説明

液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法

【課題】額縁領域の小さい液晶表示装置であっても、表示品質を低下させることなく且つ
コモン引回し線の配線抵抗の小さな液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶表示装置1は、アレイ基板ARとカラーフィルタ基板CFとを
表面が互いに対向するようにシール材2で貼り合わされ、両基板間に液晶40が封入され
てなり、アレイ基板の表面には、少なくとも、表示領域DAに沿ってマトリクス状に形成
された走査線11及び信号線12と、画素領域PAに設けられた少なくとも1つの電極と
、走査線及び信号線の端部に接続されて表示領域の外周囲を引回されたゲート引回し線G
L及びソース引回し線SLと、ゲート引回し線及びソース引回し線の更に外側を引回され
たコモン引回し線Comと、が形成され、コモン引回し線は、少なくとも3層の導電性部
材が積層され互いに接続されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法に関するものである。詳しくは、コ
モン配線の配線抵抗を低減することでパネル特性の劣化を防止した液晶表示装置及びこの
液晶表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公知の液晶表示装置は、各種配線等が形成されたアレイ基板とカラーフィルタ基板とを
互いに表面が対向するようにその外周囲をシール材で貼り合わせた後、一対の基板とシー
ル材とに囲まれた領域に液晶を封入することで形成されている。このような液晶表示装置
においては、アレイ基板に走査線、信号線に加えてコモン引回し線が形成されており、こ
れらの配線は基板の1箇所に集線されてドライバICや外部制御基板に接続されたFPC
(Flexible Printed Circuit)等に接続される。
【0003】
このような液晶表示装置においては、表示領域をより大きくするために狭額縁化が要求
されている。しかしながら、液晶表示装置の額縁領域は各種配線を引き回すための引回し
領域となっているため、狭額縁化が進むとこの引回し領域が小さくなり、それに伴って各
種配線の幅及び配線同士の間隔も小さくなってしまう。このように配線の幅や配線同士の
間隔が小さくなると、断線や短絡等の各種配線不良が生じやすくなると共に、配線抵抗が
増大してしまいパネル特性が劣化してしまうという課題が存在している。この点について
は、表示品質の向上に伴う配線本数の増大に伴い、より顕著な課題となっている。
【0004】
図9Aは下記特許文献1に開示された液晶表示装置の一部を拡大して示す拡大平面図、
図9Bは図9AのIXB−IXB線で切断した断面図である。
上述の課題を解決するために、下記特許文献1に開示された液晶表示装置100は、配
線基板101と対向基板109とをシール材108により貼り合せて形成されている。配
線基板101上には、複数の走査信号用配線103が平行に形成されている。複数の走査
信号用配線103は一定の間隔で、横方向に沿って配置される。また、ゲート絶縁膜10
4を介して走査信号用配線103と交差するように複数の表示信号用配線105が形成さ
れている。すなわち、走査信号用配線103を覆うように設けられたゲート絶縁膜104
上に、表示信号用配線105が走査信号用配線3と直交する方向に沿って設けられている
。複数の表示信号用配線105は一定の間隔で、縦方向に沿って形成される。また、配線
基板101の中央部、詳しくは図9Aに示す点線よりも内側(左上側)の領域が表示領域
102となり、点線よりも外側(右下側)の領域が額縁領域となる。
【0005】
配線基板101の額縁領域には駆動IC106が実装されている。この駆動IC106
から走査信号と表示信号とが出力される。従って、駆動IC106には、走査信号用配線
103と接続される走査信号用引き回し配線103aと、表示信号用配線105と接続さ
れる表示信号用引き回し配線105aが接続されている。また、額縁領域の走査信号用引
き回し配線103aの外側には、コモン信号用配線107が形成されている。コモン信号
用配線107は、図9Bに示すように2つのコモン信号用配線107a及び107bの2
層により構成される。コモン信号用配線107aは、走査信号用引き回し配線103aと
同じ導電層により形成され、コモン信号用配線107bは、表示信号用引き回し配線10
5aと同じ導電層により形成される。さらに、コモン信号用配線107aとコモン信号用
配線107bとの間には、ゲート絶縁膜104が形成されている。そして、配線基板10
1の端部において、ゲート絶縁膜104にコモン信号用配線107aとコモン信号用配線
107bとを接続するためのコンタクトホール(図示せず)が形成され、コモン信号用配
線107a及び107bが接続されている。以上のように、下記特許文献1の液晶表示装
置100においては、コモン信号用配線107を2層構造としているので、コモン信号用
配線107の低抵抗化を図ることができる。
【特許文献1】特開2007− 47259号公報(請求項1、段落[0027]〜[0033]、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された液晶表示装置100によれば、コモン信号用配線107を
2層構造としたことにより、額縁領域を大きくすることなく、配線抵抗を低減することが
可能となる点が開示されている。しかしながら、近年の表示品質の向上及び狭額縁化の要
求は更に大きくなっており、たとえ上記特許文献1に開示されているようにコモン信号用
配線107を2層にしたとしても十分な配線抵抗の低減ができないほど配線自体の幅を小
さくしなければいけない状態となっている。
【0007】
また、従来のアレイ基板(配線基板)は帯電し易い性質を有している。詳しくは基板表
面に種々の配線及び絶縁膜などが形成される工程においてこのアレイ基板が高電圧の静電
気で帯電されることがある。特に、TFTなどが形成されたアレイ基板は、その製造工程
時に、例えば配向膜のラビング処理時或いは大判のマザー基板から個々のアレイ基板に分
