液滴吐出装置および画像形成装置
【課題】単位時間当たりの打滴数を増やすことができる液滴吐出装置および画像記録装置を得る。
【解決手段】インク流路部材12は、複数のノズル16が形成されたノズルプレート26と、インク流路13を構成する隔壁28が複数形成された流路プレート30と、を備えており、ノズルプレート26と流路プレート30が互いに接合され、インク流路13内をインクが流動する。隔壁28はインクプールの延出方向と直交する方向へ延出しており、1つのインク流路13に対して複数のノズル16を対応させるようにしている。また、隔壁28の延出方向の中央部を分断し、分断領域Bを形成する。この分断領域Bにノズル16を形成することで、隔壁28が分断されていない場合と比較して、ノズル配置の自由度を増大させ、ノズル配置の高密度化が得られる。つまり、ノズル16の数が増大することで、単位時間当たりの打滴数が増える。
【解決手段】インク流路部材12は、複数のノズル16が形成されたノズルプレート26と、インク流路13を構成する隔壁28が複数形成された流路プレート30と、を備えており、ノズルプレート26と流路プレート30が互いに接合され、インク流路13内をインクが流動する。隔壁28はインクプールの延出方向と直交する方向へ延出しており、1つのインク流路13に対して複数のノズル16を対応させるようにしている。また、隔壁28の延出方向の中央部を分断し、分断領域Bを形成する。この分断領域Bにノズル16を形成することで、隔壁28が分断されていない場合と比較して、ノズル配置の自由度を増大させ、ノズル配置の高密度化が得られる。つまり、ノズル16の数が増大することで、単位時間当たりの打滴数が増える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、例えば、特許文献1では、複数のノズル開口によって液滴を1つ形成し、これにより、液滴の吐出を安定させるようにしている。また、特許文献2では、1つのノズルに対して複数の吐出口から液滴を吐出させ、記録媒体上で複数の液滴を合体させて、高濃度の画素を形成するようにしている。
【0003】
さらに、特許文献3では、複数のインク流出口を設けたパイプを液室の上下に平行配置し、ノズル付近のインクに加わる圧力を均一化するようにしている。また、特許文献4では、高剛性の材料により共振周波数の高いヘッドを用いて、複数ノズルの同時吐出における位相差に伴う液滴分離不均一を抑制している。
【特許文献1】特開2002−248774号公報
【特許文献2】特開平7−32596号公報
【特許文献3】特開昭55−113574号公報
【特許文献4】特開昭54−55436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる液滴吐出装置および画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、液滴吐出装置において、液体が供給される液体流路が設けられた液体流路部材と、前記液体流路部材毎に設けられ、前記液体流路内の液体を吐出する複数のノズルと、前記液体流路部材の両端部を保持する保持部材と、少なくとも一方の前記保持部材を駆動し、前記液体流路部材を液滴吐出方向へ凹から凸となるように変形させ、液体に慣性力を付与し、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動手段と、を有している。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記複数のノズルが、前記保持部材に沿って形成されている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの形成領域を除いて、前記液体流路を分割する隔壁がノズルの列と交差して設けられている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの列が、前記液体流路部材の中央に設けられている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの形状が、多角形状である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの列が、複数列形成されている。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液滴吐出装置において、前記液体流路部材の前記保持部材側に位置するノズルの孔径が、液体流路部材の中央に位置するノズルの孔径よりも大きく形成された。
【0012】
請求項8に記載の発明は、画像形成装置において、記録媒体に液滴を吐出する請求項1〜7の何れか1項に記載の液滴吐出装置と、前記液滴吐出装置の液滴の吐出領域へ前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、1つの液体流路に対して複数のノズルを設けているため、1つの液体流路に対して1つのノズルしか設けられていない場合と比較して、ノズル配置の高密度化を図ることができ、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、各ノズルから吐出する液滴に作用する慣性力を略同じにすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ノズルの形成領域には隔壁が存在しないため、ノズルの形成領域に隔壁が存在する場合と比較して、ノズル配置の自由度が増大し、ノズル配置の高密度化を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、各ノズルにおいて、液体流路の長さが同じであるためレフィル挙動が均一化される。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ノズル形状を円形にした場合と比較して、複数のノズルを高密度に配列することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、ノズルの列が1列の場合と比較して、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、液滴の吐出力のばらつきを低減することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、搬送手段で搬送された記録媒体上に液滴を吐出して画像を形成(膜形成も含む)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について概略説明する。
(インクジェット記録装置)
