説明

液滴吐出装置、液滴吐出方法及びカラーフィルター製造方法

【課題】液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の吐出量を安定化させて、製品品質の低下を防止する。
【解決手段】機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッド5を備える液滴吐出装置であって、上記機能液の吐出を停止した待機状態である場合と上記機能液を吐出可能な吐出状態である場合とにおいて上記液滴吐出ヘッド5に供給する温調ガスの温度を切替可能な温調ガス供給手段12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置、液滴吐出方法及びカラーフィルター製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、携帯型コンピュータなどといった電子機器の表示部に液晶装置、エレクトロルミネッセンス装置等の電気光学装置においてフルカラー表示が行われるようになっている。例えば、液晶装置によるフルカラー表示は、液晶層によって変調される光をカラーフィルターに通すことによって表示される。このようなカラーフィルターは、液滴吐出装置によってフィルターエレメント材料をガラス、プラスチックなどによって形成された基材の表面にドット状に吐出することで形成される。
【0003】
そして、カラーフィルター材料を吐出する液滴吐出装置に限らず、一般的に液滴吐出装置は、複数の液滴吐出ヘッドを備えており、各液滴吐出ヘッドから機能液を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−209429号公報
【特許文献2】特開2004−261647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機能液は温度によって粘度が変化するため、液滴吐出ヘッドの温度に応じて粘度が変化する。そして、機能液の粘度が低くなった場合には液滴吐出ヘッドの機能液の吐出量が増大し、機能液の粘度が高くなった場合には液滴吐出ヘッドの機能液の吐出量が減少する。
これに対して、液滴吐出ヘッドは、吐出状態を想定した温度において最適に液滴吐出が成されるように設計されている。
【0006】
しかしながら、液滴吐出ヘッドの温度は、液滴吐出ヘッドが置かれている環境によって変動する。
例えば、機能液を基材の表面に吐出している状態である吐出状態と、機能液の吐出を停止して待機している待機状態とでは、液滴吐出ヘッド内部の駆動素子からの発熱が異なる。このため、吐出状態においては、液滴吐出ヘッドの温度が相対的に高くなり、機能液の粘度が低くなって機能液の吐出量が増大する状態となる。一方、待機状態においては、液滴吐出ヘッドの温度が相対的に低くなり、機能液の粘度が高くなって機能液の吐出量が減少する状態となる。
したがって、待機状態直後の吐出状態においては、液滴吐出ヘッドの温度が低く、機能液の吐出量が少なくなる場合がある。また、吐出状態が続く場合には、液滴吐出ヘッドが過熱されて機能液の吐出量が多くなる場合がある。
【0007】
このように液滴吐出ヘッドの温度状態によって機能液の吐出量が変化する場合には、機能液の吐出量が所望の量に対して変化することとなるため、製品品質の低下を招くこととなる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の吐出量を安定化させて、製品品質の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、上記機能液の吐出を停止した待機状態である場合と上記機能液を吐出可能な吐出状態である場合とにおいて上記液滴吐出ヘッドに供給する温調ガスの温度を切替可能な温調ガス供給手段を備えるという構成を採用する。
【0011】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドに供給される温調ガスの温度が切替可能とされ、液滴吐出ヘッドの状態に応じた最適な温度の温調ガスが液滴吐出ヘッドに供給される。このため、本発明によれば、液滴吐出ヘッドの温度を、安定して機能液を吐出可能な温度範囲(最適吐出温度範囲)に調節することが可能となる。
したがって、本発明によれば、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の吐出量を安定化させて、製品品質の低下を防止することが可能となる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記液滴吐出ヘッドを複数備え、上記温調ガス供給手段が、各液滴吐出ヘッドに対して上記温調ガスを供給可能とされているという構成を採用する。
【0013】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドごとに温調ガスが供給されるため、各液滴吐出ヘッドの温度を最適に制御することが可能となる。
【0014】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記温調ガス供給手段が、上記待機状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも高い温度の温調ガスを上記液滴吐出ヘッドに供給し、上記吐出状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも低い温度の温調ガスを上記液滴吐出ヘッドに供給するという構成を採用する。
【0015】
このような構成を採用する本発明によれば、待機状態の液滴吐出ヘッドに対して高い温度の温調ガスが供給されることによって液滴吐出ヘッドが最適吐出温度範囲に調節され、吐出状態の液滴吐出ヘッドに対して低い温度の温調ガスが供給されることによって液滴吐出ヘッドが最適吐出温度範囲に調節される。