断する際などで高電圧の静電気が発生し、この静電気が基板に蓄積されることがある。こ
のラビング処理時の静電気は、配向膜がラビング布で擦られたときに多く発生する。すな
わち、このラビング処理は、TFTなどが形成された基板上にポリイミド(PI)系樹脂
等の有機高分子膜からなる配向膜を成膜して、この配向膜の表面にフェルトや木綿などの
繊維からなるラビング布を所定の荷重下で一定方向に擦りつけることによって配向膜の表
面が液晶分子を所定方向へ向くように配向される。そして、この処理の際に配向膜とラビ
ング布の繊維との摩擦によって静電気が発生する。
【0008】
ところで、アレイ基板の表示領域内は画素電極の上が配向膜(PI)で覆われた構成と
なっている。それに対し、アレイ基板の額縁領域のコモン引回し線は保護絶縁膜が最表面
に存在し、配向膜は額縁領域にまでは形成されていない。そのため、ラビングローラーで
擦られた際に、保護絶縁膜と配向膜と材料の性質が異なるので極性が異なり、陽極と陰極
に分極するため、静電気が発生しやすくなる傾向にある。そしてコモン引回し線上での静
電気発生により、TFT特性がシフトして放電不良が発生することが確認された。これに
対し、上記特許文献1の構造は、ギャップの均一化と低抵抗化については記載されている
が、文献中に記載してあるように、コモン配線の幅を広くとれるようにコモン配線を幅広
にする構造が開示されている。そのため、ラビングローラーで擦られるコモン配線の面積
が大きく、静電気が発生しやすい構造になっていた。
【0009】
更に、このような静電気がアレイ基板に蓄積されると、この静電気によって基板に形成
されたTFTが静電破壊され、或いは隣接する配線間に電位差が発生して短絡事故が誘発
されてパネル不良の原因となり、パネル製造の歩留まりが低下することになる。
【0010】
本発明者らは上記問題点に鑑み、額縁領域が小さい場合であってもコモン引回し線の配
線抵抗を十分に抑え、且つコモン引き回し線のラビングローラーで擦られる面積を少なく
することで、TFT特性のシフトを抑制することができ、しかもこのコモン引回し線を作
成するために別途製造工程を追加することのない液晶表示装置を見出し、本発明に至った
ものである。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、額縁領域の小さい液晶表示装置であっても、表示品質を低
下させることなく且つコモン引回し線の配線抵抗の小さな液晶表示装置を提供することに
ある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、ラビング時に生じる静電気に基づくTFT特性のシフト等
の問題を抑制した液晶表示装置を提供することにある。
【0013】
さらに、本発明の更に他の目的は、製造工程を増大させることなく上述した液晶表示装
置を製造することが可能な液晶表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、アレイ基板とカラーフィルタ基
板とを表面が互いに対向するようにシール材で貼り合わされ、両基板間に液晶が封入され
てなる液晶表示装置において、
前記アレイ基板の表面には、少なくとも、表示領域に沿ってマトリクス状に形成された
走査線及び信号線と、前記走査線及び信号線で区画された領域に設けられた少なくとも1
つの電極と、前記走査線及び信号線の端部に接続されて前記表示領域の外周囲を引回され
たゲート引回し線及びソース引回し線と、前記ゲート引回し線及びソース引回し線の更に
外側を引回されたコモン引回し線と、が形成され、
前記コモン引回し線は、少なくとも3層の導電性部材が積層され互いに接続されて形成
されていることを特徴とする。
【0015】
上記液晶表示装置によれば、コモン引回し線を互いに電気的に接続された少なくとも3
層の導電性部材により形成したので、配線幅が小さいことに起因する配線抵抗の増大を抑
制することが可能となる。
【0016】
また、上記液晶表示装置において、前記少なくとも3層の導電性部材からなるコモン引
回し線のうち、最表面に位置する導電性部材は、外部に露出していると好ましい。
【0017】
上記好ましい態様によれば、コモン引回し線を構成する導電性部材が外部に露出するこ
とで、表示領域内に形成された配向膜をラビング処理する際には、この導電性部材表面に
もラビング処理が施されることになる。この際、この導電性部材と配向膜の材料の性質が
異なるので、極性が異なり陽極と陰極に分極するため、静電気が発生することになる。し
かしながら、導電性部材はコモン引回し線の一部であるため、発生した静電気は用意に外
部に放電させることができる。したがってラビング処理時等に生じる静電気に起因するT
FT特性のシフト等は有効に抑制することができるようになる。更には、本発明の液晶表
示装置のようにコモン引回し線を少なくとも3層の導電性部材で形成すると、表示品質を
低下させることなく額縁領域の面積は小さく抑えることができるので、上述した静電気は
生じ難くなるので、静電気に起因する問題をさらに抑制することができるようになる。
【0018】
また、上記液晶表示装置において、前記コモン引回し線は、前記走査線と同一の材料か
らなる第1の導電性層と、前記信号線と同一の材料からなる第2の導電性層と、前記少な
くとも1つの電極と同一の材料からなる第3の導電性層とを含むと好ましい。
【0019】
上記好ましい態様によれば、コモン引回し線を従来の液晶表示装置において使用されて
いる走査線、信号線及び電極(例えば画素電極)と同一材料からなる導電性層で形成した
ので、これらの配線と導電性層を同時に形成することが可能となる。
【0020】
また、上記液晶表示装置において、前記走査線及び信号線で囲まれた領域の少なくとも
一部には反射板が形成されており、前記コモン引回し線は、更に前記反射板と同一の材料
からなる第4の導電性層を含むと好ましい。
【0021】
上記好ましい態様によれば、反射板を有するいわゆる半透過型あるいは反射型の液晶表
示装置においては、反射板と同一材料からなる第4の導電性層を更に形成することが可能
