説明

液晶表示装置及び電子表示装置

【課題】積層された複数の液晶表示素子を有する液晶表示素子にて、フリッカを低減した液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示部130は、積層された第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とを有する。信号制御チップ112は、画像ソース部100から入力された映像信号に基づいて、第1液晶表示素子133で表示すべき画像と、第2液晶表示素子136で表示すべき画像を生成する。第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とでは、走査方向が逆方向に設定される。すなわち、第1液晶表示素子133の走査方向が、走査方向141で示すように下から上に向かう方向であるときは、第2液晶表示素子136の走査方向は、走査方向140で示すように上から下に向かう方向である。走査方向を逆方向とすることで、フリッカ低減が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び電子表示装置に関し、更に詳しくは、積層された複数の液晶表示素子を有する直視型の液晶表示装置及び電子表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(液晶ディスプレイ)は、低消費電力で高精細化が可能という特徴を有しており、小型の携帯電話機から大型のテレビモニターまで広い範囲に適用されている。しかしながら、液晶表示パネル(液晶表示素子)の暗所におけるコントラスト比は、液晶表示パネル単独では高々1000:1前後であり、CRTにおけるコントラスト比や、液晶ディスプレイと同じくテレビモニターとして用いられているプラズマディスプレイのコントラスト比(3000:1)、FED/SEDと呼ばれる放電型表示パネルのコントラスト比(数万:1)に比べて低い。このため、液晶表示装置にて、映画など暗い部分の表現力が豊かな映像ソースの表示を実施した場合に、臨場感が不足するという問題点が指摘されている。
【0003】
上記問題に対して、液晶表示素子単体でのコントラスト比はそのままとして、バックライトの光強度を、表示する画像に従って制御することで、液晶ディスプレイ装置全体でコントラスト比を向上させる技術が開発されてきている。しかし、通常の面光源型のバックライト装置では、光源として冷陰極管が用いられており、この冷陰極管の輝度のダイナミックレンジは狭い。このため、バックライトの光強度を表示する画像に従って制御した場合でも、コントラスト比は、2000〜3000:1に留まる。また、冷陰極管は棒状の光源であるために、同一画面内に輝度の高い部分と低い部分とが同時に存在した場合には、バックライトにおける輝度の調整ができない領域が発生し、バックライトの輝度制御によるコントラストの向上効果が低くなる。従って、一部高輝度の領域がある画像で、低輝度領域における再現性を重視するような画像を表示する場合に、実質的なコントラスト比が低下するという問題がある。
【0004】
上記の問題を生じさせないためには、液晶表示素子のコントラスト比を大幅に引き上げる必要がある。しかし、前記したように、液晶表示素子単体におけるコントラスト比は高々1000:1程度である。液晶表示素子単体でのコントラスト比を大幅に引き上げることなく、液晶表示装置のコントラスト比を大幅に向上できる液晶表示装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。これら技術では、液晶表示素子を2層又はそれ以上重ね合わせる。このようにすることで、黒輝度を低下させ、液晶表示装置全体でのコントラスト比を向上させている。
【0005】
図6に、液晶表示素子を2層重ね合わせた構造の液晶表示装置を示す。この液晶表示装置は、光入射側から順に、偏光板901、液晶表示パネル941、偏光板902、液晶表示パネル942、及び、偏光板903を有する。液晶表示パネル941は、TN構造の液晶層931と、透明電極921、922を液晶層側に有する一対の透明基板911、912とから成る。液晶表示パネル942は、TN構造の液晶層932と、透明電極923、924を液晶層側に有する一対の透明基板913、914とから成る。液晶表示パネル941、942の透明電極921及び923は、それぞれ、駆動回路951から駆動信号が供給される画素電極であり、透明電極922及び924は、それぞれ共通電極である。
【0006】
液晶表示パネル941、942単体でのコントラスト比を、レーザ光を用いて測定すると、10〜15程度となる。このような液晶表示パネル941、942を、2枚重ねて積層し、コントラスト比を測定すると、コントラスト比は100:1程度に向上した。また、液晶表示パネルを3枚積層する構成では、コントラスト比を1000:1程度に向上することができ、液晶表示パネル単体でのコントラスト限界を超えたコントラスト比を実現できる。
【特許文献1】特開昭64−10223号公報
【特許文献2】実開昭59−189625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の液晶表示装置では、液晶表示素子単体では不可能であった高コントラスト比を得るために、積層された2つの液晶表示パネル941、942を用い、この2つの液晶表示パネル941、942を、同一の信号源からの同一の信号によって駆動している。このように、2つの液晶表示パネル941、942を同一の信号源からの同一の信号で駆動した場合、静止画、動画にかかわらず、2つの液晶表示パネル941、942にて、同一のタイミングでは、同一の箇所を駆動することとなる。この場合、液晶表示パネル941、942が駆動されてから表示を維持するまでの間に生じる透過率の変動も同期することになり、このフレーム内における輝度変化(=フリッカ)の総量も増幅されることになる。これにより、画面表示が見づらくなるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、積層された複数の液晶表示パネルを有する液晶表示装置において、フリッカを低減させた液晶表示装置及び電子表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、積層された複数の液晶表示素子と、該複数の液晶表示素子に背面側から光を照射する光源とを有し、前記複数の液晶表示素子のうちの少なくとも1つの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置の少なくとも一方が、残りの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置とは異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶表示装置及び電子表示装置では、フリッカを低減した画像表示が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例の液晶表示装置(電子表示装置)、及び、その駆動システムを示している。液晶表示装置(画像表示システム)は、大きく分けて、画像ソース部100と、信号処理部110と、液晶表示部130との3つの部分に分かれており、それぞれのユニット間は、ケーブル103、116、117で接続されている。この液晶表示装置は、液晶表示部130に、積層された2つの液晶表示素子133、136を有する統合型の液晶表示装置として構成される。
【0012】
画像ソース部100は、画像ソース101と、トランスミッタ102とを有する。画像ソース101は、液晶表示部130にて表示すべき画像(画像データ)を出力する。トランスミッタ102は、画像ソース101が出力する画像データを、伝送可能な映像信号に変換し、ケーブル103を介して信号処理部110に送信する。このときに、画像ソース部100から信号処理部110に送出される映像信号は一組のみであり、液晶表示部130の2つの液晶表示素子に表示すべき映像信号を別個に2組送出しているわけではない。また、画像ソース部100から送出された画像と、液晶表示素子133、136に表示する画像(信号)とは異なり、液晶表示素子133、136に表示される画像もそれぞれ異なる。
【0013】
トランスミッタ102には、例えばザインエレクトロニクス社製のTHC63DV164を用いることができる。この場合、トランスミッタ102は、画像ソース101が出力するパラレルデータをシリアル信号に変換し、変換した信号を、通信ケーブル103を介して、信号処理部110へ送出する。ただし、この部分としては、パソコン用のデジタルインターフェースとして一般的なDVI出力が得られればよいため、トランスミッタ102は前記のチップには限られず、同等の信号を出力できれば何でもよい。また、画像ソース部100として、一般的なDVI出力を有するパソコンを使用しても何ら問題ない。信号伝送については、トランスミッタとレシーバとが対となって信号の送受信ができればよいため、信号形式はDVI形式に限らず、他形式のデジタル信号であっても、また、伝送レートの関係から複数のデジタル信号ケーブルを用いてもよく、更にはアナログでもかまわない。
【0014】
