説明

液晶表示装置用配向膜の形成方法、液晶表示装置の製造方法、及び液晶表示装置

【課題】ポリアミック酸からなる配向膜とポリイミドからなる配向膜とが積層されてなるハイブリッドタイプの配向膜を、材料設計などについて大きな制約を受けることなく高い自由度で形成することができる、液晶表示装置用配向膜の形成方法を提供する。
【解決手段】溶剤にポリアミック酸を溶解してなる第1の液晶配向膜形成用組成物61Aを、基板上52aに塗布し、第1の液晶配向膜層61aを形成する工程と、溶剤にポリイミドを溶解してなる第2の液晶配向膜形成用組成物61Bを、第1の液晶配向膜層61a上に塗布し、第2の液晶配向膜層61bを形成する工程と、第1の液晶配向膜層61aと第2の液晶配向膜層61bとを加熱焼成し、ポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aと、ポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bとが積層されてなる複合液晶配向膜60を形成する工程と、を有する液晶表示装置用配向膜の形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用配向膜の形成方法、液晶表示装置の製造方法、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置における液晶配向膜の形成方法としては、フレキソ印刷法やスピンコート法による方法が一般的である。しかし、フレキソ印刷法では版のメンテナンスが煩雑であり、また、版にインクを行き渡らせるために必要以上のインクを使用することから、インクの無駄が多いといった欠点があった。一方、スピンコート法にあっても、大量のインクを必要とするものの、実際に膜形成に供される材料は投入材料の10%程度であり、残りの90%程度は廃棄されてしまうことから、やはりインクの無駄が多いといった欠点があった。
【0003】
このような背景のもとに、近年では、液晶配向膜の形成方法として、インクジェット法に代表される液滴吐出法を用いることが提案されている。液滴吐出法は、必要な箇所に必要な量のインクを配することができることから、材料(インク)の無駄が少なく、したがって材料コストの点などで有利であり、近年特に注目されている。
【0004】
ところで、一般に液晶配向膜を形成するための液晶配向膜形成用組成物としては、ポリアミック酸やポリイミド等の液晶配向膜形成用材料を適当な溶剤に溶解した溶液(液晶配向膜形成用組成物)が用いられている。そして、この溶液(液晶配向膜形成用組成物)を前記したフレキソ印刷法や液滴吐出法などによって基板(液晶配向膜形成面)上に塗布し、さらに乾燥して塗膜とした後、この塗膜に液晶配向能を付与することで液晶配向膜を形成している。
【0005】
すなわち、一般に液晶配向膜は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を脱水閉環(イミド化反応)させて形成したポリアミック酸系の配向膜、あるいは、可溶性のポリイミドを溶剤に溶解した溶液を用い、この溶液から得られた塗膜を乾燥し溶剤を除去することで形成したポリイミド系の配向膜からなっている。このような配向膜は、例えばポリアミック酸系の配向膜は密着性に優れ、ポリイミド系の配向膜は液晶分子にプレチルト角を付与するプレチルト発現性に優れているなど、それぞれに長所と短所を有し、したがって要求される性状に応じて適宜に使い分けられている。
【0006】
また、このようなポリアミック酸系の配向膜の長所とポリイミド系の配向膜の長所とを共に備えるものとして、イミド基を含有したポリアミック酸からなる液晶配向剤によって形成される配向膜も知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、ポリアミック酸と可溶性ポリイミドとを混合し、この混合液を塗布し乾燥することで得られる、ハイブリッドタイプの配向膜も知られている。このハイブリッドタイプの配向膜は、混合液を塗布した後の乾燥工程中において、相対的に表面張力の高いポリアミック酸が基板側に移動(流動)し、表面張力の低いポリイミドが表面側に移動(流動)することで、ポリアミック酸からなる配向膜とポリイミドからなる配向膜とが積層されたような構造となる。
【特許文献1】特開平9−185064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1に記載された液晶配向剤から形成される配向膜は、イミド基を含有したポリアミック酸から形成される単一層となるため、例えばポリアミック酸系の配向膜の長所である密着性と、ポリイミド系の配向膜の長所であるプレチルト発現性とを共に発揮できるものの、基板との接触面にイミド基が存在し、また、液晶との接触面にポリアミック酸由来の基が存在することなどから、前記の密着性やプレチルト発現性をより良好に発揮させるには至っていない。
また、この配向膜を形成するための前記液晶配向剤は、予めポリイミドの前駆体(テトラカルボン酸二無水物)とポリアミック酸の前駆体(イミド基含有ジアミン化合物)とを反応させてイミド基含有ポリアミック酸を形成し、これを用いる必要がある。しかしながら、このように予めイミド基含有ポリアミック酸を形成しておくのでは、目的とする特性を得るための材料設計が難しいといった問題がある。
また、前記ハイブリッドタイプの配向膜を形成する場合でも、やはりポリアミック酸と可溶性ポリイミドとを混合して混合液を調製する必要があることから、その混合比や材料の相性、溶剤に対する固形分濃度など、材料設計に多くの制約があり、目的とする特性を発揮し得る配向膜の形成が困難である。
【0008】
また、配向膜は当然絶縁性である必要があるが、絶縁性が高すぎると電荷を貯めてしまって焼きつきが生じるおそれがあり、したがって膜厚を厚くしたいとの要望がある。しかしながら、例えばフレキソ印刷法で塗布する場合、通常、フレキソ印刷法では最大で100nm程度の厚さにしか配向膜を形成できないため、前記の要望に応えられないのが実状である。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、例えばポリアミック酸からなる配向膜とポリイミドからなる配向膜とが積層されてなるハイブリッドタイプの配向膜を、材料設計などについて大きな制約を受けることなく高い自由度で形成することができる液晶表示装置用配向膜の形成方法と、この方法を用いた液晶表示装置の製造方法、及び液晶表示装置を提供することを第1の目的としている。また、形成する配向膜の膜厚制御を容易にして、厚膜化も可能にする液晶表示装置用配向膜の形成方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液晶表示装置用配向膜の形成方法は、第1の液晶配向膜形成用組成物を、基板上に塗布し、第1の液晶配向膜層を形成する工程と、
第2の液晶配向膜形成用組成物を、前記第1の液晶配向膜層上に塗布し、第2の液晶配向膜層を形成する工程と、
を有し、前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層とが積層されてなる複合液晶配向膜を形成することを特徴としている。
【0011】
この液晶表示装置用配向膜の形成方法によれば、基板上に第1の液晶配向膜形成用組成物を塗布して第1の液晶配向膜層を形成し、さらにその上に第2の液晶配向膜形成用組成物を塗布して第2の液晶配向膜層を形成することにより、例えばポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜とポリイミドからなる第2の液晶配向膜とが積層されてなる複合液晶配向膜、すなわちハイブリッドタイプの配向膜を形成するようにしている。したがって、基板側にポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜を形成することによって特にその密着性をより良好に発揮させることができ、また、表面側にポリイミドからなる第2の液晶配向膜を形成することによって特にそのプレチルト発現性をより良好に発揮させることができる。
また、第1の液晶配向膜形成用組成物と第2の液晶配向膜形成用組成物とはそれぞれ別に塗布するので、各組成物の材料設計については、ポリアミック酸と可溶性ポリイミドとを混合して混合液を調製する場合のように、ポリアミック酸系の固形分とポリイミド系の固形分との混合比や相性などについて、考慮する必要がなくなる。したがって、各組成物についての材料設計に対する制約を少なくして設計自由度を高めることができる。
【0012】
また、前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程とでは、前記の各液晶配向膜形成用組成物の塗布を、液滴吐出法で行うのが好ましい。
