説明

液状媒体から成分を抽出するためのストリッピング塔および方法

液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング塔および方法であって、ストリッピング塔は、実質的に円筒形の壁(54)を有する垂直な塔(10)を備え、垂直な塔(10)は、水平な有孔プレート(20)によって、一連の重ねられたチャンバ(11、12、・・・、16、17)に分割され、各チャンバ(11、12、・・・、16、17)は、シケインを形成するように位置決めされた幾つかの垂直隔壁(34、34I、34II、34III、34IX、34V)を有し、上部チャンバ(17)は、少なくとも1つの液状媒体流入口(28)を有する。本発明の1つの重要な態様によれば、上部チャンバ(17)は、液状媒体の受入帯域(90)を有し、受入帯域(90)は、受入帯域(90)において液状媒体の脱泡を行うことができるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング塔、特に、水性ポリマーのスラリーからモノマーを抽出するためのストリッピング塔に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁重合は、ポリ塩化ビニル(PVC)を製造するのに通常用いられる技術である。この公知の技術では、ビニルモノマー(塩化ビニル)が水性媒体の存在下で重合され、塩化ビニルのすべてが重合される前に重合は停止する。一般的に、モノマーの量の80〜95%がポリマーに変換されたときに、重合は停止する。その結果、重合の後に収集されたポリ塩化ビニルの水性スラリーが、取り除くべき適当な量の残留ビニルモノマーを含有する。
【0003】
欧州特許第0756883号明細書には、このようなポリ塩化ビニルのスラリーから含有する残留ビニルモノマーを取り除くため、スラリーを処理するように特別に設計された設備が記載されている。この公知の設備は、水平な有孔プレートが重ねられた一連のチャンバに分割された垂直な塔を備えている。清浄しようとする水性スラリーを約50℃から100℃まで予熱した後、スラリーを塔に導入し、含有するビニルモノマーを抽出するため上昇するガス流でフラッシュする。
【0004】
実際には、主として高流量の場合に、垂直な塔内のスラリーの流れに擾乱が観察される。これらの擾乱には特に、この塔の入口のところで、垂直な塔の壁へのスラリーの噴霧が含まれる。これらは、スラリーの清浄化の収率に関して有害な効果を有しており、プレートおよび垂直な塔の他の構成部品を傷つけるおそれがある。これらの擾乱を克服するための1つの手段は、低流量のスラリーを塔の入口のところで低温で作動させることであるが、その結果、生産性が損なわれる。
【0005】
それ故、膨張チャンバを提供し、垂直な塔に入るスラリーを膨張させることによって処理することにより、この欠点を克服しようとする試みがなされてきた。このような圧力の低下は、任意の適当な技術手段(1つの特に容易な手段がスラリーを大容量のチャンバに導入することである)によって達成することができる。
【0006】
したがって、例えば米国特許第6375793号明細書において、下に位置するチャンバの直径よりも大きな直径をもつ上部チャンバを提供することが示唆されている。すると、上部チャンバの容量は大きくなり、水性スラリーは膨張することができる。しかしながら、上部チャンバの拡大により、垂直な塔の構造がより複雑になる。
【0007】
脱泡に関する別の可能性は、垂直な塔への入口の上流側に膨張ユニットを設けることである。このような膨張ユニットは、欧州特許第1296747号明細書に提案されているように、下部が垂直な塔に連結され、上部がガスを排出させる円筒形の包囲体を備えている。このようにして、円筒形の包囲体は、垂直な塔に到達する前に水性スラリーを膨張させる。しかしながら、このような外部の膨張ユニットも大空間を必要とし、コスト高である。
【発明の概要】
【0008】
発明が解決しようとする課題
したがって、本発明の目的は、上述のシステムの欠点を示すことなく、液状媒体の十分な膨張を可能にする別のストリッピング塔を提案することである。
【0009】
課題を解決するための手段
本発明によれば、この目的は、液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング塔であって、実質的に円筒形の壁を有する垂直な塔を備え、垂直な塔が、水平な有孔プレートによって、一連の重ねられたチャンバに分割され、各チャンバが、シケインを形成するように位置決めされた幾つかの垂直隔壁を有し、上部チャンバが、少なくとも1つの液状媒体流入口を有するストリッピング塔によって達成される。本発明によれば、上部チャンバが、液状媒体の受入帯域を有し、この受入帯域が、受入帯域において液状媒体の脱泡を実施することができるように構成されている。
