液状体配置方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法
【課題】液状体の配置量を適切に制御することができる液状体配置方法、および当該液状体配置方法を用いたカラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上の各区画領域に対応して所定数a(16個)のドットが設定された第1のドットパターンから、所定数b(4〜6個)のドットを消去して第2のドットパターンを生成する。この際、吐出異常のノズルに対応するドットや、液状体が区画領域外にはみ出す虞のある配置位置に対応するドット(禁則ドット)は、禁則ドットとして優先的に消去される。所定数bの設定は区画領域毎に行われ、区画領域毎にドット数単位で配置量の制御がなされる。
【解決手段】基板上の各区画領域に対応して所定数a(16個)のドットが設定された第1のドットパターンから、所定数b(4〜6個)のドットを消去して第2のドットパターンを生成する。この際、吐出異常のノズルに対応するドットや、液状体が区画領域外にはみ出す虞のある配置位置に対応するドット(禁則ドット)は、禁則ドットとして優先的に消去される。所定数bの設定は区画領域毎に行われ、区画領域毎にドット数単位で配置量の制御がなされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出法を用いた液状体配置方法と、それを用いたカラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法を用いた成膜技術が注目されており、液滴吐出法を用いた液晶表示装置のカラーフィルタの製造方法が示されている。この製造方法では、基板に対して走査するノズルから色材を含む液状体(液滴)を吐出させて液状体を配置(描画)し、さらに配置された液状体を乾燥等により固化させて画素領域に対応した着色膜を形成するようになっている。
【0003】
ところで、液状体の吐出特性(吐出量)にはわずかながらもノズル間でバラツキが存在するため、これに起因して液状体の配置量のバラツキが生じ、カラーフィルタにおける濃淡ムラを発生させることがある。このようなムラは、カラーフィルタを介して表示される画像の画質を低下させる原因となる。
【0004】
そこで、特許文献1に掲げる方法では、あらかじめ吐出量についてノズル毎のデータを取得しておき、このデータに応じて単位画素領域に対するノズル毎の吐出回数の増減を施すことにより、配置量の補正(制御)を行うようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−337703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法の場合では、吐出回数の増減による補正能力は、そのノズルの吐出特性自体にも大きく依存している。このため、例えば、吐出量が著しく多いノズルについては、吐出回数1回あたりの補正幅が大き過ぎて精細な補正ができず、また、吐出量が著しく少ないノズルについては、吐出回数1回あたりの補正幅が小さすぎて不足分を補償しきれないことが起こり得る。また、着弾精度が著しく異常なノズルについては、吐出回数の単純な増減で液状体の配置量の補正を行うことはできない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、液状体の配置量を適切に制御することができる液状体配置方法、および当該液状体配置方法を用いたカラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のノズルと基板とを相対的に走査させながら前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、前記複数の所定領域のそれぞれに対応して所定数aのドットが設定された第1のドットパターンを生成するAステップと、前記所定領域毎に所定数bを設定すると共に、当該所定数bのドットを前記所定数aのドットから消去して第2のドットパターンを生成するBステップと、前記第2のドットパターンに基づいて前記液状体を吐出するCステップと、を有し、前記Bステップにおいて、前記ノズルの吐出情報に基づいて判定される禁則ドットを優先的に消去することを特徴とする。
【0009】
この発明の液状体配置方法では、所定数aのドットから所定数bのドットを消去して生成された第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出することで、所定領域毎に(所定数a−所定数b)のドット数に相当する配置量を設定する。この方法によれば、ドットの消去の際に禁則ドットを優先的に消去することで、配置量を規定しているドットのうち大きな誤差要因となるものが排除されるため、液状体の配置量を所定領域単位で適切に制御することができる。
【0010】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記所定領域は、バンクにより区画されていることを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、バンクにより所定領域外への液状体のはみ出しが好適に防止されるので、所定領域内の配置量をより正確に規定することができる。
【0011】
また好ましくは、前記Bステップにおいて、一ないし複数の前記所定領域からなるブロック毎にランダムまたは組織的に設定される段階値に基づいて、前記所定数bの設定を行うことを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、ランダムまたは組織的に設定された段階値に基づいて所定数b(配置量)の設定を行うことで、画素領域間において適度に分散された配置量のムラを意図的に形成することができる。このようなムラが、ノズル間の特性バラツキに起因して形成されるスジ状のムラに重ねて形成されることにより、当該スジ状のムラの視認性が相対的に低減されることになり、結果としてムラを目立ちにくくすることができる。
【0012】
また好ましくは、前記Bステップに先立って、ダミー基板上に設定された前記複数の所定領域に対して前記液状体の配置を行い、前記複数の所定領域における配置量の分布を計測するDステップを有し、基板前記Bステップにおいて、前記Dステップの計測結果に基づいて前記所定数bを設定することを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、ダミー基板における配置量の分布の計測結果から把握される配置量の誤差に応じて、区画領域毎に適切な所定数b(配置量)の設定を行うことができる。
【0013】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、色材を含む前記液状体を配置するステップと、配置された前記液状体を固化して、前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする着色部を形成するステップと、を有する。
この発明のカラーフィルタの製造方法によれば、上記の液状体配置方法を用いて着色部を形成しているので、高品質なカラーフィルタを製造することができる。
【0014】
本発明の有機EL表示装置の製造方法は、前記液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、有機EL材料を含む前記液状体を配置するステップと、配置された前記液状体を固化して前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする発光素子を形成するステップと、を有する。
この発明の有機EL表示装置の製造方法によれば、上記の液状体配置方法を用いて発光素子を形成しているので、高品質な有機EL表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0016】
(第1実施形態)
(カラーフィルタの構成)
まずは、図1および図2を参照して、本発明に係るカラーフィルタの構成について説明する。図1はカラーフィルタの構成を示す平面図である。図2は、カラーフィルタの構造を示す断面図である。
【0017】
図1、図2に示すカラーフィルタ1はカラー用表示パネルに用いられるものであり、表示パネルにおけるR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の画素に対応して形成された着色部2と、着色部2の間の領域に形成された遮光部3とを有している。尚、本実施形態の着色部2は、いわゆるストライプ型の画素構造に対応する配列ないし形状を有しているが、このような画素構造以外のもの、例えば、R,G,B以外の色要素を含むものやデルタ型構造のものに対応した構成とすることもできる。
【0018】
カラーフィルタ1は、ガラスの透光性の基板4を備えており、基板4上にはクロム等の遮光性材料で遮光部3がパターン形成され、さらに遮光部3上には感光性樹脂等を用いてバンク5がパターン形成されている。着色部2は、バンク5で区画された区画領域6内に形成されており、また着色部2の形成面側には、表面を平滑化するためのオーバーコート層7が樹脂等で形成されている。尚、複数の区画領域6は、全て同じ形状、大きさで形成されている。
【0019】
(液状体吐出装置の機械的構成)
次に、図3、図4を参照して、本発明の液状体配置方法に用いる液状体吐出装置の機械的構成について説明する。
図3は、液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図である。図4は、ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図である。
【0020】
図3に示す液状体吐出装置200は、直線的に設けられた1対のガイドレール201と、ガイドレール201の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する主走査移動台203を備えている。また、ガイドレール201の上方においてガイドレール201に直交するように直線的に設けられた1対のガイドレール202と、ガイドレール202の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により副走査方向に沿って移動する副走査移動台204を備えている。
【0021】
主走査移動台203上には、吐出対象物となる基板Pを載置するためのステージ205が設けられている。ステージ205は基板Pを吸着固定できる構成となっており、また、回転機構207によって基板P内の基準軸を主走査方向、副走査方向に正確に合わせることができるようになっている。
【0022】
副走査移動台204は、回転機構208を介して吊り下げ式に取り付けられたキャリッジ209を備えている。また、キャリッジ209は、複数のヘッド11,12(図4参照)を備えるヘッドユニット10と、ヘッド11,12に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、ヘッド11,12の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板211(図5参照)とを備えている。
【0023】
図4に示すように、ヘッドユニット10は、R,G,Bに対応した液状体をノズル20から吐出するヘッド11,12を備えており、ヘッド11,12における複数のノズル20はノズル群21A,21Bを構成している。ノズル群21A,21Bは、それぞれ所定のピッチ(例えば180DPI)のライン配列をなしており、さらに合わせて千鳥配列をなす関係となっている。また、ノズル群21A,21Bの配列の方向は副走査方向に一致するようにされている。
【0024】
ヘッド11,12内におけるノズル20に連通する液室(キャビティ)は、圧電素子16(図5参照)の駆動によって容量が可変するように構成されている。そして、圧電素子16から電気信号(駆動信号)を供給してキャビティ内の液圧を制御することにより、ノズル20から液状体(液滴)を吐出させることが可能となっている。
【0025】
かくして、主走査移動台203の移動によりノズル群21A,21Bを基板Pに対して主走査方向に走査させると共に、ノズル20毎の吐出のON/OFF制御(以下、吐出制御とする)を行うことにより、基板P上におけるノズル20の走査軌跡に沿った位置に液状体を配置することができる。尚、ヘッド11とヘッド12とは互いに副走査方向に位置をずらして配置され、それぞれのノズル群21A,21Bが、互いに吐出可能範囲を補完して連続した定ピッチの走査軌跡を描くように構成されている。また、ノズル群21A,21Bの端部の数個分のノズル20は、その特性の特異性に鑑みて使用しないようになっている。