図1には、本実施の形態に係る液滴吐出装置としてのインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置が示されている。図1に示すように、インクジェット記録装置50はヘッド支持部材54を備えており、インクジェット記録ヘッド10を保持可能としている(後述する)。
【0022】
ヘッド支持部材54は、インクジェット記録ヘッド10によるインク吐出動作を妨げない構造(後述するインク流路部材12及び梁部材14が干渉しない構造)とされており、ヘッド支持部材54の下方には、記録媒体Pを搬送するテーブル(搬送手段)52が設けられている。
【0023】
このテーブル52は同一平面内でXおよびY方向へ移動可能としており、例えば、記録媒体Pに画像を形成する際、記録媒体Pをテーブル52に載せ、インクジェット記録ヘッド10からインクを吐出させると共に、テーブル52をXおよびY方向へ移動させる。なお、インク流路部材12の大きさによっては、テーブル52の少なくともY方向への移動を不要とする場合もある。
【0024】
ここで、インクジェット記録ヘッド10について説明する。
(インクジェット記録ヘッド)
図1及び図2(a)、(b)に示すように(説明の都合上、図1と図2とでは、インクジェット記録ヘッド10の上下が逆になっている)、インクジェット記録ヘッド10は、内部にインク流路13を備え中央部にノズル16を備えたインク流路部材12(後述する)と、インク流路部材12を支持する梁部材14とが接合され、両端を保持部材18が支持する構造となっている。保持部材18には、インク流路13と繋がるインクプール24が設けられており、インクプール24から供給されたインクがインク流路13を通ってノズル16へ達する。
【0025】
ところで、ヘッド支持部材54には回転エンコーダ(駆動手段)20が回転可能に支持されており、回転エンコーダ20に設けられたアーム22に保持部材18が固定されている。インク流路部材12及び梁部材14は弾性変形可能な材質で形成されており、回転エンコーダ20の回転によって、アーム22及び保持部材18を介して、インク流路部材12がインク吐出方向(図2(A)の矢印方向)およびインク吐出方向の逆方向(以下、単に「逆方向」という)へ撓み変形可能となっている。
【0026】
なお、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ撓み変形した場合とは、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ凸のことをいい、インク流路部材12及び梁部材14が逆方向へ撓み変形した場合とは、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ凹のことをいう。
【0027】
また、保持部材18は回転エンコーダ20の回転中心からアーム22の長さ分(ここでは、2.5mm)だけオフセットされた位置に配置されている。そして、回転エンコーダ20の回転によって、インク流路部材12及び梁部材14には、曲げ応力以外に保持部材18からの押圧力(圧縮力)が作用する。
【0028】
そして、インク流路部材12をインク吐出方向及び逆方向へ撓み変形させることで、インク流路13内のインクには慣性力が付与され、インク流路部材12が逆方向からインク吐出方向へ撓み変形したとき、ノズル16からインク滴が吐出する。
【0029】
次に、インク流路部材12の動作について説明する。
【0030】
図3(a)に示すように、回転エンコーダ20の角度を0度とした状態で、インク流路部材12(及び梁部材14)には予めインク吐出方向(矢印方向)への撓みを持たせるようにしている。この状態から、図3(b)に示すように、回転エンコーダ20を正転方向(矢印A方向)へ回転させる。
【0031】
例えば、回転エンコーダ20を0度〜プラス20度回転させると、図3(b)〜図3(d)に示すように、インク流路部材12はインク吐出方向へ撓み続け、撓み量が最大となる図3(d)に至るまでインク流路部材12はインク吐出方向へ凸であり続ける。
【0032】
すなわち、図3(a)から図3(d)まで変位するまでの間、インク流路部材12内部のインクには吐出方向への十分な加速度が加わらないため、インク滴がノズル16から吐出されることはない(拡大図(e)参照)。
【0033】
一方、図4(a)に示すように、インク流路部材12に予めインク吐出方向(矢印方向)への撓みを持たせた状態から、図4(b)に示すように、回転エンコーダ20を逆転方向(矢印B方向)へ、例えばマイナス5度回転させると、インク流路部材12はインク吐出方向に対して凸から凹へと撓み方向が変化する。
【0034】
この状態で再び回転エンコーダ20を正転方向(矢印A方向)へ、例えばプラス20度回転させると、インク流路部材12には圧縮力及び曲げ応力が作用し、図4(c)に示すように、インク流路部材12の回転エンコーダ20側にはインク吐出方向(矢印方向)へ変形が生じる(いわゆる変曲点P)。
【0035】
この変曲点Pが、図4(c)及び図4(d)に示すように、回転エンコーダ20側からインク流路部材12の中央部へ向かって移動する。変曲点Pがインク流路部材12の中央部へ到達すると、インク流路部材12は急峻にインク吐出方向(矢印方向)へ変形する(いわゆる座屈反転)。
【0036】
インク流路部材12の中央部にはノズル16が設けられているため、ノズル16まで達しているインクはこの座屈反転によるインク流路部材12のインク吐出方向への変形に伴い大きな慣性力が付与され、ノズル16からインク滴2として吐出される。
【0037】
この座屈反転によるインク流路部材12の変形の速度は、圧電素子などによる通常のアクチュエータによる変位と比較して非常に大きくなり、吐出できるインクの粘度の範囲が広くなる。
【0038】
ここで、図4(c)から図4(d)間のインク流路部材12(梁部材14の中央部)の変位とインク滴2の吐出の関係を図5に示す。
【0039】
図5にはインク流路部材12が座屈反転を起こす直前からインク滴を吐出した直後までのインク流路部材12及び梁部材14の、ノズル16近傍の移動距離の時間による変化が示されている。
【0040】
インク流路部材12及び梁部材14が座屈反転を起こす直前(a’)はインク吐出方向に対して略静止状態なのでノズル16内のインクの液面に変動はない(a)が、インク流路部材12及び梁部材14の座屈反転が起こり始めると(b)、吐出方向へ向けて急激に移動が始まるので、インクはその慣性力により反対方向へ押圧される形となり、ノズル16内のインク面は内側へ凹となる。
【0041】
