説明

液晶表示装置用駆動回路、液晶表示装置用駆動回路の駆動方法および液晶表示装置

【課題】特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路を実現する。
【解決手段】同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線GLに接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、隣接する第1の列と第2の列とにおいて、第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線GLに接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、入力される画像信号よりも小さくなる類似画像信号DAT2に、画像信号を変換する画像信号変換部11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用駆動回路およびこの液晶表示装置用駆動回路を備えている液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に代わり急速に普及している液晶表示装置は、省エネ型、薄型、軽量型等の特徴を活かしテレビ、モニター、携帯電話等に幅広く利用されている。
【0003】
液晶表示装置を駆動する時には、液晶分子に直流電圧(DC電圧)を長い期間、印加すると特性の劣化が起こるので、これを防止するため、印加する電圧の極性を周期的に変えながら駆動させる極性反転駆動方式を用いるのが一般的である。
【0004】
図4は、従来の液晶表示装置の各種極性反転駆動方式を説明するための図である。
【0005】
図4(a)は、フレーム反転駆動方式を図示しており、共通電極電圧に対して、液晶に印加されるデータ電圧の極性が、フレーム単位で同一となるように印加する駆動方式である。すなわち、図示するように、第1フレームにおいて、全画素に正極性のデータ電圧が印加された場合、次の第2フレームにおいては、全画素に負極性の電圧が印加されるような駆動方式である。この駆動方式は、スイッチングにより発生する消費電力は小さいが、正極性と負極性とにおいての透過率の非対称現象によるフリッカーには、敏感であるという問題がある。
【0006】
図4(b)は、ライン反転駆動方式を図示しており、液晶に印加されるデータ電圧の極性が、水平ライン単位で変わる駆動方式である。図示されているように、第1フレームにおいて、奇数番目の水平ラインの全画素に正極性のデータ電圧が印加され、偶数番目の水平ラインの全画素に負極性のデータ電圧が印加された場合は、次の第2フレームにおいては、奇数番目の水平ラインの全画素に負極性のデータ電圧が印加され、偶数番目の水平ラインの全画素には正極性のデータ電圧が印加される方式である。この駆動方式は、隣接する水平ライン間で、反対極性の電圧が印加されるため、隣接する水平ライン間の輝度偏差が、空間平均化により緩和されるので、上記フレーム反転駆動方式に比べ、フリッカー現象は改善される。また、垂直方向には、反対極性の電圧が分布し、データ間に発生するカップリング現象が相殺されるので、上記フレーム反転駆動方式に比べ、垂直方向のクロストークも改善される。しかし、水平方向には、同一極性の電圧が分布しているため、水平方向のクロストークが発生する。
【0007】
図4(c)は、カラム反転駆動方式を図示しており、第1フレームにおいて、奇数番目の垂直ラインの全画素に正極性のデータ電圧が印加され、偶数番目の垂直ラインの全画素に負極性のデータ電圧が印加された場合は、次の第2フレームにおいては、奇数番目の垂直ラインの全画素に負極性のデータ電圧が印加され、偶数番目の垂直ラインの全画素には正極性のデータ電圧が印加される方式である。上述したライン反転駆動方式と同じように、隣接する垂直ライン間の輝度偏差が、空間平均化により緩和されるので、上記フレーム反転駆動方式に比べ、フリッカー現象は改善される。また、上記フレーム反転駆動方式に比べ、水平方向のクロストークも改善される。しかし、垂直方向のクロストークが発生する。
【0008】
図4(d)は、ドット反転駆動方式を図示しており、現在、最も優れた画質を実現できる駆動方式であるため、高解像度の液晶表示装置の駆動方式として主に採用されている。図示されているように、上下左右全ての方向の隣接する画素間において、印加されるデータ電圧の極性が反対となっているため、空間平均化により、フリッカー現象を最少化することができる。
【特許文献1】特開平11−338433号公報(公開日:1999年12月10日)
【特許文献2】特開2002−221942号公報(公開日:2002年8月9日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らは、上述したドット反転駆動方式を用いて、液晶表示装置を駆動させる時において、詳しくは後述する特定の表示パターン(キラーパターン)を表示させた場合、走査信号線駆動回路が誤動作され、画像に乱れが生じることに気付いた。
【0010】
この原因について、本発明者らが調査を行ったところ、上記現象は、下記のメカニズムに基因していることが判明した。
【0011】
<問題となる特定の表示パターン>
先ず、問題となる特定の表示パターン(キラーパターン)について詳しく説明をする。
【0012】
図5は、ドット反転駆動方式を用いて、液晶表示装置を駆動させる時において、走査信号線駆動回路が誤動作され、画像に乱れが生じる表示パターンを例示的に示す図である。なお、図中、白は白MAX階調を、黒は黒MAX階調を、(+)は正極性を、(−)は負極性をそれぞれ示している。
【0013】
図5(a)は、正極性(負極性)の白MAX階調の画素とこれと反対極性の負極性(正極性)の白MAX階調の画素とが、連続して縦方向に2画素繋がっており、その左右には、負極性(正極性)の黒MAX階調の画素とこれと反対極性の正極性(負極性)の黒MAX階調の画素とが、連続して縦方向に2画素繋がっている表示が並ぶ2H市松表示パターンを示している。
【0014】
電圧非印加時に黒MAXを表示するノーマリブラックパネルを駆動する場合には、あるn行上のある1画素が正極性(負極性)の白MAX階調を表示し、上記画素と縦方向に最隣接するn+1行上の1画素がこれと反対極性の負極性(正極性)の白MAX階調を表示する時、上記表示に伴い、データ信号線の信号電圧の変化量は最大となる。一方、あるn行上のある1画素が負極性(正極性)の黒MAX階調を表示し、上記画素と縦方向に最隣接するn+1行上の1画素がこれと反対極性の正極性(負極性)の黒MAX階調を表示する時は、上記表示に伴い、データ信号線の信号電圧の変化量が最小となる。
【0015】
