説明

液滴の吐出方法及び有機EL素子の製造方法

【課題】着弾位置精度を向上し着弾位置ずれによる充填むらを抑制する液滴の吐出方法及び有機EL素子の製造方法を提供する。
【解決手段】液滴の吐出方法では、複数の膜形成領域Aは、基準となる第1膜形成領域と、第2膜形成領域と、を有し、液滴を吐出するために印加する駆動波形として複数の膜波形領域において同一の駆動波形を用いた場合に、第1膜形成領域に吐出された液滴のうち、第1液滴の着弾位置における隔壁部94からの距離である第1距離に対して、第2膜形成領域に吐出された液滴のうち、第1液滴に対応する第2液滴の着弾位置における隔壁部からの距離である第2距離が異なる値である時に、実際の液滴の吐出時には、第2液滴を吐出するために印加する駆動波形として、複数の駆動波形のうち、第1距離と第2距離との差が小さくなる駆動波形を選択し、第2液滴を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の吐出方法及び有機EL素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機蛍光材料等の機能材料をインク化し、当該インク(組成物)を基材上に吐出するインクジェット法により、機能材料のパターニングを行う方法を採用して、一対の電極間に該機能材料からなる機能層が挟持された構造の表示装置、特に機能材料として有機発光材料を用いた有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置の開発が行われている。
【0003】
上述した機能材料のパターニング法として、例えば、基体上に形成したITO(Indium Tin Oxide)等からなる画素電極の周囲にバンク部を形成し、次に画素電極及びこの画素電極に隣接する前記バンク部の一部を親液性に処理するとともにバンク部の残りの部分を撥液性に処理し、次に機能層の構成材料を含む組成物を画素電極のほぼ中央に吐出して乾燥することにより、画素電極上に機能層を形成する方法が採用されている。
この従来の方法によれば、吐出した組成物がバンク部から溢れた場合でも、バンク部の撥液処理された部分ではじかれて隣接する他の画素電極上に流れ込むことがないので、正確にパターニングを行うことが可能になる。
しかし、従来の方法においては、吐出後の組成物は画素電極の中央から周囲に向けて均一に濡れ拡がるが、親水処理されたバンク部の一部までは濡れ拡がりにくく、このため画素電極ごとに機能層の塗りむらが生じる場合があった。これは、親水処理されたバンク部の一部が画素電極の周囲に位置しているため、表面張力等の関係で組成物が濡れ拡がらないためと考えられている。
【0004】
このような問題を解消するため、組成物の第1の液滴をバンク部の少なくとも一部に接触させるように画素電極上に配置し、組成物の第2の液滴を画素電極上に配置した第1の液滴の一部に重なるように配置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−26237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バンク部で囲われた複数の画素電極に組成物を吐出する場合において、画素電極ピッチがインクジェットの吐出分解能で割り切れない場合、各画素電極においてインクの着弾位置が吐出分解能分だけずれることになり、これに起因した塗りむらが発生するおそれがある。
また、ポリマーインクなどの比較的高粘度の組成物をインクジェットで吐出する場合には、吐出周波数を高く設定しすぎると吐出不良が起きてしまうことから、吐出周波数を低めに設定する必要があり、描画時の走査速度、着弾位置精度の観点で問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]複数のノズルと隔壁部により区画された複数の膜形成領域を有する被吐出物とを対向配置して相対移動させる走査に同期して、前記複数のノズルごとに設けられた駆動手段に、1ラッチ内に時分割で発生させた吐出タイミングの異なる複数の吐出波形を有する駆動波形を印加して、前記複数のノズルから機能性材料を含む液状体を液滴として前記膜形成領域に吐出する吐出工程を有する液滴の吐出方法であって、前記複数の膜形成領域は、基準となる第1膜形成領域と、第2膜形成領域と、を有し、前記液滴を吐出するために印加する駆動波形として前記複数の膜波形領域において同一の駆動波形を用いた場合に、前記第1膜形成領域に吐出された前記液滴のうち、第1液滴の着弾位置における前記隔壁部からの距離である第1距離に対して、前記第2膜形成領域に吐出された前記液滴のうち、前記第1液滴に対応する第2液滴の着弾位置における前記隔壁部からの距離である第2距離が異なる値である時に、実際の前記液滴の吐出時には、前記第2液滴を吐出するために印加する駆動波形として、前記複数の駆動波形のうち、前記第1距離と前記第2距離との差が小さくなる駆動波形を選択し、前記第2液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【0009】
これによれば、被吐出物(基板)とノズルとの相対移動に伴って、吐出タイミングを変えて液滴を吐出すると、膜形成領域(画素電極)において異なる位置に液滴が着弾する。したがって、膜形成領域において所望の位置に液滴を配置することができる。言い換えれば、膜形成領域における液滴の配置に伴う吐出量のむらを抑制することができる。これにより、被吐出物の膜形成領域のピッチがノズルの吐出分解能で割り切れない場合でも走査方向の着弾位置精度を向上し着弾位置ずれによる充填むらを抑制することができる。また、低い吐出周波数でもスピードを損なわすことのないスキャン方法で着弾位置精度を向上し着弾位置ずれによる充填むらを抑制することができる。
ここで、前記第1液滴に対応する第2液滴の着弾位置とは、第2膜形成領域に吐出された液滴のうち、着弾位置が第1膜形成領域における第1液滴の着弾位置と同じ位置もしくは該位置にもっとも近い液滴の着弾位置である。
【0010】
[適用例2]上記液滴の吐出方法であって、前記駆動波形は、基準駆動波形と補正駆動波形とを含み、前記駆動手段に対して、前記基準駆動波形が有する、充電、保持、放電を促す基準吐出波形を印加して、前記複数のノズルごとに吐出された前記液滴の吐出量の情報を入手するノズル情報入手工程と、前記複数のノズルごとに基準吐出量に対する補正量を求める演算工程と、を含み、前記吐出工程は、前記走査において、前記複数のノズルのうち前記膜形成領域に掛かるノズルの前記駆動手段に、前記膜形成領域に掛かるノズルのそれぞれに対応する前記補正量に基づいて、前記補正駆動波形に含まれる吐出波形であって、前記基準駆動波形の放電時の中間電位を補正した補正吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【0011】
これによれば、吐出工程では、使用するノズルの補正量に基づいて、基準駆動波形の放電時の中間電位を補正した補正駆動波形を印加して、膜形成領域に少なくとも1滴の液滴が吐出される。したがって、基準駆動波形の最大電位すなわち駆動電圧を補正した補正駆動波形を印加する場合に比べて、ノズルごとの液滴の吐出量の補正を可能とする一方で、液滴の飛行速度が補正により変化することを抑制することができる。よって、飛行速度の変化により、不要なサテライトや液滴の着弾位置ずれが発生することを抑制すると共に、膜形成領域に必要量の液状体を液滴として安定的に付与することができる。なお、吐出量の補正を必要としない場合には、当該ノズルの駆動手段には、基準駆動波形を印加する。
【0012】
[適用例3]上記液滴の吐出方法であって、前記吐出タイミングごとに、前記基準吐出波形、前記補正吐出波形のうちから1つを選択し、使用するノズルの前記駆動手段に印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【0013】
これによれば、被吐出物とノズルとの相対移動に伴って、吐出タイミングを変えて液滴を吐出すると、膜形成領域において異なる位置に液滴が着弾する。したがって、膜形成領域において所望の位置に補正された液滴を配置することができる。言い換えれば、膜形成領域における液滴の配置に伴う吐出量のむらを補正により抑制することができる。
【0014】
[適用例4]上記液滴の吐出方法であって、前記吐出工程は、第1吐出工程と第2吐出工程とを含み、前記第1吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記基準吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出し、前記第2吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミング以外における前記液滴の吐出に、前記膜形成領域に付与される前記液状体の必要量に基き前記補正吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【0015】
これによれば、第1吐出工程では、隔壁部に近いところに液滴を吐出することができ、第2吐出工程では、ノズル間のクロストークを低減した状態で膜形成領域に付与される液状体の必要量に基き補正された液滴を吐出する。したがって、まず、膜形成領域内において液状体が濡れ拡がり難い部分に先に液状体を塗布した後に、必要量に対して残りの液状体を適正に塗布することができる。すなわち、膜形成領域内の吐出むらを低減しつつ、必要量の液状体を吐出することができる。
【0016】
[適用例5]上記液滴の吐出方法であって、前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形はそれぞれ異なる波形を有し、前記吐出工程は、第1吐出工程と第2吐出工程とを含み、前記第1吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形のうち何れか1つの吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出し、前記第2吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミング以外のタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記膜形成領域に付与される前記液状体の必要量と前記第1吐出工程において吐出された前記液滴の吐出量とに基き前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形を選択して印加し、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【0017】
