説明

液滴製造装置

【課題】商業的生産規模で均一粒径液滴を製造する装置を提供する。
【解決手段】液体導入口13と、液体を噴出する孔を有するオリフィスプレート3と、振動発生機2を振動伝達軸10で接続することによって圧力振動を直接オリフィスプレート3に伝達させるとともに、振動伝達軸10と接続した加圧室17内の圧力を調整して振動発生機2にかかる負荷を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一粒径の液滴を製造する液滴製造装置に関し、更に詳しくは、特に商業的生産規模(大規模)において均一な大きさの小粒径の液滴製造に好適な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
均一粒径の液滴を製造するためには振動法が有効であることは良く知られている。この振動法によって液滴を均一に製造する場合に、商業的生産規模で製造するには、孔数を増やす(例えば1000ホール以上)ことが最も簡便な解決策であり、そのためにはオリフィスプレートを大きくする。
【0003】
小粒径の液滴を振動法で製造するには、振動周波数を3000Hz以上の高い周波数の圧力振動をオリフィスからの噴流を液滴化するために、必要な強度を、均一に、しかも安定に液相中に伝播させることが要求される。高周波数振動波を液相中に圧力伝播させる方法では、オリフィスからの噴出流を液滴化するのに十分な強度を得ること、大きなオリフィスプレート全域に均一にかつ安定に伝播させることは非常に困難で、均一な粒径の液滴が得られにくい。大きなオリフィスプレートをもちいる場合、強い強度の大きな加振機を用いることが考えられるが、装置が大変大きなものとなるため、オリフィスプレートを用いた場合でも小さな加振機を用いて生産することが望まれていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、小型の加振機を用いた商業的生産規模の均一粒径液滴を製造する装置が開示されている。
【0005】
この文献では、振動発生機からの振動を伝達軸を介して液相室内に設置した振動隔壁(振動板)に伝達し、オリフィスプレート迄の液相中に圧力振動を伝播させ、オリフィスからの噴出流を切断して均一な大きさの液滴を製造するものである。
【0006】
一方、振動周波数を均一に伝播させると言う観点では、オリフィスプレートと振動発生機を振動伝達軸で接続し、振動させる部分を液相ではなくオリフィスプレートに限定させることにより、小さな加振力で効率良く液滴径の揃った液滴を製造する装置を提供するものがある(例えば特許文献2参照)。
【0007】
この文献のように7ホールと孔数が少ない場合にはオリフィスプレートが小さく、膜やベローズを横方向(オリフィスプレートと平行)に設置してもその強度に問題は発生しないが、孔数が増加してオリフィスプレート径、重量が大きい場合には、膜強度が不足して実用化できない。また強度をアップさせても、その膜やベローズが振動を乱すために実用化できない。
【0008】
このように、孔数が1000ホール以上のオリフィスプレートを持つ商業的生産規模の液滴製造装置においてオリフィスプレートを振動させる装置構造に関する先行事例はない。
【特許文献1】特開平5−345125号公報
【特許文献2】特開昭58−104653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これらの課題を解決して、均一粒径の液滴を商業的規模の均一粒径液滴を製造する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題に鑑みて鋭意検討した結果、液体を噴出する孔を有するオリフィスプレートと振動発生機を振動伝達軸で直接接続し、プレートを支え、かつ振動を乱さないためにオリフィスプレート外周部にベローズを垂直方向に設置して用い、さらにオリフィスプレート、容器壁とベローズで囲まれた室を振動伝達軸と固定し、室内の圧力を加圧することによってプレート重量と液滴を噴出すべきスラリー室からかかる液ヘッド圧力等に抗することができ、振動発生機にかかる重量負荷を軽減できる装置を考案した。
【0011】
それによって高周波数の圧力振動を小さな振動力でオリフィスプレートに直接、均一安定に伝播させることができ、前記課題が解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明の第1は、液滴対象液を噴出する孔を有するオリフィスプレート、容器、振動発生機、振動伝達軸、オリフィスプレート、3つのベローズ、液体導入口、圧力導入口を備えてなる液滴製造装置にあって、オリフィスプレートと振動伝達軸と固定し、第2のベローズと第3のベローズと容器壁から構成される加圧室内を加圧することを特徴とする液滴製造装置に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、
(1)オリフィスプレートの外周部を第1のベローズで支持することを特徴とする、
(2)第1のベローズをオリフィスプレートに垂直方向に設置してなる、
(3)オリフィスプレート、第1のベローズと容器壁により構成される液体室、第2のベローズと容器壁と第3のベローズによって囲まれた加圧室を備えることを特徴とする、