また、電圧非印加時に白MAXを表示するノーマリホワイトパネルを駆動する場合には、あるn行上のある1画素が負極性(正極性)の黒MAX階調を表示し、上記画素と縦方向に最隣接するn+1行上の1画素がこれと反対極性の正極性(負極性)の黒MAX階調を表示する時、上記表示に伴い、データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる。一方、あるn行上のある1画素が正極性(負極性)の白MAX階調を表示し、上記画素と縦方向に最隣接するn+1行上の1画素がこれと反対極性の負極性(正極性)の白MAX階調を表示する時は、上記表示に伴う、データ信号線の信号電圧の変化量が最小となる。
【0016】
すなわち、図5(a)の表示パターンは、上記データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる表示と最小となる表示とが、図示されているように、横方向において、交互に繰り返されるとともに、同一行上においては、上記データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる箇所の上記データ信号線の信号電圧の変化の方向が高から低または、低から高のどちらかに揃っている表示パターンである。
【0017】
図5(b)は、正極性(負極性)の白MAX階調の画素とこれと反対極性の負極性(正極性)の白MAX階調の画素とが、交互に連続して縦方向に768画素繋がっており、その左右には、負極性(正極性)の黒MAX階調の画素とこれと反対極性の正極性(負極性)の黒MAX階調の画素とが、交互に連続して縦方向に768画素繋がっている表示が並ぶ768H市松表示パターン(縦ストライプ表示パターン)を示している。
【0018】
すなわち、図5(b)の表示パターンも、上記データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる表示と最小となる表示とが、図示されているように、横方向において、交互に繰り返されるとともに、同一行上においては、上記データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる箇所の上記データ信号線の信号電圧の変化の方向が高から低または、低から高のどちらかに揃っている表示パターンである。
【0019】
また、図示は省略するが、3H〜767H市松表示パターンも、図5(a)および図5(b)と同様に、データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる表示と最小となる表示とが、横方向において、交互に繰り返されるとともに、同一行上においては、上記データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる箇所の上記データ信号線の信号電圧の変化の方向が高から低または、低から高のどちらかに揃っている表示パターンである。
【0020】
なお、2H市松表示パターンから768H市松表示パターンになるにつれて、データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる数が増加するので、画像に与える悪影響は増加することとなる。
【0021】
一方、全面白MAX階調を表示する白ベタ表示パターンや全面黒MAX階調を表示する黒ベタ表示パターンの場合、データ信号線の信号電圧の変化量が最大となる数は、最も多くなるが、同一行上において、上記データ信号線の信号電圧の変化の方向が一列毎に、逆(高から低と低から高)になっているため、隣り合う画素同士の充放電で、上記電圧の変化を打ち消すことができるので、問題となる特定の表示パターン(キラーパターン)にはならない。
【0022】
以上のように、上記データ信号線の信号電圧の変化量が大きく、かつ、同一行上において、上記データ信号線の信号電圧の変化量が大きい箇所の上記データ信号線の信号電圧の変化の方向が高から低または、低から高のどちらかに揃っている表示パターンを表示する場合は、その程度に差は存在するが、走査信号線駆動回路が誤動作され、画像に乱れが生じることとなる。
【0023】
また、問題となる特定の表示パターンとしては、上記で例に挙げた表示パターン以外にも多数存在することは言うまでもない。
【0024】
以下、上述した特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合のメカニズムについて、詳しく説明する。
【0025】
<走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合のメカニズム>
図6は、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【0026】
上記液晶表示装置201は、図6に示すように、マトリックス状に配された複数の画素電極207を有する液晶パネル202、液晶パネル202のデータ信号線SLを駆動するデータ信号線駆動回路203、液晶パネル202の走査信号線GLを駆動する走査信号線駆動回路204、上記両駆動回路203・204に電力を供給する電源回路205、上記両駆動回路203・204に制御信号を供給する制御回路206を備えている。
【0027】
上記液晶パネル202には、上記複数の画素電極207と複数のデータ信号線SLと、これらデータ信号線SLに交差するように複数の走査信号線GLが設けられている。上記各データ信号線SLと上記各走査信号線GLとが交差する箇所に対応して上記画素電極207が設けられている。
【0028】
また、上記制御回路206は、液晶パネル202に表示する画像の映像信号DATを出力する。上記映像信号DATは、上記画像の各画素の表示状態を示す映像データが時分割で転送されてなる。さらには、上記制御回路206は、上記映像信号DATとともに、映像信号DATを液晶パネル202に正しく表示するためのタイミング信号として、ソースクロック信号SCKおよびソーススタートパルス信号SSPを、データ信号線駆動回路203に出力し、ゲートクロック信号GCKおよびゲートスタートパルス信号GSPを、走査信号線駆動回路204に出力する。
【0029】
上記走査信号線駆動回路204は、上記ゲートクロック信号GCKなどのタイミング信号に同期して複数の走査信号線GLを順次選択する。一方、上記データ信号線駆動回路203は、上記ソースクロック信号SCKなどのタイミング信号に同期して動作し、各データ信号線SLに応じたタイミングを特定し、上記各タイミングで上記映像信号DATをサンプリングし、サンプリング結果に応じた信号を、上記各データ信号線SLに書き込む。
【0030】
上記画素電極207の大きさに分画されている上記液晶パネル202の各画素は、それぞれに対応する走査信号線GLが選択されている間、それぞれに対応するデータ信号線SLに出力されたデータに応じて、それぞれの明るさを制御し、映像信号DATが示す画像を表示する。
【0031】
図7は、上記液晶表示装置201に備えられている液晶パネル202の各画素の等価回路を示しており、走査信号線GLにリップルが発生することを説明するための図である。