一般に、フレキソ印刷法では一度塗りしかできず、したがって前記したように最大で100nm程度の厚さにしか配向膜を形成することができない。これに対し、液滴吐出法では吐出量を調整したり重ね塗りを行うことで形成する配向膜の膜厚を容易に制御できるため、形成する配向膜を容易に厚膜化することができる。また、特に本発明では、第1の液晶配向膜層を形成する工程と、第2の液晶配向膜層を形成する工程とを別にしているので、形成する第1の液晶配向膜と第2の液晶配向膜とをそれぞれ所望の厚さに形成することができる。
【0013】
また、前記液晶表示装置用配向膜の形成方法においては、前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程との間に、前記第1の液晶配向膜層を乾燥して前記第1の液晶配向膜形成用組成物中の溶剤を除去する工程を有していてもよい。
このようにすれば、第1の液晶配向膜層から溶剤が除去されて第1の液晶配向膜層は流動性がほとんどなくなるので、これの上に第2の液晶配向膜形成用組成物を塗布して第2の液晶配向膜層を形成しても、その界面で僅かに第1の液晶配向膜層の固形分と第2の液晶配向膜形成用組成物とが混じり合うだけで、第1の液晶配向膜層はその下層側が第1の液晶配向膜層の固形分のみで形成されたままとなる。したがって、その後第1の液晶配向膜層と第2の液晶配向膜層とを例えば加熱焼成することにより、第1の液晶配向膜層はその下層側が第1の液晶配向膜となる。また、前記の界面において第1の液晶配向膜層の固形分と第2の液晶配向膜形成用組成物とが混じり合った部分には、これら材料の共重合体が形成され、これによって第1の液晶配向膜と第2の液晶配向膜との間は、前記共重合体が介在することでより良好に密着するようになる。
【0014】
また、前記液晶表示装置用配向膜の形成方法においては、前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層とを加熱焼成する工程を有しているのが好ましい。
また、前記液晶表示装置用配向膜の形成方法においては、前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程との間に、前記第1の液晶配向膜層を加熱焼成して前記第1の液晶配向膜を形成する工程を有していてもよい。
このようにすれば、第1の液晶配向膜層を第1の液晶配向膜とすることでこの第1の液晶配向膜から流動性がなくなるので、これの上に第2の液晶配向膜形成用組成物を塗布して第2の液晶配向膜層を形成しても、その界面で僅かに第1の液晶配向膜が溶解し、その固形分と第2の液晶配向膜形成用組成物とが混じり合うだけで、第1の液晶配向膜はその下層側が配向膜のままとなる。したがって、その後この配向膜(第1の液晶配向膜層)と第2の液晶配向膜層とを加熱焼成しても、第1の液晶配向膜層からなる第1の液晶配向膜は、その下層側が第1の液晶配向膜のままとなる。また、前記の界面において第1の液晶配向膜が溶解し、第1の液晶配向膜層の固形分と第2の液晶配向膜形成用組成物とが混じり合った部分には、共重合体が形成される。よって、第1の液晶配向膜と第2の液晶配向膜との間は、前記共重合体が介在することでより良好に密着するようになる。
【0015】
また、前記液晶表示装置用配向膜の形成方法においては、前記第1の液晶配向膜形成用組成物中の溶剤は、表面張力が32mN/m以上の第1有機溶剤Aと、表面張力が32mN/m未満の第2有機溶剤Bと、を含む混合溶剤であるのが好ましい。
基板(液晶配向膜形成面)に対する液晶配向膜形成用組成物の濡れ性は、該組成物中に配合される溶剤(溶媒)の種類によって大きく変化する。したがって、液晶配向膜形成用組成物の濡れ性を所望の濡れ性に調整しようとした場合、溶剤の選択が非常に重要となる。特に、配向剤にはその側鎖に長いアルキル基が付加されることがあることから、これの基板に対する濡れ性が非常に悪く、したがって溶剤の選択がより重要となる。
【0016】
一般に、表面張力が大きい溶剤は濡れ性が小さく、表面張力が小さい溶剤は濡れ性が大きい。したがって、前記の第1有機溶剤Aは一般的に濡れ性が小さく、第2有機溶剤Bは一般的に濡れ性が大きくなる。よって、特に基板に対して濡れ性を高くしたい場合、濡れ性が大きい第2有機溶剤Bを主に配合すればよいことになる。ところが、濡れ性が大きい第2有機溶剤Bは、一般に溶質である液晶配向膜形成材料(ポリアミック酸)の溶解性が低く、貧溶媒に分類されており、したがって、液晶配向膜形成材料をより良好に溶解させるためには、液晶配向膜形成材料に対する良溶媒である、第1有機溶剤Aを併用する必要がある。
このように、一般的に良溶媒であって濡れ性が小さい第1有機溶剤Aと、一般的に貧溶媒であって濡れ性が大きい第2有機溶剤Bとを含有する混合溶剤を用いているので、特に濡れ性が大きい第2有機溶剤Bを用いたことにより、縦スジムラはもちろん、得られる第1の液晶配向膜がエッジ部分でしみ上がるといった不都合が抑えられ、また、濡れ性が小さい第1有機溶剤Aを用いたことで、濡れ広がりすぎて隣り合う液滴どうしが互いにくっつき、得られる第1の液晶配向膜が所望の厚さで均一に形成されなくなるおそれも軽減される。
なお、前記第1の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリアミック酸を溶解してなるものであってもよい。
前記第2の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリイミドを溶解してなるものであってもよい。
また、前記第1の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリイミドを溶解してなるものであってもよい。
前記第2の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリアミック酸を溶解してなるものであってもよい。
【0017】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、前記の液晶表示装置用配向膜の形成方法により、液晶配向膜を形成することを特徴としている。
この製造方法によれば、基板に対して良好な密着性を有し、液晶分子に対して良好なプレチルト発現性を有するハイブリッドタイプの配向膜を、材料設計などについて大きな制約を受けることなく高い自由度で形成することができ、したがって高品質の液晶表示装置を低コストで効率よく製造することができる。
また、本発明の液晶表示装置は、第1の液晶配向膜層と第2の液晶配向膜層が積層されてなる複合液晶配向膜を有する液晶表示装置であって、前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層は、体積抵抗率が異なることを特徴としている。
前記第1の液晶配向膜層は、体積抵抗率が10E13Ω・cm以上であるのが好ましい。また、前記第2の液晶配向膜層は、液晶と接しており、かつ、体積抵抗率が前記第1の液晶配向膜層の10倍以上であるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の液晶表示装置用配向膜の形成方法に用いる、第1の液晶配向膜形成用組成物と第2の液晶配向膜形成用組成物とについて説明する。
これら第1の液晶配向膜形成用組成物(以下、第1の組成物と記す)と第2の液晶配向膜形成用組成物(以下、第2の組成物と記す)とは、特に液滴吐出装置を用いた液滴吐出法によって液晶配向膜を形成する際に好適に用いられるインクであって、いずれも、溶剤に後述する液晶配向膜形成用材料を溶解してなるものである。ここで、前記溶剤としては、特に第1の組成物においては、表面張力が32mN/m以上の第1有機溶剤Aと、表面張力が32mN/m未満の第2有機溶剤Bとを含む混合溶剤が好適に用いられる。また、第2の組成物においても、同様に前記混合溶媒が好適に用いられる。
【0019】
まず、前記の混合溶剤の具体例について説明する。
(混合溶剤)
第1の組成物、第2の組成物においては、液晶配向膜形成用材料を溶解する溶媒として、前記したように表面張力が32mN/m以上の第1有機溶剤Aと、表面張力が32mN/m未満の第2有機溶剤Bとが用いられる。すなわち、これら第1有機溶剤Aと第2有機溶剤Bとが混合されて混合溶剤が形成され、この混合溶剤が用いられる。
【0020】
第1有機溶剤Aとしては、非プロトン性極性溶剤又はフェノール系溶剤であり、表面張力が32mN/m以上の溶剤の少なくとも一種が選択されて用いられる。非プロトン性極性溶剤としては、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、ラクトン系溶媒、環状カーボネート系溶媒、イミダゾリジノン系溶媒、エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。中でも、スジムラがなく、平滑性に優れる高品質な液晶配向膜を効率よく形成できる観点から、アミド系溶媒、スルホキシド系、ラクトン系溶媒の使用が好ましい。