信号処理部110は、レシーバ111と、信号制御チップ112とを有する。レシーバ111は、画像ソース部100が送信した映像信号を受信する。信号制御チップ112は、信号生成部113、動画判定部114、及び、モード切替部115を有する。信号生成部113は、レシーバ111によって受信された信号に画像処理を施し、液晶表示部130の2つの液晶表示素子133、136のそれぞれで表示すべき画像を生成する。信号生成部113は、画像処理した信号を、それぞれ、信号ケーブル116、117を介して、液晶表示素子133、136に送出する。信号ケーブル116、117に送出される信号は、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)信号とする。
【0015】
信号処理部110に搭載する信号制御チップ112としては、アルテラ社のFPGAであるStratixシリーズを利用することができる。このチップは、LVDSトランスミッタ機能も有しているので、回路が簡便になる。ただし、内蔵メモリ容量が少ないので、試作ボードにおいては、外部にバッファメモリを搭載することで不足分を補うこととした。また、FPGAで構成したため、内部の論理回路はスタティックRAMである。従って、この構成では電源投入時に、論理回路を、外部にあるROMから転送する必要があることになるが、テストや少量生産の場合にはこの構成が適しているため、本実施例ではFPGAを用いて回路を構成した。FPGAの中には、内部論理回路を電気的に書き換えることが可能なEEPROM構成にしたものや、PROM構成のもの、ワンタイム−PROMで構成されたものなどが存在するが、基本的にどの構成を用いても、本発明の効果は変わらない。また、大量生産時には、FPGAではなく、論理をゲートアレイで構成し、或いは、更に大規模の際には、フルカスタムでLSIを起こしても、本発明の効果は変わらない。
【0016】
液晶表示部130は、第1液晶表示素子133、第2液晶表示素子136、及び、光源137を有する。液晶表示部130では、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とが積層されており、観察者側とは反対側の背面側に、光源137が配置されている。第1液晶表示素子133は、カラーフィルタを有し、カラー画像を表示する液晶表示素子とし、第2液晶表示素子136は、モノクロ画像(単色画像)を表示する液晶表示素子とした。垂直ドライバ131及び水平ドライバ132は、第1液晶表示素子133を駆動するためのドライバである。また、垂直ドライバ134及び水平ドライバ135は、第2液晶表示素子136を駆動するためのドライバである。
【0017】
液晶表示部130では、第1液晶表示素子133の走査方向(スキャン方向)と、第2液晶表示素子136の走査方向とを、異なる方向とした。すなわち、第1液晶表示素子133の走査方向は、走査方向141で示すように、下側から上側へ向かう方向とし、第2液晶表示素子136の走査方向は、走査方向140で示すように、上側から下側に向かう方向とした。液晶表示素子133、136の走査方向は、それぞれ垂直ドライバ131及び134により決定される。
【0018】
走査方向を、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで逆方向とすることで、フリッカが目立たなくなる理由について説明する。TFT駆動型のLCDの場合、各画素は、書き込みタイミングで画素に書き込んだ電荷により、定電荷駆動を行っていると考えられる。このときの両端の電圧をVsとし、書き込んだ電荷をQs、画素容量をC1とすると、簡単なオームの法則より、書込み時電圧Vsは、下記のように求められる。
Vs=Qs/C1
【0019】
各画素では、次の書き込み時までにQsが変化しなければ、Vsは保たれる。しかし、トランジスタのリークなどによって、Qsは、次のフレームまでの時間に、Qrだけ電荷が減少する。フレーム終了時の電圧をVeとすると、
Ve=(Qs−Qr)/C1
となる。各画素では、Vs−Veだけ電圧が減少することで、LCDを透過する輝度が変動する。この現象を外部から見た場合観察者からは、フリッカという現象で確認できる。
【0020】
2つの液晶表示素子を重ねてコントラスト比を増加させた構成では、光透過率は、第1液晶表示素子133の光透過率と第2液晶表示素子136の光透過率との積となる。フリッカによる各液晶表示素子での透過率の変化をΔLとする。ΔLは、駆動方法により正又は負となる、各液晶表示素子にて、透過率がLからL−ΔLに変化すると、積層された2つの液晶表示素子のトータルの光透過率は、
−(L−ΔL)=2LΔL−ΔL
だけ変化する。このように、各液晶表示素子にフリッカが生じていた場合には、光透過率の変動もそれに応じて増幅されることなり、表示品位が低下する。
【0021】
そこで、2つの液晶表示素子の走査方向を、互いの逆向きにすることを考える。液晶表示部130にて、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を逆方向にした場合は、例えば、パネルの一番上では、第1液晶表示素子133の透過率は書き込み直後であるためLとなり、第2液晶表示素子136の透過率は書き込み直前のためL−ΔLとなる。従って、この場合のトータルの透過率の変化は、
−L(L−ΔL)=LΔL
となる。走査方向を同じ方向とする場合での透過率変化と、逆方向にする場合での透過率変化を比較すると、走査方向を逆方向としたときの透過率変化は、走査方向を同一方向とする場合に比して、ΔLが十分に小さいと仮定してΔLの項を無視したとしても、LΔLだけ低くなる。
【0022】
実際に、本実施例において試作したパネルを用いて、フリッカの強度を測定した。まず、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136にて走査方向を同一とした場合のフリッカ強度を測定すると、フリッカ強度は−30dBを超えていた。次に、第1液晶表示素子133の走査方向と第2液晶表示素子136の走査方向とを逆方向にしてフリッカ強度を測定すると、フリッカ強度は−30dBよりも低くなった。このように、走査方向を逆方向とすることで、フリッカ強度を低下させることができ、逆方向走査の有効性が確認された。
【0023】
ここで、2つの液晶表示素子にて走査方向を逆向きとする場合、静止画に関しては特に問題にならない。しかし、フレーム単位で画像が変化する動画を表示させた場合には、下記に説明する問題が生じる。すなわち、動画は、nフレーム目とn+1フレーム目の画像が異なっており、それが連続している。積層された2つの液晶表示素子における走査方向を逆方向とする場合、nフレーム目を第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とに書き終えた後に、n+1フレーム目の書込みを開始すると、第1液晶表示素子133では、画面の下側から表示がn+1フレーム目の表示に切り替わっていき、第2液晶表示素子136では、画面の上側から表示がn+1目フレーム目の表示に切り替わっていく。このため、n+1フレーム目の書き込み直後では、第1液晶表示素子133の画面上部はn+1フレーム目の画像に切り替わっているが、第2液晶表示素子136の画面上部はnフレーム目の画像のままとなる。また、画面下部に関しては、第2液晶表示素子136ではn+1フレーム目の画像に切り替わっているが、第1液晶表示素子133ではnフレーム目の画像のままである。このように、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで異なるフレームの画像を表示する期間が発生し、全画面が一致するのは各々の画面の書き換えが終了して、次のフレームを書き始めるまでの短い期間のみとなる。
【0024】
上記したように、動画のような、フレームごとに異なる画像を連続して出力する場合は、積層した2つの液晶表示素子の走査方向を逆方向にすると、表示が見づらくなる。従って、動画表示では、走査方向を揃えることが好ましい。そこで、液晶表示部130での動作モードとして、走査方向を揃える動作モードと、走査方向を逆方向とする動作モードとを用意し、動画判定部114での判定結果に従って、モード切替部115により、2つの動作モードを切り替える。モード切替部115は、動画判定部114が表示すべき画像が静止画であると判定すると、2つの液晶表示素子の走査方向を逆方向とする動作モードを設定する。また、動画であると判定すると、2つの液晶表示素子の走査方向を同一方向とする動作モードに設定する。図2に、走査方向を揃えた場合を示す。図2に示すように、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで、走査方向を走査方向140に揃える場合は、フリッカに対しては不利な方向に働く。しかし、動画の場合には、画面全体の輝度が連続的に変化しているため、観察者は、フリッカを静止画ほどは感じない。
【0025】
