説明

液晶表示装置および超音波診断装置

【課題】 周囲が明るくても表示画面を見易くし、表示内容を確実に視認できるようにすること。
【解決手段】 光の3原色を組合せることによってビットマップ情報をカラーで表示する液晶表示装置において、表示されるビットマップ情報を形成する各画素について、周囲の明るさに応じてR・G・Bの比率を明度が上がるように切替えるようにした。
これにより、周囲が明るいために画面が見難くなることを防止し、表示内容を確実に視認できるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤、緑、青の光の三原色を組合せることによってビットマップ情報をカラーで表示する液晶表示装置およびこの液晶表示装置を備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体の軟部組織の断層像を表示するものであり、X線診断装置、X線CT装置、MRIおよび核医学診断装置など、各種の医療用診断装置に比べて、装置が小型で取り扱いも容易、リアルタイム表示が可能、X線などの被曝がなく安全性が高い、超音波ドップラ法によって血流イメージングが可能などの特徴を有している。
【0003】
超音波診断装置の構成を大別すると、超音波診断装置本体と超音波プローブとから成り、この超音波診断装置本体の主要部の外観図を図4に例示してある。すなわち、図4に示されているように、超音波診断装置本体100には、上部に超音波画像などを表示するための表示器101が搭載されているとともに、前面には略水平に第1操作パネル103が配置され、さらに傾斜した第2操作パネル102などが設けられている。
【0004】
この表示器101の表示画面101Aには、Mモード像、Bモード像、ドップラモード像など各種モードの超音波画像が表示されるとともに、必要な文字やデータが表示されるようになっている。また、第1操作パネル103には表示器101に表示すべき超音波画像の設定や切換えを行う表示切換用パドルスイッチ103Aやゲインダイヤル103B等の比較的操作頻度の高い操作スイッチが設けられている。
【0005】
さらに、第2操作パネル102は、タッチスクリーンとかタッチパネルなどと称される表示装置102Aを有するとともに、操作頻度がそれほど高くないスイッチ類102Bを有している。なお、この表示装置102Aは、Bモード像を2次元表示するための画面や、カラードップラモードを表示するための画面などの内容を夫々切換表示できるようになっており、表示器101に表示される各モードの超音波画像に応じて、種々の機能スイッチやボタンなどが表示されるもので、操作者が表示装置102Aの画面に表示される機能スイッチやボタンを指などでタッチすることによって、それらを適宜選択操作できるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
なお、超音波プローブは図示を省略したが、超音波診断装置本体100にケーブルで接続されるもので、その先端を被検者の体表に当てて、被検者へ超音波を送出するとともに、その反射信号を受信するものであることは言うまでもない。
【0007】
ところで超音波診断装置は、臨床上使用する場所は通常室内であり、室内照明を比較的絞った薄暗い環境で使用されることが多い。そして、表示装置102Aは、通常液晶パネルの上面を、接触を検知するための素子を配置した透明のスクリーンで覆ったもので形成されている。この表示装置102Aにおける表示画面の明るさは、液晶を背面から照らすバックライトの強さによって決まり、バックライトの強さは発光素子に印加する電圧によって調整される。そのため、超音波診断装置の設置される部屋の状況やユーザの好みなどに応じて、バックライト用の電圧を適宜調節して、表示されるスイッチやボタンなどの認識がし易くなるように表示装置102Aの明るさを設定できるようになっている。
【特許文献1】特開2001−276068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、表示装置102Aにおけるバックライトの強さの変化幅は、装置の構造上あまり大きくすることができないという問題があった。すなわち、バックライトの変化幅を大きくしようとすると、構造的あるいは回路的なハードウェア規模を大きくしなければならなくなるが、表示装置102Aはもとよりこの表示装置102Aを使用する超音波診断装置は、小型軽量化が望まれていることから、ハードウェア規模を現状のままとしてバックライトの変化幅を大きくすることは困難であった。
【0009】
また、通常の検査室などで使用する場合は、バックライトに十分な変化幅が得られるものであっても、例えば製品の展示会などのように、診察に供する場合とは違った明るい環境のもとで、超音波診断装置を展示し、使用状況をアピールしようとする場合には、周囲の明るさが検査室とは比較にならないほど明るいために、表示装置102Aの画面の明るさを、バックライト素子の電圧調整だけでは十分な明るさにすることはできなかった。
【0010】
すなわち、図5に示すように、例えば通常の検査室の明るさがAからCの範囲であり、展示場の明るさがBからDの範囲にある(ただし、A<B<C<D)ものとすれば、表示装置102Aにおけるバックライトの強さの変化幅として、周囲の明るさがAからDの範囲に対応できることが望まれる。