(4)第2のベローズ、第3のベローズと容器壁で囲まれた空間内の圧力を自在に調整することを特徴とする、
(5)振動発生機を密閉空間外に設置することを特徴とする、
本発明の第2は、前記記載の液滴製造装置によって製造される液滴に関し、本発明の第3は、前記記載の液滴が重合性単量体を含んでなり、該液滴から得られることを特徴とするポリマービーズに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液滴製造装置によれば、振動板などを介して液相中に圧力振動を伝播させる従来の方法と比較して、高周波数の圧力振動を大きい強度で、均一、かつ安定にオリフィスプレートに直接伝播させることができる。
【0015】
また、液滴を噴出するスラリー室からかかる液ヘッド圧力、オリフィスプレート重量、オリフィスプレート下の液圧力等の圧力や重量負荷に応じて、それらに抗する加圧室内の圧力を自在に調整し、バランスをとることができる。
【0016】
それによって、振動発生機にかかる負荷を殆どなくすことができる為、小型の振動発生機であっても商業的生産規模のオリフィスプレートを用いることが可能となり、小粒径液滴を均一に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の液滴製造装置を示す概略断面図であり、液体中に液滴を発生する装置の一例である。
【0019】
本発明の液滴製造装置は、液滴対象液を噴出する孔を有するオリフィスプレート、容器、振動発生機、振動伝達軸、オリフィスプレート、3つのベローズ、液体導入口、圧力導入口で構成される。
【0020】
本液滴製造装置は以下のような特徴を有する。
【0021】
液滴対象液を噴出する孔を有するノズル4を設けたオリフィスプレート3は振動伝達軸10で振動発生機2と接続され、直接振動を伝達できる。
液体室14は、第1のベローズ、オリフィスとプレートと容器底部とからなり、液滴対象の液体導入口13を備えている。第1のベローズ7は、その一端がオリフィスプレート3の外周部と垂直方向に接続され、他端は容器底部と垂直方向に接続されている。この様な構成とすることで、容器1底部に振動を伝えない構造であると共に、オリフィスプレートの重量を支える構造となっている。
本発明の液滴製造装置においては、第1のベローズ7とは異なる、第2のベローズ8と第3のベローズ9と容器1底部によって囲まれた加圧室17を備えている。第2のベローズ8、第3のベローズ9の一端は、容器底部に固定されており、第2のベローズ8、第3のベローズ9の容器1底部と固定しない他端は振動伝達軸と固定されている。さらに、この加圧室17は、圧力導入口16を備え、加圧室内の圧力を自在に調整することができるようになっている。
【0022】
以下詳細に説明する。
【0023】
オリフィスプレート3には、液滴対象液を噴出させるための多数の孔が設けられたノズル4が2以上取り付けられる。
【0024】
商業的生産規模で液滴を製造する装置の場合、全孔数は1000個以上が好ましく、例えば、孔径0.17mmのノズルを用いて月産120トン以上の液滴を製造する場合の全孔数は1000個以上、孔径0.1mmのノズルを用いて月産120トン以上の液滴を製造する場合の全孔数は3000個以上を必要とする。
【0025】
振動発生機2は好適なものとして動電型振動発生機が例示できる。振動発生機の能力は形成する液滴の条件によって異なるが、本発明の場合は、例えば0.1mmのオリフィス孔を3400個設けたオリフィスプレート3を用いて、スチレンの液滴を月産120トンで製造する場合においても、僅かに50Kgfの加振力で十分である。これは、以下に説明する特殊な振動伝達方法によってもたらされるものである。
【0026】
オリフィスプレート3を振動発生機2と振動伝達軸10で接続し、直接振動を伝達できる構造にしたのは、小粒径液滴、特に直径200μm以下の液滴を商業的規模で均一に製造する為に必要な振動周波数2000Hz以上の高周波数領域の圧力振動を大きい強度で、均一にかつ安定にオリフィスプレートに伝播させる為である。
【0027】
オリフィスプレート3を振動発生機2と振動伝達軸10で接続した場合、振動を容器に伝えないこと、液体室を備えること、振動発生機にかかる種々の圧力や重量の負荷を支えることの条件を満たす必要があるため、第1のベローズ7を採用し、オリフィスプレートに垂直方向に設置した。
【0028】
ベローズ7〜9は、振動を吸収する蛇腹状のものが好ましい。特に、ステンレスなどの金属成形ベローズが好ましい。
【0029】
さらに、第1のベローズ7だけでは振動発生機にかかる種々の圧力や重量の負荷を支えることは困難な場合がある為、加圧室17を設け、振動伝達軸と固定して、負荷を軽減させる構造とした。
【0030】
振動発生機にかかる負荷としては、容器1内の液体ヘッド圧、オリフィスプレート3の重量、液体室14内の液のヘッド圧と導入圧力、振動伝達軸10の重量などがある。
【0031】
加圧室17は、第2のベローズ8と第3のベローズ9と容器1底部によって囲まれ、圧力導入口16を備え、空気、窒素ガスや炭酸ガス等の不燃性ガス又は不活性ガスの単独又はそれらの混合ガスなどの気体を圧入して用いることができる。
【0032】