これによれば、第1吐出工程では、隔壁部に近いところに液滴を吐出することができ、第2吐出工程では、ノズル間のクロストークを低減した状態で膜形成領域に付与される液状体の必要量に基き補正された液滴を吐出する。したがって、まず、膜形成領域内において液状体が濡れ拡がり難い部分に先に液状体を塗布した後に、必要量に対して残りの液状体を適正に塗布することができる。すなわち、複数の駆動波形を用いることなく膜形成領域内の吐出むらを低減しつつ、必要量の液状体を吐出することができる。
【0018】
[適用例6]基板上に区画形成された複数の発光層形成領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の発光層形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して、前記発光層を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0019】
これによれば、膜形成領域としての発光層形成領域に必要量の液状体が安定的に付与されるので、固化工程で付与された液状体を固化すれば、発光層形成領域ごとにほぼ一定の膜厚を有する発光層が形成される。したがって、発光層の膜厚むらに起因する輝度むらや発光むらが低減され、有機EL素子を歩留りよく製造することができる。
【0020】
[適用例7]上記有機EL素子の製造方法であって、前記吐出工程は、異なる発光色が得られる複数種の前記液状体を所望の前記発光層形成領域に吐出し、前記固化工程は、吐出された複数種の前記液状体を固化して、少なくとも赤、緑、青、3色の前記発光層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0021】
これによれば、フルカラーの発光が得られる有機EL素子を歩留まりよく製造することができる。
【0022】
[適用例8]上記有機EL素子の製造方法であって、前記吐出工程は、複数種の前記液状体をそれぞれ異なる吐出ヘッドに充填し、前記液状体ごとに前記基準駆動波形の設定と、前記補正駆動波形の設定とを行うことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0023】
これによれば、発光層形成領域に付与される液状体ごとに必要量が異なっていても、適正に吐出量の補正がなされ、所望の膜厚を有する発光層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る吐出ヘッドの構造を示す概略図。
【図3】第1の実施形態に係るヘッドユニットにおける吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図4】第1の実施形態に係る吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図5】第1の実施形態に係る駆動波形を示すタイミングチャート。
【図6】実施例1の液滴の吐出方法を示す概略平面図。
【図7】実施例2の液滴の吐出方法を示す概略平面図。
【図8】実施例3の液滴の吐出方法を示す概略平面図。
【図9】第2の実施形態に係る有機EL装置を示す概略正面図。
【図10】第2の実施形態に係る有機EL装置の要部概略断面図。
【図11】第2の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図12】第2の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。
【図13】第2の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。
【図14】第3の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略分解斜視図。
【図15】第3の実施形態に係るカラーフィルターの製造方法を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0026】
(第1の実施形態)
<液滴の吐出装置>
まず、機能性材料を含む液状体を液滴として被吐出物に吐出可能な吐出装置について、図1〜図5を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
本実施形態の吐出装置2は、図1に示すように、被吐出物である平板状のワークWを第1の方向としての主走査方向(Y軸方向)に移動させるワーク移動機構10と、ヘッドユニット12を主走査方向に直交する第2の方向としての副走査方向(X軸方向)に移動させるヘッド移動機構14とを備えている。
【0028】
ワーク移動機構10は、一対のガイドレール16と、一対のガイドレール16に沿って移動する移動台18と、移動台18上に回転機構20を介して配設されたワークWを載置するステージ22とを備えている。
【0029】
移動台18は、ガイドレール16の内部に設けられたエアスライダーとリニアモーター(図示省略)により主走査方向(Y軸方向)に移動する。移動台18には、タイミング信号生成部としてのエンコーダー24(図4参照)が設けられている。
【0030】
エンコーダー24は、移動台18の主走査方向(Y軸方向)への相対移動に伴って、ガイドレール16に並設されたリニアスケール(図示省略)の目盛を読み取って、タイミング信号としてのエンコーダーパルスを生成する。なお、エンコーダー24の配設は、これに限らず、例えば、移動台18を回転軸に沿って主走査方向(Y軸方向)に相対移動するよう構成し、回転軸を回転させる駆動部を設けた場合には、エンコーダー24を駆動部に設けてもよい。駆動部としては、サーボモーターなどが挙げられる。
【0031】
ステージ22は、ワークWを吸着固定可能であると共に、回転機構20によってワークW内の基準軸を正確に主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)に合わせることが可能となっている。
【0032】
また、ワークW上において液状体が吐出される膜形成領域の配置に応じて、ワークWを例えば90度旋回させることも可能である。
【0033】
ヘッド移動機構14は、一対のガイドレール26と、一対のガイドレール26に沿って移動する移動台28とを備えている。移動台28には、回転機構30を介して吊設されたキャリッジ32が設けられている。
【0034】
キャリッジ32には、複数の吐出ヘッド34(図2参照)が搭載されたヘッドユニット12が取り付けられている。
【0035】
また、吐出ヘッド34に液状体を供給するための液状体供給機構(図示省略)と、複数の吐出ヘッド34の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバー36(図4参照)とが設けられている。
【0036】
移動台28がキャリッジ32を副走査方向(X軸方向)に移動させてヘッドユニット12をワークWに対して対向配置する。
【0037】
吐出装置2は、上記構成の他にも、ヘッドユニット12に搭載された複数の吐出ヘッド34のノズル目詰まり解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の吐出ヘッド34を臨む位置に配設されている。
【0038】
また、吐出ヘッド34ごとに吐出された液状体を受けて、その重量を計測する電子天秤などの計測器を有する重量計測機構38(図4参照)を備えている。そして、これらの構成を統括的に制御する制御部40を備えている。なお、図1では、メンテナンス機構及び重量計測機構38は、図示省略した。
【0039】
図2は、本実施形態に係る吐出ヘッドの構造を示す概略図である。図2(A)は、斜視図、図2(B)は、ノズルの配置状態を示す平面図である。
【0040】
本実施形態の吐出ヘッド34は、図2(A)に示すように、所謂2連のものであり、2連の接続針42を有する液状体の導入部44と、導入部44に積層されたヘッド基板46と、ヘッド基板46上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本体48とを備えている。接続針42は、前述した液状体供給機構(図示省略)に配管を経由して接続され、液状体をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板46には、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介してヘッドドライバー36(図4参照)に接続される2連のコネクター50が設けられている。
【0041】
ヘッド本体48は、駆動手段としての圧電素子で構成されたキャビティを有する加圧部52と、ノズル面54aに2つのノズル列56a,56bが相互に平行に形成されたノズルプレート54とを有している。
【0042】
2つのノズル列56a,56bは、図2(B)に示すように、それぞれ複数(180個)のノズル56がピッチP1で略等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた状態でノズル面54aに配設されている。この場合、ピッチP1は、およそ141μmである。よって、ノズル列56cに直交する方向から見ると360個のノズル56がおよそ70.5μmのノズルピッチで配列した状態となっている。また、ノズル56の径は、およそ27μmである。
【0043】
吐出ヘッド34は、ヘッドドライバー36から電気信号としての駆動信号が圧電素子に印加されると加圧部52のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル56から液状体を液滴として吐出することができる。
【0044】
吐出ヘッド34における駆動手段は、圧電素子に限らない。アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、液状体を加熱してノズル56から液滴として吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
【0045】
図3は、本実施形態に係るヘッドユニットにおける吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、ワークWに対向する側から見た図である。
