説明

液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及びポリオルガノシロキサン化合物

【課題】本発明の目的は残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性を満足する液晶表示素子、この液晶表示素子が備える液晶配向膜、この液晶配向膜を形成する液晶配向剤、及びこの液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物の提供である。
【解決手段】本発明は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有し、この[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体に由来する部分とを有している液晶配向剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子及びポリオルガノシロキサン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、消費電力が小さく、小型化及びフラット化が容易である等の利点を有することから、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広く用いられている。
【0003】
液晶表示装置の表示モードとして、例えば特許文献1〜4には、液晶分子の配向状態の変化に応じ、Twisted Nematic型(TN型)、Super Twisted Nematic型(STN型)、In−Plane Switching型(IPS型)、Vertical Alignment型(VA型)等の液晶セルを有する液晶表示素子が開示されている。いずれの表示モードにおいても、液晶分子の配向状態は、液晶配向膜で制御されていることから、液晶配向膜及びこの液晶配向膜の材料となる液晶配向剤の有する特性が、液晶表示素子の特性の発現に影響する。
【0004】
塗膜に液晶配向能を付与する一般的な方法としては、配向均一性、処理時間及び処理コストの点で有利なラビング処理が挙げられる。ラビング処理とは、基板表面に有機膜を形成し、次いで、その有機膜の表面をレーヨン等の布材で一方向にこすり、液晶配向能を付与する方法である。
【0005】
しかし、ラビング処理を行うと、工程内でほこりが発生しやすく、また静電気が発生しやすいために液晶配向膜の表面にほこりが付着し、表示不良を発生するおそれがある。また、より高精細化した液晶表示素子においては、画素の高密度化に伴い基板表面に凹凸が生じるため、均一にラビング処理を行うことが困難となりつつある。
【0006】
そこで、ラビング処理とは異なる方法として、例えば特許文献5〜18には、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリイミド等の感光性薄膜に偏光又は非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が開示されている。この方法によれば、ほこりや静電気を発生することなく、均一な液晶配向が実現できる。
【0007】
一方、液晶配向膜では、例えばTN型、STN型等の表示モードにおいて、液晶分子を基板面に対し所定の角度(プレチルト角)で傾斜配向させる必要がある。このプレチルト角は、光配向法により液晶配向膜を形成する場合、通常、基板面への入射方向が基板法線から傾斜した放射線の照射により付与される。
【0008】
しかし、従来の液晶配向剤を用いて光配向法により形成した液晶配向膜は、残像特性に劣り、また、液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、プレチルト角の経時的安定性、印刷性等の特性を十分に満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開昭56−91277号公報
【特許文献4】米国特許第5,928,733号
【特許文献5】特開平9−222605号公報
【特許文献6】特開平6−287453号公報
【特許文献7】特開平10−251646号公報
【特許文献8】特開平11−2815号公報
【特許文献9】特開平11−152475号公報
【特許文献10】特開2000−144136号公報
【特許文献11】特開2000−319510号公報
【特許文献12】特開2000−281724号公報
【特許文献13】特開平9−297313号公報
【特許文献14】特開2003−307736号公報
【特許文献15】特開2004−163646号公報
【特許文献16】特開2006−171304号公報
【特許文献17】特開2007−224273号公報
【特許文献18】特開2007−256484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性を満足する液晶表示素子、この液晶表示素子が備える液晶配向膜、この液晶配向膜を形成する液晶配向剤、及びこの液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有し、
この[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体(以下、「桂皮酸誘導体」とも称する)に由来する部分と
を有している液晶配向剤である。
【0012】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び光配向性を有する桂皮酸誘導体に由来する基を含んでいることから、当該液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性等の特性を満足する。
【0013】
上記桂皮酸誘導体は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、
は、それぞれ独立して水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基又は炭素数1〜40のアルキル基である。但し、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。
及びRは、それぞれ独立して単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又はこれらを2種以上組合わせた連結基である。
は、(c+1)価の有機基である。
は、単結合、酸素原子、−COO−、−OCO−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、−CH=CH−、2価の芳香族基又は2価の脂環式基である。
は、カルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR、−CH=CH又は−SOClである。このRは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。
は、それぞれ独立してフッ素原子又はシアノ基である。
a及びbは、それぞれ独立して0又は1の整数である。但し、aとbとが共に0となることはない。cは、2〜5の整数である。dは、0〜4の整数である。但し、R、R、R及びRが複数の場合、複数のR、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
桂皮酸誘導体として、上記特定化合物を用いることにより配向性能がより高くなり、残像特性、電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性及び印刷性をより向上できる。
【0015】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(1)で表される化合物との反応生成物であることが好ましい。エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと桂皮酸誘導体との間の反応性を利用することによりポリオルガノシロキサンに光配向性を有する桂皮酸誘導体に由来する基を容易に導入できる。
【0016】
上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、下記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、Xは、下記式(X−1)又は(X−2)で表される基である。Yは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。)
【化3】

(式(X−1)中、Aは、酸素原子又は単結合である。eは、1〜3の整数である。fは、0〜6の整数である。但し、fが0の場合、Aは単結合である。
式(X−2)中、gは、1〜6の整数である。
式(X−1)及び(X−2)中、*は、それぞれケイ素原子と結合する部位を示す。)
【0017】
上記エポキシ基を有する1価の有機基として上記式(X−1)又は(X−2)で表される基を採用することにより、当該液晶配向剤の[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、上記桂皮酸誘導体に由来する基を導入しやすくなる。
【0018】
当該液晶配向剤は、[B]ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[B]重合体」とも称する)をさらに含有することが好ましい。当該液晶配向剤が[B]重合体をさらに含有することで、より電圧保持率等の電気特性が改善された液晶表示素子が得られる。
【0019】
当該液晶配向剤は、[C]下記式(4)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「[C]他のポリオルガノシロキサン」とも称する)をさらに含有することが好ましい。
【化4】