【0026】
尚、液状体吐出装置の構成は上述の態様に限定されるものではない。例えば、ノズル群21A,21Bの配列方向を副走査方向から傾けて、ノズル20の走査軌跡のピッチがノズル群21A,21B内におけるノズル20間のピッチに対して狭くなるように構成することもできる。また、ヘッドユニット10におけるヘッド11,12の数やその配置構成なども適宜変更することができる。また、ヘッド11,12の駆動方式として、例えば、キャビティに加熱素子を備えたいわゆるサーマル方式などを採用することもできる。
【0027】
(吐出制御方法)
次に、図5、図6を参照して液状体吐出装置における吐出制御方法について説明する。
図5は、液状体吐出装置の電気的構成を示す図である。図6は、ドットパターンとノズルの位置との関係を示す図である。
【0028】
図5において、液状体吐出装置200は、装置全体の統括制御を行う制御コンピュータ210と、ヘッド11,12の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板211とを備えている。制御回路基板211は、フレキシブルケーブル212を介して各ヘッド11,12と電気的に接続されている。また、ヘッド11,12は、ノズル20(図2参照)毎に設けられた圧電素子16に対応して、シフトレジスタ(SL)50、ラッチ回路(LAT)51、レベルシフタ(LS)52、スイッチ(SW)53を備えている。
【0029】
液状体吐出装置200における吐出制御は次のように行われる。すなわち、まず制御コンピュータ210が基板P(図1参照)における液状体の配置パターンをデータ化したドットパターンデータ(詳しくは後述する)を制御回路基板211に伝送する。そして、制御回路基板211は、ドットパターンデータをデコードしてノズル20毎のON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスタ50に伝送される。
【0030】
シフトレジスタ50に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路51に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフタ52でスイッチ53用のゲート信号に変換される。すなわち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ53が開いて圧電素子16に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ53が閉じられて圧電素子16に駆動信号(COM)は供給されないことになる。そして、「ON」に対応するノズル20からは液状体が液滴化されて吐出され、吐出された液状体が基板Pに配置される。
【0031】
上述したように、液状体の吐出制御はドットパターン(データ)に基づいて行われる。このドットパターンは、図6に示すように、主走査方向、副走査方向の成分を有するマトリクスMTにおいて、液状体の吐出(配置)位置となる区画にドットDを配したものとして表すことができる。ドットDは、単に吐出の有無を示すだけでなく、階調性を有するものとすることも可能であり、例えば、階調性に応じて液状体の吐出量や吐出タイミングを変化させることもできる。
【0032】
ここで、マトリクスMTの主走査方向のピッチ:p1は、液状体の吐出制御周期(ラッチ周期)と走査速度によって決められるようになっている。また、マトリクスMTの副走査方向のピッチ:p2は、1走査におけるノズル20の走査軌跡のピッチ:p0の自然数分の1倍に設定することが可能である。本実施形態では、p2がp0の3分の1に設定されており、3回に分けられた各走査間で、ノズル20の副走査方向における位置を互いにずらすことにより、マトリクスMTの全てのドットDをノズル20に対応させて液状体を吐出するようになっている。
【0033】
尚、図中において互いに隣接するドットd1,d2,d3は、それぞれ第1走査、第2走査、第3走査に係るものである。これらは互いに同じノズルに対応させることも可能であるが、ノズル間における特性(例えば吐出量)のばらつきを空間的に分散させるため、走査間でヘッドを大きく副走査方向に移動させて、互いに異なるノズル20に対応させるようにすることが好ましい。複数の走査間におけるノズル20(ヘッド)の位置のずらし方には多様な方法があり、ノズル間やヘッド間の特性ばらつきの分散やサイクルタイムなどに鑑みて適切なものを採用することができる。また、本実施形態では採用していないが、複数の走査間でノズル20の副走査方向における位置を互いに重ねるような方法とすることで、一の列(主走査方向の並び)内におけるドットDを複数のノズル20に分けて対応させることも可能である。
【0034】
(カラーフィルタの製造方法(液状体配置方法))
次に、図7〜図9を参照して、本発明に係るカラーフィルタの製造方法(液状体の配置方法)について説明する。
図7は、カラーフィルタにおける着色部の形成工程を示すフローチャートである。図8は、液状体配置を行う際の基板の状態を示す平面図である。図9は、第1のドットパターンを示す図である。
【0035】
カラーフィルタ1(図1,2参照)の着色部2(図1,2参照)の形成は、R,G,Bにそれぞれ対応する色材を含む液状体を用意し、液状体吐出装置200(図3参照)を用いて当該液状体を基板上に配置することで行われる。図8に示すように、液状体を配置するための基板Pには、それぞれカラーフィルタ1の個体に対応した領域である4つの個体領域8が設定されており、個体領域8毎にバンク5で区画領域6の群が形成されている。本実施形態では、区画領域6の長辺方向を副走査方向、短辺方向を主走査方向として基板Pをステージ205(図3参照)上に載置する。
【0036】
ここで、液状体はバンク5で区画された所定領域としての区画領域6に対して配置されるが、液状体が区画領域6に合わせて正確にパターニングされるように、区画領域6内における基板Pの露出面に親液化処理を、バンク5の表面に撥液化処理をあらかじめ施しておくことが好ましい。このような処理は、例えば、酸素やフッ化炭素のプラズマ処理により行うことができる。尚、バンク5の形成は、液状体のパターニングを高精度に行うための好ましい実施形態であり、所定領域を設定するためにこのような物理的な区画が必ずしも必要というわけではない。
【0037】
液状体の配置に先立ち、まずは第1のドットパターンを生成する(図7のステップS1)。この第1のドットパターンは、吐出制御のためのドットパターン(第2のドットパターン)を生成するための基礎となるものであり、図9に示すような構成となっている。図において、白抜きの丸は1つ1つのドットを表しており、仮想線で示す仮想区画領域AはマトリクスMTを基板P上に重ねた場合における区画領域6の対応領域を表している。また、図中のL1〜L10およびR1〜R9は、説明の便宜のために付したマトリクスMTの行および列を表す記号である。すなわち、ステップS1は本発明のAステップを構成している。
【0038】
本実施形態の液状体配置では、マトリクスMTの各列の区画に対し、3回の走査に分けて複数のノズルが割り当てられるようになっている。図示の例では、R1,R4,R7列のドットが第1の走査に係るノズルn11,n12,n13に、R2,R5,R8列のドットが第2の走査に係るノズルn21,n22,n23に、R3,R6,R9列のドットが第3の走査に係るノズルn31,n32,n33にそれぞれ対応する。尚、ノズルn11〜n33は、それぞれ互いに異なるノズルである。
【0039】
本実施形態における第1のドットパターンでは、1つの仮想区画領域Aに対して、そのほぼ中央に24個(所定数a)のドットが4行×6列の配列で設定されている。ここで、24個というドットの数は、1つの区画領域6に対する液状体の適正配置量の相当数よりも多めに設定された数であり、この24個のドットのうちいくつかのドットを消去して生成されたものが、吐出制御のための第2のドットパターンとなる。
【0040】
詳しくは後述するが、第2のドットパターンの生成にはノズルの吐出情報に基づいた禁則ドットの判定処理が必要となる。このため第2のドットパターンの生成に先立ち、ノズルの吐出情報を取得するためのノズル検査が行われる(図7のステップS2)。ここで、ノズルの吐出情報には、大きく吐出異常の有無と液状体の配置位置(着弾位置)精度に関するものがある。吐出異常としては、例えば、吐出不能、吐出量の著しい多寡、ミストの飛散を伴うなどの液滴形成の異常、などの現象が挙げられる。
【0041】
本実施形態のノズル検査は、ノズルから用紙に対して液滴を吐出させ、用紙上に形成された着弾痕を撮像、画像解析することにより行われる。すなわち、吐出異常の有無の判断情報として当該着弾痕の形状、大きさ(面積)が、配置位置精度として当該着弾痕の理想位置からのズレ量が取得されるようになっている。
【0042】
ノズル検査(ステップS2)が終了したら、取得されたノズルの吐出情報に基づいて第1のドットパターンに対して処理を行い、第2のドットパターンを生成する(図7のステップS3)。この処理は、各仮想区画領域Aに対応して設定された24個のドット単位毎に行われるものであり、これにより、24個(所定数a)のドットから4ないし6個(所定数b)のドットが消去され、一仮想区画領域あたり18ないし20個のドットを有する第2のドットパターンが生成される(図12(a),(b)参照)。すなわち、ステップS3は本発明のBステップを構成している。
【0043】
次に、第2のドットパターンに基づいて区画領域6に対して液状体を吐出し(図7のステップS4)、これにより各区画領域6には、18ないし20個のドット(液滴)に相当する量の液状体がそれぞれ配置されることになる。すなわち、ステップS4は本発明のCステップを構成している。そして配置された液状体を乾燥させることにより、着色部2(図1,2参照)を形成する(図7のステップS5)。詳しくは後述するが、第2のドットパターンはノズルの吐出情報に基づいて適性化された構成となっているため、各区画領域6に対応する着色部2は精度良く形成される。
【0044】
上述の説明のように、本実施形態では、第1のドットパターンにおける初期設定時のドット数(所定数a)と、第2のドットパターンの生成時における消去対象のドット数(所定数b)とを規定することにより、間接的に区画領域6に対する液状体の配置量の設定を行うようになっている。また、詳しくは後述するが、消去対象のドット数(所定数b)は仮想区画領域A毎に規定されるようになっており、これにより液状体の配置量は区画領域6毎に設定されることになる。
【0045】
尚、ノズル検査(ステップS2)とその結果に基づく第2のドットパターンの生成(ステップS3)は、基板Pの個体を入れ替えるタイミングなどにおいて、定期的に行うようにすることが望ましい。ノズルの吐出情報は、後天的な事情、例えば流路内への気泡の混入やノズルメンテナンスの実行履歴等によっても変化し得るものであり、このような変化に迅速に対応するためである。
【0046】
(第2のドットパターンの生成について)
次に、図9、図10、図11、図12を参照して、第2のドットパターンの生成についての詳細な説明を行う。
図10は、第2のドットパターン生成に係る処理を示すフローチャートである。図11は、段階値のテンプレートを示す図である。図12は、生成された第2のドットパターンの例を示す図である。
【0047】
第2のドットパターンの生成の処理は、図9に示す第1のドットパターンを基礎として、各仮想区画領域A毎に設定された24個のドット単位毎に、図10のフローチャートに沿って行われる。この処理は、実際にはコンピュータを用いて自動的に行われるものであり、コンピュータは、あらかじめ入力されていた第1のドットパターンやノズルの吐出情報等を読み出して図10に示す処理を実行する。
【0048】
着目する仮想区画領域Aについて、まず最初のステップS11では、その仮想区画領域Aに対応する所定数bの設定を行う。例えば本実施形態では、あらかじめ用意されたテンプレート(図11)から、仮想区画領域A(区画領域)毎に割り当てられた段階値を参照することにより、所定値bの設定を行う。図11に示すテンプレートでは、単色の仮想区画領域Aの配列について、一仮想区画領域Aを一ブロックとして0〜2の段階値がランダムに設定されており、例えば、「0」、「1」、「2」の段階値に対応する仮想区画領域Aの処理において、それぞれ所定値bが「4」、「5」、「6」に設定される。
【0049】
次のステップS12では、図9に示す24個のドット全てを対象として禁則ドットであるか否かの判定が行われ、禁則ドットに該当する場合はそのドットが消去される。ここで、禁則ドットとは、そのドットについて液状体の吐出駆動がなされた場合に不具合を生じる虞がある不適切なドットのことであり、次に示すような条件でその判定が行われる。
