説明

液滴噴射装置

【課題】パージによって異常ノズルの噴射不良を確実に解消するとともに、パージで排出される液体の総量を抑制すること。
【解決手段】プリンタ1は、インクジェットヘッド4と、インクジェットヘッド4の複数のノズル16のパージを実行するメンテナンスユニット7と、複数のノズル16のそれぞれについて液滴噴射状態を検査する噴射状態検査ユニット6を有する。そして、噴射状態検査ユニット6の検査結果に基づいて、複数のノズル16のそれぞれについて異常ノズルの判定を行い、異常ノズルと判定されたノズル16の個別流路を加熱しつつ、メンテナンスユニット7に全てのノズル16のパージを行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を噴射する液滴噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液滴を噴射する液滴噴射装置として、その液体流路内への気泡や塵の混入、あるいは、ノズル内の液体の乾燥による粘度増加(増粘)等によって、液滴を噴射するノズルに噴射不良が生じたときに、流路内の液体をノズルから強制的に排出させることによって、噴射不良の原因である気泡等を排出すること(以下、パージという)が可能に構成されたものがある。
【0003】
上記のような液滴噴射装置として、例えば、特許文献1には、インクの液滴を噴射するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタが開示されている。このインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドの複数のノズルの噴射不良を検出する検出装置と、複数のノズルのパージを行うパージユニットを備えている。また、パージユニットは、インクジェットヘッドに装着されて複数のノズルを覆うパージキャップと、パージキャップに接続されたポンプを有する。そして、検出装置によって、何れかのノズルに噴射不良が生じていることが検出されたときには、パージユニットはパージキャップが複数のノズルを覆っている状態でポンプを駆動し、パージキャップ内の密閉空間を減圧することによって、複数のノズルからパージキャップ内へインクを排出させる(吸引パージ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1のプリンタのように、パージによって、異常ノズルの噴射不良を解消する場合に、気泡や増粘した液体等を異常ノズルから確実に排出するために、流路内にノズルに向かう強い流れを生じさせることが好ましい(特許文献1の構成では、ポンプによって強い吸引力をノズル開口側から作用させる)。しかし、その一方で、パージは複数の液体流路のそれぞれにおいてノズルへの流れを生じさせ、複数のノズルから同時に液体を排出させるものであり、噴射不良が生じている異常ノズルだけでなく、正常なノズルからも液体が排出される。そのため、異常ノズルの噴射不良を解消するために、パージによって液体流路内に強い液体の流れを生じさせたときに、正常なノズルからは多量の液体が不必要に排出されてしまうことになり、廃棄される液体量が増えるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、パージによって異常ノズルの噴射不良を確実に解消するとともに、パージで排出される液体の総量を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液滴噴射装置は、液滴を噴射する複数のノズルをそれぞれ含む、複数の個別流路を有する液滴噴射ヘッドと、前記液滴噴射ヘッドの前記複数の個別流路に接続され、これら複数の個別流路内の液体にそれぞれ前記ノズルへ向かう流れを生じさせて、前記複数のノズルから同時に液体を排出させるパージを実行するパージ手段と、前記複数のノズルのそれぞれについて、噴射不良が生じる異常ノズルであるか否かを判定する判定手段と、 前記複数の個別流路内の液体をそれぞれ加熱する加熱手段を備え、
前記加熱手段が、前記複数の個別流路のうちの、前記判定手段によって前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路を含む、一部の前記個別流路内の液体を加熱しつつ、前記パージ手段が、前記複数のノズルのパージを実行することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、液滴噴射ヘッドの複数の個別流路のうち、判定手段によって異常ノズルと判定されたノズルの個別流路を含む一部の個別流路について液体の加熱を行って液体の粘度を下げることにより、異常ノズルから液体は排出されやすくなる。一方、他の正常なノズルの個別流路においては、加熱は行われず液体の粘度は低下しない。従って、異常ノズルについては、パージ手段の液体排出力を低くしても噴射不良を解消することが可能となり、また、正常ノズルについては液体の排出量が少なくなることから、パージの実行によって複数のノズルから排出される液体の総量を抑制できる。尚、本発明では、加熱手段による個別流路内の液体の加熱とパージ手段によるパージの実行とが、同時並行で行われてもよいし、液体の加熱が終了した後にパージが実行されてもよい。
【0009】
第2の発明の液滴噴射装置は、前記第1の発明において、前記加熱手段は、前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路についてのみ、液体の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0010】
このように、異常ノズルの個別流路についてのみ液体の加熱を行うことで、パージによって排出される液体の総量を一層抑制できる。
【0011】
第3の発明の液滴噴射装置は、前記第1又は第2の発明において、前記液滴噴射ヘッドは、前記複数の個別流路内の液体に個別に噴射エネルギーを付与することにより、前記複数のノズルから選択的に液滴を噴射させるアクチュエータを備え、前記パージ手段による前記パージを行う際に、前記アクチュエータは、前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路内の液体にエネルギーを付与することによって、この個別流路内の液体を加熱することを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、液滴噴射用のアクチュエータによるエネルギー付与によって個別流路内の液体を加熱することから、専用の加熱手段が不要となる。また、1つのノズル(個別流路)単位で液体を加熱することができることから、異常ノズルの個別流路のみを加熱することも容易である。
【0013】
第4の発明の液滴噴射装置は、前記第3の発明において、前記アクチュエータは、前記個別流路内の液体を加熱するときには、前記ノズルから液滴を噴射させるときと比べて、液体に付与するエネルギーを小さくすることを特徴とするものである。
【0014】
アクチュエータによって個別流路内の液体にエネルギーを付与したときに、ノズルから液滴が噴射されると、アクチュエータによって付与されたエネルギーの大部分が液滴の噴射によって外部に放出されるため、加熱効率が低下する。本発明では、加熱するために液体に付与するエネルギーを、液滴を噴射させる場合よりも小さくすることで液滴が噴射しにくくなり、加熱効率が高まる。また、液体の加熱時に、液体が無駄に消費(排出)されてしまうことが抑制される。
【0015】