【0021】
アミド系溶媒としては、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
ラクトン系溶媒としては、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
環状カーボネート系溶媒としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレンが挙げられる。
イミダゾリジノン系溶媒としては、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
【0022】
また、フェノール系溶媒としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール;o−キシレノール、m−キシレノール、p−キシレノール等のキシレノール;フェノール;o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール等のハロゲン化フェノール;等が挙げられる。
【0023】
これらの溶剤は、後述する液晶配向膜形成材料に対してより良好な溶解性を有する良溶媒であり、したがってこれらのうちの少なくとも一種を用いることにより、液晶配向膜形成材料に対する混合溶剤のより良好な溶解性を確保することができる。
ここで、このように表面張力が32mN/m以上であって表面張力が比較的大きい第1有機溶剤Aは、液晶配向膜の形成面となる基板表面や、先に形成した液晶配向膜(第1の液晶配向膜)に対して濡れ性が小さいものとなる。したがって、この第1有機溶剤Aだけしか配合しないと、これのみを配合した組成物は基板表面等に対して濡れ性が悪く、十分な成膜ができなくなってしまうおそれがある。
【0024】
そこで、本発明に係る第1の組成物においては、前記混合溶剤として、表面張力が32mN/m未満と比較的小さく、したがって濡れ性の良い第2有機溶剤Bを含有したものが用いられている。また、第2の組成物においても同様である。第2有機溶剤Bとしては、前記したように表面張力が32mN/m未満の溶剤の少なくとも一種が選択され、用いられる。
【0025】
具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
これらの溶剤は、後述する液晶配向膜形成材料に対しては良好な溶解性を示さず、したがって貧溶媒となるものの、前記したように基板表面等に対しての濡れ性が大きいことから、前記第1の組成物、第2の組成物の濡れ広がり不足に起因する縦スジムラや、形成した液晶配向膜のエッジ部分におけるしみ上がり(隆起)を防止して得られる液晶配向膜を所望の厚さで均一に形成することができる。
【0027】
このような第2有機溶剤Bの、前記混合溶剤全体に占める混合割合としては、1重量%以上50重量%以下であるのが好ましい。濡れ性が大きい第2有機溶剤Bを1重量%以上配合することで、液晶配向膜形成用組成物の基板(液晶配向膜形成面)に対する良好な濡れ性を確保することができ、これによりスジムラがなく、均質で平坦な液晶配向膜を形成することが可能となる。また、50重量%以下とすることで、貧溶媒である第2有機溶剤Bが混合溶剤中の過半を占めることがなく、これにより液晶配向膜形成材料に対する混合溶剤の良好な溶解性を確保し、良好な成膜性を得ることができる。
【0028】
(液晶配向膜形成用材料)
次に、前記混合溶剤に溶解される、固形分となる液晶配向膜形成用材料について説明する。
(i)ポリアミック酸
本発明に係る液晶配向膜形成用組成物のうち、第1の組成物には、液晶配向膜形成用材料としてポリアミック酸が用いられる。すなわち、以下の式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体が用いられる。
【0029】
【化1】

(式中、Pは4価の有機基であり、Qは2価の有機基を表す。)
【0030】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
ポリアミック酸の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3'−(テトラヒドロフラン−2',5'−ジオン)、下記式(1)及び(2)で示される化合物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0031】
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立して芳香環を有する2価の有機基を表す。)
【0032】
ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3',4,4'−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(3)〜(6)で表されるステロイド骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
【化3】

【0034】
ポリアミック酸の合成に用いるジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノベンズアニリド、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4'−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノ−5,5'−ジメトキシビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、1,4,4'−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4'−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2'−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4'−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;
【0035】
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族及び脂環式ジアミン;
【0036】
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン等の、分子内に2つの1級アミノ基及び該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;式(7)
【0037】
【化4】

(式中、R10〜R13は、それぞれ独立して炭素数1〜12の炭化水素基を表し、p、rはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)で示されるジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。これらのジアミンは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、本発明組成物にプレチルト角発現性を付与したい場合には、前記式(I)におけるQ及び/又は前記式(II)におけるQの一部又は全部が、下記式(8)及び(9)で表される少なくとも一種の基であることが好ましい。
【0039】
【化5】

(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−又はアリーレン基であり、R14は、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基又は炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基である。)
【0040】
【化6】

(式中、X、Xはそれぞれ独立して、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−又はアリーレン基であり、R15は、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基である。)
【0041】
前記式(8)において、R14で表される炭素数10〜20のアルキル基としては、例えば、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等が挙げられる。