このままインク流路部材12及び梁部材14の座屈反転による変形が続き、やがてインク流路部材12及び梁部材14の変形が最大量となる手前で吐出方向への変位速度が落ち始める(c)が、インク流路部材12内のインクは慣性力により等速度で吐出方向に進もうとするので、両者の速度差によりノズル16からインク滴2が突出し始める。
【0042】
インク流路部材12及び梁部材14の変形が最大量となれば吐出方向への変位は停止するので(d’)、インク滴2のみがノズル16から突出し(d)、そのまま慣性に従ってインク滴2は吐出方向へ打ち出される(e)。
【0043】
インク流路部材12及び梁部材14の座屈反転による(a)〜(e)までの変位は極めて短い時間のあいだに起こるので、インクの粘性が高い場合においても極めて良好な吐出性能が得られる。また、ここでは、回転エンコーダ20を両方の保持部材18に設けたが、片方の保持部材18のみに回転エンコーダ20を設けてもよい。
【0044】
ここで、使用されるインクは、記録媒体に着弾した際のインク滲み防止や、光学的な色濃度アップ、含水量低減による媒体の膨潤抑制/短時間乾燥、あるいは、そうした高品質インクをトータル設計するに当たり自由度が大きくとれる等の理由から、インク粘度の極めて高い、具体的には粘度10cpsを大きく上回るような(例えば50〜100cps)高粘度インクであり、高粘度インクを使用することで、記録媒体Pに着弾した際のインク滴2の滲みは抑制され、高品質な記録が得られる。
【0045】
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド10の要旨について説明する。
【0046】
ところで、インク流路部材12は、図6に示すように、複数のノズル16が形成されたノズルプレート26と、インク流路13を分割する隔壁28が複数形成された流路プレート30と、を備えており、ノズルプレート26と流路プレート30が互いに接合され、インク流路13内をインクが流動する。
【0047】
隔壁28はインクプール24(図2(b)参照)の延出方向と直交する方向へ延出しており、1つのインク流路13に対して複数のノズル16を対応させるようにしている。これにより、1つのインク流路13に対して1つのノズル16しか設けられていない場合と比較して、隔壁28の数を減らすことができ、その分、ノズル配置の高密度化が図られる。
【0048】
さらに、この隔壁28の延出方向の中央部を分断し、分断領域Bを形成する。この分断領域Bでは、各インク流路13が互いに繋がった状態となっている。つまり、インク流路部材12(ノズルプレート26)の中央部には複数のノズル16が形成されているが、このノズル16の形成領域Aに隔壁28を設けないようにする。なお、流路プレート30のインクプール24の延出方向に沿った両端部では、隔壁28は分断されない。
【0049】
ここでは、分断領域Bに対向してノズル16が一列に並んで形成されているが、このノズル16は隔壁28のピッチに関係なく、所定の間隔で連続して形成される。このように、ノズル16の形成領域Aに隔壁28の分断領域Bを対応させることで、隔壁28が分断されていない場合と比較して、ノズル配置の自由度を増大させ、ノズル配置の高密度化が得られる。つまり、ノズル16の数が増大するため、単位時間当たりの打滴数が増える。特に、インクジェット記録ヘッド10によって記録媒体上に膜を形成する場合などは特に効果的である。
【0050】
また、液滴吐出後、ノズル16内に短時間でインクを再度引きこんでメニスカスを初期状態に復帰させること(いわゆるリフィル挙動)が必要であるが、隔壁28の分断領域Bに至るまでは各インク流路13毎にインクが流動しているため、各ノズル16において、インクの流路長が略同じであり、リフィル挙動が均一化される。
【0051】
そして、ノズル16の形成領域Aを隔壁28の分断領域B、つまり、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に形成することで、各ノズル16間ではインクの流速の差は分断領域Bを有さない場合と比べ小さくなる。このため、インクの流速差によって生じるインク滴の吐出状態の違いは小さくなる。
【0052】
ここで、ノズルプレート26には、25μm厚のポリイミドフィルムを用いており、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に沿って、レーザ加工によってφ30μmのノズル16を複数穿孔加工している。
【0053】
また、流路プレート30には、50μm厚の樹脂フィルムを用いており、フォトリソ法によってインク流路13をパタニングし、そして、エポキシ系接着剤を用いて、流路プレート30にノズルプレート26を接合させ、その後、流路プレート30に20μm厚のSUS製の梁部材14を接合している。
【0054】
なお、ここではノズル16の加工にレーザ加工を用いたが、レーザ加工に限らず、エッチング加工(高精度)、プレス加工(高効率)、ブラスト加工によってノズル16を形成してもよい。
【0055】
また、ここでは、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に沿って、ノズル16を1列設けたが、図7に示すように、複数列(ここでは3列)設けても良い。これにより、ノズル16が1列の場合と比較して、単位時間当たりの打滴数が増える。なお、この場合、ノズル16の形成領域Aに対応して隔壁28の分断領域Bも大きくなる。
【0056】
ここで、前述したように、インク流路部材12の座屈反転は、インク流路部材12の中央部で大きく生じる。つまり、インクに作用する慣性力はインク流路部材12の中央部が一番大きくなる。このため、ノズル16を複数列設けた場合、インクの粘度やその他の条件によっては、図8に示すように、中央列のノズル16Aの孔径をその外側列のノズル16Bの孔径より小さくしてもよい。
【0057】
また、これ以外にも、インクの流動方向に合わせて、ノズル16の内径寸法を変えるようにしても良い。液滴吐出後、ノズル内に短時間でインクを再度引きこんでメニスカスを初期状態に復帰させること(いわゆるリフィル挙動)が必要なため、インクの流動方向の手前ですぐにインクが充填される場合、インク流路13の後方に多くのインクを送るようにする必要がある。このため、図9に示すように、インク流路13内のインクの流動方向(矢印方向)に沿って、ノズル16の孔径を大きくする。
【0058】
また、図10に示すように、インクの流動方向(矢印方向)の手前側のノズルでインクがすぐに充填されない場合、インク流路13の後方側のノズルのインク充填とのタイムラグを小さくするため、図10に示すように、インク流路13内のインクの流動方向に沿って、ノズル16の孔径を小さくする。
【0059】