(式(4)中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは、水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。)
【0020】
当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサンをさらに含有することで、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋を促進させることができ、結果として、得られる液晶標示素子の良好なプレチルト角の経時的安定性、電圧保持率等をより向上できる。
【0021】
本発明の液晶配向膜は、当該液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える。これにより、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、残像特性、印刷性等の特性を満足する。
【0022】
本発明のポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体に由来する部分とを有している。
【0023】
当該ポリオルガノシロキサン化合物は、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性等の特性を満足する液晶表示素子を構成するための液晶配向剤に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性を満足する液晶表示素子、この液晶表示素子を形成する液晶配向剤、及びこの液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物を提供できる。また、本発明の液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、種々の表示モードの液晶表示素子に好適に適用できる。さらに、かかる液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、長期間にわたり使用した場合にも表示性能が劣化することがない。従って、本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有する。[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び光配向性を有する桂皮酸誘導体に由来する基を含んでいることから、当該液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性を満足する。また、当該液晶配向剤は、好適成分として[A]ポリオルガノシロキサン化合物以外の[B]重合体、[C][C]他のポリオルガノシロキサン等の重合体(以下、「他の重合体」とも称する)を含有してもよい。さらに、当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0026】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物>
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、桂皮酸誘導体に由来する部分とを有している。以下、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン及び桂皮酸誘導体について詳述する。
【0027】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン]
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとは、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、ポリマー主鎖としてのポリオルガノシロキサン骨格と、このポリオルガノシロキサンから枝分かれしているポリマー主鎖としてのエポキシ基含有骨格とを含む概念である。
【0028】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとしては、上記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
上記式(2)中、Xは、(X−1)又は(X−2)で表される基である。Yは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。
【0030】
上記エポキシ基を有する1価の有機基として上記式(X−1)又は(X−2)で表される基を採用することにより、当該液晶配向剤の[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、上記桂皮酸誘導体に由来する基を導入しやすくなる。
【0031】
上記式(X−1)中、Aは、単結合又は酸素原子である。eは、1〜3の整数である。fは、0〜6の整数である。但し、fが0の場合、Aは単結合である。式(X−2)中、gは、1〜6の整数である。式(X−1)及び(X−2)中、*は、それぞれケイ素原子と結合する部位を示す。
【0032】
上記Yで表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0033】
上記Yで表される炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0034】
上記Yで表される炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)としては、500〜100,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、1,000〜5,000が特に好ましい。なお、本明細書においてMwは、下記仕様のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー製、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
【0036】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物又はエポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0037】
エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0038】
他のシラン化合物としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のケイ素原子を1個有するシラン化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0039】
他のシラン化合物の市販品としては、例えば
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業製);
グラスレジン(昭和電工製);
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング製);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー製);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ製);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学製);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート製);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工製)等の部分縮合物等が挙げられる。
【0040】
これらの他のシラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0041】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量としては、100g/モル〜10,000g/モルが好ましく、150g/モル〜1,000g/モルがより好ましく、150g/モル〜300g/モルが特に好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成に際し、エポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との使用割合としては、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記特定範囲となるように設定することが好ましい。
【0042】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成に際し、使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0043】
炭化水素化合物としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0044】
ケトン化合物としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0045】
エステル化合物としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等が挙げられる。
【0046】
エーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0047】
アルコール化合物としては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0048】
これらのうち非水溶性のものが好ましい。有機溶媒の使用量としては、全シラン化合物100質量部に対して、10質量部〜10,000質量部が好ましく、50質量部〜1,000質量部がより好ましい。
【0049】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の水の使用量としては、全シラン化合物に対して、0.5倍モル〜100倍モルが好ましく、1倍モル〜30倍モルがより好ましい。
【0050】
触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0051】
アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0052】
有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。
【0053】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の触媒としては、アルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物又は有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度でポリオルガノシロキサンを得ることができるため生産安定性に優れる。
【0054】
また、触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと桂皮酸誘導体との反応物を含有する当該液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造又はかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。即ち、かかるポリオルガノシロキサンは、シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合にはシラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0055】
触媒としては、有機塩基がより好ましく、3級の有機アミン及び4級の有機アミンが特に好ましい。有機塩基の使用量としては、有機塩基の種類、温度等の反応条件により異なるが、例えば全シラン化合物に対して、0.01倍モル〜3倍モルが好ましく、0.05倍モル〜1倍モルがより好ましい。
【0056】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の加水分解又は加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
【0057】
加水分解・縮合反応時における油浴の加熱温度としては、130℃以下が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。加熱時間としては、0.5時間〜12時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
【0058】
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2質量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することが、洗浄操作が容易となる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンが得られる。
【0059】
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01、DMS−E12、DMS−E21、EMS−32(以上、チッソ製)等が挙げられる。
【0060】
[桂皮酸誘導体]
桂皮酸誘導体は、エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する。
【0061】
桂皮酸誘導体としては、上記式(1)で表される化合物が好ましい。桂皮酸誘導体として、上記特定化合物を用いることにより、配向性能がより高くなり、残像特性、電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性及び印刷性をより向上できる。
【0062】
上記式(1)中、Rは、それぞれ独立して水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基又は炭素数1〜40のアルキル基である。但し、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又はこれらを2種以上組合わせた連結基である。Rは、(c+1)価の有機基である。Rは、単結合、酸素原子、−COO−、−OCO−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、−CH=CH−、2価の芳香族基又は2価の脂環式基である。Rは、カルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR、−CH=CH又は−SOClである。このRは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。Rは、それぞれ独立してフッ素原子又はシアノ基である。a及びbは、それぞれ独立して0又は1の整数である。但し、aとbとが共に0となることはない。cは、2〜5の整数である。dは、0〜4の整数である。但し、R、R、R及びRが複数の場合、複数のR、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
上記Rで表される脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基としては、例えばシクロヘキシル基、コレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0064】
上記Rで表される炭素数1〜40のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基等が挙げられる。上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、4,4,4−トリフロロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基等が挙げられる。なお、炭素数が2以下の場合は水平配向用途として、炭素数が3以上の場合は、垂直配向用途として用いるのが好ましい。
【0065】
上記R及びRで表される炭素数1〜10のアルカンジイル基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0066】
上記R及びRで表される2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基等が挙げられる。
【0067】
上記R及びRで表される2価の脂環式基としては、1,4−シクロへキシレン基等が挙げられる。
【0068】
上記R及びRで表される2価の複素環式基としては、例えば2,5−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基等の2価のピリジレン基、2,5−フラニレン基等の2価のフラニレン基等が挙げられる。なお、上記2価の脂環式基、2価の芳香族基及び2価の複素環式基は複数の環が縮合した基であってもよい。縮合した2価の脂環式基としては、ノルボルナンジイル基、アダマンチルジイル基等が挙げられる。縮合した2価の芳香族基としては、ナフチレン基等が挙げられる。縮合した2価の複素環式基としては、キノリンジイル基等が挙げられる。
【0069】
上記Rで表される(c+1)価の有機基としては、例えば(c+1)価の直鎖状又は分岐状のアルキル基、(c+1)価の芳香族基、(c+1)価の脂環式基、(c+1)価の複素環式基等が挙げられる。
【0070】
上記Rで表される炭素数1〜10のアルカンジイル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基としては、例えば上記R及びRで表される炭素数1〜10のアルカンジイル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基として例示した基と同様の基が適用できる。
【0071】
上記Rで表される、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0072】
上記式(1)で表される化合物としては、下記式(1−1)、式(1−2)で表される化合物が好ましい。
【0073】
【化5】