【0042】
また、前記式(8)におけるR14、及び前記式(9)におけるR15で表される炭素数4〜40の脂環式骨格を有する有機基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン等のシクロアルカン由来の脂環式骨格を有する基;コレステロール、コレスタノール等のステロイド骨格を有する基;ノルボルネン、アダマン
タン等の有橋脂環式骨格を有する基等が挙げられる。なお、前記脂環式骨格を有する有機基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子や、フルオロアルキル基、好ましくはトリフルオロメチル基で置換された基であってもよい。
【0043】
さらに、前記式(8)におけるR14で表される炭素数6〜20のフッ素原子を有する有機基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の炭素数6以上の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数6以上の脂環式炭化水素基;フェニル基、ビフェニル基等の炭素数6以上の芳香族炭化水素基等の有機基における水素原子の一部又は全部を、フッ素原子又はトリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0044】
また、前記式(8)及び(9)におけるX〜Xのアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0045】
前記式(8)で表される基を有するジアミンの具体例としては、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、下記式(10)〜(15)で表される化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0046】
【化7】

【0047】
また、前記式(9)で表される基を有するジアミンの具体例としては、下記式(16)〜(18)で表されるジアミンを好ましいものとして挙げることができる。
【0048】
【化8】

【0049】
特定ジアミンの全ジアミン量に対する使用割合は、発現させたいプレチルト角の大きさによっても異なるが、TN型、STN型液晶表示素子の場合には0〜5モル%、垂直配向型液晶表示素子の場合には5〜100モル%が好ましい。
【0050】
ポリアミック酸は、上述したテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、適当な有機溶媒中、通常−20℃〜+150℃、好ましくは0〜100℃で反応させることにより、製造することができる。
【0051】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、より好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
【0052】
ポリアミック酸の合成反応に用いる有機溶媒としては、ポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒;等が挙げられる。
【0053】
有機溶媒の使用量(α)は、通常、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0054】
なお、前記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒を、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。
【0055】
ポリアミック酸の貧溶媒としては、前記、液晶配向膜形成用材料の貧溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
ポリアミック酸を含む反応液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することにより、ポリアミック酸を単離することができる。
また、得られたポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回又は数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0057】
(ii)イミド化重合体(ポリイミド)
また、本発明に係る液晶配向膜形成用組成物のうち、第2の組成物には、液晶配向膜形成用材料としてイミド化重合体(ポリイミド)が用いられる。すなわち、以下の式(II)で示される繰り返し単位を有する重合体が用いられる。
【0058】
【化9】

(式中、Pは4価の有機基であり、Qは2価の有機基を表す。)で示される繰り返し単位から選ばれる、少なくとも一種を有する重合体であるのが好ましい。
【0059】
イミド化重合体は、前記ポリアミック酸を、公知の方法、例えば特開2003−295195号公報に記載された方法により、脱水閉環させることで得ることができる。なお、イミド化重合体は、繰り返し単位の100%が脱水閉環していなくてもよく、全繰り返し単位におけるイミド環を有する繰り返し単位の割合(以下、「イミド化率」ともいう。)が100%未満のものであってもよい。
【0060】
イミド化重合体のイミド化率は特に制限されないが、好ましくは40モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。イミド化率が40モル%以上の重合体を用いることにより、残像消去時間の短い液晶配向膜が形成可能な液晶配向膜形成用組成物を得ることができる。
【0061】
第2の組成物において用いる重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等を反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物等が挙げられる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン等が挙げられる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
なお、このような第1の組成物、第2の組成物のうち、特に第1の組成物には、基板表面に対する接着性を向上させる目的で、前記混合溶剤及び液晶配向膜形成用材料の他に、官能性シラン含有化合物又はエポキシ基含有化合物を含有させてもよい。
用いる官能性シラン含有化合物、エポキシ基含有化合物としては、特に制限なく、従来公知のものを使用することができる。これら官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物の配合割合は、液晶配向膜形成用材料100重量部に対して、通常、40重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0063】
そして、このような第1の組成物、第2の組成物は、前記液晶配向膜形成用材料及び所望により官能性シラン含有化合物等を、前記混合溶媒に溶解又は分散、好ましくは溶解させることによって製造することができる。
【0064】
第1の組成物、第2の組成物における、前記液晶配向膜形成用材料からなる固形分の濃度については、粘性や表面張力等を考慮して選択されるが、好ましくは1重量%以上10重量%以下の範囲とされる。固形分濃度が1重量%未満であると、得られる配向膜の膜厚が薄くなりすぎ、良好な液晶配向膜とならなくなるおそれがあるからである。また、固形分濃度が10重量%を超えると、得られる配向膜の膜厚が厚くなりすぎ、やはり良好な液晶配向膜とならなくなるおそれがあるとともに、液晶配向膜形成用組成物の粘性が増大し、液滴吐出法による吐出性が低下するからである。
【0065】
また、これら第1の組成物、第2の組成物の粘度については、特に制限されないものの、3mPa・s以上20mPa・s以下(20℃)の範囲に調整しておくのが好ましい。この範囲に粘度を調整することにより、流動性が良好となり、したがって液滴吐出法による良好で安定したな吐出性を確保することができる。
また、これら第1の組成物、第2の組成物の表面張力については、特に制限されないものの、30mN/m以上45mN/m以下(20℃)の範囲に調整しておくのが好ましい。この範囲に表面張力を調整することにより、基板表面等への濡れ性が良好となり、したがって液滴吐出法によって均一な厚みの液晶配向膜を効率よく形成することができる。
【0066】
このような組成物から得られる配向膜(液晶表示装置用配向膜)は、それぞれの液晶配向膜形成用材料に基づき、以下の特長を有する。
