説明

液滴吐出装置

【課題】描画作業が長時間となってもノズル詰り等の発生を防止し、作業効率を維持しつつ、描画動作を実行させる。
【解決手段】部材に対して紫外線の照射により硬化する機能液を液滴として吐出する吐出ヘッドと、前記部材に付着した前記機能液に対して前記紫外線を照射する紫外線照射部と、前記紫外線の照射光量に応じて設定されるフラッシング条件でフラッシング動作を行わせる制御部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化性インクを吐出する吐出ヘッドと吐出されたインクに対して紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射装置を備えた液滴吐出装置において、インクに対して照射された紫外線の一部が反射光として吐出ヘッド側に照射されてしまうため、吐出ヘッドのノズル面のインクの硬化が促進されてしまう。そこで、これを防止するため、ノズル面に到達する紫外線照射量に応じて、吐出ヘッドのメンテナンス間隔を選択し、選択されたメンテナンス間隔で吐出ヘッドをキャッピングし、さらに吐出ヘッド内のインクを吸引することにより、吐出ヘッドのメンテナンスを実施する液滴吐出装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−297230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の液滴吐出装置では、吐出ヘッドのメンテナンス(キャッピング及びインク吸引)を実施するために、描画動作を長時間停止する必要がある。このため、作業効率が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出装置は、部材に対して紫外線の照射により硬化する機能液を液滴として吐出する吐出ヘッドと、前記部材に付着した前記機能液に対して前記紫外線を照射する紫外線照射部と、前記紫外線の照射光量に応じて設定されるフラッシング条件でフラッシング動作を行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、液滴を吐出させながら、吐出された液滴に対して紫外線を照射して機能液を硬化させる際、照射された紫外線の一部が反射光として吐出ヘッド側に照射されると、機能液が硬化されてしまうが、紫外線の照射光量に応じて設定されるフラッシング条件でフラッシング動作が適時行われる。従って、画像動作を長期間停止することなく吐出ヘッドを回復させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記フラッシング条件は、前記部材と前記吐出ヘッドとの間の相対的な移動距離あたりの前記紫外線の照射光量に応じて設定される、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、移動距離あたりの紫外線の照射光量に応じてフラッシング条件が設定されるので、短期間で吐出ヘッドのメンテナンスを行うことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記制御部では、前記部材と前記吐出ヘッドとの間の相対的な移動距離が所定距離となる毎に、前記フラッシング条件を選択し、選択された前記フラッシング条件でフラッシング動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、所定距離に対応して、フラッシング動作が行われるため、画像動作を長期間停止することなく吐出ヘッドを回復させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記フラッシング条件は、前記吐出ヘッドのノズル孔から前記機能液を吐出する前記フラッシング動作の回数であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、紫外線照射光量に応じて、フラッシング動作の回数の規定に従ってメンテナンスを実行させることにより、容易にノズル詰り等の発生を防止することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記フラッシング条件は、前記紫外線照射光量が多いほど、前記フラッシング動作の回数が多いことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、紫外線照射光量が多い場合には、ノズル面のインクが硬化しやすくなるため、フラッシング動作の回数を多く実行させることにより、ノズル詰り等の不具合の発生を防止することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記フラッシング条件は、前記紫外線照射光量が少ないほど、前記フラッシング動作の回数が少ないことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、紫外線照射光量が少ない場合には、フラッシング動作の回数を少なくする。この場合、フラッシング動作を行わない場合も含まれる。これにより、吐出ヘッドから吐出されるインク量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液滴吐出装置の構成を示す模式図。
