説明

液晶表示パネルの製造方法

【課題】液晶を封止する第1のシールの粘性を高めることなく、液晶の差し込みを確実に防止し、良好な表示とすることができる液晶表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】液晶を封止する第1のシールとして熱硬化性の材料を適用し、第1のシールを内包する第2のシールとして少なくとも光硬化性の材料を適用し、前記第1のシールを予備加熱して増粘処理する予備加熱工程と、前記第1のシールの内側となる領域に液晶を滴下して真空雰囲気内で第1の基板及び第2の基板を貼り合わせてパネルを形成するパネル形成工程と、前記第2のシールに光を照射して硬化させる光硬化工程と、熱により前記第1のシールを硬化させる熱硬化工程とを順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する第1の基板及び第2の基板の何れか一方の基板に、液晶を封止する第1のシールを画素の周囲に閉曲線状に形成すると共に、前記第1の基板及び第2の基板の何れか一方の基板に、パネル内部を気密に保持する第2のシールを前記第1のシールを内包するように、且つ閉曲線状に形成し、前記第1の基板及び第2の基板の何れか一方に前記第1のシールの内側となるように液晶を滴下した後、第1及び第2の基板を真空雰囲気内で貼り合わせるようにした液晶表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型の液晶パネルにおいては、互いに対向する第1の基板及び第2の基板の何れか一方の基板に形成した第1のシールの内部に液晶を滴下した後に、他方の基板を真空雰囲気中で貼り合わせるODF(One Drop Fill)方式即ち液晶滴下貼り合わせ方式が採用されており、最近では一部の中小液晶パネルにおいても導入されつつある。
【0003】
従来の液晶滴下貼り合わせ方式としては、例えば液晶を封入する本シールを熱硬化性樹脂とし、この本シールを内包し気密性を維持する補助シールを紫外線硬化性樹脂として、表示部周囲に閉曲線状に液晶を封じ込めるための本シールを形成し、本シールを内包するように、且つ閉曲線状に内部を真空に保持するための補助シールを形成し、本シールの内側となる透明基板上に液晶を滴下し、これに他の透明基板を真空雰囲気内で貼り合わせた後、紫外線照射により補助シールを硬化させ、その後に液晶表示パネルを大気圧下で一定期間放置し、ギャップの均一化を施した後、本シールを焼成し硬化させるようにした液晶表示パネルの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−174829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、本シールを熱硬化性樹脂とし、補助シールを紫外線硬化性樹脂として、本シールの内側に液晶を滴下した後に、透明基板同士を貼り合わせた後紫外線照射により補助シールを硬化させ、次いでギャップの均一化を施した後に本シールを焼成して硬化させるようにしているので、本シール内側に液晶を滴下した後に透明基板を真空雰囲気内で貼り合わせが終わるまでは本シール及び補助シールの硬化処理が行われないため、透明基板の貼り合わせ時における本シールのシール性を確保するためには、本シールの粘度を1,000N・s/m2〜10,000N・s/m2の高粘度に設定する必要があり、本シールの透明基板への塗布が困難であり、特に携帯電話機等に使用する小型の液晶表示パネルでは、シール幅が狭くなるため、本シールの塗布がより困難となるという未解決の課題がある。
【0005】
また、真空雰囲気中で本シール内に液晶を滴下してから透明基板を貼り合わせてパネルを形成した後に、先ず、紫外線照射によって補助シールを硬化させ、大気圧に戻した後に本シールを焼成して硬化させるので、本シールが硬化する前に液晶の拡散によって液晶が本シール内に差し込んで、本シールのシール強度の低下、耐湿性の低下、液晶滴下貼り合わせ方式のプロセス中での液晶の汚染、液晶漏れ等の悪影響を及ぼすと共に、信頼性の低下や歩留りの低下が生じるという未解決の課題がある。
【0006】
さらに、補助シールの光硬化を全体に均一な基板間隔になっていない真空雰囲気中で行うため、補助シールの周辺の基板間隔が広い状態で硬化することとなり、液晶パネルとなる部分の基板間隔にも影響を与え、表示ムラを生じるという課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、液晶を封止する第1のシールの粘性を高めることなく、液晶の差し込みを確実に防止し、良好な表示とすることができる液晶表示パネルの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、互いに対向する第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に、液晶を封止する第1のシールを画素の周囲に閉じた形状に形成すると共に、前記第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に、内部を気密に保持する第2のシールを前記第1のシールを