このため、待機状態及び吐出状態のいずれの状態であっても液滴吐出ヘッドを最適吐出温度範囲に調節することが可能となる。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記温調ガス供給手段が、上記液滴吐出ヘッドに対して供給する上記温調ガスの流量を調節する流量調節手段を備えるという構成を採用する。
【0017】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドに対して供給される温調ガスの流量を調節することによって、液滴吐出ヘッドの温度をより細かく制御することが可能となる。
【0018】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記温調ガス供給手段が、既設の発熱部品からの熱を用いて上記温調ガスを加熱するという構成を採用する。
【0019】
このような構成を採用する本発明によれば、温調ガスが既設の発熱部品からの熱を利用して加熱される。このため、本発明によれば、温調ガスを加熱するための装置を別途設置する必要がなく、また従来は放熱されていた熱が有効利用されるために環境に適したものとなる。
【0020】
第6の発明は、ノズルを有する液滴吐出ヘッドから機能液を吐出する液滴吐出方法であって、上記機能液の吐出を停止した待機状態である場合と上記機能液を吐出可能な吐出状態である場合とにおいて上記液滴吐出ヘッドに供給する温調ガスの温度を切替えるという構成を採用する。
【0021】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドに供給される温調ガスの温度が切替可能とされ、液滴吐出ヘッドの状態に応じた最適な温度の温調ガスが液滴吐出ヘッドに供給される。このため、本発明によれば、液滴吐出ヘッドの温度を、安定して機能液を吐出可能な温度範囲(最適吐出温度範囲)に調節することが可能となる。
したがって、本発明によれば、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の吐出量を安定化させて、製品品質の低下を防止することが可能となる。
【0022】
第7の発明は、上記第6の発明において、上記液滴吐出ヘッドが複数である場合に、各液滴吐出ヘッドに対して温調ガスを供給するという構成を採用する。
【0023】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドごとに温調ガスが供給されるため、各液滴吐出ヘッドの温度を最適に制御することが可能となる。
【0024】
第8の発明、上記第6または第7の発明において、上記待機状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも高い温度の温調ガスを上記液滴吐出ヘッドに供給し、上記吐出状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも低い温度の温調ガスを上記液滴吐出ヘッドに供給するという構成を採用する。
【0025】
このような構成を採用する本発明によれば、待機状態の液滴吐出ヘッドに対して高い温度の温調ガスが供給されることによって液滴吐出ヘッドが最適吐出温度範囲に調節され、吐出状態の液滴吐出ヘッドに対して低い温度の温調ガスが供給されることによって液滴吐出ヘッドが最適吐出温度範囲に調節される。
このため、待機状態及び吐出状態のいずれの状態であっても液滴吐出ヘッドを最適吐出温度範囲に調節することが可能となる。
【0026】
第9の発明は、上記第6〜第8いずれかの発明において、上記液滴吐出ヘッドに対して供給する上記温調ガスの流量を調節するという構成を採用する。
【0027】
このような構成を採用する本発明によれば、液滴吐出ヘッドに対して供給される温調ガスの流量を調節することによって、液滴吐出ヘッドの温度をより細かく制御することが可能となる。
【0028】
第10の発明は、上記第6〜第9いずれかの発明において、既設の発熱部品からの熱を用いて上記温調ガスを加熱するという構成を採用する。
【0029】
このような構成を採用する本発明によれば、温調ガスが既設の発熱部品からの熱を利用して加熱される。このため、本発明によれば、温調ガスを加熱するための装置を別途設置する必要がなく、また従来は放熱されていた熱が有効利用されるために環境に適したものとなる。
【0030】
第11の発明は、カラーフィルターの製造方法であって、上記第1〜第5の発明である液滴吐出装置、あるいは第6〜10いずれかの発明である液滴吐出方法を用いて、基材上に設けられた所定領域に上記機能液を配置してカラーフィルターを形成するという構成を採用する。
【0031】
このような構成を採用する本発明によれば、均一なカラーフィルターを形成することができ、優れた品質のカラーフィルターとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における液滴吐出装置が備えるキャリッジを下方から見た図である。
【図3】本発明の一実施形態における液滴吐出装置が備える温調ガス供給装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明に係る液滴吐出装置、液滴吐出方法及びカラーフィルター製造方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また図1中に示すようにXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ2に対して平行となるよう設定され、Z軸がワークステージ2に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0034】