となるので、コモン引回し線の配線抵抗を更に低減することが可能となる。また、この反
射板は通常アルミニウム等の良導電性材料が使用されるので、配線抵抗を効果的に低減さ
せることができる。
【0022】
また、上記液晶表示装置において、前記第3の導電性層は、前記第4の導電性層上に直
接重畳されていると好ましい。
【0023】
上記好ましい態様によれば、第4の導電性層と第3の導電性層とを直接重畳させること
により、第3及び第4の導電性層の接続のために特段の作業を有しなくなるので、簡単に
両導電性層の電気的な接続を確保することができる。
【0024】
また、上記液晶表示装置において、前記複数の導電性層のうち、間に絶縁膜を介して積
層された導電性層同士は、前記絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して接続されて
いると好ましい。
【0025】
上記好ましい態様によれば、絶縁膜にコンタクトホールを形成するだけで上述の効果を
奏するコモン引回し線を提供することが可能となる。また、このコンタクトホールの形成
を表示領域内の各種配線の接続時に行うコンタクトホールの形成と同時に行えば製造工数
を増加させることもない。
【0026】
また、上記液晶表示装置において、前記第1の導電性層と前記第2の導電性層とは、一
部が互いに平面視で重ならないように延在されており、前記平面視で重ならない一部同士
がブリッジ接続により接続されていると好ましい。
【0027】
上記好ましい態様のように、第1の導電性層と第2の導電性層の一部とを平面視で異な
る位置に設け、更に、これらの導電性層をブリッジ接続しても両導電性層間の電気的な接
続が確保できる。また、このようなブリッジ接続構造を採用すると、第1の導電性層及び
第2の導電性層を外部に部分的に露出するためのコンタクトホールの形成工程を1回でま
とめて行えるので、液晶表示装置の製造工数が増えることがない。
【0028】
また、上記液晶表示装置において、前記ブリッジ接続の際に前記第1の導電性層と前記
第2の導電性層とを接続するブリッジ電極は、前記第3の導電性層の一部又は前記第4の
導電性層の一部からなると好ましい。
【0029】
上記好ましい態様によれば、ブリッジ電極を第3又は第4の導電性層の一部で形成する
ことにより、第1の導電性層と第2の導電性層との電気的な接続のみならず、第1及び第
2の導電性層と第3又は第4の導電性層との電気的な接続をも達成することができる。
【0030】
また、上記液晶表示装置において、前記少なくとも1つの電極は、前記走査線及び信号
線で囲まれた領域毎に形成されたくし歯状の第1電極と、前記第1電極と噛み合うように
同じくくし歯状に形成されるとともに前記コモン引回し線に接続された第2電極と、から
なり、前記第3の導電性層は、前記第1電極と同一の材料からなる層と前記第2電極と同
一の材料からなる層とで形成されていると好ましい。
【0031】
上記好ましい態様によれば、いわゆるIPS(In-Plane Switching)モードの液晶表示
装置であっても上記効果を奏することが可能となる。
【0032】
また、上記液晶表示装置において、前記少なくとも1つの電極は、複数本のスリットが
形成された上電極と、前記上電極に絶縁膜を介して対向配置した下電極と、からなり、前
記第3の導電性層は、前記上電極と同一の材料からなる層と前記下電極と同一の材料から
なる層とで形成されていると好ましい。
【0033】
上記好ましい態様によれば、いわゆるFFS(Fringe Field Switching)モードの液晶
表示装置であっても上記効果を奏することが可能となる。加えて、このFFSモードは絶
縁層を介して異なるそうに上電極と下電極とが形成されているので、第3の導電性層を2
つの層で形成することができるようになり、コモン引回し線の層の数を簡単に増やせるの
で、コモン引回し線の配線抵抗を更に低減させることができるようになる。
【0034】
また、本発明の液晶表示装置の製造方法は、上述した液晶表示装置の製造方法であって
、前記複数の導電性層を、同一の材料からなる各種配線と同一工程で形成することを特徴
とする。
【0035】
上記液晶表示装置の製造方法によれば、上述した液晶表示装置を、従来の液晶表示装置
の製造プロセスと同一のプロセスで、上述した効果を奏するコモン引回し線を形成するこ
とが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法を例
示するものであって、本発明をこの液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法に特定する
ことを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等し
く適応し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面にお
いては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に
縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものでは
ない。
【0037】
図1は本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の概略平面図である。図2は図1の
液晶表示装置においてカラーフィルタ基板を透視して示す概略平面図である。図3は図1
の液晶表示装置の1画素領域を示す拡大平面図である。図4は図3のIV−IV線で切断した
断面図である。図5は図2のV部分を拡大して示す拡大平面図である。図6Aは図5のVI
A−VIA線で切断した断面図、図6Bは図5のVIB−VIB線で切断した断面図である。図
7は本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置における図5に対応する拡大平面図であ
る。図8は図7のVIII−VIII線で切断した断面図である。
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置1は、TN(Twisted Nematic)モード、V