内包するように、且つ閉じた形状に形成し、前記第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に前記第1のシールの内側となる領域に液晶を滴下した後、前記第1及び第2の基板を真空雰囲気内で貼り合わせるようにした液晶表示パネルの製造方法であって、前記第1のシールは熱硬化性の材料よりなり、前記第2のシールは少なくとも光硬化性を有する材料よりなり材、前記第1のシールを予備加熱して増粘処理する予備加熱工程と、前記第1のシールの内側となる領域に液晶を滴下して真空雰囲気内で第1の基板及び第2の基板を貼り合わせるパネル形成工程と、前記第2のシールに光を照射して硬化させる光硬化工程と、熱により前記第1のシールを硬化させる熱硬化工程とを順に行うことを特徴としている。
【0008】
この第1の形態では、液晶を封止する第1のシールを熱硬化性材で形成し、予備加熱工程で予備加熱して粘度を高める増粘処理を施してから第1のシールの内側に液晶を滴下して真空雰囲気内で第1の基板及び第2の基板を貼り合わせてパネルを形成するパネル形成工程を行うので、予備加熱工程で第1のシールの粘度を高めることができ、この第1のシールの内側に液晶を滴下した場合の液晶の差し込みを確実に防止でき、信頼性及び歩留りの双方を確実に向上させることができる。また、第2のシールを光硬化させてから第1のシールの熱硬化を行うので、第1のシールの熱硬化時の加熱によって液晶が膨張して貼り合わせた基板を引き剥がす力が作用した場合でも、光硬化された第2のシール及び予備硬化された第1のシールによって引き剥がし力に抗することができ、不良の発生を確実に防止することができる。
【0009】
また、第2の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1の形態において、前記第1の基板及び前記第2の基板の一方の基板に、前記第1のシール及び前記第2のシールの双方を塗布した後に、前記予備加熱工程を行うことを特徴としている。
この第2の形態では、第1の基板及び第2の基板の一方の基板に、第1のシール及び第2のシールの双方を塗布した後に、予備加熱工程を行うので、基板への第1のシール及び第2のシールの塗布を一回の工程で塗布することができ、全体の工数を低減することができる。
【0010】
さらに、第3の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1の形態において、前記第1の基板及び前記第2の基板の何れかの基板に、前記第1のシールを塗布した後に、前記予備加熱工程を行い、次いで前記第2のシールを前記第1の基板及び前記第2の基板の何れかの基板に塗布した後に前記パネル形成工程を行うことを特徴としている。
この第3の形態では、第1の基板及び第2の基板の一方の基板に、第1のシールを塗布した後に、予備加熱工程を行うので、第2のシールが予備加熱工程での予備加熱による影響を受けることを防止することができる。
【0011】
さらにまた、第4の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1〜第3の形態の何れか1つにおいて、前記第2のシールは光熱硬化性の材料であることを特徴としている。
この第4の形態では、第2のシールが光熱硬化性材で形成されているので、光硬化工程で、一旦硬化した後、熱硬化工程で第1のシールと共に加熱されて熱硬化するので、第1のシール及び第2のシールの加熱硬化時の伸長量差を抑制することができ、パネルに残留応力が発生することを抑制することができる。
【0012】
さらに、第5の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1〜第4の形態の何れか1つにおいて、前記第2のシールは内部を気密に保持すると共に、第1のシールを内包する外周シール部と、該外周シール部と前記第1のシールとの間及び隣接する前記第1のシール間の少なくとも一方に形成されたダミーシール部とで構成されていることを特徴としている。
【0013】
この第5の形態では、第2のシールが外周シール部とダミーシール部とで形成されているので、これら外周シール部及びダミーシール部が第1のシールよりも先に光硬化することにより、貼り合わせた基板間をより強固に保持することができる。
さらに、第6の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1〜第5の形態のいずれかにおいて、第2のシールに光を照射して硬化させる光硬化工程は、大気圧下で行われることを特徴としている。
【0014】
この第6の形態では、真空雰囲気から大気に戻した後に第2のシールの硬化を行うため、第2のシールの硬化時点で第1の基板と第2の基板の基板間隔が適正な間隔となった状態となっているため、第2のシールの周辺の基板間隔が広くなって、表示ムラの発生を抑制することができる。
さらに、第7の形態に係る液晶表示パネルの製造方法は、上記第1〜第6の形態のいずれかにおいて、予備加熱工程での加熱温度が30℃以上200℃以下の範囲にあり、加熱時間は30分以内であることを特徴とする。
【0015】
