害を伴っている第二級アミンであり得る。好適な第二級アミンの例は、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンである。しかしながら、式R121314N(式中、R12、R13およびR14の各々が独立してC〜C10アルキル基もしくはC〜Cシクロアルキル基である)の第三級アミンが好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルが挙げられる。式R121314Nの好適な第三級アミンは、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミン、t−ブチルジメチルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンである。群:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、および2,6−ジメチルピリジンから選択されるアミン塩基が好ましい。塩基は、用いたアルキル酸ハロゲン化物の合計(すなわち、官能基化アルキル酸ハロゲン化物と非官能基化アルキル酸ハロゲン化物との和)の1当量当たり、約0.8〜約5当量の量で存在していることが好ましい。
【0067】
ステップ(b)において任意により用いられる塩基がアミン塩基である場合、反応の副生成物はアミン塩酸塩などのアミン塩である。一実施形態において、このアミン塩は、例えば、反応混合物をろ過することにより第1の使用済反応混合物から除去される。これは、第2の反応溶剤が第1の反応溶剤を含んでいることが可能である簡便で、好ましい方法である。他の実施形態において、ステップ(b)によりもたらされる中間体組成物のアリールアルカノエートエステルの混合物は、第1の使用済反応混合物から技術分野において公知である多様な方法によって分離されることが可能である。好ましい方法は:アミン塩副生成物をろ過するステップ;反応混合物を水中に析出させ、ろ過するステップ;反応混合物を水および/または有機溶剤中に分割するステップ;反応混合物を水で洗浄するステップ;反応混合物を乾燥剤で乾燥させるステップ;蒸発により溶剤を除去するステップ;ならびに、粗生成物を、式(I)、(II)および(III)の化合物の混合物を溶解させることなく、選択的に副産物を除去する1種以上の溶剤で洗浄するステップのいずれか1つ以上を含む。
【0068】
ステップ(b)において用いられる場合、好適なカルボジイミド脱水剤は、通例、酸をアルコールおよびフェノールとカップリングする際に用いられる任意のジイミドであり得る。ステップ(b)について好ましいカルボジイミドはジシクロヘキシルカルボジイミドである。
【0069】
ステップ(c)において用いられる場合、ラジカル抑制剤は、(メタ)アクリレート基のラジカル重合反応を阻害すると公知である任意のラジカル抑制剤を含み得、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−オクチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−6−(α−メチルベンジル)フェノール、2,4−ジ−t−オクチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−デコキシフェノール、2−t−ブチル−4−クロロフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチル−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、4,4’メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,4−ハイドロキノン、4−メトキシフェノール等;トリ(ノニルフェニル)リン酸、トリデシル亜リン酸塩等などのリン化合物;1,2−ジヒドロキシナフタレン、1−アミノ−2−ナフトール、1−ニトロ−2−ナフトール等などのナフトール系化合物;トリメチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−フェニレンジアミン、メルカプトエチルアミン、N−ニトロソジメチルアミン、ベンゾトリアゾール、フェノチアジン、ハロ−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノン等などのアミン化合物;または、ジラウリルチオジプロピオネート、ジラウリルスルフィドおよび2−メルカプトベンズイミダゾールなどの硫黄化合物が挙げられる。上記のリストは網羅的であることは意図されておらず;有機材料におけるラジカルの形成を阻害する数多くのクラスの化合物が周知であり、および、本方法の実施において用いられることが可能である。ラジカル抑制剤は、単一の化合物、または、混合物、または、このような化合物の2種以上の組み合わせであることが可能である。好ましいラジカル抑制剤は、群:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジンおよびトリデシルリン酸から選択される。
【0070】
他の実施形態において、この方法は、第2の使用済反応混合物からステップ(c)によってもたらされた、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を分離する工程さらに含む。これは:第2の使用済反応混合物をろ過するステップ;反応混合物を水中に析出させ、ろ過するステップ;反応混合物を水および/または有機溶剤中に分割するステップ;反応混合物を水で洗浄するステップ;反応混合物を乾燥剤で乾燥させるステップ;蒸発により溶剤を除去するステップ;ならびに、粗生成物を組成物の化合物を溶解させることなく選択的に副産物を除去する1種以上の溶剤で洗浄するステップのいずれかの1つ以上を含む技術分野において公知である多様な方法によってなされることが可能である。
【0071】
本発明の他の実施形態は、組成物を調製する方法であって、ここで、組成物の各化合物について、mおよび/またはpは2である。本方法は、(a)式(XIIIa〜XIIIg)および(XIVa〜XIVf)により記載されるものの群から選択される1種以上のポリオールを提供する工程;ならびに、(b)このポリオールを、式(XVa〜XVc):
【化21】

