説明

液状樹脂組成物および半導体装置

【課題】
チップマウント後の濡れ拡がり性、ブリード性に優れ、かつ良好な熱伝導性を示す樹脂組成物およびそれを半導体用ダイアタッチ材または放熱部材用接着剤として使用した際に信頼性、熱伝導性に優れた半導体装置を提供すること。
【解決手段】
(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物、(B)非導電性の熱伝導性フィラーを含有し、前記(B)の平均粒径が2〜15um、前記(B)の含有量が32.5〜47.5vol%、さらにその時の液状樹脂組成物のブルックフィールド粘度計による0.5rpmと5.0rpmのチキソ比が1以上4以下であることを特徴とする液状樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器の小型軽量化、薄型化、高機能化が著しく進む中で半導体パッケージ自体の小型薄型化が強く要求されており、それに伴い半導体パッケージ内の半導体素子の薄型化が必要不可欠となってきている。半導体素子を支持体に接着するダイアタッチ材料としてはコストメリットなどの理由で液状のダイアタッチ材料がしばしば用いられるが、薄型化された半導体素子を支持体にマウントする状況において液状のダイアタッチ材料を使用した場合は半導体素子上部に這い上がりやすくなるため、液状のダイアタッチ材料としてはより一層低加重で良好な濡れ拡がり性を示すことが求められている。
【0003】
また、半導体パッケージの高集積化に伴い半導体素子の発熱量の増加が見込まれるため、熱伝導性への要求も高く、さらには高集積化のために支持体となる有機基板の端子間のファインピッチ化が加速しており、ダイパッドとワイヤーボンディングをするAu層のギャップが非常に狭くなるため、ダイアタッチ材料には今まで以上にBT基板(シアネートモノマーおよびそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)の金メッキ部分やソルダーレジストが塗布されていないBT部分でブリードしないことも要求されるようになってきている。
【0004】
一般的に液状のダイアタッチ材料は導電性と非導電性のタイプに大別されるが、非導電性タイプは安価な非金属類のフィラーを用いて作製されるため、導電性タイプと比較して非常に安価であり、さらに導電性を必要しない、あるいはチップスタックなどの絶縁性を必要とする用途において使用することが可能であるため現在幅広く用いられている。
【0005】
これまで、非導電性タイプのダイアタッチ材料には非導電性フィラーとしてシリカを用いて作業性を向上させたものが開発されているが(例えば、特許文献1参照)、シリカ表面に対して樹脂が濡れにくいためにチキソ性が高くなり、その結果、低加重でのチップ濡れ広がり性、さらに熱伝導率も良くなかった。また、非導電性フィラーとして熱伝導性の良好なアルミナを用いたものも開発されているが(例えば、特許文献2参照)、チップ濡れ広がり性、ブリード性、熱伝導性すべてを満足するものはなく、すべてを満足できる液状のダイアタッチ材料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2501258号公報
【特許文献2】特開平8−41294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、チップマウント後の濡れ拡がり性、ブリード性に優れ、かつ良好な熱伝導性を示す樹脂組成物および本発明を半導体用ダイアタッチ材または放熱部材用接着剤として使用した際に信頼性、熱伝導性に優れた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記[1]〜[6]に記載の本発明により達成される。
[1] 基材と半導体素子とを接着する液状樹脂組成物であって、
(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物
(B)非導電性の熱伝導性フィラーを含有し、
前記(B)の平均粒径が2〜15um、
前記(B)の含有量が32.5〜47.5vol%、
さらにその時の液状樹脂組成物のブルックフィールド粘度計による0.5rpmと5.0rpmのチキソ比が1以上4以下であることを特徴とする液状樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記(A)のラジカル重合可能な官能基が不飽和炭素−炭素結合である[1]に記載の液状樹脂組成物。
【0010】
[3] 前記(A)のラジカル重合可能な官能基が、(メタ)アクリロイル基である[1]または[2]に記載の液状樹脂組成物。
【0011】
[4] 前記(B)が、アルミナ、マグネシア、窒化ホウ素、窒化アルミニウムより選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【0012】
[5] さらに、前記液状樹脂組成物が少なくとも1つ以上の低応力剤を含有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【0013】