しかしながら、上記のような事情からバックライト素子の電圧調整だけでは対応が困難であった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、光の3原色を組合せることによってビットマップ情報をカラーで表示する液晶表示装置において、表示されるビットマップ情報の画素の明度を周囲の明るさに応じて切替える切替手段を具備することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液晶表示装置において、前記切替手段は、表示されるビットマップ情報の画素の明度に加えてバックライトの強さも切替えるものであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液晶表示装置において、前記切替手段によって切替えられるビットマップ情報の画素の明度および/またはバックライトの強さを調整する調整手段をさらに具備することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、超音波の送受波に基づき被検者の超音波画像を生成するとともに、生成した超音波画像から被検者の複数項目の医療情報を計測する超音波診断装置において、前記計測する医療情報の計測メニューや機能スイッチなどをビットマップ情報として表示する液晶表示装置を備え、この液晶表示装置のバックライトの強さとビットマップ情報の画素の明度を、周囲の明るさに応じて切替える切替手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、周囲が明るいような場合でも、画面に表示されているものを見易くすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、バックライトの強さの調整に加えてビットマップ情報の画素の明度も明るくするので、周囲が明るいために画面が見難くなるような場合でも、表示内容を確実に視認できるようにすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、所定範囲内で段階的にまたは無段階的に色調などを調整することにより、その使用環境に最適な表示状態を選択することができ、より一層使い勝手が向上する。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、診療時とデモンストレーション時のような使用目的や使用環境に応じて、液晶表示装置を最適な表示状態に設定することができ、超音波診断装置の価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る液晶表示装置およびこの液晶表示装置を備えた超音波診断装置の一実施例について、図1ないし図4を参照して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明の基本的な考え方について説明する。
【0023】
液晶表示装置は、例えば図1に示すようなm行n列のマトリックス状に配置された画素の集合として形成されており、所望の複数の画素を選択することによって、文字や図形など所望の情報をビットマップの形で表示させるものである。図1では画面に枠11とその枠11の中に「E」という文字が表示された様子が示されており、枠11を濃い色をつけ、文字「E」は薄い色で示している。このように選択した画素に適宜着色することができる。画素の色は光の3原色である赤(Red:R)、青(Green:G)、緑(Blue:B)を組み合わせることによって所望の色が表現される。通常、R・G・Bのそれぞれは0〜255段階で表現され、これらを混ぜ合わせることによって1千6百万色にも及ぶ色が表現されることになっている。
【0024】
なお、表現される色の究極の結果として、それぞれ0のR・G・Bを混合すれば黒(0R・0G・0B)となり、それぞれ255のR・G・Bを混合すれば白(255R・255G・255B)となる。さらに、ある基本色に白の成分を加えると基本色の明度は高くなり、黒の成分を加えると基本色の明度は低くなる。
【0025】
例えば、それぞれ100のR・G・Bが混合された色(100R・100G・100B)について、この色を形成するR・G・Bの各々に10を加えて110R・110G・110に変更したとすれば、これは元の100R・100G・100Bの色よりも明るい色となる。逆に、R・G・Bの各々から10を引いて90R・90G・90Bに変更したとすれば、これは元の100R・100G・100Bの色よりも暗い色となる。なお、明度を変えると色味(色相)や色の鮮やかさ(彩度)の度合いも変わることになる。
【0026】
このようなことを踏まえて本発明では、周囲の明るさに応じてバックライトの調整だけでは対応が困難な場合に、文字や図形などを表示しているビットマップの各画素について、それぞれR・G・Bの比率を適宜変えることによって、明るい場所でも液晶表示装置の画面に表示される内容が視認し易くなるようにしようとするものである。
【0027】
図2は、本発明に係る液晶表示装置およびこの液晶表示装置を備えた超音波診断装置の一実施例の主要部の構成を示した系統図であり、10はタッチパネルのような表示部であり、図4に示した超音波診断装置本体100に対応付けると表示装置102Aに相当する。また20は操作部であり、図4に示した第1操作パネル103または第2操作パネル102に相当するものである。30はCPUボードなどから成る制御部であり、超音波診断装置本体100における各構成機器を有機的に制御するいわば心臓部に相当するものである。なお、超音波診断装置本体100に対応付けて説明したが、液晶表示装置単体の場合でもその機能としては何らかわることはない。
【0028】
ここで操作者は、操作部20の図示しないボタンなどを操作して、表示部10に表示すべき情報などを設定することになるが、操作部20によって操作された操作者の指示の内容は、制御部30によって解釈され、その結果に基づき表示部10を駆動することになる。
【0029】
例えば、図5により説明したとおり、超音波診断装置本体100が通常の検査室とは異なり、展示会その他のデモンストレーションなどで明るい場所に設置されている場合、表示部10に表示される情報を読み取ろうとすると、周囲が明るいために視認し難くなることがある。そのようなときは、表示部10のバックライト用の電圧を上げるように操作して、バックライトを強めて画面全体の明るさを明るくする。このバックライト用の電圧の変更は、ある範囲内で段階的にまたは無段階に調整可能である。
【0030】