第1の組成物から得られる第1の液晶配向膜は、液晶配向膜形成用材料であるポリアミック酸からなるので、前記したように密着性に優れたものとなり、さらに、印刷性、低残像性、体積抵抗低下性にも優れたものとなる。
第2の組成物から得られる第2の液晶配向膜は、液晶配向膜形成用材料であるポリイミドからなるので、前記したように液晶分子にプレチルト角を付与するプレチルト発現性に優れたものとなり、さらに、低温焼成性、高電圧保持率、高信頼性、高絶縁性にも優れたものとなる。
【0067】
次に、前記組成物を用いた本発明の液晶表示装置用配向膜の製造方法、及びこの製造方法を有してなる本発明の液晶表示装置の製造方法について説明する。
本発明の液晶表示装置の製造方法は、例えば、図1に示す液晶表示装置の製造ラインを用いて実施することができる。
図1に示すように、液晶表示装置製造ラインIは、各工程においてそれぞれ用いられる洗浄装置1、親液化処理装置2、液滴吐出装置3a、乾燥装置4、焼成装置5、ラビング装置6、液滴吐出装置3b、液滴吐出装置3c、貼り合せ装置7、各装置を接続するベルトコンベアA、ベルトコンベアAを駆動させる駆動装置8、及び液晶表示装置製造ラインI全体の制御を行う制御装置9により構成されている。
【0068】
本発明に用いる液滴吐出装置の例を図2に示す。図2は、インクジェット式の吐出装置3aの構成の概略を示す図である。吐出装置3aとしては、いわゆるインクジェット方式の吐出装置であれば、特に制限されない。例えば、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式の吐出装置や、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式の吐出装置等が挙げられる。
【0069】
この吐出装置3aは、基板上に吐出物(第1の組成物、第2の組成物)を吐出するインクジェットヘッド22を備えている。このインクジェットヘッド22は、ヘッド本体24及び吐出物を吐出する多数のノズルが形成されているノズル形成面26を備えている。このノズル形成面26のノズルから、基板上に前記した第1の組成物あるいは第2の組成物が吐出される。
【0070】
また、この吐出装置3aは、基板を載置するテーブル28を備えている。このテーブル28は、所定の方向、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能に設置されている。また、テーブル28は、図中矢印で示すようにX軸に沿った方向に移動することにより、ベルトコンベアAにより搬送される基板をテーブル28上に載置して吐出装置3a内に取り込む。
【0071】
また、インクジェットヘッド22には、ノズル形成面26に形成されているノズルから吐出される吐出物を収容しているタンク30が接続されている。すなわち、タンク30とインクジェットヘッド22とは、吐出物を搬送する吐出物搬送管32によって接続されている。
【0072】
この吐出物搬送管32は、吐出物搬送管32の流路内の帯電を防止するための吐出物流路部アース継手32aとヘッド部気泡排除弁32bとを備えている。このヘッド部気泡排除弁32bは、後述する吸引キャップ40により、インクジェットヘッド22内の吐出物を吸引する場合に用いられる。すなわち、吸引キャップ40によりインクジェットヘッド22内の吐出物を吸引するときは、このヘッド部気泡排除弁32bを閉状態にし、タンク30側から吐出物が流入しない状態にする。そして、吸引キャップ40で吸引すると、吸引される吐出物の流速が上がり、インクジェットヘッド22内の気泡が速やかに排出されることになる。
【0073】
吐出装置3aは、タンク30内に収容されている吐出物の収容量、すなわち、タンク30内に収容されている吐出物(本発明組成物)の液面34aの高さを制御するための液面制御センサ36を備えている。この液面制御センサ36は、インクジェットヘッド22が備えるノズル形成面26の先端部27とタンク30内の液面34aとの高さの差h(以下、水頭値という)を所定の範囲内に保つ制御を行う。液面34aの高さを制御することで、タンク30内の吐出物34が所定の範囲内の圧力でインクジェットヘッド22に送られることになる。そして、所定の範囲内の圧力で吐出物34を送ることで、インクジェットヘッド22から安定的に吐出物34を吐出することができる。
【0074】
また、インクジェットヘッド22のノズル形成面26に対向して一定の距離を隔てて、インクジェットヘッド22のノズル内の吐出物を吸引する吸引キャップ40が配置されている。この吸引キャップ40は、図2中に矢印で示すZ軸に沿った方向に移動可能に構成されており、ノズル形成面26に形成された複数のノズルを囲むようにノズル形成面26に密着し、ノズル形成面26との間に密閉空間を形成してノズルを外気から遮断できる構成となっている。
【0075】
なお、吸引キャップ40によるインクジェットヘッド22のノズル内の吐出物の吸引は、インクジェットヘッド22が吐出物34を吐出していない状態、例えば、インクジェットヘッド22が、退避位置等に退避しており、テーブル28が破線で示す位置に退避しているときに行われる。
【0076】
また、この吸引キャップ40の下方には、流路が設けられており、この流路には、吸引バルブ42、吸引異常を検出する吸引圧検出センサ44及びチューブポンプ等からなる吸引ポンプ46が配置されている。また、この吸引ポンプ46等で吸引され、流路を搬送されてきた吐出物34は、廃液タンク48内に収容される。
なお、図1中においては液滴吐出装置3aを一つしか示していないが、本発明においては、例えば液滴吐出装置3aとして第1の組成物を塗布するものと、第2の組成物を塗布するものの2台が配置されているものとする。また、以下に述べる説明において液滴吐出装置3b、3cは、吐出する材料が異なる点を除き、吐出装置3aと同じ構成のものとする。
【0077】
次に、本発明の液晶表示装置用配向膜の製造方法を、図3に示す液晶表示装置を製造する例に基づいて詳細に説明する。図3は、本実施形態により製造される液晶表示装置の断面の概略を示す図である。
図3に示す液晶表示装置は、パッシブマトリクス方式の半透過反射型カラー液晶表示装置である。液晶表示装置50は、ガラス、プラスチック等からなる矩形平板形状の下基板52aと、上基板52bとがシール材及びスペーサ(図示せず)を介して対向配置され、この下基板52aと上基板52bとの間に液晶層56が挟持されている。
【0078】
下基板52aと液晶層56との間には、下基板52aの側から複数のセグメント電極58及び液晶配向膜(液晶表示装置用配向膜)60が形成されている。セグメント電極58は、図3に示すように、ストライプ状に形成されており、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電膜により形成されている。
液晶配向膜60は、前記した本発明に係る組成物によって、すなわち、該組成物中の前記液晶配向膜形成用材料によって形成されたもので、本発明では、後述するようにポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aと、ポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bとが積層された、複合液晶配向膜となっている。
【0079】
また、上基板52bと液晶層56との間には、上基板52b側から順に、カラーフィルタ62、オーバーコート膜66、コモン電極68及び液晶配向膜70が形成されている。カラーフィルタ62は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色素層62r、62g、62bから構成されており、カラーフィルタ62を構成する各色素層62r、62g、62bの間(境界)には、樹脂ブラックや光の反射率が低いクロム(Cr)等の金属により構成されるブラックマトリクス64が形成されている。なお、カラーフィルタ62を構成する各色素層62r、62g、62bは下基板52aに形成されているセグメント電極58に対向して配置されている。
【0080】
オーバーコート膜66は、各色素層62r、62g、62b間の段差を平坦化すると共に各色素層の表面を保護するものであり、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン酸化膜等の無機膜により形成されている。
コモン電極68は、ITO等の透明導電膜から形成されており、下基板52aに形成されているセグメント電極58と直交する位置にストライプ状に形成されている。
また、液晶配向膜70は、前記液晶配向膜60と同様に、ポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜(図示せず)と、ポリイミドからなる第2の液晶配向膜(図示せず)とが積層された、複合液晶配向膜となっている。