第5の発明の液滴噴射装置は、前記第4の発明において、各個別流路は、前記ノズルに連通する圧力室を有し、前記アクチュエータは、各個別流路について前記圧力室を区画する壁部を変形させる圧電素子を有する圧電アクチュエータであり、前記圧電素子に所定電圧の駆動パルス信号を印加する駆動装置を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、駆動装置から駆動パルス信号が印加されたときに、圧電アクチュエータの圧電素子によって圧力室の壁部が変形されることで、圧力室内の液体に圧力が付与されてノズルから液滴が噴射される。
【0017】
また、前記第5の発明において、前記駆動装置は、前記異常ノズルの個別流路内の液体を加熱するときに前記圧電素子に印加する前記駆動パルス信号のパルス幅を、前記ノズルから液滴を噴射させるときの前記パルス幅とは異ならせてもよい(第6の発明)。このように、駆動パルス信号のパルス幅を異ならせることで、加熱時に液体に付与するエネルギーを小さくすることができる。
【0018】
あるいは、前記第5の発明において、前記駆動装置は、前記異常ノズルの個別流路内の液体を加熱するときに前記圧電素子に印加する前記駆動パルス信号の電圧を、前記ノズルから液滴を噴射させるときの前記駆動パルス信号の電圧よりも低くしてもよい(第7の発明)。このように、駆動パルス信号の電圧を低くすることで、加熱時に液体に付与するエネルギーを小さくすることができる。
【0019】
第8の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記複数のノズルの液滴噴射状態を個別に検出する噴射状態検出手段を有し、前記判定手段は、前記噴射状態検出手段の検出結果に基づいて、前記複数のノズルのそれぞれについて、異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とするものである。
【0020】
本発明によれば、噴射状態検出手段によって複数のノズルの噴射状態をそれぞれ検出することで、判定手段による異常ノズルの判定を精度よく行うことができる。
【0021】
第9の発明の液滴噴射装置は、前記第8の発明において、前記噴射状態検出手段による前記複数のノズルの液滴噴射状態検出の、過去の検出結果を記憶する記憶手段を有し、前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記過去の検出結果に基づいて、前記異常ノズルの判定を行うことを特徴とするものである。
【0022】
特に、ノズルの数が多い場合には、これらのノズルの液滴噴射状態を個別に検出するのにかなりの時間がかかってしまう。本発明では、過去の検出結果を利用して異常ノズルの推測を行うことで、複数のノズルの液滴噴射状態の検出を適宜省略することが可能となり、速やかにパージを実行することができる。
【0023】
第10の発明の液滴噴射装置は、前記第9の発明において、前記記憶手段は、複数回の過去の検出結果を記憶しており、前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記複数回の過去の検出結果から、噴射不良が検出された回数が所定回数以上であるノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とするものである。
【0024】
過去の検出結果において、噴射不良が複数回検出されているノズルは、噴射不良が生じやすいノズルであると推測できる。従って、噴射不良が所定回数以上検出されているノズルを異常ノズルと判定することで、判定の精度が高まる。
【0025】
第11の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記判定手段は、前記複数のノズルのそれぞれについて、前回のパージが終了してからの液滴噴射回数に応じて、異常ノズルか否かを判定することを特徴とするものである。
【0026】
前回のパージからの液滴噴射回数が少ないノズルにおいては、ノズル内の増粘が進行している可能性が高い。一方で、前回のパージからの液滴噴射回数が多いノズルにおいては、上流側からの液体の供給頻度が高く、気泡が運ばれてくる機会が増えることから、気泡が混入する可能性が高くなる。このように、ノズルの液滴噴射頻度と噴射不良の発生には関連性があることから、本発明では、液滴噴射回数に応じて異常ノズルの判定(推測)を行う。
【0027】
第12の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記判定手段は、前記複数のノズルのそれぞれについて、液滴を噴射しない待機時間が所定の時間以上であるノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とするものである。
【0028】
ノズルから長期間液滴が噴射されていないと、ノズル内の増粘が進行している可能性が高いことから、本発明では、待機時間が所定時間以上であるノズルを異常ノズルと判定する。
【0029】
第13の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記液滴噴射ヘッドの前記複数のノズルは、複数種類の液体をそれぞれ噴射する複数のノズル群に区分され、前記パージ手段は、前記複数のノズル群を構成する前記複数のノズルを共通に覆うように前記液滴噴射ヘッドに装着されるキャップと、前記キャップに接続された吸引手段を有し、前記吸引手段により前記キャップ内を減圧することによって、前記複数のノズルから前記キャップ内へ同時に液体を排出させる、吸引パージを実行するものであり、
前記判定手段は、1つの前記ノズル群単位で前記異常ノズルか否かの判定を行い、前記加熱手段は、前記異常ノズルと判定された前記ノズル群に属する全てのノズルについて、前記個別流路内の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0030】
液滴噴射ヘッドの複数のノズルが、複数種類の液体をそれぞれ噴射する複数のノズル群に分かれている場合には、ノズル群毎(液体の種類毎)に異常ノズルの判定、及び、液体の加熱を行ってもよい。
【0031】
第14の発明の液滴噴射装置は、前記第13の発明において、前記複数種類の液体をそれぞれ貯留する複数種類の液体カートリッジがそれぞれ交換可能に装着される、複数のカートリッジ装着部を有し、前記判定手段は、ある液体カートリッジが所定期間以上交換されていない場合に、その液体カートリッジの液体を噴射する前記ノズル群に属する全てのノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とするものである。
【0032】
液体カートリッジの交換が一定期間なされていないと、そのカートリッジ内部の液体の粘度が上昇し、ノズルに噴射不良を生じさせやすくなる。従って、本発明では、所定期間以上交換されていない液体カートリッジに対応するノズル群については異常ノズルと判定し、パージ前に液体の加熱を行う。
【0033】
第15の発明の液滴噴射装置は、前記第13の発明において、前記液滴噴射ヘッドは、使用する前記ノズル群が異なっている複数の液滴噴射モードのうちから、1つの液滴噴射モードを選択して実行するように構成され、前記判定手段は、前回の吸引パージが終了してからの、前記複数の液滴噴射モードのそれぞれの選択頻度に応じて、前記複数のノズル群のそれぞれについて、前記異常ノズルか否かの判定を行うことを特徴とするものである。
【0034】