図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置IJの概略構成図である。液滴吐出装置IJは、例えばインクジェット方式によりカラーフィルター基板(基材)の所定領域上にカラーフィルター材料(機能液)の液滴を吐出してカラーフィルターを形成する装置であり、本実施形態の液滴吐出方法を行うものでもある。
【0035】
液滴吐出装置IJは、装置架台1、ワークステージ2、ステージ移動装置3、キャリッジ4、液滴吐出ヘッド5、キャリッジ移動装置6、チューブ7、第1タンク8、第2タンク9、第3タンク10、制御装置11及び温調ガス供給装置12(温調ガス供給手段)を備えている。
【0036】
装置架台1は、ワークステージ2及びステージ移動装置3の支持台である。ワークステージ2は、装置架台1上においてステージ移動装置3によってX軸方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送されるカラーフィルター基板(基材)Pを、真空吸着機構によりXY平面上に保持する。ステージ移動装置3は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、ワークステージ2のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ2をX軸方向に移動させる。
【0037】
キャリッジ4は、液滴吐出ヘッド5を保持するものであり、キャリッジ移動装置6によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。
液滴吐出ヘッド5は、複数のノズルN(図2参照)を備えており、制御装置11から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、カラーフィルター材料の液滴を吐出する。この液滴吐出ヘッド5は、図2に示すように、カラーフィルター材料のR(赤)、G(緑)、B(青)に対応して複数設けられており、それぞれの液滴吐出ヘッド5はキャリッジ4を介してチューブ7と連結されている。そして、R(赤)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第1タンク8からR(赤)用のカラーフィルター材料の供給を受け、G(緑)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第2タンク9からG(緑)用のカラーフィルター材料の供給を受け、また、B(青)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第3タンク10からB(青)用のカラーフィルター材料の供給を受けるようになっている。
なお、各液滴吐出ヘッド5は、キャリッジ4に固定されるプレート13によって支持されており、ノズル形成面がワークステージ2側に露出されている。
【0038】
キャリッジ移動装置6は、装置架台1を跨ぐ橋梁構造をしており、Y軸方向及びZ軸方向に対してボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0039】
チューブ7は、第1タンク8、第2タンク9及び第3タンク10とキャリッジ4(液滴吐出ヘッド5)とを連結するカラーフィルター材料の供給用チューブである。第1タンク8は、R(赤)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してR(赤)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。第2タンク9は、G(緑)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してG(緑)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。第3タンク10は、B(青)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してB(青)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給する。
【0040】
制御装置11は、ステージ移動装置3にステージ位置制御信号を出力し、キャリッジ移動装置6にキャリッジ位置制御信号を出力すると共に、液滴吐出ヘッド5の駆動回路基板に描画データ及び駆動制御信号を出力して、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作、ワークステージ2の移動によるカラーフィルター基板Pの位置決め動作、キャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド5の位置決め動作の同期制御を行うことにより、カラーフィルター基板P上の所定の位置にカラーフィルター材料の液滴を吐出する。
また、制御装置11は、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作が可能な状態(機能液を吐出可能な吐出状態)と、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作を停止した状態(機能液の吐出を停止した待機状態)との状態切替が可能とされている。そして、制御装置11は、吐出状態及び待機状態に応じて温調ガス供給装置12に制御信号を出力して温調ガス供給装置12の制御を行う。なお、温調ガス供給装置12については後に詳説するが、制御装置11は、温調ガス供給装置12に対して、液滴吐出ヘッド5に供給する温調ガスの温度を切り替えるための制御信号を出力する。
また、各液滴吐出ヘッド5あるいは当該各液滴吐出ヘッド5の近傍には、温度センサが設置されており、直接的あるいは間接的に液滴吐出ヘッド5の温度が測定される。そして、制御装置11は、これらの温度センサから入力される測定信号を受けることによって液滴吐出ヘッド5の温度を取得可能とされている。
【0041】