本実施形態のヘッドユニット12は、図3に示すように、複数の吐出ヘッド34が配設されるヘッドプレート12aを備えている。ヘッドプレート12aには、3つの吐出ヘッド34からなるヘッド群34Aと、同じく3つの吐出ヘッド34からなるヘッド群34Bの合計6個の吐出ヘッド34が搭載されている。この場合、ヘッド群34AのヘッドR1(吐出ヘッド34)とヘッド群34BのヘッドR2(吐出ヘッド34)とは、同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0046】
1つの吐出ヘッド34によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列56cの有効長とする。以降、ノズル列56cとは、360個のノズル56から構成されるものを指す。
【0047】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(Y軸方向)から見て隣り合うノズル列56cが主走査方向と直交する副走査方向(X軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向(Y軸方向)に並列して配置されている。
【0048】
なお、吐出ヘッド34に設けられるノズル列56cは、2連に限らず、1連でもよい。また、ヘッドユニット12における吐出ヘッド34の配置は、これに限定されるものではない。
【0049】
次に吐出装置2の制御系について説明する。
図4は、本実施形態に係る吐出装置の制御系を示すブロック図である。
本実施形態の吐出装置2の制御系は、図4に示すように、吐出ヘッド34、ワーク移動機構10、ヘッド移動機構14、重量計測機構38などを駆動する各種ドライバーを有する駆動部58と、駆動部58を含め吐出装置2を統括的に制御する制御部40とを備えている。
【0050】
駆動部58は、ワーク移動機構10及びヘッド移動機構14の各リニアモーターをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバー60と、吐出ヘッド34を駆動制御するヘッドドライバー36と、重量計測機構38を駆動制御する重量計測用ドライバー62とを備えている。この他にもメンテナンス機構を駆動制御するメンテナンス用ドライバーなどを備えているが図示省略した。
【0051】
制御部40は、CPU64と、ROM66と、RAM68と、P−CON70とを備え、これらは互いにバス72を介して接続されている。P−CON70には、上位コンピューター74が接続されている。ROM66は、CPU64で処理する制御プログラムなどを記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理などを行うための制御データなどを記憶する制御データ領域とを有している。
【0052】
RAM68は、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークW及び吐出ヘッド34(実際には、ノズル列56c)の位置データを記憶する位置データ記憶部などの各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON70には、駆動部58の各種ドライバーなどが接続されており、CPU64の機能を補うと共に、周辺回路とのインターフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON70は、上位コンピューター74からの各種指令などをそのままあるいは加工してバス72に取り込むと共に、CPU64と連動して、CPU64などからバス72に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部58に出力する。
【0053】
そして、CPU64は、ROM66内の制御プログラムに従って、P−CON70を介して各種検出信号、各種指令、各種データなどを入力し、RAM68内の各種データなどを処理した後、P−CON70を介して駆動部58などに各種の制御信号を出力することにより、吐出装置2全体を制御している。例えば、CPU64は、吐出ヘッド34、ワーク移動機構10、及びヘッド移動機構14を制御して、ヘッドユニット12とワークWとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット12とワークWとの相対移動に同期して、ヘッドユニット12に搭載された各吐出ヘッド34の複数のノズル56からワークWに液状体を液滴として吐出するようにヘッドドライバー36に制御信号を送出する。この場合、Y軸方向へのワークWの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、X軸方向にヘッドユニット12を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の吐出装置2は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、吐出ヘッド34に対して一方向へのワークWの移動に限らず、ワークWを往復させて行うこともできる。
【0054】
エンコーダー24は、ヘッドドライバー36に電気的に接続され、主走査に伴ってエンコーダーパルスを生成する。主走査では、所定の移動速度で移動台18を移動させるので、エンコーダーパルスが周期的に発生する。
【0055】
例えば、主走査における移動台18の移動速度を200mm/sec、吐出ヘッド34を駆動する駆動周波数(言い換えれば、連続して液滴を吐出する場合の吐出タイミング)を20kHzとすると、主走査方向における液滴の吐出分解能は、移動速度を駆動周波数で除することにより得られるので、10μmとなる。すなわち、10μmのピッチで液滴をワークW上に配置することが可能である。実際の液滴の吐出タイミングは、周期的に発生するエンコーダーパルスをカウントして生成されるラッチ信号に基づいている。
【0056】
上位コンピューター74は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を吐出装置2に送出する。また、ワークW上の膜形成領域ごとに所定量の液状体を液滴として配置する吐出制御データとしての配置情報を生成する配置情報生成部の機能を有している。配置情報は、膜形成領域における液滴の吐出位置(言い換えれば、ワークWとノズル56との相対位置)、液滴の配置数(言い換えれば、ノズル56ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル56のON/OFF、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして表したものである。上位コンピューター74は、上記配置情報を生成するだけでなく、RAM68に一旦、格納された上記配置情報を修正することも可能である。
【0057】
図5は、本実施形態に係る駆動波形を示すタイミングチャートである。本実施例に係る駆動波形は、1ラッチ内に時分割で発生させた吐出タイミングの異なる3つの吐出波形PL1,PL2,PL3を有している。
複数のノズル56に対応してそれぞれ配設された駆動手段としての圧電素子には、図5に示すように、ラッチ信号LATのタイミングでラッチされたノズル56ごとのON/OFFデータ(吐出データ)に従い、3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうちから1つが選択されて供給される。そして、吐出波形が供給されるタイミングで、ノズル56から液滴が吐出される。なお、各吐出波形は、圧電素子に供給されることで規定量の液滴が吐出されるように設計されている。
【0058】
吐出波形の選択は、吐出波形の供給タイミングを規定する制御信号CH1〜CH3により行われる。すなわち、制御信号CH1によって第1系統のタイミングの吐出波形PL1が、制御信号CH2によって第2系統のタイミングの吐出波形PL2が、制御信号CH3によって第3系統のタイミングの吐出波形PL3がそれぞれ選択される。
【0059】
本実施形態では、膜形成領域に掛かる隣り合うノズル56に対応する圧電素子に、吐出波形の供給タイミングの系統(ラッチ信号LATを基準とした相対的な序列)を個々に対応づけることにより、吐出タイミングの重複が起こりえないように吐出波形を印加することが可能である。このような駆動波形の駆動手段(圧電素子)に対する印加の方法を時分割駆動という。時分割駆動により、少なくとも電気的なクロストークが好適に低減され、クロストークに起因するノズル56間の吐出特性(液滴の吐出量や吐出速度など)のバラツキが相対的に緩和される。
【0060】
また、各系統のタイミングは、周期的となっているため、吐出条件が各吐出タイミング間で一様となり、液滴の吐出量を主走査方向に対して安定化させることができる。
【0061】
また、ラッチ信号LATの1周期内(1ラッチ内)において、3つの吐出波形PL1,PL2,PL3が発生するので、同一の圧電素子に1ラッチ内で3つの吐出波形PL1,PL2,PL3を印加すれば、同一ノズル56から吐出タイミングを変えて3滴の液滴を吐出することができる。
【0062】
さらに、1ラッチ内に3つのノズル56の圧力素子に互いに異なる吐出波形(PL1,PL2,PL3)を印加すれば、3つのノズル56から液滴を異なる吐出タイミングで吐出することができる。すなわち、3つのノズル56が時分割駆動される。
【0063】
また、吐出波形PL1,PL2,PL3において、振幅の幅(実質的には、中間電位との間の電位差すなわち駆動電圧)や波形の勾配などをそれぞれ変えることによって、ノズル56から吐出される液滴の吐出量を異ならせることが可能である。言い換えれば、同一ノズル56の圧電素子に異なる形状の吐出波形PL1,PL2,PL3のうち1つを選択して印加すれば液滴の吐出量の補正が可能である。
【0064】
以降、ノズル56の圧電素子に吐出波形を印加することを、ノズル56に吐出波形を印加すると表現する。
【0065】
前述したように吐出装置2において、吐出分解能をおよそ10μmとすると、3つの吐出波形PL1,PL2,PL3を連続的に使用するノズル56に印加したときには、吐出タイミングを変えて主走査方向におよそ3.3μmの最小ピッチで液滴を吐出することが可能である。すなわち、時分割駆動における実質的な吐出分解能は、3.3μmとなる。
【0066】
<液滴の吐出方法>