加圧室17内の圧力は前記負荷に応じて、振動発生機2に重量がかからないように設定することができる。すなわち、振動発生機の振動板の位置高さが、振動伝達軸と接続しない場合の位置高さに常時コントロールされることが望ましい。
【0033】
また、加圧室17は、前記液滴対象の液体室14外にあっても、内にあってもよい。例えば、図2は、加圧室17が前記液滴対象の液体室14の内にある場合を示している。
【0034】
振動発生機2で発生した振動は、直接振動伝達軸10を介してオリフィスプレート3状に設置されたノズル4に伝達される。
【0035】
液滴対象液は、液体導入口13を通じ、流量調節装置(図示せず)を経由して所定の流量で液体室14に導入され、充満した液滴対象液はオリフィスプレート3に設置したノズル4のオリフィス孔から出た噴出流の液柱5表面に表面波を形成する。一定振動の表面波によって液滴対象液の噴出流が切断され、均一な大きさの液滴6が生成される。
【0036】
噴出流の液柱5に伝播される振動は、オリフィスプレート3に設置された振動加速度センサー(図示せず)で測定される加速度を所定の値になすように調節される。加速度の所定の値は、加速度センサーの出力を振動発生機2の制御器(図示せず)にフィードバックして振動発生機の加速度を自動調節するか、手動で加速度センサーの出力が所定の値になるように振動発生機の加速度を調節する方法等により設定される。
【0037】
液滴の大きさは通常0.05〜5mmが好ましく、特に0.3mm以下の小粒径の均一液滴が望ましい。振動の周波数は約100〜10000Hzを用いることが好ましい。前記範囲より小さな液滴の場合には10000Hzを超えて、または前記範囲より大きな液滴の場合には100Hz未満の周波数であってよい。
【0038】
液滴対象液の所定の流量とは、孔から噴出する液滴対象液の液柱が層流状態で噴出する流量であって、液滴対象液の密度ρ、粘度μ、液滴対象液の液柱の直径d(概ね孔の直径に等しい。)と噴出流速uで表される無次元数Re=ρud/μが10から2000になる噴出速度を与える流速である。
【0039】
例えば、孔の孔径がd=0.17mmの場合は噴流速度u=180cm/secが選ばれ、d=0.1mmの場合は噴流速度270cm/secが選ばれる。液滴対象液の流量は、例えば液滴対象液の流量計とフィードバック回路で接続された調節弁又は液滴対象液の供給ポンプの回転数等によって調節される。
【0040】
本発明で使用される液滴対象液は特に限定されず、有機溶剤、水溶液、重合性単量体、微細なエマルジョンやサスペンションも含まれる。中でも重合性単量体やその混合物を用いることが望ましい。この重合性単量体としては公知のものが使用できるが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン等のスチレン及びその誘導体類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン等のポリビニル芳香族化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ブチル、フッ化ビニル等のハロゲン化エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸グリセロール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸及びその誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ポリエチレングリコール、トリアクリル酸ペンタエリスリトール等のアクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸アリル、アリルグリシジルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタリン類、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド類等の重合性単量体が挙げられる。これらは単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0041】
さらに液滴対象液は、重合性単量体と、重合開始剤、非重合性液体、線状ポリマー、固体微粒子等との混合物であっても良い。
【0042】
例えば、重合性単量体を含み、必要に応じて非重合性液体、線状ポリマー、重合開始剤等を含んだ混合物を液滴対象液に使用し、得られた液滴を重合することにより、ポリマービーズを得ることができる。
【0043】
この場合、重合性単量体は架橋ポリマーを生成しうる重合性単量体を少なくとも1つ含むのが望ましく、例えば上記例示のものが使用できる。中でも、スチレン及びその誘導体類、カルボン酸のビニルエステル類について好適に用いることが出来る。
【0044】
非重合性液体としては、特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、ヘプタン、オクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アルコール類、アセトン、水等を目的に応じて単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0045】
