説明

液晶表示装置

【課題】光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】バックライト点灯期間ΔTon1において、バックライト部3から赤色光および青色光が射出されると共に、バックライト点灯期間ΔTon2において、バックライト部3から緑色光が射出されるようにする。1垂直期間内における各原色光の射出期間(点灯期間)が、従来のフィールドシーケンシャル方式と比べて長くなる。また、バックライト点灯期間ΔTon2では、緑色光のみが射出されると共にサブ画素20A,20Bの両方で変調されるようにする。従来の3原色のカラーフィルタ方式と比べ、フルカラー表示の際の開口率が高まる。さらに、バックライト点灯期間ΔTon1では、赤色光および青色光の両方が射出されるようにする。色割れ(カラーブレイク)現象の発生が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ(CF;Color Filter)を用いてカラー表示を行う液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビやノート型パソコン、カーナビゲーション等の表示モニタとして、液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)が多く用いられている。このような液晶表示装置では、一般に、カラーフィルタを用いてフルカラー表示を行うようになっている。
【0003】
図17は、このようなフルカラー表示の際に用いるカラーフィルタの一例を表したものである。ここでは、各画素102に、光の3原色に対応する、赤色(R)カラーフィルタ103R、緑色(G)カラーフィルタ103Gまたは青色(B)カラーフィルタ103Bが配置されている。このような各画素102における輝度を制御することにより、フルカラー表示が可能となっている。
【0004】
しかしながら、各色のカラーフィルタ103R,103G,103Bは、3色で空間分割がなされているため、空間的に有効に利用できる光は、約33%に過ぎない。また、各カラーフィルタ103R,103G,103Bの透過率は、最適な波長においても70〜80%程度に過ぎないため、総合的には25%程度の光しか利用できないことになる。なお、残りの75%以上の光は、これらのカラーフィルタ103R,103G,103Bにおいて、熱に変換される。
【0005】
そこで、このような低い光利用効率を改善する手法として、従来より、フィールドシーケンシャル(時分割)駆動が提案されている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。これは、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などのRGBを個別に点灯できる光源を用いると共に、時間的にRGBを切り替えることにより、フルカラー表示を行うものである。このようなフィールドシーケンシャル方式では、上記したようなカラーフィルタか不要となるため(図18参照)、約4倍以上の高い光利用効率が得られると言われている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−280614号公報
【非特許文献1】Yi−Fu Chen,他2名、「Mixed Color Sequential Technique for High Contrast LCD with Optimum Power Consumption」、SID’07、p.134、2007年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、図18は、従来のフィールドシーケンシャル方式における画素構造の一例を表したものである。各画素202は、上記したようにカラーフィルタの無い無色の画素となっており、線順次でRGBの順にデータが書き込まれると共に、同期してバックライトがRGBの順に点灯されるようになっている。
【0008】
ところが、このようなフィールドシーケンシャル方式では、光利用効率は高いものの、時間的な有効期間が1/6程度以下となるため、一定の輝度を得るためには、バックライトの最大輝度は、従来よりも高いものが要求される。例えばLEDの場合、個数を従来よりも増やす必要があり、コスト的に非常に不利である。また、LEDは点灯時のデューティ比が小さくなると電力に対する発光量が低下する傾向があるため、光利用効率が上がったとしても、電力効率は逆に低下してしまうことになる。
【0009】