[6] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、チップマウント後の濡れ拡がり性、ブリード性に優れ、かつ良好な熱伝導性を示すので、本発明を半導体用ダイアタッチ材または放熱部材用接着剤として使用することで信頼性、熱伝導性に優れた半導体装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物、(B)非導電性の熱伝導性フィラー、を含有する樹脂組成物であり、該非導電性の熱伝導性フィラーの平均粒径が2〜15um、含有量が32.5〜47.5vol%、さらにその時の樹脂組成物のBF粘度計による0.5rpmと5.0rpmのチキソ比が1以上4以下であることによって、良好なチップマウント後の濡れ拡がり性、ブリード性、かつ熱伝導性を実現できるので、本発明を半導体用ダイアタッチ材または放熱部材用接着剤として使用することで信頼性、熱伝導性に優れた半導体装置の提供が可能となるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る液状樹脂組成物は、硬化後の接着性や弾性率などにおいて良好な特性を示すことができるという観点から、(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物(以下、(A)成分ともいう)を含有する。さらに、硬化性の良さを考慮するとラジカル重合可能な官能基としては、不飽和炭素−炭素結合であることが好ましく、例えば(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基、ビニル基、マレイミド基などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、保存安定性、硬化性、接着性の他に、非導電性の熱伝導性フィラーとの濡れ性が良いため、チキソ性が高くならず、良好なチップマウント後の濡れ広がり性を示すことから特に好ましい。また、本発明の目的を達成することが可能な範囲で、また硬化性、作業性、信頼性等に影響を与えない範囲で種類の異なるラジカル重合可能な官能基を有する化合物を併用したり、ラジカル重合可能な官能基を有する化合物と、例えばエポキシ樹脂等の種類の異なる樹脂を併用することも可能である。なお、(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物は液状樹脂組成物中に15〜45wt%含まれることが好ましい。これにより、リフローなどの高温処理に耐えうる接着強度を達成できるといった効果を奏する。
【0018】
本発明で使用する(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物の一つである(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体的な例としては、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルメチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルメチルテトラヒドロフタル酸、2−ヒドロキシ1,3ジ(メタ)アクリロキシプロパン、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4―シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、2−(メタ)アクリロイロキシエチル、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、N−ビニル−2−ピロリドン、エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などが挙げられるが特に限定しない。また、これらの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上を併用してもかまわない。
【0019】
本発明で使用する(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物の一つである(メタ)アリル基を有する化合物の具体的な例としては、例えばジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリート、ジアリルマレート、アリルメタクリレート、アリルアセトアセタートなどの他に、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸、1,4−ジシクロジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸やそのメチルエステル誘導体と炭素数2〜8であるアルキレンジオールにより合成されたポリエステルの末端にアリルアルコールをエステル化により付加した両末端アリルエステル系化合物などが挙げられるが特に限定しない。また、これらの(メタ)アリル基を有する化合物は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上を併用してもかまわない。
【0020】
本発明で使用する(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物の一つであるビニル基を有する化合物の具体的な例としては、例えば1,3−ブタジエン、p−メチルスチレン、スチレン、p−クロロスチレン、アクリロニトリルなどが挙げられるが特に限定しない。また、これらのビニル基を有する化合物は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上を併用してもかまわない。
【0021】