一部のノズル群のみ使用する液滴噴射モードが多用されると、それ以外のノズル群の使用頻度が低くなり、ノズル内の増粘が進行しやすくなる。あるいは、逆に、使用頻度の高い一部のノズル群において気泡の混入が生じやすくなることもある。従って、本発明では、液滴噴射モードの選択頻度に応じて、複数のノズル群のそれぞれについて、異常ノズルか否かの判定を行う。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、液滴噴射ヘッドの複数の個別流路のうち、判定手段によって異常ノズルと判定されたノズルの個別流路を含む一部の個別流路についてのみ液体の加熱を行うことで、異常ノズルについてはパージ手段の液体排出力を低くしても0噴射不良を解消することが可能となる一方で、正常ノズルについては液体の排出量が少なくなる。従って、パージの実行によって複数のノズルから排出される液体の総量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】図3のV-V線断面図である。
【図6】ドライバICから圧電アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス波形図であり、(a)は液滴噴射用、(b)はインク加熱用の駆動パルス信号をそれぞれ示す。
【図7】噴射状態検査ユニットの断面図である。
【図8】キャッピング状態におけるインクジェットヘッドとキャップ部材の断面図である。
【図9】プリンタの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図10】変更形態6のインクジェットヘッドの図5相当の断面図である。
【図11】変更形態7のインクジェットヘッドの平面図である。
【図12】変更形態8のプリンタの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図13】変更形態11のプリンタの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図14】変更形態12のプリンタの制御系を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1(液滴噴射装置)は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(液滴噴射ヘッド)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットヘッド4のノズル16の液滴噴射状態を検査する噴射状態検査ユニット6(噴射状態検出手段)と、インクジェットヘッド4の液滴噴射性能の回復・維持に関する各種メンテナンス作業を行うメンテナンスユニット7(パージ手段)と、インクジェットプリンタ1の全体制御を司る制御装置8等を備えている。これらのプリンタ1の主要構成について、以下順を追って説明する。
【0038】
(画像記録用の構成)
プラテン2の上面には図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10,11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、2本のガイドレール10,11は、プラテン2から走査方向に沿って図1の左方及び右方に離れた位置まで延在しており、キャリッジ3は、プラテン2上の記録用紙Pと対向する領域(記録領域)から、非記録領域である、プラテン2から左右方向に離れた位置まで移動可能に構成されている。また、キャリッジ3には、2つのプーリ12,13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行に伴って走査方向に移動する。
【0039】
尚、プリンタ1のプリンタ本体1aには、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ24が設けられている。一方、キャリッジ3には、発光素子と受光素子とを有する透過型のフォトセンサ25が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ3の移動中にフォトセンサ25が検出したリニアエンコーダ24の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ3の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっている。
【0040】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面(図1の紙面向こう側の面)が、複数のノズル16が開口する液滴噴射面となっている。また、図1に示すように、プリンタ1のプリンタ本体1aにはホルダ9が固定的に設けられ、このホルダ9の4つのカートリッジ装着部20には、4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)がそれぞれ貯留された4つのインクカートリッジ17が交換可能に着脱される。また、図示は省略するが、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とホルダ9とが4本のチューブ(図示省略)で接続され、4つのインクカートリッジ17内のインクが、4本のチューブを介してインクジェットヘッド4にそれぞれ供給されるようになっている。そして、インクジェットヘッド4は、複数のノズル16から、4色のインクをプラテン2に載置された記録用紙Pに対して噴射する。インクジェットヘッド4の構造の詳細については後ほど説明する。
【0041】
搬送機構5は、搬送方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有し、これら2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向(図1の前方)に搬送する。
【0042】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向(図1の左右方向)に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ18,19によって記録用紙Pを搬送方向(図1の前方)に搬送することにより、記録用紙Pに所望の画像や文字等を印刷する。
【0043】
(インクジェットヘッドの構造)
図2は、インクジェットヘッド4の平面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図3のIV-IV線断面図、図5は図3のV-V線断面図である。図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド4は、複数のノズル16及び複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された圧電アクチュエータ31とを備えている。
【0044】
図4、図5に示すように、流路ユニット30は4枚のプレートが積層された構造を有し、この流路ユニット30の下面は、複数のノズル16が開口した液滴噴射面4aとなっている。また、図2に示すように、これら複数のノズル16は搬送方向に配列され、走査方向に並ぶ4列のノズル列33を構成している。4列のノズル列33にそれぞれ属するノズル16からは、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクがそれぞれ噴射される。
【0045】
また、流路ユニット30には、複数のノズル16にそれぞれ連通する複数の圧力室34が形成されている。これら複数の圧力室34は、流路ユニット30の上面において開口した上で、後述する圧電アクチュエータ31の振動板40によって塞がれた構造となっている。また、4列のノズル列33に対応して、複数の圧力室34も4列に配列されている。さらに、流路ユニット30には、それぞれ搬送方向に延在し、4列の圧力室列にブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクを供給する4本のマニホールド35が形成されている。尚、4本のマニホールド35は、流路ユニット30の上面に形成された4つのインク供給口36に接続されている。そして、図4に示すように、流路ユニット30内には、マニホールド35から圧力室34を経てノズル16に至る個別流路37が複数形成されている。