また、ここではノズル16の形状を円形としたが、ノズル形状は多角形状であっても良い。例えば、図11(a)に示すように、三角形状のノズル34を形成し、三角形の底辺を互い違いに配置して各ノズル34の間隔を狭くするようにしても良い。これにより、円形のノズル16によるノズル配置よりもさらに高密度化が図られる。
【0060】
なお、これ以外にも、図11(b)に示すように、四角形状のノズル36を形成して各ノズル36の間隔を狭くするようにしても良い。さらに、図11(c)に示すように、六角形状のノズル38を形成し、各ノズル34が互い違いに配置されるようにして複数列のノズル配置となるようにしても良い。
【0061】
一方、回転エンコーダ20と保持部材18は、回転エンコーダ20の回転中心から2.5mmオフセットさせた状態で接合し、インクを吐出させる時(インク流路部材1を座屈反転させる時)は回転エンコーダ20をマイナス5〜プラス20度に回転させる。この時、梁部材14及びインク流路部材12の中央部は、インク吐出方向に約10m/sの速度で、1mm程移動する。グリセリンの混合比を増加させて50cps粘度に調整したインクは約25μm径、100cps粘度のインクは約20μm径のインク滴2としてノズル16から吐出する。
【0062】
吐出実験では吐出周期は3Hzで駆動し、ストロボ法によってインク滴2を観察した。なお、回転エンコーダ20をマイナス5〜プラス30度回転に回転角度を増やすと、吐出するインク量は増大し、50cps粘度のインクは約30μm径、100cps粘度のインクは約25μm径のインク滴2として吐出した。
【0063】
梁部材14及びインク流路部材12に加える圧縮と回転の量、すなわち回転エンコーダ20の回転角度によって、インク滴2を吐出させる/吐出させない(座屈反転が起こるか/起こらないか)を制御することができるため、梁部材14及びインク流路部材12に加える圧縮と回転の量によって、インクに加える慣性力の大きさを可変でき、吐出するインク滴2の液量が変えられる。
【0064】
また、上記実施の形態では、ノズル16とインク流路13は、それぞれ別々の樹脂フィルムに形成して接着接合したが、これに限定されない。例えば、ノズル、インク供給路を一体に形成しても良い。或いは、さらに梁部材14が一体の構造であっても良い。或いは、その他の形態であっても良い。
【0065】
また、上記実施の形態では、インクジェット記録ヘッド10を固定し、記録媒体Pを移動(搬送)させながら記録を行うが、例えば、記録媒体Pを固定し、インクジェット記録ヘッド10をキャリッジに搭載して搬送しながら記録を行っても良いし、双方を搬送しながら記録を行ってもよい。あるいは記録媒体Pをドラムに巻き付けて回転させる構造としてもよい。
【0066】
また、本明細書におけるインクジェット記録とは、記録紙上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、液状の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成したりするなど、工業用的に用いられる液滴噴射装置全般に対して本発明を利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す、(A)断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。
【図5】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの梁部材の中央部の変位とインク滴の吐出の関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材を示す分解斜視図である。
【図7】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第1変形例を示す分解斜視図である。
【図8】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第2変形例を示す分解斜視図である。
【図9】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第3変形例を示す分解斜視図である。
【図10】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第4変形例を示す分解斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル形状を示す変形例である。
【符号の説明】
【0068】
10 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出装置)
12 インク流路部材(液体流路部材)
13 インク流路(液体流路)
16 ノズル
18 保持部材
20 回転エンコーダ(駆動手段)
26 ノズルプレート(液体流路部材)
28 隔壁
30 流路プレート(液体流路部材)
34 ノズル
36 ノズル
38 ノズル
50 インクジェット記録装置(画像形成装置)
52 テーブル(搬送手段)
A ノズル形成領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、例えば、特許文献1では、複数のノズル開口によって液滴を1つ形成し、これにより、液滴の吐出を安定させるようにしている。また、特許文献2では、1つのノズルに対して複数の吐出口から液滴を吐出させ、記録媒体上で複数の液滴を合体させて、高濃度の画素を形成するようにしている。
【0003】
さらに、特許文献3では、複数のインク流出口を設けたパイプを液室の上下に平行配置し、ノズル付近のインクに加わる圧力を均一化するようにしている。また、特許文献4では、高剛性の材料により共振周波数の高いヘッドを用いて、複数ノズルの同時吐出における位相差に伴う液滴分離不均一を抑制している。
【特許文献1】特開2002−248774号公報
【特許文献2】特開平7−32596号公報
【特許文献3】特開昭55−113574号公報