【0081】
図3に示す液晶表示装置は、図4に示すように、(S10)〜(S19)の各ステップを経て製造することができる。以下、各ステップを順に説明する。
【0082】
(S10)
まず、液晶配向膜を形成する基板を用意する。
基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなる膜、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等を用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。本実施形態においては、セグメント電極58が形成された下基板52aを用いる。
【0083】
次に、この基板の配向膜を形成する表面を洗浄する(S10)。すなわち、セグメント電極58が形成された下基板52aが、ベルトコンベアAにより洗浄装置1まで搬送され、ベルトコンベアAにより搬送された下基板52aが洗浄装置1内に取り込まれ、アルカリ系洗剤、純水等を用いて下基板52aが洗浄された後、所定の温度及び時間、例えば、80〜90℃で5〜10分間、乾燥処理が行われる。
洗浄及び乾燥が行われた下基板52aは、ベルトコンベアAにより親液化処理装置2まで搬送される。
【0084】
(S11)
次に、洗浄及び乾燥が行われた基板表面を親液化処理する(S11)。すなわち、ベルトコンベアAにより親液化処理装置2まで搬送された基板、例えば、下基板52aが、親液化処理装置2内に取り込まれ、紫外線照射又はプラズマ処理により表面が親液化処理される。親液化処理を施すことにより、液晶配向膜形成用組成物(本発明組成物)のぬれ性がさらに向上し、より均一、平坦でかつ密着性に優れる液晶配向膜を基板上に形成することができる。
【0085】
(S12)
次に、S11において親液化処理された基板上に、前記した本発明に係る第1の組成物(第1の液晶配向膜形成用組成物)を塗布する(S12)。すなわち、まず、ベルトコンベアAにより液滴吐出装置3aまで搬送された基板、例えば、下基板52aが、テーブル28に載置されて液滴吐出装置3a内に取り込まれる。液滴吐出装置3a内においては、タンク30内に収容されている第1の組成物が、ヘッド本体24のノズルを介して吐出され、図5(a)に示すように下基板52a上に第1の組成物61Aが塗布され、第1の液晶配向膜層61aが形成される。
【0086】
(S13)
次に、基板に塗布された第1の組成物を乾燥する(S13)。すなわち、ベルトコンベアAにより乾燥装置4まで搬送された下基板52aが乾燥装置4内に取り込まれ、例えば、60〜200℃で乾燥が行われる。これにより、前記第1の液晶配向膜層61aはこれを形成する第1の組成物61A中の溶剤(混合溶剤)が除去され、図5(b)に示すように流動性がほとんどなくなる。
【0087】
(S14)
次に、S13において乾燥された第1の液晶配向膜層61a上に、前記した本発明に係る第2の組成物(第2の液晶配向膜形成用組成物)を塗布する(S14)。すなわち、第1の液晶配向膜層61aを形成した下基板52aが、ベルトコンベアAによって再度液滴吐出装置3aまで搬送され、テーブル28に載置されて別の液滴吐出装置3a内に取り込まれる。この液滴吐出装置3a内においては、タンク30内に収容されている第2の組成物が、ヘッド本体24のノズルを介して吐出され、図5(c)に示すように前記の乾燥された第1の液晶配向膜層61a上に、第2の組成物61Bが塗布され、第2の液晶配向膜層61bが形成される。
【0088】
このようにして第1の液晶配向膜層61a上に第2の組成物61Bを塗布すると、第1の液晶配向膜層61aは溶剤が除去されて流動性がほとんどなくなっているので、これの上に塗布された第2の組成物61Bとの間では、その界面において僅かに第1の液晶配向膜層61aの固形分(ポリアミック酸)と第2の組成物61Bとが混じり合うだけとなる。したがって、第1の液晶配向膜層61aはそのほとんどが、すなわちその下層側が、第1の液晶配向膜層61aの固形分(ポリアミック酸)のみで形成されたままとなる。
【0089】
(S15)
次に、基板に塗布された第2の組成物を乾燥する(S15)。すなわち、ベルトコンベアAにより再度乾燥装置4まで搬送された下基板52aが乾燥装置4内に取り込まれ、例えば、60〜200℃で乾燥が行われる。これにより、前記第2の液晶配向膜層61bはこれを形成する第2の組成物61B中の溶剤(混合溶剤)が除去され、流動性がほとんどなくなる。そして、乾燥が終了した下基板52aは、ベルトコンベアAへと移され、ベルトコンベアAにより焼成装置5へと搬送される。
【0090】
(S16)
次に、乾燥がなされた第1の液晶配向膜層61aと第2の液晶配向膜層61bとを、加熱し焼成する(S16)。すなわち、ベルトコンベアAにより焼成装置5まで搬送された基板(下基板52a)が焼成装置5内に取り込まれ、例えば、180〜250℃に焼成する処理がなされる。このようにして、図5(d)に示すように前記第1の液晶配向膜層61aはポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aとなり、前記第2の液晶配向膜層61bはポリイミドからなる第2の液晶配向膜61bとなる。これにより、第1の液晶配向膜60aと第2の液晶配向膜61bとが積層されてなる複合液晶配向膜、すなわちハイブリッドタイプの液晶配向膜(液晶表示装置用配向膜)60が形成される。
【0091】
このようにして形成された液晶配向膜60にあっては、第1の液晶配向膜60aと第2の液晶配向膜60bとの間において、すなわち乾燥後の第1の液晶配向膜層61aの上に第2の組成物61Bを塗布した際の、第1の液晶配向膜層61aと第2の組成物61Bからなる第2の液晶配向膜層61bとの間の界面において、第1の液晶配向膜層61aの固形分(ポリアミック酸)と第2の組成物の固形分(ポリイミド)とが混じり合った部分に、ポリアミック酸とポリイミドとの共重合体が形成される。したがって、このように複合化されたハイブリッドタイプの液晶配向膜60にあっては、ポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aとポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bとの間が、前記共重合体が介在することでより良好に密着したものとなっている。
【0092】
また、このようにして形成する液晶配向膜60の膜厚については、100nmを越える任意の厚さ、すなわち、フレキソ印刷法で塗布する場合の限界である100nmより十分に厚い厚さとすることができる。また、液晶配向膜60を構成する第1の液晶配向膜60aの厚さ、第2の液晶配向膜60bの厚さについても、それぞれ所望の厚さとなるように形成することができる。したがって、各液晶配向膜60a、60bに求められる特性に応じて、これらを必要な厚さに形成することができる。
【0093】
以上のようにして、図5(d)に示したように、本発明に係るハイブリッドタイプの液晶配向膜60が形成された下基板52aを得る。
この下基板52aは、ベルトコンベアAへと移され、ベルトコンベアAによりラビング装置6へと搬送される。
【0094】
(S17)
次に、基板上に形成された前記液晶配向膜60のラビング処理を行う(S17)。すなわち、ベルトコンベアAによりラビング装置6まで搬送された基板(下基板52a)がラビング装置6内に取り込まれ、例えばナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。すると、液晶配向膜60は、特にその表面側のポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bがラビング処理されたことにより、液晶分子に対する優れたプレチルト発現性を有するものとなる。つまり、液晶配向膜60は、液晶分子にプレチルト角を付与するプレチルト発現性に優れたものとなる。
【0095】
また、前記液晶配向膜60に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成し、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の液晶配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することもできる。
【0096】
(S18)
液晶配向膜60が形成された下基板52aは、ベルトコンベアAへと移され、ベルトコンベアAにより液滴吐出装置3bまで搬送され、液滴吐出装置3b内に取り込まれる。液滴吐出装置3bにおいては、図6(a)、(b)に示すように、ラビング処理された液晶配向膜60上の液晶表示領域Bを取り囲むように、シール層形成用溶液が塗布される(S16)。図7において、59aは、シール層形成用溶液の塗膜である。なお、図6(a)は工程上面図であり、図6(b)は水平方向から見た工程断面図である。
