説明

液晶装置及び電子機器

【課題】液晶装置において、簡単な構成で、好適に装置の温度を検出する。
【解決手段】液晶装置は、シール材(52)を介して貼り合わされた一対の基板(10,20)と、一対の基板間に挟持された液晶(50)と、一方の前記基板の少なくとも一辺に沿って配置され、平面的に見てシール材と重なる位置に配置された感温配線(200)とを備える。感温配線は、温度を検出可能な配線として構成されており、装置の温度を好適に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び該液晶装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液晶装置として、例えば入射した光を液晶によって変調することで画像を表示するものがある。液晶は、温度に応じて光学的特性(例えば、屈折率、誘電率、弾性係数、粘性等)が変化することが知られている。このため、例えば特許文献1では、温度センサーを備える装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−201784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、基板上に温度センサーとして新たな素子(具体的には、センサー制御電極や、センサー入力電極及びセンサー出力電極)が作り込まれている。このため、仮に温度センサーを用いて装置の温度変化を検出できたとしても、温度センサーを作り込むが故に、装置構成及び製造工程の複雑化や、製造コストの増大を招いてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、簡単な構成で、好適に装置の温度を検出することが可能な液晶装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液晶装置は上記課題を解決するために、シール材を介して貼り合わされた一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶と、一方の前記基板の少なくとも一辺に沿って配置され、平面的に見て前記シール材と重なる位置に配置された感温配線とを備えている。
【0007】
本発明の液晶装置は、四辺がシール材を介して互いに貼り合わされた一対の基板を備えている。一対の基板は、例えば画素電極やトランジスター等の各種素子が形成される素子基板、及び対向電極が形成される対向基板として形成される。一対の基板間には、液晶が挟持されており、液晶分子の配向方向に応じて装置に入射した光を変調する。シール材は、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、基板の四辺に沿って配置されている。
【0008】
ここで特に、上述した感温配線は、四辺のうち少なくとも一辺に沿って配置されている。また感温配線は、基板を平面的に見てシール材と重なる位置に配置されている。シール材と重なる領域は、液晶が存在しない領域(即ち、表示に寄与しない領域)であるため、感温配線をシール材と重なる位置に配置することで、額縁領域を広くすることなく、感温配線を配置することができる。
【0009】
感温配線は、例えば所定の電流を流すことにより、温度を検出可能に構成されている。よって、感温配線を用いれば、装置の温度を検出することが可能である。感温配線によって検出された温度は、例えば液晶が配置されるシール内領域(言い換えれば、表示領域)や、周辺の駆動回路等において発生する熱の影響を受けている。よって、感温配線によって検出された温度は、装置全体の温度と見なすことができる。
【0010】
液晶は、温度変化に応じて光学的特性が変化する。よって、仮に装置の温度変化を考慮しなければ、信頼性や表示品質が低下してしまうおそれがある。しかるに本発明では、感温配線によって装置の温度を検出できるため、温度変化に応じた装置の制御が行える。例えば、検出された温度から液晶の応答性が悪いと判断した場合には、画像を表示するための信号としてより急峻なパルスを供給するように制御する。
【0011】
以上説明したように、本発明の液晶装置によれば、簡単な構成で、好適に装置の温度を検出することが可能である。
【0012】
本発明の液晶装置の一態様では、前記感温配線は、前記一対の基板のうち一方の基板上に導電材料を含んで膜状に形成されており、抵抗の変化に応じて温度を検出する。
【0013】
この態様によれば、一対の基板のうち一方の基板上には、例えばアルミ等の導電材料を含んだ膜状の感温配線が形成されている。尚、ここでの「膜状」とは、ベタ状の配線を意味するだけでなく、蛇行する配線が高い密度で配線されている場合のように、平面的に見て膜状と同様の形態とみなせる構成も含む広い概念である。
【0014】
感温配線は、温度変化によって抵抗が変化する。このため、感温配線の抵抗を用いて温度を検出することが可能である。具体的には、例えば外部回路から感温配線に対して所定の電流を流すことにより、感温配線の抵抗を検出することができる。そして、検出された抵抗の値から温度を推定できる。
【0015】
ここで特に、上述した感温配線は、平面的に見てシール材と少なくとも部分的に重なるように配置されている。シール材と重なる領域は、液晶が存在しない領域(即ち、表示に寄与しない領域)であるため、遮光性を有する金属配線等が配置される場合が殆どである。よって、導電材料を含む感温配線を配置したとしても、装置の動作に影響はない。また、装置に既に備えられている金属配線を、そのまま感温配線として用いることもできる。よって、装置構成や製造工程の複雑化、製造コストの増大を抑制することができる。
【0016】
上述した感温配線によれば、簡単な構成で、好適に装置の温度を検出することが可能である。
【0017】
本発明の液晶装置の一態様では、前記一方の基板上には、走査線、データ線、前記走査線及び前記データ線の交差に対応して設けられるトランジスター、前記トランジスターに対応して設けられた画素電極を含む複数の導電層が夫々積層するように形成されており、前記感温配線は、前記複数の導電層のうち、いずれかと同じ層に形成されている。