【0050】
まず、吐出異常のノズルに対応するドットは、全て禁則ドットと判定される。このようなドットに基づいて吐出駆動が行われると、区画領域に対する液状体の配置量の精度が低下することになるからである。例えば、図12(a)に示す例では、ノズルn12に吐出異常があるため、ノズルn12に対応するR4列のドットが禁則ドットとして消去されている(黒く塗り潰された丸印が消去されたドットを示す)。
【0051】
また、仮想区画領域Aの境界に近接する最外郭のドットのうち、そのドットに係るノズルの配置位置精度が当該境界の方向に大きくズレているものは、禁則ドットと判定される。このようなドットに基づいて吐出駆動が行われると、吐出された液状体が区画領域外にはみ出し、パターニングや配置量の精度低下を招く虞があるからである。例えば、ノズルn23が配置位置精度について大きく右寄りの特性を有する場合、R8列のドットは全て禁則ドットと判定されることになる。但し、吐出異常の場合と異なり、ドットと仮想区画領域Aの境界との位置関係やズレの方向が考慮されて禁則ドットか否かの判定がなされるので、ズレの方向が逆の場合には禁則ドットとは判定されない。また、他の走査において、他の仮想区画領域Aの中央寄りの区画にこのノズルn23が割り当てられるような場合にも、対応するドットが禁則ドットと判定されることはない。
【0052】
このように、第2のドットパターンの生成では、消去対象のドットとして禁則ドットが優先的に選択され、配置量を規定しているドットのうち大きな誤差要因となるものが排除されることになるため、液状体の配置量を区画領域単位で適切に制御することが可能となる。
【0053】
次のステップS13では、消去されたドットの総数:Nが所定数bよりも大きいか否かの判定を行う。例えば、ノズルn31,n12が吐出異常だとすると、ステップS12ではR3列、R4列に係るドットが禁則ドットと判定されてN=8となるが、このようにNが所定数b(最大でも6)より大きくなる場合(Yes)には、ステップS14において警告の表示と共に処理が中断される。すなわち、この警告は、禁則ドットを消去した場合に規定どおりに第2のドットパターンを生成することができないというエラーメッセージに対応するものである。
【0054】
ステップS13においてNが所定数b以下であると判定された場合(No)、次のステップS15においてNが所定数bに達しているか否かの判定を行う。ここで、Nが所定数bに達していない場合(No)には、次のステップS16においてさらにドットの消去を行う。このステップS16において消去されるドット(消去ドット)は、例えば、残されているドットの中からランダムに選択されるようになっている。あるいは、仮想区画領域A内における相対的な位置関係や吐出に係る走査順序などに鑑みた優先条件に基づいて、消去ドットの選択を行うようにすることも可能である。
【0055】
ステップS16でドットを消去したら、再びステップS15においてNが所定数bに達しているか否かの判定を行う。これにより、Nが所定数bに達するまでドットの消去(ステップS16)が連続して行われることになり、Nが所定数bに達したところで(Yes)、一連の処理が終了する。
【0056】
例えば、図12(a)は、24個のドットのうち、ノズルn12に対応する4つの禁則ドットとランダムに選択された1つのドットとが消去され、仮想区画領域A内に19個のドットが設定された例を示している。また、図12(b)は、24個のドットのうち、ランダムに選択された6つのドットが消去され、仮想区画領域A内に18個のドットが設定された例を示している。
【0057】
上述したステップS11〜S16の処理は、複数ある仮想区画領域Aのそれぞれについて実行され、これにより第2のドットパターンが完成する。ここで、所定数bを設定する際(ステップS11)に参照されるテンプレート(図11)は、一つの個体領域8(図8参照)内における区画領域6の配列単位で構成されており、複数ある個体領域8について同一のテンプレートを用いて所定数bの設定が行われる。これは、個体領域8毎に液状体の配置量の設定条件に差が生じないように配慮したものである。
【0058】
尚、第2のドットパターンは、R,G,Bの色毎に生成されるが、この際に参照されるテンプレートは、色毎に同じものとすることも異なるものとすることも可能である。また、上述のようなテンプレートを用いずに、仮想区画領域A毎にその都度乱数を発生させて、所定数bの設定(ステップS11)を行うようにすることもできる。
【0059】
先にも説明したように、図11のテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせて0〜2の段階値がランダムに設定された構成となっている。このため、段階値の参照(ステップS11)を経て区画領域毎に設定されることになる液状体の配置量は、区画領域間でランダム(不均一)に設定されることになる。
【0060】
これにより、ノズル間の特性ばらつきに起因して副走査方向に形成される配置量のムラ(スジ状のムラ)に加えて、主走査方向および副走査方向にランダム(不均一)なムラが付加され、結果として2次元的に分散されたムラが形成される。このような2次元的に分散されたムラはスジ状の(1次元的な)ムラに比べて視認性が低いため、液状体配置を経て形成された着色部2(図1、図2参照)の濃淡ムラは、相対的に目立ちにくいものとなる。
【0061】
しかしながら、2次元的に分散されたムラの形成は、濃淡ムラを相対的に目立たなくする効果がある反面、視覚的なざらつき感をもたらすという欠点も備えており、付加するムラの程度を大きくしすぎるとかえって総合的な画質を低下させる原因にもなる。本実施形態における1区画領域あたりの吐出に係るドットは18ないし20ドットであるから、およそ±5%程度のムラを付加していることになるが、本願発明者の知見によれば、画質のバランスの観点では±3%程度のムラを付加する態様とすることが好ましい。もっとも、付加するムラの適正な割合はスジ状のムラの発生の程度とも関係してくることなので、実施にあたっては、ヘッドの条件(ノズル間の特性バラツキ)に合わせて適正化を図ることが好ましい。
【0062】
尚、説明の便宜上、上述の実施形態は全体的にドット数を少なくした態様としたが、実際には、吐出する液状体(液滴)の大きさや区画領域の大きさ等に合わせて配置量の段階(変化させるドット数の段階)をより自由に設定することが可能である。
【0063】
また、上述の実施形態では、第2のドットパターンの生成の際に消去するドット数を規定することにより配置量の設定を行うようにしたが、ドットを付加することで第2のドットパターンを生成する態様において、付加の対象となるドット数を区画領域毎に規定することで配置量の設定を行うようにすることも可能である。あるいは、ドットの付加と消去とを組み合わせた態様において、ドット数の減少、維持、増加の設定を区画領域毎に行うことで配置量の設定を行うようにすることも可能である。
【0064】
また、上述の実施形態では、吐出に係るドット数により配置量の設定を行うようにしたが、これに代えて、吐出する液状体(液滴)の大きさ(量)に階調を持たせ、区画領域毎に階調を規定することで、配置量の設定を行うようにすることも可能である。尚、液滴の大きさを可変するための技術としては、例えば、特開平11−20165号公報に掲げるものや特開2000−52570号公報に掲げるものがある。
【0065】
(変形例1)
次に、図13を参照して、変形例1について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図13は、変形例1に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0066】
この変形例1に係るテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせてランダムに設定された0〜9までの段階値を有している。そして、各仮想区画領域Aに係る所定数bの設定(図10のステップS11)において、「0,1,2,3,4,5」の段階値に対して「5」の所定数bを、「6,7」の段階値に対して「4」の所定数bを、「8,9」の段階値に対して「6」の所定数bを設定するようになっている。
【0067】
この変形例のように、段階値と所定数bとの対応関係について意図的な偏りを持たせるようにすれば、付加する液状体の配置量のムラにランダム要素を取り入れながらも、その傾向をある程度制御することが可能である。また、段階値の絶対値や段階数は、液状体の設定配置量のレベルとは無関係に設定することができ、例えば、1〜100までの100段階の段階値や、離散的な値をとる段階値とすることもできる。
【0068】
(変形例2)
次に、図14を参照して、変形例2について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図14は、変形例2に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0069】
この変形例2に係るテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせて組織的に設定された0〜2の段階値を有している。このような組織的に配列された段階値に基づいて液状体の設定配置量(所定数b)の設定を行えば、液状体の配置量のムラを組織的に形成することができる。ただしこの場合、段階値の配列によっては周期的なムラが模様として見えることがあるため、段階値の設定には注意が必要である。
【0070】
(変形例3)
次に、図15を参照して、変形例3について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図15は、変形例3に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0071】
この変形例3に係るテンプレートは、2×2の4つの仮想区画領域Aを一ブロックとし、ブロック単位でランダムに設定された0〜2の段階値を有しており、同一ブロック内における区画領域の配置量が等しく設定されるようになっている。この変形例のように、各区画領域に対する配置量の設定は、複数の区画領域からなるブロック単位(必ずしも周期的なブロック構成でなくてもよい)で配置量が不均一な分布となるように行われてもよい。
【0072】
(変形例4)
次に、図16を参照して、変形例4について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図16は、変形例4に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0073】
この変形例4に係るテンプレートは、副走査方向における仮想区画領域A間において同一の段階値が設定され、主走査方向における仮想区画領域間においてランダムな段階値が設定された構成となっている。このような段階値に基づいて液状体の設定配置量(所定数b)の設定を行う場合であっても、ノズル間の特性ばらつきに起因して副走査方向に形成される配置量のムラ(スジ状のムラ)と合わさることで最終的に2次元的に分散されたムラが形成されることになるため、本発明の効果を得ることが可能である。
【0074】
(第2実施形態)
次に、図17、18、19を参照して、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図17は、着色部の形成工程を示すフローチャートである。図18は、区画領域間における色度分布の計測結果の一例を示す図である。図19は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。
【0075】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様に第1のドットパターンの生成(図17のステップS1)とノズル検査(図17のステップS2)とを行った後、ダミー基板を対象として着色部の形成を行う(図17のステップS21)。
【0076】
ダミー基板は、第1実施形態で説明した基板P(図8参照)と構成上は同じものであるが、その試験的用途に鑑みて正規の基板(正規基板)と区別した呼び方をしている。ダミー基板に対する着色部の形成は、第1実施形態におけるステップS3〜S5(図7参照)と同様のフローにより行われる。すなわち、第1のドットパターンから第2のドットパターンを生成し(図7のステップS3)、第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出し(図7のステップS4)、液状体を乾燥させて(図7のステップS5)着色部を形成する。