この第7の形態では、予備加熱工程の加熱温度及び時間を上記とすることにより、第1のシールを適正な粘度に高めることができ、この第1のシールの内側に液晶を滴下した場合の液晶の差し込みを確実に防止でき、信頼性及び歩留りの双方を確実に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用し得る液晶パネルを示す断面図、図2は液晶パネルを構成する一方の基板におけるシールレイアウトを示す底面図、図3は本発明の第1の実施形態を示す液晶表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。
液晶表示パネル1は、TFT(Thin Film Transistor)基板2と対向基板3とが両者間に液晶層4を形成するように貼り合わされた液晶パネル5を有する。
【0017】
TFT基板2には、液晶を駆動するスイッチング素子が配置されており、上面に周知の膜形成技術と、パターン形成技術によって、多層構造にパターン化された画素電極及び共通電極や配向膜を含む複数の膜が積層されている。
対向基板3は、下面にカラーフィルタ及び配向膜を有する透明基板で構成されている。
そして、TFT基板2の配向膜及び対向基板3の配向膜はラビングされ、液晶層4の液晶分子は、TFT基板2及び対向基板3の配向膜のラビング方向に応じて初期配向されている。
【0018】
また、TFT基板2及び対向基板3の何れか一方の基板、例えば対向基板3に図2に示すように、シールがレイアウトされている。
このシールは、液晶を封止する第1のシールとしての前後及び左右方向に夫々所定間隔を保ってマトリックス状に整列され、閉じた形状に形成された複数のメインシール11と、これらメインシール11を内包し、且つ閉じた形状に形成され、内部を気密に保持する第2のシール21とで構成されている。
【0019】
メインシール11は、光硬化性を殆ど有さず加熱することにより熱硬化する熱硬化性を有する材料例えば熱硬化性樹脂材をスクリーン印刷技術やディスペンサ描画技術によって方形枠状に塗布することにより形成されている。
第2のシール21は、紫外線、可視光等を照射することにより光硬化する光硬化性を有する材料例えば光硬化型樹脂材で形成され、マトリックス状に整列されたメインシール11を内包するように、これらメインシール11の外周側に対して所定距離を保って方形枠状に形成された外周シール部22と、この外周シール部22と外方側のメインシール11との間に形成されたダミーシール23とで構成されている。
【0020】
ここで、ダミーシール23は、図2に示すように、TFT基板2の上面上に、各整列されたメインシール11の外側に外方側を開放したコ字状に形成された第1のダミーシール部23aと、整列されたメインシール11の四隅部に対向して形成されたL字状の第2のダミーシール部23bと、第1及び第2のダミーシール部23a及び23bを連結するように方形枠状に形成された第3のダミーシール部23cとで構成されている。
【0021】
そして、上記構成を有する液晶表示パネル1を、図3に示す製造工程のフローチャートに従って製造する。
すなわち、TFT基板2については、ステップS1で、ラビング処理を行った後に洗浄処理を行い、次いでステップS2に移行して、液晶に影響を与える有機性揮発物を加熱除去するデガス処理を行い、次いでステップS3に移行して、導通材塗布処理を行い、次いでステップS4に移行して導通材を予備加熱するプリベーク処理を行ってからODF工程に移行する。
【0022】
一方、対向基板3については、ステップS1′で、ステップS1と同様にラビング後洗浄処理を行い、次いでステップS2′でステップS2と同様にデガス処理を行い、次いでステップS3′に移行して、マトリックス状に熱硬化性樹脂で形成されるメインシール11をスクリーン印刷技術等によって塗布すると共に、マトリックス状のメインシール11の回りに外周シール部22及びダミーシール23で構成される熱硬化性樹脂で形成される第2のシール21をスクリーン印刷技術、ディスペンサ描画技術等によって塗布し、次いでステップS4′に移行して、対向基板を、加熱温度を30℃以上200℃以下の範囲とし30分以内の加熱時間で加熱して予備加熱処理としてのプリベーク処理を行ってからODF処理工程に移行する。
【0023】
ODF処理では、先ず、ステップS5で、シールを形成した対向基板3の下面を上にした状態で、マトリックス状の各メインシール11の内側に適量の液晶をディスペンス法やその他の滴下方法で滴下し、次いでステップS6に移行して、対向基板3上にTFT基板2を載置して、真空雰囲気中で貼り合わせて貼り合わせ基板を形成する。
【0024】
次いで、ステップS7に移行して、TFT基板2及び対向基板3を貼り合わせた液晶パネルを大気圧下にして、真空状態であるメインシール11と外周シール部22で囲まれた領域と大気圧との圧力差によりTFT基板2と対向基板3に圧力が加わった状態で、TFT基板2及び対向基板3を貼り合わせた液晶パネルに対して第2のシール21を光硬化させる紫外線、可視光線等の光を照射し、これによって第2のシール21を光硬化させる。
【0025】