【図2】吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】液滴吐出装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図4】フラッシング条件を示す説明図。
【図5】液滴吐出装置の制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、実際の尺度とは異ならせて示している。
【0020】
(液滴吐出装置の構成)
まず、液滴吐出装置の構成について説明する。液滴吐出装置は、部材に対して紫外線の照射により硬化する機能液を液滴として吐出する吐出ヘッドと、部材に付着した機能液に対して紫外線を照射する紫外線照射部と、部材と吐出ヘッドとが相対的に移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じて、所定移動距離毎にフラッシング条件を選択し、選択されたフラッシング条件でフラッシング動作を行わせる制御部を備えたものである。以下、詳細に説明する。
【0021】
図1は、液滴吐出装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、液滴吐出装置1には、直方体形状に形成される基台2が備えられている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0022】
基台2の上面2aには、Y方向に延びる一対の案内レール3a,3bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない走査手段を備えたステージ4が取り付けられている。ステージ4は、基板等の部材7を載置するものである。走査手段は、例えば、直動機構であり、当該直動機構は、例えば案内レール3a,3bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モーターに入力されると、Y軸モーターが正転又は逆転して、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y軸方向に走査する)ようになっている。
【0023】
さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行にステージ位置検出装置5が配置され、ステージ4の位置が計測できるようになっている。
【0024】
そのステージ4の上面には、載置面6が形成され、その載置面6には、図示しない吸引式の部材チャック機構が設けられている。そして、載置面6に部材7を載置すると、部材チャック機構によって、その部材7が載置面6の所定位置に位置決め固定されるようになっている。
【0025】
基台2のX方向両側には、一対の支持台8a,8bが立設され、その一対の支持台8a,8bには、X方向に延びる案内部材9が架設されている。案内部材9は、ステージ4のX方向における幅よりも長く形成され、その一端が支持台8a側に張り出すように配置されている。案内部材9の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク10が配設されている。一方、その案内部材9の下側には、X方向に延びる案内レール11がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0026】
案内レール11に沿って移動可能にキャリッジ12が配置されている。キャリッジ12は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ12の直動機構は、例えば案内レール11に沿ってX軸方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モーターに入力すると、X軸モーターが正転又は逆転して、キャリッジ12が同ステップ数に相当する分だけX方向に沿って往動又は復動する(X軸方向に走査する)。案内部材9とキャリッジ12との間には、キャリッジ位置検出装置13が配置され、キャリッジ12の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ12の下面(ステージ4側の面)には、吐出ヘッド14が設置されている。
【0027】
また、キャリッジ12のX軸方向における両端部のそれぞれに第1紫外線照射部50aと第2紫外線照射部50bが配置されている。第1および第2紫外線照射部50a,50bのそれぞれに複数の紫外線光源が設置されている。そして、第1および第2紫外線照射部50a,50bを駆動させることにより紫外線光源から紫外線が照射される。なお、紫外線光源は、LEDの他、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等適宜適用することができる。
【0028】