【0046】
図2〜図5に示すように、圧電アクチュエータ31は、流路ユニット30の上面に接合された振動板40と、この振動板40の上面に複数の圧力室34と対向するように形成された圧電層41と、この圧電層41の上面に配置された複数の個別電極42とを備えている。
【0047】
振動板40は、平面視で略矩形状の、ステンレス鋼等の金属製の板部材である。この振動板40は、流路ユニット30の上面に、上述した複数の圧力室34を覆うように接合されており、複数の圧力室34を区画する壁部の一部を構成している。また、導電性を有する振動板40の上面は、複数の個別電極42との間で圧電層41を挟み、この圧電層41に厚み方向の電界を生じさせる共通電極を兼ねており、後述するドライバIC47に接続されて常時グランド電位に保持されている。
【0048】
振動板40の上面(圧力室34と反対側の面)には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする、圧電材料からなる圧電層41が形成されている。この圧電層41は、複数の圧力室34に跨って平面的に形成されている。
【0049】
圧電層41の上面には、圧力室34よりも一回り小さい略楕円形の平面形状を有する複数の個別電極42が形成されている。これら個別電極42は、対応する圧力室34の中央部と対向する位置にそれぞれ配置されている。さらに、複数の個別電極42からは、それぞれ圧力室34と対向しない領域まで複数の接続端子45が引き出されている。これら複数の接続端子45には、ドライバIC47(駆動装置)を実装したフレキシブルプリント配線板(図示省略)が接続される。
【0050】
尚、圧電層41の、複数の個別電極42と共通電極としての振動板40とに挟まれた部分は、予め、その厚み方向に分極されており、個別電極42と振動板40の間に電圧が印加されたときに、圧電層41に変形(圧電歪)を生じさせる活性部46(本願発明の圧電素子に相当する)となる。
【0051】
ドライバIC47(駆動装置)は、複数の接続端子35に接続される、図示しないフレキシブルプリント配線板に実装されている。そして、このドライバIC47は、フレキシブルプリント配線板に形成された複数の配線を介して、複数の個別電極42のそれぞれに対して、図6(a)に示す、所定のパルス幅B1とパルス高さ(駆動電圧V)のパルスP1を有する駆動パルス信号を印加する。
【0052】
図6(a)のパルス波形から分かるように、ドライバIC47は、パルスP1の印加前の待機状態では、個別電極42に駆動電圧Vを印加する。即ち、個別電極42と共通電極としての振動板40に挟まれた圧電層41の活性部46に駆動電圧Vが印加され、活性部46には厚み方向の電界が生じる。ここで、圧電層41の分極方向と電界の方向とが同じ場合には、圧電層41はその分極方向である厚み方向に伸びて面方向に収縮し、活性部46の収縮変形に伴って、振動板40の圧力室34と対向する部分が圧力室34側に凸となるように撓む(ユニモルフ変形)。つまり、待機状態では、圧力室34の容積が減少した状態となっている。
【0053】
上記の待機状態から、ドライバIC47がパルスP1を個別電極に印加すると、個別電極42がグランドとなって活性部46に電圧が印加されない状態となる。このとき、圧力室34側に凸となるように変形していた振動板40が一旦元に戻るため、圧力室34の容積が増加して、圧力室34内に負の圧力波が発生する。尚、この負の圧力波は個別流路37のマニホールド35との連通部において正圧に反転して圧力室34に戻る。即ち、圧力室34とマニホールド35との間を圧力波が往復するのに要する伝播時間(Acoustic Length:以下、ALという)毎に、圧力室34内の圧力が正負反転する。従って、図4の駆動パルス信号のパルス幅Bが上記のALに近い値に設定されると、圧力室34に正圧の圧力波が反転して戻ってくるタイミングで活性部46に電圧が印加されることになり、正圧が重ね合わされて、圧力室34内のインクに効率よく高い圧力(噴射エネルギー)が付与される。これによって、圧力室34に連通するノズル16からインクの液滴が噴射される。
【0054】
尚、ドライバIC47は、図6(a)の液滴噴射用の駆動パルス信号の他に、図6(b)に示すように、パルス幅B2がB1(=AL)とは異なる所定電圧の駆動パルス信号を個別電極42に印加することが可能である。この駆動パルス信号は、パルス幅がALからずれているために、(a)の駆動パルス信号と比べると、圧力室34内のインクへの圧力付与の効率が悪い、即ち、インクに与えるエネルギーが小さくなっている。尚、図6では、(b)のパルス幅B2が(a)のパルス幅B1よりも小さい例が示されているが、パルス幅B2がパルス幅B1よりも大きくてもよい。この図6(b)の駆動パルス信号は、後述するように、個別流路37内のインクの加熱を行う際に用いるものであるが、この個別流路37内の加熱については後ほど説明する。
【0055】
(噴射状態検査ユニット)
図1に戻り、インクジェットヘッド4の複数のノズルの液滴噴射状態を検査する、噴射状態検査ユニット6は、プラテン2に対して走査方向一方側(図1の右側)に離れた位置に配置されている。
【0056】
噴射状態検査ユニット6の構成は特定のものに限定されるものではないが、以下に具体例を1つ挙げる。図7は、噴射状態検査ユニット6の断面図である。図7に示すように、噴射状態検査ユニット6は、液滴着弾板50と、この液滴着弾板50に設けられた変形検出センサ51とを有する。
【0057】
液滴着弾板50は、支持部材52によって水平な姿勢で片持ち支持されている。そして、インクジェットヘッド4の液滴噴射面4aが液滴着弾板50と対向した状態で、インクジェットヘッド4のノズル16から噴射された液滴が着弾すると、液滴着弾板50は僅かに撓むようになっている。また、変形検出センサ51は、液滴が着弾したときの液滴着弾板50の変形(撓み)を検出する。変形検出センサ51としては、圧電センサや、ひずみゲージ、あるいは、加速度センサ等の公知のセンサを用いることができる。
【0058】
従って、ドライバIC47によって、あるノズル16に対応する個別電極42に対して駆動パルス信号が印加されたときに、変形検出センサ51によって液滴着弾板50の変形(撓み)が検出されるか否かによって、そのノズル16から液滴が噴射されたか、即ち、、液滴を噴射する正常なノズルか、液滴を噴射しない(噴射不良が生じている)異常なノズルであるかが検出される。
【0059】
(メンテナンスユニット)
メンテナンスユニット7(パージ手段)は、噴射状態検査ユニット6によって、一部のノズル16に噴射不良が生じていることが検出されたときに、そのノズル16の噴射不良を解消する吸引パージを実行するものである。図1に示すように、メンテナンスユニット7は、噴射状態検査ユニット6とは、プラテン2を挟んで反対側(図中左側)の位置に配置されている。このメンテナンスユニット7は、インクジェットヘッド4の下面(液滴噴射面4a)に密着して複数のノズル16を覆うキャップ部材21と、キャップ部材21に接続された吸引ポンプ23と、液滴噴射面4aに付着したインクを拭き取るワイパー22等を備えている。
【0060】