【0074】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、それぞれ独立して下記式(3−1)〜(3−25)のいずれかで表される基である。
【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
上記式(3−1)〜(3−25)中、Rは、上記式(1)と同義である。vは、1〜10の整数である。uは、1〜10の整数である。
【0078】
桂皮酸誘導体の合成手順としては特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。代表的な合成手順としては、例えば(i)塩基性条件下、ハロゲン原子で置換されたベンゼン環骨格を有する化合物と、アクリル酸とを遷移金属触媒存在下で反応させて桂皮酸誘導体を得る方法、(ii)塩基性条件下、ベンゼン環の水素原子がハロゲン原子で置換された桂皮酸と、ハロゲン原子で置換されたベンゼン環骨格を有する化合物とを遷移金属触媒存在下で反応させて桂皮酸誘導体とする方法等が挙げられる。但し、特定桂皮酸誘導体の合成手順はこれらに限定されるものではない。なお、桂皮酸誘導体はシス型(Z)又はトランス型(E)のいずれでもよいが、トランス型(E)が好ましい。
【0079】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法>
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、桂皮酸誘導体とを、好ましくは触媒の存在下において、好ましくは有機溶媒中で反応させることにより合成することが好ましい。[A]ポリオルガノシロキサン化合物において、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと桂皮酸誘導体との間の反応性を利用することにより、ポリオルガノシロキサンに光配向性を有する桂皮酸誘導体に由来する基を容易に導入できる。
【0080】
桂皮酸誘導体の含有量としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのケイ素原子1モルに対して、0.001モル〜1モルが好ましく、0.01モル〜1モルがより好ましく、0.05モル〜0.9モルが特に好ましい。
【0081】
本発明の効果を損なわない範囲で、桂皮酸誘導体の一部を下記式(5)で表される化合物に置き換えて使用してもよい。この場合、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、桂皮酸誘導体及び下記式(5)で表される化合物の混合物との反応により合成することができる。
【0082】
【化8】

【0083】
上記式(5)中、Rは、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基、炭素数4〜20のアルキル基又はアルコキシ基である。但し、上記アルキル基又はアルコキシ基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。Rは、単結合、2価の芳香族基又は2価の脂環式基である。但し、Rがアルコキシ基であるときは、Rがフェニレン基である。R10は、カルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR11、−CH=CH及び−SOClからなる群より選択される少なくとも1種の基である。但し、このR11は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。
【0084】
上記Rとしては、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基、炭素数8〜20のアルキル基、アルコキシ基、炭素数4〜20のフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基が好ましい。上記Rとしては、単結合、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基が好ましい。上記R10としてはカルボキシル基が好ましい。
【0085】
上記式(5)で表される化合物としては、例えば下記式(5−1)〜(5〜4)で表される化合物等が挙げられる。
【0086】
【化9】

【0087】
上記式(5−1)〜(5〜4)中、hは、1〜3の整数である。iは、3〜18の整数である。jは、5〜20の整数である。kは、1〜3の整数である。mは、0〜18の整数である。nは、1〜18の整数である。
【0088】
上記式(5)で表される化合物としては、下記式(5−2−1)、(5−3−1)、(5−3−2)で表される化合物が好ましい。
【0089】
【化10】