A(Vertical Alignment)モードあるいはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)
モード等のいわゆる縦電界方式で駆動する半透過型の液晶表示装置である。詳しくは、図
1に示すように、アレイ基板AR及びカラーフィルタ基板CFと、両基板AR、CFを貼
り合わせるシール材2と、アレイ基板AR、カラーフィルタ基板CF及びシール材2によ
り囲まれた領域に封入された液晶層40(図3参照)と、から構成されたいわゆるCOG
(Chip On Glass)型の液晶表示装置である。この液晶表示装置1においては、シール材
2により囲まれた領域が表示領域DAを形成しており、この表示領域DAの外側が額縁領
域となっている。なお、図1には表示領域DAに当たる領域に格子状のハッチングが施さ
れている。
【0039】
アレイ基板ARは、図1及び図2に示すように、対向する一対の長辺10A、10Bと
、同じく対向する一対の短辺10C、10Dと、を有する矩形状のガラス基板からなる透
明基板10の表面に液晶駆動用の各種配線等が形成されたものである。このアレイ基板A
Rはカラーフィルタ基板CFよりもその長手方向の長さが長く、両基板AR、CFを貼り
合わせた際に外部に延在する延在部10aが形成されるようになっている。この延在部1
0aには駆動信号を出力するICチップあるいはLSI等からなるドライバDrが設けら
れている。
【0040】
アレイ基板ARの透明基板10上の表示領域DA内には、図2及び図3に示すように、
マトリクス状に複数本の走査線11及び信号線12が形成されており、この複数本の走査
線11及び信号線12は、表示領域DA外まで延出されて引回されてドライバDrに接続
されている。詳しくは、走査線11は表示領域DAの左右、すなわち透明基板10の一対
の長辺10A、10Bの何れかに向かって延在しており、その端部にはゲート引回し線G
Lがそれぞれ接続されて、このゲート引回し線GLが一方の短辺10D近傍に設けられた
ドライバDrに向かって引回されている。また、信号線12は表示領域DAの下方、すな
わち透明基板10の一方の短辺10Dに向かって延在しており、その端部にソース引回し
線SLがそれぞれ接続されて、このソース引回し線SLも同じくドライバDrに向かって
引回されている。また、このドライバDrからは、さらにコモン引回し線Comが延在し
ている。
【0041】
更に、アレイ基板ARの表示領域DA内には、図3及び図4に示すように、複数本の走
査線11及び信号線12に加えて、複数本の走査線11間に設けられこの走査線11と平
行な複数本の補助容量線13と、ソース電極S、ゲート電極G、ドレイン電極D、及び半
導体層15からなるスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)と、走査
線11と信号線12とで囲まれた領域の一部を覆う反射板Rと、走査線11と信号線12
とで囲まれた領域を覆う画素電極18と、が設けられている。このように複数本の走査線
11及び信号線12により囲まれた領域が1画素領域(サブ画素)PAを形成している。
そして、この1画素領域PAのうち、反射板Rが設けられた部分は外光を反射することで
表示を行う反射領域RAを形成しており、反射板Rが設けられていない部分は図示しない
バックライトからの光により表示を行う透過領域TAを形成している。なお、TFTの半
導体層15としてはポリシリコン(p−Si)、アモルファスシリコン(a−Si)ある
いはLTPS(Low Temperature Poly Silicon)等が用いられる。
【0042】
カラーフィルタ基板CFは、図1及び図4に示すように、矩形状のガラス基板からなる
透明基板30の表面に液晶駆動用の各種配線等が形成されたものである。詳しくは、アレ
イ基板ARに形成された走査線11及び信号線12に合わせて格子状に形成されるととも
にアレイ基板ARに形成されたTFT上を覆うように形成された遮光層31と、各画素領
域PAにそれぞれ形成された複数色、例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色
からなるカラーフィルタ層32と、遮光層31及びカラーフィルタ層32とを覆う保護膜
33とを備えている。なお、遮光層31の形状は、上記のような格子状に必ずしも限定さ
れるものではなく、例えばストライプ状やTFT上を覆うだけの形状であってもよい。
【0043】
加えて、この保護膜33の表面には、アレイ基板ARに設けられた画素電極18との間
で電界を形成し液晶層40を駆動するためのITOまたはIZOからなる共通電極34と
、この共通電極34の表面を覆う配向膜35と、が形成されている。共通電極34は、カ
ラーフィルタ基板CFの額縁部分に形成されたトランスファ電極T(図1及び図2参照)
を介してアレイ基板AR側に引回されており、コモン引回し線Comを介してドライバD
rに接続されている。なお、このカラーフィルタ基板CF及び上述したアレイ基板ARの
外側表面には偏光板41(図4参照)が配設されている。
【0044】
次に、アレイ基板ARの額縁領域に引回された各種引回し線の構成について、図2及び
図5を参照して説明する。
図2に示すように、アレイ基板ARの額縁領域は、表示領域DAを囲むように枠状に形
成されており、この額縁領域のうち、特に一対の対向する長辺10A、10Bに沿って延
びる部分には、複数本のゲート引回し線GLと、コモン引回し線Comとが引回されてい
る。
【0045】
このうち、複数のゲート引回し線GLは、所定間隔をおいて互いに平行に延在しており
、ドライバDrから額縁領域の一対の長辺10A、10Bに近接する部分まで引回された
後、短辺10C側に向かって延在するとともに表示領域DA側に徐々に近接するように、
長辺10A、10Bに対して所定角度傾斜した状態で延在されている。したがって、この
複数本のゲート引回し線GLはその本数が短辺10Cに近接するにしたがって減少する。
よって、これら複数本のゲート引回し線GLのうち最も長辺10A又は10Bに近接した