【0097】
ここで、シール層形成用溶液としては、下基板と上基板とを接合するための接着剤として従来公知のものを使用することができる。例えば、電離放射線硬化性樹脂等を含有する液滴(電離放射線硬化性樹脂組成物)、熱硬化性樹脂等を含有する液滴(熱硬化性樹脂組成物)が挙げられ、作業性に優れることから電離放射線硬化性樹脂組成物の使用が好ましい。熱硬化性樹脂組成物や電離放射線硬化性樹脂組成物としては、特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
【0098】
(S19)
次に、シール層形成用溶液が塗布された基板は、ベルトコンベアAへと移され、ベルトコンベアAにより、液滴吐出装置3cまで搬送された基板が液滴吐出装置3c内に取り込まれる。液滴吐出装置3cにおいては、図7に示すように、前記シール層形成用溶液の塗膜59aで囲まれた液晶層形成領域Aに、液晶材料56が塗布される(S19)。
【0099】
ここで、液晶材料56としては、特に制限されず、従来公知のものが使用できる。
液晶モードとしては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、MVA(Multiple Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend)型等が挙げられる。
【0100】
また、液晶材料はスペーサーを含有するものであってもよい。スペーサーは液晶層の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。スペーサーの材料としては特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。
また、液晶材料とは別個に、液晶材料を塗布する前、あるいは塗布した後にスペーサーを含む機能液を塗布してもよい。
【0101】
(S20)
次に、液晶材料56が塗布された基板は、図8(a)に示すように、貼り合せ装置の真空チャンバー90a内に搬送され、チャンバー9a内を真空にした後、下定盤80a上に吸引固定される。一方、カラーフィルタ62、ブラックマトリクス64、オーバーコート膜66、コモン電極68及び液晶配向膜70(これらの図示は省略されている)が形成された基板(上基板)52bを上定盤80b上に吸引固定し、下基板52aと上基板52bとを貼り合せる(S20)。なお、液晶配向膜70については、前記液晶配向膜60と同様にして形成している。
【0102】
下基板52aと上基板52bとを貼り合せる際の位置合せは、具体的には、下基板52aと上基板52bに予め設けてあるアラインメントマークをカメラで認識させながら、行うことができる。このとき位置合せ精度を上げるため、下基板52aと上基板52bの間隔を0.2〜0.5mm程度にして位置合せを行うのが好ましい。
【0103】
(S21)
次に、下基板52aと上基板52bとを貼り合せた積層物の硬化処理が行われる。硬化処理は、硬化装置を使用して行われる(S21)。硬化装置としては、電離放射線の照射装置や加熱装置等が挙げられるが、本実施形態では紫外線照射装置82を使用する。すなわち、図8(b)に示すように、紫外線照射装置82により紫外線を照射して、シール層59aを硬化させる。
次いで、チャンバー9a内の減圧を大気圧に開放し、下基板52a及び上基板52bの吸着を開放する。
【0104】
その後は、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合せる。ここで、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0105】
以上のようにして、図3に示す液晶表示装置を製造することができる。
このような液晶表示装置の製造方法における液晶配向膜60の形成方法にあっては、基板側にポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aを形成することによって特にその密着性をより良好に発揮させることができ、また、表面側にポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bを形成することによって特にそのプレチルト発現性をより良好に発揮させることができる。
また、第1の組成物60Aと第2の組成物60Bとはそれぞれ別に塗布するので、各組成物の材料設計については、従来のポリアミック酸と可溶性ポリイミドとを混合して混合液を調製する場合のように、ポリアミック酸系の固形分とポリイミド系の固形分との混合比や相性などについて、考慮する必要がなくなる。したがって、各組成物についての材料設計に対する制約を少なくして設計自由度を高めることができる。
【0106】
例えば、IPS方式の液晶配向膜に用いられる材料としては、当然絶縁性であり高い配向性能が要求される。しかし、絶縁性が高すぎると電荷を貯めてしまって焼きつきが生じるため、体積抵抗を下げることが材料の設計で行われている。周波数依存性など検討すべき点はあるが、概ね10E14台とされる。(他方式の配向膜はもっと高い)。
このような課題についての対策として、従来では、配向性能が高く絶縁性の高い材料と、絶縁性が低い材料とをブレンドして成膜することにより、表層に絶縁性の高い疎水性の配向基を並ばせつつ、膜全体としては体積抵抗が低くなるような組成のポリイミドを設計していた。しかしながら、ブレンドでは配向密度と体積抵抗とがトレードオフの関係になり、どちらか一方を高めれば他方の特性が低下してしまうことから、材料設計上非常に困難であった。
【0107】
これに対し、本発明によれば、表層に絶縁性の高い疎水性の配向基を有するポリイミドからなる第2の配向膜60bを形成し、基板側には体積抵抗が低いポリアミック酸からなる第1の配向膜60aを形成することにより、材料設計上の困難性を伴うことなく、配向膜60全体の体積抵抗を容易に低くすることができる。
また、得られた液晶表示装置は、液滴吐出装置3aにより、本発明組成物が塗布されて形成された液晶配向膜を有しているので、高品質で低コストな液晶表示装置となる。
【0108】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では、第1の液晶配向膜層61aを形成する工程(S12)と、第2の液晶配向膜層61bを形成する工程(S14)との間に、第1の液晶配向膜層61aを乾燥する工程(S13)を行ったが、この乾燥工程(S13)に代えて、前記第1の液晶配向膜層61aを加熱焼成してポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aを形成する工程を行ってもよい。
【0109】
このようにすれば、第1の液晶配向膜層61aを第1の液晶配向膜60aとすることによってこの第1の液晶配向膜60aから流動性がなくなるので、これの上に第2の組成物61Bを塗布して第2の液晶配向膜層61bを形成しても、第2の組成物61Bの溶剤によってその界面で僅かに第1の液晶配向膜が溶解し、その固形分(ポリアミック酸)と第2の組成物61Bとが混じり合うだけで、第1の液晶配向膜60aはその下層側がポリアミック酸からなる配向膜のままとなる。
【0110】
したがって、その後この配向膜60a(第1の液晶配向膜層)と第2の液晶配向膜層61bとを加熱焼成しても、第1の液晶配向膜層61aからなる第1の液晶配向膜60aは、その下層側がポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aのままとなる。また、前記の界面において第1の液晶配向膜60aが溶解し、その固形分(ポリアミック酸)と第2の組成物61Bとが混じり合った部分には、ポリアミック酸とポリイミドとの共重合体が形成される。よって、ポリアミック酸からなる第1の液晶配向膜60aとポリイミドからなる第2の液晶配向膜60bとの間は、前記共重合体が介在することでより良好に密着するようになる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されないのはもちろんである。
(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2)
実施例1は、素子側およびカラーフィルター側の電極表面に第1層としてポリアミック酸(日産化学社製のSE−4540)の配向膜材料を50nm、また、第2層として、ポリイミド(JSR社製のAL−16470)の配向膜材料を50nmとなるようにインクジェット装置にて成膜した。