また、フィールドシーケンシャル方式における根本的な問題として、いわゆる色割れ(カラーブレイク)現象の発生というものがある。これは、時間分割された画像は網膜上で同じ位置に届いて初めて色が正確に合成されるのであるが、動画像を見ている場合の物体の動きや視線の動きにより、意図せずに網膜上の位置がずれてしまい、RGBの色が分離してしまう現象である。このような色割れ現象を抑えるため、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたプロジェクタであるDLP(Digital Light Processing)などでは、より高速な6倍駆動などを行うことが考えられるが、応答の遅い液晶では同様の対策は難しい。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液晶表示装置は、互いに異なる波長領域の第1ないし第3の原色光を個別に射出可能な光源部と、各々が第1および第2のサブ画素を有する複数の画素が全体としてマトリクス状に配置されると共に、光源部から射出された各原色光を映像信号に基づいて変調する液晶表示パネルと、映像信号に基づいて、光源部および液晶表示パネル内の各サブ画素をそれぞれ、1垂直期間内に第1および第2の駆動期間を時分割で含むようにして駆動する駆動部とを備えたものである。ここで、上記第1のサブ画素では、少なくとも第1および第2の原色光を透過可能となっており、上記第2のサブ画素では、少なくとも第2および第3の原色光を透過可能となっている。また、上記駆動部は、上記第1の駆動期間では、光源部が第1および第3の原色光をそれぞれ射出するように駆動すると共に、第1の原色光用の映像信号に基づいて第1のサブ画素を駆動し、かつ、第3の原色光用の映像信号に基づいて第2のサブ画素を駆動し、上記第2の駆動期間では、光源部が第2の原色光を射出するように駆動すると共に、第2の原色光用の映像信号に基づいて第1および第2のサブ画素をそれぞれ駆動するようになっている。
【0012】
本発明の液晶表示装置では、第1の駆動期間では、光源部から射出される第1および第3の原色光が、第1のサブ画素において、第1の原色光用の映像信号に基づいて第1の原色光が選択的に変調されることにより、第1の原色光による映像表示がなされる一方、第2のサブ画素において、第3の原色光用の映像信号に基づいて第3の原色光が選択的に変調されることにより、第3の原色光による映像表示がなされる。また、第2の駆動期間では、光源部から射出される第2の原色光が、第1および第2のサブ画素においてそれぞれ、第2の原色光用の映像信号に基づいて第2の原色光が選択的に変調されることにより、第2の原色光による映像表示がなされる。そして、このような第1および第2の駆動期間が1垂直期間内で時分割に含まれるため、各原色光の映像信号に基づくフルカラー表示がなされる。この際、第1の駆動期間において、光源部から第1および第3の原色光が射出されると共に、第2の駆動期間において、光源部から第2の原色光が射出されることにより、1垂直期間内における各原色光の射出期間(点灯期間)が、従来のフィールドシーケンシャル方式と比べて長くなる。また、第2の駆動期間では、第2の原色光のみが射出されると共に第1および第2のサブ画素の両方で変調されるため、従来の3原色のカラーフィルタ方式と比べ、フルカラー表示の際の開口率が高まる。さらに、第1の駆動期間では第1および第3の原色光の両方が射出されるため、色割れ(カラーブレイク)現象の発生が抑えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶表示装置によれば、第1の駆動期間において光源部から第1および第3の原色光が射出されると共に、第2の駆動期間において光源部から第2の原色光が射出されるようにしたので、1垂直期間内における各原色光の射出期間(点灯期間)を従来のフィールドシーケンシャル方式と比べて長くすることができ、デューティ比が高くすることができる。また、第2の駆動期間では、第2の原色光のみが射出されると共に第1および第2のサブ画素の両方で変調されるようにしたので、従来の3原色のカラーフィルタ方式と比べ、フルカラー表示の際の開口率を高めることができる。さらに、第1の駆動期間では第1および第3の原色光の両方が射出されるようにしたので、色割れ(カラーブレイク)現象の発生を抑えることができる。よって、光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[液晶表示装置の全体構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置(液晶表示装置1)の全体構成を表すものである。この液晶表示装置1は、液晶表示パネル2と、バックライト部3と、画像処理部41と、データドライバ51と、ゲートドライバ52と、タイミング制御部61と、バックライト駆動部62とを備えている。
【0016】
バックライト部3は、液晶表示パネル2に対して光を照射する光源であり、例えばLEDなどを含んで構成されている。このバックライト部3は、互いに異なる波長領域の3つ原色光(赤色光(第1の原色光)、緑色光(第2の原色光)および青色光(第3の原色光))を個別に射出可能となっている。具体的には、バックライト部3は、例えば図2に示したように、赤色光源3R、緑色光源3Gおよび青色光源3Bを有している。