【0032】
スイッチング素子として薄膜トランジスタ(以下TFTと称する)208を用いた上記液晶表示装置201においては、TFT208がオンになった時、各データ信号線SLから供給される信号電圧はTFT208を通じてドレイン電圧として画素電極207に印加される構成となっている。
【0033】
さらに、図7に図示されているように、上記液晶表示装置201の場合は、各画素の画素電極207と対向電極210との間に液晶を挟んで液晶容量Clを構成しているが、液晶容量Clに充電した電荷の減衰時間を長くするため、液晶容量Clと並列に補助容量Csを接続する構成である。
【0034】
以下、問題となる特定の表示パターン(キラーパターン)の一例として、上記図5(a)の表示パターン、すなわち、2H市松表示パターンを上記液晶表示装置201に備えられている液晶パネル202に表示する場合を例に挙げて、VGL(ゲートLow電圧)が印加されている走査信号線GLにリップルが発生するメカニズムを詳しく説明する。
【0035】
例えば、上記2H市松表示パターンを表示する場合、正極性の白MAX階調に該当する電圧を15.2V、負極性の白MAX階調に該当する電圧を0.2Vとすると、リップルが発生する走査信号線GLとこれと関連したデータ信号線SLの電圧の変化を図7に示す。
【0036】
先ず、走査信号線GLのn行目(GLn)が選択されている期間には、GLnに、VGH(ゲートHigh電圧)が印加され、GLn以外の走査信号線GLには、VGL(ゲートLow電圧)が印加される。この時、該当データ信号線SLからは、正極性の白MAX階調に該当する電圧15.2Vが印加される。
【0037】
次に、走査信号線GLのn+1行目(GLn+1)が選択されている期間には、GLn+1に、VGH(ゲートHigh電圧)が印加され、GLn+1以外の走査信号線GLには、VGL(ゲートLow電圧)が印加される。この時、該当データ信号線SLからは、負極性の白MAX階調に該当する電圧0.2Vが印加される。
【0038】
したがって、上記2H市松表示パターンを表示する場合、該当データ信号線SLにおいては、15Vの電圧変化を伴うこととなる。
【0039】
図7に図示されているように、上記液晶パネル202には、走査信号線GLとデータ信号線SLとが絶縁膜を介して交差している箇所に、既成容量209が存在するため、GLnにVGL(ゲートLow電圧)が印加され、該当データ信号線SLに印加される電圧が15.2Vから0.2Vに変わる時に、VGL(ゲートLow電圧)が印加されているGLnには、図示するような付き下げのリップルが発生することとなる。
【0040】
図7では、付き下げのリップルのみを図示しているが、データ信号線SLに印加される電圧が0.2Vから15.2Vに変わる時には、VGL(ゲートLow電圧)が印加されているGLnには、付き上げのリップルが発生するのはもちろんである。
【0041】
図8は、走査信号線駆動回路204の要部構成を示す図である。
【0042】
上記走査信号線駆動回路204は、s個の走査信号線GLに対応できるようにs個のシフトレジスタ211と、上記シフトレジスタ211からのs個の各出力をTFT208のオン・オフ電圧に変換するs個のレベルシフター212と、上記走査信号線GLの負荷を考慮して電流を増幅するs個のバッファ部213とで構成されている。
【0043】
上記走査信号線駆動回路204の出力を開始させるためのゲートスタートパルス信号GSPがシフトレジスタ211に入力された後、シフトレジスタ211では、ゲートクロック信号GCKが入力されるたびに、Highレベルの出力が順次シフトするように、ゲートパルスGP(1)〜GP(s)が生成される。合わせて、上記ゲートスタートパルス信号GSPが、次のシフトレジスタに、カスケード信号CASCADEとして順次伝達される。
【0044】
一方、上記レベルシフター212は、上記シフトレジスタ211からの出力がHighレベル時には、VGH(ゲートHigh電圧)が上記バッファ部213に出力され、Lowレベル時には、VGL(ゲートLow電圧)が上記バッファ部213に出力されるように構成されている。
【0045】
図6および図8に図示されているように、走査信号線駆動回路204には、電源回路205からVGH(ゲートHigh電圧)とVGL(ゲートLow電圧)とが供給され、さらには、制御回路206からは、ゲートクロック信号GCKおよびゲートスタートパルス信号GSPが供給される構成となっている。
【0046】
図9は、上記走査信号線駆動回路204に備えられたロジック電源部214を概略的に示す図である。
【0047】
上記走査信号線駆動回路204は、その構造から基板電位がVGL(ゲートLow電圧)となっているため、走査信号線GLに印加されているVGL(ゲートLow電圧)に発生したリップルは、図9に図示されているように、上記走査信号線駆動回路204内の全てのロジック電源(VCC/GND)に影響を及ぼし、伝搬されることとなる。なお、上記電源(VCC/GND)への影響の水準は、配線抵抗や既成容量にも依存しており、配線抵抗が高い場合、特に問題となる。
【0048】
図10は、上記走査信号線駆動回路204において、信号が誤認識される期間が発生する場合を示す図である。
【0049】
上述したように、走査信号線GLに印加されているVGL(ゲートLow電圧)に発生した付き下げリップルは、図10に図示されているように、上記走査信号線駆動回路204内の全てのロジック電源(VCC/GND)に影響を及ぼし、伝搬されるので、このように付き下げリップルが発生した期間においては、VCCとGNDとによって定まるH認識レベルも付き下げられることとなる。
【0050】
しかし、外部の制御回路206から供給されるゲートスタートパルス信号GSPは、上記リップルの影響を受けないため、図10に図示されているように、本来、Lowレベルのゲートスタートパルス信号GSPが送られている期間にも係らず、H認識レベルが、上記リップルによって付き下げられている期間においては、H認識レベルとゲートスタートパルス信号GSPが逆転し、信号が誤認識される期間が発生している。したがって、上記走査信号線駆動回路204が誤動作され、画像に乱れが生じることとなる。
【0051】
図11(a)は、外部から走査信号線駆動回路204に入力されるゲートスタートパルス信号GSPを示し、図11(b)は、リップル発生時に、走査信号線駆動回路204内部で認識されるゲートスタートパルス信号GSPを示す。
【0052】
図11(a)は、外部から走査信号線駆動回路204に入力されるゲートスタートパルス信号GSPを示し、図11(b)は、リップル発生時に、走査信号線駆動回路204内を通して順次転送されるカスケード信号CASCADEを示す。
【0053】