【0010】
それ故、本発明による垂直な塔は、上部チャンバの受入帯域において液状媒体の十分な膨張を可能とする。上部チャンバの受入帯域においてこの膨張を実施することができるので、外部の膨張ユニットを設けることは必要ない。受入帯域が特に脱泡に適合しているので、上部チャンバの構造は、下に位置するチャンバと大きく異なるものとする必要はない。このようにして、垂直な塔を容易かつ廉価に構成することができる。
【0011】
用語「成分」は、液状媒体中に存在し、この液状媒体からガスによって抽出される任意の成分を意味するものとする。液状媒体中に存在するこのような成分は、ガス状化合物又は液体化合物であり、ガスによる抽出の際、ガス状化合物に変換される。成分の例として、アンモニア、二酸化炭素、例えば塩化ビニルのようなモノマー、および揮発性の有機化合物があげられる。成分は、好ましくは二酸化炭素又は塩化ビニルのようなモノマー、特に好ましくはモノマー、極めて好ましくは塩化ビニルである。
【0012】
表現「液状媒体」は、水性であるか有機性であるかを問わず、任意の液状の媒体を意味するものとし、固形粒子で構成されるものでもよく、固形粒子で構成されなくともよい。液状媒体の例として、固形粒子を含まない溶液、および固形粒子を含む(スラリーとしても知られる)懸濁液があげられる。液状媒体は、好ましくは固形粒子が充満しているか或いは固形粒子が充満していない水性の液状媒体、特に好ましくは懸濁液又はスラリーのような固形粒子が充満している水性の液状媒体、極めて好ましくは水性ポリマーのスラリー、そして実際には非常に好ましくはポリ塩化ビニルの水性スラリーである。
【0013】
このようにして、垂直な塔を、例えば、炭酸塩/重炭酸塩の溶液の脱重炭酸塩化、プロセス水および洗浄水として再利用できる廃水のような水の浄化、或いは水性ポリマーからのモノマーの抽出に使用することができる。塔は、好ましくは水性ポリマーのスラリーからモノマーの抽出、特に好ましくはポリ塩化ビニルのスラリーから塩化ビニルの抽出に使用される。
【0014】
ガスの例として、蒸気、空気、不活性ガスがあげられる。蒸気が好ましい。
【0015】
上部チャンバは好ましくは、下に位置するチャンバの直径に相当する直径を有している。垂直な塔の構造は、垂直な塔がその高さ全体にわたって円筒形の外観を有するという事実によって単純化される。この単純化した構造により、製造コストが低減される。
【0016】
1つの実施形態によれば、液状媒体の受入帯域は、少なくとも1つの垂直隔壁を取り外すことによって形成される。垂直隔壁の取り外しは、容易に受入帯域の拡大を可能にする。受入帯域の拡大は、脱泡に専念する帯域の容量を増加させる効果を有し、これにより垂直な塔の脱泡効果を増大させる。
【0017】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、受入帯域は、少なくとも1つの垂直隔壁を変形することによって形成される。垂直隔壁の変形も、受入帯域の拡大を可能にする。受入帯域の拡大は、脱泡に専念する帯域の容量を増加させる効果を有し、これにより垂直な塔の脱泡効果を増大させる。垂直隔壁の変形により、垂直隔壁を少なくとも部分的に保持することができる。これは、垂直隔壁が垂直な塔の荷重支持構造体の一部であるとき、特に利点を有する。
【0018】
受入帯域における垂直隔壁は、他の垂直隔壁に対して低い高さを有するのが好都合であり、これにより垂直隔壁の両側で液状媒体の分散を可能にする。
【0019】
受入帯域における垂直隔壁は好ましくは、その下縁に少なくとも1つの開口を備えており、これにより垂直隔壁の両側で液状媒体の分散を可能にする。垂直隔壁の下縁におけるこのような開口は、有孔プレート上への固形物の蓄積を防止することもできる。
【0020】
有孔プレートは好ましくは、受入帯域において孔の数を減らし、これにより蒸発を制限し、発泡作用を減少させる。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ストリッピング塔は、受入帯域において液状媒体の乱流の生成を可能にする乱流手段を備えている。液状媒体の乱流は、液状媒体の脱泡状態を向上させる。乱流手段は、液状媒体の流れを受入帯域の所定の領域に差し向けるベンドを有する供給パイプによって形成することができる。或いは又はさらに、上部チャンバへの液状媒体の入口の下流のデフレクタによって、乱流手段を形成してもよい。このようなデフレクタは、上部チャンバに入る液状媒体のジェットの流れを粉砕し、液状媒体を受入帯域の所定の領域に差し向けるファネルを形成する部分を備えてもよい。