【特許文献4】特開昭54−55436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる液滴吐出装置および画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、液滴吐出装置において、液体が供給される液体流路が設けられた液体流路部材と、前記液体流路部材毎に設けられ、前記液体流路内の液体を吐出する複数のノズルと、前記液体流路部材の両端部を保持する保持部材と、少なくとも一方の前記保持部材を駆動し、前記液体流路部材を液滴吐出方向へ凹から凸となるように変形させ、液体に慣性力を付与し、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動手段と、を有している。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記複数のノズルが、前記保持部材に沿って形成されている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの形成領域を除いて、前記液体流路を分割する隔壁がノズルの列と交差して設けられている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの列が、前記液体流路部材の中央に設けられている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの形状が、多角形状である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出装置において、前記ノズルの列が、複数列形成されている。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液滴吐出装置において、前記液体流路部材の前記保持部材側に位置するノズルの孔径が、液体流路部材の中央に位置するノズルの孔径よりも大きく形成された。
【0012】
請求項8に記載の発明は、画像形成装置において、記録媒体に液滴を吐出する請求項1〜7の何れか1項に記載の液滴吐出装置と、前記液滴吐出装置の液滴の吐出領域へ前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、1つの液体流路に対して複数のノズルを設けているため、1つの液体流路に対して1つのノズルしか設けられていない場合と比較して、ノズル配置の高密度化を図ることができ、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、各ノズルから吐出する液滴に作用する慣性力を略同じにすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ノズルの形成領域には隔壁が存在しないため、ノズルの形成領域に隔壁が存在する場合と比較して、ノズル配置の自由度が増大し、ノズル配置の高密度化を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、各ノズルにおいて、液体流路の長さが同じであるためレフィル挙動が均一化される。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ノズル形状を円形にした場合と比較して、複数のノズルを高密度に配列することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、ノズルの列が1列の場合と比較して、単位時間当たりの打滴数を増やすことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、液滴の吐出力のばらつきを低減することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、搬送手段で搬送された記録媒体上に液滴を吐出して画像を形成(膜形成も含む)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について概略説明する。
(インクジェット記録装置)
図1には、本実施の形態に係る液滴吐出装置としてのインクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置が示されている。図1に示すように、インクジェット記録装置50はヘッド支持部材54を備えており、インクジェット記録ヘッド10を保持可能としている(後述する)。
【0022】
ヘッド支持部材54は、インクジェット記録ヘッド10によるインク吐出動作を妨げない構造(後述するインク流路部材12及び梁部材14が干渉しない構造)とされており、ヘッド支持部材54の下方には、記録媒体Pを搬送するテーブル(搬送手段)52が設けられている。
【0023】
このテーブル52は同一平面内でXおよびY方向へ移動可能としており、例えば、記録媒体Pに画像を形成する際、記録媒体Pをテーブル52に載せ、インクジェット記録ヘッド10からインクを吐出させると共に、テーブル52をXおよびY方向へ移動させる。なお、インク流路部材12の大きさによっては、テーブル52の少なくともY方向への移動を不要とする場合もある。
【0024】
ここで、インクジェット記録ヘッド10について説明する。
(インクジェット記録ヘッド)
図1及び図2(a)、(b)に示すように(説明の都合上、図1と図2とでは、インクジェット記録ヘッド10の上下が逆になっている)、インクジェット記録ヘッド10は、内部にインク流路13を備え中央部にノズル16を備えたインク流路部材12(後述する)と、インク流路部材12を支持する梁部材14とが接合され、両端を保持部材18が支持する構造となっている。保持部材18には、インク流路13と繋がるインクプール24が設けられており、インクプール24から供給されたインクがインク流路13を通ってノズル16へ達する。
【0025】
ところで、ヘッド支持部材54には回転エンコーダ(駆動手段)20が回転可能に支持されており、回転エンコーダ20に設けられたアーム22に保持部材18が固定されている。インク流路部材12及び梁部材14は弾性変形可能な材質で形成されており、回転エンコーダ20の回転によって、アーム22及び保持部材18を介して、インク流路部材12がインク吐出方向(図2(A)の矢印方向)およびインク吐出方向の逆方向(以下、単に「逆方向」という)へ撓み変形可能となっている。
【0026】
なお、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ撓み変形した場合とは、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ凸のことをいい、インク流路部材12及び梁部材14が逆方向へ撓み変形した場合とは、インク流路部材12及び梁部材14がインク吐出方向へ凹のことをいう。
【0027】
また、保持部材18は回転エンコーダ20の回転中心からアーム22の長さ分(ここでは、2.5mm)だけオフセットされた位置に配置されている。そして、回転エンコーダ20の回転によって、インク流路部材12及び梁部材14には、曲げ応力以外に保持部材18からの押圧力(圧縮力)が作用する。
【0028】