【0090】
上記式(5)で表される化合物は、桂皮酸誘導体とともにエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと反応し、得られる液晶配向膜にプレチルト角発現性を付与する部位を導入する化合物である。以下、上記式(5)で表される化合物を、他のプレチルト角発現性化合物とも称する。
【0091】
桂皮酸誘導体の一部を他のプレチルト角発現性化合物で置き換えて使用する場合、桂皮酸誘導体及び他のプレチルト角発現性化合物の合計の含有割合としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのケイ素原子1モルに対して、0.001モル〜1モルが好ましく、0.1モル〜1モルがより好ましく、0.2モル〜0.9モルが特に好ましい。
【0092】
桂皮酸誘導体との合計に対する他のプレチルト角発現性化合物の含有割合としては、50モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。他のプレチルト角発現性化合物の使用割合が50モル%を超えると、液晶表示素子をONにしたときに異常ドメインが発生する場合がある。
【0093】
触媒としては、例えば有機塩基又はエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物が挙げられる。
【0094】
有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらのうち、3級の有機アミン及び4級の有機アミンが好ましい。
【0095】
硬化促進剤としては、例えば
ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン化合物;
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、その有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド又はアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0096】
これらの硬化促進剤のうち、4級アンモニウム塩が好ましく、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
【0097】
触媒の使用量としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100質量部に対して100質量部以下が好ましく、0.01質量部〜100質量部がより好ましく、0.1質量部〜20質量部が特に好ましい。
【0098】
反応温度としては、0℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜50時間が好ましく、0.5時間〜20時間がより好ましい。
【0099】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成に際し、使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料及び生成物の溶解性並びに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒の含有量としては、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%〜50質量%となる量で含有される。
【0100】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを原料とし、そのエポキシの開環付加により桂皮酸誘導体に由来する構造を導入している。この合成方法は簡便であり、また、桂皮酸誘導体に由来する桂皮酸構造の導入率を高くできる点で有利である。
【0101】
<他の重合体>
他の重合体は、当該液晶配向剤の溶液特性及び得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために当該液晶配向剤に含有することができる。他の重合体としては、例えば[B]重合体、[C]他のポリオルガノシロキサン、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。以下、[B]重合体及び[C]他のポリオルガノシロキサンについて詳述する。
【0102】
<[B]重合体>
[B]重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体である。当該液晶配向剤が[B]重合体をさらに含有することで、より電圧保持率等の電気特性が改善された液晶表示素子が得られる。
【0103】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0104】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの他に、特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0105】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0106】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0107】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0108】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。
【0109】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなることが、特に好ましい。
【0110】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの他に特願2009−157556号に記載のジアミンを用いることができる。
【0111】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0112】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0113】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0114】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(6)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0115】
【化11】

【0116】
上記式(6)中、Zは炭素数1〜3のアルキル基、−O−、−COO−又は−OCO−である。pは、0又は1である。qは、0〜2の整数である。rは、1〜20の整数である。
【0117】
上記式(6)中のC2r+1基としては、例えば直鎖状又は分岐状のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0118】
上記式(6)で表されるジアミン化合物としては、例えば下記式(6−1)〜(6−5)で表される化合物等が挙げられる。
【0119】
【化12】

【0120】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0121】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましい。
【0122】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0123】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0124】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回又は複数回行う方法が挙げられる。
【0125】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより合成できる。
【0126】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。ポリイミドのイミド化率は、30%以上が好ましく、40%〜80%がより好ましい。なお、ポリイミド中のイミド化率は、ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し、得られたH−NMRスペクトルから、下記式(7)により求めた。
【0127】
イミド化率(%)={1−(A/A)×α}×100 (7)
【0128】
式(7)中、Aは、NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)である。Aは、その他のプロトン由来のピーク面積である。αは、ポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。
【0129】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」とも称する)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」とも称する)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0130】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0131】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0132】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0133】
脱水剤の含有量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0134】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0135】
脱水閉環触媒の含有量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環触媒の含有量が多いほど高くできる。
【0136】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が適用できる。
【0137】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0138】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示した方法と同様の方法が適用できる。
【0139】
当該液晶配向剤に含有されるポリアミック酸又はポリイミドは、末端修飾型のものであってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性等をさらに改善することができる。
【0140】
このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、分子量調節剤を重合反応系に添加することにより行うことができる。分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0141】
酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物等が挙げられる。
【0142】
モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン等が挙げられる。
【0143】
モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0144】
分子量調節剤の使用量としては、ポリアミック酸を合成する際に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0145】
<[C]他のポリオルガノシロキサン>
[C]他のポリオルガノシロキサンは、上記式(4)で表されるポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種である。当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサンをさらに含有することで、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋を促進させることができ、結果として、得られる液晶標示素子の良好なプレチルト角の経時的安定性、電圧保持率等をより向上できる。なお、当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサンを含む場合、[C]他のポリオルガノシロキサンの大部分は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物とは独立して存在しているもの、その一部は特定ポリオルガノシロキサン化合物との縮合物として存在していても良い。
【0146】
上記式(4)中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは、水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0147】
上記Xで表される炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0148】
上記Xで表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0149】
上記Xで表される炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0150】
[C]他のポリオルガノシロキサンのMwとしては、500〜100,000が好ましく、500〜10,000がより好ましい。
【0151】
[C]他のポリオルガノシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」とも称する)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0152】
原料シラン化合物としては、例えば
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン等;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン等;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン等;
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0153】
これらの原料シラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシランが好ましい。
【0154】
[C]他のポリオルガノシロキサンを合成する際に任意的に使用できる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物、エステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0155】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられることができる。
【0156】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0157】
アミド化合物としては例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。
【0158】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0159】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、NMP、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。
【0160】
これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル及びエステル化合物が好ましい。
【0161】
[C]他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の合計1モルに対して、0.01モル〜100モルが好ましく、0.1モル〜30モルがより好ましく、1モル〜1.5モルが特に好ましい。
【0162】
[C]他のポリオルガノシロキサンの合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニア等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0163】
金属キレート化合物としては、例えば
トリエトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシモノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0164】
有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0165】
無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0166】
有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0167】
アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0168】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0169】
これらのうち、金属キレート化合物、有機酸、及び無機酸が好ましく、チタンキレート化合物及び有機酸がより好ましい。
【0170】
触媒の使用量としては、原料シラン化合物100質量部に対して0.001質量部〜10質量部が好ましく、0.001質量部〜1質量部がより好ましい。
【0171】
[C]他のポリオルガノシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加できる。触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0172】
[C]他のポリオルガノシロキサンの合成の際の反応温度としては、0℃〜100℃が好ましく、15℃〜80℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。
【0173】
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有する場合、他の重合体の含有割合としては、他の重合体の種類により異なるが、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して10,000質量部以下が好ましい。
【0174】
当該液晶配向剤が、[B]重合体を含有する場合、ポリアミック酸及びポリイミドの合計量の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して100質量部〜5,000質量部が好ましく、200質量部〜4,000質量部がより好ましい。
【0175】
当該液晶配向剤が、[C]他のポリオルガノシロキサンを含有する場合、[C]他のポリオルガノシロキサンの含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して100質量部〜2,000質量部が好ましい。
【0176】
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有する場合、他の重合体としては、[B]重合体及び[C]他のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0177】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」とも称する)、官能性シラン化合物、界面活性剤、光増感剤等が挙げられる。以下、これらのその他の任意成分について詳述する。
【0178】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、ポリオルガノシロキサンの架橋反応をより強固にする目的で当該液晶配向剤に含有できる。また、上記硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で当該液晶配向剤に含有できる。
【0179】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化用として一般に用いられている硬化剤を用いることができ、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸等が挙げられる。
【0180】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物等が挙げられる。シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。
【0181】
その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、下記式(8)で表される化合物及びポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物の他、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0182】
【化13】