【0022】
本発明の1つの態様によれば、垂直隔壁は、垂直な塔の壁に取り付けられるのが好都合であり、有孔プレートを保持するように設計されるのが好都合である。このようなストリッピング塔では、隔壁を支えるのはもはや有孔プレートではなく、隔壁が有孔プレートを支えるのが好都合である。実際には、ストリッピング塔の荷重支持構造体は、垂直隔壁および垂直な塔の壁によって形成されるのが好都合である。これらの垂直隔壁は、処理すべき液状媒体に対するシケインを形成するため、垂直な塔の壁に直接取り付けるのが好都合である。垂直隔壁は、好ましくはその下縁のところで、有孔プレートを保持するように形成されるのが好都合である。
【0023】
有孔プレートは、好ましくは2つの垂直隔壁間又は垂直隔壁と垂直な塔の壁との間の距離に相当する幅を有する複数のプレート部分によって形成するのが好都合である。したがって、有孔プレートは、複数の小さな構成部品に分割するのが好都合である。このようなプレート部分は、軽量かつ可撓性で、適所に操作しやすい。プレート部分の使用は、受入帯域における孔の数の減少も容易にする。
【0024】
プレート部分の厚さは、2mm〜8mm、好ましくは約4mmであるのが好都合である。厚さは、8mm以下、好ましくは6mm以下であるのが好都合であるが、2mm以上であるのが好都合である。したがって、有孔プレートの厚さは、一般的に最小厚さが10mmである通常のプレートよりも薄い。
【0025】
垂直隔壁は好ましくは横断面が逆T形状であり、その下縁のところに、垂直隔壁の両側に延び、プレート部分の支持体として作用するフランジを備えている。このようにして、垂直隔壁は、それらの間にプレート部分を容易に受け入れ、プレート部分を支えることができる。プレート部分は、垂直隔壁のフランジ上に載るのが好都合であり、好ましくは、例えば溶接又はボルト止めによってフランジに取り付けられている。
【0026】
プレート部分の孔は、実質的に円筒形であるのが好都合である。円筒形の孔は、迅速に作ることができ、プレート部分の迅速で廉価な製造を可能にする。有孔プレート毎の孔の数(m2当たりの個数が1500個を超え、2000個を超えることもある)を考慮すると、円筒形の孔が顕著な利点となることに留意すべきである。従来技術によれば、孔は一般的に、異径の2つの円筒形部分が円錐台によって連結された複雑な形状である。プレートの上側の円筒形部分の直径は1.2mm程度、プレートの下側の円筒形部分の直径は6mm程度、円錐の角度は120度未満、有孔プレートの厚さは12mm程度である。このような孔の製造は、特殊な孔抜き具又は2つの別の孔抜き具のいずれかを必要とする。プレート部分の厚さが薄いため、複雑な形状のこれらの孔を、単純な円筒形状の孔に置き換えることができる。孔が円筒形状であるのが好ましいが、例えば下向き又は上向きの開口をもつ少なくとも部分的に円錐形のような他の形状の孔を設けることが除外されないことに留意すべきである。
【0027】
垂直な塔の壁は、単一の部分として形成するのが好都合である。垂直な塔を形成するため幾つかの構成部品を組み立てることは、もはや必要ない。種々の構成部品間のクランプとシールを取り除くことができる。実際には、塔の内部の、より容易に交換できる垂直隔壁とプレート部分によって形成される荷重支持構造体により、種々の水平プレートに接近するため、特にマンホールがあるので塔の分解は不要である。
【0028】
垂直隔壁は好ましくは、垂直な塔の壁に溶接されている。しかしながら、例えばボルト止めのような別の手段によって、垂直隔壁を垂直な塔の壁に取り付けることを除外しない。
【0029】
各垂直隔壁は、垂直な塔の壁に取り付けられた第1端と、第2端とを備えているのが好都合である。1つの実施形態によれば、第2端は、液状媒体の通過用の開口を形成するように、垂直な塔の壁から一定距離のところに配列されている。別の好ましい実施形態によれば、第2端は、一方が垂直隔壁に、他方が垂直な塔の壁に連結され、垂直隔壁を通る開口を形成するように構成されたストラットを備えている。
【0030】
すすぎシステム、好ましくは高圧すすぎシステムを、頭上に配置されたプレート部分の下面を清浄するため、チャンバに配列するのが好都合である。このようなすすぎシステムは、有孔プレートと同軸に配置され、複数の高圧ノズルを有する分布リングを備え、この分布リングは、ノズルから出るジェットが有孔プレートの下面全体を覆うように位置決めされている。ポートホールを清掃するため、ジェットがチャンバのポートホールに向けられた補助的なノズルを設けてもよい。このようなすすぎシステムは、残留物、特にPVCの残留物が有孔プレートの下面に付着しないようにすることができる。このすすぎシステムは、多数の大径穴をもつ同心円形パイプで構成されている公知のすすぎシステムよりも良好な性能を有している。