図11(a)に図示されているように、外部から走査信号線駆動回路204に入力されるゲートスタートパルス信号GSPは、1フレームの開始時に1回立ち上がるので、一定のタイミングとなっているが、図11(b)においては、上述した誤認識の影響により、上記走査信号線駆動回路204内を通して順次転送されるカスケード信号CASCADEがランダムに立ち上がっている。
【0054】
上記のように、上記走査信号線駆動回路204が、複数の走査信号線駆動回路が接続されて構成されている場合においては、特に1個目の走査信号線駆動回路は、外部の制御回路206で生成された信号を走査信号線駆動回路内部でバッファリングしているため、走査信号線駆動回路内部のVCC/GNDにリップルが発生した場合、誤認識され易くなる。
【0055】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路を提供することを目的とする。
【0056】
また、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路の駆動方法を提供することを目的とする。
【0057】
また、上記液晶表示装置用駆動回路を備えることにより、特定の表示パターンを表示する場合においても、画質不具合が発生しない液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0058】
本発明の液晶表示装置用駆動回路は、上記の課題を解決するために、ドット反転駆動するデータ信号線駆動回路と、走査信号線駆動回路と、上記両駆動回路に制御信号を供給するための制御回路と、上記両駆動回路に電力を供給する電源回路とを備え、画素がマトリクス配置された液晶表示装置用駆動回路において、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、隣接する第1の列と第2の列とにおいて、上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、上記隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線に接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、上記入力される画像信号よりも小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する画像信号変換部を備えていることを特徴としている。
【0059】
本発明の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法は、上記の課題を解決するために、ドット反転駆動するデータ信号線駆動回路と、走査信号線駆動回路と、上記両駆動回路に制御信号を供給するための制御回路と、上記両駆動回路に電力を供給する電源回路とを備え、画素がマトリクス配置された液晶表示装置用駆動回路の駆動方法において、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、隣接する第1の列と第2の列とにおいて、上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、上記隣接する2行の内の少なくとも一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換することを特徴としている。
【0060】
上記構成によれば、上述した特定の表示パターン(キラーパターン)に成り得る、すなわち、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、第2の列上においては、0V以上1V以下であり、かつ、上記第1の列と上記第2の列とが隣接する画像信号が入力された場合には、上記画像信号がデータ信号線駆動回路に入力される前に、上記画像信号がリップルを発生させる画像信号であるかの判断を行い、リップルが発生するような画像信号である場合には、上記画像信号変換部で、リップルの発生を抑制する画像信号に変換した後に、上記データ信号線駆動回路に画像信号を送る構成となっている。
【0061】
上記画像信号変換部は、リップルが発生するような画像信号が入力された場合に、上記隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線に接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する。上記の画像信号の変換により、リップルの発生を抑制することができる。
【0062】
以上のように、上記画像信号を上記のような類似画像信号に切り替えることにより、リップルの発生を抑制することができ、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路または、液晶表示装置用駆動回路の駆動方法を実現することができる。
【0063】
本発明の液晶表示装置用駆動回路は、上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、第2の列上においては、略零であることが好ましい。
【0064】
本発明の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法は、上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、第2の列上においては、略零である場合に、上記画像信号を変換することが好ましい。
【0065】
上記構成によれば、上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、第2の列上においては、略零であるようなリップルの発生がさらに著しく、上記走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生も著しい画像信号が入力された場合に、上記同一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する。上記の画像信号の変換により、リップルの発生を抑制することができる。
【0066】
以上のように、上記画像信号を上記のような類似画像信号に切り替えることにより、リップルの発生を抑制することができ、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路または、液晶表示装置用駆動回路の駆動方法を実現することができる。
【0067】
本発明の液晶表示装置用駆動回路は、上記類似画像信号が、同一行上における第1の列の画素に入力される画像信号の電圧と、上記第2の列の画素に入力される画像信号の電圧との略平均値の電圧を有する信号であることが好ましい。
【0068】
本発明の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法は、上記類似画像信号が、同一行上における第1の列の画素に入力される画像信号の電圧と、上記第2の列の画素に入力される画像信号の電圧との略平均値の電圧を有する信号であることが好ましい。