【0183】
上記式(8)中、sは、1〜20の整数である。
【0184】
硬化剤の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、100質量部以下が好ましい。
【0185】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等が挙げられる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒できる。
【0186】
硬化触媒の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、2質量部以下が好ましい。
【0187】
硬化促進剤としては、例えば
イミダゾール化合物;
4級リン化合物;
4級アミン化合物;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物の如きアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩の如き高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0188】
硬化促進剤の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。
【0189】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物とは異なる化合物であって、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性をより向上する目的で当該液晶配向剤に含有できる。
【0190】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0191】
エポキシ化合物の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意に含有される他の重合体との合計100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、0.1質量部〜30質量部がより好ましい。
【0192】
なお、当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。塩基触媒の使用割合は、エポキシ化合物の100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0質量部〜2質量部がより好ましい。
【0193】
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上する目的で使用できる。
【0194】
官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0195】
官能性シラン化合物の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意に含有される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0196】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0197】
界面活性剤の使用割合としては、当該液晶配向剤の全体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0198】
[光増感剤]
光増感剤としては、例えばジュレン、ベンゾニトリル、ブチロフェノン、プロピオフェノン、アセトフェノン、キサントン、4−メトキシアセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、アントロン、ベンズアルデヒド、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、フルオレン、トリフェニレン、ビフェニル、チオキサントン、アントラキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレン、ナフタレン、4−フェニルアセトフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2−ヨードナフタレン、アセナフテン、2−ナフトニトリル、1−ヨードナフタレン、1−ナフトニトリル、クリセン、コロネン、ベンジル、フルオランテン、ピレン、1,2−ベンゾアントラセン、アクリジン、アントラセン、テトラセン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジシアノナフタレン、9−シアノアントラセン、9,10−ジシアノアントラセン、2,6,9,10−テトラシアノアントラセン等が挙げられる。
【0199】
光増感剤の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0200】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り、[A]ポリオルガノシロキサン化合物を必須成分として含有し、必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0201】
有機溶媒としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物及び任意に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。当該液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、任意に含有される他の重合体の種類により異なる。
【0202】
当該液晶配向剤が[A]ポリオルガノシロキサン化合物と、[B]重合体を含有するものである場合における好ましい有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0203】
一方、当該液晶配向剤が重合体として[A]ポリオルガノシロキサン化合物のみを含有する場合又は[A]ポリオルガノシロキサン化合物及び[C]他のポリオルガノシロキサンを含有する場合における有機溶媒としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチルが好ましい。
【0204】
当該液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従い、上記した有機溶媒の1種又は2種以上を組み合わせて得られる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤の表面張力が25mN/m〜40mN/mの範囲となるものである。
【0205】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、即ち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤の全質量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%である。固形分濃度が1質量%未満では、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得られない場合がある。一方、固形分濃度が10質量%を超えると、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得られない場合があり、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合の固形分濃度の範囲としては、1.5質量%〜4.5質量%が好ましい。印刷法による場合、固形分濃度を3質量%〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sの範囲とすることが好ましい。インクジェット法による場合、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とすることが好ましい。
【0206】
当該液晶配向剤を調製する際の温度としては、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0207】
<液晶配向膜の形成方法>
当該液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜を形成するために好適に使用できる。また、本発明の液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、種々の表示モードの液晶表示素子に好適に適用できる。液晶配向膜を形成する方法としては、例えば基板上に当該液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、次いでこの塗膜に偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向法により液晶配向能を付与し、液晶配向膜とする方法等が挙げられる。
【0208】
まず、パターン状の透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、当該液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法等の適宜の塗布方法により塗布する。次に、塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いでポストベークにより塗膜を形成する。プレベーク条件としては、例えば40℃〜120℃において0.1分〜5分である。ポストベーク条件としては、好ましくは120℃〜300℃、より好ましくは150℃〜250℃において、好ましくは5分〜200分、より好ましくは10分〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚としては、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
【0209】
基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等のプラスチック基材を含む透明基板等が挙げられる。
【0210】
透明導電膜としては、SnOを含むNESA膜、In−SnOを含むITO膜等が挙げられる。これらの透明導電膜のパターニング方法としては、例えばフォト・エッチング法や透明導電膜を形成する際にマスクを用いる方法等が挙げられる。
【0211】
液晶配向剤の塗布に際しては、基板又は透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板及び透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート化合物等を塗布しておいてもよい。
【0212】
次いで、上記塗膜に直線偏光又は部分偏光された放射線又は非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する。放射線としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線が挙げられるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、またこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
【0213】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。上記の好ましい波長領域の紫外線は、上記光源を例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得られる。
【0214】
放射線の照射量としては、1J/m以上10,000J/m未満が好ましく、10J/m〜3,000J/mがより好ましい。なお、従来知られている液晶配向剤から形成される塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であるところ、当該液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与でき、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
【0215】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える。これにより残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、残像特性、印刷性を満足する。さらに、かかる液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、長期間にわたり使用した場合にも表示性能が劣化することがない。当該液晶表示素子は、液晶配向膜が表面に形成された基板が2枚、基板の周辺部に設けられたシール剤を介して液晶配向膜側で対向して配置されており、これら2枚の基板間に液晶が充填されている。
【0216】
当該液晶表示素子が備える液晶配向膜のプレチルト角としては、87°〜89.5°が好ましい。また、この角度が800時間以上減少せず安定していることが好ましい。
【0217】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える。当該液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造できる。
【0218】
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0219】
第一の方法としては、従来から知られている方法であって、まず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(以下、「セルギャップ」とも称する)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造できる。
【0220】
第二の方法としては、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であって、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造できる。
【0221】
いずれの方法による場合でも、用いた液晶が等方相をとる温度まで液晶セルを加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが好ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、当該液晶表示素子が得られる。
【0222】
液晶配向膜が水平配向性である場合、液晶配向膜が形成された2枚の基板における照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度及びそれぞれの基板と偏光板との角度を調整することにより、TN型セル又はSTN型液晶セルを有する液晶表示素子が得られる。一方、液晶配向膜が垂直配向性である場合、液晶配向膜が形成された2枚の基板における光軸の方向が平行となるようにセルを構成し、これに、偏光板をその偏光方向が配向容易軸と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、VA型液晶セルを有する液晶表示素子が得られる。
【0223】
シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0224】
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等が挙げられる。TN型液晶セル又はSTN型液晶セルの場合、正の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が挙げられる。また上記液晶に、例えばコレステリルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶(メルク製、C−15、CB−15)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等をさらに添加して使用できる。
【0225】
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が挙げられる。
【0226】
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【0227】
このように製造された当該液晶表示素子は、良好なプレチルト角の経時的安定性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、残像特性、印刷性等の特性を満足する。
【0228】
本発明のポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体に由来する部分とを有している。当該ポリオルガノシロキサン化合物の詳細な説明は、当該液晶配向剤に含まれる[A]ポリオルガノシロキサン化合物の説明の項で行っているので、ここでは省略する。当該ポリオルガノシロキサン化合物は、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性等の特性を満足する液晶表示素子を構成するための液晶配向剤に好適に用いられる。
【実施例】
【0229】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0230】
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。エポキシ当量は、JIS C2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法に準じて測定した。溶液粘度(mPa・s)は、各合成例における重合体溶液の重合体濃度を10質量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0231】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘稠な透明液体として得た。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのMwは2,200であり、エポキシ当量は186であった。
【0232】
<桂皮酸誘導体の合成>
[合成例2]
下記スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−1)を合成した。
【0233】
【化14】