【0017】
液晶表示パネル2は、後述するゲートドライバ52から供給される駆動信号に従って、データドライバ51から供給される駆動電圧に基づいてバックライト部3から発せられる光を変調することにより、映像信号Dinに基づく映像表示を行うものである。この液晶表示パネル2は、全体としてマトリクス状に並んで配置された複数の画素20を含んで構成されている。
【0018】
画像処理部41は、外部からの映像信号Dinに対して所定の画像処理を施すことにより、RGB信号である映像信号D1を生成するものである。
【0019】
ゲートドライバ52は、タイミング制御部61によるタイミング制御に従って、液晶表示パネル2内の各画素20を図示しない走査線(後述するゲート線G)に沿って線順次駆動するものである。
【0020】
データドライバ51は、液晶表示パネル2の各画素20へそれぞれ、タイミング制御部61から供給される映像信号D1に基づく駆動電圧を供給するものである。具体的には、このデータドライバ51は、映像信号D1に対してD/A変換を施すことにより、アナログ信号である映像信号(上記駆動電圧)を生成し、各画素20へ出力するようになっている。なお、この映像信号D1は、赤色用データD1Rと、緑色用データD1Gと、青色用データD1Bとから構成されている。
【0021】
バックライト駆動部62は、バックライト部3の点灯動作(発光動作)を制御するものである。タイミング制御部61は、ゲートドライバ52およびデータドライバ51の駆動タイミングを制御すると共に、映像信号D1をデータドライバ51へ供給するものである。
【0022】
[画素の詳細構成例]
次に、図3および図4を参照して、各画素20の詳細構成について詳細に説明する。図3は、各画素20内の画素回路の回路構成例を表したものである。
【0023】
画素20は、2つのサブ画素20A,20Bにより構成されている。サブ画素20Aは、液晶素子22Aと、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)素子21Aとを有している。一方、サブ画素20Bは、液晶素子22Bと、TFT素子21Bとを有している。また、画素20には、駆動対象の画素を線順次で選択するための1本のゲート線Gと、駆動対象の画素内のサブ画素20A,20Bに対して駆動電圧(データドライバ51から供給される駆動電圧)を供給するための2本のデータ線DA,DBとが接続されている。
【0024】
液晶素子22Aは、データ線DAからTFT素子21Aを介して一端に供給される駆動電圧に応じて、表示のための動作を行う(表示光を射出する)表示要素として機能している。一方、液晶素子22Bは、データ線DBからTFT素子21Bを介して一端に供給される駆動電圧に応じて、表示のための動作を行う(表示光を射出する)表示要素として機能している。これら液晶素子22A,22Bは、例えばVA(Vertical Alignment)モードやTN(Twisted Nematic)モードの液晶により構成された液晶層(図示せず)と、この液晶層を挟む一対の電極(図示せず)とを含んで構成されている。液晶素子22Aにおける一対の電極のうちの一方(一端)側は、TFT素子21Aのドレインに接続され、他方(他端)側は接地されている。また、液晶素子22Bにおける一対の電極のうちの一方(一端)側は、TFT素子21Bのドレインに接続され、他方(他端)側は接地されている。
【0025】
TFT素子21Aは、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)により構成されており、ゲートがゲート線Gに接続され、ソースがデータ線DAに接続され、ドレインが液晶素子22Aの一端側に接続されている。このTFT素子21Aは、液晶素子22Aの一端に対して、サブ画素20A用の駆動電圧(映像信号D1に基づく駆動電圧)を供給するためのスイッチング素子として機能している。具体的には、ゲートドライバ52からゲート線Gを介して供給される選択信号に応じて、データ線DAと液晶素子22Aの一端との間を選択的に導通させるようになっている。
【0026】
一方、TFT素子21BもMOS−FETにより構成されており、ゲートがゲート線Gに接続され、ソースがデータ線DBに接続され、ドレインが液晶素子22Bの一端側に接続されている。このTFT素子21Bは、液晶素子22Bの一端に対して、サブ画素20B用の駆動電圧(映像信号D1に基づく駆動電圧)を供給するためのスイッチング素子として機能している。具体的には、ゲートドライバ52からゲート線Gを介して供給される選択信号に応じて、データ線DBと液晶素子22Bの一端との間を選択的に導通させるようになっている。