基台2の片側の一方(図中X軸方向の逆方向)には、保守用基台15が配置されている。保守用基台15の上面15aには、Y軸方向に延びる一対の案内レール16a,16bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その保守用基台15の上側には、一対の案内レール16a,16bに対応する図示しない直動機構を備えた移動手段を構成する保守ステージ17が取り付けられている。その保守ステージ17の直動機構は、例えばステージ4と同様の直動機構であり、Y軸方向に沿って往動又は、復動するようになっている。
【0029】
保守ステージ17の上には、吐出ヘッド14のメンテナンスを行うヘッドメンテナンス部21が設けられている。ヘッドメンテナンス部21は、フラッシングユニット18とキャッピングユニット19とワイピングユニット20を含む。
【0030】
フラッシングユニット18は、吐出ヘッド14内の流路を洗浄するとき、吐出ヘッド14から吐出する液滴を受ける装置である。吐出ヘッド14内の機能液が硬化した場合や固形物が混入した場合に、吐出ヘッド14から液滴を吐出(フラッシング動作)することにより、機能液の状態を調整したり、固形物等を除去する。フラッシングユニット18は、吐出された液滴を捕集する機能を有している。
【0031】
キャッピングユニット19は、主に、吐出ヘッド14に蓋をするとともに吐出ヘッド14内の機能液を吸引する装置である。吐出ヘッド14から吐出する液滴は、揮発性を有する場合があり、吐出ヘッド14に内在する機能液の溶媒がノズルから揮発すると、機能液の粘度が変わり、ノズルが目詰まりすることがある。キャッピングユニット19は、吐出ヘッド14に蓋をすることで、ノズルが目詰まりすることを防止するようになっている。また、吐出ヘッド14に蓋をした状態で、当該蓋内に負圧をかけ、吐出ヘッド14内の機能液を吸引することにより、吐出ヘッド14内の気泡や異物等を取り除くことができる。
【0032】
ワイピングユニット20は、吐出ヘッド14のノズルが配置されているノズルプレートを拭く装置である。ノズルプレートは、吐出ヘッド14において、部材7と対向する側の面に配置されている部材である。ノズルプレートに液滴が付着しているとき、ノズルプレートに付着している液滴と部材7とが接触して、部材7において、予定外の場所に液滴が付着してしまうことがある。ワイピングユニット20は、ノズルプレートを拭くことにより、予定外の場所に液滴が付着してしまうこと防止することができる。
【0033】
保守用基台15と基台2との間には、重量測定装置22が配置されている。重量測定装置22には、電子天秤が2台設置され、各電子天秤には、受け皿が配置されている。液滴が、吐出ヘッド14から受け皿に吐出され、電子天秤が液滴の重量を測定するようになっている。受け皿は、スポンジ状の吸収体を備え、吐出される液滴が、跳ねて、受け皿の外に出ないようになっている。電子天秤は、吐出ヘッド14が液滴を吐出する前後で、受け皿の重量を測定し、吐出前後の受け皿の重量の差分を測定している。
【0034】
キャリッジ12が、案内レール11に沿って、X軸方向に移動すると、吐出ヘッド14が、ヘッドメンテナンス部21や重量測定装置22や部材7と対向する場所に移動することができるようになっている。
【0035】
(吐出ヘッドの構成)
次に、吐出ヘッドの構成について説明する。図2は、吐出ヘッドの構成を示す断面図である。図2に示すように、吐出ヘッド14は、ノズルプレート30を備え、ノズルプレート30には、ノズル孔31が形成されている。ノズルプレート30の上側であってノズル孔31と相対する位置には、ノズル孔31と連通するキャビティ32が形成されている。そして、吐出ヘッド14のキャビティ32には、収容タンク10に貯留されている機能液33が供給される。
【0036】
キャビティ32の上側には、上下方向(Z方向:縦振動)に振動して、キャビティ32内の容積を拡大縮小する振動板34と、上下方向に伸縮して振動板34を振動させる加圧手段としての圧電素子35が配設されている。圧電素子35が上下方向に伸縮して振動板34を振動し、振動板34がキャビティ32内の容積を拡大縮小してキャビティ32を加圧する。それにより、キャビティ32内の圧力が変動し、キャビティ32内に供給された機能液33は、ノズル孔31を通って吐出されるようになっている。
【0037】
そして、吐出ヘッド14が圧電素子35を制御駆動するための駆動信号を受けると、圧電素子35が伸張して、振動板34がキャビティ32内の容積を縮小する。その結果、吐出ヘッド14のノズル孔31からは、縮小した容積分の機能液33が液滴36として吐出される。なお、本実施形態では、加圧手段として、縦振動型の圧電素子35を用いたが、特に、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子を用いてもよい。また、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。
【0038】
(制御部の構成)
次に、制御部の構成について説明する。図3は、液滴吐出装置の制御部の構成を示すブロックである。図3に示すように、液滴吐出装置1は、制御部38を備えている。制御部38は、指令部130と駆動部140とを備え、指令部130は、CPU132、記憶手段としてのROM133,RAM134および入出力インターフェイス131からなり、CPU132が、ROM133、RAM134のデータに基づき処理し、入出力インターフェイス131を介して駆動部140へ制御信号を出力する。CPU132は、例えば、ROM133に記憶されたプログラムソフトに従って、部材7の表面の所定位置に機能液33を液滴36として吐出するための制御を行うものである。