【0234】
1Lのナス型フラスコに4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、炭酸カリウム182.4g及びNMP320mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ヨード−4,4,4−トリフロロブタン157.1gを加え100℃で5時間撹拌した。反応終了後、水で再沈殿を行った。次いで、この沈殿に水酸化ナトリウム48g及び水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(A−1−1)の白色結晶を110g得た。
【0235】
化合物(A−1−1)のうち、12.41gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル100mL及びN,N−ジメチルホルムアミド77μLを加えて80℃で1時間撹拌した。続いて、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の500mL三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸7.39g、炭酸カリウム13.82g、テトラブチルアンモニウム0.48g、テトラヒドロフラン50mL及び水100mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、桂皮酸中間誘導体(A−1−2)の白色結晶を10.0g得た。
【0236】
化合物(A−1−2)のうち39.4gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル120mL及びN,N−ジメチルホルムアミド152μLを加えて80℃で1時間撹拌した。続いて、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の500mL三口フラスコに3,4−ジヒドロキシ安息香酸7.70g、炭酸カリウム20.73g、テトラブチルアンモニウム1.6g、テトラヒドロフラン100mL及び水200mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、酢酸エチル、テトラヒドロフランで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−1)の白色結晶を41.0g得た。
【0237】
[合成例3]
3,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに下記式で表される化合物8.00gを用いた以外は、合成例2と同様に操作して、下記式で表される桂皮酸誘導体(A−2)を40g得た。
【0238】
【化15】

【0239】
【化16】

【0240】
[合成例4]
下記スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−3)を合成した。
【0241】
【化17】

【0242】
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(A−3−1)31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで、120℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を濾過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層を、希塩酸で2回、水で3回この順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を除去して得られた固体を酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶媒から再結晶することにより、桂皮酸中間誘導体(A−3−2)の結晶を15g得た。
【0243】
化合物(A−3−2)のうち3.00gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル50mL及びN,N−ジメチルホルムアミド15μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、ジクロロメタンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の500mL三口フラスコに、3,5−ジヒドロキシ安息香酸0.770g、炭酸カリウム2.073g、テトラブチルアンモニウム0.16g、テトラヒドロフラン10mL及び水20mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、酢酸エチル、テトラヒドロフランで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−3)の白色結晶を3.05g得た。
【0244】
[合成例5]
下記スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−4)を合成した。
【0245】
【化18】