次に、本実施形態の液滴の吐出方法について、実施例を挙げて説明する。本実施形態の液滴の吐出方法は、X軸方向(副走査方向)及びY軸方向(主走査方向)にマトリクス状に配置された略矩形状の膜形成領域に必要量の液状体を液滴として吐出(配置)するものである。なお、膜形成領域は、ワークW上において隔壁部により区画されている。また、隔壁部又は隔壁部の表面が液状体に対して撥液性を有している。膜形成領域内は、塗布される液状体の濡れ性を考慮して親液性を付与する表面処理を施してもよい。
【0067】
(実施例1)
図6は、実施例1の液滴の吐出方法を示す概略平面図である。一つの略矩形状の膜形成領域Aは、図6に示すように、R、G、B、3種のうちの何れかの液状体が吐出されるものであって、同種の液状体が吐出される膜形成領域AがX軸方向(副走査方向)に沿って直線的に配列し、異種の液状体が吐出される膜形成領域AがY軸方向(主走査方向)に並列する所謂ストライプ方式の配置となっている。各膜形成領域Aは、長手方向がX軸方向に沿うように配列している。
【0068】
膜形成領域Aの平面積や形状とこれに吐出され着弾したときの液滴の濡れ拡がり方にもよるが、一般的に隔壁部で区画された膜形成領域Aの角部(コーナー部)は、液滴が濡れ拡がり難い。言い換えれば、角部において吐出むらが発生し易い。
【0069】
また、膜形成領域Aに機能性材料を含む液状体を塗布し、乾燥させて機能性材料からなる機能膜を形成する場合、所望の膜厚や膜形状を有する機能膜を形成するには、必要量の液状体を液滴として確実に膜形成領域Aに吐出(塗布又は配置)する必要がある。
【0070】
図6に示すように、複数のノズル56(ノズル列56c)を膜形成領域Aの長手方向(X軸方向あるいは副走査方向)に相対配置して、長手方向と直交するY軸方向(主走査方向)に主走査し、膜形成領域Aに掛かる複数のノズル56から液滴を吐出する場合、膜形成領域Aの配列ピッチがノズル56の吐出分解能で割り切れない場合、各膜形成領域Aにおいて液滴の着弾位置が吐出分解能分だけずれることになり、これに起因した充填むらが発生するおそれがある。
【0071】
そこで、実施例1の液滴の吐出方法は、まず、図6に示すように、主走査において膜形成領域Aに掛かるノズル56から長手方向の隔壁部にその一部が着弾するように液滴を吐出し、さらに、膜形成領域Aのほぼ中央に着弾するように液滴を吐出する吐出工程とを行う。主走査において、膜形成領域Aには6個のノズル56が掛っている。長手方向において最も隔壁部に近いノズル56が確実に選択され、隔壁部の長手方向に沿って6個の液滴からなる液滴群D1及び隔壁部の長手方向に沿って6個の液滴からなる液滴群D2を吐出する。膜形成領域Aには合計18個の液滴が着弾する。液滴群D1,D2は、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56に3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうちいずれかのタイミングの吐出波形を印加することにより吐出される。
【0072】
吐出された液滴群D1は、その一部が隔壁部に掛かったとしても、隔壁部の表面が撥液性を有しているため、液滴群D1は、膜形成領域A内に収容され濡れ拡がる。
【0073】
例えば、吐出工程では、3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうち吐出波形PL1を選択されたノズル56に印加する。これにより、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56から同時に液滴が吐出される。
【0074】
なお、本実施例では吐出波形PL1,PL2,PL3は、振幅の幅(実質的には、中間電位との間の電位差すなわち駆動電圧)や波形の勾配などを略等しくすることによって、ノズル56から吐出される液滴の吐出量を等しくさせている。
【0075】
このような実施例1の液滴の吐出方法によれば、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56からそれぞれ3回の吐出が行われ、合計18個の液滴が膜形成領域Aに着弾する。吐出工程では、長手方向の隔壁部に沿って液滴群D1,D2が吐出される。したがって、液滴群D1は、隔壁部に沿って濡れ拡がり、液滴群D2を加えることによって、膜形成領域Aに満遍なく必要量の液状体が行き渡る。これにより、描画走査方向の画素の位置によって吐出波形を選択すれば、時系列に並べた吐出波形の数だけ着弾位置精度を高めることができる。
【0076】
また、1フレーム(ラッチ)内に並べた吐出波形は1つしか選択しないことで、高周波吐出による吐出不良の発生を減少させることができる。
【0077】
吐出工程における液滴群D1の吐出の仕方は、長手方向の隔壁部にその一部が掛かるように吐出したが、これに限らず、長手方向の隔壁部の近傍に着弾するように吐出すればよい。吐出工程における液滴群D1,D2の着弾位置は、前述したように実質的な吐出分解能の単位(およそ3.3μm)で制御が可能である。
【0078】
(実施例2)
図7は、実施例2の液滴の吐出方法を示す概略平面図である。実施例2の液滴の吐出方法は、まず、図7(A)に示すように、主走査において膜形成領域Aに掛かるノズル56から長手方向の隔壁部にその一部が着弾するように液滴を吐出する第1吐出工程を行う。主走査において、膜形成領域Aには6個のノズル56が掛っている。長手方向において最も隔壁部に近いノズル56が確実に選択され、隔壁部の長手方向に沿って6個の液滴からなる液滴群D1を吐出する。膜形成領域Aには合計12個の液滴が着弾する。液滴群D1は、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56に3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうちいずれかのタイミングの吐出波形を印加することにより吐出される。
【0079】
なお、本実施例では、第1吐出工程で用いる駆動波形(基準駆動波形)として、吐出波形PL1,PL2,PL3の、振幅の幅(実質的には、中間電位との間の電位差すなわち駆動電圧)や波形の勾配などを略等しくすることによって、ノズル56から吐出される液滴の吐出量を等しくさせている。
【0080】
吐出された液滴群D1は、その一部が隔壁部に掛かったとしても、隔壁部の表面が撥液性を有しているため、液滴群D1は、膜形成領域A内に収容され濡れ拡がる。
【0081】
次に、図7(B)に示すように、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56を時分割駆動して、液滴群D2を吐出する第2吐出工程を行う。したがって、長手方向に配列する6つのノズル56のうち3つずつのノズル56に対して隣り合うノズル56が同時に選択されないように駆動波形(補正駆動波形)を印加する。言い換えれば、隣り合うノズル56から同時に液滴は吐出されない。また、補正駆動波形に含まれる3つの吐出波形PL1',PL2',PL3'の波形形状を互いに異ならせれば、3つのノズル56間では、異なる吐出量の液滴を安定的に吐出することができる。
【0082】
例えば、第1吐出工程では、3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうち吐出波形PL1(基準吐出波形)を選択されたノズル56に印加する。これにより、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56から同時に液滴が吐出される。一方で、6つのノズル56に吐出波形PL1が同時に印加されることにより、クロストークの影響でノズル56間の液滴の吐出量がばらつく。第1吐出工程における液滴群D1の塗布量のばらつきは、複数のノズル56を同時に選択して吐出された液状体の重量を前述した重量計測機構38(図4参照)により計測すれば、求めることができる(ノズル情報入手工程)。
【0083】
膜形成領域Aに必要量の液状体を吐出(塗布)するために、上記液滴群D1の塗布量のばらつき情報から、第1吐出工程における塗布量が所定の塗布量よりも少ない場合には、例えば吐出波形PL1',PL2',PL3'を吐出波形PL1に比べて液滴の吐出量が多くなるように補正しておく(演算工程)。第2吐出工程では、隣り合うノズル56が同時に選択されないように、かつ第1吐出工程における塗布量の誤差を補正するように、補正後の3つの吐出波形PL1',PL2',PL3'を選択し、3つのノズル56に印加して液滴群D2を吐出する。時分割駆動により液滴群D2を吐出するので、吐出量が補正された液滴が安定的に吐出される。
【0084】
このような実施例2の液滴の吐出方法によれば、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56からそれぞれ3回の吐出が行われ、合計18個の液滴が膜形成領域Aに着弾する。第1吐出工程では、長手方向の隔壁部に沿って液滴群D1が吐出される。また、第2吐出工程では、膜形成領域Aに付与される液状体の必要量に基づいて、吐出量が補正された液滴からなる液滴群D2が吐出される。したがって、先に吐出された液滴群D1は、隔壁部に沿って濡れ拡がり、後から吐出された液滴群D2を加えることによって、膜形成領域Aに満遍なく必要量の液状体が行き渡る。これにより、着弾精度と充填量均一化を同時に実現できる。
【0085】
第1吐出工程における液滴群D1の吐出の仕方は、長手方向の隔壁部にその一部が掛かるように吐出したが、これに限らず、長手方向の隔壁部の近傍に着弾するように吐出すればよい。第1吐出工程及び第2吐出工程における液滴群D1,D2の着弾位置は、前述したように実質的な吐出分解能の単位(およそ3.3μm)で制御が可能である。
【0086】
また、第1吐出工程で吐出された液滴群D1の塗布量が所定の塗布量よりも多い場合には、例えば吐出波形PL1',PL2',PL3'を吐出波形PL1に比べて液滴の吐出量が少なくなるように補正しておく。第2吐出工程では、3つのノズル56に補正後の3つの吐出波形PL1',PL2',PL3'を隣り合うノズル56が同時に選択されないように、かつ第1吐出工程における塗布量の誤差を補正するように選択し、印加して液滴群D2を吐出すれば、必要量の液状体を安定して膜形成領域Aに塗布することができる。
又は、例えば吐出波形PL1'を吐出波形PL1に比べて液滴の吐出量が少なくなるように、PL2'の吐出量を吐出波形PL1と略等しくなるように、PL3'を吐出波形PL1に比べて液滴の吐出量が多くなるように補正してもよい。
