説明

液浸露光用の液体及びパターン形成方法

【課題】液浸リソグラフィによる解像度をより向上させることにより、パターンの形状不良を防止できるようにする。
【解決手段】基板201の上に形成されたレジスト膜202と投影レンズ205との間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体203は、溶媒に極性が水の極性よりも大きい極性分子を含むカルボニル基又はスルフォニル基等が添加されている。これにより、液体203の屈折率の値が大きくなって、投影レンズ205に負担を掛けることなく解像度が向上するので、良好な形状を有するレジストパターンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセス等において用いられる液浸露光用の液体及び液浸露光によるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の大集積化及び半導体素子のダウンサイジングに伴って、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在のところ、露光光としては、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ又はArFエキシマレーザ等を用いる光リソグラフィによりパターン形成が行なわれていると共に、より短波長であるFレーザの使用も検討されているが、露光装置及びレジスト材料における課題が未だ多く残されているため、より短波長の露光光を用いる光リソグラフィの実用化の時期は未だ先になっている。
【0003】
このような状況から、最近従来の露光光を用いてパターンの一層の微細化を進めるべく、液浸リソグラフィ(immersion lithography)法(非特許文献1を参照。)が提案されている。
【0004】
この液浸リソグラフィ法によれば、露光装置内における投影レンズとウエハ上のレジスト膜との間の領域が屈折率がn(但し、n>1)である液体で満たされるため、露光装置のNA(開口数)の値がn・NAとなるので、レジスト膜の解像性が向上する。
【0005】
以下、従来の液浸リソグラフィを用いるパターン形成方法について図10(a)〜図10(d)を参照しながら説明する。
【0006】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0007】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図10(a)に示すように、基板1の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜2を形成する。
【0008】
次に、図10(b)に示すように、レジスト膜2と投影レンズ(図示せず)との間に、屈折率が1.44である液浸露光用の水3を配して、NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光4をマスク5を介してレジスト膜2に照射してパターン露光を行なう。
【0009】
次に、図10(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜2に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図10(d)に示すように、レジスト膜2の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有するレジストパターン2aが得られる。
【非特許文献1】M. Switkes and M. Rothschild, "Immersion lithography at 157 nm", J. Vac. Sci. Technol., Vol.B19, P.2353 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、図10(d)に示すように、従来の液浸リソグラフィを用いたパターン形成方法により得られるレジストパターン2aのパターン形状は不良であった。
【0011】
本願発明者らは、液浸リソグラフィにより得られるレジストパターンの形状が不良となる原因について種々の検討を重ねた結果、液浸露光用の液体に用いられる水3は、解像性をさらに追求した場合には屈折率が不十分であり、限界解像度付近においてはパターンの形状が不良となるということを突き止めた。
【0012】
従って、限界解像度付近での露光によってレジストパターンの形状が不良となり、不良な形状のレジストパターンを用いてエッチングを行なうと、被エッチング膜に得られるパターンの形状も不良となってしまうため、半導体装置の製造プロセスにおける生産性及び歩留まりが低下してしまうという問題を生じる。
【0013】
前記従来の問題に鑑み、本発明は、液浸リソグラフィによる解像度をより向上させることにより、パターンの形状不良を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、本発明は、液浸露光用の液体における分極量を高めて、該液体の屈折率を増大させることにより、液浸リソグラフィによる解像度を向上させるものである。
【0015】
一般に露光における解像性は以下の式(1)で表わされる。
解像性=K1・λ/NA …(1)
【0016】
ここで、K1はプロセス条件や露光光学系で決まる定数であり、λは露光光の波長であり、NAは開口数である。従って、式(1)から、露光光の波長を短くするか又は開口数値を大きくすることによって、解像性自体の数値が小さくなり、すなわち解像度が向上することが分かる。
【0017】
液浸リソグラフィは、露光レンズとレジスト膜との間の空間を、屈折率が空気とは異なる材料、一般には水等の液体で満たして露光装置の開口数の値を大きくすることによって、波長を短くすることなく高い解像度を得られるようにする露光方法である。
【0018】
本願発明者らは、種々の検討により、液浸露光用の液体を分極させるか、又は液浸露光用の液体に極性が高い化合物を添加することにより、液浸露光用の液体の屈折率を増大させることができるという知見を得ている。
【0019】