【0069】
上記構成によれば、上記第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧が、何れも上記各画像信号の電圧の略平均値であるため、上記第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧の絶対値が等しく、かつ、その符号が逆となる。
【0070】
したがって、隣り合う画素同士の充放電で、上記電圧の変化を打ち消すことができるので、リップルの発生を抑制することができる。
【0071】
以上のように、上記画像信号を上記のような類似画像信号に切り替えることにより、リップルの発生を抑制することができ、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路または、液晶表示装置用駆動回路の駆動方法を実現することができる。
【0072】
本発明の液晶表示装置用駆動回路は、上記隣接する2行の走査信号線上の画像信号を記憶するため、先入力された行の画像信号を記憶する第1ラインメモリと、後入力された行の画像信号を記憶する第2ラインメモリとを備えていることが好ましい。
【0073】
上記構成によれば、上記第1ラインメモリには、先入力された行の画像信号を記憶し、上記第2ラインメモリには、後入力された行の画像信号を記憶する構成となっている。
【0074】
以上のように、2つのラインメモリを用いることにより、隣接する2行の走査信号線上の画像信号を記憶することができるので、回路構成を複雑にすることなく、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路を実現することができる。
【0075】
本発明の液晶表示装置用駆動回路において、上記画像信号変換部は、入力される画像信号に応じて、選択できる第1ルックアップテーブルと第2ルックアップテーブルとを備えており、上記第1ルックアップテーブル及び第2ルックアップテーブルには、画像信号の有する輝度情報と階調電圧との相関に関するデータが格納されており、上記第2ルックアップテーブルに格納されているデータの階調電圧の幅は、上記第1ルックアップテーブルに格納されているデータの階調電圧の幅よりも狭く、上記画像信号変換部は、画像信号に対する階調電圧を定める際、上記第1ルックアップテーブルから第2ルックアップテーブルにその選択を変えることで、上記画像信号を変換することが好ましい。
【0076】
上記構成によれば、例えば、特定の表示パターン(キラーパターン)以外の画像信号が入力された時用度に、階調と輝度の関係が、ガンマ値2.2のカーブになるように補正するための第1ルックアップテーブルと、特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号が入力された時用度に、上記同一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に変換するための第2ルックアップテーブルとを備えている。
【0077】
そのため、画像信号に対する階調電圧を定める際に、選択するルックアップテーブルを変えることにより、隣接する画素に入力される画像信号の電圧差(例えば第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差)を小さくすることができる。
【0078】
したがって、上記構成によれば、特定の表示パターン(キラーパターン)以外の画像信号が入力された時と特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号が入力された時とに分けて画像信号の補正を行うことができる液晶表示装置用駆動回路を実現することができる。
【0079】
本発明の液晶表示装置は、上記の課題を解決するために、上記液晶表示装置用駆動回路を備えていることを特徴としている。
【0080】
上記構成によれば、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路を備えることにより、特定の表示パターンを表示する場合においても、画質不具合が発生しない液晶表示装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0081】
本発明の液晶表示装置用駆動回路は、以上のように、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、隣接する第1の列と第2の列とにおいて、上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、上記隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線に接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、上記入力される画像信号よりも小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する画像信号変換部を備えているものである。
【0082】
また、本発明の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法は、以上のように、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、隣接する第1の列と第2の列とにおいて、上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、上記隣接する2行の内の少なくとも一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する方法である。
【0083】
また、本発明の液晶表示装置は、以上のように、上記液晶表示装置用駆動回路を備えているものである。
【0084】
それゆえ、特定の表示パターン(キラーパターン)を表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路を実現できるという効果を奏する。
【0085】
また、特定の表示パターン(キラーパターン)を表示する場合に発生する走査信号線駆動回路の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路の駆動方法を実現できるという効果を奏する。
【0086】
また、上記液晶表示装置用駆動回路を備えることにより、特定の表示パターン(キラーパターン)を表示する場合においても、画質不具合が発生しない液晶表示装置を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に限定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0088】