【0027】
また、図4に示したように、本実施の形態では、サブ画素20Aは、黄色(Y)のカラーフィルタ23Yを有しており、少なくとも赤色光および緑色光を透過可能となっている。一方、サブ画素20Bは、シアン色(C)のカラーフィルタ23Cを有し、少なくとも緑色光および青色光を透過可能となっている。
【0028】
ここで、タイミング制御部61、バックライト駆動部62、データドライバ51およびゲートドライバ52が、本発明における「駆動部」の一具体例に対応する。また、サブ画素20Aが本発明における「第1のサブ画素」の一具体例に対応し、サブ画素20Bが本発明における「第2のサブ画素」の一具体例に対応する。
【0029】
次に、本実施の形態の液晶表示装置1の作用および効果について説明する。
【0030】
[液晶表示装置の基本動作]
最初に、図1〜図3を参照して、液晶表示装置1の基本動作について説明する。
【0031】
この液晶表示装置1では、図1に示したように、外部から供給された映像信号Dinが画像処理部41により画像処理され、各画素20用の映像信号D1が生成される。そしてこの映像信号D1は、タイミング制御部61を介してデータドライバ51へ供給される。データドライバ51では、映像信号D1に対するD/A変換が施され、アナログ信号である映像信号が生成される。そしてこの映像信号に基づき、ゲートドライバ52およびデータドライバ51から出力される各画素20への駆動電圧によって、画素20ごとに、線順次の表示駆動動作がなされる。
【0032】
具体的には、図3に示したように、ゲートドライバ52からゲート線Gを介して供給される選択信号に応じて、TFT素子21A,21Bの動作状態および非動作状態(オン・オフ)が切り替えられる。これにより、データ線DA,DBと液晶素子22A,22Bとの間が選択的に導通される。その結果、データドライバ51から供給される映像信号に基づく駆動電圧が液晶素子22A,22Bへと供給され、表示駆動動作がなされる。
【0033】
すると、データ線DA,DBと液晶素子22A,22Bとの間が導通された画素20では、図2に示したバックライト部3内の各光源3R,3G,3Bからの照明光が液晶表示パネル2において変調され、表示光として出力される。これにより、映像信号Dinに基づく映像表示が、液晶表示装置1において行われる。
【0034】
[液晶表示装置における映像表示方法の詳細例]
次に、図5〜図8を参照して、本発明の特徴的部分の1つである映像表示方法(カラー表示方法)の詳細について、比較例と比較しつつ説明する。ここで、図5および図6は、比較例1,2に係る従来のフィールドシーケンシャル方式による映像表示方法をタイミング図で表したものである。また、図7および図8は、本実施の形態の液晶表示装置1における映像表示方法をタイミング図および模式図で表したものである。なお、図5〜図7において、(A)は液晶表示パネルにおける映像信号(各色用データ)の書き込み動作状態を、(B)はバックライト部内の各色光源の点灯・消灯状態を、それぞれ表しており、以下同様である。
【0035】
まず、図17に示した従来の3原色のカラーフィルタを用いたカラー表示方法では、各色のカラーフィルタ103R,103G,103Bは、3色で空間分割がなされているため、空間的に有効に利用できる光は、約33%に過ぎない。また、各カラーフィルタ103R,103G,103Bの透過率は、最適な波長においても70〜80%程度に過ぎないため、総合的には25%程度の光しか利用できないことになる。なお、残りの75%以上の光は、これらのカラーフィルタ103R,103G,103Bにおいて、熱に変換される。
【0036】
一方、図5に示した比較例1では、各画素202は、図18に示したようにカラーフィルタの無い無色の画素となっており、線順次でRGBの順にデータが書き込まれると共に、同期してバックライトがRGBの順に点灯される。図中のバックライトオン期間ΔTonでは、画面全体がある単色用データで書き込まれているため、それにあわせた色でバックライトを点灯することができる。一方、バックライトオフ期間ΔToffは、次の単色への遷移期間であるため、この期間ΔToffでは、画面内に異なる色のデータが同時に存在することになる。したがって、色が混ざらないようにするため、この期間ΔToffでは、バックライトを点灯することができない。通常の60Hz駆動の場合、1フレーム期間(1垂直期間)は16.6msとなるが、フィールドシーケンシャル方式においてRGBに期間を分けた場合、サブフレーム期間は5.56msとなる。したがって、液晶への書き込みと液晶の応答がその(1/2)の2.78msで完了したとしても、バックライトを点灯できる期間は、わずか2.78msに過ぎない。なお、液晶への書き込みや応答が遅い場合には、さらに点灯期間は短くなる。
【0037】
