説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の反転駆動において、より簡易な構成により、他の画素に充電するための電力を使用することなく、また、開口率を低下させることなく書込性能を向上させる。
【解決手段】画素260は、各画素の階調値に対応する階調電圧が印加される画素電極262と、画素電極262との間で電界を形成し、各画素で共通の電位を有する共通電極263と、走査信号線G[N]がゲートに接続され、ソース及びドレインのいずれか一方がデータ信号線D[M]に、他方が画素電極262に接続された画素トランジスタ261と、走査信号線G[N+1]がゲートに接続され、ソース及びドレインがそれぞれ画素電極262及び共通電極263のいずれか一方に接続されている電位均等化トランジスタ264と、共通電極263に接続され、共通電位に保たれた共通電極配線265とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報通信端末やテレビ受像機の表示デバイスとして、液晶表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、電界を変化させることにより、2つの基板の間に封じ込められた液晶組成物の配向を変え、2つの基板と液晶組成物を通過する光の透過度合いを制御することにより画像を表示させる装置であり、この電界を変化させるために、各画素の階調値に対応する電圧(以下、「階調電圧」という。)を、各画素の画素トランジスタを介して画素電極に印加している。一般に、画面の1ライン分の各画素トランジスタの各ゲートは一つの信号線(以下、「走査信号線」という。)に接続され、走査信号線は、駆動回路内で、各ライン毎に設けられたシフトレジスタにより、1ライン毎に順番に画素トランジスタを導通させる電圧(以下、「アクティブ電圧」という。)を印加するように制御されている。
【0003】
一方、画素トランジスタのソース・ドレイン線に印加される階調電圧において、供給される電荷の極性に偏りがある場合には液晶パネルの短寿命化を招くため、電荷の極性を反転させながら駆動する、いわゆる反転駆動により表示画像の制御を行うのが一般的となっている。この反転駆動は、一般的に、ある固定された電位から上位(正極性)の電位と、下位(負極性)の電位とを交互に印加するため、充分に階調電圧を印加するためには時間を必要とする。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、画素トランジスタが接続された走査信号線より前段の走査信号線に、画素トランジスタとは異なるトランジスタを配置し、前段の画素電極に印加される階調電圧により、当該画素電極を予備充電することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−98461号公報
【特許文献2】特開平7−56544号公報
【特許文献3】特開平5−273543号公報
【特許文献4】特開平5−107561号公報
【特許文献5】特開平3−77922号公報
【特許文献6】特開2005−300821号公報
【特許文献7】国際公開第01/018597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1等に開示された方法は、ある段の画素電極に注目した場合には、有効であると考えられる。しかしながら、その画素電極に充電するために、前段の画素電極に充電するための電力を使用するため、前段の画素に充電するための電圧に電圧降下を生じる恐れがある。また、前段の画素電極に印加している電圧を印加するため、前段の画素電極と同じ極性を有する反転駆動方式を使用せざるをえない。一方で、液晶表示パネルは、光が通過する開口部分の面積をできるだけ大きく保ちたいため、新たな配線等を行うことは望ましくない。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてされたものであり、液晶表示装置の反転駆動において、他の画素に充電するための電力を使用することなく、また、開口率を低下させることなく書込性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶表示装置は、画素の階調に基づく電位が印加され、液晶組成物の配向を制御する電界を形成するための一方の電極である画素電極と、前記液晶組成物の配向を制御する電界を形成するための他方の電極である共通電極と、前記画素電極にソース及びドレインのいずれか一方が接続され、導通することにより前記画素電極に前記階調に基づく電位を印加する画素トランジスタである第1画素トランジスタと、前記第1画素トランジスタのゲートに接続され、前記第1画素トランジスタを導通させるためのアクティブ電位が印加される第1走査信号線と、前記第1走査信号線より前のタイミングで前記アクティブ電位が印加される第2走査信号線と、前記第2走査信号線が前記アクティブ電位となることにより、前記共通電極と前記画素電極とを導通させる電位均等化トランジスタと、を備える液晶表示装置である。
【0009】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記画素と隣り合う画素の画素トランジスタである第2トランジスタを更に備え、前記第2走査信号線は、前記第2トランジスタのゲートに接続され、前記第1走査信号線と前記第2走査信号線とは、それぞれ順に前記アクティブ電位となる、こととしてもよい。
【0010】
また、本発明の液晶表示装置において、前記画素電極は、表示面上に投影した場合に、前記第1走査信号線と前記第2走査信号線との間に形成されており、前記画素電極は、前記第1走査信号線上まで伸びる第1突出部と、前記第2走査信号線上まで伸びる第2突出部と、を有し、前記共通電極は、前記第2走査信号線の前記画素電極側に隣接して配置された、前記第2走査信号線と並行して延びる共通信号配線を有している、こととしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置を示す図である。