本発明の一実施の形態の液晶表示装置は、特定の表示パターン(キラーパターン)を表示する場合においても、画質不具合が発生しない液晶表示装置である。
【0089】
以下、図1〜3に基づいて説明する。
【0090】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の一実施の形態の液晶表示装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0091】
上記液晶表示装置1は、図1に示すように、マトリックス状に配された複数の画素電極7を有する液晶パネル2、液晶パネル2のデータ信号線SLを駆動するデータ信号線駆動回路3、液晶パネル2の走査信号線GLを駆動する走査信号線駆動回路4、上記両駆動回路3・4に電力を供給する電源回路5、上記両駆動回路3・4に制御信号を供給する制御回路6を備えている。
【0092】
また、本発明の一実施の形態の液晶表示装置1に備えられた液晶表示装置用駆動回路12は、上記データ信号線駆動回路3と、上記走査信号線駆動回路4と、上記電源回路5と、上記制御回路6とを備えている。
【0093】
上記液晶パネル2には、上記複数の画素電極7と複数のデータ信号線SLと、これらデータ信号線SLに交差するように複数の走査信号線GLが設けられている。また、上記各データ信号線SLと上記各走査信号線GLとが交差する箇所に対応して上記画素電極7と図示は省略するが、スイッチング素子としてTFTとが設けられている。
【0094】
本実施の形態においては、上記液晶パネル2として、電圧非印加時に黒を表示するノーマリブラックパネルを用いているとともに、バックライトからの光を透過して表示を行う透過型の液晶パネルを使用した。
【0095】
なお、上記液晶パネル2の構成は特に限定されず、適宜公知の液晶パネルを適用することができる。図示は省略するが、液晶パネル2は、例えば、複数のTFTが形成されたアクティブマトリクス基板と、これに対向するカラーフィルタ基板とを備え、これらの基板の間に液晶層がシール材によって封入された構成を有している。
【0096】
また、上記制御回路6は、液晶パネル2に表示する画像の映像信号DAT1・DAT2を出力する。上記映像信号DAT1・DAT2は、上記画像の各画素の表示状態を示す映像データが時分割で転送されてなる。さらには、上記制御回路6は、上記映像信号DAT1・DAT2とともに、映像信号DAT1・DAT2を液晶パネル2に正しく表示するためのタイミング信号として、ソースクロック信号SCKおよびソーススタートパルス信号SSPを、データ信号線駆動回路3に出力し、ゲートクロック信号GCKおよびゲートスタートパルス信号GSP1を、走査信号線駆動回路4に出力する。
【0097】
上記走査信号線駆動回路4は、上記ゲートクロック信号GCKなどのタイミング信号に同期して複数の走査信号線GLを順次選択する。一方、上記データ信号線駆動回路3は、上記ソースクロック信号SCKなどのタイミング信号に同期して動作し、各データ信号線SLに応じたタイミングを特定し、上記各タイミングで上記映像信号DAT1・DAT2をサンプリングし、サンプリング結果に応じた信号を、上記各データ信号線SLに書き込む。
【0098】
上記画素電極7の大きさに分画されている上記液晶パネル2の各画素は、それぞれに対応する走査信号線GLが選択されている間、それぞれに対応するデータ信号線SLに出力されたデータに応じて、それぞれの明るさを制御し、映像信号DAT1・DAT2が示す画像を表示する構成となっている。
【0099】
本発明の一実施の形態の液晶表示装置1の上記制御回路6には、さらに、詳しくは後述する比較演算部10と画像信号変換部11とが備えられている。なお、本実施の形態においては、上記比較演算部10と画像信号変換部11とを上記制御回路6内に設けたが、これに限定されることはない。
【0100】
上述したように、上記液晶表示装置1に、例えば、図5に示すような特定の表示パターン(キラーパターン)を表示した場合には、リップルが発生し、走査信号線駆動回路4が誤動作され、画像に乱れが生じてしまう。
【0101】
したがって、図1に図示されているように、比較演算部10と画像信号変換部11とを備えた構成とすることにより、上記特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号がデータ信号線駆動回路3に入力される前に、上記比較演算部10で、上記画像信号がリップルを発生させる画像信号であるかの判断を行い、リップルが発生するような画像信号である場合には、上記画像信号変換部11で、リップルの発生を抑制する類似画像信号DAT2に変換した後に、上記データ信号線駆動回路3に類似画像信号DAT2を送る構成となっている。
【0102】
すなわち、上記比較演算部10は、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線GL上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、第2の列上においては、0V以上1V以下であり、かつ、上記第1の列と上記第2の列とが隣接する画像信号が入力された場合には、上記画像信号変換部11に、画像信号変換信号を出力する。
【0103】
さらには、上記比較演算部10は、上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線GL上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、第2の列上においては、略零である画像信号が入力された場合に、上記画像信号変換部11に、画像信号変換信号を出力することが好ましい。
【0104】
すなわち、上記比較演算部10は、同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線GL上の同一列の二つの画像信号の電圧差が、第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、第2の列上においては、0V以上1V以下であり、かつ、上記第1の列と上記第2の列とが隣接する画像信号が入力されたかを判断する。
【0105】
また、上記画像信号変換部11は、上記隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線GLに接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号DAT2に、上記画像信号を変換して上記データ信号線駆動回路3に出力する。
【0106】
また、さらには、上記類似画像信号DAT2が、上記同一行上における第1の列の画素に入力される画像信号の電圧と、上記第2の列の画素に入力される画像信号の電圧との略平均値の電圧を有する信号であることが好ましい。