【0031】
有孔プレートは、液状媒体を1つのチャンバから下に位置するチャンバに流出させる排出開口を有する排出帯域を備えている。本発明の1つの態様によれば、排出開口の上流に、チャンバ内での液状媒体の高さを調節するバリアが配置されている。
【0032】
好ましくは、バリアは、垂直隔壁と垂直な塔の壁の両方又はいずれか一方に、取り外し可能に取り付けられている。バリアは、例えば、垂直隔壁と壁の両方又はいずれか一方にボルト止めしてもよい。このようにして、バリアは、容易に分解することができ、異なる高さのバリアと交換してもよく、これによりチャンバ内での液状媒体の高さを容易に調整することができる。バリアは、懸濁した固形物の排水を促進することを意図する開口を、その下部に備えていてもよい。好ましくは、バリアは、下部におけるこのような開口を備えている。
【0033】
本発明はまた、液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング方法、特に本発明によるストリッピング塔を使用して水性ポリマーのスラリーからモノマーを抽出するためのストリッピング方法に関する。
【0034】
本発明の他の特質および特徴は、添付図面を参照して、例示として以下に示す幾つかの好ましい実施形態の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】垂直な塔の立面図である。
【図2】垂直な塔のチャンバの斜視図である。
【図3】本発明による垂直隔壁の第2端の正面図である。
【図4】本発明による垂直隔壁の横断面図である。
【図5】本発明によるすすぎシステムの略図である。
【図6】図5のすすぎシステムの正面図である。
【図7】本発明による垂直な塔の上部の横断面図である。
【図8】図7の垂直な塔の隔壁の正面図である。
【図9】本発明による垂直な塔の上部の部分横断面図である。
【0036】
これらの図面において、同じ参照符号は同一の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に示される設備は、垂直な塔10を備えており、垂直な塔10は、水平な有孔プレート20によって、一連の重ねられたチャンバ11、12、・・・、16、17に分割されている。図示された垂直な塔10は、ポリ塩化ビニルのスラリーから残留塩化ビニルを抽出するための塔である。垂直な塔10の上部チャンバ17は、全体が参照符号22で示されたポリ塩化ビニルスラリーの取入装置と連通している。この取入装置は、ヒータ24と、スラリーをヒータ24に導入するためのパイプ26と、ヒータ24と垂直な塔10の上部チャンバ17との間の供給パイプ(流入口)28とを備えている。ガス取入パイプ30が垂直な塔10の下部チャンバ11内に開口し、流出パイプ38がチャンバ12をヒータ24に連結している。垂直な塔10の頂部にベント32が設けられている。塔の各チャンバは、マンホール73とポートホール86の両方又はいずれか一方を装備している。垂直な塔10に関する詳細およびその作動は、欧州特許第0756883号明細書で入手できる。
【0038】
この設備は、懸濁重合技術によって得られるポリ塩化ビニルのスラリーの処理に特に適合している。これらのスラリーは、重合によって残留する塩化ビニルで汚染されている。設備のこの特定の用途では、重合によって生ずるポリ塩化ビニルのスラリーは、取入パイプ26を介してヒータ24内に導入される。スラリーは、ヒータ24内で約100℃まで加熱される。加熱されたスラリーは、ヒータ24から供給パイプ(流入口)28を介して垂直な塔10の上部チャンバ17に移送される。
【0039】