位置を引回されるものと長辺10A又は10Bとの間の幅は、短辺10Cに近接するにし
たがって徐々に広くなっている。
【0046】
コモン引回し線Comは、複数のゲート引回し線GLのさらに外側を引回されている。
このコモン引回し線Comは、その両端がドライバDrに接続されると共に、透明基板1
0の一対の長辺10A、10B及び一方の短辺に沿って配線されており、平面視でほぼU
字状に配線されている。加えて、このコモン引回し線Comは、他の引回し線に比してそ
の幅が大きく設定されている。特に、図2及び図5に示すように、額縁領域の長辺10A
、10Bに沿って延びる部分に配線されたコモン引回し線Comは、所定角度に傾斜して
延在するゲート引回し線GLに沿って、すなわち一方の短辺10Cに近接するに伴ってそ
の幅が徐々に拡幅されている。そして、このコモン引回し線Comの一部、例えば長辺1
0Aと短辺10Cとの交点に近接する位置及び長辺10Bと短辺10Cとの交点に近接す
る位置には、カラーフィルタ基板CFの共通電極34に接続するためのトランスファ電極
Tが形成されている。
【0047】
次に、コモン引回し線Comの配線構造について、図5、図6A及び図6Bを参照して
説明する。
コモン引回し線Comは、図6A及び図6Bに示すように、複数の導電性層C1〜C4
が積層されて形成されている。詳しくは、透明基板10表面に形成された第1の導電性層
C1と、第1の導電性層C1の上部に絶縁膜(ゲート絶縁膜14)を間に挟んで積層され
た第2の導電性層C2と、第2の導電性層C2の上部に絶縁膜(パッシベーション膜16
、層間絶縁膜17)を間に挟んで積層された第4の導電性層C4と、第4の導電性層C4
の上部に直接形成された第3の導電性層C3と、から形成されている。
【0048】
これらの第1〜第4の導電性層C1〜C4は互いに電気的に接続されている。この接続
方法としては、図6A及び図6Bに示すように、第1の導電性層C1と第2の導電性層C
2との間に形成されたコンタクトホールCH2、及び第2の導電性層C2と第4の導電性
層C4との間に形成されたコンタクトホールCH1によりなされている。このように、導
電性層同士が電気的に接続されているので、これら第1〜第4の導電性層C1〜C4のう
ち、第1の導電性層C1以外の導電性層C2〜C4は、その端部が直接ドライバDrに接
続されている必要はなく、例えば長辺10A、10Bに沿った部分など特に配線抵抗が大
きくなり易い箇所にのみ形成するようにしてもよい。なお、これら第1〜第4の導電性層
C1〜C4の更に詳細な構成については、後述の製造工程の説明の際に詳述する。
【0049】
次に、本実施形態の液晶表示装置1のアレイ基板ARの製造工程について、図2〜図6
を参照して説明を行う。
先ず、透明基板10上に所定厚のアルミニウム、モリブデン、クロム、チタンあるいは
これらの合金からなる導電物質を成膜する。なお、前述した材料以外の材料でも可能であ
る。そして、周知のフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることによりその一部
をエッチング除去して、横方向に伸びる複数本の走査線11と、複数本の走査線11とド
ライバDrとをそれぞれ接続するゲート絶縁膜GLと、複数本の走査線11間に位置する
補助容量線13と、走査線11から延在するゲート電極Gと、補助容量線13の一部を拡
幅して形成される補助容量電極13aと、を形成すると共に、ゲート引回し線GLの外側
を引回されたコモン引回し線Comの第1の導電性層C1を形成する。なお、この第1の
導電性層C1の形成は、上述の走査線11、ゲート引回し線GL、補助容量線13、ゲー
ト電極G及び補助容量電極13aを形成する際にパターン形成に用いられるマスクパター
ンに予めこの第1の導電性層C1に合わせたパターンを設けておけばよく、何ら製造工数
を増加させることがない。
【0050】
次に、前記工程によって走査線11や第1の導電性層C1等が形成された透明基板10
上を覆うように公知のプラズマCVD法あるいはスパッタリング法等を用いて所定厚のゲ
ート絶縁膜14が成膜される。このゲート絶縁膜14としては窒化シリコン(SiN
、酸化シリコン(SiO)等からなる透明な無機絶縁材料が用いられる。また、このゲ
ート絶縁膜14の第1の導電性層C1を覆う部分の一部にコンタクトホールCH2が形成
される。
【0051】
次に、ゲート絶縁膜14上に半導体材料、例えばa−Siを成膜する。そして、ゲート
電極Gを覆う部分を残してa−Si層をエッチング除去し、TFTの一部となる半導体層
15を形成する。そして同様の手法により、上述の工程で複数の層が形成された透明基板
10上に更に導電性物質を成膜し、走査線11に対して交差する方向に延びる複数本の信
号線12、複数の信号線12とドライバDrとをそれぞれ接続するソース引回し線SL、
各信号線12から延設され半導体層15に接続されるソース電極S、補助容量電極13a
上を覆うとともに一端が半導体層15に接続されるドレイン電極D、及び第1の導電性層
C1の少なくとも一部、例えば長辺10A、10Bに沿って延びる額縁領域に形成された
第1の導電性層C1上をゲート絶縁膜14を間に挟んで覆う第2の導電性層C2をパター
ニングする。これにより、透明基板10の走査線11と信号線12との交差部近傍にTF
Tが形成されるとともに、コンタクトホールCH2を介して第1の導電性層C1に電気的
に接続される第2の導電性層C2が形成される。なお、この第2の導電性層C2の形成に
おいても、上述の各種配線等を形成する際に用いるマスクパターンを変更するだけで簡単
に形成することができる。
【0052】
さらにまた、これらの各種配線を覆うように表面の安定化のための透明な無機絶縁材料
、例えばSiNあるいはSiOからなるパッシベーション膜(保護絶縁膜ともいう)
16を成膜し、続いて、アレイ基板ARの表面を平坦化するための透明な感光性樹脂材料
、例えばフォトレジストからなる層間絶縁膜17が成膜される。この層間絶縁膜17は、
TFTが形成された透明基板10の表面にフォトレジスト等の感光性樹脂材料からなる膜
を形成し、プリベークした後、公知の露光装置を用いて露光すると共に現像処理して、表