【0107】
上記構成によれば、隣り合う画素同士の充放電で、上記電圧の変化を打ち消すことができるので、リップルの発生を抑制することができる。
【0108】
図2は、類似画像信号DAT2の一例を示す図である。
【0109】
上記類似画像信号DAT2は、図2に図示されているように、1画素がR、G、Bの3つのサブピクセルから構成され、隣り合う2画素がマゼンタ色とグリーン色を示す画像信号である場合、上記画像信号の代わりにマゼンタ色とグリーン色との混合色である灰色を各画素に示すことができ、これに対応する画像信号とすることもできる。
【0110】
以上のように、上記比較演算部10と上記画像信号変換部11とを備えた構成とすることにより、上記画像信号を上記のような別の画像信号に切り替えることにより、リップルの発生を抑制することができ、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路4の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路12または、液晶表示装置用駆動回路12の駆動方法を実現することができる。
【0111】
また、図1に図示されているように、上記液晶表示装置用駆動回路12は、最隣接する2行の走査信号線GL上の画像信号を記憶するため、先入力された行の画像信号を記憶する第1ラインメモリ8と、後入力された行の画像信号を記憶する第2ラインメモリ9とを備えていることが好ましい。
【0112】
上記構成とすることにより、上記第1ラインメモリ8には、先入力された行の画像信号を記憶し、上記第2ラインメモリ9には、後入力された行の画像信号を記憶する構成となっており、上記第2ラインメモリ9から上記第1ラインメモリ8に後入力された行の画像信号が出力されると同時に、上記比較演算部10にも後入力された行の画像信号が出力される。また、上記のタイミングに合わせて第1ラインメモリ8からも上記比較演算部10に、先入力された行の画像信号が出力されるとともに、上記第1ラインメモリ8に記憶されたデータは、先入力された行の画像信号から後入力された行の画像信号に置き換えられることとなる。
【0113】
以上のように、2つのラインメモリ8・9を用いることにより、上記比較演算部10に同一フレームにおける、最隣接する2行の走査信号線上の画像信号を送ることができる。
【0114】
したがって、回路構成を複雑にすることなく、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路4の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路12を実現することができる。
【0115】
図3は、本発明の一実施の形態の液晶表示装置1に備えられている比較演算部10と画像信号変換部11とを示す図である。
【0116】
さらに、上記液晶表示装置用駆動回路12においては、上記画像信号変換部11は、入力される画像信号に応じて、選択できる第1ルックアップテーブルLUT1と第2ルックアップテーブルLUT2とを備えており、上記第1ルックアップテーブルLUT1及び第2ルックアップテーブルLUT2には、画像信号の有する輝度情報と階調電圧との相関に関するデータが格納されており、上記第2ルックアップテーブルLUT2に格納されているデータの階調電圧の幅は、上記第1ルックアップテーブルに格納されているデータの階調電圧の幅よりも狭く、上記画像信号変換部11は、上記第1ルックアップテーブルLUT1から第2ルックアップテーブルLUT2にその選択を変えることで、上記画像信号を変換することが好ましい。
【0117】
上記構成によれば、例えば、特定の表示パターン(キラーパターン)以外の画像信号が入力された時用度に、階調と輝度の関係が、ガンマ値2.2のカーブになるように補正するための第1ルックアップテーブルLUT1と、特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号が入力された時用度に、上記同一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号DAT2に変換するための第2ルックアップテーブルLUT2(例えば、最高階調を表示するために必要な電圧(最高電圧)と、最低階調を表示するために必要な電圧(最低電圧)との電圧差が、LUT1よりも小さくなるような階調と輝度の関係にある。)とを備えた構成とすることができる。
【0118】
このような構成によれば、図3に図示されているように、特定の表示パターン(キラーパターン)以外の画像信号が入力された時には、上記比較演算部10からは、LUT1を参照して画像信号の補正を行うための信号が出力され、入力された上記画像信号は、画像信号DAT1に補正された後、データ信号線駆動回路3に送られる。
【0119】
一方、特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号が入力された時には、上記比較演算部10からは、LUT2を参照して画像信号の補正を行うための信号が出力され、入力された上記画像信号は、画像信号DAT2に補正された後、データ信号線駆動回路3に送られる。
【0120】
上記構成とすることにより、特定の表示パターン(キラーパターン)以外の画像信号が入力された時と特定の表示パターン(キラーパターン)の画像信号が入力された時とに分けて画像信号の補正を行うことができる液晶表示装置用駆動回路12を実現することができる。
【0121】
また、上記液晶表示装置1は、特定の表示パターンを表示する場合に発生する走査信号線駆動回路4の誤動作による画質不具合の発生を抑制することのできる液晶表示装置用駆動回路12を備えることにより、特定の表示パターンを表示する場合においても、画質不具合が発生しない液晶表示装置1を実現することができる。
【0122】
本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、液晶表示装置を駆動するための液晶表示装置用駆動回路と、液晶表示装置とに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施の形態の液晶表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】類似画像信号の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態の液晶表示装置に備えられている比較演算部と画像信号変換部とを示す図である。
【図4】従来の液晶表示装置の各種極性反転駆動方式を説明するための図である。
【図5】ドット反転駆動方式を用いて、従来の液晶表示装置を駆動させる時において、走査信号線駆動回路が誤動作され、画像に乱れが生じる表示パターンを例示的に示す図である。