図8は、キャップ部材21のキャッピング状態でのインクジェットヘッド4とキャップ部材21の断面図である。キャップ部材21は、図8の上下方向に移動可能に構成され、キャップ駆動モータ26(図6参照)を含む適宜のキャップ駆動機構によって、インクジェットヘッド4の液滴噴射面4aに対して離接駆動される。そして、キャップ部材21がインクジェットヘッド4の液滴噴射面4aに密着したときには(キャッピング)、複数のノズル16の全てを共通に覆うことによって複数の個別流路37に接続される。その状態で、吸引ポンプ23がキャップ部材21内の空気を吸引して減圧することで、複数の個別流路37のそれぞれにおいてノズル16へ向かう流れを生じさせ、複数のノズル16からキャップ部材21へ同時にインクを排出させる(吸引パージ)。このとき、ノズル16の噴射不良の原因となる、塵や気泡、あるいは、乾燥によって粘度の高くなったインク(増粘インク)などが、インクとともにノズル16から排出されることになる。尚、この吸引パージによって、個別流路37内のインクは全て排出され、吸引パージ後には新しいインクがマニホールド35から個別流路37内に供給されるため、その後のインクジェットヘッド4による記録動作を良好に行うことができる。
【0061】
ワイパー22はキャップ部材21よりもプラテン2側の位置に立設されており、吸引パージ後に、このワイパー22の先端がインクジェットヘッド4の液滴噴射面4aに接触した状態でキャリッジ3が走査方向に移動することによって、ワイパー22が液滴噴射面4aに付着したインクを拭き取る。
【0062】
(プリンタの制御構成)
次に、制御装置8を中心とするインクジェットプリンタ1の制御系について、図9のブロック図を参照して詳細に説明する。図9に示されるプリンタ1の制御装置8は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むマイクロコンピュータを備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御を行う。あるいは、制御装置8は、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0063】
この制御装置8は、インクジェットヘッド4を制御するヘッド制御部61と、キャリッジ3を走査方向に駆動するキャリッジ駆動モータ15を制御するキャリッジ制御部62と、搬送機構5を制御する搬送制御部63とを含む、印刷制御部60を有する。印刷制御部60は、PC70から入力された、印刷する画像等に関するデータ(印字データ)に基づき、インクジェットヘッド4のドライバIC47、キャリッジ駆動モータ15、及び、搬送機構5をそれぞれ制御して、記録用紙Pへの印刷を行わせる。
【0064】
また、制御装置8は、噴射状態検査ユニット6の検査結果に基づいて、複数のノズル16のそれぞれについて異常ノズルであるか否かを判定する、噴射状態判定部64(判定手段)と、噴射状態判定部64によって何れかのノズル16が異常ノズルであると判定された場合に、メンテナンスユニット7の吸引ポンプ23やキャップ部材21を昇降駆動するキャップ駆動モータ26等を制御して、前述した吸引パージを含む一連のメンテナンス動作を制御するメンテナンス制御部65を備えている。
【0065】
尚、印刷制御部60、噴射状態判定部64、及び、メンテナンス制御部65のそれぞれの機能は、実際には、上述したマイクロコンピュータの動作、あるいは、演算回路を含む各種回路の動作によって実現される。
【0066】
次に、ノズル16の噴射不良の判定から吸引パージに至る、一連のメンテナンス動作について詳細に説明する。まず、噴射状態検査ユニット6により、インクジェットヘッド4の複数のノズル16の液滴噴射状態が個別に検査される。この検査は、例えば、プリンタ1の電源投入直後のタイミングや、前回のパージが行われてから所定期間経過したタイミングで行う。そして、その検査結果に基づいて噴射状態判定部64が複数のノズル16のそれぞれについて異常ノズルであるか否かの判定を行う。
【0067】
噴射不良が生じている異常ノズルが存在すると判定した場合には、噴射状態判定部64は、ヘッド制御部61に、異常ノズルの個別流路37内のインクを加熱する信号を送る。この信号を受けて、ヘッド制御部61は、インクジェットヘッド4のドライバIC47を制御して、異常ノズルに対応する個別電極42にのみ、図6(b)に示すインク加熱用の駆動パルス信号を印加させる。
【0068】
ドライバIC47から異常ノズルに対応する個別電極42に駆動パルス信号が印加されると、その圧力室34における振動板40の変形によって圧力室34内のインクにエネルギーが付与される。ここで、この駆動パルス信号の印加時には、圧力室34内のインクに付与されたエネルギーによってインクの圧力が上昇する一方、圧電層41の誘電損失による等価直列抵抗分の自己発熱や、ヒステリシス損による自己発熱がインクに伝わり、インクの温度が上昇する。
【0069】
従って、図6(b)の駆動パルス信号が異常ノズルに対応する個別電極42に印加されることによって、圧力室34を含む個別流路37内のインクが加熱され、インクの粘度が低下する。例えば、インクの温度を25℃→45℃まで上昇させたときに、粘度は、3cP→1.5cPまで低下し、粘度が半減すると流路内のインク流速は2倍になる。一方で、ドライバIC47は、正常なノズル16に対応する個別電極42には駆動パルス信号を印加しないため、この正常なノズル16の個別流路37においてはインクの粘度は低下しない(例えば、25℃で粘度が3CP)。つまり、正常ノズルよりも異常ノズルの方がインクの粘度が低くなる。これによって、吸引パージ時における異常ノズルからの気泡等の排出が容易になる。
【0070】
尚、本実施形態では、液滴を噴射させる際に圧力室34内のインクに圧力(噴射エネルギー)を付与する圧電アクチュエータ31が、本願発明の加熱手段に相当する。
【0071】
また、インク加熱用の駆動パルス信号(図6(b))は、液滴噴射用の駆動パルス信号(図6(a))とはパルス幅が異なり、ALからずれているため、圧電アクチュエータ31によるインクへのエネルギー(圧力)の付与効率が悪く、液滴を噴射させるときと比べて、インクに付与されるエネルギーは小さくなる。駆動パルス信号の具体例を挙げると、図6(a)において、液滴噴射用の駆動パルス信号がV=20V、B1=AL=6μsであるのに対し、図6(b)において、加熱用の駆動パルス信号はV=20V、B2=3μs程度である。従って、インク加熱用の駆動パルス信号の印加時にノズル16から液滴が噴射されにくく、与えられたエネルギーが液滴の噴射によって外部に運ばれるということが起こりにくい。また、液滴が噴射されにくくなることで、インクが無駄に消費(排出)されてしまうことが抑制される。
【0072】
このように、異常ノズルの個別流路37についてのみインクの加熱後に、メンテナンス制御部65は、メンテナンスユニット7を制御してキャップ部材21及び吸引ポンプ23を駆動させ、吸引パージを実行させる。ここで、図8からも分かるように、吸引パージでは、キャップ部材21で覆われる複数のノズル16の全てからインクが排出されることになる。ここで、異常ノズルの個別流路37においては、正常なノズル16の個別流路37よりもインクの粘度が低下しているため、異常ノズルから気泡や増粘インク等を排出するために必要な、吸引パージによる吸引力(インク排出力)を低くすることができる。一方で、吸引力を低くすることで正常なノズル16から排出されるインク量は少なくなる。従って、吸引パージによって複数のノズル16から排出されるインクの総量が抑制される。特に、ノズル16の数が多い長尺のインクジェットヘッド4では、複数のノズル16が狭い領域に並ぶので、キャップ部材21によって多くのノズル16が一度にキャッピングされることになる。そのため、異常ノズルの噴射不良の解消のために大きな吸引力でパージを行うと、より多くの無駄なインクが排出されてしまうが、本実施形態によれば、無駄なインク排出を防止することにいっそう寄与できる。