本発明で使用する(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物の一つであるマレイミド基を有する化合物の具体的な例としては、例えば1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、6,7−メチレンジオキシ−4−メチル−3−マレイミドクマリン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N−(1−フェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−アミノフェニル)マレイミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ブロモメチル−2,3−ジクロロマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−スクシンイミジル3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル3−マレイミドプロピレート、N−スクシンイミジル3−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル3−マレイミドヘキサノアート、N−[4−(2−ベンズイミドリル)フェニル]マレイミド、炭酸9−フルオレニルメチルN−スクシンイミジル、炭酸2−ブロモベンジルスクシンイミジル 、3,3’−ジチオジプロピオン酸ジ(N−スクシンイミジル)、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)こはく酸イミド、N−(2−クロロカルボベンゾキシオキシ)こはく酸イミド、N−(tert−ブトキシカルボニル)−O−ベンジル−L−セリンN−スクシンイミジル、N−アミノこはく酸イミド塩酸塩、N−ブロモこはく酸イミド、N−カルボベンゾキシオキシこはく酸イミド、N−クロロこはく酸イミド、N−エチルこはく酸イミド、N−ヒドロキシこはく酸イミド、N−ユードこはく酸イミド、N−フェニルこはく酸イミド、N−サクシニミジル6−(2,4−ジニトロアニリノ)ヘキサノエート、N−サクシニミジル6−マレイミドヘキサノアートなどが挙げられるが、好ましくは1分子中に2つのマレイミド環をもつビスマレイミドが硬化という観点からは好ましい。その2つのマレイミド環を脂肪族や芳香族の炭化水素やそれらの炭化水素からなるアルキレン基をエーテルやエステルなどを介し結合していても構わない。また、これらのマレイミド基を有する化合物は、硬化性、作業性、接着性、信頼性等の点より2種類以上を併用してもかまわない。
【0022】
本発明に係る液状樹脂組成物は、絶縁性や熱伝導性において良好な特性を示すことができるという観点から、(B)非導電性の熱伝導性フィラー(以下、(B)成分ともいう)を含有することが好ましい。ここでいう(B)非導電性の熱伝導性フィラーとは、体積固有抵抗が1×1012Ω・cm以上であり、かつ熱伝導率が20W/m・K以上のフィラーを指し、特に上述の特性を有するセラミックス粉末であることが好ましい。このような(B)非導電性の熱伝導性フィラーとしては、例えばアルミナ、マグネシア、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが挙げられ、これらは単独または2種類以上を混合して用いることもできる。
【0023】
本発明で使用する(B)非導電性の熱伝導性フィラーの平均粒径は、2μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。これは平均粒径がこれより小さい場合には液状樹脂組成物の粘度、チキソ比が高くなりすぎ、良好なチップマウント後の濡れ広がり性を得ることができず、これより大きい場合には、チップマウント後のダイアタッチ層の厚みが厚くなったり、粗粒の影響によって濡れ広がり性が悪化するためである。
【0024】
本発明で使用する(B)非導電性の熱伝導性フィラーの含有量は、32.5vol%以上47.5vol%以下であることが好ましく、35vol%以上45vol%以下であることがより好ましい。これは含有量がこれより小さい場合には(B)非導電性の熱伝導性フィラーを添加した効果が薄くなり、良好な熱伝導性を有する硬化物を得ることができず、これより大きい場合には、液状樹脂組成物の粘度、チキソ比が高くなりすぎ、良好なチップマウント後の濡れ広がり性を得ることができないためである。
【0025】
また、本発明において(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物と上記条件を満たす(B)非導電性の熱伝導性フィラーを含有する液状樹脂組成物はブルックフィールド粘度計による0.5rpmと5.0rpmのチキソ比が1以上4以下であることが好ましい。これは、このチキソ比の値は(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物を含むワニス成分と(B)非導電性の熱伝導性フィラーの濡れ性を表すものであるため、チキソ比がこれより小さい場合にはディスペンス時にタレが生じやすくなり、これより大きい場合には、良好なブリード性やチップマウント後の濡れ広がり性を得ることができないためである。なお、チキソ比は0.5ccの液状樹脂組成物を25℃の条件下ブルックフィールド粘度計(HADV−3Ultra、スピンドルCP−51(角度1.565°、半径
1.2cm))で0.5rpmと5.0rpmの回転数にて測定した際に得られるそれぞれの粘度の値η0.5rpm、η5.0rpmからη0.5rpm/η5.0rpmとして求めることができる。
【0026】
また、本発明の液状樹脂組成物は、低応力剤を含有することも可能である。低応力剤を使用することで液状樹脂組成物の硬化物に靭性や低応力性を付与することができ、これによって半導体素子と支持体との密着性が大幅に向上することになり剥離がより一層生じにくいものとなる。使用される低応力剤としては特に限定されないが、例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトン、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ素ゴムなどが挙げられ、これらは単独または2種類以上を混合して用いることもできる。
【0027】