【0077】
ここで、第2のドットパターンの生成は、図10に示すフローと同様の処理により行われるが、仮想区画領域毎の所定数bの設定(図10のステップS11)は行われず、所定数bは全ての仮想区画領域について固定値(例えば5)とされる。これにより、全区画領域に対して同じ設定配置量のもとで液状体の吐出(配置)がなされる。
【0078】
ところで、ノズルからの吐出量は、製造上のバラツキやノズル間におけるクロストークの影響などに起因して必ずしも規定量通りとはなっておらず、設定上の配置量と実際の配置量との間には誤差(以下、配置量誤差とする)が存在する。そこで次の工程では、ダミー基板上に形成された着色部2(図1参照)の膜厚分布から間接的に配置量の分布を計測し、配置量誤差の情報を取得する(図17のステップS22)。すなわち、ステップS21とステップS22とは、本発明のDステップを構成している。
【0079】
本実施形態では、着色部全体の膜厚分布を測定するのではなく、副走査方向における一の着色部2(区画領域)の列(図1における縦方向の並び)について膜厚分布の計測を行うようにしている。これは、配置量誤差が主としてノズル間の吐出量のバラツキに起因するものであるため、主走査方向における膜厚のムラはそれほど問題とならないためである。ただし、着色部全体の膜厚分布を測定するような態様とすることももちろん可能である。膜厚は、白色干渉法などによって直接的に求めることもできるし、着色濃度を計測して間接的に求めることもできる。
【0080】
ステップS22によって得られた膜厚分布の計測結果の一例を図18に示す。図示のように、膜厚は副走査方向に対してほぼ周期的な変化を示している。これは、ノズル配置の構成(図4参照)や各走査間におけるノズル群の移動量が副走査方向に対して周期的なため、配置量誤差が周期的な分布を示すからである。尚、図中に示す基準値は、配置量誤差がゼロであるとした場合における膜厚の理想値を表しており、膜厚はこの基準値を中心として概ね均等に分布している。
【0081】
次のステップS23では、ステップS22の結果に基づいて、区画領域毎の液状体の配置量の設定情報の生成を行う。この設定情報は、図19に示すように、主走査方向における仮想区画領域Aの行(主走査方向の並び)毎に4〜6の段階値が設定されたものとして表すことができる。すなわち、副走査方向に変動する配置量誤差を補正すべく、その補正のための情報(段階値)を仮想区画領域A毎に割り当てたものが、配置量の設定情報である。
【0082】
次のステップS24では、第1実施形態におけるステップS3〜S5(図7参照)と同様のフローにより、正規基板に対する着色部の形成が行われる。すなわち、第1のドットパターンから第2のドットパターンを生成し(図7のステップS3)、第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出し(図7のステップS4)、液状体を乾燥させて(図7のステップS5)着色部を形成する。また、第2のドットパターンの生成(ステップS3)は、第1実施形態と同様に、図10に示すフローチャートに沿って、仮想区画領域A毎に行われる。
【0083】
図19に示される4〜6の段階値は、そのまま所定数bの値となっており、仮想区画領域A毎の所定数bの設定(図10のステップS11)では、この段階値を所定数bとして設定する。これにより、第2のドットパターンの生成において、配置量誤差を補正するように区画領域毎の配置量の設定が行われることになる。
【0084】
ここで、図18に示す膜厚と図19に示す段階値(4〜6)との関係について、より詳細な説明を行う。本実施形態では、膜厚が基準値±3%未満の範囲となっている位置の仮想区画領域Aについて、段階値が「5」に設定される。また、膜厚が基準値+3%以上となっている位置の仮想区画領域Aについて、その段階値が「6」に設定され、膜厚が基準値−3%以下となっている位置の仮想区画領域Aについて、その段階値が「4」に設定される。
【0085】
これにより、膜厚が基準値±3%未満の範囲となっている位置の区画領域には19ドット分の、膜厚が基準値+3%以上となっている位置の区画領域には18ドット分の、膜厚が基準値−3%以下となっている位置の区画領域には20ドット分の液状体がそれぞれ配置される。かくして、配置量誤差が±1ドット(中心値に対して約5.3%)の単位で補正され、配置量誤差に起因した液状体の配置ムラを好適に抑えることができる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、図11、図20、図21を参照して、本発明の第4実施形態について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図20は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。図21は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。
【0087】
この第3実施形態は、第2実施形態における配置量誤差の補正と第1実施形態におけるランダムなムラの付加とを組み合わせた態様となっている。すなわち、ダミー基板の計測結果に基づいて所定数bの設定情報を生成し、さらに図11のテンプレートに基づいてこの情報の補正を行い、補正後の情報を参照して第2のドットパターンの生成を行う。
【0088】
図20において、仮想区画領域の上段に示す数値はダミー基板の計測結果に基づく最初の設定情報を、下段に示す数値はその補正情報を表している。補正情報は、図11のテンプレートにおける段階値0に対して−1、段階値1に対して0、段階値2に対して+1とされ、最初の設定情報の数値と補正情報の数値の総和として、図21に示すように補正後における最終的な設定情報が得られる。
【0089】
このような実施形態によれば、配置量誤差に起因した液状体の配置ムラを好適に抑えることができると共に、抑えきれないスジ状のムラを、ランダムなムラの付加によって目立たなくすることができる。
【0090】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、本発明の第4実施形態について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図22は、有機EL表示装置の要部構成を示す断面図である。
【0091】
図22に示すように、有機EL表示装置100は、素子基板111と、素子基板111上に形成された駆動回路部112と、駆動回路部112上に形成された発光素子部113と、駆動回路部112および発光素子部113を封止するための封止基板114と、を備えている。封止基板114によって封止された封止空間115には、不活性ガスが充填されている。
【0092】
発光素子部113は、バンク120で区画された複数の区画領域119を有しており、この区画領域119内には発光素子125が形成されている。発光素子125は、駆動回路部112の出力端子であるセグメント電極(陽極)121と、共通電極(陰極)124との間に、正孔輸送層122、有機EL材料層123が積層されて構成されている。また、バンク120と駆動回路部112との間には、階調要素間の干渉を防ぐための遮光膜126が、金属クロムやクロム酸化物等で形成されている。
【0093】
正孔輸送層122は、有機EL材料層123に正孔を注入するための機能層であり、ポリチオフェン誘導体のドーピング体(PEDOT)などの高分子導電体で形成されている。有機EL材料層123は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の有機EL材料、例えば、ポリフルオレン誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体などで形成されている。正孔輸送層122、有機EL材料層123は、第1実施形態で説明した液状体配置方法を用い、所定領域としての区画領域119に対応する機能性材料(PEDOT/有機EL材料)を含む液状体を配置して製造されたものである。
【0094】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の液状体配置方法を用いた別の例として、例えば、プラズマディスプレイ装置における蛍光膜の形成、あるいは、電気回路における導電配線や抵抗素子の形成などが挙げられる。
また、実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】カラーフィルタの構成を示す平面図。
【図2】カラーフィルタの構造を示す断面図。
【図3】液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図。
【図4】ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図。
【図5】液状体吐出装置の電気的構成を示す図。
【図6】ドットパターンとノズルの位置との関係を示す図。
【図7】カラーフィルタにおける着色部の形成工程を示すフローチャート。
【図8】液状体配置を行う際の基板の状態を示す平面図。
【図9】第1のドットパターンを示す図。
【図10】第2のドットパターン生成に係る処理を示すフローチャート。
【図11】段階値のテンプレートを示す図。
【図12】(a),(b)は、生成された第2のドットパターンの例を示す図。
【図13】変形例1に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図14】変形例2に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図15】変形例3に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図16】変形例4に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図17】着色部の形成工程を示すフローチャート。
【図18】区画領域間における色度分布の計測結果の一例を示す図。
【図19】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図20】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図21】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図22】有機EL表示装置の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0096】
1…カラーフィルタ、2…着色部、4…基板、5…バンク、6…所定領域としての区画領域、8…個体領域、20…ノズル、100…有機EL表示装置、119…所定領域としての区画領域、120…バンク、122…正孔輸送層、123…有機EL材料層、125…発光素子、200…液状体吐出装置、MT…マトリクス、P…基板、A…仮想区画領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出法を用いた液状体配置方法と、それを用いたカラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法を用いた成膜技術が注目されており、液滴吐出法を用いた液晶表示装置のカラーフィルタの製造方法が示されている。この製造方法では、基板に対して走査するノズルから色材を含む液状体(液滴)を吐出させて液状体を配置(描画)し、さらに配置された液状体を乾燥等により固化させて画素領域に対応した着色膜を形成するようになっている。
【0003】
ところで、液状体の吐出特性(吐出量)にはわずかながらもノズル間でバラツキが存在するため、これに起因して液状体の配置量のバラツキが生じ、カラーフィルタにおける濃淡ムラを発生させることがある。このようなムラは、カラーフィルタを介して表示される画像の画質を低下させる原因となる。
【0004】