【図2】図1の液晶表示パネルの構成を示す図である。
【図3】図2のTFT基板に形成された複数の画素の一部と、画素内の回路について概略的に示す図である。
【図4】画素における電極及び配線の形状について具体的に示す図である。
【図5】図4のV−V線における断面を概略的に示す図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面を概略的に示す図である。
【図7】図4のVII−VII線における断面を概略的に示す図である。
【図8】図3の画素内の回路の動作のタイミングチャートについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置100を示す図である。この図に示すように、液晶表示装置100は、液晶表示パネル200と、液晶表示パネル200を挟むように固定する上フレーム101及び下フレーム102と、表示する情報を生成する回路素子を備える不図示の回路基板と、その回路基板において生成された表示情報を液晶表示パネル200に伝える不図示のフレキシブル基板と、により構成される。
【0014】
図2には、図1の液晶表示パネル200の構成が示されている。液晶表示パネル200は、TFT基板230とカラーフィルタ基板220の2枚の基板を有し、これらの基板の間には液晶組成物が封止されている。TFT基板230には、走査信号駆動回路240により制御される走査信号線G[N]、及びデータ信号駆動回路250により制御されるデータ信号線D[M]が張り巡らされ、これらの信号線は、液晶表示装置100の複数の画素260を形成している。なお、M及びNは、それぞれカラム数及びライン数に対応した自然数である。また、液晶表示パネル200は、その表示の解像度に対応する数の画素260を有するが、図が煩雑になるのを避けるため、図2では簡略化して示している。
【0015】
なお、本実施形態の液晶表示パネル200は、TFT基板230内に2つの電極(図3の画素電極262及び共通電極263)を有するいわゆるIPS(In Plane Switching)方式の液晶表示パネル200である。
【0016】
図3は、TFT基板230に形成された複数の画素260の一部と画素260内の回路について概略的に示す図である。画素260は、各画素の階調値に対応する階調電圧が印加される画素電極262と、各画素で共通の電位VCOMを有し、画素電極262との間で電界を形成する共通電極263と、走査信号線G[N]がゲートに接続され、ソース及びドレインのいずれか一方がデータ信号線D[M]に、他方が画素電極262に接続された画素トランジスタ261と、走査信号線G[N+1]がゲートに接続され、ソース及びドレインがそれぞれ画素電極262及び共通電極263のいずれか一方に接続されている電位均等化トランジスタ264と、共通電極263に接続され、共通電位VCOMに保たれた共通電極配線265とを有している。本実施形態では、画素トランジスタ261及び電位均等化トランジスタ264は、N−MOS型で形成されている。
【0017】
図4には、画素260における電極及び配線の形状が具体的に示されている。本実施形態では、画素電極262は、向きの異なるスリットを有する2つの領域を有しており、共通電極263は、画素電極262と平行な平板状の電極となっており、表示面に平行な面に投影した場合に画素電極262と重なるように配置されている。画素トランジスタ261は、走査信号線G[N]上に形成され、データ信号線D[M]から延びたU字型のドレイン電極261aと、アモルファスシリコン膜261bと、ソース電極261cとから構成され、ソース電極261cは、画素電極262の走査信号線G[N]上への突出部分262aと接続されている。なお、走査信号線G[N−1]上には、画素トランジスタ261の前段の画素トランジスタ271が形成されている。
【0018】
電位均等化トランジスタ264は、走査信号線G[N−1]上に形成され、画素電極262の走査信号線G[N−1]上への突出部分262bと、ソース電極及びドレイン電極のいずれかとして機能する突出部分262bと接続されたソース・ドレイン電極264aと、同じくソース電極及びドレイン電極のいずれかとして機能し、共通電極配線265側の電極であるソース・ドレイン電極264bと、アモルファスシリコン膜264cと、共通電極配線265及びソース・ドレイン電極264bとを接続するブリッジ配線264dと、を有している。
【0019】
図5には、図4のV−V線における断面が概略的に示されている。図5に示されるように、走査信号線G[N−1]の上方にアモルファスシリコン膜264cが形成され、走査信号線G[N−1]が各トランジスタのソース及びドレイン間を導通させるアクティブ電位であるハイ電位となった場合には、ソース・ドレイン電極264a及び264bを介して、突出部分262bとブリッジ配線264dとが導通する。なお、走査信号線G[N−1]の下には、ITO等の透明電極269が成膜されている。
【0020】
図6には、図4のVI−VI線における断面が概略的に示されている。図6に示されるように、ソース・ドレイン電極264aと接続された突出部分262bは、共通電極配線265を跨るように越えて、画素電極262へ延びている。
【0021】
図7には、図4のVII−VII線における断面が概略的に示されている。図7に示されるように、ソース・ドレイン電極264bと共通電極配線265とは、2つのスルーホールを利用してブリッジ配線264dにより接続されている。
【0022】
図8は、図3の画素内の回路の動作のタイミングチャートについて示す図である。ここでは、ゲートに走査信号線G[N]が接続され、ドレインにデータ信号線D[M]が接続された画素トランジスタ261により階調電圧が印加される画素260に注目して説明する。このタイミングチャートに示されるように、時刻t2において走査信号線G[N−1]がハイ電位になると、電位均等化トランジスタ264のソース・ドレイン間が導通し、画素電極262は共通電位VCOMになるように変化する。引き続き、時刻t3において、走査信号線G[N−1]がロー電位となって、電位均等化トランジスタ264のソース・ドレイン間が非導通となると共に、走査信号線G[N]がハイ電位となり、画素トランジスタ261のソース・ドレイン間が導通する。これにより、負極性の階調電圧が印加されたデータ信号線D[M]の電位が画素電極262に伝わり、画素電極262の電位はデータ信号線D[M]の電位となる。時刻t4で、走査信号線G[N]がロー電位となり、画素トランジスタ261のソース・ドレイン間が非導通となると、画素電極262は負極性であるデータ信号線D[M]の電位に保持される。