【0073】
尚、上の説明では、異常ノズルの個別流路37内のインクを加熱した後に、吸引ポンプ23による吸引パージを行っているが、インクの加熱を行っている途中(即ち、加熱用の駆動パルス信号の印加途中)に吸引パージを開始してもよい。また、この場合、加熱中には吸引ポンプ23の吸引力を弱めに設定し、加熱終了後には吸引力を強くしてもよい。あるいは、先に吸引ポンプ23によって弱い吸引力で吸引パージを開始した後に、吸引パージの途中で異常ノズルの個別流路37内のインクの加熱を行ってもよい。
【0074】
特に、本実施形態では、噴射状態検査ユニット6による液滴噴射状態の検査結果に基づいて、個々のノズル16について異常ノズルであるか否かを精度よく判定し、その上で、このような異常ノズルの個別流路37についてのみインクの加熱を行う。従って、本当に噴射不良が生じているノズル16の個別流路37においてのみインクの粘度が低下することから、吸引パージによって排出されるインクの総量を十分少なく抑えることができる。
【0075】
また、液滴噴射用の圧電アクチュエータ31によるエネルギー付与によって異常ノズルの個別流路37内のインクを加熱することから、専用の加熱手段が不要となる。また、1つのノズル16(個別流路37)単位でインクを加熱することができることから、異常ノズルと判定されたノズル16の個別流路37についてのみインクを加熱することが容易である。
【0076】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0077】
1]前記実施形態のように、駆動パルス信号のパルス幅を変える以外にも、インクを加熱する際にインクに付与するエネルギーを、ノズル16から液滴を噴射させるときよりも小さくすることは可能である。
【0078】
例えば、個別流路37内のインクを加熱するときに、ドライバIC47から個別電極42(活性部46)に印加する駆動パルス信号の電圧を、液滴を噴射させるときよりも小さくしてもよい(変更形態1)。
【0079】
または、駆動パルス信号のパルス数を異ならせてもよい(変更形態2)。ノズル16からサイズの大きな液滴を噴射させる場合に従来から知られている技術であるが、一定時間の間に続けて印加するパルスの数を増やすとともに、各パルスで付与されるエネルギー(圧力)が重ね合わされるように、パルス幅やパルス間隔を適切に設定すれば、パルスが1つである場合と比べて、非常に大きいエネルギーをインクに付与することができる。従って、パルス数を異ならせることによっても、インクに付与するエネルギーを異ならせることが可能である。
【0080】
また、液滴噴射用のアクチュエータは、圧電素子の圧電変形を利用する圧電アクチュエータには限られない。例えば、発熱体によってインクを加熱して沸騰させたときの圧力上昇を利用してノズル16から液滴を噴射させるものであってもよい(変更形態3)。この場合は、個別流路37内の加熱を行うときには、液滴を噴射させるときと比較して、発熱体によってインクに与える熱エネルギーを沸騰しない程度に小さくすればよい。
【0081】
また、噴射状態判定部64で判定された異常ノズルは、元々、液滴を噴射することが困難であるノズル16であることから、個別流路37内のインクを加熱する際に、多少大きなエネルギーをインクに与えても液滴は噴射されにくい。そこで、インクを加熱するときに、液滴を噴射させるときと同じ駆動パルス信号を個別電極42に印加して、同等のエネルギーをインクに付与するようにしてもよい(変更形態4)。
【0082】
2]複数のノズル16の液滴噴射状態を検出する装置(噴射状態検査ユニット6)の構成は、前記実施形態のものには限られない。例えば、図7に示される前記実施形態の噴射状態検査ユニット6は、複数のノズル16のそれぞれについて、噴射不良として、液滴を噴射しない状態(不吐出)しか検出できないが、噴射方向の傾き(吐出曲がり)を検出可能なものであってもよい。このような検査ユニットの一例としては、上述した特許文献1に記載の、レーザー光を利用したもの挙げることができる(変更形態5)。
【0083】
3]プリンタ1が、液滴噴射用のアクチュエータとは別に、異常ノズルの個別流路37内のインクを加熱する加熱手段を備えていてもよい。
【0084】
(変更形態6)
インクジェットヘッド4に、複数の個別流路37内のインクをそれぞれ加熱する複数の発熱体が設けられてもよい。例えば、図10に示すように、振動板40が絶縁性材料で形成された上で、この振動板の上面の複数の圧力室とそれぞれ対向する領域に、電気抵抗値の高い金属からなり、通電によって発熱する複数の発熱体71が設けられてもよい。
【0085】
(変更形態7)
上記変更形態6のように、微小なノズル16(個別流路37)の1つ1つに対して個別にインクを加熱するには、個々の加熱手段(発熱体71)も非常に微小なものとせざるを得なくなり、また、それら発熱体71に対応する多数の配線を引き回す必要もあるため、製造コスト等を考えると不利な点もある。そこで、加熱手段は、1つのノズル16に対応する1つの個別流路37単位でインクを加熱するのではなく、複数の個別流路37からなる1つの流路群単位でインクを加熱するものであってもよい。例えば、前記実施形態のインクジェットヘッド4は、4色のインクをそれぞれ噴射する4列のノズル列33(ノズル群)を有するが、加熱手段が、1列のノズル列33単位でインクを加熱するものであってもよい。
【0086】
上記の具体例を図11に挙げる。この図11では、圧電アクチュエータ31の圧電層41の上面の、4列のノズル列33の外側の領域、及び、隣接するノズル列33の間の領域に、それぞれノズル列33とほぼ同じ長さを有する、合計5つの発熱体72(加熱手段)が貼り付けられている。そして、1列のノズル列33を挟む2つの発熱体72によって、その1列のノズル列33に属する、同色のインクを噴射する複数のノズル16の個別流路37を、同時に加熱するようになっている。
【0087】
上記構成においては、噴射状態検査ユニット6により、ある色のインクを噴射するいくつかのノズル16が異常ノズルであると判定された場合には、その異常ノズルが属する1列のノズル列33の全てのノズル16について、ノズル列33を挟む2つの発熱体72によって個別流路37内のインクを加熱することになる。尚、この場合、1列のノズル列33に属するノズル16のうち、異常ノズルと判定されていないものについてまで、個別流路37内のインクが加熱されてしまうことになるため、前記実施形態のように異常ノズルと判定されたノズル16についてのみインク加熱する場合と比較すると、パージで排出されるインクの総量は若干多くなる。即ち、この変更形態7では、前記実施形態と比べて加熱手段の構成が簡単になるという利点があるものの、排出インク量を抑えるという観点では前記実施形態のように1つの個別流路37単位で加熱する構成が好ましい。
【0088】
4]前記実施形態では、噴射状態検査ユニット6により複数のノズル16の液滴噴射状態を個別に検査した後に、その検査結果に応じてメンテナンスユニット7によるパージを実行しているが、特にノズル16の数が多い場合と、複数のノズル16の液滴噴射状態を個別に検出するのにかなりの時間がかかってしまう。
【0089】
そこで、図12に示すように、噴射状態判定部64が、噴射状態検査ユニット6による複数のノズル16の液滴噴射状態検出の、過去の検査結果を記憶する記憶部66(記憶手段)を有し、噴射状態判定部64は、記憶部に記憶された過去の検査結果に基づいて異常ノズルの判定を行ってもよい(変更形態8)。このように、過去の検出結果を利用して異常ノズルの判定(推測)を行うことで、複数のノズル16の液滴噴射状態の検出を適宜省略することが可能となり、速やかにパージを実行することができる。
【0090】