(式中、XはClまたはBrであり、n1は3〜20の整数であり;ならびに、RおよびR11は上記のとおりである)の1種以上の(メタ)アクリレートアリール酸ハロゲン化物、および、第1の反応溶剤と、上記の第1の反応温度で反応させて、1種以上の式(IV)のポリ(メタ)アクリレートアリールアルカノエートエステル、1種以上の式(Vの)のモノ(メタ)アクリレートアリールアルカノエートエステル、および、1種以上の式(VI)の非官能基化アリールアルカノエートエステル(式中、組成物の各化合物について、mおよび/またはpは2である)を含む組成物をもたらす工程を含む。好ましくは、ステップ(b)は、上記のとおり塩基および1種以上のラジカル抑制剤の使用を含む。
【0072】
式(XVa〜XVc)の(メタ)アクリレートアリール酸ハロゲン化物の調製が米国特許出願公開第2007/0228326号明細書に開示されている。上記の方法において、反応混合物の含有量は、少なくとも、規定の生成物を一定の速度で、商業的に有用な収率が伴うよう反応を促進させることが可能であるのに充分な量で用いられる。
【0073】
本発明の他の実施形態は、本発明の方法によって調製された組成物である。式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物であり得るこのような組成物は、
(a)少なくとも2個のヒドロキシル基と少なくとも2個の共有結合された炭素原子とを含み、ヒドロキシル基の各々が有機ポリオール中の異なる炭素原子に結合している1種以上の有機ポリオールを提供する工程;
(b)有機ポリオールを、任意により塩基の存在下に、
(i)以下の式(X)の構造:
Z−(CH−C(O)X (X)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;Zは、Br、I、−OTs、−OTfまたは−OMsであり;および、nは3〜20に等しい整数である)によって表される1種以上の官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;および、(ii)以下の式(XI)の構造:
Y−(CH−C(O)X (XI)
(式中、Xは、Cl、Br、IまたはOHであり;YはHであり;および、tは3〜20に等しい整数である)によって表される1種以上の非官能基化アルキル酸または酸ハロゲン化物;
と第1の反応溶剤中に第1の反応温度で反応させて、中間体組成物と第1の使用済反応混合物とを含む混合物を提供する工程であって、中間体組成物が、式(I)、(II)および(III)の各々の少なくとも1種の化合物を含む工程;ならびに
(c)中間体組成物を、(メタ)アクリレート塩と、相間移動触媒および第2の反応溶剤の存在下に、第2の反応温度で反応させて、組成物と第2の使用済反応混合物とを含む生成物混合物を提供する工程
により調製される。
【0074】
式(VIIIa〜VIIIe)および(IXa〜IXe)の化合物の少なくとも1種を含むものなどの本発明の組成物は、本発明の他の実施形態である液晶組成物において有用である。これらの組成物の多くは溶融の際にネマチック相を示す。これらは、室温またはその付近で広い温度範囲にわたってネマチック相をもたらすよう、他の液晶モノマーと混合されることが可能である。本発明の種々の実施形態の組成物が、それぞれのネマチック相を定義する対応する熱転移と共に以下の実施例において示されている。
【0075】
本発明の追加の実施形態は、上記に定義されている式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物を含む液晶組成物である。さらなる実施形態において、液晶組成物は少なくとも1種のキラル化合物を含む。本発明によって提供される式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物を含む組成物は、重合性ネマチック組成物である。このような組成物は、従来のネマチック液晶または重合性液晶と混合されて重合性ネマチック組成物を形成することが可能である。本発明によって提供される組成物は、さらに、重合性および/または非重合性キラルモノマーおよび/または重合性および/または非重合性キラルネマチック液晶を含むキラル化合物と混合されて、本発明の実施形態でもある重合性ねじれネマチック組成物を形成することが可能である。好ましい液晶組成物は、式(IV)の化合物の少なくとも1種が式(IXa)によって記載されているとおりである組成物を含む。
【0076】
安息香酸塩エステル、アルキルエステル、および、コレステローのルのアルキル炭酸塩などのコレステロールエステルまたはカーボネートを含むキラル化合物は、コレステリック相を示すことで知られており、ネマチック相におけるキラリティーを含み、ねじれネマチック相の生成に有用であることが知られている。本明細書において用いられるところ、「ねじれネマチック相」、「コレステリック相」、および、「キラルネマチック」という用語は同義である。本発明の液晶組成物への組み込みに有用なコレステロールエステルとしては、アルキルおよびアルコキシ基がC〜C直鎖または分岐鎖アルキル基であるコレステロールベンゾエート、コレステロール4−アルキルベンゾエートおよびコレステロール4−アルコキシベンゾエート;コレステロールプロピオネート、コレステロールブタノエート、コレステロールヘキサノエート、コレステロールオクタノエート、コレステロールデカノエート、コレステロールウンデカノエート、コレステロールドデカノエート、コレステロールヘキサデカノエート、および、コレステロールオクタデカノエートが挙げられる。この目的のために有用なコレステロールカーボネートとしては、フェニルコレステロールカーボネート、4−アルキルフェニルコレステロールカーボネート、4−アルコキシフェニルコレステロールカーボネート、および、アルキルまたはアルコキシ基がC〜C直鎖または分岐鎖アルキル基であるアルキルコレステロールカーボネートが挙げられる。
【0077】
本発明の組成物の一実施形態において、組み込まれるキラル化合物は重合性キラルモノマーであり、米国特許第4,637,896号明細書に記載の重合性コレステロール誘導体;米国特許第6,010,643号明細書に記載の重合性テルペノイド誘導体;米国特許第5,560,864号明細書に記載のキラル中心が分岐アルキル鎖の非対称炭素原子である重合性誘導体;米国特許第6,120,859号明細書および米国特許第6,607,677号明細書に記載のビシナルジオールまたは置換ビシナルジオールの重合性誘導体;ならびに、米国特許第6,723,395号明細書、米国特許第6,217,792号明細書、米国特許第5,942,030号明細書、米国特許第5,885,242号明細書および米国特許第5,780,629号明細書に記載の重合性キラル化合物が挙げられる。好適なキラル化合物の追加の例が、同時継続中の、本出願人による、米国特許出願公開第2007/0267599号明細書、国際公開第2009/023759号パンフレットおよび国際公開第2009/023762号パンフレットに記載されている。この段落において上記に列挙されている文献は、参照により、各々が、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される。
【0078】
本発明の組成物における使用のための重合性キラルモノマーの好ましい群は、式(XVI):
【化22】