そこで、特許文献1に掲げる方法では、あらかじめ吐出量についてノズル毎のデータを取得しておき、このデータに応じて単位画素領域に対するノズル毎の吐出回数の増減を施すことにより、配置量の補正(制御)を行うようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−337703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の方法の場合では、吐出回数の増減による補正能力は、そのノズルの吐出特性自体にも大きく依存している。このため、例えば、吐出量が著しく多いノズルについては、吐出回数1回あたりの補正幅が大き過ぎて精細な補正ができず、また、吐出量が著しく少ないノズルについては、吐出回数1回あたりの補正幅が小さすぎて不足分を補償しきれないことが起こり得る。また、着弾精度が著しく異常なノズルについては、吐出回数の単純な増減で液状体の配置量の補正を行うことはできない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、液状体の配置量を適切に制御することができる液状体配置方法、および当該液状体配置方法を用いたカラーフィルタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のノズルと基板とを相対的に走査させながら前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、前記複数の所定領域のそれぞれに対応して所定数aのドットが設定された第1のドットパターンを生成するAステップと、前記所定領域毎に所定数bを設定すると共に、当該所定数bのドットを前記所定数aのドットから消去して第2のドットパターンを生成するBステップと、前記第2のドットパターンに基づいて前記液状体を吐出するCステップと、を有し、前記Bステップにおいて、前記ノズルの吐出情報に基づいて判定される禁則ドットを優先的に消去することを特徴とする。
【0009】
この発明の液状体配置方法では、所定数aのドットから所定数bのドットを消去して生成された第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出することで、所定領域毎に(所定数a−所定数b)のドット数に相当する配置量を設定する。この方法によれば、ドットの消去の際に禁則ドットを優先的に消去することで、配置量を規定しているドットのうち大きな誤差要因となるものが排除されるため、液状体の配置量を所定領域単位で適切に制御することができる。
【0010】
また好ましくは、前記液状体配置方法において、前記所定領域は、バンクにより区画されていることを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、バンクにより所定領域外への液状体のはみ出しが好適に防止されるので、所定領域内の配置量をより正確に規定することができる。
【0011】
また好ましくは、前記Bステップにおいて、一ないし複数の前記所定領域からなるブロック毎にランダムまたは組織的に設定される段階値に基づいて、前記所定数bの設定を行うことを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、ランダムまたは組織的に設定された段階値に基づいて所定数b(配置量)の設定を行うことで、画素領域間において適度に分散された配置量のムラを意図的に形成することができる。このようなムラが、ノズル間の特性バラツキに起因して形成されるスジ状のムラに重ねて形成されることにより、当該スジ状のムラの視認性が相対的に低減されることになり、結果としてムラを目立ちにくくすることができる。
【0012】
また好ましくは、前記Bステップに先立って、ダミー基板上に設定された前記複数の所定領域に対して前記液状体の配置を行い、前記複数の所定領域における配置量の分布を計測するDステップを有し、基板前記Bステップにおいて、前記Dステップの計測結果に基づいて前記所定数bを設定することを特徴とする。
この発明の液状体配置方法によれば、ダミー基板における配置量の分布の計測結果から把握される配置量の誤差に応じて、区画領域毎に適切な所定数b(配置量)の設定を行うことができる。
【0013】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、色材を含む前記液状体を配置するステップと、配置された前記液状体を固化して、前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする着色部を形成するステップと、を有する。
この発明のカラーフィルタの製造方法によれば、上記の液状体配置方法を用いて着色部を形成しているので、高品質なカラーフィルタを製造することができる。
【0014】
本発明の有機EL表示装置の製造方法は、前記液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、有機EL材料を含む前記液状体を配置するステップと、配置された前記液状体を固化して前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする発光素子を形成するステップと、を有する。
この発明の有機EL表示装置の製造方法によれば、上記の液状体配置方法を用いて発光素子を形成しているので、高品質な有機EL表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図では、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0016】
(第1実施形態)
(カラーフィルタの構成)
まずは、図1および図2を参照して、本発明に係るカラーフィルタの構成について説明する。図1はカラーフィルタの構成を示す平面図である。図2は、カラーフィルタの構造を示す断面図である。
【0017】
図1、図2に示すカラーフィルタ1はカラー用表示パネルに用いられるものであり、表示パネルにおけるR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の画素に対応して形成された着色部2と、着色部2の間の領域に形成された遮光部3とを有している。尚、本実施形態の着色部2は、いわゆるストライプ型の画素構造に対応する配列ないし形状を有しているが、このような画素構造以外のもの、例えば、R,G,B以外の色要素を含むものやデルタ型構造のものに対応した構成とすることもできる。
【0018】
カラーフィルタ1は、ガラスの透光性の基板4を備えており、基板4上にはクロム等の遮光性材料で遮光部3がパターン形成され、さらに遮光部3上には感光性樹脂等を用いてバンク5がパターン形成されている。着色部2は、バンク5で区画された区画領域6内に形成されており、また着色部2の形成面側には、表面を平滑化するためのオーバーコート層7が樹脂等で形成されている。尚、複数の区画領域6は、全て同じ形状、大きさで形成されている。
【0019】
(液状体吐出装置の機械的構成)
次に、図3、図4を参照して、本発明の液状体配置方法に用いる液状体吐出装置の機械的構成について説明する。
図3は、液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図である。図4は、ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図である。
【0020】
図3に示す液状体吐出装置200は、直線的に設けられた1対のガイドレール201と、ガイドレール201の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する主走査移動台203を備えている。また、ガイドレール201の上方においてガイドレール201に直交するように直線的に設けられた1対のガイドレール202と、ガイドレール202の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により副走査方向に沿って移動する副走査移動台204を備えている。
【0021】
主走査移動台203上には、吐出対象物となる基板Pを載置するためのステージ205が設けられている。ステージ205は基板Pを吸着固定できる構成となっており、また、回転機構207によって基板P内の基準軸を主走査方向、副走査方向に正確に合わせることができるようになっている。
【0022】
副走査移動台204は、回転機構208を介して吊り下げ式に取り付けられたキャリッジ209を備えている。また、キャリッジ209は、複数のヘッド11,12(図4参照)を備えるヘッドユニット10と、ヘッド11,12に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、ヘッド11,12の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板211(図5参照)とを備えている。
【0023】
図4に示すように、ヘッドユニット10は、R,G,Bに対応した液状体をノズル20から吐出するヘッド11,12を備えており、ヘッド11,12における複数のノズル20はノズル群21A,21Bを構成している。ノズル群21A,21Bは、それぞれ所定のピッチ(例えば180DPI)のライン配列をなしており、さらに合わせて千鳥配列をなす関係となっている。また、ノズル群21A,21Bの配列の方向は副走査方向に一致するようにされている。
【0024】
ヘッド11,12内におけるノズル20に連通する液室(キャビティ)は、圧電素子16(図5参照)の駆動によって容量が可変するように構成されている。そして、圧電素子16から電気信号(駆動信号)を供給してキャビティ内の液圧を制御することにより、ノズル20から液状体(液滴)を吐出させることが可能となっている。
【0025】
かくして、主走査移動台203の移動によりノズル群21A,21Bを基板Pに対して主走査方向に走査させると共に、ノズル20毎の吐出のON/OFF制御(以下、吐出制御とする)を行うことにより、基板P上におけるノズル20の走査軌跡に沿った位置に液状体を配置することができる。尚、ヘッド11とヘッド12とは互いに副走査方向に位置をずらして配置され、それぞれのノズル群21A,21Bが、互いに吐出可能範囲を補完して連続した定ピッチの走査軌跡を描くように構成されている。また、ノズル群21A,21Bの端部の数個分のノズル20は、その特性の特異性に鑑みて使用しないようになっている。
【0026】
尚、液状体吐出装置の構成は上述の態様に限定されるものではない。例えば、ノズル群21A,21Bの配列方向を副走査方向から傾けて、ノズル20の走査軌跡のピッチがノズル群21A,21B内におけるノズル20間のピッチに対して狭くなるように構成することもできる。また、ヘッドユニット10におけるヘッド11,12の数やその配置構成なども適宜変更することができる。また、ヘッド11,12の駆動方式として、例えば、キャビティに加熱素子を備えたいわゆるサーマル方式などを採用することもできる。
【0027】
(吐出制御方法)
次に、図5、図6を参照して液状体吐出装置における吐出制御方法について説明する。
図5は、液状体吐出装置の電気的構成を示す図である。図6は、ドットパターンとノズルの位置との関係を示す図である。
【0028】
図5において、液状体吐出装置200は、装置全体の統括制御を行う制御コンピュータ210と、ヘッド11,12の電気的な駆動制御を行うための制御回路基板211とを備えている。制御回路基板211は、フレキシブルケーブル212を介して各ヘッド11,12と電気的に接続されている。また、ヘッド11,12は、ノズル20(図2参照)毎に設けられた圧電素子16に対応して、シフトレジスタ(SL)50、ラッチ回路(LAT)51、レベルシフタ(LS)52、スイッチ(SW)53を備えている。
【0029】
液状体吐出装置200における吐出制御は次のように行われる。すなわち、まず制御コンピュータ210が基板P(図1参照)における液状体の配置パターンをデータ化したドットパターンデータ(詳しくは後述する)を制御回路基板211に伝送する。そして、制御回路基板211は、ドットパターンデータをデコードしてノズル20毎のON/OFF(吐出/非吐出)情報であるノズルデータを生成する。ノズルデータは、シリアル信号(SI)化されて、クロック信号(CK)に同期して各シフトレジスタ50に伝送される。
【0030】
シフトレジスタ50に伝送されたノズルデータは、ラッチ信号(LAT)がラッチ回路51に入力されるタイミングでラッチされ、さらにレベルシフタ52でスイッチ53用のゲート信号に変換される。すなわち、ノズルデータが「ON」の場合にはスイッチ53が開いて圧電素子16に駆動信号(COM)が供給され、ノズルデータが「OFF」の場合にはスイッチ53が閉じられて圧電素子16に駆動信号(COM)は供給されないことになる。そして、「ON」に対応するノズル20からは液状体が液滴化されて吐出され、吐出された液状体が基板Pに配置される。
【0031】
上述したように、液状体の吐出制御はドットパターン(データ)に基づいて行われる。このドットパターンは、図6に示すように、主走査方向、副走査方向の成分を有するマトリクスMTにおいて、液状体の吐出(配置)位置となる区画にドットDを配したものとして表すことができる。ドットDは、単に吐出の有無を示すだけでなく、階調性を有するものとすることも可能であり、例えば、階調性に応じて液状体の吐出量や吐出タイミングを変化させることもできる。