モード切替部115は、設定すべき動作モードに応じて、第1液晶表示素子133を駆動する垂直ドライバ131に対して、走査方向を、上から下に向かう走査方向とするか、或いは、下から上へ向かう走査方向とするかを示す信号を送る。垂直ドライバ131は、走査方向が切り替え可能に構成されており、モード切替部115から受け取った信号に従って、走査方向を決定する。また、信号制御チップ112は、モード切替部115が設定した動作モードに応じて、信号生成部113から送信する画像信号の送信順序を切り替える。信号制御チップ112は、垂直ドライバ131の走査方向が上から下に向かう方向であれば、画像の第1行側から順に画像信号を送信する。また、走査方向が下から上に向かう方向であれば、画像の最終行から順に画像信号を送信する。
【0026】
動画判定部114は、画像ソース部100より受け取った映像信号のnフレーム目とn−1フレーム目とを比較し、画像全体においてどの程度の割合で画像が変化しているかを判断することで、画像が動画であるか否かを判断する。より詳細には、信号処理部110内にフレームメモリを設け、nフレームの画像が入力されると、その画像をフレームメモリに格納し、nフレーム目の画像と、フレームメモリに記憶された、その1フレーム前の画像とを比較して、全体でどの程度の画素が変化しているかを調べる。変化が所定のしきい値以上のときには動画と判断し、所定のしきい値以下のときは、静止画と判断する。1フレーム前後だけでなく、複数のフレームを用いて判定することも可能である。
【0027】
上記動画/静止画の判定において、動画と判定する際のしきい値と、静止画と判定する際のしきい値とを同じ値に設定すると、しきい値付近で変動する画像では、走査方向の切替えが頻繁に生じて、画像が見づらくなることが考えられる。このため、動画と判定する際のしきい値と、静止画と判定する際のしきい値とは、異なる値とすることが好ましい。このとき、動画と判定する際のしきい値をしきい値Aとし、静止画と判定する際のしきい値をしきい値Bとすれば、しきい値A>しきい値Bである。信号制御チップ112は、フレーム間で変化する画素がしきい値A以上であれば動画と判定し、変化する画素がしきい値B以下であれば、静止画と判定する。
【0028】
また、走査方向の切替えに際しては、単純にフレームの前後だけで動画/静止画を判断すると、例えばノイズの影響で、或いは、マウスカーソルやウィンドウの移動で画素に変化が生じただけでも動画と判定され、走査方向の切替えが頻繁に発生することになる。そこで、走査方向の切替えが頻繁に発生することを防ぐために、ヒステリシスを設け、動画/静止画と判定される状態が所定時間継続した場合に走査方向の切替えを行うこととする。この時間は、例えば静止画から動画への判定については1秒(60フレーム相当)とし、動画から静止画への判定については30秒とする。
【0029】
動画判定部114は、例えば、VGAサイズ(640×480ドット、約30万画素)のうちの1/4の画素が変化した状態が1秒以上連続したときには、動画状態に遷移した判定する。また、変動が1/16の画素数以下の状態が1秒以上連続したときには、静止画状態に遷移した判定する。このように、所定時間経過後に、動画状態へ遷移した、又は、静止画状態へ遷移したと判定することで、走査方向の切替えが頻繁に起こることを避けることができ、観察者から見て、違和感のない表示が可能となる。なお、走査方向の切り替えは、フレームを書き終えた後(垂直帰線時間)に行うことが好ましく、本実施例では、垂直帰線時間に、走査方向切替えを行うこととする。ただし、画像表示途中で走査方向切替えを行ったとしても、問題が生じるのは1フレームだけであるので、特に観察者が気付くこともなく、大きな問題とはならない。
【0030】
図3に、液晶表示部130の断面構造を示す。液晶表示部130は、光出射側から順に、偏光板201、透明基板211、カラーフィルタ層251、配向膜221、液晶層231、配向膜222、透明基板212、偏光板202、偏光板203、透明基板213、配向膜223、液晶層232、配向膜224、透明基板214、偏光板204、及び、面発光光源241を有する。以下では、便宜的に、透明基板211、カラーフィルタ層251、配向膜221、液晶層231、配向膜222、透明基板212までを第1液晶表示パネル261と呼び、第1液晶表示パネル261を挟むように配置された偏光板201及び偏光板202まで含めて第1液晶表示素子133と呼ぶ。また、透明基板213、配向膜223、液晶層232、配向膜224、透明基板214までをあわせた部分を第2液晶表示パネル262と呼び、第2液晶表示パネル262を挟むように配置された偏光板203及び偏光板204までを含めて第2液晶表示素子136と呼ぶ。
【0031】
図3における面発光光源241は、図1における光源137に対応している。面発光光源241は、面発光の光源として構成され、第1液晶表示素子133及び第2液晶表示素子136の背面側から光を照射する。面発光光源241から出射した光は、第2液晶表示素子136と第1液晶表示素子133とを透過して観察者側に出射する。第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136の各画素にて、光の透過状態を制御することで、観察者が表示画像を見ることが可能となる。
【0032】
液晶表示素子の作成について説明する。まず、第1液晶表示素子133について説明する。透明基板212の液晶層側には、マトリクス状に電極が配置されており、その各交点付近に、3端子型の非線形素子(以下、TFTとする)が配置され、1画素が構成される。液晶表示素子の表示モードには、例えば、画素内にてTFTからの電極と共通電極とが櫛歯状に形成された横電界方式のモードを用いる。カラーフィルタ層251では、画素一つにひとつのカラーフィルタが対応するように、赤、緑、青のカラーフィルタがストライプ状に配置される。第1液晶表示素子133では、1ピクセルは、隣接する赤、緑、青のカラーフィルタに対応する3画素で構成される。
【0033】
液晶表示素子の形成に際しては、透明基板211上のカラーフィルタ層251の表面と、透明基板212のマトリクス状の電極を配置した面とにそれぞれ配向膜221、222を塗布し、ラビングに代表される液晶配向処理を実施する。その後、透明基板211の配向膜221を形成した面と、透明基板212の配向膜222を形成した面とを、互いに液晶配向方向が平行又は反平行となるような方向で向かい合わせて、一定の間隙を空けて重ね合わせ、その間隙に、例えばメルク社製のZLI4792を注入する。これにより、第1液晶表示パネル261が形成される。更に、この第1液晶表示パネル261を挟み込むように、偏光板201と偏光板202とを配置し、第1液晶表示素子133を形成する。偏光板には、例えば日東電工製SEG1224を用いる。偏光板201と偏光板202とは、容易透過軸又は光吸収軸同士が互いにほぼ直交した配置とし、偏光板201及び偏光板202の何れか一方の光吸収軸が、液晶の配向方向に平行となるようにする。
【0034】
次に、第2液晶表示素子136について説明する。第2液晶表示パネル262の作成は、透明基板213がカラーフィルタ層を有しない点を除いて、第1液晶表示パネル261の作成と同様である。透明基板214の液晶層側には、マトリクス状の電極が配置されており、その交点付近にTFTが配置されている。第2液晶表示パネル262における画素サイズについては、第2液晶表示パネル262では、透明基板213がカラーフィルタ層を有していないため、第1液晶表示パネル261における1ピクセルのサイズと同じサイズを、1画素とすることが適当である。或いは、第1液晶表示パネル261と同じサイズで1画素を構成し、第1液晶表示パネル261からカラーフィルタ層251を取り除いた構成としてもよい。第2液晶表示パネル262の作成後、第2液晶表示パネル262を偏光板203、204で挟み込み、第2液晶表示素子136を形成する。このとき、第1液晶表示素子133と同様に、偏光板203と偏光板204とは、容易透過軸又は光吸収軸同士が互いにほぼ直交した配置とし、偏光板203及び偏光板204の何れか一方の光吸収軸が、液晶の配向方向に平行となるようにする。
【0035】
作成された第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とを、位置を合わせて重ね合わせ、背面側に面発光光源241を配置して、液晶表示部130を作成する。第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とを重ね合わせる際には、互いの液晶配向方向が平行又は垂直になるように重ね合わせる。また、偏光板202と偏光板203との容易透過軸又は光吸収軸がほぼ平行となるようにし、偏光板202を透過した光が、偏光板203を可能な限り透過できるようにする。なお、偏光板202と偏光板203のうちの一方を省略して、2つの液晶表示パネル間の偏光板を、双方の液晶表示素子で共用する構成とすることも可能である。
【0036】
液晶表示部130では、2つの液晶表示素子のうちの一方にカラーフィルタ層251を配置し、カラーフィルタ層を1層のみとしている。このため、物理的に視野を動かしても、複数のカラーフィルタ層が存在する場合のように、透過輝度が見る角度によって大きく変わることはない。しかしながら、2つの液晶表示素子133、136を、同一の信号源から同一の信号により駆動すると、液晶層231と液晶層232との間に距離が存在することから、視差により表示が見づらくなる。
【0037】