温調ガス供給装置12は、液滴吐出ヘッド5に対して温調ガスY(図2参照)を供給するものである。この温調ガス供給装置12は、キャリッジ4あるいはキャリッジ4を支持するフレーム等に固定されており、キャリッジ4の移動に伴って移動する。
図3は、温調ガス供給装置12の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、温調ガス供給装置12は、加熱した温調ガスY(加熱温調ガスY1と称する)を液滴吐出ヘッド5に対して供給する加熱温調ガス供給部12aと、外気(冷却ガス)を温調ガスY(冷却温調ガスY2と称する)として液滴吐出ヘッド5に対して供給する冷却温調ガス供給部12bとを備えている。
なお、本実施形態において加熱温調ガス供給部12aは、制御装置11が備える電気回路等(既設の発熱部品)からの熱を用いて外気を加熱することによって加熱温調ガスY1を生成する。
【0042】
そして、加熱温調ガス供給部12aは、液滴吐出ヘッド5の各々に対して向けられた複数の配管12cと接続されている。
各配管12cの途中部位には、流量調節弁12d(流量調節手段)が設置されている。なお、流量調節弁12dは、制御装置11と電気的に接続され、制御装置11が取得した各液滴吐出ヘッド5の温度に基づいて生成された制御信号によって開度が調節される。
このように、本実施形態においては、各配管12cを介することによって、各液滴吐出ヘッド5に対して加熱温調ガスY1を供給することができる。また、各配管12cの途中部位に設置された流量調節弁12dの開度を独立して調節することによって、各液滴吐出ヘッド5に対して供給される加熱温調ガスY1の流量を液滴吐出ヘッド5ごとに調節し、各液滴吐出ヘッド5の温度を細かく制御することができる。
【0043】
また、冷却温調ガス供給部12bは、液滴吐出ヘッド5の各々に対して向けられた複数の配管12eと接続されている。
各配管12eの途中部位には、流量調節弁12f(流量調節手段)が設置されている。なお、流量調節弁12fは、制御装置11と電気的に接続され、制御装置11が取得した各液滴吐出ヘッド5の温度に基づいて生成された制御信号によって開度が調節される。
このように、本実施形態においては、各配管12eを介することによって、各液滴吐出ヘッド5に対して冷却温調ガスY2を供給することができる。また、各配管12eの途中部位に設置された流量調節弁12fの開度を独立して調節することによって、各液滴吐出ヘッド5に対して供給される冷却温調ガスY2の流量を液滴吐出ヘッド5ごとに調節し、各液滴吐出ヘッド5の温度を細かく制御することができる。
【0044】
そして、本実施形態において温調ガス供給装置12は、制御装置11の制御の下、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作が可能な状態(以下、吐出状態と称する)である場合と、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作を停止した状態(以下、待機状態と称する)である場合とにおいて、液滴吐出ヘッド5に供給する温調ガスYの温度を切り替える。
具体的には、温調ガス供給装置12は、待機状態である場合に加熱温調ガス供給部12aによって加熱温調ガスY1を液滴吐出ヘッド5に供給し、吐出状態である場合に冷却温調ガス供給部12bによって冷却温調ガスY2を液滴吐出ヘッド5に供給する。
このような温調ガス供給装置12によって、待機状態で液滴吐出ヘッド5の温度が低い場合には、液滴吐出ヘッド5に加熱温調ガスY1が供給されて液滴吐出ヘッド5の温度が安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲とされる。また、このような温調ガス供給装置12によって、吐出状態で液滴吐出ヘッド5の温度が過熱状態となり易い場合であっても、液滴吐出ヘッド5に冷却温調ガスY2が供給されて液滴吐出ヘッド5の温度が安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲に維持される。
つまり、本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、温調ガス供給装置12によって、待機状態であっても吐出状態であっても液滴吐出ヘッドの温度が、常に安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度に制御される。
【0045】
さらに、本実施形態において温調ガス供給装置12は、制御装置11の制御の下、各流量調節弁12d,12fの開度が液滴吐出ヘッド5の温度に応じて調節し、これによって各液滴吐出ヘッド5に供給される温調ガスYの流量を調節する。
このため、より確実に液滴吐出ヘッドの温度が、常に安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度に制御される。
【0046】
このような構成を有する本実施形態の液滴吐出装置IJを動作させて(液滴吐出方法を用いて)カラーフィルターを製造する場合には、まず外部から入力される開始指令(例えば電源投入)を受けて制御装置11は、本実施形態の液滴吐出装置IJを待機状態とする。
【0047】
そして、このような待機状態である場合には、温調ガス供給装置12は、制御装置11の制御の下、加熱温調ガス供給部12aによって加熱温調ガスY1を液滴吐出ヘッド5に供給する。この結果、カラーフィルター材料を吐出するための駆動素子が駆動されていないために低温である液滴吐出ヘッド5に、液滴吐出ヘッド5に加熱温調ガスY1が供給されて液滴吐出ヘッド5の温度が安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲とされる。
ここで、加熱温調ガス供給部12aは、各液滴吐出ヘッド5の温度に基づいて、安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲となるように、各流量調節弁12dの開度を調節する。