【0032】
ここで、マトリクスMTの主走査方向のピッチ:p1は、液状体の吐出制御周期(ラッチ周期)と走査速度によって決められるようになっている。また、マトリクスMTの副走査方向のピッチ:p2は、1走査におけるノズル20の走査軌跡のピッチ:p0の自然数分の1倍に設定することが可能である。本実施形態では、p2がp0の3分の1に設定されており、3回に分けられた各走査間で、ノズル20の副走査方向における位置を互いにずらすことにより、マトリクスMTの全てのドットDをノズル20に対応させて液状体を吐出するようになっている。
【0033】
尚、図中において互いに隣接するドットd1,d2,d3は、それぞれ第1走査、第2走査、第3走査に係るものである。これらは互いに同じノズルに対応させることも可能であるが、ノズル間における特性(例えば吐出量)のばらつきを空間的に分散させるため、走査間でヘッドを大きく副走査方向に移動させて、互いに異なるノズル20に対応させるようにすることが好ましい。複数の走査間におけるノズル20(ヘッド)の位置のずらし方には多様な方法があり、ノズル間やヘッド間の特性ばらつきの分散やサイクルタイムなどに鑑みて適切なものを採用することができる。また、本実施形態では採用していないが、複数の走査間でノズル20の副走査方向における位置を互いに重ねるような方法とすることで、一の列(主走査方向の並び)内におけるドットDを複数のノズル20に分けて対応させることも可能である。
【0034】
(カラーフィルタの製造方法(液状体配置方法))
次に、図7〜図9を参照して、本発明に係るカラーフィルタの製造方法(液状体の配置方法)について説明する。
図7は、カラーフィルタにおける着色部の形成工程を示すフローチャートである。図8は、液状体配置を行う際の基板の状態を示す平面図である。図9は、第1のドットパターンを示す図である。
【0035】
カラーフィルタ1(図1,2参照)の着色部2(図1,2参照)の形成は、R,G,Bにそれぞれ対応する色材を含む液状体を用意し、液状体吐出装置200(図3参照)を用いて当該液状体を基板上に配置することで行われる。図8に示すように、液状体を配置するための基板Pには、それぞれカラーフィルタ1の個体に対応した領域である4つの個体領域8が設定されており、個体領域8毎にバンク5で区画領域6の群が形成されている。本実施形態では、区画領域6の長辺方向を副走査方向、短辺方向を主走査方向として基板Pをステージ205(図3参照)上に載置する。
【0036】
ここで、液状体はバンク5で区画された所定領域としての区画領域6に対して配置されるが、液状体が区画領域6に合わせて正確にパターニングされるように、区画領域6内における基板Pの露出面に親液化処理を、バンク5の表面に撥液化処理をあらかじめ施しておくことが好ましい。このような処理は、例えば、酸素やフッ化炭素のプラズマ処理により行うことができる。尚、バンク5の形成は、液状体のパターニングを高精度に行うための好ましい実施形態であり、所定領域を設定するためにこのような物理的な区画が必ずしも必要というわけではない。
【0037】
液状体の配置に先立ち、まずは第1のドットパターンを生成する(図7のステップS1)。この第1のドットパターンは、吐出制御のためのドットパターン(第2のドットパターン)を生成するための基礎となるものであり、図9に示すような構成となっている。図において、白抜きの丸は1つ1つのドットを表しており、仮想線で示す仮想区画領域AはマトリクスMTを基板P上に重ねた場合における区画領域6の対応領域を表している。また、図中のL1〜L10およびR1〜R9は、説明の便宜のために付したマトリクスMTの行および列を表す記号である。すなわち、ステップS1は本発明のAステップを構成している。
【0038】
本実施形態の液状体配置では、マトリクスMTの各列の区画に対し、3回の走査に分けて複数のノズルが割り当てられるようになっている。図示の例では、R1,R4,R7列のドットが第1の走査に係るノズルn11,n12,n13に、R2,R5,R8列のドットが第2の走査に係るノズルn21,n22,n23に、R3,R6,R9列のドットが第3の走査に係るノズルn31,n32,n33にそれぞれ対応する。尚、ノズルn11〜n33は、それぞれ互いに異なるノズルである。
【0039】
本実施形態における第1のドットパターンでは、1つの仮想区画領域Aに対して、そのほぼ中央に24個(所定数a)のドットが4行×6列の配列で設定されている。ここで、24個というドットの数は、1つの区画領域6に対する液状体の適正配置量の相当数よりも多めに設定された数であり、この24個のドットのうちいくつかのドットを消去して生成されたものが、吐出制御のための第2のドットパターンとなる。
【0040】
詳しくは後述するが、第2のドットパターンの生成にはノズルの吐出情報に基づいた禁則ドットの判定処理が必要となる。このため第2のドットパターンの生成に先立ち、ノズルの吐出情報を取得するためのノズル検査が行われる(図7のステップS2)。ここで、ノズルの吐出情報には、大きく吐出異常の有無と液状体の配置位置(着弾位置)精度に関するものがある。吐出異常としては、例えば、吐出不能、吐出量の著しい多寡、ミストの飛散を伴うなどの液滴形成の異常、などの現象が挙げられる。
【0041】
本実施形態のノズル検査は、ノズルから用紙に対して液滴を吐出させ、用紙上に形成された着弾痕を撮像、画像解析することにより行われる。すなわち、吐出異常の有無の判断情報として当該着弾痕の形状、大きさ(面積)が、配置位置精度として当該着弾痕の理想位置からのズレ量が取得されるようになっている。
【0042】
ノズル検査(ステップS2)が終了したら、取得されたノズルの吐出情報に基づいて第1のドットパターンに対して処理を行い、第2のドットパターンを生成する(図7のステップS3)。この処理は、各仮想区画領域Aに対応して設定された24個のドット単位毎に行われるものであり、これにより、24個(所定数a)のドットから4ないし6個(所定数b)のドットが消去され、一仮想区画領域あたり18ないし20個のドットを有する第2のドットパターンが生成される(図12(a),(b)参照)。すなわち、ステップS3は本発明のBステップを構成している。
【0043】
次に、第2のドットパターンに基づいて区画領域6に対して液状体を吐出し(図7のステップS4)、これにより各区画領域6には、18ないし20個のドット(液滴)に相当する量の液状体がそれぞれ配置されることになる。すなわち、ステップS4は本発明のCステップを構成している。そして配置された液状体を乾燥させることにより、着色部2(図1,2参照)を形成する(図7のステップS5)。詳しくは後述するが、第2のドットパターンはノズルの吐出情報に基づいて適性化された構成となっているため、各区画領域6に対応する着色部2は精度良く形成される。
【0044】
上述の説明のように、本実施形態では、第1のドットパターンにおける初期設定時のドット数(所定数a)と、第2のドットパターンの生成時における消去対象のドット数(所定数b)とを規定することにより、間接的に区画領域6に対する液状体の配置量の設定を行うようになっている。また、詳しくは後述するが、消去対象のドット数(所定数b)は仮想区画領域A毎に規定されるようになっており、これにより液状体の配置量は区画領域6毎に設定されることになる。
【0045】
尚、ノズル検査(ステップS2)とその結果に基づく第2のドットパターンの生成(ステップS3)は、基板Pの個体を入れ替えるタイミングなどにおいて、定期的に行うようにすることが望ましい。ノズルの吐出情報は、後天的な事情、例えば流路内への気泡の混入やノズルメンテナンスの実行履歴等によっても変化し得るものであり、このような変化に迅速に対応するためである。
【0046】
(第2のドットパターンの生成について)
次に、図9、図10、図11、図12を参照して、第2のドットパターンの生成についての詳細な説明を行う。
図10は、第2のドットパターン生成に係る処理を示すフローチャートである。図11は、段階値のテンプレートを示す図である。図12は、生成された第2のドットパターンの例を示す図である。
【0047】
第2のドットパターンの生成の処理は、図9に示す第1のドットパターンを基礎として、各仮想区画領域A毎に設定された24個のドット単位毎に、図10のフローチャートに沿って行われる。この処理は、実際にはコンピュータを用いて自動的に行われるものであり、コンピュータは、あらかじめ入力されていた第1のドットパターンやノズルの吐出情報等を読み出して図10に示す処理を実行する。
【0048】
着目する仮想区画領域Aについて、まず最初のステップS11では、その仮想区画領域Aに対応する所定数bの設定を行う。例えば本実施形態では、あらかじめ用意されたテンプレート(図11)から、仮想区画領域A(区画領域)毎に割り当てられた段階値を参照することにより、所定値bの設定を行う。図11に示すテンプレートでは、単色の仮想区画領域Aの配列について、一仮想区画領域Aを一ブロックとして0〜2の段階値がランダムに設定されており、例えば、「0」、「1」、「2」の段階値に対応する仮想区画領域Aの処理において、それぞれ所定値bが「4」、「5」、「6」に設定される。
【0049】
次のステップS12では、図9に示す24個のドット全てを対象として禁則ドットであるか否かの判定が行われ、禁則ドットに該当する場合はそのドットが消去される。ここで、禁則ドットとは、そのドットについて液状体の吐出駆動がなされた場合に不具合を生じる虞がある不適切なドットのことであり、次に示すような条件でその判定が行われる。
【0050】
まず、吐出異常のノズルに対応するドットは、全て禁則ドットと判定される。このようなドットに基づいて吐出駆動が行われると、区画領域に対する液状体の配置量の精度が低下することになるからである。例えば、図12(a)に示す例では、ノズルn12に吐出異常があるため、ノズルn12に対応するR4列のドットが禁則ドットとして消去されている(黒く塗り潰された丸印が消去されたドットを示す)。
【0051】
また、仮想区画領域Aの境界に近接する最外郭のドットのうち、そのドットに係るノズルの配置位置精度が当該境界の方向に大きくズレているものは、禁則ドットと判定される。このようなドットに基づいて吐出駆動が行われると、吐出された液状体が区画領域外にはみ出し、パターニングや配置量の精度低下を招く虞があるからである。例えば、ノズルn23が配置位置精度について大きく右寄りの特性を有する場合、R8列のドットは全て禁則ドットと判定されることになる。但し、吐出異常の場合と異なり、ドットと仮想区画領域Aの境界との位置関係やズレの方向が考慮されて禁則ドットか否かの判定がなされるので、ズレの方向が逆の場合には禁則ドットとは判定されない。また、他の走査において、他の仮想区画領域Aの中央寄りの区画にこのノズルn23が割り当てられるような場合にも、対応するドットが禁則ドットと判定されることはない。
【0052】
このように、第2のドットパターンの生成では、消去対象のドットとして禁則ドットが優先的に選択され、配置量を規定しているドットのうち大きな誤差要因となるものが排除されることになるため、液状体の配置量を区画領域単位で適切に制御することが可能となる。
【0053】
次のステップS13では、消去されたドットの総数:Nが所定数bよりも大きいか否かの判定を行う。例えば、ノズルn31,n12が吐出異常だとすると、ステップS12ではR3列、R4列に係るドットが禁則ドットと判定されてN=8となるが、このようにNが所定数b(最大でも6)より大きくなる場合(Yes)には、ステップS14において警告の表示と共に処理が中断される。すなわち、この警告は、禁則ドットを消去した場合に規定どおりに第2のドットパターンを生成することができないというエラーメッセージに対応するものである。
【0054】
ステップS13においてNが所定数b以下であると判定された場合(No)、次のステップS15においてNが所定数bに達しているか否かの判定を行う。ここで、Nが所定数bに達していない場合(No)には、次のステップS16においてさらにドットの消去を行う。このステップS16において消去されるドット(消去ドット)は、例えば、残されているドットの中からランダムに選択されるようになっている。あるいは、仮想区画領域A内における相対的な位置関係や吐出に係る走査順序などに鑑みた優先条件に基づいて、消去ドットの選択を行うようにすることも可能である。
【0055】
ステップS16でドットを消去したら、再びステップS15においてNが所定数bに達しているか否かの判定を行う。これにより、Nが所定数bに達するまでドットの消去(ステップS16)が連続して行われることになり、Nが所定数bに達したところで(Yes)、一連の処理が終了する。