すなわち、分極した化合物において、化合物内の電子は局在化した状態で存在するため、分極した化合物内を光が透過すると、光の波が局在化した電子によって影響を受け、電子の局在化の程度に応じて屈折する。すなわち、液浸露光用の液体を分極させると、屈折率の値が増大して、式(1)に示した開口数NAの値が実質的に大きくなり、その結果、パターンの解像性の向上につながるというものである。本発明は、この知見により得られたものであり、具体的には以下の構成により実現される。
【0020】
本発明に係る第1の液浸露光用の液体は、基板の上に形成されたレジスト膜と露光レンズとの間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体を対象とし、液体は、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性分子が添加されていることを特徴とする。
【0021】
第1の液浸露光用の液体によると、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性分子が添加されているため、添加された極性分子による電子の局在化によって液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなって、液浸露光による解像度が向上するので、パターンの形状不良を防止することができる。
【0022】
本発明に係る第2の液浸露光用の液体は、基板の上に形成されたレジスト膜と露光レンズとの間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体を対象とし、液体は、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性高分子が添加されていることを特徴とする。
【0023】
第2の液浸露光用の液体によると、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性高分子が添加されているため、添加された極性高分子による電子の局在化によって液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなって、液浸露光による解像度が向上するので、パターンの形状不良を防止することができる。
【0024】
本発明に係る第3の液浸露光用の液体は、基板の上に形成されたレジスト膜と露光レンズとの間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体を対象とし、液体は溶媒にナノ磁性体が添加されていることを特徴とする。
【0025】
第3の液浸露光用の液体によると、液体には溶媒にナノ磁性体が添加されているため、添加されたナノ磁性体により生成される磁場によって溶媒中の電子が局在化し分極するので、液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなって、液浸露光による解像度が向上するので、パターンの形状不良を防止することができる。
【0026】
本発明に係る第1のパターン形成方法は、基板の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に液体を配した状態で、レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備え、パターン露光を行なう工程において、液体に電場を印加することを特徴とする。
【0027】
第1のパターン形成方法によると、パターン露光を行なう工程において、液浸露光用の液体に電場を印加するため、印加された電場により液体に分極が生じ、生じた分極により電子が局在化して液体の屈折率が増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなって、液浸露光による解像度が向上するので、パターンの形状不良を防止することができる。
【0028】
本発明に係る第2のパターン形成方法は、基板の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に液体を配した状態で、レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備え、パターン露光を行なう工程において、液体に磁場を印加することを特徴とする。
【0029】
第2のパターン形成方法によると、パターン露光を行なう工程において、液浸露光用の液体に磁場を印加するため、印加された磁場により液体に分極が生じ、生じた分極により液体の屈折率が増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなって、液浸露光による解像度が向上するので、パターンの形状不良を防止することができる。
【0030】
本発明に係る第3のパターン形成方法は、基板の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性分子を添加した液体を配した状態で、レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0031】
第3のパターン形成方法によると、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性分子を添加した液体を配した状態でパターン露光を行なうため、添加された極性分子による分極によって液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなるので、液浸露光による解像度が向上し、その結果、パターンの形状不良を防止することができる。
【0032】
本発明に係る第4のパターン形成方法は、基板の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性高分子を添加した液体を配した状態で、レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備えている。
【0033】
第4のパターン形成方法によると、溶媒に極性が溶媒の極性よりも大きい極性高分子を添加した液体を配した状態でパターン露光を行なうため、添加された極性高分子による分極によって液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数の値が大きくなるので、液浸露光による解像度が向上し、その結果、パターンの形状不良を防止することができる。
【0034】