そして、インク流路部材12をインク吐出方向及び逆方向へ撓み変形させることで、インク流路13内のインクには慣性力が付与され、インク流路部材12が逆方向からインク吐出方向へ撓み変形したとき、ノズル16からインク滴が吐出する。
【0029】
次に、インク流路部材12の動作について説明する。
【0030】
図3(a)に示すように、回転エンコーダ20の角度を0度とした状態で、インク流路部材12(及び梁部材14)には予めインク吐出方向(矢印方向)への撓みを持たせるようにしている。この状態から、図3(b)に示すように、回転エンコーダ20を正転方向(矢印A方向)へ回転させる。
【0031】
例えば、回転エンコーダ20を0度〜プラス20度回転させると、図3(b)〜図3(d)に示すように、インク流路部材12はインク吐出方向へ撓み続け、撓み量が最大となる図3(d)に至るまでインク流路部材12はインク吐出方向へ凸であり続ける。
【0032】
すなわち、図3(a)から図3(d)まで変位するまでの間、インク流路部材12内部のインクには吐出方向への十分な加速度が加わらないため、インク滴がノズル16から吐出されることはない(拡大図(e)参照)。
【0033】
一方、図4(a)に示すように、インク流路部材12に予めインク吐出方向(矢印方向)への撓みを持たせた状態から、図4(b)に示すように、回転エンコーダ20を逆転方向(矢印B方向)へ、例えばマイナス5度回転させると、インク流路部材12はインク吐出方向に対して凸から凹へと撓み方向が変化する。
【0034】
この状態で再び回転エンコーダ20を正転方向(矢印A方向)へ、例えばプラス20度回転させると、インク流路部材12には圧縮力及び曲げ応力が作用し、図4(c)に示すように、インク流路部材12の回転エンコーダ20側にはインク吐出方向(矢印方向)へ変形が生じる(いわゆる変曲点P)。
【0035】
この変曲点Pが、図4(c)及び図4(d)に示すように、回転エンコーダ20側からインク流路部材12の中央部へ向かって移動する。変曲点Pがインク流路部材12の中央部へ到達すると、インク流路部材12は急峻にインク吐出方向(矢印方向)へ変形する(いわゆる座屈反転)。
【0036】
インク流路部材12の中央部にはノズル16が設けられているため、ノズル16まで達しているインクはこの座屈反転によるインク流路部材12のインク吐出方向への変形に伴い大きな慣性力が付与され、ノズル16からインク滴2として吐出される。
【0037】
この座屈反転によるインク流路部材12の変形の速度は、圧電素子などによる通常のアクチュエータによる変位と比較して非常に大きくなり、吐出できるインクの粘度の範囲が広くなる。
【0038】
ここで、図4(c)から図4(d)間のインク流路部材12(梁部材14の中央部)の変位とインク滴2の吐出の関係を図5に示す。
【0039】
図5にはインク流路部材12が座屈反転を起こす直前からインク滴を吐出した直後までのインク流路部材12及び梁部材14の、ノズル16近傍の移動距離の時間による変化が示されている。
【0040】
インク流路部材12及び梁部材14が座屈反転を起こす直前(a’)はインク吐出方向に対して略静止状態なのでノズル16内のインクの液面に変動はない(a)が、インク流路部材12及び梁部材14の座屈反転が起こり始めると(b)、吐出方向へ向けて急激に移動が始まるので、インクはその慣性力により反対方向へ押圧される形となり、ノズル16内のインク面は内側へ凹となる。
【0041】
このままインク流路部材12及び梁部材14の座屈反転による変形が続き、やがてインク流路部材12及び梁部材14の変形が最大量となる手前で吐出方向への変位速度が落ち始める(c)が、インク流路部材12内のインクは慣性力により等速度で吐出方向に進もうとするので、両者の速度差によりノズル16からインク滴2が突出し始める。
【0042】
インク流路部材12及び梁部材14の変形が最大量となれば吐出方向への変位は停止するので(d’)、インク滴2のみがノズル16から突出し(d)、そのまま慣性に従ってインク滴2は吐出方向へ打ち出される(e)。
【0043】
インク流路部材12及び梁部材14の座屈反転による(a)〜(e)までの変位は極めて短い時間のあいだに起こるので、インクの粘性が高い場合においても極めて良好な吐出性能が得られる。また、ここでは、回転エンコーダ20を両方の保持部材18に設けたが、片方の保持部材18のみに回転エンコーダ20を設けてもよい。
【0044】
ここで、使用されるインクは、記録媒体に着弾した際のインク滲み防止や、光学的な色濃度アップ、含水量低減による媒体の膨潤抑制/短時間乾燥、あるいは、そうした高品質インクをトータル設計するに当たり自由度が大きくとれる等の理由から、インク粘度の極めて高い、具体的には粘度10cpsを大きく上回るような(例えば50〜100cps)高粘度インクであり、高粘度インクを使用することで、記録媒体Pに着弾した際のインク滴2の滲みは抑制され、高品質な記録が得られる。
【0045】
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド10の要旨について説明する。
【0046】
ところで、インク流路部材12は、図6に示すように、複数のノズル16が形成されたノズルプレート26と、インク流路13を分割する隔壁28が複数形成された流路プレート30と、を備えており、ノズルプレート26と流路プレート30が互いに接合され、インク流路13内をインクが流動する。
【0047】
隔壁28はインクプール24(図2(b)参照)の延出方向と直交する方向へ延出しており、1つのインク流路13に対して複数のノズル16を対応させるようにしている。これにより、1つのインク流路13に対して1つのノズル16しか設けられていない場合と比較して、隔壁28の数を減らすことができ、その分、ノズル配置の高密度化が図られる。
【0048】
さらに、この隔壁28の延出方向の中央部を分断し、分断領域Bを形成する。この分断領域Bでは、各インク流路13が互いに繋がった状態となっている。つまり、インク流路部材12(ノズルプレート26)の中央部には複数のノズル16が形成されているが、このノズル16の形成領域Aに隔壁28を設けないようにする。なお、流路プレート30のインクプール24の延出方向に沿った両端部では、隔壁28は分断されない。
【0049】
ここでは、分断領域Bに対向してノズル16が一列に並んで形成されているが、このノズル16は隔壁28のピッチに関係なく、所定の間隔で連続して形成される。このように、ノズル16の形成領域Aに隔壁28の分断領域Bを対応させることで、隔壁28が分断されていない場合と比較して、ノズル配置の自由度を増大させ、ノズル配置の高密度化が得られる。つまり、ノズル16の数が増大するため、単位時間当たりの打滴数が増える。特に、インクジェット記録ヘッド10によって記録媒体上に膜を形成する場合などは特に効果的である。