示領域DAに層間膜17を形成した後、光反応処理及びベーキング処理を行なう。このう
ち、光反応処理は、感光性樹脂膜の透明性を向上させる目的でUV光を照射して感光性官
能基を光反応させる処理である。また、ベーキング処理は、加熱処理を行うことにより、
パターン形成された感光性樹脂を焼成し、樹脂内の化学反応(主には架橋反応)によって
化学的、物理的に安定な絶縁膜として基板上に形成する処理である。また、層間絶縁膜1
7及びパッシベーション膜16の補助容量電極13a上に位置する部分、及び第2の導電
性層C2の少なくとも一部には、後述する画素電極18とドレイン電極Dとを電気的に接
続するためのコンタクトホールCH、及び第2の導電性層C2と後述する第4の導電性層
C4とを電気的に接続するためのコンタクトホールCH1が設けられる。このコンタクト
ホールCH及びCH1は、露光形成される層間絶縁膜17の成膜プロセス時に層間絶縁膜
17の該当箇所に形成された穴の底部に露出したパッシベーション膜16をエッチング除
去することにより形成される。
【0053】
次に、層間樹脂膜17の表面及びコンタクトホールCH、CH1により露出したドレイ
ン電極D及び第2の導電性層C2を覆うように光反射性の高いアルミニウム等からなる導
電性材料の膜を形成し、画素領域PA内の一部、例えば画素領域PA内のTFTやコンタ
クトホールCH等が形成された領域(図3においては画素領域PAの下半分)、及び第2
の導電性層C2上を残してこの導電性材料の膜をパターニングする。これにより、画素領
域PA内には反射板Rが形成されると共に、第4の導電性層C4が形成される。なお、反
射板Rが形成された部分は反射領域RAを形成することになるが、この反射領域RAに該
当する層間樹脂膜17の表面は、光反射率を向上させるために凹凸状に予め表面処理が施
されている。ただし、この凹凸状の表面処理の状態については図4では省略している。
【0054】
さらには、走査線11及び信号線12によって囲まれた画素領域PAと第4の導電性層
C4の表面に、例えばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)
からなる画素電極18と、第3の導電性層C3を形成する。画素電極18は、好ましくは
その外縁部が走査線11及び信号線12上に位置し、かつ隣接する画素電極18同士が非
接続状態となるように設ける。最後に、上述の工程を経て複数の層が形成された基板上の
表示領域DA内に配向膜19を成膜し、配向膜19の表面をラビングローラ等を用いてラ
ビング処理する。ちなみに本実施形態においては、配向膜19は表示領域DA内にのみ形
成され、額縁領域には形成しないようにしている。このようにすると、額縁領域の最表面
にはコモン引回し線Comの第3の導電性層C3が露出することになる。以上の工程によ
りアレイ基板ARが製造される。
【0055】
以上の工程を経て形成されたコモン引回し線Comは、コンタクトホールCH1、CH
2を介して、あるいは直接重畳されることにより、全てが電気的に接続された第1〜第4
の導電性層C1〜C4によって形成される。したがって、コモン引回し線Comの配線幅
はこれら4つの導電性層C1〜C4の幅を合算したものとなるので、配線幅の縮小に伴う
配線抵抗の増大を抑制することが可能となる。また、従来よりもコモン引回し線Comの
層数が多くなるので、従来よりも額縁領域を小さくすることができ、液晶表示装置1の設
計の自由度を高くすることができる。
【0056】
ラビング処理時にラビングローラーで擦られる際、表示領域DAの最表面に形成された
配向膜19と、コモン引き回し線Comの最表面に形成された導電性層C3は、それぞれ
の材料の性質が異なるので極性が異なるが、配向膜19に蓄電された静電気が導電性層C
3に印加したとしても、導電性層C3はコンタクトホールCH1を介して、コモン引き回
し線Comに導通されているため、電流が外部へ流れるようになっている。その結果、画
素領域PAとコモン引き回し線Comの境界線で静電気起因による不良が発生しにくくな
る。また、狭額縁化に対応してコモン引き回し線Comの表面積を小さく形成することで
、ラビングローラーで擦られる面積が小さくなることから、更なる静電気対策になる。こ
れにより、表示領域DA周辺部で発生しやすいTFT特性による放電不良を抑制すること
ができる。
【0057】
また、コモン引き回し線Comの表面には反射板Rと同材料で同時形成された、導電性
層C4が連続的に形成されているため、透明電極を備えている装飾用反射部(見切り領域
)として見栄えを良くする効果を有している。
【0058】
なお、上記第1の実施形態においては、半透過型の液晶表示装置1について説明を行っ
たが、本発明は透過型あるいは反射型の液晶表示装置であっても同様に適応可能である。
ただし、透過型の液晶表示装置の場合には、反射板Rが存在しないので、反射板Rと同時
に形成される第4の導電性層C4は設けられない。よって、その場合にはコモン引回し線
Comは第1〜第3の導電性層C1〜C3で構成される3層構造の配線となる。また、上
記第1の実施形態においては、パッシベーション膜16と反射板Rあるいは画素電極18
との間に層間絶縁膜17を形成した例について説明したが、この層間絶縁膜17は必ずし
も形成する必要はない。
【0059】
上記第1の実施形態においては、各導電性層間に配設された絶縁膜にコンタクトホール
CH1、CH2を形成したことにより、導電性層同士の導通が確保されている。しかしな
がら、上述の方法で絶縁膜にコンタクトホール、特にゲート絶縁膜14に形成されるコン
タクトホールCH2の形成は別途製造プロセスを追加せざるを得ない。そこで、従来の液
晶表示装置の製造方法に何らのプロセスをも追加することなく上記第1の実施形態と同様
の効果を得ることが可能な液晶表示装置を、第2の実施形態として以下に説明する。なお
、この第2の実施形態に係る液晶表示装置は、上記第1の実施形態に係る液晶表示装置1
に比して、コモン引回し線Comの構成のみが異なっており、他の構成は同一であるので
、第1の実施形態に係る液晶表示装置1と同一の構成については同一の符号を付してその