図4に、視差の発生を説明するための模式図を示す。同図では、図3における主要な部分、すなわち透明基板と液晶層のみを抽出して図示している。図4における液晶表示素子301、302は、図3に示す液晶表示素子133、136に対応し、透明基板321〜324は、それぞれ透明基板211〜214に対応する。また、液晶層325、326は、液晶層231、232に対応する。
【0038】
第1液晶表示素子301と第2液晶表示素子302とを、表示面に対して鉛直な方向(図4に示す311方向)から観察すると、視線331に対しては、第1液晶表示素子301の液晶層325の点βと、第2液晶表示素子302の液晶層326の点αとは重なって見え、同一の点となる。従って、鉛直方向から観察する際には、視差による違和感は生じない。一方、斜め視野では、点αと点βとは、垂直方向に距離dだけ離隔しているため、角度θの方向(図4に示す312方向)から点α及びβを見た場合には、視線332と視線333として観察され、それぞれの映像の位置が視差の分だけ異なる位置に見えることから、像が2重に見えて違和感が大きく、表示が見づらくなる。
【0039】
第1液晶表示素子301及び第2液晶表示素子302内を透過した光は、透明基板321から空気中に出射する際に、スネルの法則により、屈折率の違いに応じた角度で進行方向が変化する。第1液晶表示素子301及び第2液晶表示素子302の内部から透過してきた光が、透明基板321の表面から出射する際の角度θと、透明基板321の表面に入射する際の角度φとは、透明基板321の屈折率をng、空気の屈折率をnaとすると、スネルの法則から、
na・sinθ=ng・sinφ
と表すことができる。これを変形すると、
φ=sin−1((na/ng)×sinθ)
と表すことができる。錯角の関係から、点βから、透明基板321の表面に向かう光と鉛直方向との間の角度もφとなる。点αについても同様である。視角θの方向から見た場合に、第1液晶表示素子301と第2液晶表示素子302との表示位置が異なる量(位置ズレ量)rは、下記式で表すことができる。
tanφ=(r/d)
r=d×tanφ
=d×tan(sin−1((na/ng)×sinθ)) (1)
【0040】
角度θの斜め視野において、視差感をなくすためには、本来、点βの位置で表示を行うべき情報を、点γの位置まで距離rだけ伸ばして表示すればよい。そこで、液晶表示素子を駆動する信号について、点βの情報を、距離rまで散らす平均化処理を画面全体に対して実施する。このようにすることで、視差感を減少させて、表示を見やすくすることができる。平均化処理は、2つの液晶表示素子のうちの何れか一方で行う。視差感の解消という観点では、カラーフィルタ層251(図3)を有する第1液晶表示素子301で平均化処理を実施しても、カラーフィルタ層を有さない第2液晶表示素子302で平均化処理を実施しても、効果は同等である。また、平均化処理を実施する液晶表示素子は、観察者側の液晶表示素子でもよく、観察者から遠い側に存在する液晶表示素子でもよい。
【0041】
また、平均化処理を実施する液晶表示素子が観察者側から遠い側に存在する場合には、第1液晶表示素子301と第2液晶表示素子302との間に光拡散フィルムのように光拡散性を有する光学部品を挿入することで画像処理において適用した平均化処理の距離r’を、光拡散性を有する光学部品により見かけ上拡大することも可能である。この場合のr’は、第1液晶層325と第2液晶層326の間をdとし、光拡散性を有する光学部品の挿入位置を第2液晶層326からd’の距離、光拡散性を有する光学部品の光散乱角度(半値角度)をηとした場合
r’=(d’×tanφ)+((d−d’)×tan(φ+η))
となり、実質的な平均化距離が伸びることになる。このため、画像処理演算を実施する場合には留意が必要である。
【0042】
本発明者らは、積層された2つの液晶表示素子を有する液晶表示部の駆動方式について検討をした結果、カラーフィルタ層を有しない第2液晶表示素子302(図1における136)にて平均化した画像を表示し、第1液晶表示素子301(133)にてカラー表示を行い、これら2つを重ね合わせることで、良好な表示が得られるとの結論を得た。第2液晶表示素子136にて平均化処理した画像を表示する理由は、カラー画像を表示する第1液晶表示素子133にて平均化処理を実施する場合には、平均化処理によって色がぼけ、色の再現域が狭くなることが考えられるためである。
【0043】
図5は、信号制御チップ112内部の構成を示す。信号制御チップ112は、モノクロ画像生成部501、演算処理部(平均化処理実施部)502、タイミング制御部503、505、506、演算処理部504、制御信号発生部507、トランスミッタ508、509を有する。演算処理部504は、動画/静止画を判定する動画判定部114(図1)を兼ねている。また、制御信号発生部507は、第1液晶表示素子133の走査方向切替えを行うモード切替部115を兼ねている。演算処理部504の出力信号は、タイミング制御部505を介し、トランスミッタ509から第1液晶表示素子133へ出力される。また、演算処理部502からの信号は、タイミング制御部506を介し、トランスミッタ508から第2液晶表示素子136へ出力される。
【0044】
信号制御チップ112には、レシーバ111から、画像の同期信号(V−Sync、H−Sync、Dot Clock)が入力される。信号制御チップ112は、制御信号発生部507にて、信号制御チップ112や液晶表示部130との間で同期を取るための信号として再加工を実施する。なお、本実施例では、信号制御チップ112にアルテラ社のFPGAを利用しており、画像を一時格納しておくメモリが不足している。このため、外部に、SDRAMからなる記憶部を装備させた。しかしながら、信号制御チップ112をフルカスタム、又は、DRAM混載型のASICを用いて製造した場合は、画像を内部に取り込むことが可能であるため、本実施例を説明するときには分離して示していない。論理的には、メモリが必要となる部分は、タイミング制御部503、505、506、及び、演算処理部502、504である。ただし、タイミング制御部505、506に必要な容量は多くなく、ラインバッファ程度で十分なため、本実施例ではタイミング制御部505、506の部分では外部のメモリを利用せずFPGA内部で形成したラインバッファを利用することとして実現した。
【0045】
信号制御チップ112は、レシーバ111から、例えば、1原色あたり8ビット、計24ビットの画像信号を入力する。この画像信号は、信号制御チップ112内部で、第1液晶表示素子133で表示すべき画像(カラー画像)に対応した系統と、第2液晶表示素子136で表示すべき画像(モノクロ画像)に対応した系統との2つの経路に分けられる。すなわち、信号制御チップ112に入力された画像信号は、カラー画像の画像信号から単色の階調信号(輝度信号)を生成するモノクロ画像生成部501と、入力側のタイミング信号に従って読み込んだ信号の順番に出力側のタイミング信号により読み出すタイミング制御部503とに入力される。
【0046】
モノクロ画像生成部501は、入力された24ビットのカラー画像の輝度情報に基づいて、例えば8ビットの単色画像を生成する。単色画像の生成では、例えば、各画素におけるR(赤)、G(緑)、B(青)の各原色の階調を調べ、そのうちで最大値をとる階調を、変換後の画素の階調とする。或いは、入力された画像に対してHSV変換(明度、彩度、色相への信号変換)を行い、明度の情報のみを抽出してモノクロ画像へ変換する。また、画像信号のうちのR、G、Bの何れかのみを用いて、その色で単色化する。R、G、Bのうちの何れか1つではなく、R、G、Bのうちの2色に対して演算処理を行って単色画像を生成してもよい。単色画像の階調値(透過率)が高い領域は、画像信号における輝度又は彩度が高い領域に対応している。
【0047】
モノクロ画像生成部501は、単色画像への変換後、透過率が所定の値以上となる画素については透過率を全透過状態とし、それよりも小さい画素については、透過率を、元のカラー画像の透過率に応じた値とする処理を行う。この処理では、例えば、単色化後の画像の各画素の階調をあらかじめ設定されたしきい値と比較し、しきい値以上のときには、その画素の透過率を、一定の値に、望ましくは全透過状態とする(以下では、全透過状態として説明する)。また、しきい値よりも小さいときには、階調変換を行って、各画素の透過率を、設定した透過率を最大値として全遮断状態までの間に再割り当てを実施する。
【0048】
単色画像における所定の透過率以上の透過率を全透過状態に変換する処理は、上記したしきい値処理には限られない。例えば、単色画像に対して、γ値を4.0程度とするγカーブ変換を実施し、透過率がある程度以上に高い領域を全透過状態としてもよい。或いは、ヒストグラム調整を行って、透過率がある程度以上の透過率を全透過状態としてもよい。モノクロ画像生成部501では、透過率が高い領域の透過率をほぼ全透過状態とした単色画像が得られればよく、単色画像生成の手法や、透過率が高い領域の透過率を全透過状態に変換する際の手法としては、上記した以外の手法を採用してもかまわない。
【0049】