このようにして、この比較例1では、光利用効率は高いものの、時間的な有効期間が1/6程度以下となるため、一定の輝度を得るためには、バックライトの最大輝度は、従来よりも高いものが要求される。例えばLEDの場合、個数を従来よりも増やす必要があり、コスト的に非常に不利である。また、LEDは点灯時のデューティ比が小さくなると電力に対する発光量が低下する傾向があるため、光利用効率が上がったとしても、電力効率は逆に低下してしまうことになる。
【0038】
また、図6に示した比較例2では、バックライトがRGBを隙間無く切り替えながら点灯するときに、色ごとに用意された画像が混ざらないようにするため、バックライト光の色を切り替える際に、黒表示時間を設けている。この場合、各画素202を6倍速で駆動する必要があり、各画素202での駆動消費電力が高くなる。また、黒表示期間ではバックライト光を吸収してしまうため、光利用効率は1/2以下となる。なお、これは、2.78msという非常に高速な液晶応答での数字であるため、実際にこれよりも遅くなると、光利用効率はさらに低下する。
【0039】
さらに、これら比較例1,2では、フィールドシーケンシャル方式における根本的な問題として、前述した色割れ(カラーブレイク)現象の発生というものがある。このような色割れ現象を抑えるため、例えばDIDなどのデバイスではより高速な6倍駆動などを行うことが考えられるが、応答の遅い液晶では同様の対策は難しい。
【0040】
これに対し、本実施の形態では、例えば図7に示したように、各原色光用の映像信号D1R,D1G,D1Bに基づいて、バックライト部3および液晶表示パネル2内の各サブ画素20A,20Bをそれぞれ、1垂直期間内に、以下説明するバックライトオン期間ΔTon1(第1の駆動期間),ΔTon2(第2の駆動期間)を時分割で含むように駆動する。まず、バックライトオフ期間ΔToffにおいて、サブ画素20Aに赤色光用の映像信号D1Rが書き込まれると共にサブ画素20Bに青色光用の映像信号D1Bが書き込まれる。その後、赤色光源3Rおよび青色光源3Bが同時に点灯することにより、バックライトオン期間ΔTon1において、バックライト部3からマゼンダ色(M)の光が射出される。
【0041】
具体的には、このバックライト点灯期間ΔTon1では、図8(A)に示したような状態となる。すなわち、バックライト部3から射出される赤色光および青色光が、サブ画素20Aにおいて、赤色光用の映像信号D1Rに基づいて赤色光が選択的に変調されることにより、赤色光による映像表示がなされる。一方、サブ画素20Bでは、青色光用の映像信号D1Bに基づいて青色光が選択的に変調されることにより、青色光による映像表示がなされる。
【0042】
次に、再びバックライトオフ期間ΔToffにおいて、サブ画素20A,20Bにそれぞれ、緑色光用の映像信号D1Gが書き込まれる。その後、緑色光源3Gが点灯することにより、バックライトオン期間ΔTon2において、バックライト部3から緑色光が射出される。
【0043】
具体的には、このバックライト点灯期間ΔTon2では、図8(B)に示したような状態となる。すなわち、バックライト部3から射出される緑色光が、サブ画素20A,20Bにおいてそれぞれ、緑色光用の映像信号D1Gに基づいて緑色光が選択的に変調されることにより、緑色光による映像表示がなされる。
【0044】
そして、このようなバックライト点灯期間ΔTon1,ΔTon2が、1垂直期間内で時分割に含まれることにより、各原色光の映像信号D1R,D1G,D1Bに基づくフルカラー表示がなされる。
【0045】
この際、バックライト点灯期間ΔTon1において、バックライト部3から赤色光および青色光が射出されると共に、バックライト点灯期間ΔTon2において、バックライト部3から緑色光が射出される。これにより、1垂直期間内における各原色光の射出期間(点灯期間)が、比較例1,2(従来のフィールドシーケンシャル方式)と比べて長くなる。具体的には、赤色光および青色光は、カラーフィルタにより開口率が1/2になるため、光利用効率が1/2に下がる。しかし、点灯期間が5.56ms(液晶の応答が従来例と同じ2.78ms)に増えるため、デューティ比が上がる。なお、この効果は、液晶の応答が遅い場合にさらに顕著となる。
【0046】
また、バックライト点灯期間ΔTon2では、緑色光のみが射出されると共にサブ画素20A,20Bの両方で変調されるため、従来の3原色のカラーフィルタ方式と比べ、フルカラー表示の際の開口率が高まる。具体的には、緑色光については開口率も変わらず期間も延びるため、効率が2倍以上に改善される。現在、緑色用のLEDの電力発光効率は他の色に比べておよそ1/2程度であるため、RGGBおよびGを他の色の2倍搭載するバックライトが多い。したがって、Gの効率が上がることは、他の色よりもコストおよび電力面で効果がある。
【0047】