しかし、この操作によってバックライトを最大輝度にしても表示内容が視認し難いようであれば、次の手段として、表示部10に表示されているビットマップ情報の明度を上げる操作を実施する。この場合も操作者は、操作部20の明度切替スイッチをオンにするか、或いは何段階かに明度を変更させることの可能な明度調整スイッチを操作する。すなわち、0〜255段階で表現されるR・G・B各色について、例えば10段階刻みにプラス方向またはマイナス方向にダイヤル操作が可能なものとする。
【0031】
従って、ダイヤルを1目盛プラス方向へ回せばR・G・Bの値に夫々10加算され、2目盛プラス方向へ回せば20加算されることになり、それだけ明度は上がる。逆にマイナス方向へダイヤルを回すとR・G・Bの値は低くなり明度は下がる。このようにして、操作者の指示が制御部30を介して表示部10へ伝達されて、表示部10に表示されているビットマップ情報の明度がそれまでよりも明るくなるように変化させることができる。
【0032】
この表示部10に表示されているビットマップ情報の明度を調整する場合の、制御部30の作用について、図3に示したフローチャートを参照しながら更に説明する。
【0033】
先ず操作者のスイッチ操作などにより操作部20から、表示部10に表示されているビットマップ情報の明度変更の指示が入力され、その指示が制御部30に伝達される(ステップ1)と、現在表示器10に表示されている画面のビットマップ情報を収集し(ステップ2)、そのビットマップについての画素情報を取得する(ステップ3)。次に、この取得した画素情報に対して、操作部20から入力された明度にするための、全画素についてのR・G・B値を演算する(ステップ4)。次いでステップ5として、全画素についてのR・G・B値の演算がされたか否かを判断する。その結果、NOであればステップ4へ戻って演算を継続し、YESであればステップ6へ進み、全画素のR・G・B値の演算結果に基づく新たなビットマップ情報を設定する。このようにして、表示器10に表示されているビットマップ情報は、それまでよりも明度の上がった明るいものとして表示されるようになる。
【0034】
なお、明度を変えるに当たって、ステップ3で取得した画素情報に対してR・G・Bの値を一律に同じ値を加えるようにしても良いし、R・G・B毎に異なった値を加えるようにしても良い。
【0035】
以上詳述したように本発明によれば、バックライトの強さの調整だけではなく、ビットマップを形成する画素の明度を明るくなるように変更するようにしたので、液晶表示装置の表示画面に表示されるスイッチやボタンなどが、周囲の明るさにかかわらず認識し易くなり、使用勝手が極めて向上される。また、バックライトの変化幅を大きくしようとすると、構造的あるいは回路的なハードウェア規模を大きくしなければならなくなるが、本発明によればハードウェア規模を大きくすることなく、表示画面に表示されるビットマップ情報を極めて視認しやすくすることができる。
【0036】
なお本発明は上述の一実施例に限定されることなく要旨の範囲内で種々の形態で実施することが可能である。例えば、バックライトの強さや画素の明度の切替は、操作者がいちいち操作部20を操作して指示するだけでなく、例えば周囲の明るさを検知する明るさ検知器を備えておき、この検知器で検知された明るさに応じて、予め設定しておいたバックライトの強さ或いはビットマップ情報の画素の明度が所望の値となるように、自動的に切替られるようにしても良い。
【0037】
また、液晶表示装置はこれ単体で使用できることは勿論のこと、超音波診断装置に適用する場合を例として説明したが、これに限らず、種々の電子機器に組合せて使用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】液晶表示装置の概要を説明するために示した説明図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置およびこの液晶表示装置を備えた超音波診断装置の一実施例の主要部の構成を示した系統図である。
【図3】本発明の動作を説明するために示したフローチャートである。
【図4】超音波診断装置本体の主要部の外観図である。
【図5】従来の液晶表示装置の問題点を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 表示部
20 操作部
30 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の3原色を組合せることによってビットマップ情報をカラーで表示する液晶表示装置において、
表示されるビットマップ情報の画素の明度を周囲の明るさに応じて切替える切替手段を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記切替手段は、表示されるビットマップ情報の画素の明度に加えてバックライトの強さも切替えるものであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記切替手段によって切替えられるビットマップ情報の画素の明度および/またはバックライトの強さを調整する調整手段を、さらに具備することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
超音波の送受波に基づき被検者の超音波画像を生成するとともに、生成した超音波画像から被検者の複数項目の医療情報を計測する超音波診断装置において、
前記計測する医療情報の計測メニューや機能スイッチなどをビットマップ情報として表示する液晶表示装置を備え、この液晶表示装置のバックライトの強さとビットマップ情報の画素の明度を、周囲の明るさに応じて切替える切替手段を具備することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−38989(P2010−38989A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198722(P2008−198722)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】