演算処理部502は、モノクロ画像生成部501が生成したモノクロ画像に対して、平均化処理を行う。この平均化処理に関しては、特願2006−114523に記載の方法にて実施する。すなわち、注目画素に対して、所定の範囲内(図3における距離rの範囲内)にある画素の画像情報を平均化する。平均化処理では、中心点からの距離に従った加重平均化処理を採用する。その際の荷重分布としては、ガウス分布を用いることができる。平均化処理を行うことにより、単色画像は、エッジがぼけた画像となる。演算処理部502によって平均化処理を施された単色画像は、タイミング制御部506、トランスミッタ508を介して、第2液晶表示素子136に送られる。
【0050】
カラー画像を処理する演算処理部504は、タイミング制御部503を介して入力した、RGB各8ビットの24ビットの画像データ、及び、演算処理部502にて平均化処理が施された単色画像に基づいて、第1液晶表示素子133で表示すべきカラー画像を生成する。演算処理部504は、24ビットのカラー画像データに対して、演算処理部502から出力された単色画像に基づく演算処理を行い、カラー画像信号を生成する。具体的には、カラー画像データの画像信号を、単色画像の輝度信号で除算することにより、輝度が補正された画像信号を生成する。ただし、単色画像の輝度が0階調である場合には、除算を行うことができないので、例外処理を設けて、0での除算が行われないようにする。或いは、単色画像の輝度を所定の値だけ輝度が高くなる方向にシフトして、0での除算が行われないようにしてもよい。演算処理部504にてカラー画像信号を生成する際には、元の画像信号に対して何らかの画像補正処理を別途行ってもよい。演算処理部504が生成したカラー画像は、タイミング制御部505を介してトランスミッタ509から、第1液晶表示素子133に出力される。
【0051】
演算処理部504は、現在のフレームの画像と、1フレーム前の画像とを比較し、画像に変化が生じているか否かを判定する機能も有する。演算処理部504は、例えば、画素全体の5%の変化が1秒続くと、画像が動画へ変化したと判定する。また、画素全体の変化が1%以下となった時間が30秒継続すると、画像が静止画へ変化したと判定する。演算処理部504は、動画への変化、又は、静止画への変化を検出すると、その旨を、制御信号発生部507へ伝える。制御信号発生部507は、演算処理部504により動画への変化が検出されると、垂直ドライバ131(図1)に、走査方向を上から下へ向かう方向へ切り替えるように指示する。また、演算処理部504により静止画への変化が検出されると、垂直ドライバ131に、走査方向を下から上に向かう方向へ切り替えるように指示する。
【0052】
また、演算処理部504は、動画への変化、又は、静止画への変化を検出すると、タイミング制御部505に、画像の送信順序の切替えを指示する。タイミング制御部505は、演算処理部504が動画への変化を検出すると、画像を、通常の送信順序、すなわち第1行目から順に、第1液晶表示素子133に向けて出力する。また、タイミング制御部505は、演算処理部504が静止画への変化を検出すると、画像を、通常の送信順序とは逆の順序、すなわち最終行側から順に、第1液晶表示素子133に向けて出力する。制御信号発生部507が、垂直ドライバ131の走査方向を切り替え、タイミング制御部505が画像の送信順序を切り替えることで、第1液晶表示素子133にて、上側からの画像表示と、下側からの画像表示とが切り替えられる。
【0053】
液晶表示部130では、第1液晶表示素子133は、演算処理部504で生成されたカラー画像によって駆動され、第2液晶表示素子136は、モノクロ画像生成部501で生成され演算処理部502で平均化処理が施された単色画像によって駆動される。第2液晶表示素子136の表示のみを見た場合、輝度が高い部分は全透過状態となっており、その他の部分は、平均化処理によってぼやけた画像となっている。また、第1液晶表示素子133の表示のみを見た場合、第1液晶表示素子133では第2液晶表示素子136での表示輝度に基づいて輝度が補正されているため、第2液晶表示素子136が全透過状態でない箇所では、輝度・彩度が元々の画像とは異なり強調された画像となっている。
【0054】
なお、図5では、画像処理を実施する部分と制御信号発生部507とを同一チップの中に配置し、内部にある制御信号発生部507により、チップ全体の動作タイミングを生成し実行する形としている。しかし、制御信号発生部507は、必ずしも信号制御チップ112の中にある必要はなく、別チップとして独立して制御信号を信号制御チップ112に導入する構成としてもかまわない、また、複数の信号制御チップ112を用意し、これらを連携させることで画像処理動作を実施するような場合においては、特定の信号制御チップ112から制御信号発生部507により生成される同期信号を信号制御チップ112の外部に取り出して別の信号制御チップに入力することにより動作を実施してもよい。
【0055】
本実施例の効果に検証するために、図1に示した画像表示システムを利用して、上記のような画像処理を行った信号を、第1液晶表示素子133及び第2液晶表示素子136にそれぞれ入力し、画像を表示させた。その結果、輝度・彩度に関しては、通常の画像信号を第1液晶表示素子133のみで表示した場合と遜色ない表示が得られた。また、コントラストに関しては、50万:1という高いコントラスト比を得ることができた。斜め視野から観察した際には、第2液晶表示素子136で平均化処理を施したことにより、視差の影響が少なく、良好な表示が得られた。今回用いた液晶表示素子は、単体でのコントラスト比が700:1程度であったが、単体でのコントラスト比が更に高く1000:1のパネルを2枚重ねることで100万:1を超えるコントラストを得ることが可能である。また、更に、重ね合わせる液晶表示素子を3枚以上とすることで、測定限界を超えた高いコントラスト比を得ることも可能である。
【0056】
なお、図1では、画像ソース部100、信号処理部110、及び、液晶表示部130を分離して示したが、これらは別々のハードウェアとして構成されている必要はなく、同一筐体内に存在していてもよい。また、画像ソース部100と信号処理部110とが同一筐体で、液晶表示部130が別筐体となっていてもよい。信号処理部110における画像処理は、ハードウェアによる画像処理だけでなく、CPU等のプロセッサを併用することで演算処理を分散してソフトウェア処理による画像処理を採用することもできる。
【0057】
上記では、信号制御チップ112内の演算処理部502と演算処理部504とにおいて、画像処理を実施する際に、演算処理により画像を生成することを前提として説明したが、画像処理は演算処理に限定されない。例えば、入出力の関係をあらかじめ演算しておき、これをルックアップテーブルに保存し、ルックアップテーブルを用いて演算する構成であってもよい。この場合、たとえば、モノクロ画像生成部501においては、入力されたカラー画像の各ピクセルを構成する各色要素のうち最も高い階調を表示する要素をピックアップするセレクタと、平均化処理を実施する演算部を介してから輝度調整を実施するルックアップテーブルとで、輝度を調整する。この場合のルックアップテーブルは、一組の画像信号から一組の画像信号を出力するため、1次元のルックアップテーブルとなる。このようなルックアップテーブルを利用する際の利点としては、入出力の関係を任意に設定できるため細かい輝度調整が可能であり、演算処理で問題になったような不連続点の発生を抑制することが可能になる。
【0058】
一方、演算処理部504においては、入力されたカラー信号と演算処理部502で作成された1組の画像信号とを用い、画像処理を実施する。この場合、入力されたn次元の画像信号に対して、少なくとも演算処理部502の画像信号が1次元加わるため、演算処理部504においては、演算処理部502で用いたルックアップテーブルよりも少なくとも1次元は高い次元のルックアップテーブルを用いる必要がある。本実施例では、演算処理部504は、画像信号のRGBの各階調値と、演算処理部502で作成された単色画像の階調値とに対して、第1液晶表示素子133にて表示されるべきカラー画像の階調値が得られる4次元ルックアップテーブルを用いて、カラー画像を生成した。また、別の画像処理方法としては、入力されたRGBからなる画像信号を、HSV変換して色相、彩度、明度に分離し、これらのうち明度の信号一組と演算処理部502で作成された単色画像1組をベースとして2次元のルックアップテーブルを構成して画像処理された新しい明度の組合せを生成する。この新しい明度の画像信号に対して、分離していた色相と彩度の信号を融合させて、新たなRGBの階調信号を生成し、この信号をタイミング制御部505とトランスミッタ509を介して第1液晶表示素子133に入力することでカラー表示を実施することもできた。この場合においても、演算処理部に用いられるルックアップテーブルは、2次元となるため演算処理部504におけるルックアップテーブルの次元は、演算処理部502におけるルックアップテーブルの次元よりも1次元高く設定される。
【0059】