【0056】
例えば、図12(a)は、24個のドットのうち、ノズルn12に対応する4つの禁則ドットとランダムに選択された1つのドットとが消去され、仮想区画領域A内に19個のドットが設定された例を示している。また、図12(b)は、24個のドットのうち、ランダムに選択された6つのドットが消去され、仮想区画領域A内に18個のドットが設定された例を示している。
【0057】
上述したステップS11〜S16の処理は、複数ある仮想区画領域Aのそれぞれについて実行され、これにより第2のドットパターンが完成する。ここで、所定数bを設定する際(ステップS11)に参照されるテンプレート(図11)は、一つの個体領域8(図8参照)内における区画領域6の配列単位で構成されており、複数ある個体領域8について同一のテンプレートを用いて所定数bの設定が行われる。これは、個体領域8毎に液状体の配置量の設定条件に差が生じないように配慮したものである。
【0058】
尚、第2のドットパターンは、R,G,Bの色毎に生成されるが、この際に参照されるテンプレートは、色毎に同じものとすることも異なるものとすることも可能である。また、上述のようなテンプレートを用いずに、仮想区画領域A毎にその都度乱数を発生させて、所定数bの設定(ステップS11)を行うようにすることもできる。
【0059】
先にも説明したように、図11のテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせて0〜2の段階値がランダムに設定された構成となっている。このため、段階値の参照(ステップS11)を経て区画領域毎に設定されることになる液状体の配置量は、区画領域間でランダム(不均一)に設定されることになる。
【0060】
これにより、ノズル間の特性ばらつきに起因して副走査方向に形成される配置量のムラ(スジ状のムラ)に加えて、主走査方向および副走査方向にランダム(不均一)なムラが付加され、結果として2次元的に分散されたムラが形成される。このような2次元的に分散されたムラはスジ状の(1次元的な)ムラに比べて視認性が低いため、液状体配置を経て形成された着色部2(図1、図2参照)の濃淡ムラは、相対的に目立ちにくいものとなる。
【0061】
しかしながら、2次元的に分散されたムラの形成は、濃淡ムラを相対的に目立たなくする効果がある反面、視覚的なざらつき感をもたらすという欠点も備えており、付加するムラの程度を大きくしすぎるとかえって総合的な画質を低下させる原因にもなる。本実施形態における1区画領域あたりの吐出に係るドットは18ないし20ドットであるから、およそ±5%程度のムラを付加していることになるが、本願発明者の知見によれば、画質のバランスの観点では±3%程度のムラを付加する態様とすることが好ましい。もっとも、付加するムラの適正な割合はスジ状のムラの発生の程度とも関係してくることなので、実施にあたっては、ヘッドの条件(ノズル間の特性バラツキ)に合わせて適正化を図ることが好ましい。
【0062】
尚、説明の便宜上、上述の実施形態は全体的にドット数を少なくした態様としたが、実際には、吐出する液状体(液滴)の大きさや区画領域の大きさ等に合わせて配置量の段階(変化させるドット数の段階)をより自由に設定することが可能である。
【0063】
また、上述の実施形態では、第2のドットパターンの生成の際に消去するドット数を規定することにより配置量の設定を行うようにしたが、ドットを付加することで第2のドットパターンを生成する態様において、付加の対象となるドット数を区画領域毎に規定することで配置量の設定を行うようにすることも可能である。あるいは、ドットの付加と消去とを組み合わせた態様において、ドット数の減少、維持、増加の設定を区画領域毎に行うことで配置量の設定を行うようにすることも可能である。
【0064】
また、上述の実施形態では、吐出に係るドット数により配置量の設定を行うようにしたが、これに代えて、吐出する液状体(液滴)の大きさ(量)に階調を持たせ、区画領域毎に階調を規定することで、配置量の設定を行うようにすることも可能である。尚、液滴の大きさを可変するための技術としては、例えば、特開平11−20165号公報に掲げるものや特開2000−52570号公報に掲げるものがある。
【0065】
(変形例1)
次に、図13を参照して、変形例1について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図13は、変形例1に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0066】
この変形例1に係るテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせてランダムに設定された0〜9までの段階値を有している。そして、各仮想区画領域Aに係る所定数bの設定(図10のステップS11)において、「0,1,2,3,4,5」の段階値に対して「5」の所定数bを、「6,7」の段階値に対して「4」の所定数bを、「8,9」の段階値に対して「6」の所定数bを設定するようになっている。
【0067】
この変形例のように、段階値と所定数bとの対応関係について意図的な偏りを持たせるようにすれば、付加する液状体の配置量のムラにランダム要素を取り入れながらも、その傾向をある程度制御することが可能である。また、段階値の絶対値や段階数は、液状体の設定配置量のレベルとは無関係に設定することができ、例えば、1〜100までの100段階の段階値や、離散的な値をとる段階値とすることもできる。
【0068】
(変形例2)
次に、図14を参照して、変形例2について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図14は、変形例2に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0069】
この変形例2に係るテンプレートは、仮想区画領域Aの配列に合わせて組織的に設定された0〜2の段階値を有している。このような組織的に配列された段階値に基づいて液状体の設定配置量(所定数b)の設定を行えば、液状体の配置量のムラを組織的に形成することができる。ただしこの場合、段階値の配列によっては周期的なムラが模様として見えることがあるため、段階値の設定には注意が必要である。
【0070】
(変形例3)
次に、図15を参照して、変形例3について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図15は、変形例3に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0071】
この変形例3に係るテンプレートは、2×2の4つの仮想区画領域Aを一ブロックとし、ブロック単位でランダムに設定された0〜2の段階値を有しており、同一ブロック内における区画領域の配置量が等しく設定されるようになっている。この変形例のように、各区画領域に対する配置量の設定は、複数の区画領域からなるブロック単位(必ずしも周期的なブロック構成でなくてもよい)で配置量が不均一な分布となるように行われてもよい。
【0072】
(変形例4)
次に、図16を参照して、変形例4について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図16は、変形例4に係る段階値のテンプレートを示す図である。
【0073】
この変形例4に係るテンプレートは、副走査方向における仮想区画領域A間において同一の段階値が設定され、主走査方向における仮想区画領域間においてランダムな段階値が設定された構成となっている。このような段階値に基づいて液状体の設定配置量(所定数b)の設定を行う場合であっても、ノズル間の特性ばらつきに起因して副走査方向に形成される配置量のムラ(スジ状のムラ)と合わさることで最終的に2次元的に分散されたムラが形成されることになるため、本発明の効果を得ることが可能である。
【0074】
(第2実施形態)
次に、図17、18、19を参照して、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図17は、着色部の形成工程を示すフローチャートである。図18は、区画領域間における色度分布の計測結果の一例を示す図である。図19は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。
【0075】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様に第1のドットパターンの生成(図17のステップS1)とノズル検査(図17のステップS2)とを行った後、ダミー基板を対象として着色部の形成を行う(図17のステップS21)。
【0076】
ダミー基板は、第1実施形態で説明した基板P(図8参照)と構成上は同じものであるが、その試験的用途に鑑みて正規の基板(正規基板)と区別した呼び方をしている。ダミー基板に対する着色部の形成は、第1実施形態におけるステップS3〜S5(図7参照)と同様のフローにより行われる。すなわち、第1のドットパターンから第2のドットパターンを生成し(図7のステップS3)、第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出し(図7のステップS4)、液状体を乾燥させて(図7のステップS5)着色部を形成する。
【0077】
ここで、第2のドットパターンの生成は、図10に示すフローと同様の処理により行われるが、仮想区画領域毎の所定数bの設定(図10のステップS11)は行われず、所定数bは全ての仮想区画領域について固定値(例えば5)とされる。これにより、全区画領域に対して同じ設定配置量のもとで液状体の吐出(配置)がなされる。
【0078】
ところで、ノズルからの吐出量は、製造上のバラツキやノズル間におけるクロストークの影響などに起因して必ずしも規定量通りとはなっておらず、設定上の配置量と実際の配置量との間には誤差(以下、配置量誤差とする)が存在する。そこで次の工程では、ダミー基板上に形成された着色部2(図1参照)の膜厚分布から間接的に配置量の分布を計測し、配置量誤差の情報を取得する(図17のステップS22)。すなわち、ステップS21とステップS22とは、本発明のDステップを構成している。
【0079】
本実施形態では、着色部全体の膜厚分布を測定するのではなく、副走査方向における一の着色部2(区画領域)の列(図1における縦方向の並び)について膜厚分布の計測を行うようにしている。これは、配置量誤差が主としてノズル間の吐出量のバラツキに起因するものであるため、主走査方向における膜厚のムラはそれほど問題とならないためである。ただし、着色部全体の膜厚分布を測定するような態様とすることももちろん可能である。膜厚は、白色干渉法などによって直接的に求めることもできるし、着色濃度を計測して間接的に求めることもできる。
【0080】
ステップS22によって得られた膜厚分布の計測結果の一例を図18に示す。図示のように、膜厚は副走査方向に対してほぼ周期的な変化を示している。これは、ノズル配置の構成(図4参照)や各走査間におけるノズル群の移動量が副走査方向に対して周期的なため、配置量誤差が周期的な分布を示すからである。尚、図中に示す基準値は、配置量誤差がゼロであるとした場合における膜厚の理想値を表しており、膜厚はこの基準値を中心として概ね均等に分布している。
【0081】
次のステップS23では、ステップS22の結果に基づいて、区画領域毎の液状体の配置量の設定情報の生成を行う。この設定情報は、図19に示すように、主走査方向における仮想区画領域Aの行(主走査方向の並び)毎に4〜6の段階値が設定されたものとして表すことができる。すなわち、副走査方向に変動する配置量誤差を補正すべく、その補正のための情報(段階値)を仮想区画領域A毎に割り当てたものが、配置量の設定情報である。
【0082】
次のステップS24では、第1実施形態におけるステップS3〜S5(図7参照)と同様のフローにより、正規基板に対する着色部の形成が行われる。すなわち、第1のドットパターンから第2のドットパターンを生成し(図7のステップS3)、第2のドットパターンに基づいて液状体を吐出し(図7のステップS4)、液状体を乾燥させて(図7のステップS5)着色部を形成する。また、第2のドットパターンの生成(ステップS3)は、第1実施形態と同様に、図10に示すフローチャートに沿って、仮想区画領域A毎に行われる。
【0083】
図19に示される4〜6の段階値は、そのまま所定数bの値となっており、仮想区画領域A毎の所定数bの設定(図10のステップS11)では、この段階値を所定数bとして設定する。これにより、第2のドットパターンの生成において、配置量誤差を補正するように区画領域毎の配置量の設定が行われることになる。