さらに、バックライト点灯期間ΔTon1では、赤色光および青色光の両方が射出されるため、色割れ(カラーブレイク)現象の発生が抑えられる。具体的には、赤色光および青色光が同時に点灯できることにより、2色の色割れがなくなる。また、従来は特にGおよびBで輝度の変動が激しかったが、R,Bが同時に点灯することにより、輝度の変動が抑えられる。さらに、周波数が同じでも、同じ色が表示されるまでの期間が短縮される。例えば、比較例1,2における13.89msから、11.11msへと短縮される。
【0048】
以上のように本実施の形態では、バックライト点灯期間ΔTon1において、バックライト部3から赤色光および青色光が射出されると共に、バックライト点灯期間ΔTon2において、バックライト部3から緑色光が射出されるようにしたので、1垂直期間内における各原色光の射出期間(点灯期間)を、従来のフィールドシーケンシャル方式)と比べて長くすることができ、デューティ比が高くすることができる。また、バックライト点灯期間ΔTon2では、緑色光のみが射出されると共にサブ画素20A,20Bの両方で変調されるようにしたので、従来の3原色のカラーフィルタ方式と比べ、フルカラー表示の際の開口率を高めることができる。さらに、バックライト点灯期間ΔTon1では、赤色光および青色光の両方が射出されるようにしたので、色割れ(カラーブレイク)現象の発生を抑えることができる。よって、光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能となる。
【0049】
また、バックライト点灯期間ΔTon2において、サブ画素20A,20Bを一括して駆動するようにしたので、書き込み時間を短縮することができる。
【0050】
また、各画素20内のサブ画素20A,20Bにおいて、ゲート線Gが互いに共通接続されると共に、データ線DA,DBがそれぞれ別個に接続されているようにしたので、画素数が2倍になっても、書き込み期間は短縮されないようにすることができる。
【0051】
[変形例]
次に、本発明の変形例をいくつか挙げて説明する。なお、これらの変形例において、本実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0052】
(変形例1)
図9は、変形例1に係る映像表示方法をタイミング図で表したものである。本変形例では、バックライト点灯期間ΔTon1,ΔTon2において、各原色用の映像信号D1R,D1G,D1Bに基づいてサブ画素20A,20Bを駆動する前に、黒表示用の映像信号に基づいて黒表示を行うようになっている。
【0053】
具体的には、まず液晶セルを黒表示とした上で、Yのサブ画素には赤色のデータ、Cのサブ画素には青色のデータが書き込まれた後、赤と青が同時点灯されマゼンタ色のバックライト色となる。次に再び液晶セルに黒を書き込み、バックライトを緑色の点灯に切り替え、次にYとCのサブ画素両方に緑の画像データを書き込むようになっている。
【0054】
これにより、本変形例においても、上記実施の形態と同様に、光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能となる。
【0055】
また、バックライトの点灯期間は1/2フレーム期間、すなわち8.33msまで長くなるため、デューティ比による効率低下が大きく改善できる。液晶を黒にする期間では、バックライト光が吸収されてしまうが、黒以外の期間が5.56msと長いため効率はさほど下がらない。緑色が特に改善できる点については上の例と同様である。
【0056】
(変形例2,3)
図10は、変形例2に係る映像表示方法をタイミング図で表したものである。また、図11は、変形例3に係る映像表示方法をタイミング図で表したものである。なお、変形例2の映像表示方法は、上記実施の形態の映像表示方法の変形例に対応し、変形例3の映像表示方法は、上記変形例1の映像表示方法の変形例に対応している。
【0057】
本変形例では、第1の原色光が赤色(R)光であり、第2の原色光が青色(B)光であり、第3の原色光が緑色(G)光でとなっている。また、サブ画素20Aは、マゼンダ色(M)のカラーフィルタ23Mを有しており、少なくとも赤色光および青色光を透過可能となっている。一方、サブ画素20Bは、シアン色(C)のカラーフィルタ23Cを有し、少なくとも緑色光および青色光を透過可能となっている。
【0058】
具体的には、バックライト点灯期間ΔTon1では、図12(A)に示したように、バックライト部3から黄色(Y)の光が射出される。そして、バックライト部3から射出される赤色光および緑色光が、サブ画素20Aにおいて、赤色光用の映像信号D1Rに基づいて赤色光が選択的に変調されることにより、赤色光による映像表示がなされる。一方、サブ画素20Bでは、緑色光用の映像信号D1Gに基づいて緑色光が選択的に変調されることにより、緑色光による映像表示がなされる。
【0059】