のものであり、式中、RおよびRは、各々独立して、群:H、F、ClおよびCHから選択され;n1およびn2は、各々独立して3〜20の整数であり;qおよびrは、各々独立して0、1または2の整数であるが、ただし、q+rは≧1であり;Dは、群:
【化23】

から選択される二価のキラルラジカルであり;ならびに、BおよびBは、各々、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および、4,4’−ビフェニルから独立して選択される二価ラジカルであり;ただし、q+r=3であり、BおよびBの少なくとも一方はR置換−1,4−フェニルであり;ならびに、q+r=4である場合、BおよびBの少なくとも2つがR置換−1,4−フェニルである。好ましくは、RおよびRは、独立して、HまたはCHであり;ならびに、n1およびn2は、独立して、3〜10の整数である。
【0079】
式(XVI)の化合物が、例えば、対称または非対称であるよう、種々のラジカルおよび置換基について規定の範囲内から選択がなされ得る。本発明を実施するための重合性キラルモノマーの他の好ましい群は、式(XVII):
【化24】

のものであり、式中、Rは、群:H、F、ClおよびCHから選択され;Eは、群:−(CHn7−、−(CHn8O−および−(CHCHO)n9−から選択され;n7およびn8は、各々、3〜20の整数であり;n9は1〜4の整数であり;ならびに、yは0または1の整数である。
【0080】
本発明により提供される液晶組成物は、ネマチックまたはねじれネマチックポリマーネットワークの固定的な光学特性を示すポリマーネットワークの調製に有用な混合物である。本発明により提供されるポリマーネットワークは、重合フィルム、コーティング、キャスティングおよび印刷物などの形態で製造され得る液晶組成物を含み、パターン化された、パターン化されていない、可変および不可変の光学特性を有し、および、例えば、その各々が、本参照によりすべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される、米国特許第4,637,896号明細書、米国特許第6,010,643号明細書および米国特許第6,410,130号明細書に開示されている広く多様な方法によって形成可能である、1つ以上のポリマー化された層である。
【0081】
特に、ポリマーネットワークを形成するための好ましい1つの方法は:重合性液晶混合物を、液晶または等方相の形態で、好ましくはラジカル開始剤といった重合開始剤と共に提供するステップ;液晶混合物を1つ以上の基材(ここで基材は、任意により配向層を備え得る)に適用して、液晶の層を提供するステップ;任意により、この層を処理して所望の液晶相を提供するステップ;ならびに、好ましくは液晶相を化学線に露出することにより液晶相を重合するステップを含む。化学線としては、例えば、熱、超短波放射線、UVおよび可視光、ならびに、電子ビームおよび他の放射線が挙げられる。
【0082】
本発明の種々の実施形態によってもたらされる液晶組成物は、ラジカル開始剤を含むことが可能である。ラジカル開始剤は光化学重合の実施に有用な光開始剤であることが好ましいが、このような開始剤は、電子ビームによって硬化が実施される場合には必要とされない。好適な光開始剤の例は、イソブチルベンゾインエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)フラン−1−オン、ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの混合物、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、過フッ素化ジフェニルチタノセン、2−メチル−1−(4−[メチルチオ]フェニル)−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、エチル4−(ジメチルアミノ)安息香酸塩、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンとの混合物、2−(ジメチルアミノ)エチル安息香酸塩、d,l−カンファーキノン、エチル−d,l−カンファーキノン、ベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの混合物、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロリン酸、または、トリフェニルスルホニウム塩の混合物である。好ましくは、光開始剤は、重合性液晶混合物の総重量に基づいて約0.05重量%〜4重量%のレベルで存在する。
【0083】
本発明の組成物からのポリマーネットワーク中への液晶層の形成は、均一な層、または、所望の場合には、パターン化された、もしくは、不均一な層をもたらす任意の方法によって達成されることが可能である。ロッドコーティング、押出し成形コーティング、グラビアコーティング、および、スピンコーティング、吹付け、印刷、ブレード印刷、へら付け、または、これらの方法の組み合わせを含むコーティングを用いることが可能である。コーティングおよびへら付けが好ましい方法である。多くの商業用コーティング機器、コーティングロッドおよびナイフブレードなどのデバイス、ならびに、印刷機器を用いて、液晶混合物を液晶または等方相として適用することが可能である。
【0084】
