説明

液滴組成物及びその製造方法、重合体組成物、並びに液滴組成物製造装置

【課題】液滴径が均一な液滴組成物を、強い攪拌動力や特殊なノズル等を必要とすることなく、高効率で製造する方法や、その製造に用いられる液滴組成物の製造装置等を提供する。
【解決手段】内部に均一な粒子径を有するビーズ10が充填された円筒管1の一方より、少なくとも1成分の油溶性の重合性単量体を含む油相20、及び水または水溶液からなる水相30を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的攪拌によらず製造され、液滴径が均一な水中油滴型の液滴組成物やその製造方法、並びにその液滴組成物を重合させて得られる重合体組成物、さらには液滴組成物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子状の重合体組成物は、様々な分野で利用されている。このような重合体組成物を製造する方法として、懸濁重合法等、水中油滴型分散組成物を経由する方法が実用化されている。
例えば、イオン交換樹脂の母体ビーズとして古くから使用されているスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の粒子は、通常、水性媒体中に疎水性のモノマー含有液を分散させて重合する懸濁重合により製造されている。しかしながら、懸濁重合法は、本質的にバッチ式反応であるため、量産化のためには反応容器を大型化する必要がある。また懸濁重合法により小径液滴を発生させるためには大きな攪拌動力が必要であり、さらに発生する液滴径が例えば図3に示すように多分散となることから、均一な粒子径を有する重合体組成物を得るためには、水相に分散された油相を重合後、篩等を用いて処理を行なう必要があった。
【0003】
そこで、重合に先立って、別装置で均一サイズのモノマー含有液滴を有する水中油型分散液を製造し、この分散液を重合容器中に仕込んで重合する方法が知られている。均一サイズの水中油型分散液を製造する方法としては、例えば、水を充満した容器の下部に上向きのノズルを設け、このノズルを通してモノマーを水中に供給することにより、モノマーの液滴を水中に分散する方法(特許文献1)が代表的であるが、このように加工されたノズルは一般的に高価であり、またこのような方法では、生産効率が低いという課題があった。また、この方法を工業的に実施するためには、多数の噴出孔を設けて分散液の発生を連続且つ効率的に行う必要がある。ここで、噴出孔の数が少ない場合には問題はないが、噴出孔の数が多くなり密集してくると、ノズルプレート中心部の噴出孔付近で放出されたモノマー含有液の放出流が左右に揺動し、その為、各噴出孔から水中に放出されるモノマーを一定状態で液滴とすることが難しく、均一サイズの液滴生成が出来なくなるという課題があった。
【特許文献1】特開昭49−55782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、液滴径が均一な液滴組成物を、強い攪拌動力や特殊なノズル等を必要とすることなく、高効率で製造する方法や、その製造に用いられる液滴組成物の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水相及び油相を均一な粒子径を有するビーズを充填した円筒内を通過させることにより、水相中に均一な液滴径で油相を分散させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明の要旨は、内部に均一な粒子径を有するビーズが充填された円筒管の一方より、少なくとも1成分の油溶性の重合性単量体を含む油相、及び水または水溶液からなる水相を供給することを特徴とする液滴組成物の製造方法に存する。
【0007】
この際、該油相及び該水相が同心円型ノズルを介して、該円筒管内に供給されることが好ましい。
また該重合性単量体がメタクリル酸エステルであることが好ましく、該重合性単量体がスチレン及び/またはジビニルベンゼンであることが好ましい。
また該水溶液がポリビニルアルコール水溶液またはポリビニルピロリドン水溶液であることが好ましい。
【0008】
本発明の別の要旨は、上述した液滴組成物の製造方法により得られる液滴組成物であって、該水相に分散された該油相の平均液滴径が3μm以上、200μm以下であり、該平均液滴径の90%以上、110%以下の範囲の液滴径を有する該油相の体積の合計が、該油相の全体積の30%以上であることを特徴とする液滴組成物に存する。
【0009】
本発明のさらに別の要旨は、上述した液滴組成物の製造方法により得られる液滴組成物の該重合性単量体を重合して得られることを特徴とする重合体組成物に存する。
【0010】
また、本発明の別の要旨は、油相及び水相の供給部を備えた円筒管を有し、該円筒管内部に均一な粒子径を有するビーズが充填されていることを特徴とする液滴組成物製造装置に存する。
上記液滴組成物製造装置においては、該円筒管の該油相及び該水相の供給部に、同心円型ノズルを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大規模な攪拌懸濁容器や、高価なノズル噴出設備を用いることなく効率よく、水相中に均一な液滴径の油相が分散された液滴組成物を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に例示する物や方法等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