本発明に係る第5のパターン形成方法は、基板の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に、溶媒にナノ磁性体を添加した液体を配した状態で、レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0035】
第5のパターン形成方法によると、溶媒にナノ磁性体を添加した液体を配した状態でパターン露光を行なうため、添加されたナノ磁性体の磁場によって溶媒に分極が生じ、生じた分極によって液体の屈折率が溶媒のみの場合と比較して増大する。この屈折率の増大により開口数値が大きくなるので、液浸露光による解像度が向上し、その結果、パターンの形状不良を防止することができる。
【0036】
なお、液浸露光用の液体に添加する極性分子、極性高分子、ナノ磁性体の添加量は、それぞれ0.1wt以上且つ10wt%以下程度が好ましいが、必ずしもこの範囲には限定されない。
【0037】
第1の液浸露光用の液体又は第3のパターン形成方法において、極性分子には、カルボニル基、スルフォニル基、ラクトン基又は活性水素を有する分子を用いることができる。
【0038】
例えば、カルボニル基を有する分子にはアクリル酸又は酢酸を用いることができ、スルフォニル基を有する分子にはスチレンスルフォン酸を用いることができ、ラクトン基を有する分子にはγ−ブチロラクトンを用いることができ、また、活性水素を有する分子には塩酸を用いることができる。
【0039】
第2の液浸露光用の液体又は第4のパターン形成方法において、極性高分子には、カルボニル基、スルフォニル基又はラクトン基を有する高分子を用いることができる。
【0040】
例えば、カルボニル基を有する高分子にはポリアクリル酸を用いることができ、スルフォニル基を有する高分子にはポリスチレンスルフォン酸を用いることができ、また、ラクトン基を有する高分子にはポリメバロニックラクトンメタクリレートを用いることができる。
【0041】
第3の液浸露光用の液体又は第5のパターン形成方法において、ナノ磁性体には、直径が1ミクロン以下の磁性体円盤ドット又は線幅が1ミクロン以下の磁性体ワイヤを用いることができる。このようなサイズのナノ磁性体を用いると、その微細性から露光時に形状がレジストに転写される等の不良の原因になることはない。なお、磁性体ワイヤには数μm程度以下の長さのワイヤを用いることができる。
【0042】
本発明の第1〜第3に係る液浸露光用の液体における溶媒には、水又はパーフルオロポリエーテルを用いることができる。
【0043】
また、本発明の第1〜第5に係るパターン形成方法における液体(溶媒)には、水又はパーフルオロポリエーテルを用いることができる。
【0044】
本発明の第1〜第5に係るパターン形成方法において、露光光には、KrFエキシマレーザ光、Xeレーザ光、ArFエキシマレーザ光、Fレーザ光、KrArレーザ光又はArレーザ光を用いることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る液浸露光用の液体及びパターン形成方法によると、レジスト膜上に配する液浸露光用の液体の屈折率の値を大きくすることができ、露光レンズに負担を掛けることなく解像度を向上することができるため、良好な形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法について図1(a)〜図1(d)を参照しながら説明する。
【0047】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0048】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
【0049】
次に、図1(a)に示すように、基板101の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜102を形成する。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、水よりも極性が大きい活性化水素を有する化合物である塩酸(HCl)を5wt%の濃度で水に添加し、屈折率が1.59である液浸露光用の液体103をレジスト膜102と投影レンズ105との間に配する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光104を図示しないマスクを介してレジスト膜102に照射してパターン露光を行なう。
【0051】
次に、図1(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜102に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図1(d)に示すように、レジスト膜102の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有し且つ良好な形状を持つレジストパターン102aを得ることができる。
【0052】
このように、第1の実施形態に係るパターン形成方法によると、液浸露光用の液体103に、極性が水よりも大きい活性水素を含む塩酸を添加しているため、液体103の極性が水と比べて大きくなる。すなわち、液体103の分極量が大きくなって、図2のグラフに示すように、液体103の屈折率の値が増大するため、露光装置の開口数の値が大きくなるので、液浸リソグラフィによるレジストパターン102aの形状を良好にすることができる。
【0053】
なお、液浸露光用の液体103に添加する塩酸の濃度は、0.1wt%以上且つ10wt%以下程度とすることができるが、必ずしもこの濃度範囲には限られない。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法について図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。
【0055】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0056】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
【0057】
次に、図3(a)に示すように、基板201の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜202を形成する。
【0058】