なお、上記において、演算処理部502と演算処理部504との双方にルックアップテーブルを実装する必要はなく、演算処理部502は通常の論理演算処理を実施し(次元0)、演算処理部504においてはルックアップテーブルを用いる(次元2)としてもなんら問題はない。本実施例では、第1液晶表示素子133がカラーフィルタ層251(図3)を有したが、平均化処理を施した画像を表示することによる視差感の解消に関しては、カラーフィルタ層は必須の要素ではない。従って、第1液晶表示素子133を、第2液晶表示素子136と同様に、モノクロ型の液晶表示素子として構成し、液晶表示装置を、全体としてモノクロ表示を行う液晶表示装置として構成することもできる。
【0060】
また、第2液晶表示素子では、1ピクセルが、RGBのカラーフィルタ層に対応して3つの領域に分割される例について示したが、カラーフィルタ層の色はR、G、Bの3色には限定されず、RGBYMCのような多色フィルタを用いることもできる。その場合には、1ピクセルをカラーフィルタ層の各色に対応して領域分割すればよい。また、1ピクセルを4つの領域に分割して、各領域を、R、G、G、Bに対応させてもよい。或いは、4つの領域を、RGBの各色に対応する領域と、色を有しない領域(W)とで構成してもよい。
【0061】
本実施例では、液晶表示素子における液晶駆動方式として横方向電界を利用するIPS方式を例に挙げて説明したが、液晶駆動方式はこの方式には限定されず、例えば、垂直配向型(VA)液晶方式、ツイストネマティック型(TN)液晶方式、ベント配向型(OCB)液晶方式など、種々の方式を採用することもできる。図3では、位相差補償層を設けない構造を示したが、液晶表示パネル261、262と、偏光板201〜204との間に、視野角の改善を目的とした位相差補償層を挿入する構造を採用することもできる。位相差補償層を挿入する場合には、液晶層における液晶モードとの組み合わせによって、挿入する位相差補償層の光学特性等を設定すればよい。
【0062】
例えば、第1液晶表示素子133に位相差補償層を挿入する場合であって、液晶表示素子133がIPS方式で駆動される場合には、偏光板201、202と、液晶表示パネル261との間のそれぞれに、屈折率が最も高い方向の屈折率をnx、基板平行面内でnxの方向と直交する方向の屈折率をnyとし、nx及びnyと垂直な方向の屈折率をnzとしたとき、nx≧nz>nyの特性を有する位相差補償層を、nx方向が、偏光板201、202の光吸収軸又は光透過軸と平行になるように挿入する。このようにすることで、液晶表示素子133の視野角特性を改善することができる。また、このとき複数の位相差補償板を組み合わせて、合成したnx,ny,nzの屈折率が上記の式を満たすものを採用しても上記の条件を逸脱するものではなく、同等の効果を得ることが可能となる。
【0063】
また、液晶表示素子133がVA方式で駆動される場合については、nx≧ny>nzの位相差補償層を、nx方向が偏光板201、202の光吸収軸又は光透過軸と平行になるように挿入することで、視野角特性を改善できる。液晶表示素子133がTN方式又はOCB方式で駆動される場合には、負の位相差を有するディスコティック液晶層で構成され、ディスコティック液晶層の軸角度が厚み方向で連続的に変化するWVフィルムを位相差補償層として挿入することで、視野角特性を改善できる。
【0064】
位相差補償層は、液晶表示パネル261、262の片側のみで挿入されていてもよく、或いは、両側で挿入されていてもよい。上記では、位相差補償層の挿入位置を、液晶表示パネル261、262と偏光板201〜204との間としたが、実際には、液晶層231、232と偏光板201〜204との間であればどの位置であってもよい。また、挿入する位相差補償層は1層には限られず、複数の位相差補償層を挿入することもできる。なお、本実施例においては、しきい値以上の階調において第2液晶表示素子の光透過率は、一定の値であることを前提として説明を実施してきたが、厳密に一定ではなく多少の増減(±数%)を適用しても本発明の思想から逸脱するものではない。
【0065】
本実施例においては、画像のスキャン方向を上下方向として説明を実施したが、これは、この方向に固定されるものではなく、左右方向であっても、場合によっては斜め方向であっても本発明の有効性が失われるものではない。また、本実施例では、動画か静止画かにより、画像のスキャン方向を切り替えるとしたが、走査方向を固定した使用も可能である。例えば、テレビのように動画が中心の場合においては、統合型液晶表示装置を構成する各液晶表示素子の走査方向を全て同一方向に固定してもかまわない。また、美術館における展示やレントゲン写真の映像を写すような、固定表示(静止画表示)が中心の場合には、スキャン方向を異なる方向に固定してもかまわない。走査方向を固定する場合は、動画判定部114(図1)での判定結果を動画又は静止画に固定すればよい。
【0066】
なお、本実施例においては、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136において、同一解像度のLCDパネルを用いて実施した場合について述べたが、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136の解像度は完全に同一である必要はない。例えば観察者側に配置される第1液晶表示素子133の解像度が背後にある第2液晶表示素子136の解像度よりも高解像度であってもかまわない。また、逆であっても基本的にかまわない。ただし、このように異なる解像度を利用した場合には、信号制御チップ112の内部のモノクロ画像生成部501を実施する前に画像変換処理が必要になる。また、演算処理部502から出力されたモノクロ画像信号を演算処理部504で利用する場合には、解像度の読み替えが必要になる。
【0067】
また、本実施例においては、信号制御チップ112はFPGA1チップで構成して動作実証を行ったが、この信号制御チップ112は1チップである必要はなく複数チップで構成しても動作が同じ場合においては機能を分割して、その間を外部配線で結んでもなんら問題がない。本実施例では、画像ソース部100から信号処理部110に映像信号が入力された直後にて、動画判定を行う例について示したが、動画判定を行う位置は、上記で説明した位置には限定されない。すなわち、動画判定は、フレームの前後を比較し、変化しているピクセルの比率で判断しているため、映像信号の経路において、どの位置にあっても効果に差はない。上記では、カラー画像を処理する演算処理部504が、動画判定部114を兼ねる構成であったが、モノクロ画像を処理する演算処理部502が動画判定部114を兼ねる構成であってもよい。また、演算処理部502と演算処理部504との双方を用いて、動画判定を行ってもよい。更には、タイミング制御部505、506にて、動画判定を行う構成も可能である。
【0068】
本実施例では、フレーム前後での画素の変化に基づいて動画判定を行ったが、映像に動きがあるところは輝度変化があるので、特定の色信号や、輝度値を用いて動画判定を行っても差し支えない。特定の色信号や輝度値に基づいて動画判定を行う構成では、画像の全てを比較するよりも、消費するメモリ量を低減することができる。従って、コスト的に有利である。また、動画判定部114は、信号制御チップ112内に内蔵されている必要はなく、信号制御チップ112の外部に別途設けてもよい。その場合、制御信号発生部507の信号と同期して、制御信号のみを出力しても問題とはならない。
【0069】
本実施例では、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を逆方向とするとき、第1液晶表示素子133の走査開始位置を最終行とし、第2液晶表示素子136の走査開始位置を第1行目とした。これら走査開始位置は、任意であり、第1行目や最終行には限定されない。2つの液晶表示素子における走査開始位置は、画面中央のラインに対して線対称である必要はなく、例えば、第1液晶表示素子133の走査開始位置を(最終行−5行)目のラインとし、第2液晶表示素子136の走査開始位置を第3行目とすることも可能である。また、双方の液晶表示素子における走査開始位置を同一行として、走査方向を逆方向にすることも可能である。
【0070】
本実施例では、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで、走査方向を互いに逆方向にする。このようにすることで、複数の液晶表示素子を積層した統合型液晶表示装置にて、フリッカの低減が可能である。また、本実施例では、表示すべき画像が動画であるか、静止画であるかを判定し、静止画のときは、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を逆方向とし、動画のときは、走査方向を同じ方向とする。このようにすることで、静止画表示ではフリッカ低減を行いつつ、動画表示時の画像の違和感を回避することができる。
【0071】
続いて、本発明の第2実施例について説明する。第1実施例では、動画判定部114により、フレームの前後での変化に基づいて、動画であるか、静止画であるかを判定し、液晶表示部130の動作モードを切り替えた。本実施例では、画像ソース部100により、画像ソース部100から出力される画像が動画であるか、静止画であるかを示す情報を受け取り、液晶表示部130の動作モードを切り替える。その他は、第1実施例と同様である。
【0072】