【0050】
また、液滴吐出後、ノズル16内に短時間でインクを再度引きこんでメニスカスを初期状態に復帰させること(いわゆるリフィル挙動)が必要であるが、隔壁28の分断領域Bに至るまでは各インク流路13毎にインクが流動しているため、各ノズル16において、インクの流路長が略同じであり、リフィル挙動が均一化される。
【0051】
そして、ノズル16の形成領域Aを隔壁28の分断領域B、つまり、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に形成することで、各ノズル16間ではインクの流速の差は分断領域Bを有さない場合と比べ小さくなる。このため、インクの流速差によって生じるインク滴の吐出状態の違いは小さくなる。
【0052】
ここで、ノズルプレート26には、25μm厚のポリイミドフィルムを用いており、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に沿って、レーザ加工によってφ30μmのノズル16を複数穿孔加工している。
【0053】
また、流路プレート30には、50μm厚の樹脂フィルムを用いており、フォトリソ法によってインク流路13をパタニングし、そして、エポキシ系接着剤を用いて、流路プレート30にノズルプレート26を接合させ、その後、流路プレート30に20μm厚のSUS製の梁部材14を接合している。
【0054】
なお、ここではノズル16の加工にレーザ加工を用いたが、レーザ加工に限らず、エッチング加工(高精度)、プレス加工(高効率)、ブラスト加工によってノズル16を形成してもよい。
【0055】
また、ここでは、インクの流動方向に対して直交(交差)する方向に沿って、ノズル16を1列設けたが、図7に示すように、複数列(ここでは3列)設けても良い。これにより、ノズル16が1列の場合と比較して、単位時間当たりの打滴数が増える。なお、この場合、ノズル16の形成領域Aに対応して隔壁28の分断領域Bも大きくなる。
【0056】
ここで、前述したように、インク流路部材12の座屈反転は、インク流路部材12の中央部で大きく生じる。つまり、インクに作用する慣性力はインク流路部材12の中央部が一番大きくなる。このため、ノズル16を複数列設けた場合、インクの粘度やその他の条件によっては、図8に示すように、中央列のノズル16Aの孔径をその外側列のノズル16Bの孔径より小さくしてもよい。
【0057】
また、これ以外にも、インクの流動方向に合わせて、ノズル16の内径寸法を変えるようにしても良い。液滴吐出後、ノズル内に短時間でインクを再度引きこんでメニスカスを初期状態に復帰させること(いわゆるリフィル挙動)が必要なため、インクの流動方向の手前ですぐにインクが充填される場合、インク流路13の後方に多くのインクを送るようにする必要がある。このため、図9に示すように、インク流路13内のインクの流動方向(矢印方向)に沿って、ノズル16の孔径を大きくする。
【0058】
また、図10に示すように、インクの流動方向(矢印方向)の手前側のノズルでインクがすぐに充填されない場合、インク流路13の後方側のノズルのインク充填とのタイムラグを小さくするため、図10に示すように、インク流路13内のインクの流動方向に沿って、ノズル16の孔径を小さくする。
【0059】
また、ここではノズル16の形状を円形としたが、ノズル形状は多角形状であっても良い。例えば、図11(a)に示すように、三角形状のノズル34を形成し、三角形の底辺を互い違いに配置して各ノズル34の間隔を狭くするようにしても良い。これにより、円形のノズル16によるノズル配置よりもさらに高密度化が図られる。
【0060】
なお、これ以外にも、図11(b)に示すように、四角形状のノズル36を形成して各ノズル36の間隔を狭くするようにしても良い。さらに、図11(c)に示すように、六角形状のノズル38を形成し、各ノズル34が互い違いに配置されるようにして複数列のノズル配置となるようにしても良い。
【0061】
一方、回転エンコーダ20と保持部材18は、回転エンコーダ20の回転中心から2.5mmオフセットさせた状態で接合し、インクを吐出させる時(インク流路部材1を座屈反転させる時)は回転エンコーダ20をマイナス5〜プラス20度に回転させる。この時、梁部材14及びインク流路部材12の中央部は、インク吐出方向に約10m/sの速度で、1mm程移動する。グリセリンの混合比を増加させて50cps粘度に調整したインクは約25μm径、100cps粘度のインクは約20μm径のインク滴2としてノズル16から吐出する。
【0062】
吐出実験では吐出周期は3Hzで駆動し、ストロボ法によってインク滴2を観察した。なお、回転エンコーダ20をマイナス5〜プラス30度回転に回転角度を増やすと、吐出するインク量は増大し、50cps粘度のインクは約30μm径、100cps粘度のインクは約25μm径のインク滴2として吐出した。
【0063】
梁部材14及びインク流路部材12に加える圧縮と回転の量、すなわち回転エンコーダ20の回転角度によって、インク滴2を吐出させる/吐出させない(座屈反転が起こるか/起こらないか)を制御することができるため、梁部材14及びインク流路部材12に加える圧縮と回転の量によって、インクに加える慣性力の大きさを可変でき、吐出するインク滴2の液量が変えられる。
【0064】
また、上記実施の形態では、ノズル16とインク流路13は、それぞれ別々の樹脂フィルムに形成して接着接合したが、これに限定されない。例えば、ノズル、インク供給路を一体に形成しても良い。或いは、さらに梁部材14が一体の構造であっても良い。或いは、その他の形態であっても良い。
【0065】
また、上記実施の形態では、インクジェット記録ヘッド10を固定し、記録媒体Pを移動(搬送)させながら記録を行うが、例えば、記録媒体Pを固定し、インクジェット記録ヘッド10をキャリッジに搭載して搬送しながら記録を行っても良いし、双方を搬送しながら記録を行ってもよい。あるいは記録媒体Pをドラムに巻き付けて回転させる構造としてもよい。
【0066】
また、本明細書におけるインクジェット記録とは、記録紙上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、液状の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成したりするなど、工業用的に用いられる液滴噴射装置全般に対して本発明を利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す、(A)断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの動作を示す図である。