【0039】
また、ROM133またはRAM134には、紫外線照射光量に応じた複数のフラッシング条件等が記憶されている。そして、CPU132は、紫外線照射光量に応じて、フラッシング条件を選択し、選択されたフラッシング条件でフラッシング動作を行わせるための制御を行う。
【0040】
駆動部140は、ヘッドドライバー141、モータードライバー142、ステージ位置検出ドライバー143、キャリッジ位置検出ドライバー144、メンテナンスドライバー145、第1紫外線照射ドライバー147、第2紫外線照射ドライバー148等から構成されている。モータードライバー142は、指令部130の制御信号により、X軸モーターやY軸モーターを制御し、部材7や吐出ヘッド14の移動を制御する。また、メンテナンスドライバー145は、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20のそれぞれを制御する。ヘッドドライバー141は、吐出ヘッド14を制御し、モータードライバー142の制御と同調して、部材7上の所定位置への移動やヘッドメンテナンス部21への移動を制御する。ステージ位置検出ドライバー143は、ステージ位置検出装置5を制御し、キャリッジ位置検出ドライバー144は、キャリッジ位置検出装置13を制御する。
【0041】
(フラッシング条件)
次に、フラッシング条件について説明する。ここで、フラッシング条件は、駆動波形Fの周波数、駆動波形Fの個数、駆動波形F間の時間間隔It等のパラメーターを有する。本実施形態におけるフラッシング条件は、駆動波形Fの個数により吐出ヘッドのノズル孔から機能液を吐出する回数を変更している。図4は、フラッシング条件を示す説明図である。具体的には、図4は、フラッシング動作の駆動波形を示したものである。図4に示すように、フラッシング動作における駆動波形は、駆動波形Fを最小とした波形が連続して構成されている。そして、当該一つの駆動波形Fにつき機能液の吐出が一回行われる。なお、本実施形態では、図4に示すように、駆動波形Fは全て同一波形形状から構成されている。また、4個の駆動波形F(Fa1〜Fa4,Fb1〜Fb4等)をそれぞれ一つの波形群FL1,FL2として構成し、一つの波形群FL1,FL2では、4回の吐出を行う。それぞれの波形群FL1,FL2は一連のフラッシング動作であり、フラッシング動作の回数と見なしてもよい。例えば、波形群FL1に基づいて吐出ヘッド14を駆動する場合には、フラッシング回数は4回であり、一連のフラッシング動作の回数は1回とみなしてもよい。また、波形群FL1と波形群FL2に基づいて吐出ヘッド14を駆動する場合には、フラッシング回数は8回であり、一連のフラッシング動作の回数は2回とみなしてもよい。また、波形群FL1と波形群FL2との間には任意の時間間隔Itが設けられている。
【0042】
そして、部材7と吐出ヘッド14とが相対的に移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に対応したフラッシング条件としてのフラッシング回数を示すテーブルデータが作成される。当該テーブルデータは、例えば、ROM133に記録される。テーブルデータは、例えば、予め、所定移動距離あたりの紫外線照射光量に対するフラッシング回数による吐出ヘッド14の吐出性の評価等を行い、当該評価を基にして作成される。部材7と吐出ヘッド14とが相対的に移動する所定移動距離としては、液滴吐出装置の構成や吐出ヘッドの構成、また、吐出ヘッドの移動手段の構成により任意に設定することができる。本実施形態の液滴吐出装置1では、吐出ヘッド14の1走査(X軸方向における1スキャン)を所定移動距離として設定し、当該所定移動距離における紫外線照射光量に対するフラッシング回数の評価を行い、当該評価結果に基づいて、テーブルデータが作成される。当該テーブルデータにおいて、紫外線照射光量が多いほど、フラッシング回数が多くなるように設定される。一方、紫外線照射光量が少ないほど、フラッシング回数が少なくなるように設定される。なお、紫外線照射光量が少ない場合には、フラッシング動作がなされない(フラッシング回数0回)の場合も含まれる。
【0043】
(液滴吐出装置の制御方法について)
次に、液滴吐出装置の制御方法について説明する。図5は、液滴吐出装置の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の液滴吐出装置では、部材と吐出ヘッドとが相対的に移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じて、所定移動距離毎にフラッシング条件を選択し、選択されたフラッシング条件でフラッシング動作を行わせる。以下、具体的に説明する。
【0044】