なお、本実施形態において加熱温調ガス供給部12aは、既設の発熱部品である制御装置11の電気回路から発せられる熱を利用して外気を加熱し、この加熱した外気を加熱温調ガスY1として液滴吐出ヘッド5に供給する。これによって、液滴吐出ヘッド5が上記温度範囲となる流量の加熱温調ガスY1が液滴吐出ヘッド5に供給される。
【0048】
なお、待機状態である場合のキャリッジ4の位置は、いずれの位置であっても構わない。例えば液滴吐出装置IJがフラッシングエリアやキャップユニットを備えている場合には、待機状態である場合には、これらに対応した位置にキャリッジ4を移動させておく。
【0049】
続いて、制御装置11は、本実施形態の液滴吐出装置IJを吐出状態とする。ここで、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、待機状態の場合に液滴吐出ヘッド5の温度が安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲とされている。このため、吐出状態となった直後であっても、全ての液滴吐出ヘッド5から所望の吐出量のカラーフィルター材料を吐出することができる。
【0050】
吐出状態となった場合には、制御装置11は、キャリッジ4を移動させながら、液滴吐出ヘッド5によってカラーフィルター材料を吐出する。これによって基板P上にカラーフィルター材料が配置されてカラーフィルターが製造される。
【0051】
そして、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、吐出状態である場合には、温調ガス供給装置12は、制御装置11の制御の下、冷却温調ガス供給部12bによって冷却温調ガスY2を液滴吐出ヘッド5に供給する。この結果、カラーフィルター材料を吐出するための駆動素子が駆動されて高温である液滴吐出ヘッド5に、液滴吐出ヘッド5に冷却温調ガスY2が供給されて液滴吐出ヘッド5の温度が安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲とされる。
ここで、冷却温調ガス供給部12bは、各液滴吐出ヘッド5の温度に基づいて、安定して所望量のカラーフィルター材料が吐出可能な温度範囲となるように、各流量調節弁12fの開度を調節する。これによって、液滴吐出ヘッド5が上記温度範囲となる流量の冷却温調ガスY2が液滴吐出ヘッド5に供給される。
【0052】
なお、基板Pへのカラーフィルター材料の吐出が完了した場合やその他の必要な場合には、制御装置11は、再度、本実施形態の液滴吐出装置IJを待機状態とする。
【0053】
以上のような本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、液滴吐出ヘッド5に供給される温調ガスYの温度が切替可能とされ、液滴吐出ヘッド5の状態に応じた最適な温度の温調ガスYが液滴吐出ヘッド5に供給される。このため、液滴吐出装置IJによれば、液滴吐出ヘッド5の温度を、安定してカラーフィルター材料を吐出可能な温度範囲(最適吐出温度範囲)に調節することが可能となる。
したがって、液滴吐出装置IJによれば、液滴吐出ヘッド5から吐出されるカラーフィルター材料の吐出量を安定化させて、カラーフィルターの製品品質の低下を防止することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、液滴吐出ヘッド5を複数備え、各液滴吐出ヘッド5に対して温調ガスYを供給可能とされている。
このような本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、液滴吐出ヘッド5ごとに温調ガスYが供給されるため、各液滴吐出ヘッド5の温度を最適に制御することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、待機状態である場合に液滴吐出ヘッド5の温度よりも高い温度の温調ガスY(加熱温調ガスY1)を液滴吐出ヘッド5に供給し、吐出状態である場合に液滴吐出ヘッド5の温度よりも低い温度の温調ガスY(冷却温調ガスY2)を液滴吐出ヘッド5に供給する。
このような本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、待機状態の液滴吐出ヘッド5に対して高い温度の温調ガスYが供給されることによって液滴吐出ヘッド5が最適吐出温度範囲に調節され、吐出状態の液滴吐出ヘッド5に対して低い温度の温調ガスが供給されることによって液滴吐出ヘッド5が最適吐出温度範囲に調節される。
このため、待機状態及び吐出状態のいずれの状態であっても液滴吐出ヘッド5を最適吐出温度範囲に調節することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、液滴吐出ヘッド5に対して供給する温調ガスYの流量を調節可能とされている。
このような本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、液滴吐出ヘッド5に対して供給される温調ガスYの流量を調節することによって、液滴吐出ヘッド5の温度をより細かく制御することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の液滴吐出装置IJにおいては、既設の発熱部品である制御装置11の電気回路からの熱を用いて温調ガスYを加熱するという構成を採用する。
このような本実施形態の液滴吐出装置IJによれば、温調ガスYが既設の発熱部品からの熱を利用して加熱される。このため、温調ガスを加熱するための装置を別途設置する必要がなく、また従来は放熱されていた熱が有効利用されるために環境に適したものとなる。
【0058】