説明を省略し、異なる構成についてのみ詳述するものとする。
【0060】
第2の実施形態に係る液晶表示装置のアレイ基板AR1には、図7及び図8に示すよう
に、額縁領域に沿ってコモン引回し線Com1が形成されている。このコモン引回し線C
om1は上記液晶表示装置1のコモン引回し線Comと同様に、短辺10Cに近接するに
したがって拡幅されている。
【0061】
このコモン引回し線Com1は、上記コモン引回し線Comと同様に、第1〜第4の導
電性層C1〜C4から形成されているが、上記コモン引回し線Comと異なる点は、第2
の導電性層C2の一端部が第1の導電性層C1と平面視で重ならない位置まで延在された
延在部を形成しており、この延在部と第1の導電性層C1の他の導電性層C2〜C4と重
なっていない部分とが、ブリッジ電極BEにより電気的に接続されている点である。すな
わち、上記第1の実施形態に係る液晶表示装置1は、第1の導電性層C1と第2の導電性
層C2との間の接続がゲート絶縁膜14に形成されたコンタクトホールCH2を介してな
されていたが、本実施形態の液晶表示装置においては、ブリッジ電極BEを用いて第1の
導電性層C1と第2の導電性層C2との間の接続を行っている。このブリッジ電極BEは
、好ましくは第3の導電性層C3あるいは第4の導電性層C4と同一の材料で形成され、
第3の導電性層C3あるいは第4の導電性層C4と同時に形成されると好ましい。加えて
、このブリッジ電極BEと第3の導電性層C3あるいは第4の導電性層C4とは一体に形
成されているとさらに好ましい。
【0062】
次に、本実施形態の液晶表示装置のアレイ基板AR1の製造工程、特にコモン引回し線
Com1の形成プロセスについて説明する。なお、アレイ基板AR1の製造工程はコモン
引回し線Com1の形成プロセス以外は上記第1の実施形態に係るアレイ基板ARと同様
であるので、その説明は省略する。
【0063】
先ず、走査線11及びゲート引回し線GL等の形成と同時に第1の導電性層C1を形成
する。次いで、ゲート絶縁膜14を成膜した後、信号線12及びソース引回し線SL等の
形成と同時に第2の導電性層C2を形成する。なお、この第2の導電性層C2を形成する
際は、その端部、好ましくは短辺10Dに近接する側の端部が第1の導電性層C1と平面
視で重ならないようにする。そして、半導体層15、パッシベーション膜16及び層間絶
縁膜17を順次形成した後、画素領域PA内に形成されるコンタクトホールCHと同時に
、第1の導電性層C1の短辺10D側の一部と、及び第2の導電性層C2の第1の導電性
層C1と平面視で重ならないように配設された端部とを覆う層間絶縁膜17、パッシベー
ション膜16、及び、第1の導電性層C1を覆うゲート絶縁膜14を除去してコンタクト
ホールCH3、CH4を形成する。なお、コンタクトホールCHの形成は露光形成される
層間絶縁膜17の成膜プロセス時に予め該当箇所に穴を形成しておき、この穴の底部に露
出したパッシベーション膜16をエッチング除去することで行われるため、コンタクトホ
ールCH3、CH4においても、層間絶縁膜17の成膜プロセス時に予め該当箇所に穴を
形成しておき、この穴の底部に露出したパッシベーション膜16及びこの露出したパッシ
ベーション膜16の更に直下層に形成されているゲート絶縁膜14をエッチング除去する
ことで形成できる。なお、パッシベーション膜16とゲート絶縁膜14は一般に同一材料
、例えばSiN、SiOで形成されるので、エッチングの際に特にエッチング液を変
更する必要もない。
【0064】
コンタクトホールCH、CH3、CH4が形成された後は、反射板R及び第4の導電性
層C4を形成すると共に、この第4の導電性層C4の端部をコンタクトホールCH3、C
H4上まで延在することにより、この第4の導電性層C4の端部でブリッジ電極BEを形
成する。そして、画素電極18、第3の導電性層C3を形成し、最後に表示領域DA内に
配向膜19を形成することで本実施形態に係る液晶表示装置のアレイ基板AR1が製造さ
れる。
【0065】
以上の工程によりコモン引回し線Com1を形成すれば、従来の液晶表示装置の製造工
程に何ら工程を追加することなく、4層構造のコモン引回し線Com1を形成することが
できる。なお、上記工程においてはブリッジ電極を第4の導電性層C4で形成した例を説
明したが、第3の導電性層C3で形成することも可能である。また、ブリッジ電極BEと
第4の導電性層C4とを一体に形成せずに、第4の導電性層C4と第2の導電性層C2は
コンタクトホールCH形成時に別途第2の導電性層C2上にコンタクトホール(すなわち
上記第1の実施形態において示したコンタクトホールCH1)を形成して接続を行うよう
にしても良い。
【0066】
また、上述した第1及び第2の実施形態に係る液晶表示装置においては、何れもいわゆ
る縦電界方式の液晶表示装置について説明を行っているが、これに限らず、いわゆる横電
界方式、例えばIPSモードの液晶表示装置であっても本発明の目的を達成することが可
能である。ただし、IPSモードの液晶表示装置は、アレイ基板側にくし歯状に互いに噛
み合う第1電極(画素電極)と第2電極(共通電極)が形成されるので、これら第1及び
第2電極の形成時に同時に第3の導電性層を形成することになる。
【0067】
加えて、他の横電界方式であるFFSモードの液晶表示装置においても同様に本発明の
目的を達成することが可能である。ただし、FFSモードの液晶表示装置は、アレイ基板
側に絶縁膜を介して上電極と下電極とが対向配置された構造を有している。これらの電極
は、例えば、下電極は画素領域毎に形成されTFTに接続された画素電極を構成し、上電
極は複数本のスリットが形成されるとともに額縁領域においてコモン引回し線に接続され
た共通電極を構成する。このようにFFSモードの液晶表示装置は、画素電極(下電極)
と共通電極(上電極)とがアレイ基板上の異なる層上に形成されているので、画素電極の
形成時及び共通電極の形成時にそれぞれコモン引回し線を構成する導電性層を形成するこ
とが可能となる。したがって、最大で5層構造のコモン引回し線を形成することができる