前記低応力剤の配合量は、液状樹脂組成物中1重量%以上15重量%以下であることが好ましい。これは配合量がこれより小さい場合には目的とする靭性や低応力性を充分に付与することができず、これより大きい場合には液状樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ作業性が悪化する原因となるためである。
【0028】
また、前記低応力剤は、他の樹脂との相溶性を高くする目的として、官能基を有している低応力剤を用いることがより好ましい。低応力剤が有する具体的な官能基としては、ビニル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基または無水マレイン酸基などが挙げられる。これらの官能基の中でも、相溶性が高くなり、塗布作業性に優れた液状樹脂組成物が得られる点で無水マレイン酸基を有する低応力剤を使用することがより好ましい。
【0029】
本発明は、(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物を含有しているため、重合反応を開始させる目的で重合開始剤を一緒に用いることが可能である。重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられるが、これは本発明の液状樹脂組成物は通常蛍光灯などの照明下で使用されるため光重合開始剤が含まれていると使用中に反応が進行し粘度上昇が生じるからである。このため、光重合開始剤は実質的に粘度上昇が観察されない程度で微量に存在してもよいが、好ましくは含有しないことである。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定されないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、液状樹脂組成物の常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独あるいは硬化性を制御するために2種類以上を併用して用いることもできる。重合開始剤の好ましい配合量は液状樹脂組成物中に0.02重量%以上5重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以上2重量%以下である。
【0030】
さらに、本発明の液状樹脂組成物はカップリング剤、消泡剤、界面活性剤などの添加剤を使用することも可能である。本発明の液状樹脂組成物は、例えば、各成分を予備混合した後3本ロールを用いて混練し、その後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0031】
本発明の液状樹脂組成物を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームあるいは基板の所定の部位に液状樹脂組成物をディスペンス塗布した後、半導体素子をマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。または、フリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に液状樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどである。
【0032】
本発明の半導体装置の一実施形態について、図1に基づいて説明する。
図1の半導体装置10おいて、本発明の液状樹脂組成物は接着層1として用いられる。本実施の形態において、ダイパット2は、特に限定されないが、リードフレーム、他の半導体素子、回路基板を含む実装基板、半導体ウエハ等の各種基材を用いることができる。この中でも、接着層1の放熱機能を発揮することが可能となるため、リードフレーム、ヒートシンクまたはBGA基板が好ましい。
また、半導体素子3は、パッド7及びボンディングワイヤ6を介して、リード4に電気的に接続している。また、半導体素子3は、その周囲が封止材層5により封止されている。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物として1,4−ジメタノールシクロヘキサン/1,6−ヘキサンジオール(=1/3(重量比))と炭酸ジメチルから合成した分子量約900のポリカーボネートジオールにメタクリル酸メチルを反応することにより得られるポリカーボネートジメタクリレート(宇部興産(株)製、UM−90(1/3)DM、以下(A)成分1)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成化学(株)製、CHDMMA、以下(A)成分2)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルTHF、(A)成分3)、(B)非導電性の熱伝導性フィラーとして平均粒径3μmのアルミナ粒子(新日鉄マテリアルズ(株)マイクロン社製、AX3−15R)、チキソ性付与剤として一次粒子平均径12nmのシリル化シリカ(日本アエロジル(株)製、AEROSIL R805、以下チキソ性付与剤)、低応力剤としてポリブタジエンと無水マレイン酸との反応により得られる無水マレイン酸変性ポリブタジエン(Satomer社製、Ricobond1731、数平均分子量5400、酸無水物当量583、以下低応力剤)、添加剤としてメタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−503P、以下カップリング剤1)、脂環式エポキシ基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−303、以下カップリング剤2)、重合開始剤として1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、パーヘキサCS、以下重合開始剤)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し脱泡することで液状樹脂組成物を得た後、以下の評価方法にて評価を行った結果を表1に示す。なお配合割合は重量%である。