この光硬化処理は、図4に示すように、ステージ31上に、貼り合わせ基板32を載置し、この貼り合わせ基板32に対向する上方位置にメインシール11で囲まれる液晶領域に対する光照射を遮断する液晶領域保護マスク33を配置し、この液晶領域保護マスク33の上方に短波長UVカットフィルタ34、熱線カットフィルタ35及びUVランプ36が配置された光照射装置37を使用して行う。ここで、液晶領域保護マスク33、短波長UVカットフィルタ34、熱線カットフィルタ35の組合せは任意であり、貼り合わせ基板32の仕様に応じて適宜選択する。
【0026】
次いで、ステップS8に移行して、液晶パネルを所定温度で加熱して第1のシールとしてのメインシール11を熱硬化させると共に液晶の等方性処理を行って、ODF工程を終了する。
次いで、ステップS9に移行して、液晶パネルをメカスクライブやレーザスクライブによってスクライブラインを形成するスクライブ処理を行った後に必要に応じスクライブライン位置を加圧して液晶パネルを分割するブレイク処理を行って、液晶パネルを所望領域で分割する。次いでステップS10に移行して、セル洗浄を行って、所望の液晶パネルを形成する。
【0027】
このように、上記第1の実施形態によると、液晶を封止する第1のシールとしてのメインシール11を熱硬化性材で形成し、このメインシール11を内包し、パネル内部を気密に保持する第2のシール21を光硬化性材で形成し、これらメインシール11及び第2のシール21を塗布工程で、対向基板3にスクリーン印刷技術やディスペンサ描画技術等を使用して同時塗布するので、対向基板3へのシール材の塗布を容易に行うことができる。
【0028】
その後、ODF処理を行う前に、加熱温度を30℃以上200℃以下の範囲とし30分以内の加熱時間で加熱する予備加熱処理を行うことにより、メインシール11の粘度を適正な粘度に増加させると共に、液晶に悪影響を与える揮発性成分を揮発させることができる。
このため、メインシール11として前述した従来例のように高粘度のシール材を適用する必要がなく、基板へのスクリーン印刷等の印刷技術による塗布を容易に行うことができる。また、メインシール11の内側に液晶を滴下した際に、液晶の揮発成分による汚染を低減することができると共に、メインシール11の粘度増加により、メインシール11の断線を防止できる上、外部からのダストの侵入を阻止することができ、さらにメインシール11の内側に液晶を滴下した後の液晶拡散時に液晶がメインシール11内に差し込むことを確実に防止することができる。
【0029】
したがって、メインシール11への液晶の差し込みによる悪影響を除去することができる。つまり、メインシール11への液晶の差し込みによるシールの強度低下即ち液晶表示パネルの強度低下を抑制し、シールの耐湿性の低下を抑制し、ODF処理工程での液晶の汚染を抑制し、液晶漏れを抑制することができる。このため、最終的な液晶表示パネルの信頼性及び歩留りを向上させることができる。
【0030】
そして、メインシール11を予備加熱処理した後に、ODF処理を行って、マトリックス状のメインシール11の内側に液晶を滴下してから対向基板3上にTFT基板2を載置してから真空雰囲気中で、両基板2及び3を貼り合わせて液晶表示パネルを形成する。
その後、大気圧下で、液晶表示パネルに対して第2のシール21即ち外周シール部22及びダミーシール部23に対して部分的に紫外線、可視光等の光硬化性の材料に対応した光を照射し、外周シール部22及びダミーシール部23を光硬化させる。このとき、光硬化させるシールは第2のシール21だけでよく、この第2のシール21はメインシール11の外周側に配置されているので、光照射装置37で液晶領域保護マスク33を使用することにより、液晶層4やTFT基板2のメインシール11の内側に対向して配設された薄膜トランジスタに紫外線等が照射されることはなく、紫外線等の照射による薄膜トランジスタの特性がシフトすることや液晶が変質することを確実に防止することができる。
【0031】
この第2のシール21の光硬化が第1のシールとなるメインシール11の熱硬化処理に先立って行われることにより、ODF処理工程におけるTFT基板2及び対向基板3のズレを防止することができると共に、後の熱硬化処理時におけるTFT基板2及び対向基板3間のギャップが拡大することを防止することができ、液晶漏れ、セルギャップ不良、メインシール11の細り、メインシール11の断線や剥離を防止することができる。さらに、ODF処理工程中のTFT基板2及び対向基板3内の真空状態を確実に保持することができる。さらに、第2のシール21の光硬化を大気圧下で行うことで、第2のシールの周辺においても基板間隔を他部の基板間隔と同じにでき、セルギャップを均一に保つことができる。
【0032】
この第2のシール21の光硬化処理の後に、メインシール11に対する熱硬化処理を行うことにより、メインシール11を確実に熱硬化させて液晶を確実に封止すると共に、液晶等方性処理を行ってODF処理工程を終了する。
その後、液晶表示パネルを所望位置でスクライブ及びブレイクを行って分割し、分割した液晶表示パネルをセル洗浄して所望とする液晶表示パネルを形成する。
【0033】