【図6】TFTを用いた従来のアクティブマトリックス型液晶表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【図7】従来の液晶表示装置に備えられている液晶パネルの各画素の等価回路を示しており、走査信号線にリップルが発生することを説明するための図である。
【図8】従来の液晶表示装置に備えられている走査信号線駆動回路の要部構成を示す図である。
【図9】上記走査信号線駆動回路に備えられたロジック電源部を概略的に示す図である。
【図10】上記走査信号線駆動回路において、信号が誤認識される期間が発生する場合を示す図である。
【図11】(a)は、外部から走査信号線駆動回路に入力されるゲートスタートパルス信号を示し、(b)は、リップル発生時に、上記走査信号線駆動回路内部で認識されるゲートスタートパルス信号または、カスケード信号を示す。
【符号の説明】
【0125】
1 液晶表示装置
3 データ信号線駆動回路
4 走査信号線駆動回路
5 電源回路
6 制御回路
8 第1ラインメモリ
9 第2ラインメモリ
10 比較演算部
11 画像信号変換部
12 液晶表示装置用駆動回路
LUT1 第1ルックアップテーブル
LUT2 第2ルックアップテーブル
DAT1 映像信号
DAT2 類似映像信号
SL データ信号線
GL 走査信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドット反転駆動するデータ信号線駆動回路と、走査信号線駆動回路と、上記両駆動回路に制御信号を供給するための制御回路と、上記両駆動回路に電力を供給する電源回路とを備え、画素がマトリクス配置された液晶表示装置用駆動回路において、
同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、
隣接する第1の列と第2の列とにおいて、
上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、
上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、
上記隣接する2行の内の少なくとも1行の走査信号線に接続された画素において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、上記入力される画像信号よりも小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換する画像信号変換部を備えていることを特徴とする液晶表示装置用駆動回路。
【請求項2】
上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、
第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、
第2の列上においては、略零であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置用駆動回路。
【請求項3】
上記類似画像信号が、同一行上における第1の列の画素に入力される画像信号の電圧と、上記第2の列の画素に入力される画像信号の電圧との略平均値の電圧を有する信号であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置用駆動回路。
【請求項4】
上記隣接する2行の走査信号線上の画像信号を記憶するため、
先入力された行の画像信号を記憶する第1ラインメモリと、
後入力された行の画像信号を記憶する第2ラインメモリとを備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の液晶表示装置用駆動回路。
【請求項5】
上記画像信号変換部は、入力される画像信号に応じて、選択できる第1ルックアップテーブルと第2ルックアップテーブルとを備えており、
上記第1ルックアップテーブル及び第2ルックアップテーブルには、画像信号の有する輝度情報と階調電圧との相関に関するデータが格納されており、
上記第2ルックアップテーブルに格納されているデータの階調電圧の幅は、上記第1ルックアップテーブルに格納されているデータの階調電圧の幅よりも狭く、
上記画像信号変換部は、画像信号に対する階調電圧を定める際、上記第1ルックアップテーブルから第2ルックアップテーブルにその選択を変えることで、上記画像信号を上記類似画像信号に変換することを特徴する請求項1から4の何れか1項に記載の液晶表示装置用駆動回路。
【請求項6】
ドット反転駆動するデータ信号線駆動回路と、走査信号線駆動回路と、上記両駆動回路に制御信号を供給するための制御回路と、上記両駆動回路に電力を供給する電源回路とを備え、画素がマトリクス配置された液晶表示装置用駆動回路の駆動方法において、
同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線に接続された同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、
隣接する第1の列と第2の列とにおいて、
上記第1の列上においては、階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差の90%以上100%以下であり、
上記第2の列上においては、0V以上1V以下である場合に、
上記隣接する2行の内の少なくとも一行上において、第1の列の画素に入力される画像信号と、上記第2の列の画素に入力される画像信号との電圧差が、より小さくなる類似画像信号に、上記画像信号を変換することを特徴とする液晶表示装置用駆動回路の駆動方法。
【請求項7】
上記同一フレームにおける、隣接する2行の走査信号線上の同一列の二つの画素に対して入力される二つの画像信号の電圧差が、
第1の列上においては、略階調を表示するために必要な最高電圧と最低電圧との電圧差であり、
第2の列上においては、略零である場合に、上記画像信号を変換することを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法。
【請求項8】
上記類似画像信号が、同一行上における第1の列の画素に入力される画像信号の電圧と、上記第2の列の画素に入力される画像信号の電圧との略平均値の電圧を有する信号であることを特徴とする請求項6又は7に記載の液晶表示装置用駆動回路の駆動方法。
【請求項9】
請求項1から5の何れか1項に記載の液晶表示装置用駆動回路を備えていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−113300(P2010−113300A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287962(P2008−287962)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】