例えば、画像ソース部100がパーソナルコンピュータで構成される場合を考えると、アクションゲームやビデオプレーヤーなどの特定アプリケーションが起動されたときは、画像ソース101が出力するデータは、動画中心の画像となる。画像ソース部100は、動画出力を行う特定のアプリケーションが起動されると、動画フラグを、信号処理部110に送信する。このフラグの送信には、USB(Universal Serial Bus)や、RS232Cなどの別途設置された信号線を用いることができる。或いは、ケーブル103を介して送信する映像信号に、動画フラグを含ませてもよい。
【0073】
信号制御チップ112は、動画フラグを受け取っていない状況では、第1液晶表示素子133の走査方向と、第2液晶表示素子136の走査方向とを逆方向に設定する。信号制御チップ112は、動画フラグを受け取ると、動画再生が開始されたと判断し、第1液晶表示素子133の走査方向と、第2液晶表示素子136の走査方向とを同じ方向に設定する。このようにすることで、例えば、動画再生ソフトを起動し、MPEGに代表される動画像の圧縮方式のデコードを開始したときに、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136との走査方向を同じ方向に切り替えることができる。
【0074】
本実施例では、信号処理部110は、画像ソース部100から、表示画像が動画中心となる特定のアプリケーションが起動されたか否かを示す情報(フラグ)を受け取り、受け取ったフラグに従って、第1液晶表示素子133の走査方向を切り替える。このようにする場合も、静止画表示では、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を逆方向としてフリッカ低減を行いつつ、動画表示時には、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を同じ方向とし、画像の違和感を回避することができる。
【0075】
本発明の第3実施例について説明する。上記各実施例では、光源137(図1)に、CCFLやLEDを用いた白色で均一な光を出射する光源を使用することを前提に説明した。本実施例では、光源に、RGBの3つの光を時分割で出力する光源を用いる。この場合、液晶表示部130内の積層された液晶表示素子は、それぞれ、RGBの画面に相当する画像を、時分割で、フィールドシーケンシャル表示で表示する。第1液晶表示素子133及び第2液晶表示素子136を駆動する画像の生成方法は、第1実施例と同様である。走査方向を2つの液晶表示素子で逆向きにすることでフリッカが低減される点は上記各実施例と同様である。また、動画表示時には、2つの液晶表示素子で走査方向を同じ方向とすることで、動画表示時の画像の違和感を開始できる点についても、上記各実施例と同様である。従って、カラー画像の表示形式として、本実施例における表示形式を採用する場合でも、得られる効果は上記各実施例と同様である。
【0076】
本発明の第4実施例について説明する。本実施例では、液晶表示素子の駆動方式として、例えばTN方式のような、印加された電圧により液晶分子の基板に対する角度が変化する駆動方式を採用する。このような駆動方式では、観察者の観察方向によって視野角が変動するという問題がある。これは、液晶分子の基板に対する角度が変化するために、見る角度に依存して液晶分子の複屈折特性が変動し、見える角度が変化することに起因する。このような視野角特性の液晶表示素子を、同じ配置で複数重ね合わせた場合には、重ね合わせた層の数の分だけ、相乗効果で悪化していくことが考えられる。そこで、そのような駆動方式を採用する場合には、隣接する2つの層で、視野角依存性の特性を逆方向とする。このようにすることで、視野角依存性の特性を打ち消し合わせることができ、視野角特性の平均化を図ることができる。
【0077】
なお、上記各実施例では、液晶表示素子内部の非線形素子にTFTを用いる例について説明したが、これには限られない。例えば、非線形素子として、薄膜ダイオード(TFD)を用いることもできる。また、解像度が低い場合などでは、液晶表示素子を単純マトリクス駆動で駆動してもよい。上記各実施例の液晶表示装置は、高コントラスト比を実現できるため、高コントラストな画像を要求される画像診断装置の映像表示部や、放送局などで用いるモニター、映画を上映するような暗室で映像を提供する場所で用いる電子機器の液晶表示部として用いるときに、大きな効果を有する。
【0078】
本発明の第5実施例について説明する。第1実施例において、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を同一方向とする場合は、フリッカ強度を低減することはできなかった。本実施例では、走査開始位置を、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで異なる位置とすることで、走査方向を同一方向としつつ、フリッカ低減を図る。具体的には、第1液晶表示素子133の走査開始位置を第1行目のラインとし、第2液晶表示素子136の走査開始位置をパネル中央のラインとする。この場合、画像半分に相当する間隔を保った状態で、第1液晶表示素子133及び第2液晶表示素子136を走査していくことになる。
【0079】
第1液晶表示素子133及び第2液晶表示素子136の各画素の電圧は、第1実施例で説明したように、書込み開始時点では、
Vs=Qs/C1
であり、フレーム終了時は、
Ve=(Qs−Qr)/C1
となる。VsからVeへの電圧低下が直線的に生じているとすると、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とでは、画素への書込みが画面半分に相当する期間だけずれるため、第1液晶表示素子133の画素の電圧がVsとVeの中間となったときに、第2液晶表示素子136の画素の電圧がVsとなる。逆に、第2液晶表示素子136の画素の電圧がVsとVeの中間となったときに、第1液晶表示素子133の画素の電圧はVsとなる。
【0080】
上記のように、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで、走査開始位置を画面半分だけずらすことで、走査開始位置を同一とした場合に比して、画素の電圧の差を半分にすることができる。従って、各画素にて、透過光の強さの変動値は、走査開始位置を同一とする場合の半分となる。また、フリッカの周波数も2倍となるため、基本の駆動周波数が60Hzだった場合は、120Hz相当となる。フリッカの周波数が上がることで、人間の目における感度も低下する。
【0081】
本実施例では、走査開始位置を、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで異なる位置とする。このようにすることで、走査開始位置を同一にした場合に比して、各画素での透過光強度の変動幅を抑えることができ、フリッカの周波数を上げることで、フリッカ感を抑制することが可能となる。上記では、第1液晶表示素子133と第2液晶表示素子136とで走査方向を同一にする場合を説明したが、走査方向を逆方向とする場合においても有効である。つまり、走査方向を逆方向とする場合も、走査開始位置を異なる位置とすることでフリッカ周波数を上げることができるため、フリッカ感の抑制が可能である。
【0082】
なお、上記各実施例では、演算処理部504にて、RGB各8ビットの画像データから計24ビットのカラー画像を生成したが、入力データと出力データのビット数は、これには限定されない。例えば、各液晶表示素子単体での表示階調数をmとするとき、積層されたn枚の液晶表示素子にて表示できる最大階調はm×nとなる。従って、入力画像データとして、m以上で、m以下の階調の画像データを用い、このデータから、演算処理部504にて、階調mのカラー画像を生成してもよい。
【0083】
上記各実施例では、説明の簡略化のために、液晶表示部130が有する液晶表示素子を2枚としているが、3枚以上の液晶表示素子を用いてもよい。液晶表示素子の枚数は任意であり、液晶表示素子の枚数をn枚(nは2以上の整数)としても、本発明による基本的な効果は損なわれることはない。液晶表示素子の枚数をn枚とするときは、n枚の液晶表示素子のうちで、カラーフィルタを有する液晶表示素子は、1枚とすることが望ましい。カラーフィルタ層を有する液晶表示素子を1枚とすることで、物理的に視野を動かしても、複数のカラーフィルタ層が存在する場合のように、透過輝度が見る角度によって大きく変わることはない。
【0084】
また、n枚の液晶表示素子を積層する場合は、n枚のうちの少なくとも1枚の走査方向を、他の液晶表示素子の走査方向と逆方向にする。例えば、3枚の液晶表示素子を積層する場合は、観察者に最も近い側の液晶表示素子、及び、光源に最も近い側の液晶表示素子の走査方向を上から下に向かう方向とし、真ん中の液晶表示素子の走査方向を、下から上に向かう方向とする。この場合、3枚の液晶表示素子のうちの2枚における走査方向を上から下に向かう方向とし、残り1枚における走査方向を下から上に向かう方向とすることで、フリッカを低減できる。
【0085】