【0087】
なお、図7(A)及び(B)では、Rの膜形成領域Aに液状体を液滴として吐出する方法を示したが、他の異なる種類の液状体が吐出されるG及びBの膜形成領域Aについても同様な主走査(第1吐出工程と第2吐出工程とを有する)を行う。したがって、実施例2の液滴の吐出方法によれば、異なる種類(3種)の液状体を液滴として対応する膜形成領域Aに必要量を安定的に塗布することができる。
【0088】
液状体ごとに吐出特性(液滴の吐出量や吐出速度など)に影響する物性(粘度、表面張力など)が異なる場合には、例えば液状体に応じた吐出波形PL1',PL2',PL3'を生成して選択できるようにすればよい。ただし、このように吐出波形の種類を増やすことは吐出装置2における電気的な構成が複雑になってしまうので、一般的には、物性が略同一となるように液状体ごとの調整(例えば溶媒の選択や濃度の調整など)を行う。
【0089】
(実施例3)
図8は、実施例3の液滴の吐出方法を示す概略平面図である。実施例3の液滴の吐出方法における第2吐出工程は、図8(B)に示すように、実施例2と同様である。すなわち、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56を時分割駆動して、液滴群D2を吐出する。第1吐出工程では、主走査において膜形成領域Aに掛かるノズル56から長手方向の隔壁部にその一部が着弾するように液滴を吐出する第1吐出工程を行う。主走査において、膜形成領域Aには6個のノズル56が掛っている。長手方向において最も隔壁部に近いノズル56が確実に選択され、隔壁部の長手方向に沿って6個の液滴からなる液滴群D1を吐出する。膜形成領域Aには合計12個の液滴が着弾する。液滴群D1は、膜形成領域Aに掛かる6つのノズル56に3つの吐出波形PL1,PL2,PL3のうちいずれかのタイミングの駆動波形を印加することにより吐出される。
【0090】
なお、本実施例において、吐出波形PL1,PL2,PL3は、振幅の幅(実質的には、中間電位との間の電位差すなわち駆動電圧)や波形の勾配などをそれぞれ変えることによって、ノズル56から吐出される液滴の吐出量を異ならせている。
【0091】
このような吐出方法の基本的な考え方によれば、第1吐出工程における液滴群D1の吐出に吐出波形PL1を用いた結果、所定の塗布量に対して吐出量に誤差が生じた場合、第2吐出工程では、第1吐出工程で生じた誤差を補正するように、液滴群D2の吐出に用いる吐出波形の組み合わせを、吐出波形PL1,PL2,PL3から選択し、吐出する。このとき、第2実施例と同様に第2吐出工程は時分割駆動により行われる。これによれば、複数の駆動波形を用いることなく着弾精度と充填量均一化を同時に実現することができる。
【0092】
実施例1〜実施例3の液滴の吐出方法において、膜形成領域Aに吐出される液滴の数(吐出数)は、R、G、Bの膜形成領域Aごとに同数であることに限定されない。例えば、R、G、Bの異なる液状体が吐出される膜形成領域Aごとに吐出数を変えてもよい。言い換えれば、液状体の塗布量を変えてもよい。
【0093】
(第2の実施形態)
<有機EL装置>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法を適用して製造された有機EL素子を有する有機EL装置について図9及び図10を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る有機EL装置を示す概略正面図、図10は、本実施形態に係る有機EL装置の要部概略断面図である。
【0094】
本実施形態の有機EL装置4は、図9に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素76を備えた素子基板78と、素子基板78に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板80とを備えている。封止基板80は、複数の発光画素76が設けられた発光領域82を封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板78に接合されている。
【0095】
発光画素76は、後述する発光素子としての有機EL素子84(図10参照)を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素76が、図面上の縦方向に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素76は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。
【0096】
素子基板78は、封止基板80よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素76を駆動する2つの走査線駆動回路部86と1つのデータ線駆動回路部88が設けられている。走査線駆動回路部86、データ線駆動回路部88は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板78に実装してもよいし、当該駆動回路部86,88を素子基板78の表面に直接形成してもよい。
【0097】
素子基板78の端子部78aには、これらの駆動回路部86,88と外部駆動回路とを接続するための中継基板90が実装されている。中継基板90は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
【0098】
有機EL装置4において、有機EL素子84は、図10に示すように、画素電極としての陽極92と、陽極92を区画する隔壁部94と、陽極92上に形成された有機膜からなる発光層を含む機能層96とを有している。また、機能層96を介して陽極92と対向するように形成された共通電極としての陰極98を有している。
【0099】
隔壁部94は、フェノール又はポリイミドなどの絶縁性を有する感光性樹脂からなり、発光画素76を構成する陽極92の周囲を一部覆って、複数の陽極92をそれぞれ区画するように設けられている。
【0100】
陽極92は、素子基板78上に形成されたTFT(Thin Film Transistor)素子100の3端子のうちの1つに接続しており、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度に成膜した電極である。なお、図示省略したが、陽極92の下層(平坦化層102側)に、絶縁層を介してAlからなる反射層が設けられている。当該反射層は、機能層96における発光を封止基板80側に反射するものである。また、当該反射層はAlに限定されず、発光を反射する機能(反射面)を有していればよい。例えば、絶縁性の有機材料あるいは無機材料を用いて凹凸を有する反射面を形成する方法、陽極92自体を反射機能を有する導電材料で構成し、表面層にITO膜を形成する方法などが挙げられる。
【0101】
陰極98は、同じく、ITOなどの透明電極材料により形成されている。
【0102】
本実施形態の有機EL装置4は、いわゆるトップエミッション型の構造となっており、陽極92と陰極98との間に駆動電流を流して機能層96で発光した光を上記反射層で反射させて封止基板80側から取り出す。したがって、封止基板80は、透明なガラス等からなる基板を用いる。また、素子基板78は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0103】
素子基板78には、有機EL素子84を駆動する回路部104が設けられている。すなわち、素子基板78の表面には、SiO2を主体とする下地保護層106が下地として形成され、その上にはシリコン層108が形成されている。このシリコン層108の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層110が形成されている。
【0104】
また、シリコン層108のうち、ゲート絶縁層110を挟んでゲート電極112と重なる領域がチャネル領域108aとされている。なお、このゲート電極112は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層108を覆い、ゲート電極112を形成したゲート絶縁層110の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層114が形成されている。
【0105】
また、シリコン層108のうち、チャネル領域108aのソース側には、低濃度ソース領域及び高濃度ソース領域108cが設けられる一方、チャネル領域108aのドレイン側には低濃度ドレイン領域及び高濃度ドレイン領域108bが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域108cは、ゲート絶縁層110と第1層間絶縁層114とにわたって開孔するコンタクトホール116aを介して、ソース電極116に接続されている。このソース電極116は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域108bは、ゲート絶縁層110と第1層間絶縁層114とにわたって開孔するコンタクトホール118aを介して、ソース電極116と同一層からなるドレイン電極118に接続されている。
【0106】
ソース電極116及びドレイン電極118が形成された第1層間絶縁層114の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化層102が形成されている。この平坦化層102は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、TFT素子100やソース電極116、ドレイン電極118などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0107】
そして、陽極92が、この平坦化層102の表面上に形成されると共に、該平坦化層102に設けられたコンタクトホール102aを介してドレイン電極118に接続されている。すなわち、陽極92は、ドレイン電極118を介して、シリコン層108の高濃度ドレイン領域108bに接続されている。陰極98は、GNDに接続されている。したがって、スイッチング素子としてのTFT素子100により、上記電源線から陽極92に供給され陰極98との間で流れる駆動電流を制御する。これにより、回路部104は、所望の有機EL素子84を発光させカラー表示を可能としている。