図5に示すように、まず、ステップS11では、紫外線照射光量が設定される。具体的には、部材7と吐出ヘッド14とが相対的に移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量を設定する。この場合、例えば、制御部38に接続された図示しない入力部を用いて、部材7と吐出ヘッド14とが相対的に移動する所定移動距離、描画作業条件の入力や第1及び第2紫外線照射部50a,50bの駆動条件を入力して、制御部38(CPU132)で演算することにより、所要の紫外線照射光量を設定してもよい。なお、部材7と吐出ヘッド14とが相対的に移動する所定移動距離としては、液滴吐出装置1の構成等によって任意に設定することができる。本実施形態では、吐出ヘッド14の1走査(X軸方向における1スキャン)を所定移動距離として設定(入力)する。そして、当該所定移動距離における紫外線照射光量が設定される。
【0045】
次いで、ステップS12では、フラッシング条件が選択される。具体的には、ROM133に記録されたテーブルデータから所定移動距離あたりの紫外線照射光量に対応するフラッシング回数が選択される。
【0046】
次いで、ステップS13では、吐出ヘッド14が所定移動距離に到達したか否かが判断される。具体的には、キャリッジ位置検出装置13から取得されたキャリッジ12の位置データに基づいて、吐出ヘッド14が移動した距離が所定移動距離に達したか否かが判断される。そして、吐出ヘッド14が所定移動距離に到達した場合にはステップS14に移行され、吐出ヘッド14が所定移動距離に到達しない場合には、再度ステップS13に移行される。
【0047】
ステップS14では、フラッシング動作が実行される。具体的には、吐出ヘッド14をフラッシングユニット18と対向する所定の位置に移動させ、選択されフラッシング条件(フラッシング回数)に従って吐出ヘッド14を駆動させ、液滴36を吐出させる。
【0048】
以上、全ステップの実行により、フラッシング動作が終了する。以降、吐出ヘッド14を再び部材7と対向する所定の位置に移動させ、描画動作を実行させる。そして、制御部38が、再び吐出ヘッド14の移動距離を取得し、吐出ヘッド14が所定移動距離に到達したか否かが判断(ステップS13)され、その判断結果に基づいてフラッシング動作を実行(ステップS14)させる。なお、異なる紫外線照射光量が設定された場合(ステップS11)には、新たにフラッシング条件が選択され(ステップS12)、選択されたフラッシング条件でフラッシング動作が実行される(ステップS13、ステップS14)。
【0049】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0050】
(1)部材7に対して吐出ヘッド14が移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じて、予め用意されたフラッシング条件から適切なフラッシング条件(フラッシング回数)が選択され、選択されたフラッシング条件(フラッシング回数)に基づいて、フラッシング動作が実行される。さらに、フラッシング動作は、吐出ヘッド14が移動する所定移動距離毎に実施されるため、短期間で吐出ヘッドのメンテナンスを実施することが可能となる。このため、描画動作を長期間停止することなく、吐出ヘッド14の吐出状態を回復させることができる。そして、描画作業が長時間となっても所定移動距離毎にフラッシング動作が行われるため、ノズル詰り等の不具合発生が無く、作業効率を維持しつつ、描画動作を実行させ、高品質の画像を形成することができる。
【0051】
(2)部材7に対して吐出ヘッド14が移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じて、適切なフラッシング回数が選択されるので、吐出される液滴36の量を低減させることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0053】
(変形例1)上記実施形態では、フラッシング動作における駆動波形Fの形状や構成を全て同一としたが、これに限定されない。例えば、駆動波形の形状を任意に設定してもよい。また、1回のフラッシング動作における波形群FLの構成を任意に設定してもよい。紫外線照射光量に応じて、適正なフラッシング条件を形成することにより、さらに吐出ヘッド14のメンテナンスの作業効率を向上させることができる。
【0054】
(変形例2)上記実施形態では、一種類の部材7に対して描画する場合のフラッシング条件を規定したが、描画される部材7の種類に応じて、フラッシング条件を設定してもよい。このようにすれば、部材7毎に異なる紫外線の反射光量を考慮して、最適なフラッシング条件を設定することができる。
【0055】
(変形例3)上記実施形態では、吐出ヘッド14がX軸方向に往復移動するシリアル方式の構成としたが、これに限定されない。吐出ヘッドが往復移動しない構成、例えば、ラインヘッド方式の構成としてもよい。この場合において、部材と吐出ヘッド(ラインヘッド)とが相対的に移動する所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じて、フラッシング条件(フラッシング回数)を選択し、選択したフラッシング条件(フラッシング回数)でフラッシング動作を実行させればよい。この場合、描画する部材の余白部分にフラッシングを行ってもよい。また、部材とラインヘッドとの相対移動方向に設けられたフラッシングユニットにラインヘッドを移動させてフラッシングを行ってもよい。このようにしても、描画中にフラッシングが可能であり、上記同様の効果を得ることができる。