【0023】
次のフレームにおいても、同様に、時刻t12において走査信号線G[N−1]がハイ電位になると、画素電極262は共通電位VCOMになるように変化する。引き続き、時刻t13において、走査信号線G[N−1]がロー電位となって、走査信号線G[N]がハイ電位となると、前フレームとは異なる正極性の階調電圧が印加されたデータ信号線D[M]の電位が画素電極262に伝わり、画素電極262の電位はデータ信号線D[M]の電位となる。時刻t14で、走査信号線G[N]がロー電位となり、画素トランジスタ261のソース・ドレイン間が非導通となると、画素電極262は正極性であるデータ信号線D[M]の電位に保持される。
【0024】
以上述べたように、上述の実施形態においては、反転駆動における、画素電極の極性の変換を共通電極の電位を利用して行っているため、他の画素に充電するための電力を使用することなく、前段の走査信号線がアクティブとなるタイミングで、画素電極の電位を共通電極の電位にまで戻すことができる。
【0025】
また、階調電圧を印加するタイミングでは、共通電極の電位から印加させることができるため、より早く階調電圧に近づけられ、書込性能が向上する。これにより、1フレームの画像表示の高速化・高解像度化を図ることができる。
【0026】
本発明は上述の事情に鑑みてされたものであり、液晶表示装置の反転駆動において、より簡易な構成により、他の画素に充電するための電力を使用することなく、また、開口率を低下させることなく書込性能を向上させることを目的とする。
【0027】
また、走査信号線上に電位均等化トランジスタを形成し、走査信号線に隣接した共通電極配線と導通させているため、新たに専用の配線を設ける必要がなく、開口率を保ったまま、実現することができる。
【0028】
なお、上述の実施形態では各画素に用いるトランジスタをN−MOS型のトランジスタとしたが、P−MOS型のトランジスタで構成されていてもよい。
【0029】
また、上述の実施形態では反転駆動を所謂カラム反転駆動としたが、ライン反転駆動、ドット反転駆動、フレーム反転駆動においても同じ回路を用いて実施することができる。
【0030】
また、上述の実施形態に係る液晶表示装置は、TFT基板にのみに電極が設けられたIPS(In Plane Switching)方式としたが、TFT基板及びカラーフィルタ基板の両方に電極が設けられたTN(Twisted Nematic)方式又はVA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置であっても、共通電極信号線が各画素近くまで延びている場合には適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100 液晶表示装置、101 上フレーム、102 下フレーム、200 液晶表示パネル、220 カラーフィルタ基板、230 TFT基板、240 走査信号駆動回路、250 データ信号駆動回路、260 画素、261 画素トランジスタ、261a ドレイン電極、261b アモルファスシリコン膜、261c ソース電極、262 画素電極、262a,262b 突出部分、263 共通電極、264 電位均等化トランジスタ、264a,264b ソース・ドレイン電極、264c アモルファスシリコン膜、264d ブリッジ配線、265 共通電極配線、269 透明電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素の階調に基づく電位が印加され、液晶組成物の配向を制御する電界を形成するための一方の電極である画素電極と、
前記液晶組成物の配向を制御する電界を形成するための他方の電極である共通電極と、
前記画素電極にソース及びドレインのいずれか一方が接続され、導通することにより前記画素電極に前記階調に基づく電位を印加する画素トランジスタである第1画素トランジスタと、
前記第1画素トランジスタのゲートに接続され、前記第1画素トランジスタを導通させるためのアクティブ電位が印加される第1走査信号線と、
前記第1走査信号線より前のタイミングで前記アクティブ電位が印加される第2走査信号線と、
前記第2走査信号線が前記アクティブ電位となることにより、前記共通電極と前記画素電極とを導通させる電位均等化トランジスタと、を備える液晶表示装置。
【請求項2】
前記画素と隣り合う画素の画素トランジスタである第2画素トランジスタを更に備え、
前記第2走査信号線は、前記第2画素トランジスタのゲートに接続され、
前記第1走査信号線と前記第2走査信号線とは、それぞれ順に前記アクティブ電位となる、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記画素電極は、表示面上に投影した場合に、前記第1走査信号線と前記第2走査信号線との間に形成されており、
前記画素電極は、
前記第1走査信号線上まで伸びる第1突出部と、
前記第2走査信号線上まで伸びる第2突出部と、を有し、
前記共通電極は、前記第2走査信号線の前記画素電極側に隣接して配置された、前記第2走査信号線と並行して延びる共通信号配線を有している、ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−227126(P2011−227126A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93935(P2010−93935)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】