【0108】
なお、有機EL素子84を駆動する回路部104の構成は、これに限定されるものではない。
【0109】
機能層96は、有機膜からなる正孔注入層、中間層、発光層を含む複数の薄膜層からなり、陽極92側からこの順で積層されている。本実施形態において、これらの薄膜層は、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて成膜されている。
【0110】
正孔注入層の材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT/PSS)や、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体を用いてもよい。
【0111】
中間層は、正孔注入層と発光層との間に設けられ、発光層に対する正孔の輸送性(注入性)を向上させると共に、発光層から正孔注入層に電子が浸入することを抑制するために設けられている。すなわち、発光層における正孔と電子との結合による発光の効率を改善するものである。中間層の材料としては、例えば、正孔輸送性が良好なトリフェニルアミン系ポリマーを含んだものが挙げられる。
【0112】
発光層の材料としては、例えば、赤色、緑色、青色の発光が得られるポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、PEDOT等のポリチオフェニレン誘導体、ポリメチルフェニレンシラン(PMPS)等を用いることができる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクドリン等低分子材料をドープしてもよい。
【0113】
このような有機EL素子84を有する素子基板78は、透明な熱硬化型エポキシ樹脂等を封着部材として用いた封着層120を介して透明な封止基板80と隙間なくベタ封止されている。
【0114】
本実施形態の有機EL装置4は、後述する有機EL素子84の製造方法を用いて製造されており、発光層が略一定の膜厚を有しているため、異なる発光色が得られる機能層96R,96G,96Bにおいてそれぞれ所望の発光特性が得られる。
【0115】
なお、本実施形態の有機EL装置4は、トップエミッション型に限定されず、共通電極としての陰極98を反射機能を有する不透明なAl等の導電材料を用いて成膜し、有機EL素子84の発光を陰極98で反射させて、素子基板78側から取り出すボトムエミッション型の構造としてもよい。
【0116】
<有機EL素子の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法について図11〜図13を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図12及び図13は、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
【0117】
本実施形態の有機EL素子の製造方法は、図11に示すように、隔壁部形成工程(ステップS10)と、隔壁部が形成された基板に表面処理を施す表面処理工程(ステップS20)と、正孔注入層形成工程(ステップS30)と、中間層形成工程(ステップS40)と、発光層形成工程(ステップS50)と、陰極形成工程(ステップS60)と、有機EL素子が形成された素子基板78と封止基板80とを接合する封止基板接合工程(ステップS70)とを少なくとも備えている。なお、素子基板78上に回路部104(図10参照)を形成する工程や回路部104に電気的に接続した陽極92を形成する工程は、公知の製造方法を用いればよく、本実施形態では詳細の説明は省略する。したがって、図12(A)〜(D)及び図13(A)〜(D)では、回路部104の図示を省略している。
【0118】
図11のステップS10は、隔壁部形成工程である。ステップS10では、図12(A)に示すように、陽極92の周囲の一部を覆って陽極92ごとを区画するように隔壁部94を形成する。形成方法としては、例えば、陽極92が形成された素子基板78の表面に、感光性のフェノール樹脂又はポリイミド樹脂をおよそ1〜3μm程度の厚みで塗布する。塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。そして、発光画素76の形状に対応したマスクを用いて露光し、現像することにより複数の隔壁部94を形成することができる。以降、隔壁部94により区画された発光画素76の領域を膜形成領域Aと呼ぶ。そして、ステップS20へ進む。
【0119】
図11のステップS20は、表面処理工程である。ステップS20では、隔壁部94が形成された素子基板78の表面に親液処理と撥液処理とを施す。まず、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を行い、主に無機材料からなる陽極92の表面に親液処理を施す。次に、CF4などのフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理を行い、有機材料からなる隔壁部94の表面にフッ素を導入して撥液処理を施す。そして、ステップS30へ進む。
【0120】
図11のステップS30は、正孔注入層形成工程である。ステップS30では、まず、図12(B)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体122を膜形成領域Aに塗布する。液状体122は、例えば、溶媒としてジエチレングリコールと水(純水)とを含んでおり、正孔注入層形成材料としてPEDOT/PSSを重量比で0.5%程度含んだものを用いた。粘度がおよそ20mPa・s以下となるように溶媒の割合が調整されている。
【0121】
液状体122を塗布する方法としては、第1の実施形態において説明した液状体(インク)を吐出ヘッド34のノズル56から吐出可能な吐出装置2を用いる。吐出ヘッド34とワークWである素子基板78とを対向させ、吐出ヘッド34から液状体122を吐出する。吐出された液状体122は、液滴として親液処理された陽極92に着弾して濡れ拡がる。また、乾燥後の正孔注入層の膜厚がおよそ50〜70nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
【0122】
乾燥工程では、素子基板78を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体122の溶媒成分を乾燥させて除去し、図12(C)に示すように膜形成領域Aの陽極92上に正孔注入層96aを形成する。なお、本実施形態では、各膜形成領域Aに同一材料からなる正孔注入層96aを形成したが、後に形成される発光層に対応して正孔注入層96aの材料を発光色ごとに変えてもよい。そしてステップS40へ進む。
【0123】
図11のステップS40は、中間層形成工程である。ステップS40では、図12(D)に示すように、中間層形成材料を含む液状体124を膜形成領域Aに付与する。
【0124】
液状体124は、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含み、中間層形成材料として、前述したトリフェニルアミン系ポリマーを重量比で0.1%程度含んだものを用いた。粘度はおよそ6mPa・sである。
【0125】
液状体124を塗布する方法としては、液状体122を塗布する場合と同様に、第1の実施形態の吐出装置2を用いる。乾燥後の中間層の膜厚がおよそ10〜20nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
【0126】
乾燥工程では、素子基板78を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体124の溶媒成分を乾燥させて除去し、図13(A)に示すように膜形成領域Aの正孔注入層96a上に中間層96cを形成する。そしてステップS50へ進む。
【0127】
図11のステップS50は、発光層形成工程である。ステップS50では、図13(B)に示すように、発光層形成材料を含む液状体126R,126G,126Bをそれぞれ対応する膜形成領域Aに塗布する。
【0128】
液状体126R,126G,126Bは、例えば、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含んでおり、発光層形成材料としてPFを重量比で0.7%含んだものを用いた。粘度はおよそ14mPa・sである。
【0129】
液状体126R,126G,126Bを塗布する方法は、やはり第1の実施形態の吐出装置2を用い、それぞれ異なる吐出ヘッド34に充填されて吐出される。
【0130】
発光層の成膜にあたり、液状体126R,126G,126Bを膜形成領域Aに吐出むらなく、且つ必要量を安定的に吐出することができる第1の実施形態の液滴の吐出方法を用いた。すなわち、第1吐出工程では、液状体126R,126G,126Bが濡れ拡がり難い隔壁部94の近傍に液滴を吐出し、第2吐出工程では、時分割駆動により必要量に対して残りの液状体126R,126G,126Bを液滴として吐出した。第2吐出工程では、吐出量及び/又は吐出数が補正された液滴を吐出している。乾燥後の発光層の膜厚がおよそ50〜100nmとなるように、膜形成領域Aの面積に応じた必要量を液滴として吐出した。そして乾燥工程へ進む。
【0131】
本実施形態における吐出された液状体126R,126G,126Bの乾燥工程は、一般的な加熱乾燥に比べて溶媒成分を比較的均一に乾燥可能な減圧乾燥法を用いている。第1吐出工程及び第2吐出工程により、膜形成領域Aに満遍なく必要量の液状体126R,126G,126Bが塗布されている。したがって、図13(C)に示すように、乾燥後に形成された発光層96r,96g,96bは、膜形成領域Aごとに略一定の膜厚を有する。そして、ステップS60へ進む。
【0132】
図11のステップS60は、陰極形成工程である。ステップS60では、図13(D)に示すように、隔壁部94と各機能層96R,96G,96Bとを覆うように陰極98を形成する。これにより有機EL素子84が構成される。
【0133】