なお、上記第1の実施形態においては、液晶表示パネルの製造工程で、TFT基板2及び対向基板3の双方にデガス処理を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、何れか一方又は双方のデガス処理を省略するようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態においては、対向基板3に第1のシールとなるメインシール11及び第2のシール21を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、TFT基板3にメインシール11及び第2のシール21を形成するようにしてもよく、さらにはTFT基板2及び対向基板3の何れか一方にメインシール11を形成し、他方に第2のシール21を形成するようにしてもよい。
【0034】
さらに、上記第1の実施形態においては、TFT基板2に導通材を塗布する場合について説明したが、IPS(In-Plain Switching)モードやFFS(Fringe-Field Switching)モードで動作する液晶表示パネルの場合には、導通材塗布を省略することができる。また、導通材を塗布した後の導通材のプリベーク処理も省略することができる。
さらにまた、上記第1の実施形態においては、メインシール11を形成した対向基板3のメインシール11の内側に液晶を滴下した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、TFT基板2のメインシール11の内側に対向する位置に液晶を滴下するようにしてもよい。勿論、メインシール11をTFT基板2に形成した場合には、対向基板3のメインシールの内側に対向する領域に液晶を滴下するようにしてもよい。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態を図5について説明する。
この第2の実施形態では、第1のシールとしてのメインシールの予備加熱処理時に第2のシールに加熱処理の影響を与えないようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図5の液晶表示パネルの製造工程を表すフローチャートに示すように、対向基板3について、ラビング後洗浄処理(ステップS1′)及びデガス処理(ステップS2′)を行った後に、ステップS3′に移行してメインシール11のみをスクリーン印刷技術やディスペンサ描画技術等でマトリックス状に塗布し、次いでステップS4′に移行してメインシール11を塗布した対向基板3を、加熱温度を30℃以上200℃以下の範囲とし、30分以内の加熱時間で加熱処理してメインシール11の予備加熱することにより、メインシール11の粘度を増加させると共に、液晶に悪影響を与える揮発性分成分を揮発させる。次いでステップS11に移行して対向基板3のマトリックス状のメインシール11の外周側にスクリーン印刷等の印刷技術で外周シール部22及びダミーシール部23で構成される第2のシール21を塗布してから前述した第1の実施形態と同様にODF処理工程に移行するようにしている。
【0036】
この第2の実施形態によると、対向基板3に最初にマトリックス状のメインシール11のみを塗布し、この状態で加熱温度を30℃以上200℃以下の範囲とし30分以内の加熱時間で予備加熱を行ってメインシール11の増粘処理を行うことにより、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
この際に外周シール22及びダミーシール23で構成される第2のシール21は未だ塗布されていないので、第2のシール21が予備加熱の影響を受けて硬化が進行することを確実に防止することができる。このため、後のOFD処理工程で、メインシール11内側に液晶を滴下してから真空雰囲気中で対向基板3及びTFT基板2を貼り合わせる場合に、両者の貼り合わせを確実に行うことができる。この貼り合わせ状態で、大気圧下で光照射することにより、第2のシール21を光硬化させてパネル内を真空状態に保持することができる。
【0038】
その後に、大気圧下で液晶表示パネルを加熱してメインシール11を熱硬化させると共に、液晶等方性処理を行って液晶表示パネルを形成する。このメインシールの熱硬化処理で、TFT基板2及び対向基板3間のギャップが拡大しようとするが、前段階のマトリックス状のメインシール11の外周側の外周シール部22及びダミーシール部23で構成される第2のシール21が光硬化されているので、TFT基板2及び対向基板3間のギャップを拡大しようとする力に抗してTFT基板2及び対向基板3を所定ギャップ長に保持することができる。
【0039】
なお、上記第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態と同様の変形例が考えられる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、第2のシール21が光硬化性を有する材料で形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光熱硬化性を有する材料例えば光熱硬化性樹脂材で形成するようにしてもよい。この場合には、TFT基板2及び対向基板3の少なくとも一方にメインシール11及び第2のシール21を塗布してから予備加熱処理を行うことにより、メインシール11及び第2のシール21の粘度を同時に上昇させることができるので、TFT基板2及び対向基板3を真空雰囲気中で貼り合わせたときの保持力の差が少なくなると共に、大気圧下での光硬化処理後の熱硬化処理でメインシール11及び第2のシールが同時に硬化されて、両者の伸長差による残留応力を小さくすることができる。