【0013】
1.液滴組成物の製造方法
本発明の液滴組成物の製造方法は、内部に均一な粒子径を有するビーズが充填された円筒管の一方より、少なくとも1成分の油溶性の重合性単量体を含む油相、及び水または水溶液からなる水相を供給することにより、該円筒管の他方から液滴組成物を得ることを特徴とする。なお、本発明でいう液滴組成物とは、水相中に油相が液滴状で含まれている組成物とする。
【0014】
本発明の液滴組成物の製造方法に用いられる製造装置の一例を図1に示し、これに基づき説明する。なお、本発明の製造方法に用いられる製造装置は図1に示されるものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
内部に均一な粒子径を有するビーズ10が充填された円筒管1の一方から、油相20及び水相30を供給する。これにより、円筒管1内に供給された油相20がビーズ10間を通過する際に水相30中に分散されることとなり、水相30中に均一な液滴径で油相20が分散された状態の液滴組成物40が円筒管1の他方から得られる。なお、円筒管1は通常、地面に対して垂直に配置される。また油相20及び水相30の供給方向には特に制限がなく、円筒管1の下方からであってもよく、また上方からであってもよいが、通常、油相20と水相30との比重に応じて決定される。例えば油相20が水相30に対して軽い場合には、円筒管1の下方から油相20及び水相30を供給することが好ましく、油相20が水相30に対して重い場合には、円筒管1の上方から油相20及び水相30を供給することが好ましい。すなわち、油相20が軽い場合には上向流とし、油相20が重い場合には下降流とすることが好ましい。これにより、円筒管1の外に吐出された油滴が沈降或いは浮上によって円筒管1方向に逆流することを防止することができる。
【0015】
(円筒管)
本発明に用いられる円筒管1は、ビーズ10を充填することが可能であれば、その材質や形状等に特に制限はない。
円筒管1の材質としては、供給される水相30や油相20に対して化学的に安定なものであれば特に制限はなく、例えばガラス管、ステンレス管、セラミック管、合成樹脂管等を用いることができる。中でも汎用性や加工性、化学的安定性等の面から、ガラス管及びステンレス管が好ましい。
【0016】
また、円筒管1の形状としては、円筒管1内にビーズ10を固定するために、通常ビーズを充填する領域の両端に網、またはフィルターを装着できる構造とすることが好ましい。また円筒管1の一方の端は、油相及び水相を供給するためのノズル103等と接続され、他方の端は、油相が水相中に所定の液滴径で分散された液滴組成物を排出するためのノズル104等と接続される。
【0017】
また円筒管1の内径は、製造する液滴組成物の量、送液速度、充填床内線流速等に応じて適宜選択されるが、通常、使用するビーズ10の平均粒子径の10倍以上とすることが好ましく、より好ましくは25倍以上である。
また円筒管1の長さとしては、水相30中への油相20の分散に十分な長さであれば特に制限はない。前述の円筒管1の内径、送液速度等に応じて適宜選択されるが、通常、使用するビーズ10の平均粒子径の10倍以上が好ましく、100倍以上がより好ましい。
【0018】
(ビーズ)
また、円筒管1に充填するビーズ10としては、均一な平均粒子径を有するものであれば、その材質等に制限はなく、市販のガラス球、ステンレス球、セラミック球等を用いることができる。上記ビーズ10の平均粒子径としては、通常0.01mm以上、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上である。また通常5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下である。上記平均粒子径は市販の粒度分布計によって測定され、数平均値径として算出されるものである。
【0019】
またビーズ10の平均粒子径の均一度は、変動係数が3%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。変動係数が大きいとビーズ10の充填により形成される液流路の形状が不均一となるため、分散される油相20の液滴径の分布が不均一となる可能性がある。なお、上記変動係数は上記粒度分布を測定し、平均値径(dp)と標準偏差(σ)の比σ/dpにより算出される値である。
【0020】
また本発明においては、円筒管1全体にビーズ10を充填してもよく、また円筒管1の一部のみにビーズ10を充填してもよい。
【0021】
(油相)
油相20の種類としては、油相20が水相30中に所定の液滴径で分散された後、重合性単量体が未重合のままで油相20の液滴成分が使用されるものであってもよいが、通常、重合性単量体を重合させて固形粒子(重合体組成物)とした後、これらが使用されるものであることが好ましい。
上記円筒管1内へ供給する油相20としては、少なくとも1成分の重合性単量体を含むものであれば、その種類等に特に制限はない。
【0022】
重合性単量体としては、例えばラジカル重合性単量体や重縮合性化合物等を含有するものとすることができ、中でもラジカル重合性単量体が好ましい。
重縮合性化合物としては、例えばポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物等が挙げられる。
【0023】