【0018】
この態様によれば、一方の基板上には、走査線、データ線、トランジスター、及び画素電極である複数の導電層が夫々積層するように形成される。即ち、一方の基板は素子基板であり、本態様に係る液晶装置では、トランジスターのスイッチング制御によるアクティブマトリクス駆動を実現することができる。複数の導電層は、上述した各種配線や素子の他に、例えば蓄積容量を形成する容量電極や、各層の電気的接続を中継する中継層等を含んでいてもよい。
【0019】
本態様に係る感温配線は、一方の基板上に形成される複数の導電層のうち、いずれかと同じ層に形成されている。尚、ここでの「同じ層」とは、同一の成膜工程によって形成されることを意味する。感温配線は、例えば一方の基板上に導電膜を形成した後、その導電膜を部分的に除去して、相互に分断することで形成される。
【0020】
上述した感温配線によれば、複数の導電層と同じ成膜工程によって形成できるため、製造工程の増加させずに済む。よって、製造工程の複雑化、製造コストの増大を確実に抑制することが可能である。
【0021】
上述した複数の導電層を備える態様では、前記感温配線は、前記複数の導電層のうち、平面的に見た場合の密度が最も高い層と同じ層に形成されるように構成してもよい。
【0022】
この場合、感温配線と同じ層には、比較的高い密度で導電層が形成されることになる。よって、液晶や周辺の駆動回路等において発生した熱が、効率よく感温配線に伝達される。この結果、感温配線の温度は熱の発生源と近い温度となる。従って、装置の温度をより正確に検出することが可能となる。
【0023】
尚、感温配線と同じ層である導電層が、密度が最も高い層でなくとも、他の層より密度が高い層であれば、上述した効果は相応に得られる。
【0024】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記感温配線は、遮光性を有する材料を含んでいる。
【0025】
この態様によれば、感温配線が、例えばアルミ等の遮光性を有する材料を含んで形成されるため、シール材と重なる領域における遮光を感温配線によって実現できる。従って、光漏れ等に起因する表示品質の低下を抑制できる。また、他の遮光膜を設けずに済むため、装置構成や製造工程の複雑化を防止することができる。
【0026】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の液晶装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0027】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る液晶装置を具備してなるので、高品質な表示が可能であり、信頼性の高い投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成する各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】実施形態に係る液晶装置の画素部の構成を示す断面図である。
【図5】感温配線の配置領域を示す平面図である。
【図6】感温配線の積層構造を簡略的に示す断面図である。
【図7】液晶装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0031】
<液晶装置>
本実施形態に係る液晶装置について図1から図6を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の液晶装置の一例として駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を挙げて説明する。
【0032】
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0033】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置では、本発明の「一対の基板」の一例であるTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0034】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0035】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0036】
本実施形態に係る液晶装置では特に、上述したシール材と平面的に重なるシール領域に、抵抗に応じて温度を検出可能な感温配線が設けられている。図1では、説明の便宜上、感温配線の図示を省略しているが、感温配線の具体的な構成については後に詳述する。
【0037】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0038】
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0039】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0040】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0041】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0042】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0043】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0044】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0045】
次に、本実施形態に係る液晶装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0046】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0047】
TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0048】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0049】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカーの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0050】
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る液晶装置の画素部の構成を示す断面図である。尚、図4及び図5では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図4では、説明の便宜上、画素電極9aより上側に位置する部分の図示を省略している。
【0051】
図4において、TFTアレイ基板10上には、本発明の「トランジスター」の一例であるTFT30が形成されている。TFT30は、半導体層1aと、走査線3aと電気的に接続されたゲート電極3bとを含んで構成されている。
【0052】
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。
【0053】
データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a’を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成されている。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域間に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0054】
ゲート電極3bは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、図示しないコンタクトホール等によって走査線3aと電気的に接続されている。ゲート電極3b及び半導体層1a間は、ゲート絶縁膜2によって絶縁されている。
【0055】
図4において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも下地絶縁膜12を介して下層側には、走査線3aが設けられている。走査線3aは、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等の遮光性材料からなる。これにより、走査線3aは、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクター等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などである、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り光から、TFT30のチャネル領域1a’及びその周辺を遮光する下側遮光膜としても機能する。
【0056】
下地絶縁膜12は、走査線3aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
【0057】
図4において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも第1層間絶縁膜41を介して上層側には、蓄積容量70が設けられている。
【0058】
蓄積容量70は、下部容量電極71と上部容量電極300aが誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0059】
上部容量電極300aは、容量線300の一部として形成されている。容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設されている。上部容量電極300aは、容量線300を介して定電位源と電気的に接続され、固定電位に維持された固定電位側容量電極である。上部容量電極300aは、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されており、TFT30を遮光する上側遮光膜(内蔵遮光膜)としても機能する。尚、上部容量電極300aは、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から構成されていてもよい。この場合には、上部容量電極300aの内臓遮光膜としての機能を高めることができる。
【0060】
下部容量電極71は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極である。より具体的には、下部容量電極71は、コンタクトホール83を介して画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されると共に、コンタクトホール84を介して中継層93に電気的に接続されている。更に、中継層93は、コンタクトホール85を介して画素電極9aに電気的に接続されている。即ち、下部容量電極71は、中継層93と共に画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9a間の電気的な接続を中継する。下部容量電極71は、導電性のポリシリコンから形成されている。よって、蓄積容量70は、所謂MIS構造を有している。尚、下部容量電極71は、画素電位側容量電極としての機能の他、上側遮光膜としての上部容量電極300aとTFT30との間に配置される、光吸収層或いは遮光膜としての機能も有する。
【0061】
誘電体膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
【0062】
尚、下部容量電極71を、上部容量電極300aと同様に金属膜から形成してもよい。即ち、蓄積容量70を、金属膜−誘電体膜(絶縁膜)−金属膜の3層構造を有する、所謂MIM構造を有するように形成してもよい。この場合には、導電性のポリシリコン等を用いて下部容量電極71を構成する場合に比べて、液晶装置の駆動時に、当該液晶装置全体で消費される消費電力を低減でき、且つ各画素部における素子の高速動作が可能になる。