ねじれネマチック相の光反射能は、ねじれネマチック相の配向またはテクスチャに応じる。高度な透明度が反射域の外で要求される多くの用途に関しては、または、きわめて良好に画定された反射域が要求される用途においては、平面において高度な均一性、または、均質な配向が要求される。平面配向における不連続部および分域境界は、高度のヘーズおよび反射域の減損をもたらす可能性がある。平面配向における高度の均一性は、配向層、および/または、基材への適用の最中および/またはその後のねじれネマチック相の機械的シェアリングの組み合わせで達成されることが可能である。配向層は、典型的には、基材に適用され、および、ラビング織布で機械的にバフがかけられたポリマーであるか、または、偏光で光学的に配向されたポリマーである。バフかけまたは光学的配向は、界面に適用された液晶分子を一方向に配向させる。有用なポリイミド配向層が、例えば、米国特許第6,887,455号明細書に記載されている。希釈液晶混合物をコートすることによるねじれネマチック相の配向が、米国特許第6,410,130号明細書に記載されている。
【0085】
液晶層を処理して所望の液晶相を得る工程は、例えば所望の相または光学特性を達成するための液晶層の冷却もしくは加熱;、例えば、液晶層へのナイフブレードの適用、もしくは、液晶層が挿入されている2つ以上の基材のシェアリングによる液晶層への機械的シェアの印加;または、振動、超音波処理、あるいは、基材への他の形態のじょう乱などのステップを含んでいることが可能である。
【0086】
ポリマーネットワークを形成する他の好ましい方法は:重合性液晶混合物、重合開始剤、好ましくは光開始剤、および、キャリア溶剤を含む等方性溶液を提供する工程;等方性溶液を、1つ以上の基材であって、好ましくは配向層を備える基材に適用して等方性層を提供する工程;キャリア溶剤を除去し、および、任意により、層を処理して、所望の液晶相を提供する工程;ならびに、好ましくは液晶相を化学線に露出させることにより、液晶相を重合する工程を含む。これらのものなどの手法は、米国特許第6,010,643号明細書および米国特許第4,637,896号明細書により完全に説明されており、ここでは、2つの基材を用いて1つのセルを形成する液晶層の調製が記載されている。同様に、米国特許第4,637,896号明細書および米国特許第6,410,130号明細書には、等方性溶液からの液晶層の調製、これに続く重合が記載されている。この段落において上記に列挙されている文献は、この参照により、各々が、すべての目的についてその全体が本明細書の一部として援用される。
【0087】
キャリア溶剤が液晶組成物と共に用いられる場合、コーティングおよび吹付けが、等方性溶液を適用する好ましい方法である。キャリア溶剤の除去は、加熱するかまたは加熱せずに、および/または、減圧を適用するかまたは適用せずに、キャリア溶剤を蒸発させることにより達成されることが可能である。キャリア溶剤の蒸発はまた、上記の機械的シェアの液晶層への印加が伴うか、および/または、その後に続くことにより達成されてもよい。好適なキャリア溶剤の例は、特に、酢酸エステル、環式エーテルおよびエステルといった直鎖または分岐鎖エステル、アルコール、ラクトン、脂肪族、ならびに、トルエン、キシレンおよびシクロヘキサンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどの塩素化炭化水素、また、ケトン、アミド、特にN−メチルピロリドンといったN−アルキルピロリドンである。有用な溶剤の追加の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0088】
本発明により提供される液晶組成物は、さらに、例えば、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む重合性希釈剤を少量で含んでいてもよい。
【0089】
本発明によって提供される液晶組成物は、さらに、1種以上の界面活性剤、均展剤、粘度変性剤、湿潤剤、脱泡剤および紫外線安定剤などの典型的な添加剤を少量で含んでいてもよい。選択は、度々、観察されるコーティング、および、配向品質、および、最終的なポリマーネットワークの基材および他の層に対する所望される粘着性に応じることとなる。典型的な界面活性剤は、シロキシ−、フルオリル−、アルキル−およびアルキニル−置換界面活性剤を含む。これらとしては、Byk(登録商標)(Byk Chemie)、Zonyl(登録商標)(DuPont)、Triton(登録商標)(Dow)、Surfynol(登録商標)(Air Products)、および、Dynol(登録商標)(Air Products)界面活性剤が挙げられる。
【0090】
本発明によって提供される液晶ポリマーネットワークは、Makromol.Chem.190,2255〜2268ページ,(1989年)および米国特許第5,833,880号明細書、ならびに、その中で引用されている文献に開示されている一般式(C−I)の従来の重合性液晶ビス(メタ)アクリレートとは、IR吸収特性の比較によって、特徴付けられると共に、区別されることが可能である。一般式(C−I)の重合性液晶ビス(メタ)アクリレートの光重合で得られるネットワークは、アリールアリレート、および、アルキルアルカノエートタイプエステルリンケージ(式中、R15は直鎖、分岐または環式脂肪族鎖であり、および、Arは従来の置換または非置換の芳香族置換基である)を含有する。本発明の種々の実施形態によってもたらされるビス(メタ)アクリレートを含む重合性液晶組成物は、前述の2つのクラスのエステルリンケージを含有するが、アリールアルカノエートタイプリンケージをも含有する。エステルはアリールアリレートに関連してストレッチし、アルキルアルカノエートタイプエステルリンケージと一致すると報告されており、一方で、アリールアルカノエートタイプリンケージに対するストレッチ周波数は、およそ20〜30cm−1高い周波数で見られると報告されている(Pretschら,Spectral Data for Structure Determination of Organic Compounds,Springer−Verlag,Berlin Heidelberg,第2版,1989,I141〜I142ページ)。
【0091】
【化25】