ラジカル重合性単量体としては、重合可能な反応基(例えば、エチレン性不飽和結合等)を有するものが挙げられる。このようなラジカル重合性単量体の種類は特に制限されないが例えば以下のものが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
例えばスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン及びその誘導体;ジビニルベンゼン(中でもm−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン)等のポリビニル芳香族化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の有機酸ビニルエステル類;メタクリル酸や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、ジメタクリル酸グリシジル、ジメタクリル酸エチレン、トリメタクリル酸トリメチロール等のメタクリル酸エステル等のメタクリル酸及びその誘導体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸及びその誘導体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
中でも、重合性単量体としては、実用性・実効性という観点からジメタクリル酸エステルやスチレン、ジビニルベンゼン及びこれらの誘導体が好ましい。
【0024】
ここで、本発明の液滴組成物は、後述するとおり、重合性単量体を重合させて重合体組成物とし、イオン交換樹脂を製造する場合がある。この場合、例えばスチレン、およびジビニルベンゼンを重合性単量体として用いる場合は、全重合性単量体重量に対するジビニルベンゼンの含有量は、通常2重量%以上であり、好ましくは4重量%以上、また、通常85重量%以下である。
【0025】
また油相20は、重合性単量体と混和するが重合反応には寄与しない非反応性単量体や非反応性高分子等を含有していてもよい。
油相20中に含有可能な非反応性単量体としては、ヘキサン、へプタン、イソオクタン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジメチルなどのエステル類を1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0026】
また非反応性高分子としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどが他の油相成分との相溶性に応じて加えられる。
【0027】
さらに油相20には、油相20に混和して重合性単量体のラジカル重合を触媒する重合開始剤等を加えてもよい。
【0028】
(水相)
水相30の成分としては通常、水、または水溶液が用いられる。水相30は通常、重合性単量体等を含む油相20と混和せず、油相20を液滴としてその中に分散させ得るのに適当な不活性液体とされる。
通常、水相30には分散安定剤が含まれ、これらは水相成分の種類や組成、量等により適宜選択する。このような分散安定剤の代表的な例としては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、でんぷん、ポリアクリルアミド、ポリ(ジメチルジアリル)アンモニウムクロリド、水不活性無機化合物、例えばケイ酸マグネシウム、並びにセルロースエーテル類、例えばカルボキシメチル−メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの分散安定剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。ただし、発生した油相液滴を合着、破砕することなく粒径の均一性を保持するためには、油相20の物性との相関により、水相成分の種類及び分散安定剤の濃度を決定する。
【0029】
本発明において、水相30をポリビニルアルコール水溶液、またはポリビニルピロリドン水溶液とすることが、分散性の安定の面から好ましい。ポリビニルアルコール水溶液、またはポリビニルピロリドン水溶液の濃度は通常0.1重量%以上であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。また通常15重量%以下とする。
なお、水相30には、油相20に不溶の塩類等を含有させてもよい。
【0030】
また上記円筒管1に供給する際の水相30の体積量としては、上記油相20の体積量に対して通常0.5以上、好ましくは1以上であり、また通常10以下、好ましくは5以下である。
【0031】
(油相及び水相の供給)
油相20及び水相30の円筒管1への供給方法としては、上記円筒管1の同一方向から供給可能な方法であれば特に制限はない。例えば水相30を予め円筒管1内に充満させておき、その後、油相20及び水相30を円筒管1に供給してもよい。
また油相20及び水相30の混合のタイミングも特に制限はなく、例えば図1に示すように、T字管等により、油相20及び水相30を混合してから円筒管1へ供給してもよく、また油相20及び水相30を、それぞれ異なるノズルから円筒管1内へ供給してもよい。本発明においては、特に、同心円状の2層ノズルを用い、該ノズルの内層から油相20を供給し、外層から水相30を供給することが好ましい。これにより、油相が円筒管の壁を伝って管内の流速分布が不均一になることを防止することができる。