【0056】
(変形例4)上記実施形態では、フラッシングユニット18とキャッピングユニット19を有しており、フラッシング動作により吐出された液滴をフラッシングユニット18により捕集したが、これに限定されない。フラッシングユニット18を省略し、フラッシング動作により吐出された液滴をキャッピングユニット19により捕集してもよい。キャッピングユニット19には、吐出ヘッド14内から吸引した機能液を貯留する貯留機構、例えば、廃液タンクを有しているので、フラッシング動作により吐出された液滴をこの貯留機構に貯留することができる。また、この場合、吐出ヘッド14をキャッピングユニット19により蓋をしない状態、すなわち、吐出ヘッド14とキャッピングユニットとの間に所定の間隔をあけた状態で、フラッシング動作をおこなうことが好ましい。特に、吐出ヘッド14の上下方向の位置を液滴吐出時から調整せずに、フラッシング動作を行うことが好ましい。
【0057】
(変形例5)上記実施形態では、所定移動距離あたりの紫外線照射光量に応じてフラッシング条件が設定され、設定されたフラッシング条件で所定移動距離毎にフラッシング動作を行っていたが、これに限定されない。第1紫外線照射部50aと第2紫外線照射部50bに設定される紫外線の照射量に応じてフラッシング条件を設定し、このフラッシング条件でフラッシング動作を行うようにしてもよい。例えば、紫外線照射光量が第1の照射量に設定された場合は、第1のフラッシング条件が設定され、紫外線照射光量が第1の照射量よりも低い第2の照射量に設定された場合は、第1のフラッシング条件よりもフラッシング回数が少ない第2のフラッシング条件が設定されるようにしてもよい。
(変形例6)上記において、紫外線の照射量は、第1紫外線照射部50aと第2紫外線照射部50bに設定される設定値に応じて、推定してフラッシング条件を設定してもよいし、紫外線の照射量をセンサーにより検出して検出した結果に基づきフラッシング条件を設定してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…液滴吐出装置、5…ステージ位置検出装置、7…部材、12…キャリッジ、13…キャリッジ位置検出装置、14…吐出ヘッド、15…保守用基台、18…フラッシングユニット、19…キャッピングユニット、20…ワイピングユニット、21…ヘッドメンテナンス部、30…ノズルプレート、31…ノズル孔、33…機能液、36…液滴、38…制御部、50a…第1紫外線照射部、50b…第2紫外線照射部、130…指令部、131…入出力インターフェイス、132…CPU、133…ROM、134…RAM、140…駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に対して紫外線の照射により硬化する機能液を液滴として吐出する吐出ヘッドと、
前記部材に付着した前記機能液に対して前記紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記紫外線の照射光量に応じて設定されるフラッシング条件でフラッシング動作を行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記フラッシング条件は、前記部材と前記吐出ヘッドとの間の相対的な移動距離あたりの前記紫外線の照射光量に応じて設定される、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出装置において、
前記制御部では、
前記部材と前記吐出ヘッドとの間の相対的な移動距離が所定距離となる毎に、前記フラッシング条件を選択し、選択された前記フラッシング条件でフラッシング動作を行わせる、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液滴吐出装置において、
前記フラッシング条件は、
前記吐出ヘッドのノズル孔から前記機能液を吐出する前記フラッシング動作の回数であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、
前記フラッシング条件は、
前記紫外線照射光量が多いほど、前記フラッシング動作の回数が多いことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の液滴吐出装置において、
前記フラッシング条件は、
前記紫外線照射光量が少ないほど、前記フラッシング動作の回数が少ないことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6140(P2013−6140A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139551(P2011−139551)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】