次に、図3(b)に示すように、水よりも極性が大きいカルボニル基を有する化合物であるポリアクリル酸{−(CH=−CHCOOH)− }(但し、分子量は2500程度である。)を4wt%の濃度で水に添加し、屈折率が1.62である液浸露光用の液体203をレジスト膜202と投影レンズ205との間に配する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光204を図示しないマスクを介してレジスト膜202に照射してパターン露光を行なう。
【0059】
次に、図3(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜202に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図3(d)に示すように、レジスト膜202の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有し且つ良好な形状を持つレジストパターン202aを得ることができる。
【0060】
このように、第2の実施形態に係るパターン形成方法によると、液浸露光用の液体203に、極性が水よりも大きいカルボニル基を含むポリアクリル酸を添加しているため、液体203の極性が水と比べて大きくなる。すなわち、液体203の分極量が大きくなって、図4(a)のグラフに示すように、液体203の屈折率の値が増大するため、露光装置の開口数の値が大きくなるので、液浸リソグラフィによるレジストパターン202aの形状を良好にすることができる。
【0061】
図4(b)は極性が水よりも大きいカルボニル基又はスルフォニル基を液体203に添加した場合に、液体203の分極量が増大して該液体203の屈折率の値が大きくなる様子を模式的に表わしている。図4(b)に示すように、カルボニル基及びスルフォニル基に含まれる酸素原子は、カルボニル基に含まれる炭素原子及びスルフォニル基に含まれる硫黄原子と比べてその電気陰性度が高いため、液体203に水よりも大きい分極量が生じることが分かる。その結果、分極した化合物内を光が通り、この光の波が分極により局在化した電子によって影響を受けるため、屈折率が向上する。
【0062】
なお、水よりも極性が大きい化合物には、例えば、活性水素を含む塩酸、カルボニル基を含むポリアクリル酸の他にも、カルボニル基を含む酢酸若しくはアクリル酸、スルフォニル基を含むスルフォン酸若しくはポリスチレンスルフォン酸、又はラクトン基を含むγ−ブチロラクトン若しくはポリメバロニックラクトンメタクリレート等を用いることができる。
【0063】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るパターン形成方法について図5(a)〜図5(d)を参照しながら説明する。
【0064】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0065】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
【0066】
次に、図5(a)に示すように、基板301の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜302を形成する。
【0067】
次に、図5(b)に示すように、径が約500nmでニッケル(Ni)と鉄(Fe)との合金からなる磁性体円盤ドットを2wt%の濃度で水に添加した液浸露光用の液体303をレジスト膜302と投影レンズ305との間に配する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光304を図示しないマスクを介してレジスト膜302に照射してパターン露光を行なう。
【0068】
次に、図5(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜302に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図5(d)に示すように、レジスト膜302の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有し且つ良好な形状を持つレジストパターン302aを得ることができる。
【0069】
このように、第3の実施形態に係るパターン形成方法によると、液浸露光用の液体303に、いわゆるナノ磁性体である磁性体円盤ドットを添加しているため、液体303の極性が水と比べて大きくなる。すなわち、液体303の分極量が大きくなって、液体303の屈折率の値が増大し、露光装置の開口数の値が大きくなるので、液浸リソグラフィによるレジストパターン302aの形状を良好にすることができる。
【0070】
なお、ナノ磁性体には、磁性体円盤ドットに代えて、例えば線幅が1ミクロン以下で長さが数μm以下の磁性体ワイヤを用いることができる。
【0071】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るパターン形成方法について図6(a)〜図6(d)を参照しながら説明する。
【0072】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0073】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
【0074】
次に、図6(a)に示すように、基板401の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜402を形成する。
【0075】
次に、図6(b)に示すように、液浸露光用の水よりなる液体403をレジスト膜402と投影レンズ405との間に配する。このとき、レジスト膜403と投影レンズ405との間に、強度が例えば1.0V/m程度の電場を印加する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光404を図示しないマスクを介してレジスト膜402に照射してパターン露光を行なう。
【0076】
次に、図6(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜402に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図6(d)に示すように、レジスト膜402の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有し且つ良好な形状を持つレジストパターン402aを得ることができる。