【0032】
また同心円状のノズルを用いる場合、同心円状のノズルの外側の管の内径より、円筒管1の内径が大きいものとすることが好ましい。これにより円筒管壁の油相流れをより効果的に防止することができる。
【0033】
また、図1の態様では、油相20はペリスタポンプ101によって送液し、水相30はプランジャーポンプ102によって送液しているが、油相20及び水相30の送液方法はこれらに限定されず、目的とする速度で円筒管1内に送液可能であれば任意の方法とすることができる。
【0034】
また、油相20及び水相30は、混合される前にそれぞれ温度調節されていることが好ましい。なお、混合時の油相20及び水相30の温度は異なっていていてもよいが、通常同じ温度が好ましい。円筒管に供給される際の油相及び水相の温度としては、重合開始剤が実質的に重合反応を起こさない温度であればよく、通常油相20及び水相30の凝固点以上が好ましい。また油相20及び水相30の沸点以下であることが好ましい。これにより油相20及び水相30の粘度を一定に保ち、水相30中での油相20の液滴の分散性を安定化させることができる。油相20及び水相30の温度調節の方法としては特に制限はなく、油相20及び水相30の貯槽の温度をそれぞれ調節してもよく、また油相20及び水相30を供給するための送液管の温度等をそれぞれ調節してもよい。
【0035】
また、上記円筒管1の一部、または全体の温度を温度調節してもよい。円筒管1の温度を調節する方法としては、例えば円筒管1の外部にジャケットを配置する方法等とすることができる。
【0036】
(その他)
本発明においては、液滴組成物40を円筒管1から排出した後、水相中に分散された油相20中の重合性単量体を重合させる処理や、その他、必要な処理を適宜行なってもよい。なお、重合性単量体を重合させる処理については、重合体組成物の欄で説明する。
【0037】
2.液滴組成物
本発明の液滴組成物は、上記液滴組成物の製造方法により製造されたことを特徴とし、水相中に均一な液滴径の油相が分散されているものである。
【0038】
本発明によれば、上記製造方法により製造されていることから、油相が水相中に均一な液滴径で分散されているものとすることができる。したがって、油相を取り出し、そのまま、もしくは重合等させて重合体組成物として用いる際に、粒径を揃えるための処理等が必要のないものとすることができる。
【0039】
液滴組成物中の油相の平均液滴径は、通常3μm以上である。また通常200μm以下である。上記平均液滴径は、粒度分布計で測定され、重心(体積50%)径として算出される。
【0040】
また、上記平均液滴径の90%以上、110%以下の範囲の液滴径を有する該油相の体積の合計が、該油相の全体積の通常30%以上であり、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。これにより、液滴組成物をそのまま、もしくは重合体組成物とした際に、粒子径を揃えるための処理等の必要性が少ないものとすることができる。上記液滴径の分布の測定は、粒度分布計により行うことができる。
【0041】
上記液滴組成物の用途としては、例えば油相中の重合性単量体を重合させて重合体として利用できる。
【0042】
3.重合体組成物
また本発明の重合体組成物は、上記液滴組成物の重合性単量体を重合させたことを特徴とするものである。
上記液滴組成物の油相中の重合性単量体を重合させる方法としては、特に制限はなく、例えば一般的な重合性単量体の重合方法と同様とすることができる。例えば上記液滴組成物を加温によりラジカル開始剤の分解を促進してラジカル重合させる場合は、適当な反応温度に加温することによって重合させることができる。
【0043】
4.液滴組成物製造装置
また、本発明の液滴組成物製造装置は、油相及び水相の供給部を備えた円筒管を有し、該円筒管内部に均一な粒子径を有するビーズが充填されていることを特徴とする。
【0044】
本発明の液滴組成物製造装置の一例を図1に示す。液滴組成物製造装置は、油相20及び水相30を供給する供給部103を備えた円筒管1を有するものであり、円筒管1の内部には、均一な粒子径を有するビーズ10が充填されている。
上記液滴組成物製造装置は、図1に示された以外の装置や部材等と接続されていてもよく、例えば油相20の貯槽120や、この貯槽120と円筒管1との間に設けられるペリスタポンプ101、水相20の貯槽130や、この貯槽130と円筒管1との間に設けられるプランジャーポンプ102等を有するものであってもよい。またさらに、例えば円筒管1から排出された液滴組成物40を重合するための重合装置等が円筒管1と接続されているもの等であってもよい。
【0045】
なお、本発明において、上記油相20及び水相30を円筒管1へ供給する方法について特に制限はないが、油相20及び水相30を同心円状のノズルにより供給することがより好ましい。これにより、油相が円筒管の壁を伝って管内の流速分布が不均一になることを防止することが可能となる。
上記液滴組成物製造装置に用いられる円筒管1、ビーズ10や、油相20及び水相30の供給方法や供給に用いられる同心円状のノズル、その他の構成等についても、上述した液滴組成物の製造方法で説明したものと同様とすることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