一方、バックライト点灯期間ΔTon2では、図12(B)に示したように、バックライト部3から射出される青色光が、サブ画素20A,20Bにおいてそれぞれ、青色光用の映像信号D1Bに基づいて青色光が選択的に変調されることにより、青色光による映像表示がなされる。
【0060】
このようにして本変形例においても、上記実施の形態と同様に、光利用効率および電力効率を高めつつ、カラー表示の際の画質を向上させることが可能となる。
【0061】
また、視感度の高い緑と赤のカラーブレイクを抑えられるため、より色割れについて改善効果が高くなる。
【0062】
(変形例4)
図13は、変形例4に係るカラーフィルタの構成例を平面図で表したものである。本変形例では、液晶表示パネル2内において、サブ画素20A,20B(カラーフィルタ23Y,23C)が、画素20間で互いに千鳥配置されている。
【0063】
これにより、本変形例では、以下説明する縦スジ現象の発生を抑えることができる。すなわち、例えば図14(A)に示したように、白色光では見られない縦スジ現象が、例えば図14(B)に示したように、RB点灯の瞬間は縦スジ状に見えやすくなってしまうのを抑えることができる。なお、本発明では、従来の画素よりも画素の横幅が太いため、より顕著である。
【0064】
(変形例5)
図15は、変形例5に係る画素(画素20−1)の構成を回路図で表したものである。
【0065】
本変形例では、各画素20内のサブ画素20A,20Bにおいて、ゲート線GA,GBがそれぞれ別個に接続されると共に、データ線Dが互いに共通接続されている。
【0066】
これにより、本変形例では、データドライバ51よりもゲートドライバ52のほうが約1/3程度のコストであることから、コストダウンの効果がある。
【0067】
なお、一方で書き込み期間が短縮される懸念がため、例えば図16に示したように、緑を書き込む期間は、GA,GBによる2ラインを同時に選択することで、書き込み期間を稼ぐようにするのが好ましい。
【0068】
以上、実施の形態およびその変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、各サブ画素20A,20Bに配置されるカラーフィルタの色や、各バックライトオン期間ΔTon1,ΔTon2においてバックライト部3から照射される光の色については、これまで説明した場合には限られず、他の色の組み合わせとしてもよい。
【0070】
また、各画素の回路構成は、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の構成とてしてもよい。例えば、各サブ画素において、ゲート線およびデータ線がそれぞれ別個に接続されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の全体構成を表すブロック図である。
【図2】図1に示したバックライト部の詳細構成例を表す平面模式図である。
【図3】図1に示した画素の詳細構成例を表す回路図である。
【図4】図3に示した画素内の各サブ画素に配置されたカラーフィルタの構成例を表す平面図である。
【図5】比較例1に係る従来のフィールドシーケンシャル方式による映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図6】比較例2に係る従来のフィールドシーケンシャル方式による映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図7】実施の形態に係る液晶表示装置における映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図8】図7に示した映像表示方法の詳細について説明するための模式図である。
【図9】本発明の変形例1に係る映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図10】本発明の変形例2に係る映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図11】本発明の変形例3に係る映像表示方法について説明するためのタイミング図である。
【図12】図10および図11に示した映像表示方法の詳細について説明するための模式図である。
【図13】本発明の変形例4に係るカラーフィルタの構成例を表す平面図である。
【図14】映像表示時の縦スジ現象について説明するための平面模式図である。
【図15】本発明の変形例5に係る画素の構成を表す回路図である。
【図16】図15に示した画素構造における駆動方法の一例を表すタイミング波形図である。
【図17】従来の液晶表示装置において用いられるカラーフィルタの構成例を表す平面図である。