線状ポリマーについても特に制約はないが、例えば上記例示の重合性単量体単位を含む線状ポリマーがあげられる。なお、液滴対象液に固体微粒子が含まれる場合は、固体微粒子の粒子径は分散相が噴出させられる孔より小さいことが好ましい。
【0046】
重合開始剤には公知のものを使用でき、また使用される重合性単量体に応じて選ぶことが好ましい。例えば、ラウロイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、イソブチル−t−ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのような有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビストリメチルペンタン、アゾビスシアノバレリアン酸などのアゾ化合物、過硫酸塩、過酸化水素、又はハイドロパーオキサイド等の水溶性ラジカル重合開始剤が使用でき、またこれらを併用しても何ら差し支えない。なお、重合開始剤は、液滴対象液に直接混合しても良い。
【0047】
本発明装置は互いに難溶性の2液体を用い、一方の液体中に他方の液体の液滴を形成させ、液滴スラリーを形成する装置であり、互いに難溶性の液体を用いて一方の液体(この場合は、他方より比重が等しいか又は大きい。)中に他方の液体(この場合は、他方より比重が等しいか又は小さい。)の液滴を形成する装置である。
【0048】
上記装置においては、液体供給口11から供給され、容器1内のスラリー室15に充満する液体中に、上記した操作により、スラリー室15に充満している液体に対して難溶性の液滴対象液を液体導入口10より導入して液滴を製造し、液滴を含むスラリーを排出口13より回収する。
【0049】
スラリー室15に充満させる液体(連続相)としては、液滴対象液(分散相)に対して難溶性であれば特に限定はなく、連続相に用いる溶媒は特に限定されないが、例えば水や水溶液が経済的で環境負荷が小さく好ましい。また連続相には分散剤や塩類を含有させてもよい。
【0050】
分散剤は、懸濁重合で一般に使用されるものを用いることができ、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の高分子分散剤、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の連続相に難溶な無機塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル類を用いることができる。また、分散剤として連続相に難溶な無機塩を用いる場合には、α−オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン界面活性剤を併用するのが好ましい。
【0051】
以下、オリフィスプレート3とノズル4について記述する。オリフィスプレート3の形状は角形、円形等、任意の形状であってよく、オリフィスプレート3に設置するノズル4の配置も任意の位置に設置してよい。
【0052】
商業生産規模で均一粒径の液滴を製造するためのプレート3の大きさは約200〜約3000mmの大きさが望ましい。これ以上大きくなると、ノズル設置作業等のメインテナンス負荷が大きく、時間もかかる上、経済性において極めて不利であることが多い。
【0053】
図1の構造を持つ液滴製造装置の場合、液体供給口11から供給される容器1内のスラリー室15に充満する液体(分散剤)がプレート中心部まで均一にいきわたるためには容器1は円筒形、プレート3は円形板が望ましく、ノズルは中心円周上で一定間隔に配置することが望ましい。プレートに配置するノズル配列は何列あっても良い。
【0054】
ノズル4を取り付ける位置にはノズル4の大きさに合った貫通穴(以下、ノズル穴と記す。)が必要な数だけあけられている。
【0055】
ノズル4をプレート3に設置する場合、ボルト締め付けによってプレート3とOリングを挟み込んで固定され、内部の液体が漏れないようにシールされる。ノズル4には2個以上の孔が設けられ、隣接する孔から噴出する液体の相互作用により、液滴の均一性が乱されないような数と配列になっている。
【0056】
ノズル4の形状は円形や角型などの任意形状の平板、円形や角型部を凸型にしてその周囲にフランジを付けた形状等、どんな形状でも良い。ノズルは孔詰まりを取り除くための洗浄、孔修理をするためには概ね10mm以上300mm以下の径を有することが、取り扱い易く、望ましい大きさであり、更には30〜100mmが好ましい。
【0057】
ノズルに付与する孔の数は特に限定はなく、所望とする生産規模に応じて適宜選択することが出来るが、1つのノズルには、ノズルの大きさにもよるが、概ね2以上1000以下の孔を有していることが好ましく、更に好ましくは、30以上500以下であることが好ましい。
【0058】
本発明の液滴製造装置を用いて製造した液滴は、粒子径が均一であることが好ましい。その均一性は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、最も好ましくは95%以上である。
【0059】