【0246】
還流管及び窒素導入管を備えた300mLのナスフラスコに、化合物(A−4−1)21g、塩化チオニル80mL及びN,N−ジメチルホルムアミド0.1mLを仕込んで、80℃で1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物から塩化チオニルを留去し、次いで塩化メチレンを150mL加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た化合物にテトラヒドロフラン400mLを加えた。
【0247】
一方、滴下ロート及び温度計を備えた1Lの三口フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸16g、炭酸カリウム24g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.87g、水200mL及びテトラヒドロフラン100mLを仕込んで5℃以下に氷冷した。ここに、上記テトラヒドロフラン溶液を3時間かけて滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に希塩酸を加えてpHを4以下にした後、トルエン3L及びテトラヒドロフラン1Lを加えて得た有機層を水で3回洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて溶媒を除去して得た固体をエタノール及びテトラヒドロフランの混合溶媒から再結晶することにより、桂皮酸中間誘導体(A−4−2)を21g得た。
【0248】
化合物(A−4−2)のうち4.26gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル50mL及びN,N−ジメチルホルムアミド15μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、ジクロロメタンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の500mL三口フラスコに3,5−ジヒドロキシ安息香酸0.770g、炭酸カリウム2.073g、テトラブチルアンモニウム0.16g、テトラヒドロフラン10mL及び水20mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、酢酸エチル、テトラヒドロフランで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−4)の白色結晶を4.32g得た。
【0249】
[合成例6]
下記スキームに従い、桂皮酸誘導体(A−5)を合成した。
【0250】
【化19】

【0251】
4−ブロモ桂皮酸107gを83gの塩化チオニル中で4時間還流して、赤色透明溶液を得た。次に、未反応の塩化チオニルを留去した後、残渣をトルエンから再結晶し、n−ヘキサンで洗浄することにより、化合物(A−5−1)の白色結晶85gを得た。次に25.0g(0.147モル)の4−アミルシクロヘキサノールを25mLのピリジンに溶解した。この溶液の温度を約3℃に保持しつつ、ここに上記で得た化合物(A−5−1)の43.3g(0.176モル)を350mLのピリジンに懸濁した液を滴下し、さらに3時間反応を行った。得られた反応混合物(懸濁液)を、1.3kgの塩酸酸性氷水に投入し、生じた沈殿を濾取し、水洗し、乾燥することにより化合物(A−5−2)のクリーム色粉末の粗製物を50g得た。
【0252】
化合物(A−5−2)の粗製物50g、0.28gの酢酸パラジウム及び1.52gのトリ(o−トリル)ホスフィンの混合物に、窒素雰囲気下125mLの乾燥トリエチルアミンを加えて反応を行った。化合物(A−5−2)の粗製物が完全に溶解した後、10.8gのアクリル酸をシリンジで注入し、さらに95℃で2時間反応を継続した。得られた暗緑色の反応混合物を1.3kgの塩酸酸性氷水に投入し、生じた沈殿を濾取した。この沈殿を500mLの酢酸エチルに溶解し、1Nの塩酸及び5質量%の炭酸水素ナトリウム溶液で順次に洗浄した後、有機層を回収して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して化合物(A−5−3)の黄色固体の粗製物56gを得た。この粗製物をエタノールから再結晶することにより化合物(A−5−3)の黄色粉末を30g得た。
【0253】
化合物(A−5−3)のうち3.70gを反応容器中にとり、これに塩化チオニル50mL及びN,N−ジメチルホルムアミド15μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、ジクロロメタンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の500mL三口フラスコに3,4−ジヒドロキシ安息香酸0.770g、炭酸カリウム2.073g、テトラブチルアンモニウム0.16g、テトラヒドロフラン10mL及び水20mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記テトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに1時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、酢酸エチル、テトラヒドロフランで再結晶することにより、桂皮酸誘導体(A−5)の黄色結晶を3.65g得た。
【0254】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成>
[実施例1]
200mLの三口フラスコに、上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン5.0g、メチルイソブチルケトン46.4g、桂皮酸誘導体として化合物(A−1)2.44g(上記合成例1で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの有するケイ素原子に対して10モル%に相当)及びテトラブチルアンモニウムブロミド0.10gを仕込み、80℃で12時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解し、次いで溶液を3回水洗した後、溶媒を留去することにより、[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S−1)を白色粉末として2.8g得た。(S−1)のMwは、12,500であった。
【0255】
[実施例2〜34及び比較例1〜4]
表1に示す各成分の種類及び使用量としたこと以外は、実施例1と同様に操作して各ポリオルガノシロキサン化合物を合成した。なお、表1中のプレチルト角発現性化合物(P−1)及び(P−2)並びに増感剤(Q−1)は、それぞれ下記式で表される化合物である。また、表1中の「−」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0256】
【化20】