実施例2は、素子側の電極表面に第1層としてポリアミック酸(日産化学社製のサンエバー−4540)の配向膜材料を50nm、また、第2層として、ポリイミド(JSR社製のAL−16470)の配向膜材料を50nmとなるように、またカラーフィルター側の電極表面に第1層としてポリアミック酸(日産化学社製のサンエバー−4540)の配向膜材料を50nmをインクジェット装置にて成膜した。
【0112】
なお、比較例1は、素子側およびカラーフィルター側の電極表面にポリアミック酸(日産化学社製のサンエバー−4540)の配向膜材料を100nmとなるようにインクジェット装置にて成膜した。
また、比較例2は、素子側およびカラーフィルター側の電極表面にポリイミド(JSR社製のAL−16470)の配向膜材料を100nmとなるようにインクジェット装置にて成膜した。
いずれの材料も一般的なフレキソ印刷用のインクに用いられる混合溶剤と同じ組成のものであり、固形分濃度を低くして液滴吐出装置による吐出が可能な粘度に調整したものである。
【0113】
得られた液晶配向膜を用いてデバイスを作製し、液晶の保持率をマイクロニクス社製MZ1800を用いて測定した。保持率の評価基準として60Hzの表示条件において、電圧保持率98%以上の場合◎、電圧保持率95%以上98%未満の場合を○、電圧保持率95%以下の場合を×、として評価した。保持率が低下するとフレームごとに輝度の変化が生じるため、フリッカーの原因とされている。
【0114】
得られた液晶配向膜を用いてデバイスを作製し、チャッカーパターンを24時間連続点灯した場合の液晶の焼き付きの有無を目視によって観察した。焼きつきの評価基準として、焼き付きが全く見られない場合を◎、焼き付きが許容範囲である場合を○、焼き付きが認められる場合を×、として評価した。得られた保持率および焼きつきの評価結果を表1にまとめて示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表に示した結果より、素子側およびカラーフィルター側の第1層にポリアミック酸、第2層にポリイミドを成膜した実施例1の液晶配向膜を用いたデバイスでは、保持率が比較例1よりも高く、液晶の焼き付きが、比較例2より生じにくいことが確認された。
【0117】
なお、比較例1の液晶配向膜を用いたデバイスでは、保持率が低いことが判明した。これは、体積抵抗の低い配向膜材料が素子側およびカラーフィルタ側の電極上に形成されており、リーク電流により印加された電位が時間とともに低下し、液晶の配向が乱れて輝度が低下したためと考えられる。
【0118】
また、比較例2の液晶配向膜を用いたデバイスでは、液晶の焼き付きが生じた。これは、体積抵抗の高い配向膜材料が素子側およびカラーフィルタ側の電極上に形成されており、電荷が配向膜層と電極の界面に溜まってしまったためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施の形態に係る液晶表示装置製造ラインの一例を示す図である。
【図2】実施の形態に係るインクジェット式吐出装置の概略図である。
【図3】実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す側断面図である。
【図4】実施の形態に係る液晶表示装置の製造方法のフローチャートである。
【図5】(a)〜(d)は実施の形態に係る液晶表示装置の製造工程説明図である。
【図6】実施の形態に係る液晶表示装置の製造工程説明図である。
【図7】実施の形態に係る液晶表示装置の製造工程説明図である。
【図8】実施の形態に係る液晶表示装置の製造工程説明図である。
【符号の説明】
【0120】
I…液晶表示装置製造ライン、3a、3b、3c…吐出装置、22…インクジェットヘッド、24…ヘッド本体、34…吐出物(液晶配向膜形成用組成物)、50…液晶表示装置、52a…下基板(基板)、56…液晶層、60,70…液晶配向膜(液晶表示装置用配向膜)、60a…第1の液晶配向膜、60b…第2の液晶配向膜、61A…第1の組成物(第1の液晶配向膜形成用組成物)、61B…第2の組成物(第2の液晶配向膜形成用組成物)、61a…第1の液晶配向膜層、61b…第2の液晶配向膜層、A…液晶層形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液晶配向膜形成用組成物を、基板上に塗布し、第1の液晶配向膜層を形成する工程と、
第2の液晶配向膜形成用組成物を、前記第1の液晶配向膜層上に塗布し、第2の液晶配向膜層を形成する工程と、
を有し、前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層とが積層されてなる複合液晶配向膜を形成することを特徴とする液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項2】
前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程とでは、前記の各液晶配向膜形成用組成物の塗布を、液滴吐出法で行うことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項3】
前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程との間に、前記第1の液晶配向膜層を乾燥して前記第1の液晶配向膜形成用組成物中の溶剤を除去する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項4】
前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層とを加熱焼成する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項5】
前記第1の液晶配向膜層を形成する工程と、前記第2の液晶配向膜層を形成する工程との間に、前記第1の液晶配向膜層を加熱焼成して前記第1の液晶配向膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項6】
前記第1の液晶配向膜形成用組成物中の溶剤は、表面張力が32mN/m以上の第1有機溶剤Aと、表面張力が32mN/m未満の第2有機溶剤Bと、を含む混合溶剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項7】
前記第1の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリアミック酸を溶解してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項8】
前記第2の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリイミドを溶解してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項9】
前記第1の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリイミドを溶解してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項10】
前記第2の液晶配向膜形成用組成物は、溶剤にポリアミック酸を溶解してなることを特徴とする請求項1〜6及び請求項9のうちのいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶表示装置用配向膜の形成方法により、液晶配向膜を形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
第1の液晶配向膜層と第2の液晶配向膜層が積層されてなる複合液晶配向膜を有する液晶表示装置であって、
前記第1の液晶配向膜層と前記第2の液晶配向膜層は、体積抵抗率が異なることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
前記第1の液晶配向膜層は、体積抵抗率が10E13Ω・cm以上であることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記第2の液晶配向膜層は、液晶と接しており、かつ、体積抵抗率が前記第1の液晶配向膜層の10倍以上であることを特徴とする請求項12または13に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−80301(P2009−80301A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249546(P2007−249546)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】