【0040】
さらに、上記第1及び第2の実施形態においては、第2のシール21を構成するダミーシール部23がコ字状の第1のダミーシール部23a、L字状の第2のダミーシール部23b及び方形枠状の第3のダミーシール部23cで構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第2及び第3のダミーシール部23b及び23cの何れか一方又は双方を省略したり、第1のダミーシール23aを方形枠状に形成したりすることができ、さらには、マトリックス状に配列されたメインシール11の隣接するシール間に線状のダミーシール部を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用し得る液晶表示パネルを示す断面図である。
【図2】対向基板のシールレイアウトを示す底面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す液晶表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【図4】光照射装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す液晶表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…液晶表示パネル、2…TFT基板、3…対向基板、4…液晶層、5…、11…メインシール、21…第2のシール、22…外周シール部、23…ダミーシール部、23a…第1のダミーシール部、23b…第2のダミーシール部、23c…第3のダミーシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に、液晶を封止する第1のシールを画素の周囲に閉じた形状に形成すると共に、前記第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に、内部を気密に保持する第2のシールを前記第1のシールを内包するように、且つ閉じた形状に形成し、前記第1の基板及び第2の基板の何れかの基板に前記第1のシールの内側となるように液晶を滴下した後、前記第1及び第2の基板を真空雰囲気内で貼り合わせるようにした液晶表示パネルの製造方法であって、
前記第1のシールは熱硬化性の材料よりなり、前記第2のシールは少なくとも光硬化性を有する材料よりなり、前記第1のシールを予備加熱して増粘処理する予備加熱工程と、前記第1のシールの内側となる領域に液晶を滴下して真空雰囲気内で第1の基板及び第2の基板を貼り合わせるパネル形成工程と、前記第2のシールに光を照射して硬化させる光硬化工程と、熱により前記第1のシールを硬化させる熱硬化工程とを順に行うことを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板及び前記第2の基板の一方の基板に、前記第1のシール及び前記第2のシールの双方を塗布した後に、前記予備加熱工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板及び前記第2の基板の何れかの基板に、前記第1のシールを塗布した後に、前記予備加熱工程を行い、次いで前記第2のシールを前記第1の基板及び前記第2の基板の何れかの基板に塗布した後に前記パネル形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記第2のシールは光熱硬化性の材料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記第2のシールは内部を気密に保持すると共に、第1のシールを内包する外周シール部と、該外周シール部と前記第1のシールとの間及び隣接する前記第1のシール間の少なくとも一方に形成されたダミーシール部とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第2のシールに光を照射して硬化させる光硬化工程は、大気圧下で行われることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記予備加熱工程での加熱温度が30℃以上200℃以下の範囲にあり、加熱時間は30分以内であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液晶表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168972(P2009−168972A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5312(P2008−5312)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】