垂直な塔10の上部チャンバ17において、スラリーはプレート20上に落下し、そこでスラリーは、オーバーフロー36に到達する前に、網のように張り巡らされた垂直隔壁34によって形成されたシケイン内を循環し、オーバーフロー36を通って落下し、垂直な塔10の下に位置するチャンバ16のプレート20上に落下する。このようにして、スラリーは、垂直な塔10を通って徐々に下降しチャンバ12に至る。スラリーは、垂直な塔10中を頂部から底部まで流れる際、パイプ30を介して塔の底部に導入されるガスの上昇流でフラッシュされる。ガス流でスラリーがフラッシュされる結果、スラリー中に存在する塩化ビニルが抽出され、垂直な塔10の頂部まで同伴される。塩化ビニルが含まれたガスは、垂直な塔10の頂部空間からベント32を介して排出される。チャンバ12に到達したスラリーは、塩化ビニルが実質的に除去されており、熱い。スラリーは、垂直な塔10から流出パイプ38を介して排出され、ヒータ24内に導入され、そこで顕熱を用いて、パイプ26を介して内部に流入するスラリーを加熱する。ヒータ24内で冷却されたスラリーは、抽出パイプ40を介してヒータ24を出る。垂直な塔10におけるスラリーの循環および処理に関する詳細は、欧州特許第0756883号明細書で入手できる。
【0040】
チャンバ、例えばチャンバ16が、垂直隔壁34の配列を特に図示した図2により詳細に示されている。
【0041】
図2には、チャンバ16の中央を横切る垂直平面42が示されており、垂直平面42は、上に位置するチャンバ17から出る水性スラリーをオーバーフロー36を通して受け入れる流入帯域44から、水性スラリーをオーバーフロー36'を通して下に位置するチャンバ15に排出する流出帯域46まで延びている。この垂直平面42は、チャンバ16を第1半部48と第2半部50に分割する。複数の垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vが、垂直平面42に対して実質的に直交して配列されている。垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vは、水性スラリーを流入帯域44から流出帯域46に誘導するシケインを形成する。全体として矢印52で表される水性スラリーの流れは、チャンバ16の縁帯域を除いて、垂直平面42に対してほぼ直交している。
【0042】
本発明の1つの態様によれば、垂直隔壁34は、垂直な塔10の壁54に取り付けられている。垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vは、そのたびごとに、チャンバ16の第1半部48又は第2半部50に交互に、垂直な塔10の壁54に連結された第1端を有している。このようにして、例えば垂直隔壁34IIは、チャンバ16の第1半部48において壁54に連結された第1端56と、チャンバ16の第2半部50における第2端58とを備えている。種々の垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vは、互いに実質的に平行であり、かつ、垂直平面42に対して直交している。
【0043】
第2端58は、図2に図示されるように、水性のスラリーを通過させるため、壁54から一定距離のところに配列するのがよい。他方、好ましくは、第2端58は、壁54に取り付けられ、水性スラリーを通過させる開口を備えている。この好ましい実施形態は、垂直隔壁34IIの第2端58を拡大して示した図3に図示されている。ストラット60が垂直隔壁34IIと壁54との間に設けられて第2端58を壁54に取り付け、垂直隔壁34IIを通して水性スラリーを通過させるための開口62が形成されている。
【0044】
図4は、上縁66および下縁68を有する垂直部分64を備え、逆T形の形状をなした垂直隔壁34IIの横断面を示している。下縁68は、垂直部分64の両側に延び、水平な有孔プレート20の支持体として作用するフランジ70を備えている。実際には、水平な有孔プレート20は、ストリップ形態の複数のプレート部分72によって形成されている。プレート部分72の幅は、2つの隣接する垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vの間、垂直隔壁34、34Vと壁54との間のそれぞれの距離に対応している。これらのプレート部分72は、垂直隔壁のフランジ70上に載り、例えば溶接又はボルト止めによってフランジ70に取り付けられている。フランジ70の下面74は、有孔プレート20の下面での取り付け個所を制限するため、隅部が丸味をおびている。上述の解決策の変形形態として、下縁にフランジをもつ垂直部分を備え、フランジがその下面にプレート部分を受け入れるように構成され、プレート部分がボルト止め又は溶接によってフランジに取り付けられた、横断面が逆T形の形状をなした垂直隔壁を設けることを除外しない。しかしながら、この解決策は、2つのプレート部分の接合部のところで、有孔プレートの下面に中空部を作り出す。別の変形形態では、肩部付きのフランジおよび対応する肩部をもつプレート部分を提供し、肩部のところでプレート部分をフランジに組み立てている。
【0045】