【0092】
ねじれネマチック相の赤外光域、可視光域または紫外光域における光の選択的な反射能は、多くの用途において有用である。平面偏光または不偏光の伝播方向がねじれネマチック層のらせん軸に沿っている場合、最大反射波長λは、式λ=npによって支配され、式中、nはnおよびnの平均であり、ならびに、nおよびnは、それぞれ、伝播方向において計測されたねじれネマチック相の常光屈折率および異常光屈折率と定義され、ならびに、pはらせんのピッチ(らせん自体が反復する距離)である。λの近くから外れた光は、基本的に透過の際に影響はされない。波長λに近い波長を有する光については、ねじれネマチック相は、光のおよそ50%が反射され、および、光のおよそ50%が透過されるような選択的な光の反射を示し、反射光線および透過光線は共に実質的に円偏光される。右らせんは右偏光を反射し、左偏光を透過させる。約λを中心とするこの反射波長帯の帯域Δλは、式Δλ=λΟ・Δn/n(式中、Δn=n−n)によって決定されることが可能であり、液晶材料中に存在する複屈折を反射する。ピッチpは、キラルドーパントの量、ドーパントのねじれ力、および、ネマチック材料の選択を操作することにより、効果的に調整することが可能である。ピッチは温度に感応性であり、温度変化に伴って巻き戻しまたは巻き増しされ;ならびに、電界、ドーパント、および、他の環境的配慮に感応性である。それ故、ねじれネマチック相においては、ピッチ、それ故、最大反射の波長の操作は、広く多様なツールで達成されることが可能である。しかも、反射波長帯の帯域Δλもまた、米国特許第5,506,704号明細書および米国特許第5,793,456号明細書に記載の様式で操作されることが可能である。
【0093】
本発明によって提供されるポリマーネットワークは、架橋性に応じて可撓性または脆性のいずれかに形成されることが可能である。例えば、脆性のフィルムは、薄片化が可能であり、薄片は、化粧品および自動車塗料において用いられる多様なインクまたは塗料中の顔料として用いられる。フィルムは、反射光の輝度を増強させる例えば黒色層といった、他の顔料または顔料層と組み合わされることが可能である。
【0094】
本発明によって提供されるポリマーネットワークは、光学素子として、または、光学素子の部品として有用である。光学素子は、フィルム、コーティング、または、光の特徴を変更するために用いられる成形物品のいずれかである。光学素子によってもたらされる変更としては、透過率もしくは反射率の変化に伴う光強度の変化、波長もしくは波長分布の変化、偏光状態の変化、光の一部もしくはすべての伝播方向の変化、または、例えば、光の集束、コリメート、あるいは、拡散による強度の空間分布の変化が挙げられる。光学素子の例としては、直線偏光子、円偏光子、レンズ、鏡、コリメータ、拡散器、反射器等が挙げられる。光学素子の特定の一例は、窓構造において採用されたλの近傍で光を反射する、本発明により提供されるコレステリックネットワークの層である。
【0095】
本発明により提供されたポリマーネットワークから調製された光学素子は多層積層体における構成部品として用いられ得、その一形態が積層物品であり得る。一実施形態においては、光学素子は、約10mil(0.25mm)超、または、約20mil(0.50mm)以上の厚さを有するシートの形態で提供され得、ここで、積層体を構成するすべての構成部品の合計の厚さは、通例安全な積層体の特性としてみなされる適切な透過抵抗が保障するために、約30mil(0.75mm)以上の厚さであり得る。このような目的に有用な高分子シートは、押出し成形、カレンダ加工、溶液キャスティング、または、射出成形などの任意の好適なプロセスにより形成され得る。
【実施例】
【0096】
本発明の有利な属性および効果が、以下に記載のとおり、一連の実施例(実施例1〜4)からより完全に評価され得る。しかしながら、これらの実施例が基づいている実施形態は単なる例示であり、本発明を例示するためのこれらの実施形態の選出は、これらの実施例に記載されていない材料、条件、明細、要素、レジメ、反応体、ステップ、処方成分、または、技術が本発明の実施に好適ではないことを示すものではなく、または、これらの実施例において記載されていない主題が添付の特許請求の範囲およびその均等物から排除されることを示すものではない。
【0097】
以下の実施例においては、熱転移は摂氏温度で記されている。以下の表記法観察された相の記載に用いられている:K=結晶性、N=ネマチック、S=スメクチック、TN*=ネジレネマクチック、X=不識別相、I=等方性、P=重合。熱転移および相の割当は示差走査熱量測定法および高温光学顕微鏡法で行った。別段の記載のない限り、相挙動は第1の加熱サイクルに関する。
【0098】
化合物1および2は、米国特許出願公開第2007/0228326号明細書に記載のとおり入手した。これらの実施例において用いたすべての他の材料は市販されている供給元から入手した。
【0099】
実施例1
この実施例は、混合物1および混合物2の形成を例示する。混合物1は、1種の式(I)の化合物、2種の式(II)の化合物、および、1種の式(III)の化合物を含む中間体組成物に相当する。本発明の一実施形態の液晶組成物である混合物2は、1種の式(IV)の化合物、2種の式(V)の化合物、および、1種の式(VI)の化合物を含む組成物に相当する。
【0100】
【化26】