【0077】
ここで、図7に液浸露光用の液体403に印加される電場の強度と液体の屈折率との関係を示す。
【0078】
このように、第4の実施形態に係るパターン形成方法によると、液浸露光用の液体403を露光時に電場中に置くため、液体403の極性が電場中に置かれない水と比べて大きくなる。すなわち、液体403の分極量が大きくなって、液体403の屈折率の値が増大し、露光装置の開口数値が大きくなるので、液浸リソグラフィによるレジストパターン402aの形状を良好にすることができる。
【0079】
なお、印加する電場の強度は、0.0001V/m以上で且つ10.0V/m以下程度とすることができるが、この強度範囲には限定されない。
【0080】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係るパターン形成方法について図8(a)〜図8(d)を参照しながら説明する。
【0081】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0082】
ポリ((ノルボルネン−5−メチレン-t-ブチルカルボキシレート)(50mol%)−(無水マレイン酸)(50mol%))(ベースポリマー)…………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムトリフラート(酸発生剤)………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャー)………………………………………0.002g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
【0083】
次に、図8(a)に示すように、基板501の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜502を形成する。
【0084】
次に、図8(b)に示すように、液浸露光用の水よりなる液体503をレジスト膜502と投影レンズ505との間に配する。このとき、レジスト膜503と投影レンズ505との間に、強度(磁束密度)が例えば1×10−5T程度の磁場を印加する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光504を図示しないマスクを介してレジスト膜502に照射してパターン露光を行なう。
【0085】
次に、図8(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜502に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図8(d)に示すように、レジスト膜502の未露光部よりなり0.07μmのライン幅を有し且つ良好な形状を持つレジストパターン502aを得ることができる。
【0086】
ここで、図9に液浸露光用の液体503に印加される磁場の強度(磁束密度)と液体の屈折率との関係を示す。
【0087】
このように、第5の実施形態に係るパターン形成方法によると、液浸露光用の液体503を露光時に磁場中に置くため、液体503の極性が磁場中に置かれない水と比べて大きくなる。すなわち、液体503の分極量が大きくなって、液体503の屈折率の値が増大し、露光装置の開口数値が大きくなるので、液浸リソグラフィによるレジストパターン502aの形状を良好にすることができる。
【0088】
なお、印加する磁場の強度は、1×10−7T以上で且つ1×10−4T以下程度とすることができるが、この強度範囲には限定されない。
【0089】
また、第1〜第5の各実施形態において、液浸露光用の液体には水を用いたが、水以外にもパーフルオロポリエーテルを用いることができる。
【0090】
また、第1〜第5の各実施形態において、パターン露光用の光源は、ArFエキシマレーザ光に限られず、KrFエキシマレーザ光、Xeレーザ光、Fレーザ光、KrArレーザ光又はArレーザ光を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る液浸露光用の液体及びパターン形成方法は、レジスト膜上に配された液浸露光用の液体の屈折率の値を大きくすることができるため、露光レンズに負担を掛けることなく解像度を向上することができるので、良好な形状を有するレジストパターンを得られるという効果を有し、半導体装置の製造プロセス等において用いられる液浸露光によるパターンの形成方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係る液浸露光用の液体を用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液浸露光用の液体に添加される塩酸の濃度と液体の屈折率との関係を示すグラフである。
【図3】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る液浸露光用の液体を用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係る液浸露光用の液体に添加されるポリアクリル酸の濃度と液体の屈折率との関係を示すグラフである。(b)は本発明の第2の実施形態に係る液浸露光用の液体に添加される化合物のうちカルボニル基又はスルフォニル基が液体中で分極する様子を示す模式的な断面図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第3の実施形態に係る液浸露光用の液体を用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は本発明の第4の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るパターン形成方法における液浸露光用の液体に印加される電場の強度と液体の屈折率との関係を示すグラフである。
【図8】(a)〜(d)は本発明の第5の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るパターン形成方法における液浸露光用の液体に印加される磁場の強度(磁束密度)と液体の屈折率との関係を示すグラフである。
【図10】(a)〜(d)は従来の液浸リソグラフィを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