【0257】
【表1】

【0258】
<[B]重合体の合成>
[ポリアミック酸の合成]
[合成例7]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP3,670gに溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度10%、溶液粘度40mPa・sのポリアミック酸(PA−1)溶液を得た。
【0259】
[合成例8]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50モル)及びピロメリット酸二無水物110g(0.50モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP3,670gに溶解させ、40℃で3時間反応させた後、NMP1,350gを追加し、固形分濃度10%、溶液粘度50mPa・sのポリアミック酸(PA−2)溶液を得た。
【0260】
[合成例9]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン54g(0.5モル)及び3−(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン261g(0.5モル)を、NMP2,700gに溶解させ、60℃で4時間反応させ、固形分濃度20%、溶液粘度1,400mPa・sのポリアミック酸(PA−3)溶液を得た。
【0261】
[ポリイミドの合成]
[合成例10]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)、ジアミン化合物として3,5−ジアミノ安息香酸92g(0.60モル)及び3−(2,4−ジアミノフェノキシ)コレスタン199g(0.40モル)を、NMP2,060gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し粘度を測定したところ、1,400mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,575gを追加し、ピリジン119g及び無水酢酸153gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、イミド化率約65%のポリイミド(PI−1)を約20質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えポリイミド濃度を10質量%の溶液として測定した溶液粘度は160mPa・sであった。
【0262】
[合成例11]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)、ジアミン化合物として3,5−ジアミノ安息香酸38g(0.7モル)及び3−(2,4−ジアミノフェノキシ)コレスタン124g(0.3モル)を、NMP2,080gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し粘度を測定したところ、1,450mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,600gを追加し、ピリジン128g及び無水酢酸166gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、イミド化率約65%のポリイミド(PI−2)を約20質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は180mPa・sであった。
【0263】
[合成例12]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.5モル)、ジアミン化合物として3,5−ジアミノ安息香酸38g(0.25モル)及び3−(2,4−ジアミノフェノキシ)コレスタン124g(0.25モル)を、NMP1,100gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し粘度を測定したところ、1,350mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,375gを追加し、ピリジン60g及び無水酢酸77gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、イミド化率約65%のポリイミド(PI−3)を約20質量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は130mPa・sであった。
【0264】
<液晶配向剤の調製>
[実施例35]
[A]ポリオルガノシロキサン化合物としての(S−1)100質量部と、[B]重合体としてのポリイミド(PI−1)を含有する溶液の、ポリアミック酸(PA−1)に換算して2,000質量部に相当する量とを合わせ、これにNMP及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルを加え、溶媒組成がNMP:エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル=50:50(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(AF−1)を調製した。
【0265】
[実施例36〜88及び比較例5〜11]
表2に示す各成分の種類及び使用量としたこと以外は、実施例35と同様に操作して、各液晶配向剤を調製した。なお、表2中の「−」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0266】
【表2】

【0267】
<液晶表示素子の製造>
[実施例89]
液晶配向剤(AF−1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。この操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。
【0268】
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより液晶表示素子を製造した。
【0269】
[実施例90〜142及び比較例12〜18]
表2に示す各液晶配向剤を用いたこと以外は、実施例89と同様に操作して、各液晶表示素子を製造した。
【0270】
<評価>
製造した各液晶表示素子について以下の評価をした。結果を表3にあわせて示す。
【0271】
[残像特性]
電極に交流電圧10.0Vを60℃にて20時間印加した。ストレス解放後、目視で焼き付きが見られた場合は残像特性を不良(B)と判断し、焼き付きが見られなかった場合は良好(A)と判断した。
【0272】
[電圧保持率(%)]
上記で製造した各液晶表示素子について、60℃の環境温度で5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(%)を測定した。測定装置は東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
【0273】
[プレチルト角(°)]
T.J.Scheffer等のJ.Appl.Phys.vol.19, p2013(1980)に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角(°)を測定した。
【0274】
[印刷性]
液晶配向膜印刷機(日本写真印刷製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、プレベークとして80℃のホットプレート上で1分間加熱し溶媒を除去した後、ポストベークとして200℃のホットプレート上で10分間加熱して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷性の評価を行った。印刷ムラ及びピンホールが共に観察されなかったものを良好(A)と判断し、一部観察されたものをやや良好(B)と判断し、多数観察されたものを不良(C)と判断した。
【0275】
【表3】

【0276】
表3の結果から明らかなように、本発明の液晶配向剤から形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性等の特性を備えていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明によれば、残像特性に優れ、かつ液晶表示素子として実用面で要求される電圧保持率、良好なプレチルト角の経時的安定性、印刷性を満足する液晶表示素子、この液晶表示素子を形成する液晶配向剤、及びこの液晶配向剤に好適に用いられるポリオルガノシロキサン化合物を提供できる。また、本発明の液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、種々の表示モードの液晶表示素子に好適に適用できる。さらに、かかる液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、長期間にわたり使用した場合にも表示性能が劣化することがない。従って、本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有し、
この[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンに由来する部分と、
エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体に由来する部分と
を有している液晶配向剤。
【請求項2】
上記桂皮酸誘導体が、下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載の液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、
は、それぞれ独立して水素原子、脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基又は炭素数1〜40のアルキル基である。但し、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。
及びRは、それぞれ独立して単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又はこれらを2種以上組合わせた連結基である。
は、(c+1)価の有機基である。
は、単結合、酸素原子、−COO−、−OCO−、炭素数1〜10のアルカンジイル基、−CH=CH−、2価の芳香族基又は2価の脂環式基である。
は、カルボキシル基、水酸基、−SH、−NCO、−NHR、−CH=CH又は−SOClである。このRは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。
は、それぞれ独立してフッ素原子又はシアノ基である。
a及びbは、それぞれ独立して0又は1の整数である。但し、aとbとが共に0となることはない。cは、2〜5の整数である。dは、0〜4の整数である。但し、R、R、R及びRが複数の場合、複数のR、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(1)で表される化合物との反応生成物である請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンが、下記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(2)中、Xは、下記式(X−1)又は(X−2)で表される基である。Yは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。)
【化3】

(式(X−1)中、Aは、単結合又は酸素原子である。eは、1〜3の整数である。fは、0〜6の整数である。但し、fが0の場合、Aは単結合である。
式(X−2)中、gは、1〜6の整数である。
式(X−1)及び(X−2)中、*は、それぞれケイ素原子と結合する部位を示す。)
【請求項5】
[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
[C]下記式(4)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化4】

(式(4)中、Xは、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは、水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。)
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。
【請求項9】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、
エポキシ基を有する1価の有機基と反応して共有結合を形成し得る基及び2以上の桂皮酸構造を有する桂皮酸誘導体に由来する部分と
を有しているポリオルガノシロキサン化合物。

【公開番号】特開2011−253175(P2011−253175A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82292(P2011−82292)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】