長さ50mm,内径10mmのガラス円筒管に平均径100μm(変動係数17%)のガラスビーズを充填し、両端をサランネットで固定して内径2mmのテフロン管に接続した。ポリビニルアルコール5gを含む脱塩水100mL(水相)を円筒管下部より流速1.5mL/分で供給して管内を満たし、25℃に保温した。
メタクリル酸グリシジル70g、ジメタクリル酸エチレン30g、トルエン100gを混合し、アゾビスイソブチロニトリル1gを溶解した液(油相)を25℃に保温して流速0.5mL/分で円筒管下部より供給して、円筒管上部から液滴組成物を得た。液滴組成物を70℃で5時間加温して反応させて得られた重合物は平均径62μm、平均径の90%乃至110%の粒子径範囲に50%の粒子が含まれていた。得られた液滴組成物の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0048】
[実施例2]
油層1の組成を,メタクリル酸グリシジル50g、ジメタクリル酸エチレン50g、トルエン100g、ポリスチレン10g、アゾビスイソブチロニトリル1gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い重合物を得た。平均径66μm、平均径の90%乃至110%の粒子径範囲に58%の粒子が含まれていた。
【0049】
[実施例3]
水相としてポリビニルアルコール1gを含む脱塩水を円筒管下部より流速2.5mL/分で供給して管内を満たし、25℃に保温した。油相として、純度55%のジビニルベンゼン(他はエチルビニルベンゼン)100gにトルエン150g、ポリスチレン30g、過酸化ベンゾイル1gを溶解した液を25℃に保温して流速0.5mL/分で円筒管下部より供給して、円筒管上部から液滴組成物を得た。これを80℃まで加熱して8時間反応させ、重合物を得た。平均径52μm、平均径の90%乃至110%の粒子径範囲に50%の粒子が含まれていた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の液滴組成物の製造方法によれば、均一な液滴径を有する油相が水相中に分散された敵液組成物を効率的に、かつ高価なノズル等を用いることなく製造することが可能である。したがって、イオン交換樹脂の基体となるポリマーや、合成吸着剤等の製造分野において好適に用いること等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の液滴組成物の製造方法に用いられる装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例1により製造された液滴組成物の電子顕微鏡写真である。
【図3】従来の懸濁重合法により製造された液滴組成物中の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0052】
1:円筒管
10:ビーズ
20:油相
30:水相
40:液滴組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に均一な粒子径を有するビーズが充填された円筒管の一方より、少なくとも1成分の油溶性の重合性単量体を含む油相、及び水または水溶液からなる水相を供給する
ことを特徴とする液滴組成物の製造方法。
【請求項2】
該油相及び該水相が同心円型ノズルを介して、該円筒管内に供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の液滴組成物の製造方法。
【請求項3】
該重合性単量体がメタクリル酸エステルである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液滴組成物の製造方法。
【請求項4】
該重合性単量体がスチレン及び/またはジビニルベンゼンである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液滴組成物の製造方法。
【請求項5】
該水溶液がポリビニルアルコール水溶液またはポリビニルピロリドン水溶液である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴組成物の製造方法により得られる液滴組成物であって、該水相に分散された該油相の平均液滴径が3μm以上、200μm以下であり、該平均液滴径の90%以上、110%以下の範囲の液滴径を有する該油相の体積の合計が、該油相の全体積の30%以上である
ことを特徴とする液滴組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴組成物の製造方法により得られる液滴組成物の該重合性単量体を重合して得られる
ことを特徴とする重合体組成物。
【請求項8】
油相及び水相の供給部を備えた円筒管を有し、該円筒管内部に均一な粒子径を有するビーズが充填されている
ことを特徴とする液滴組成物製造装置。
【請求項9】
該円筒管の該油相及び該水相の供給部に、同心円型ノズルを備える
ことを特徴とする請求項8に記載の液滴組成物製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24374(P2010−24374A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188497(P2008−188497)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】