【0101】
10gの化合物1を40mL THFおよび9.5mLトリエチルアミン中に溶解させ、および、0℃に冷却した。60mL THF中の8.96g6−塩化ブロモヘキサノイルおよび1.68g塩化バレロイルの混合物を20分間かけて滴下した。攪拌をさらに30分間、0℃で継続した。冷却浴を除去し、反応をさらに90分間撹拌した。反応をろ過して塩を除去し、塩をTHFで洗浄した。溶剤のおよそ75%を減圧下で除去し、および、原油を過剰量の水に添加して、無色の沈殿物を形成した。固形分をろ過し、水、メタノールで洗浄し、および、乾燥させて、17.74gの混合物1を得た。第1の加熱工程:K81−85 N177−179 I
【0102】
【化27】

【0103】
10gの混合物1、4.96g重炭酸カリウム、2.2gヨウ化テトラブチルアンモニ
ウム、0.01gフェノチアジン、および、55mL THFを組み合わせた。蒸留アクリル酸(2.3mL)を添加し、反応を4.5時間、窒素下で還流に加熱した。反応を室温に冷却し、ろ過し、および、溶剤を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル中に取り出し、および、水で洗浄した。有機物をMgSOで乾燥させ、および、濃縮して、静置させると固化する黄色の油を得て、9.57gの混合物2を得た。室温ネマチック、第1の加熱工程:N→108−112→I;第1の冷却工程:I→110−107→N。
【0104】
実施例2
この実施例は、本発明の一実施形態のネットワーク1、架橋ポリマーネットワークの形成を例示する。
【化28】

【0105】
コレステリック配合物1を、1.85g混合物2、0.110g化合物2、および、0.040gのIrgacure 184を組み合わせることにより調製した。混合物を塩化メチレン中に溶解させ、および、0.45ミクロン孔径シリンジフィルタを通してろ過した。溶剤を減圧下で除去し、4ミリリットルのキシレンを添加し、および、混合物を60℃で10分間撹拌した。ポリエチレンテレフタレートフィルムを、Yoshikawa YA−20−Rラビング織布を用いて手でこすった。少量のコレステリック配合物1を、Wire Size 20 Wire Wound Lab Rod(Paul N.Gardner Company,Pompano Beach,Florida)を用いて、手でコートした。ウェットコーティングを60℃で2分間加熱した。フィルムを室温に冷却し、窒素雰囲気中に置き、および、Blak−Ray Long Wave UV水銀ランプ(UVP Inc.,Upland,California)で2分間処理して、ネットワーク1が得られる。
【0106】
実施例3
この実施例は、混合物3および混合物4の形成を例示する。混合物3は、1種の式(I)の化合物、4種の式(II)の化合物、および、4種の式(III)の化合物を含む中間体組成物に相当する。本発明の一実施形態の液晶組成物である混合物4は、1種の式(IV)の化合物、4種の式(V)の化合物、および、4種の式(VI)の化合物を含む組成物に相当する。
【0107】
【化29】

【0108】
10gの化合物1を40mL THFおよび9.5mLトリエチルアミン中に溶解させ、および、溶液を0℃に冷却した。30mL THF中の9.56g 6−塩化ブロモヘキサノイル、0.75g塩化ヘキサノイル、および、0.91g塩化オクタノイルの混合物を20分間かけて滴下した。反応混合物をさらに30分間、0℃で撹拌し、冷却浴を除去し、および、反応をさらに90分間かけて撹拌させた。反応混合物をろ過して塩を除去し、塩をTHFですすぎ、および、有機物をジエチルエーテルで希釈し、および、水で洗浄した。この有機物をMgSOで乾燥させ、ろ過し、および、濃縮して、18.58gの混合物3をオフホワイトの固体として得た。第1の加熱工程:K85−91 N 166−171 I
【0109】
【化30】

【0110】
200mLのフラスコに、10g混合物3および55mL THF、続いて、5.4g重炭酸カリウム、2.1gヨウ化テトラブチルアンモニウム、および、0.002gフェノチアジンを添加した。アクリル酸(2.48mL)を添加し、および、混合物を4.5時間、還流に加熱した。反応を冷却し、および、ジエチルエーテルと水との間に分割した。有機物を乾燥させ、ろ過し、および、濃縮させて、静置させると固化する油として、8.82gの混合物4を得た。室温ネマチック。第1の加熱工程N→123−125→I;第1の冷却工程I→122−121→N。
【0111】
実施例4
この実施例は、混合物5および混合物6の形成を例示する。混合物5は、4種の式(I)の化合物、8種の式(II)の化合物、および、4種の式(III)の化合物を含む中間体組成物に相当する。本発明の一実施形態の液晶組成物である混合物6は、4種の式(IV)の化合物、8種の式(V)の化合物、および、4種の式(VI)の化合物を含む組成物に相当する。
【0112】
【化31】