陰極98の材料としては、ITOとCa、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物とを組み合わせて用いるのが好ましい。特に機能層96R,96G,96Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいITOを形成するのが好ましい。また、陰極98の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極98の酸化を防止することができる。陰極98の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に機能層96R,96G,96Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。そして、ステップS70へ進む。
【0134】
図11のステップS70は、封止基板接合工程である。ステップS70では、有機EL素子84が形成された素子基板78に透明な封着層120を塗布して、透明な封止基板80と隙間なくベタ封止する(図10参照)。さらに封止基板80の外周領域において水分や酸素等の進入を防ぐ接着層を設けて接合することが望ましい。
【0135】
以上のような有機EL素子84の製造方法によれば、液滴吐出法により成膜された機能層96R,96G,96Bは、成膜むらが低減され、それぞれ略一定の膜厚の発光層96r,96g,96bを有している。したがって、成膜むらに起因する輝度むらが低減された有機EL素子84を製造することができる。
【0136】
このようにして製造された異なる発光が得られる有機EL素子84を備えた有機EL装置4は、所望の発光特性が実現され、見映えのよいカラー表示が可能である。
【0137】
(第3の実施形態)
<液晶表示装置>
次に、本実施形態のカラーフィルターを備えた液晶表示装置について図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す概略分解斜視図である。
【0138】
本実施形態の液晶表示装置6は、図14に示すように、TFT透過型の液晶表示パネル128と、液晶表示パネル128を照明する照明装置130とを備えている。液晶表示パネル128は、3色の着色層132R,132G,132Bを有するカラーフィルター132を備えた対向基板134と、画素電極136に3端子のうちの1つが接続されたスイッチング素子としてのTFT素子138を有する素子基板140と、一対の基板134,140によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル128の外面側となる一対の基板134,140の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板142と下偏光板144とが配設される。
【0139】
対向基板134は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部146によってマトリクス状に区画された複数の膜形成領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)、3色の着色層132R,132G,132Bが形成されている。隔壁部146は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク148と、下層バンク148の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク150とにより構成されている。また、隔壁部146と着色層132R,132G,132Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)152と、OC層152を覆うように形成されたITOなどの透明導電膜からなる対向電極154とを備えている。対向基板134は、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用したカラーフィルター132の製造方法を用いて製造されている。
【0140】
素子基板140は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜156を介してマトリクス状に形成された画素電極136と、画素電極136に対応して形成された複数のTFT素子138とを有している。TFT素子138の3端子のうち、画素電極136に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極136を囲むように格子状に配設された走査線158とデータ線160とに接続されている。
【0141】
照明装置130は、例えば光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル128に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0142】
本実施形態の液晶表示装置6は、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用したカラーフィルター132の製造方法を用いて製造された着色層132R,132G,132Bを有する対向基板134を備えているので、色むら等の表示不具合の少ない高い表示品質を有する。
【0143】
なお、液晶表示パネル128は、アクティブ素子としてTFT素子138を有したものに限らず、少なくとも一方の基板にカラーフィルターを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。また、上下偏光板142,144は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。
【0144】
<カラーフィルターの製造方法>
次に、本実施形態のカラーフィルター132の製造方法について図15を参照して説明する。図15は、本実施形態に係るカラーフィルターの製造方法を示す概略断面図である。
【0145】
まず、図15(A)に示すように、対向基板134の表面に、膜形成領域Aを区画するように隔壁部146を形成する(隔壁部形成工程)。形成方法としては、真空蒸着法やスパッタ法により、CrやAlなどの金属膜又は金属化合物の膜を対向基板134の表面に遮光性を有するように成膜する。そしてフォトリソグラフィ法により、感光性樹脂(フォトレジスト)を塗布して膜形成領域Aが開口するように露光・現像・エッチングして下層バンク148を形成する。続いてフォトリソグラフィ法により、感光性の隔壁部形成材料をおよそ2μmの厚みで塗布して露光・現像し、下層バンク148上に上層バンク150を形成する。隔壁部146は、下層バンク148と上層バンク150とからなる所謂二層バンク構造となっている。なお、隔壁部146は、これに限らず、遮光性を有する感光性の隔壁部形成材料を用いて形成した上層バンク150のみの一層構造としてもよい。
【0146】
次に、後の液滴の吐出工程において、吐出された液状体が膜形成領域Aに着弾して濡れ拡がるように、対向基板134の表面を親液処理する。また、吐出された液状体の一部が上層バンク150に着弾したとしても膜形成領域A内に収まるように、上層バンク150の少なくとも頭頂部を撥液処理する。
【0147】
表面処理方法としては、隔壁部146が形成された対向基板134に対して、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、膜形成領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク150の表面(壁面を含む)が撥液処理される。なお、上層バンク150を形成する材料自体が撥液性を有していれば後者の処理を省くこともできる。
【0148】
続いて、吐出装置2のステージ22に表面処理されたワークWである対向基板134を載置する。そして、図15(B)に示すように、対向基板134が載置されたステージ22と吐出ヘッド34との主走査方向への相対移動に同期して、吐出ヘッド34の複数のノズル56から例えばR(赤)の着色層形成材料が含まれた液状体162Rを液滴として膜形成領域Aに吐出する(液状体の第1吐出工程及び第2吐出工程)。他の液状体162G,162Bにおいても同様である。これにより、図15(C)に示すように、吐出むらが低減され、必要量の液状体が膜形成領域Aごとに塗布される。
【0149】
次に、図15(D)に示すように、対向基板134に吐出された液状体162R,162G,162Bから溶媒成分を蒸発させて、着色層形成材料からなる着色層132R,132G,132Bを成膜する(成膜工程)。本実施形態では、液状体162R,162G,162Bに含まれる溶媒を略一定速度で乾燥することが可能な減圧乾燥装置に対向基板134をセットして減圧乾燥し、R、G、B、3色の着色層132R,132G,1324Bを形成した。なお、1色の液状体を吐出して乾燥する工程を3回繰り返してもよい。
【0150】
先の液滴の吐出工程において、吐出むらが低減され、必要量の液状体162R,162G,162Bが膜形成領域Aごとに安定的に塗布されているので、略一定の膜厚を有する着色層132R,132G,132Bを形成することができる。なお、着色層132R,132G,132Bの膜厚は、色ごとに設定すればよく、必ずしも3色が同一でなくてもよい。必要な膜厚の設定に基づいて、必要量の液状体162R,162G,162Bを対応する膜形成領域Aに吐出すればよい。
【0151】
次に、図15(E)に示すように、着色層132R,132G,132Bと上層バンク150とを覆うように平坦化層としてのOC層152を形成する(平坦化層形成工程)。形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法などによりアクリル系樹脂をコーティングして乾燥させる方法が挙げられる。また、感光性アクリル樹脂をコーティングしてから紫外光を照射して硬化させる方法も採用することができる。膜厚は、およそ100nmである。なお、着色層132R,132G,132Bが形成された対向基板134の表面が比較的に平坦ならば、平坦化層形成工程を省いてもよい。
【0152】
次に、図15(F)に示すように、OC層152の上にITOなどからなる対向電極154を成膜する(対向電極成膜工程)。成膜方法としては、ITOなどの導電材料をターゲットとして真空中で蒸着あるいはスパッタする方法が挙げられる。膜厚は、およそ10nmである。形成された対向電極154は、適宜必要な形状(パターン)に加工される。なお、液晶表示装置6の構成によっては、対向電極154を必要としない場合もある。
【0153】