また、過去に噴射不良が複数回検出されているノズル16は、噴射不良が生じやすいノズル16であると推測できる。そこで、記憶部66に過去の複数回の検出結果が記憶されている場合には、噴射状態判定部64は、噴射不良が所定回数以上検出されているノズル16を異常ノズルと判定してもよい。これにより、異常ノズルの判定(推測)の精度が高まる。
【0091】
この変更形態8の異常ノズルの判定(推測)の具体例をいくつか挙げる。例えば、直近の複数回の検出において、所定回数以上噴射不良が検出されたノズル16を異常ノズルと判定する。より具体的には、直近の検出回数の半数以上において噴射不良が生じた場合(例えば、直近5回の検出のうち、3回以上噴射不良が検出された場合)を異常ノズルと判定する。また、直前の検出まで、複数回続けて噴射不良が検出されたノズル16を異常ノズルと判定してもよい。あるいは、過去に(例えば、プリンタ使用開始後から)噴射不良と検出された通算回数が所定回数以上であるノズル16を、異常ノズルと判定してもよい。
【0092】
5]複数のノズル16について個別に液滴噴射状態を検査することなく、様々な条件から推測することによって、異常ノズルの判定を行ってもよい。
【0093】
(変更形態9)
制御装置8のヘッド制御部61が、メンテナンスユニット7による前回のパージが終了した後から、複数のノズル16のそれぞれについて液滴噴射回数をカウントし、前記液滴噴射回数に応じて、個々のノズル16が異常ノズルか否かを判定してもよい。
【0094】
例えば、前回のパージからの液滴噴射回数が少ないノズル16においては、ノズル16内のインクの増粘が進行している可能性が高い。そこで、噴射状態判定部64は、前記液滴噴射回数がある所定の回数未満であるノズル16を異常ノズルであると判定してもよい。あるいは、前回のパージからの液滴噴射回数が多いノズル16の個別流路37においては、上流側からインクが供給される頻度が高く、気泡が運ばれてくる機会が増えることから、気泡が混入する可能性が高くなる。そこで、噴射状態判定部64は、上記とは逆に、前記液滴噴射回数がある所定の回数以上であるノズル16を異常ノズルであると判定してもよい。
【0095】
(変更形態10)
あるノズル16から長期間液滴が噴射されていないと、そのノズル16内のインクの増粘がかなり進行している可能性が高い。そこで、制御装置8のヘッド制御部61が、複数のノズル16のそれぞれについて、液滴を噴射しない待機時間を計測した上で、噴射状態判定部64は、前記待機時間が所定時間以上であるノズル16を異常ノズルと判定してもよい。
【0096】
また、前記実施形態のインクジェットヘッド4では、複数のノズル16が、4種類(4色)のインクをそれぞれ噴射する4列のノズル列(ノズル群)に分かれているが、このような場合には、ノズル列毎(インクの種類毎)に異常ノズルの判定、及び、インクの加熱を行ってもよい。この具体例を以下に挙げる。
【0097】
(変更形態11)
インクジェットヘッド4側でインクが消費されたときに、その消費された分だけ、インクカートリッジ17からインクジェットヘッド4にインクを速やかに供給することができるように、通常、カートリッジ装着部20に装着された状態で、インクカートリッジ17の内部は大気に連通している。それ故、インクカートリッジ17の交換が長期間行われていないと、乾燥によって、そのインクカートリッジ17内部のインクの粘度が徐々に上昇し、ノズル16に噴射不良を生じさせやすくなる。
【0098】
そこで、所定期間以上交換されていないインクカートリッジ17のインクを噴射するノズル列33の、全てのノズル16を一律に異常ノズルと判定してもよい。具体的には、図13に示すように、4つのカートリッジ装着部20に、インクカートリッジ17の着脱を検出する着脱検出センサ73がそれぞれ設けられる一方で、制御装置8は、この着脱検出センサ73によって装着が検出されているインクカートリッジ17の、現時点までの装着期間を計測する装着期間計測部67を有する。そして、噴射状態判定部64は、ある色のインクカートリッジ17について、装着期間計測部67によって計測された装着期間が所定期間以上である場合には、その色のインクを噴射するノズル列33に属する全てのノズル16を、異常ノズルと判定する。
【0099】
(変更形態12)
製造されたインクカートリッジ17が完全に密閉されていない場合に、製造時期の古いインクカートリッジ17においては、製造時点から時間が経過するに従ってインクの乾燥が進行し、粘度が高くなる。一方で、インクカートリッジ17にその製造時期を示すタグ等が設けられていると、プリンタ1側でインクカートリッジ17の製造時期を把握することが可能である。そこで、以下のように、インクカートリッジ17の製造時期に基づいて異常ノズルを判定することも可能である。
【0100】
即ち、図14に示すように、制御装置8が、装着されたインクカートリッジ17のタグ等から製造時期を検出する、製造時期検出部68を有し、噴射状態判定部64は、製造時期検出部68によって検出された製造時期から、装着されたインクカートリッジ17の製造時点からの現時点までの経過期間を求める。そして、噴射状態判定部64は、前記経過期間が所定期間以上である場合には、そのインクカートリッジ17のインクを噴射するノズル列33に属する全てのノズル16を、異常ノズルと判定する。
【0101】
(変更形態13)
一般的なインクジェットプリンタにおいては、常に全ての種類(色)のインクを使用するのではなく、一部のインクのみを使用して記録を行うモードを備えていることが多い。例えば、前記実施形態において、プリンタ1は、ブラックインクと、イエロー、シアン、マゼンタの3色のカラーインクを使用するものであるが、テキスト(文字)の記録を行う場合にはブラックインクのみを使用するテキスト記録モード(液滴噴射モード)を選択し、画像の記録を行う場合には、少なくとも3色のカラーインクを使用する画像記録モードを選択するように構成される。尚、この画像記録モードは外部装置であるPC70から入力されてもよいし、あるいは、PC70から入力された記録データからプリンタ1(制御装置8)側で適切なモードを選択してもよい。
【0102】
ここで、上記のように、使用するインクの種類が異なる複数の記録モードのうちから、1つの記録モードを選択して実行するプリンタにおいて、例えば、ブラックインクのみを使用するテキスト記録モードが多用された場合には、カラーインクのノズル列33の使用頻度が低くなり、これらノズル列33に属するノズル16内のインクの増粘が進行しやすくなる。そこで、噴射状態判定部64は、複数の記録モードのそれぞれの選択頻度から使用頻度の低い色のノズル列33を導き出し、そのノズル列33に属する全てのノズル16を異常ノズルと判定し、加熱手段で加熱するようにしてもよい。あるいは、使用頻度の高いノズル列33では気泡の混入が生じやすくなることもあるため、使用頻度の高い色のノズル列33を導き出し、上記とは逆に、この使用頻度の高いノズル列33に属する全てのノズル16を異常ノズルと判定してもよい。
【0103】
6]前記実施形態では、ノズル16の噴射不良を解消するパージとして、ノズル16側からインクを吸引して排出する吸引パージが挙げられているが、この吸引パージに代えて、複数の個別流路37の上流側に接続されたポンプ等によりインクを加圧することによって、複数のノズル16からインクを排出させる、いわゆる、加圧パージを採用することもできる(変更形態14)。この場合でも、異常ノズルの個別流路37のインクの粘度をパージ前に低下させておけば、ポンプ等による加圧力を低くしても異常ノズルの噴射不良を解消でき、且つ、他の正常なノズル16からのインクの排出量を少なくすることができる。
【0104】