以上、本発明を、その好適な実施例に基づいて説明したが、本発明の液晶表示装置及び電子表示装置は、上記実施例にのみ限定されるものではなく、平均化処理の前段階や後段階でγ補正処理を実施するなどの画像処理を追加するなど、上記実施例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施例の液晶表示装置において統合液晶表示素子のスキャン方向が異なる場合の構成と動作を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施例の液晶表示装置において統合液晶表示素子のスキャン方向が同じとなる場合の構成と動作を示すブロック図。
【図3】液晶表示部の断面構造を示す模式断面図。
【図4】液晶表示部の断面と、液晶表示素子内を進行する光の様子を示す模式断面図。
【図5】信号制御チップ内部の構成を示す機能ブロック図。
【図6】従来例。
【符号の説明】
【0087】
100:画像ソース部
101:画像ソース
102:トランスミッタ
103、116、117:ケーブル
110:信号処理部
111:レシーバ
112:信号制御チップ
130:液晶表示部
131、134:垂直ドライバ
132、135:水平ドライバ
133:第1液晶表示素子
136:第2液晶表示素子
137:光源
140、141:走査方向
201〜204:偏光板
211〜214、321〜324:透明基板
231、232、325、326:液晶層
241:面発光光源
251:カラーフィルタ層
261、262:液晶表示パネル
501:モノクロ画像生成部
502:演算処理部1
503、505、506:タイミング制御部
504:演算処理部2
507:制御信号発生部
508、509:トランスミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の液晶表示素子と、該複数の液晶表示素子に背面側から光を照射する光源とを有し、
前記複数の液晶表示素子のうちの少なくとも1つの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置の少なくとも一方が、残りの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置とは異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
画像ソース部から入力された画像信号に基づいて、前記複数の液晶表示素子のそれぞれを駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記駆動信号生成部は、前記画像信号に対し、前記複数の液晶表示素子のそれぞれに対応した画像処理を実施し、前駆駆動信号を生成することを特徴とする、請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの液晶表示素子における画像の走査方向が、残りの液晶表示素子における画像の走査方向と逆方向であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
積層された複数の液晶表示素子と、該複数の液晶表示素子に背面側から光を照射する光源とを有した液晶表示装置において、
前記複数の液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置を同一とする第1の動作モードと、前記少なくとも1つの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置の少なくとも一方が、残りの液晶表示素子における画像の走査方向及び走査開始位置と異なる第2の動作モードとを切り替えるモード切替部を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記モード切替部は、第1の動作モードと第2の動作モードとの間で動作モードを切り替えるときは、各液晶表示素子にて画面全体を書き終えた後の空白時間に、前記走査方向及び走査開始位置を切り替えることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
画像が動画であるか静止画であるか否かを判定する動画判定部を備えており、前記モード切替部は、前記動画判定部が動画と判定すると、動作モードを第1の動作モードとし、前記動画判定部が静止画であると判定すると、動作モードを第2の動作モードとすることを特徴とする、請求項5又は6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記動画判定部は、フレーム前後にて、画像全体のうちでどの程度の画素に変化が生じたかに基づいて、動画であるか静止画であるかを判定することを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記動画判定部は、フレーム前後にて、画素全体のうちの第1の割合の画素以上の画素に変化が生じているときに動画と判定し、画素全体のうちの、前記第1の割合よりも小さい第2の割合の画素以下の画素に変化が生じているときに静止画と判定することを特徴とする、請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記動画判定部は、前記第1の割合以上の画素に変化が生じている状態が第1の時間継続しているときに動画と判定し、前記第2の割合以下の画素に変化が生じている状態が第2の時間継続しているときに静止画と判定することを特徴とする、請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶表示素子のうちの何れか1つがカラーフィルタを有することを特徴とする、請求項1〜10の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記複数の液晶表示素子が、モノクロ表示の液晶表示装置であることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記複数の液晶表示素子は、相互に等しいピクセルサイズ及び解像度を有していることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記複数の液晶表示素子のそれぞれは、配向膜が形成された面を対向させて間隔を隔ててほぼ平行に配置された一対の透明基板間に液晶が封入された液晶表示パネルと、該液晶表示パネルを挟み込むように配置された一対の偏光板とを有することを特徴とする、請求項1〜13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
隣接する2つの液晶表示素子のうちの光入射側の液晶表示素子における光出射側の偏光板の光学軸と、光出射側の液晶表示素子における光入射側の偏光板の光学軸とが、ほぼ平行に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
隣接する2つの液晶表示素子のうちの光入射側の液晶表示素子における光出射側の偏光板と、光出射側の液晶表示素子における光入射側の偏光板とが、1枚の偏光板に統合されていることを特徴とする、請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記複数の液晶表示素子を構成する液晶表示パネルのそれぞれは、前記透明基板上に形成されたx方向の電極、前記x方向に直交するy方向の電極、及び、共通電極と、前記x方向の電極と前記y方向の電極との交点付近に形成された画素電極と、前記x方向の電極、前記y方向の電極、及び、前記画素電極に接続された3端子素子とを有し、駆動信号により擬似的なスタティック駆動が実施できるアクティブマトリクス駆動により駆動されることを特徴とする、請求項14〜16の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記複数の液晶表示素子を構成する液晶表示パネルのそれぞれは、前記一対の透明基板のうちの一方に形成されたx方向の電極と、他方に形成されたx方向に直交するy方向の電極と、何れか一方の透明基板に形成された画素電極と、該画素電極が形成された透明基板上に形成された、前記x方向の電極又は前記y方向の電極と前記画素電極とに接続された2端子非線形素子とを有し、アクティブマトリクス駆動により駆動されることを特徴とする、請求項14〜16に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
前記液晶表示素子を2枚備え、該2枚の液晶表示素子のうちの一方に供給する駆動信号は、画像ソース部から入力する画像信号に対して平均化処理がなされた信号であり、他方に供給する駆動信号は、前記画像信号と前記平均化処理がなされた駆動信号とから演算処理又はルックアップテーブルを適用して生成された画像信号であることを特徴とする、請求項1〜18の何れか一に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか一に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−31420(P2009−31420A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193453(P2007−193453)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】