このようなカラーフィルター132の製造方法によれば、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用して3色の着色層形成材料を含む液状体162R,162G,162Bを対応する膜形成領域Aに吐出しているため、乾燥後に色むらが低減され、略一定の膜厚を有する着色層132R,132G,132Bを形成することができる。すなわち、所望の光学特性を有するカラーフィルター132を製造することができる。
【0154】
液晶表示装置6は、このようなカラーフィルター132を備えた対向基板134を用いて構成されているため、見映えのよいカラー表示が可能である。
【0155】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0156】
(変形例1)上記第1の実施形態における吐出装置2の構成は、これに限定されない。例えば、ヘッドプレート12aに搭載される吐出ヘッド34の配置は、吐出される液状体の種類によってその配置を変えてもよい。
【0157】
(変形例2)上記第1の実施形態の液滴の吐出方法において、膜形成領域Aの形状及び配置は、これに限定されない。例えば、ストライプ方式の配置だけでなく、モザイク方式やデルタ方式の配置においても適用できる。
【0158】
(変形例3)上記第1の実施形態の液滴の吐出方法において、時分割駆動を実現する吐出波形PL1,PL2,PL3の構成は、これに限定されない。例えば、2種類の波形構成としても時分割駆動は可能である。
【0159】
(変形例4)上記第2の実施形態の有機EL素子84の製造方法において、上記第1の実施形態の液滴の吐出方法を適用するのは、着色層形成材料を含む液状体126R,126G,126Bの吐出工程に限定されない。例えば、正孔注入層形成材料を含む液状体122や中間層形成材料を含む液状体124の吐出工程においても適用可能である。
【0160】
(変形例5)上記第2の実施形態の有機EL装置4において、発光画素76の構成は、これに限定されない。例えば、発光画素76に備えた有機EL素子84を白色発光可能な構成とする。そして、封止基板80側に3色のカラーフィルターを備える構成とする。これによれば、同様に輝度むらが低減された見映えのよいカラー表示が可能となる。
【0161】
(変形例6)上記第3の実施形態のカラーフィルター132の製造方法において、吐出される液状体は、3色に限定されない。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)に他の色を加えた多色の液状体を吐出してもよい。
【符号の説明】
【0162】
2…吐出装置 4…有機EL装置 6…液晶表示装置 10…ワーク移動機構 12…ヘッドユニット 12a…ヘッドプレート 14…ヘッド移動機構 16…ガイドレール 18…移動台 20…回転機構 22…ステージ 24…エンコーダー 26…ガイドレール 28…移動台 30…回転機構 32…キャリッジ 34…吐出ヘッド 34A,34B…ヘッド群 36…ヘッドドライバー 38…重量計測機構 40…制御部 42…接続針 44…導入部 46…ヘッド基板 48…ヘッド本体 50…コネクター 52…加圧部(駆動手段) 54…ノズルプレート 54a…ノズル面 56…ノズル 56a,56b,56c…ノズル列 58…駆動部 60…移動用ドライバー 62…重量計測用ドライバー 64…CPU 66…ROM 68…RAM 70…P−CON 72…バス 74…上位コンピューター 76…発光画素 78…基板としての素子基板 78a…端子部 80…封止基板 82…発光領域 84…有機EL素子 86…走査線駆動回路部 88…データ線駆動回路部 90…中継基板 92…陽極 94…隔壁部 96…機能層 96a…正孔注入層 96c…中間層 96r,96g,96b…発光層 96R,96G,96B…機能層 98…陰極 100…TFT素子 102…平坦化層 102a…コンタクトホール 104…回路部 106…下地保護層 108…シリコン層 108a…チャネル領域 108b…高濃度ドレイン領域 108c…高濃度ソース領域 110…ゲート絶縁層 112…ゲート電極 114…第1層間絶縁層 116…ソース電極 116a…コンタクトホール 118…ドレイン電極 118a…コンタクトホール 120…封着層 122,124…液状体 126R,126G,126B…発光層形成材料を含む液状体 128…液晶表示パネル 130…照明装置 132…カラーフィルター 132R,132G,132B…着色層 134…基板としての対向基板 136…画素電極 138…TFT素子 140…素子基板 142…上偏光板 144…下偏光板 146…隔壁部 148…下層バンク 150…上層バンク 152…オーバーコート層(OC層) 154…対向電極 156…絶縁膜 158…走査線 160…データ線 162R,162G,162B…液状体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルと隔壁部により区画された複数の膜形成領域を有する被吐出物とを対向配置して相対移動させる走査に同期して、前記複数のノズルごとに設けられた駆動手段に、1ラッチ内に時分割で発生させた吐出タイミングの異なる複数の吐出波形を有する駆動波形を印加して、前記複数のノズルから機能性材料を含む液状体を液滴として前記膜形成領域に吐出する吐出工程を有する液滴の吐出方法であって、
前記複数の膜形成領域は、基準となる第1膜形成領域と、第2膜形成領域と、を有し、前記液滴を吐出するために印加する駆動波形として前記複数の膜波形領域において同一の駆動波形を用いた場合に、前記第1膜形成領域に吐出された前記液滴のうち、第1液滴の着弾位置における前記隔壁部からの距離である第1距離に対して、前記第2膜形成領域に吐出された前記液滴のうち、前記第1液滴に対応する第2液滴の着弾位置における前記隔壁部からの距離である第2距離が異なる値である時に、
実際の前記液滴の吐出時には、前記第2液滴を吐出するために印加する駆動波形として、前記複数の駆動波形のうち、前記第1距離と前記第2距離との差が小さくなる駆動波形を選択し、前記第2液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴の吐出方法において、
前記駆動波形は、基準駆動波形と補正駆動波形とを含み、
前記駆動手段に対して、前記基準駆動波形が有する、充電、保持、放電を促す基準吐出波形を印加して、前記複数のノズルごとに吐出された前記液滴の吐出量の情報を入手するノズル情報入手工程と、
前記複数のノズルごとに基準吐出量に対する補正量を求める演算工程と、
を含み、
前記吐出工程は、前記走査において、前記複数のノズルのうち前記膜形成領域に掛かるノズルの前記駆動手段に、前記膜形成領域に掛かるノズルのそれぞれに対応する前記補正量に基づいて、前記補正駆動波形に含まれる吐出波形であって、前記基準駆動波形の放電時の中間電位を補正した補正吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴の吐出方法において、
前記吐出タイミングごとに、前記基準吐出波形、前記補正吐出波形のうちから1つを選択し、使用するノズルの前記駆動手段に印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液滴の吐出方法において、
前記吐出工程は、第1吐出工程と第2吐出工程とを含み、
前記第1吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記基準吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出し、
前記第2吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミング以外における前記液滴の吐出に、前記膜形成領域に付与される前記液状体の必要量に基き前記補正吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【請求項5】
請求項1に記載の液滴の吐出方法において、
前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形はそれぞれ異なる波形を有し、
前記吐出工程は、第1吐出工程と第2吐出工程とを含み、
前記第1吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形のうち何れか1つの吐出波形を印加して、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出し、
前記第2吐出工程では、前記走査において、前記液滴の着弾位置が、前記複数のノズルのうち前記隔壁部の近傍又は前記液滴の一部が前記隔壁部に掛かるタイミング以外のタイミングにおける前記液滴の吐出に、前記膜形成領域に付与される前記液状体の必要量と前記第1吐出工程において吐出された前記液滴の吐出量とに基き前記吐出タイミングの異なる複数の吐出波形を選択して印加し、前記膜形成領域に少なくとも1つの前記液滴を吐出することを特徴とする液滴の吐出方法。
【請求項6】
基板上に区画形成された複数の発光層形成領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の発光層形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、前記発光層を形成する固化工程と、
を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記吐出工程は、異なる発光色が得られる複数種の前記液状体を所望の前記発光層形成領域に吐出し、
前記固化工程は、吐出された複数種の前記液状体を固化して、少なくとも赤、緑、青、3色の前記発光層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の有機EL素子の製造方法において、
前記吐出工程は、複数種の前記液状体をそれぞれ異なる吐出ヘッドに充填し、前記液状体ごとに前記基準駆動波形の設定と、前記補正駆動波形の設定とを行うことを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−5352(P2011−5352A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148370(P2009−148370)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】