【0063】
図4において、TFTアレイ基板10上の蓄積容量70よりも第2層間絶縁膜42を介して上層側には、データ線6a及び中継層93が設けられている。
【0064】
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。データ線6aは、TFT30を遮光する機能も有している。
【0065】
中継層93は、第2層間絶縁膜42上においてデータ線6aと同層に形成されている。データ線6a及び中継層93は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を第2層間絶縁膜42上に薄膜形成法を用いて形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間させた状態で形成される。従って、データ線6a及び中継層93を同一工程で形成できるため、装置の製造プロセスを簡便にできる。
【0066】
図4において、画素電極9aは、データ線6aよりも第3層間絶縁膜43を介して上層側に形成されている。画素電極9aは、下部容量電極71、コンタクトホール83、84及び85並びに中継層93を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続されている。コンタクトホール85は、層間絶縁層43を貫通するように形成された孔部の内壁にITO等の画素電極9aを構成する導電材料が成膜されることによって形成されている。画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。
【0067】
以上に説明した画素部の構成は、各画素部に共通であり、画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。尚、上述した走査線3a、データ線6a、蓄積容量70、下側遮光膜11a、中継層93及びTFT30は、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aに対応する各画素の開口領域(即ち、各画素において、表示に実際に寄与する光が透過又は反射される領域)を囲む非開口領域内に配置されている。即ち、これらの走査線3a、データ線6a、蓄積容量70、中継層93、下側遮光膜11a及びTFT30は、表示の妨げとならないように、各画素の開口領域ではなく、非開口領域内に配置されている。
【0068】
次に、本実施形態に係る液晶装置に備えられる感温配線について、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、感温配線の配置領域を示す平面図である。また図6は、感温配線の積層構造を簡略的に示す断面図である。尚、図5及び図6では、説明の便宜上、図1や図4等で示した液晶装置を構成する詳細な部材について、適宜図示を省略している。
【0069】
図5において、本実施形態に係る液晶装置には、シール材52と重なるシール領域に、感温配線配置領域200aが設けられている。感温配線配置領域200aには、例えばアルミ等の金属材料を含んだ膜状の感温配線200が設けられる。尚、感温配線200は、感温配線配置領域200aを埋めるようなベタ状の配線であってもよいし、感温配線配置領域200aを高密度で蛇行するような配線であってもよい。即ち、感温配線200は、後述する温度を検出するという機能を有する限り、その形状は限定されない。但し、感温配線200が感温配線配置領域200aを埋めるように形成されれば、感温配線200を遮光膜として機能させることができる。
【0070】
図6において、上述した感温配線200は、データ線駆動回路101や走査線駆動回路104が設けられるドライバー領域における第1ドライバー配線部410と同じ層に設けられている。
【0071】
ドライバー領域には、下層側から順に、トランジスター部35、第1ドライバー配線部410、第2ドライバー部420が設けられている。トランジスター部35は、各ドライバーにおいてスイッチング制御を行うトランジスターを有しており、画素部におけるTFT30(図4参照)と同じ層に設けられている。第1ドライバー配線部410は、画素部における下部容量電極71(図4参照)と同じ層に設けられている。第2ドライバー配線部420は、画素部における容量電極層300aと同じ層に設けられている。
【0072】
感温配線200が設けられるシール領域には、下層側から順に、感温配線200、第1COM配線510、第2COM配線520が設けられている。第1COM配線510は、対向基板20側に供給する電位を伝達する配線であり、ドライバー領域における第2ドライバー配線部520と同じ層(即ち、画素部における容量電極層300aと同じ層)に設けられている。第2COM配線520は、第1COM配線510と同様に対向基板20側に供給する電位を伝達する配線であり、画素部におけるデータ線6a(図4参照)と同じ層に設けられている。
【0073】
感温配線200は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を形成した後、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって、第1ドライバー配線部410と相互に離間させた状態で形成される。このようにすれば、感温配線200を第1ドライバー配線部410、更には画素部における下部容量電極71と同一工程で形成できるため、装置の製造プロセスを簡便にできる。
【0074】
尚、感温配線200は、必ずしも第1ドライバー配線部410と同じ層に形成されずともよく、他の導電層と同じ層に形成されてもよい。例えば、感温配線200は、図6における第1COM配線510や第2COM配線520の位置に設けられても構わない。但し、感温配線200は、比較的密度の高い導電層と同じ層に形成されることが好ましい。この場合、感温配線200への熱伝導率が高められるため、後述する温度検出の機能をより精度の高いものとすることができる。
【0075】