【0035】
[実施例2〜4]
表1に示す割合で配合し実施例1と同様に液状樹脂組成物を得た後、評価を行った。
なお実施例4では非導電性の熱伝導性フィラー(B)として平均粒径10μmのアルミナ粒子((株)アドマテックス製、AO−509)を用いた。
【0036】
[比較例1〜5]
表1に示す割合で配合し実施例1と同様に液状樹脂組成物を得た後、評価を行った。
なお比較例3では非導電性の熱伝導性フィラー(B)として平均粒径0.7μmのアルミナ粒子((株)アドマテックス製、AO−502)、比較例4では非導電性の熱伝導性フィラー(B)として平均粒径20μmのアルミナ粒子((株)アドマテックス製、AO−520)、比較例5では非導電性の非熱伝導性フィラーとして平均粒径0.6μmのシリカ粒子((株)アドマテックス製、SO−E2/24C)を用いた。
【0037】
(評価方法)
・粘度:ブルックフィールド粘度計(HADV−3Ultra、スピンドルCP−51(
角度1.565°、半径1.2cm))を用い、25℃、0.5rpm、5.0rpmでの値を液状樹脂組成物作製直後に測定した。粘度の単位はPa・Sである。チキソ比は0.5rpm、5.0rpmにおけるそれぞれの粘度の値η0.5rpm、η5.0rpmからη0.5rpm/η5.0rpmとして求めることができ、チキソ比が1以上4以下の場合を合格とした。
・濡れ拡がり性:表1に示す液状樹脂組成物を用い、厚み0.3mmのBT基板(シアネートモノマーおよびそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)にガラスチップ(7x7mm、厚み0.2mm)を7割程度のチップ濡れになるように低加重でマウントし、その後常温で10分放置した後、デジタル顕微鏡によりチップ濡れ残りの程度を測定した。液状樹脂組成物のチップ濡れ残り面積が5%未満の場合を合格とした。濡れ残り面積の単位は%である。
【0038】
・熱伝導率:表1に示す液状樹脂組成物を用いて直径2cm、厚さ1mmのディスク状の試験片を作製した。(硬化条件は175℃4時間。ただし175℃までは室温から30分間かけて昇温した。)レーザーフラッシュ法(t1/2法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS−K−6911準拠で測定した密度(ρ)より熱伝導率(=α×Cp×ρ)を算出し、1W/m・K以上の場合を合格とした。熱伝導率の単位はW/m・Kである。
【0039】
・ブリード性: 表1に示す液状樹脂組成物を用いてBT基板(シアネートモノマーおよびそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)の金メッキ(Au)部分とソルダーレジストが塗布されていないBT部分に、シリコンチップ(1×1mm、厚み0.53mm)を175℃15分(ランプアップ30分)で硬化し接着した。その後、デジタル顕微鏡によりブリードの程度を測定した。硬化後の液状樹脂組成物のブリードが5μm未満の場合を合格とした。ブリードの単位はμmである。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により得られる液状樹脂組成物を用いると、チップマウント後の濡れ広がり性やブリード性に優れているためダイボンディングやワイヤーボンディングの工程で問題を起こすことなく、さらに熱伝導性が良好なため高機能の半導体装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 接着層
2 ダイパッド
3 半導体素子
4 リード
5 封止材層
6 ボンディングワイヤ
7 パッド
10 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と半導体素子とを接着する液状樹脂組成物であって、
(A)ラジカル重合可能な官能基を有する化合物
(B)非導電性の熱伝導性フィラーを含有し、
前記(B)の平均粒径が2〜15um、
前記(B)の含有量が32.5〜47.5vol%、
さらにその時の液状樹脂組成物のブルックフィールド粘度計による0.5rpmと5.0rpmのチキソ比が1以上4以下であることを特徴とする液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)のラジカル重合可能な官能基が不飽和炭素−炭素結合である請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)のラジカル重合可能な官能基が、(メタ)アクリロイル基である請求項1または請求項2に記載の液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)が、アルミナ、マグネシア、窒化ホウ素、窒化アルミニウムより選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、前記液状樹脂組成物が少なくとも1つ以上の低応力剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として用いて製作されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−30637(P2013−30637A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166122(P2011−166122)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】