【図5】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの梁部材の中央部の変位とインク滴の吐出の関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材を示す分解斜視図である。
【図7】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第1変形例を示す分解斜視図である。
【図8】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第2変形例を示す分解斜視図である。
【図9】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第3変形例を示す分解斜視図である。
【図10】本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのインク流路部材の第4変形例を示す分解斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、本実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル形状を示す変形例である。
【符号の説明】
【0068】
10 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出装置)
12 インク流路部材(液体流路部材)
13 インク流路(液体流路)
16 ノズル
18 保持部材
20 回転エンコーダ(駆動手段)
26 ノズルプレート(液体流路部材)
28 隔壁
30 流路プレート(液体流路部材)
34 ノズル
36 ノズル
38 ノズル
50 インクジェット記録装置(画像形成装置)
52 テーブル(搬送手段)
A ノズル形成領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される液体流路が設けられた液体流路部材と、
前記液体流路部材毎に設けられ、前記液体流路内の液体を吐出する複数のノズルと、
前記液体流路部材の両端部を保持する保持部材と、
少なくとも一方の前記保持部材を駆動し、前記液体流路部材を液滴吐出方向へ凹から凸となるように変形させ、液体に慣性力を付与し、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動手段と、
を有する液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数のノズルが、前記保持部材に沿って形成されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルの形成領域を除いて、前記液体流路を分割する隔壁が前記ノズルの列と交差して設けられている請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記ノズルの列が、前記液体流路部材の中央に設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記ノズルの形状が、多角形状である請求項1〜4の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルの列が、複数列形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液体流路部材の前記保持部材側に位置するノズルの孔径が、液体流路部材の中央に位置するノズルの孔径よりも大きく形成された請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
記録媒体に液滴を吐出する請求項1〜7の何れか1項に記載の液滴吐出装置と、
前記液滴吐出装置の液滴の吐出領域へ前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項1】
液体が供給される液体流路が設けられた液体流路部材と、
前記液体流路部材毎に設けられ、前記液体流路内の液体を吐出する複数のノズルと、
前記液体流路部材の両端部を保持する保持部材と、
少なくとも一方の前記保持部材を駆動し、前記液体流路部材を液滴吐出方向へ凹から凸となるように変形させ、液体に慣性力を付与し、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動手段と、
を有する液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数のノズルが、前記保持部材に沿って形成されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルの形成領域を除いて、前記液体流路を分割する隔壁が前記ノズルの列と交差して設けられている請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記ノズルの列が、前記液体流路部材の中央に設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記ノズルの形状が、多角形状である請求項1〜4の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルの列が、複数列形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液体流路部材の前記保持部材側に位置するノズルの孔径が、液体流路部材の中央に位置するノズルの孔径よりも大きく形成された請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
記録媒体に液滴を吐出する請求項1〜7の何れか1項に記載の液滴吐出装置と、
前記液滴吐出装置の液滴の吐出領域へ前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備えた画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−99636(P2010−99636A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275819(P2008−275819)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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