感温配線200は、例えばアルミ等の金属を含んで構成されているため、温度変化によって抵抗が変化する。このため、感温配線200の抵抗を用いて温度を検出することが可能である。具体的には、例えば外部回路から感温配線200に対して所定の電流を流すことにより、感温配線200の抵抗を検出することができる。そして、検出された抵抗の値から温度を推定できる。外部回路では、例えば検出された抵抗の値と温度の関係が示されたテーブル等を用いて温度が検出される。或いは、予め設定された数式を用いて温度が算出される。
【0076】
感温配線200によって検出された温度は、例えば液晶層50が配置される画像表示領域10aや、周辺の駆動回路等において発生する熱の影響を受けている。よって、感温配線200によって検出された温度は、装置全体の温度と見なすことができる。
【0077】
液晶層50は、温度変化に応じて光学的特性が変化する。よって、仮に装置の温度変化を考慮しなければ、信頼性や表示品質が低下してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態に係る液晶装置では、感温配線200によって装置の温度を検出できるため、温度変化に応じた装置の制御が行える。例えば、検出された温度から液晶層50における液晶分子の応答性が悪いと判断した場合には、画像を表示するための信号としてより急峻なパルスを供給するように制御する。このようにすれば、液晶の応答性悪化に起因する表示品質の低下を効果的に抑制することができる。
【0078】
ここで仮に、感温配線200に代えて、別途温度センサーを設ける場合について考える。この場合、温度センサーを構成する素子を新たにTFTアレイ基板10上に作り込むことが求められてしまうため、結果的に装置構成や製造工程の複雑化を招いてしまうおそれがある。
【0079】
これに対し、本実施形態に係る感温配線200は、平面的に見てシール材52と少なくとも部分的に重なるように配置される。シール材52と重なる領域は、液晶層50が存在しない領域(即ち、表示に寄与しない領域)であるため、遮光性を有する金属配線等が配置される場合が殆どである。よって、導電材料を含む感温配線200を配置したとしても、装置の動作に影響はない。また、既に装置に備えられている金属配線を、そのまま感温配線200として用いることもできる。よって、装置構成や製造工程の複雑化、製造コストの増大を抑制することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置によれば、感温配線200を備えているため、簡単な構成で、好適に装置の温度を検出することが可能である。
【0081】
<電子機器>
次に、上述した液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図7は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
【0082】
図7に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0083】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0084】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0085】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
【0086】
尚、図7を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピューターや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0087】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置、及び該液晶装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、35…トランジスター部、50…液晶層、70…蓄積容量、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、200…感温配線、410…第1ドライバー配線部、420…第2ドライバー配線部、510…第1COM配線部、510…第2COM配線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材を介して貼り合わされた一対の基板と、
前記一対の基板間に挟持された液晶と、
一方の前記基板の少なくとも一辺に沿って配置され、平面的に見て前記シール材と重なる位置に配置された感温配線と
を備えることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記感温配線は、前記一対の基板のうち一方の基板上に導電材料を含んで膜状に形成されており、抵抗の変化に応じて温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記一方の基板上には、走査線、データ線、前記走査線及び前記データ線の交差に対応して設けられるトランジスター、前記トランジスターに対応して設けられた画素電極を含む複数の導電層が夫々積層するように形成されており、
前記感温配線は、前記複数の導電層のうち、いずれかと同じ層に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記感温配線は、前記複数の導電層のうち、平面的に見た場合の密度が最も高い層と同じ層に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記感温配線は、遮光性を有する材料を含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−155007(P2012−155007A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11961(P2011−11961)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】