【0113】
【表3】

【0114】
表2において、「Z」および「Y」は、中間体組成物混合物5中の各化合物の末端基を指す。
【0115】
混合物5
混合物5を、混合物3の調製のために上記したものと同様の手法に従って調製した。混合物5をオフホワイトの固体(19.16g)として単離した。粗生成物を次のステップに精製せず用いた。
【化32】

【0116】
混合物3の混合物4への転換について上記したとおり、混合物5を混合物6に転化した。混合物6を不透明な油(16.9g)とした単離した。室温ネマチック、第1の加熱工程:N126−129I;第1の冷却工程:I125−122N
【0117】
【表4】

【0118】
表3において、「Q」および「W」は各化合物の末端基を指し、ならびに、「−OCOCHCH2」はアクリレート基を指す。
【0119】
他の特定の実施形態において、本明細書に記載の本発明は以下の組成物を提供する:
式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは0であり;ならびに、式中、式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1種の化合物について、mは1であると共にpは1である。
n1〜n6は、各々独立して、3〜10からなる群から選択される。
n1、n2およびn4が同一である。
組成物は式(IV)の化合物を1つだけ含み、および、任意により、n1、n2およびn4が同一である。
式(IV)の化合物は、組成物基準で、約5モルパーセント〜約95モルパーセントの範囲の総量で存在する。
式(V)の化合物は、組成物基準で、約0.1モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲の総量で存在する。
式(VI)の化合物は、組成物基準で、約0.1モルパーセント〜約90モルパーセントの範囲の総量で存在する。
式(IV)は式(XXIV):
【化33】

である。
キラル化合物はコレステロールエステルまたはカーボネートである。
【0120】
本明細書に示されている式の各々には、(i)他の可変ラジカル、置換基または数値係数のすべてを一定に維持しながら、可変項、置換基または数値係数の1つを規定の範囲内から選択すること、および、(ii)次いで、他の可変ラジカル、置換基または数値係数の各々について、他のものを一定に維持しながら、規定の範囲内から同一の選択を実施することにより、その式において形成可能である個別の独立した化合物の各々およびすべてが記載されている。規定の範囲内から、この範囲によって記載されている群の構成要素の1つのみの可変ラジカル、置換基または数値係数のいずれかについて行った選択に追加して、ラジカル、置換基または数値係数の群の構成要素のすべてではないが2つ以上を選択することにより、複数の化合物が記載され得る。可変ラジカル、置換基または数値係数のいずれかについて規定の範囲内から行った選択が、(a)この範囲によって記載されている群の構成要素の1つのみ、または、(b)この群の構成要素のすべてではないが2つ以上、を含有するサブグループである場合、選択された構成要素は、サブグループを形成するために選択されていない群全体のこれらの構成要素を除外することにより選択される。このような事例においては、化合物、または、複数の化合物は、1つ以上の可変ラジカル、置換基または数値係数を含有していると記載され得、この可変ラジカル、置換基または数値係数の各々は、サブグループの形成のために除外された構成要素の不在下で、その可変ラジカル、置換基または数値係数のための範囲によって記載された、群全体の構成要素によって定義される。
【0121】
本発明の一定の機構は、本開示または図面の1つに記載されているか否かにかかわらず種々のこのような機構を一緒に組み合わせる実施形態の文脈において本明細書に記載されている。しかしながら、本発明の範囲は、任意の特定の実施形態における一定の機構のみの記載によっては限定されず、本発明はまた、(1)いずれかの記載の実施形態の機構の一部のサブコンビネーションであって、サブコンビネーションの形成に省略された機構の不在によって特徴付けられたサブコンビネーション;(2)記載の実施形態の組み合わせにおいて包含されている個別の機構の各々;ならびに、(3)記載の実施形態の特質の1つ以上またはすべてから、本明細書における他の箇所に開示されている他の特質と一緒に形成された特質の他の組み合わせを含む。
【0122】
数値の範囲が本明細書において言及されている場合、この範囲は、その端点、ならびに、その範囲内のすべての個別の整数および小数を含み、また、これらの端点および内部の整数および小数のすべての種々の可能な組み合わせによってその中に形成されるより狭い範囲の各々であって、あたかもこれらのより狭い範囲の各々が明確に言及されているような場合と同じ程度で値のより大きな群のサブグループが形成される範囲を含む。本明細書において、数値の範囲が規定された値を超えて規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、有限であり、および、本明細書に記載されている本発明の文脈内で動作可能である値によってその上限が有界とされる。本明細書において、数値の範囲が規定された値未満として規定されている場合、この範囲は、それにもかかわらず、ゼロではない値によってその下限が有界とされている。
【0123】
この明細書において、別段の明確な記載がない限り、または、使用の文脈による逆の明記がない限りにおいて、本発明の実施形態が、含んでいる(comprising)、含んでいる(including)、含有している、有している、から組成されている、または、構成されていると規定、または、記載している場合、一定の特質もしくは要素、1つ以上の特質または要素は、明確に規定または記載されているものに追加して、この実施形態中に存在し得る。しかしながら、本発明の代替的な実施形態は一定の特質または要素から実質上構成されると規定または記載され得るが、この実施形態において、操作の原理を著しく異ならせるか、または、実施形態の特徴を区別するであろう特質または要素はその中に存在していない。本発明のさらなる代替的な実施形態は、一定の特質または要素から実質上構成されると規定または記載されるが、この実施形態において、または、その産業的な変形において、特定的に規定または記載された特質または要素のみが存在している。
【0124】
この明細書において、使用されている文脈による明確な別段の記載または逆の明記がない限りにおいて:
(a)本明細書において言及されている、量、サイズ、配合物、パラメータ、ならびに、他の量および特徴は、特に用語「約」によって修飾されている場合、正確である必要性はなくてもよく、および、許容誤差、換算因数、端数処理、計測誤差等、ならびに、本発明の文脈内で、規定された値と機能的および/または操作可能に同等であるその外の値の規定された値内への包含が反映されて、近似しているか、および/または、規定(所望される)ものよりも大きいかまたは小さくてもよく;
(b)部、割合、または、比のすべての数量は重量基準の部、割合、または、比として与えられ;
(c)本発明の要素または特質の存在の記載または説明に対する不定冠詞「a」または「an」の使用は、これらの要素または特質の存在を1つの数に限定せず;
(d)「を含む(include)」、「を含む(includes)」および「を含んでいる(including)」という語は、実際にはそうではなくても、「特に限定されないが」という句が続いていると読まれ、および、解釈されるべきであり;および
(e)「または、あるいは、もしくは」という語は、本明細書において用いられるところ、包含的であり;より具体的には、句「AまたはB」は「A、B、または、AおよびBの両方」を意味し;ならびに、「または、あるいは、もしくは」の排他的な意味での使用は、例えば、「AまたはBのいずれか」および「AまたはBの一方」などの用語によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(IV)、(V)および(VI)の各々の構造
【化1】