ようになるので、更に配線抵抗の低減を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の概略平面図である。
【図2】図2は図1の液晶表示装置においてカラーフィルタ基板を透視して示す概略平面図である。
【図3】図3は図1の液晶表示装置の1画素領域を示す拡大平面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線で切断した断面図である。
【図5】図5は図2のV部分を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】図6Aは図5のVIA−VIA線で切断した断面図、図6Bは図5のVIB−VIB線で切断した断面図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置における図5に対応する拡大平面図である。
【図8】図8は図7のVIII−VIII線で切断した断面図である。
【図9】図9Aは従来の液晶表示装置の一部を拡大して示す拡大平面図、図9Bは図9AのIXB−IXB線で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1:液晶表示装置 2:シール材 10、30:透明電極 11:走査線 12:信号線
13:補助容量線 14:ゲート絶縁膜 15:半導体層 16:パッシベーション膜
17:層間絶縁膜 18:画素電極 19、35:配向膜 31:遮光膜 32:カラ
ーフィルタ層 33:保護膜 34:共通電極 40:液晶 41:偏光板 AR、AR
1:アレイ基板 CF:カラーフィルタ基板 GL:ゲート引回し線 SL:ソース引回
し線 Com、Com1:コモン引回し線 C1〜C4:第1〜第4の導電性層 BE:
ブリッジ電極 CH、CH1〜CH4:コンタクトホール DA:表示領域 Dr:ドラ
イバ T:トランスファ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板とカラーフィルタ基板とを表面が互いに対向するようにシール材で貼り合わ
され、両基板間に液晶が封入されてなる液晶表示装置において、
前記アレイ基板の表面には、少なくとも、表示領域に沿ってマトリクス状に形成された
走査線及び信号線と、前記走査線及び信号線で区画された領域に設けられた少なくとも1
つの電極と、前記走査線及び信号線の端部に接続されて前記表示領域の外周囲を引回され
たゲート引回し線及びソース引回し線と、前記ゲート引回し線及びソース引回し線の更に
外側を引回されたコモン引回し線と、が形成され、
前記コモン引回し線は、少なくとも3層の導電性部材が積層され互いに接続されて形成
されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも3層の導電性部材からなるコモン引回し線のうち、最表面に位置する導
電性部材は、外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記コモン引回し線は、前記走査線と同一の材料からなる第1の導電性層と、前記信号
線と同一の材料からなる第2の導電性層と、前記少なくとも1つの電極と同一の材料から
なる第3の導電性層とを含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記走査線及び信号線で囲まれた領域の少なくとも一部には反射板が形成されており、
前記コモン引回し線は、更に前記反射板と同一の材料からなる第4の導電性層を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第3の導電性層は、前記第4の導電性層上に直接重畳されていることを特徴とする
請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数の導電性層のうち、間に絶縁膜を介して積層された導電性層同士は、前記絶縁
膜に形成されたコンタクトホールを介して接続されていることを特徴とする請求項1〜5
の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の導電性層と前記第2の導電性層とは、一部が互いに平面視で重ならないよう
に延在されており、前記平面視で重ならない一部同士がブリッジ接続により接続されてい
ることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記ブリッジ接続の際に前記第1の導電性層と前記第2の導電性層とを接続するブリッ
ジ電極は、前記第3の導電性層の一部又は前記第4の導電性層の一部からなることを特徴
とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電極は、前記走査線及び信号線で囲まれた領域毎に形成されたく
し歯状の第1電極と、前記第1電極と噛み合うように同じくくし歯状に形成されるととも
に前記コモン引回し線に接続された第2電極と、からなり、前記第3の導電性層は、前記
第1電極及び第2電極と同一の材料からなる層で形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電極は、複数本のスリットが形成された上電極と、前記上電極に
絶縁膜を介して対向配置した下電極と、からなり、前記第3の導電性層は、前記上電極と
同一の材料からなる層と前記下電極と同一の材料からなる層とで形成されていることを特
徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記請求項1〜10の何れかに記載の液晶表示装置の製造方法であって、前記複数の導
電性層を、同一の材料からなる各種配線と同一工程で形成することを特徴とする液晶表示
装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204644(P2009−204644A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43927(P2008−43927)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】