荷重支持構造体が垂直な塔10の壁54に取り付けられた垂直隔壁34、34I、34II、34III、34IV、34Vによって形成されるので、荷重支持構造体が水平な有孔プレートによって形成される公知の設備に対して、プレート部分72の強度を小さくしてもよい。したがって、プレート部分72の厚さを2mmから8mmにすることができる。このようなプレート部分72は、一定の可撓性を有しており、例えば損傷したプレート部分を交換するため、例えばマンホール73から、適所に容易に操作することができる。この交換は、垂直な塔10の内部から実施することができ、したがって従来技術の塔の場合のように、塔を分解する必要がない。また、これにより、垂直な塔10を塔の高さ全体を覆う1つの壁で(すなわち、幾つかの構成部品の組立を行うことなしに)構成することができる。種々の構成部品間のクランプとシールは、もはや重要な目的をもたず、したがって、これらの箇所での漏洩の課題が回避される。
【0046】
本発明の別の態様によれば、水平な有孔プレート20の下面77を清浄するため、有孔プレート20の下方にすすぎシステム76が設けられている。このようなすすぎシステム76は、図5および図6に概略的に図示されている。本発明によるすすぎシステム76は、有孔プレート20と同軸であって複数のノズル(好ましくは高圧ノズル)80を有する分布リング78を備えており、分布リング78は、ノズル80から出るジェットが有孔プレート20の下面77全体を覆うように位置決めされている。垂直な塔がポートホール86を備えている場合には、ポートホール86を清浄するため、ジェットがチャンバ15のポートホール86に向けられる補助ノズル84を設けてもよい。このようなすすぎシステム76は、多数の穴をもつ同心円形パイプで構成されているが、下面77全体に均一に噴霧しない公知のシステムよりも良好な性能を有する。
【0047】
一般的に、バリア88(図2)が、水性スラリーを1つのチャンバから下に位置するチャンバに通過させるオーバーフローの上流に設けられている。バリア88の高さは、有孔プレート上での水性スラリーの高さを定める。本発明の1つの態様によれば、バリア88は、垂直隔壁34と壁54の両方又はいずれか一方にボルト止めされており、これにより容易に分解して異なる高さのバリアと交換することができる。有孔プレート上での水性スラリーの高さを、このように容易に調整することができる。
【0048】
本発明の1つの重要な態様によれば、垂直な塔10は、ガスと液体の分離を可能にするため、脱泡帯域を備えている。したがって、図7に図示されるように、本発明は、下に位置するチャンバ11,12、・・、16と同じ直径を有する垂直な塔の上部チャンバ17に設けた受入帯域90を提案している。受入帯域90は、水性スラリーの脱泡を可能にするように構成されている。供給パイプ(流入口)28から水性スラリーを受け入れる有孔プレートの部分を拡大することによって、受入帯域90を形成してもよい。受入帯域90のこのような拡大は、上部チャンバ17(および任意的には1つ又はそれ以上の下に位置するチャンバ)の第1垂直隔壁92を取り除き或いは変形することによって行うこともできる。垂直隔壁がプレート部分72に対する荷重支持構造体を形成する際に、高さを減少させることによって、第1垂直隔壁92を変形するのが好都合である。図7において部分B‐Bの横断面を示す図8を参照することによって、第1垂直隔壁92をより詳細に説明することができる。第1垂直隔壁92の両側に水性スラリーを分布させるため、複数の通路94が第1垂直隔壁92に設けられている。通路94も、受入帯域90における固形物の蓄積を減少させるのに役立つ。
【0049】
発泡作用を減少させるため、受入帯域90におけるプレート部分72の孔の数を減らし、ガスを伴ったモノマーの蒸発を制限する。
【0050】
供給パイプ(流入口)28は、図7に示されるように、上部チャンバ17に入り、水性スラリーの流れを受入帯域90に差し向けるベンド96を備えている。好ましくは、供給パイプ(流入口)28は、受入帯域90において水性スラリーの乱流を生じさせるように配列されている。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、図9に図示されるように、水性スラリーの上部チャンバ17への入口の下流に、デフレクタ98が設けられている。デフレクタ98は、供給パイプ(流入口)28から上部チャンバ17内に入る水性スラリーのジェットの流れを粉砕し、水性スラリーを受入帯域90に差し向けるように設計されている。この目的のため、デフレクタ98は、ファネル(サイクロン)を形成する部分100を備えており、その部分も、受入帯域90に到達する水性スラリーの乱流を作り出す手段を備えている。第1垂直隔壁92の交換又は変形、水性スラリーの乱流、デフレクタ98は、単独で又は組み合わせて使用される要素であることに留意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング塔であって、実質的に円筒形の壁を有する垂直な塔を備え、前記垂直な塔が、水平な有孔プレートによって、一連の重ねられたチャンバに分割され、各チャンバが、シケインを形成するように位置決めされた幾つかの垂直隔壁を有し、上部チャンバが、少なくとも1つの液状媒体流入口を有するストリッピング塔において、