【0084】
ここで、図18に示す膜厚と図19に示す段階値(4〜6)との関係について、より詳細な説明を行う。本実施形態では、膜厚が基準値±3%未満の範囲となっている位置の仮想区画領域Aについて、段階値が「5」に設定される。また、膜厚が基準値+3%以上となっている位置の仮想区画領域Aについて、その段階値が「6」に設定され、膜厚が基準値−3%以下となっている位置の仮想区画領域Aについて、その段階値が「4」に設定される。
【0085】
これにより、膜厚が基準値±3%未満の範囲となっている位置の区画領域には19ドット分の、膜厚が基準値+3%以上となっている位置の区画領域には18ドット分の、膜厚が基準値−3%以下となっている位置の区画領域には20ドット分の液状体がそれぞれ配置される。かくして、配置量誤差が±1ドット(中心値に対して約5.3%)の単位で補正され、配置量誤差に起因した液状体の配置ムラを好適に抑えることができる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、図11、図20、図21を参照して、本発明の第4実施形態について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図20は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。図21は、仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図である。
【0087】
この第3実施形態は、第2実施形態における配置量誤差の補正と第1実施形態におけるランダムなムラの付加とを組み合わせた態様となっている。すなわち、ダミー基板の計測結果に基づいて所定数bの設定情報を生成し、さらに図11のテンプレートに基づいてこの情報の補正を行い、補正後の情報を参照して第2のドットパターンの生成を行う。
【0088】
図20において、仮想区画領域の上段に示す数値はダミー基板の計測結果に基づく最初の設定情報を、下段に示す数値はその補正情報を表している。補正情報は、図11のテンプレートにおける段階値0に対して−1、段階値1に対して0、段階値2に対して+1とされ、最初の設定情報の数値と補正情報の数値の総和として、図21に示すように補正後における最終的な設定情報が得られる。
【0089】
このような実施形態によれば、配置量誤差に起因した液状体の配置ムラを好適に抑えることができると共に、抑えきれないスジ状のムラを、ランダムなムラの付加によって目立たなくすることができる。
【0090】
(第4実施形態)
次に、図22を参照して、本発明の第4実施形態について、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
図22は、有機EL表示装置の要部構成を示す断面図である。
【0091】
図22に示すように、有機EL表示装置100は、素子基板111と、素子基板111上に形成された駆動回路部112と、駆動回路部112上に形成された発光素子部113と、駆動回路部112および発光素子部113を封止するための封止基板114と、を備えている。封止基板114によって封止された封止空間115には、不活性ガスが充填されている。
【0092】
発光素子部113は、バンク120で区画された複数の区画領域119を有しており、この区画領域119内には発光素子125が形成されている。発光素子125は、駆動回路部112の出力端子であるセグメント電極(陽極)121と、共通電極(陰極)124との間に、正孔輸送層122、有機EL材料層123が積層されて構成されている。また、バンク120と駆動回路部112との間には、階調要素間の干渉を防ぐための遮光膜126が、金属クロムやクロム酸化物等で形成されている。
【0093】
正孔輸送層122は、有機EL材料層123に正孔を注入するための機能層であり、ポリチオフェン誘導体のドーピング体(PEDOT)などの高分子導電体で形成されている。有機EL材料層123は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の有機EL材料、例えば、ポリフルオレン誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体などで形成されている。正孔輸送層122、有機EL材料層123は、第1実施形態で説明した液状体配置方法を用い、所定領域としての区画領域119に対応する機能性材料(PEDOT/有機EL材料)を含む液状体を配置して製造されたものである。
【0094】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の液状体配置方法を用いた別の例として、例えば、プラズマディスプレイ装置における蛍光膜の形成、あるいは、電気回路における導電配線や抵抗素子の形成などが挙げられる。
また、実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】カラーフィルタの構成を示す平面図。
【図2】カラーフィルタの構造を示す断面図。
【図3】液状体吐出装置の要部構成を示す斜視図。
【図4】ヘッドユニットにおけるヘッドの配置構成を示す平面図。
【図5】液状体吐出装置の電気的構成を示す図。
【図6】ドットパターンとノズルの位置との関係を示す図。
【図7】カラーフィルタにおける着色部の形成工程を示すフローチャート。
【図8】液状体配置を行う際の基板の状態を示す平面図。
【図9】第1のドットパターンを示す図。
【図10】第2のドットパターン生成に係る処理を示すフローチャート。
【図11】段階値のテンプレートを示す図。
【図12】(a),(b)は、生成された第2のドットパターンの例を示す図。
【図13】変形例1に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図14】変形例2に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図15】変形例3に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図16】変形例4に係る段階値のテンプレートを示す図。
【図17】着色部の形成工程を示すフローチャート。
【図18】区画領域間における色度分布の計測結果の一例を示す図。
【図19】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図20】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図21】仮想区画領域毎の所定数bの設定情報を示す図。
【図22】有機EL表示装置の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0096】
1…カラーフィルタ、2…着色部、4…基板、5…バンク、6…所定領域としての区画領域、8…個体領域、20…ノズル、100…有機EL表示装置、119…所定領域としての区画領域、120…バンク、122…正孔輸送層、123…有機EL材料層、125…発光素子、200…液状体吐出装置、MT…マトリクス、P…基板、A…仮想区画領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルと基板とを相対的に走査させながら前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、
前記複数の所定領域のそれぞれに対応して所定数aのドットが設定された第1のドットパターンを生成するAステップと、
前記所定領域毎に所定数bを設定すると共に、当該所定数bのドットを前記所定数aのドットから消去して第2のドットパターンを生成するBステップと、
前記第2のドットパターンに基づいて前記液状体を吐出するCステップと、を有し、
前記Bステップにおいて、前記ノズルの吐出情報に基づいて判定される禁則ドットを優先的に消去することを特徴とする液状体配置方法。
【請求項2】
前記所定領域は、バンクにより区画されていることを特徴とする請求項1に記載の液状体配置方法。
【請求項3】
前記Bステップにおいて、一ないし複数の前記所定領域からなるブロック毎にランダムまたは組織的に設定される段階値に基づいて、前記所定数bの設定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の液状体配置方法。
【請求項4】
前記Bステップに先立って、ダミー基板上に設定された前記複数の所定領域に対して前記液状体の配置を行い、前記複数の所定領域における配置量の分布を計測するDステップを有し、
基板前記Bステップにおいて、前記Dステップの計測結果に基づいて前記所定数bを設定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液状体配置方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、色材を含む前記液状体を配置するステップと、
配置された前記液状体を固化して、前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする着色部を形成するステップと、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、有機EL材料を含む前記液状体を配置するステップと、
配置された前記液状体を固化して前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする発光素子を形成するステップと、を有する有機EL表示装置の製造方法。
【請求項1】
複数のノズルと基板とを相対的に走査させながら前記ノズルから液状体を吐出することにより、前記基板上に設定された複数の所定領域に対して前記液状体をそれぞれ配置する液状体配置方法であって、
前記複数の所定領域のそれぞれに対応して所定数aのドットが設定された第1のドットパターンを生成するAステップと、
前記所定領域毎に所定数bを設定すると共に、当該所定数bのドットを前記所定数aのドットから消去して第2のドットパターンを生成するBステップと、
前記第2のドットパターンに基づいて前記液状体を吐出するCステップと、を有し、
前記Bステップにおいて、前記ノズルの吐出情報に基づいて判定される禁則ドットを優先的に消去することを特徴とする液状体配置方法。
【請求項2】
前記所定領域は、バンクにより区画されていることを特徴とする請求項1に記載の液状体配置方法。
【請求項3】
前記Bステップにおいて、一ないし複数の前記所定領域からなるブロック毎にランダムまたは組織的に設定される段階値に基づいて、前記所定数bの設定を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の液状体配置方法。
【請求項4】
前記Bステップに先立って、ダミー基板上に設定された前記複数の所定領域に対して前記液状体の配置を行い、前記複数の所定領域における配置量の分布を計測するDステップを有し、
基板前記Bステップにおいて、前記Dステップの計測結果に基づいて前記所定数bを設定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液状体配置方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、色材を含む前記液状体を配置するステップと、
配置された前記液状体を固化して、前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする着色部を形成するステップと、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液状体配置方法を用いて、前記複数の所定領域のそれぞれに、有機EL材料を含む前記液状体を配置するステップと、
配置された前記液状体を固化して前記複数の所定領域をそれぞれ画素の対応領域とする発光素子を形成するステップと、を有する有機EL表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−80207(P2008−80207A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261149(P2006−261149)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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