以上説明した実施形態及びその変更形態は、記録用紙に画像を記録するインクジェットプリンタに適用したものであるが、画像記録以外の用途で使用される液滴噴射装置においても、ノズルの噴射不良という問題は生じ得ることから、液滴噴射装置の用途にかかわらず本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 インクジェットプリンタ
4 インクジェットヘッド
6 噴射状態検査ユニット
7 メンテナンスユニット
16 ノズル
17 インクカートリッジ
20 カートリッジ装着部
21 キャップ部材
23 吸引ポンプ
31 圧電アクチュエータ
33 ノズル列
34 圧力室
37 個別流路
41 圧電層
42 個別電極
46 活性部
47 ドライバIC
64 噴射状態判定部
66 記憶部
67 装着期間計測部
71 発熱体
72 発熱体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射する複数のノズルをそれぞれ含む、複数の個別流路を有する液滴噴射ヘッドと、
前記液滴噴射ヘッドの前記複数の個別流路に接続され、これら複数の個別流路内の液体にそれぞれ前記ノズルへ向かう流れを生じさせて、前記複数のノズルから同時に液体を排出させるパージを実行するパージ手段と、
前記複数のノズルのそれぞれについて、噴射不良が生じる異常ノズルであるか否かを判定する判定手段と、
前記複数の個別流路内の液体をそれぞれ加熱する加熱手段を備え、
前記加熱手段が、前記複数の個別流路のうちの、前記判定手段によって前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路を含む、一部の前記個別流路内の液体を加熱しつつ、前記パージ手段が、前記複数のノズルのパージを実行することを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路についてのみ、液体の加熱を行うことを特徴とする請求項1に記載の液滴噴射装置。
【請求項3】
前記液滴噴射ヘッドは、前記複数の個別流路内の液体に個別に噴射エネルギーを付与することにより、前記複数のノズルから選択的に液滴を噴射させるアクチュエータを備え、
前記パージ手段による前記パージを行う際に、前記アクチュエータは、前記異常ノズルと判定されたノズルの個別流路内の液体にエネルギーを付与することによって、この個別流路内の液体を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴噴射装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記個別流路内の液体を加熱するときには、前記ノズルから液滴を噴射させるときと比べて、液体に付与するエネルギーを小さくすることを特徴とする請求項3に記載の液滴噴射装置。
【請求項5】
各個別流路は、前記ノズルに連通する圧力室を有し、
前記アクチュエータは、各個別流路について前記圧力室を区画する壁部を変形させる圧電素子を有する圧電アクチュエータであり、
前記圧電素子に所定電圧の駆動パルス信号を印加する駆動装置を有することを特徴とする請求項4に記載の液滴噴射装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記異常ノズルの個別流路内の液体を加熱するときに前記圧電素子に印加する前記駆動パルス信号のパルス幅を、前記ノズルから液滴を噴射させるときの前記パルス幅とは異ならせることを特徴とする請求項5に記載の液滴噴射装置。
【請求項7】
前記駆動装置は、前記異常ノズルの個別流路内の液体を加熱するときに前記圧電素子に印加する前記駆動パルス信号の電圧を、前記ノズルから液滴を噴射させるときの前記駆動パルス信号の電圧よりも低くすることを特徴とする請求項5に記載の液滴噴射装置。
【請求項8】
前記複数のノズルの液滴噴射状態を個別に検出する噴射状態検出手段を有し、
前記判定手段は、前記噴射状態検出手段の検出結果に基づいて、前記複数のノズルのそれぞれについて、異常ノズルであるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液滴噴射装置。
【請求項9】
前記噴射状態検出手段による前記複数のノズルの液滴噴射状態検出の、過去の検出結果を記憶する記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記過去の検出結果に基づいて、前記異常ノズルの判定を行うことを特徴とする請求項8に記載の液滴噴射装置。
【請求項10】
前記記憶手段は、複数回の過去の検出結果を記憶しており、
前記判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記複数回の過去の検出結果から、噴射不良が検出された回数が所定回数以上であるノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とする請求項9に記載の液滴噴射装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記複数のノズルのそれぞれについて、前回のパージが終了してからの液滴噴射回数に応じて、異常ノズルか否かを判定することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液滴噴射装置。
【請求項12】
前記判定手段は、前記複数のノズルのそれぞれについて、液滴を噴射しない待機時間が所定の時間以上であるノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液滴噴射装置。
【請求項13】
前記液滴噴射ヘッドの前記複数のノズルは、複数種類の液体をそれぞれ噴射する複数のノズル群に区分され、
前記パージ手段は、前記複数のノズル群を構成する前記複数のノズルを共通に覆うように前記液滴噴射ヘッドに装着されるキャップと、前記キャップに接続された吸引手段を有し、前記吸引手段により前記キャップ内を減圧することによって、前記複数のノズルから前記キャップ内へ同時に液体を排出させる、吸引パージを実行するものであり、
前記判定手段は、1つの前記ノズル群単位で前記異常ノズルか否かの判定を行い、
前記加熱手段は、前記異常ノズルと判定された前記ノズル群に属する全てのノズルについて、前記個別流路内の加熱を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液滴噴射装置。
【請求項14】
前記複数種類の液体をそれぞれ貯留する複数種類の液体カートリッジがそれぞれ交換可能に装着される、複数のカートリッジ装着部を有し、
前記判定手段は、ある液体カートリッジが所定期間以上交換されていない場合に、その液体カートリッジの液体を噴射する前記ノズル群に属する全てのノズルを、前記異常ノズルと判定することを特徴とする請求項13に記載の液滴噴射装置。
【請求項15】
前記液滴噴射ヘッドは、使用する前記ノズル群が異なっている複数の液滴噴射モードのうちから、1つの液滴噴射モードを選択して実行するように構成され、
前記判定手段は、前回の吸引パージが終了してからの、前記複数の液滴噴射モードのそれぞれの選択頻度に応じて、前記複数のノズル群のそれぞれについて、前記異常ノズルか否かの判定を行うことを特徴とする請求項13に記載の液滴噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−206315(P2012−206315A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72241(P2011−72241)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】