そして、本実施形態の液滴吐出装置IJを用いてカラーフィルターを製造することによって、均一な膜厚のカラーフィルターが形成され、優れた品質のカラーフィルターを製造することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、待機状態の際に液滴吐出ヘッド5に加熱温調ガスY1を供給し、吐出状態の際に液滴吐出ヘッド5に冷却温調ガスY2を供給する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、待機状態と吐出状態とで異なる温度の加熱温調ガスを液滴吐出ヘッド5に供給しても良い。また、待機状態と吐出状態とで異なる温度の冷却温調ガスを液滴吐出ヘッド5に供給しても良い。
つまり、待機状態と吐出状態とで温度が異なる液滴吐出ヘッドに対して、液滴吐出ヘッドが最適吐出温度になるように温調ガスの温度を切り替えれば良い。
このような場合には、上述の加熱温調ガス供給部12a及び冷却温調ガス供給部12bのいずれか一方を削除することも可能である。
【0061】
また、上記実施形態においては、各液滴吐出ヘッド5に対して、温調ガスYを供給可能な構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の液滴吐出ヘッド5に対して纏めて温調ガスYを供給する構成を採用することも可能である。
【0062】
また、上記実施形態においては、流量調節弁12d,12fによって液滴吐出ヘッド5に供給される温調ガスYの流量を調節可能な構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流量調節を行わない構成を採用することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態においては、カラーフィルター材料を機能液として吐出可能な液滴吐出装置IJと、当該液滴吐出装置IJを用いたカラーフィルターの製造方法について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の機能液を吐出する液滴吐出装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
IJ……液滴吐出装置、N……ノズル、Y……温調ガス、Y1……加熱温調ガス、Y2……冷却温調ガス、5……液滴吐出ヘッド、12……温調ガス供給装置(温調ガス供給手段)、12b,12f……流量調節弁(流量調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置であって、
前記機能液の吐出を停止した待機状態である場合と前記機能液を吐出可能な吐出状態である場合とにおいて前記液滴吐出ヘッドに供給する温調ガスの温度を切替可能な温調ガス供給手段を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記液滴吐出ヘッドを複数備え、前記温調ガス供給手段は、各液滴吐出ヘッドに対して前記温調ガスを供給可能とされていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記温調ガス供給手段は、前記待機状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも高い温度の温調ガスを前記液滴吐出ヘッドに供給し、前記吐出状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも低い温度の温調ガスを前記液滴吐出ヘッドに供給することを特徴とする請求項1または2記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記温調ガス供給手段は、前記液滴吐出ヘッドに対して供給する前記温調ガスの流量を調節する流量調節手段を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記温調ガス供給手段は、既設の発熱部品からの熱を用いて前記温調ガスを加熱することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
ノズルを有する液滴吐出ヘッドから機能液を吐出する液滴吐出方法であって、
前記機能液の吐出を停止した待機状態である場合と前記機能液を吐出可能な吐出状態である場合とにおいて前記液滴吐出ヘッドに供給する温調ガスの温度を切替えることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドが複数である場合に、各液滴吐出ヘッドに対して温調ガスを供給することを特徴とする請求項6記載の液滴吐出方法。
【請求項8】
前記待機状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも高い温度の温調ガスを前記液滴吐出ヘッドに供給し、前記吐出状態である場合に液滴吐出ヘッド温度よりも低い温度の温調ガスを前記液滴吐出ヘッドに供給することを特徴とする請求項6または7記載の液滴吐出方法。
【請求項9】
前記液滴吐出ヘッドに対して供給する前記温調ガスの流量を調節することを特徴とする請求項6〜8いずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項10】
既設の発熱部品からの熱を用いて前記温調ガスを加熱することを特徴とする請求項6〜9いずれかに記載の液滴吐出方法。
【請求項11】
請求項1〜5いずれかに記載の液滴吐出装置、あるいは請求項6〜10いずれかに記載の液滴吐出方法を用いて、基材上に設けられた所定領域に前記機能液を配置してカラーフィルターを形成することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−240505(P2010−240505A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88683(P2009−88683)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】