前記上部チャンバが、液状媒体の受入帯域を有し、前記受入帯域が、前記受入帯域において液状媒体の脱泡を実施することができるように構成されていることを特徴とするストリッピング塔。
【請求項2】
前記上部チャンバが、下に位置するチャンバの直径に相当する直径を有することを特徴とする請求項1に記載のストリッピング塔。
【請求項3】
前記受入帯域が、少なくとも1つの垂直隔壁を取り外すことによって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のストリッピング塔。
【請求項4】
前記受入帯域が、少なくとも1つの垂直隔壁を変形することによって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のストリッピング塔。
【請求項5】
前記受入帯域における前記垂直隔壁が、他の前記垂直隔壁に対して低い高さを有していることを特徴とする請求項4に記載のストリッピング塔。
【請求項6】
前記受入帯域における前記垂直隔壁が、その下縁に少なくとも1つの開口を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載のストリッピング塔。
【請求項7】
前記有孔プレートが、前記受入帯域において孔の数が減らされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のストリッピング塔。
【請求項8】
前記受入帯域において前記液状媒体の乱流の生成を可能にする乱流手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のストリッピング塔。
【請求項9】
前記垂直隔壁が、前記垂直な塔の前記壁に取り付けられ、前記有孔プレートを保持するように設計されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のストリッピング塔。
【請求項10】
前記有孔プレートが、複数のプレート部分によって形成されていることを特徴とする請求項1〜9に記載のストリッピング塔。
【請求項11】
前記プレート部分の厚さが、2mmから8mmであることを特徴とする請求項10に記載のストリッピング塔。
【請求項12】
前記垂直隔壁が、前記垂直隔壁の両側に延び、前記プレート部分の支持体として作用するフランジを下縁のところに備えた、逆T形の横断面を有することを特徴とする請求項10又は11に記載のストリッピング塔。
【請求項13】
前記プレート部分の前記孔が、実質的に円筒形であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載のストリッピング塔。
【請求項14】
有孔プレートが、1つのチャンバから下に位置するチャンバに前記液状媒体を流出させる排出開口を有する排出帯域を備え、前記排出開口の上流にバリアが位置決めされ、前記バリアが、前記チャンバ内における前記液状媒体の高さを調整することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のストリッピング塔。
【請求項15】
液状媒体からガスを用いて成分を抽出するためのストリッピング方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載のストリッピング塔を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−513297(P2012−513297A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541386(P2011−541386)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067143
【国際公開番号】WO2010/072613
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】