101 基板
102 レジスト膜
102a レジストパターン
103 液浸露光用の液体(塩酸を含む)
104 露光光
105 投影レンズ
201 基板
202 レジスト膜
202a レジストパターン
203 液浸露光用の液体(ポリアクリル酸を含む)
204 露光光
205 投影レンズ
301 基板
302 レジスト膜
302a レジストパターン
303 液浸露光用の液体(磁性体円盤ドットを含む)
304 露光光
305 投影レンズ
401 基板
402 レジスト膜
402a レジストパターン
403 液浸露光用の液体(電場中)
404 露光光
405 投影レンズ
501 基板
502 レジスト膜
502a レジストパターン
503 液浸露光用の液体(磁場中)
504 露光光
505 投影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたレジスト膜と露光レンズとの間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体であって、
前記液体は、溶媒に、極性が前記溶媒の極性よりも大きい極性高分子が添加されていることを特徴とする液浸露光用の液体。
【請求項2】
基板の上に形成されたレジスト膜と露光レンズとの間に配され、開口数の値を高めるための液浸露光用の液体であって、
前記液体は、溶媒にナノ磁性体が添加されていることを特徴とする液浸露光用の液体。
【請求項3】
前記極性高分子は、カルボニル基、スルフォニル基又はラクトン基を有する高分子であることを特徴とする請求項1に記載の液浸露光用の液体。
【請求項4】
前記カルボニル基を有する高分子は、ポリアクリル酸であることを特徴とする請求項3に記載の液浸露光用の液体。
【請求項5】
前記スルフォニル基を有する高分子は、ポリスチレンスルフォン酸であることを特徴とする請求項3に記載の液浸露光用の液体。
【請求項6】
前記ラクトン基を有する高分子は、ポリメバロニックラクトンメタクリレートであることを特徴とする請求項3に記載の液浸露光用の液体。
【請求項7】
前記ナノ磁性体は、直径が1ミクロン以下の磁性体円盤ドット又は線幅が1ミクロン以下の磁性体ワイヤであることを特徴とする請求項2に記載の液浸露光用の液体。
【請求項8】
前記溶媒は、水又はパーフルオロポリエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液浸露光用の液体。
【請求項9】
基板の上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の上に液体を配した状態で、前記レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備え、
前記パターン露光を行なう工程において、前記液体に電場を印加することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
基板の上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の上に液体を配した状態で、前記レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備え、
前記パターン露光を行なう工程において、前記液体に磁場を印加することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
基板の上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の上に、溶媒に極性が前記溶媒の極性よりも大きい極性高分子を添加した液体を配した状態で、前記レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
基板の上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の上に、溶媒にナノ磁性体を添加した液体を配した状態で、前記レジスト膜に対して露光光を選択的に照射することによりパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜に対して現像を行なってレジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
前記極性高分子は、カルボニル基、スルフォニル基又はラクトン基を有する高分子であることを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記カルボニル基を有する高分子は、ポリアクリル酸であることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記スルフォニル基を有する高分子は、ポリスチレンスルフォン酸であることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記ラクトン基を有する高分子は、ポリメバロニックラクトンメタクリレートであることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記ナノ磁性体は、直径が1ミクロン以下の磁性体円盤ドット又は線幅が1ミクロン以下の磁性体ワイヤであることを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記液体は、水又はパーフルオロポリエーテルであることを特徴とする請求項9〜12のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記露光光は、KrFエキシマレーザ光、Xeレーザ光、ArFエキシマレーザ光、Fレーザ光、KrArレーザ光又はArレーザ光であることを特徴とする請求項9〜12のうちのいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−270842(P2008−270842A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196088(P2008−196088)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2004−205732(P2004−205732)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】