[式中、
n1、n2、n3、n4、n5、および、n6は、各々独立して3〜20の整数であり;
mおよびpは、各々独立して0、1または2の整数であり;
Aは、群:
【化2】

(式中、R〜R10は、各々独立して、群:H、C〜C直鎖または分岐鎖アルキル、C〜C直鎖または分岐鎖アルキルオキシ、F、Cl、フェニル、−C(O)CH、CN、およびCFから選択され;Xは、群:−O−、−(CHC−、および−(CFC−;から選択される二価ラジカルである)から選択される二価ラジカルであり、そして
各BおよびBは、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCHである)、2,6−ナフチル、および4,4’−ビフェニル;から独立して選択される二価ラジカルであり;
ただし、m+pが3または4に等しい場合、BおよびBの少なくとも2つがR11置換−1,4−フェニルである]
によって表される化合物の群からの少なくとも1つの化合物を含む組成物。
【請求項2】
式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが0であると共にpが0であり、そして式(IV)化合物が、以下の式(VIIa〜VIIf)の構造:
【化3】

によって表される化合物の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが0であり、そして式(IV)が、以下の式(VIIIa〜VIIIe)の構造:
【化4】

によって表される化合物の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(IV)化合物が、式(VIIIa)(式中、R〜RはHである)の構造から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式(IV)化合物が、式(VIIIa)(式中、RおよびRはHであり;基R〜Rの1つがClまたはCHであり;そして基R〜Rの3つがHである)の構造から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
式(IV)、(V)および(VI)の各々の少なくとも1つの化合物について、mが1であると共にpが1であり、そして式(IV)が、以下の式(IXa〜IXe)の構造の群:
【化5】

から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
式(IV)化合物が、式(IXa)(式中、R〜RはHである)の構造によって表される化合物の群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
式(IV)化合物が、式(IXa)(式中、RおよびRはHであり;基R〜Rの1つがClまたはCHであり;そして基R〜Rの3つがHである)の構造によって表される化合物の群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を含む液晶組成物。
【請求項10】
ラジカル開始剤をさらに含む、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのキラル化合物をさらに含む、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項12】
キラル化合物が、以下の式(XVI)構造:
【化6】

[式中、RおよびRは、各々独立して、群:H、F、ClおよびCHから選択され;n1およびn2は、各々独立して3〜20の整数であり;qおよびrは、独立して、0、1または2の整数であるが、ただし、q+rは≧1であり;Dは、群:
【化7】

から選択される二価のキラルラジカルであり;そしてBおよびBは、各々、群:R11置換−1,4−フェニル(式中、R11は、H、−CHまたは−OCH)、2,6−ナフチル;から独立して選択される二価ラジカルである]
によって表される化合物の群から選択される、請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の液晶組成物を含む物品。
【請求項14】
光学素子として製造される、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
請求項10に記載の液晶組成物の重合から誘導されるポリマーネットワーク。
【請求項16】
請求項15に記載のポリマーネットワークを含む物品。
【請求項17】
光学素子として製造される、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
ラジカル開始剤をさらに含む、請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の液晶組成物の重合から誘導されるポリマーネットワーク。
【請求項20】
請求項19に記載のポリマーネットワークを含む物品。
【請求項21】
光学素子として製造される、請求項20に記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2012−529558(P2012−529558A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515032(P2012−515032)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037694
【国際公開番号】WO2010/144393
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】