ここで本発明における均一性とは、得られた液滴を実体顕微鏡で拡大撮影し、少なくとも100個以上の液滴を画像処理して液滴径を測定し、目標粒子径の±5μmの粒径範囲内に含まれる液滴の重量%で表した値である。
【0060】
また、重合性単量体を含んでなる本発明の液滴から得られたポリマービーズもまた良好な均一性を有するものである。
【実施例】
【0061】
次に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
各例における液滴の均一性は、回収したスラリーを密閉ガラスセルにサンプリングし、実体顕微鏡で拡大撮影し、画像処理して液滴径を測定した。測定個数は測定精度を上げるため多数測定する方が望ましい。その液滴を重量換算して目標粒径の±5μm範囲内に含まれる液滴の重量%で評価した。目標の均一性は98%以上と設定した。
【0063】
(実施例1)
図1と同じ装置構成の商業規模で2種類の液体よりなる液滴スラリー製造装置を用いた。スラリー室15は内径950mm、高さ2160mmのものを使用した。
オリフィスプレート3は径509mmとし、23個のノズル4を取り付ける構造となっており、ノズル設置場所には内径40mmのノズル穴を備えている。
【0064】
ノズルはプレートとOリングでシールし、ボルトで4点締めして取り付ける。ノズルは外形70mm(フランジ部幅15mmを含む)、径36mm内に孔を開けることができる。ノズルは内径0.04mmの孔を331個有し、孔から噴出する液体の相互作用によって液滴の均一性が乱れないように配列した。
このノズルをプレートに23個設置して使用した。全孔数は7613個である。
【0065】
スラリー室に191リットル/時のPVA水溶液(PVA濃度は320ppmの希薄なもの)を供給しておき、液体導入口から172リットル/時のスチレンを供給し、加振機で6000Hzの振動を与えてO/W型の水溶液/スチレン液滴スラリーを製造した。
【0066】
必要な強さの加振を与えることにより、98%以上の割合で粒子径120μmの均一なスチレン液滴を得た。
【0067】
(比較例1)
図3と同じ装置構成の商業規模で2種類の液体よりなる液滴スラリー製造装置を用いた。スラリー室15、オリフィスプレート3、ノズル4は実施例1と同じものを使用した。
【0068】
実施例1と同様にスラリー室に191リットル/時のPVA水溶液(PVA濃度は320ppmの希薄なもの)を供給しておき、液体導入口から172リットル/時のスチレンを供給し、加振機で6000Hzの振動を与えてO/W型の水溶液/スチレン液滴スラリーを製造した。
【0069】
振動強度を強くしても、67%の割合でしか粒子径120μmの均一なスチレン液滴を得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一比較例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 容器
2 振動発生機
3 オリフィスプレート
4 ノズル
5 液柱
6 液滴
7 第1のベローズ
8 第2のベローズ
9 第3のベローズ
10 振動伝達軸
11 液体供給口
12 スラリー排出口
13 液滴対象の液体導入口
14 液滴対象の液体室
15 スラリー室
16 圧力導入口
17 加圧室
18 振動隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴対象液を噴出する孔を有するオリフィスプレート、容器、振動発生機、振動伝達軸、オリフィスプレート、3つのベローズ、液体導入口、圧力導入口を備えてなる液滴製造装置にあって、オリフィスプレートと振動伝達軸と固定し、第2のベローズと第3のベローズと容器壁から構成される加圧室内を加圧することを特徴とする液滴製造装置。
【請求項2】
オリフィスプレートの外周部を第1のベローズで支持することを特徴とする請求項1記載の液滴製造装置。
【請求項3】
第1のベローズをオリフィスプレートに垂直方向に設置してなる請求項2記載の液滴製造装置。
【請求項4】
オリフィスプレート、第1のベローズと容器壁により構成される液体室、第2のベローズと容器壁と第3のベローズによって囲まれた加圧室を備えることを特徴とする請求項3記載の液滴製造装置。
【請求項5】
第2のベローズ、第3のベローズと容器壁で囲まれた空間内の圧力を自在に調整することを特徴とする請求項4記載の液滴製造装置。
【請求項6】
振動発生機を密閉空間外に設置することを特徴とする請求項5記載の液滴製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6何れか一項に記載の液滴製造装置によって製造される液滴。
【請求項8】
請求項7記載の液滴が重合性単量体を含んでなり、該液滴から得られることを特徴とするポリマービーズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44654(P2007−44654A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233480(P2005−233480)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】