【図18】従来のフィールドシーケンシャル方式による映像表示方法の際に用いられるカラーフィルタの構成例を表す平面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…液晶表示装置、2…液晶表示パネル、20,20−1…画素、20A,20B,20A−1,20B−1…サブ画素、21A,21B…TFT素子、22A,22B…液晶素子、23Y,23C,23M…カラーフィルタ、3…バックライト部、3R,3G,3B…光源、41…画像処理部、51…データドライバ、52…ゲートドライバ、61…タイミング制御部、62…バックライト駆動部、Din,D1,D1R,D1G,D1B…映像信号、G,GA,GB…ゲート線、D,DA,DB…データ線、BM…ブラックマトリクス、ΔTon1,ΔTon2…バックライトオン期間、ΔToff…バックライトオフ期間、VGA,VGB…ゲート電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長領域の第1ないし第3の原色光を個別に射出可能な光源部と、
各々が第1および第2のサブ画素を有する複数の画素が全体としてマトリクス状に配置されると共に、前記光源部から射出された各原色光を映像信号に基づいて変調する液晶表示パネルと、
前記映像信号に基づいて、前記光源部および前記液晶表示パネル内の各サブ画素をそれぞれ、1垂直期間内に第1および第2の駆動期間を時分割で含むようにして駆動する駆動部と
を備え、
前記第1のサブ画素では、少なくとも前記第1および第2の原色光を透過可能となっており、
前記第2のサブ画素では、少なくとも前記第2および第3の原色光を透過可能となっており、
前記駆動部は、
前記第1の駆動期間では、前記光源部が前記第1および第3の原色光をそれぞれ射出するように駆動すると共に、前記第1の原色光用の映像信号に基づいて前記第1のサブ画素を駆動し、かつ、前記第3の原色光用の映像信号に基づいて前記第2のサブ画素を駆動し、
前記第2の駆動期間では、前記光源部が前記第2の原色光を射出するように駆動すると共に、前記第2の原色光用の映像信号に基づいて前記第1および第2のサブ画素をそれぞれ駆動する
液晶表示装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第1および第2の駆動期間において、各原色用の映像信号に基づいて前記第1および第2のサブ画素を駆動する前に、黒表示用の映像信号に基づいて前記第1および第2のサブ画素を駆動する
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記第2の駆動期間では、前記第1および第2のサブ画素を一括して駆動する
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示パネル内において、前記第1および第2のサブ画素が、前記画素間で互いに千鳥配置されている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
一の画素内の前記第1および第2のサブ画素において、
駆動対象の画素を選択するためのゲート線が互いに共通接続されると共に、前記映像信号を供給するためのデータ線がそれぞれ別個に接続されている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
一の画素内の前記第1および第2のサブ画素において、
駆動対象の画素を選択するためのゲート線がそれぞれ別個に接続されると共に、前記映像信号を供給するためのデータ線が互いに共通接続されている
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の原色光が赤色(R)光であり、かつ前記第2の原色光が緑色(G)光であり、かつ前記第3の原色光が青色(B)光であり、
前記第1のサブ画素は、黄色(Y)のカラーフィルタを有し、
前記第2のサブ画素は、シアン色(C)のカラーフィルタを有し、
前記光源部は、前記第1の駆動期間において、マゼンダ色(M)の光を射出する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の原色光が赤色(R)光であり、かつ前記第2の原色光が青色(B)光であり、かつ前記第3の原色光が緑色(G)光であり、
前記第1のサブ画素は、マゼンダ色(M)のカラーフィルタを有し、
前記第2のサブ画素は、シアン色(C)のカラーフィルタを有し、
前記光源部は、前記第1の駆動期間において、黄色(Y)の光を射出する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−113125(P2010−113125A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285305(P2008−285305)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】