説明

液状組成物

【課題】本発明は合成スチブンサイト、高分子類、多価アルコールを配合し、十分な保湿効果と使用感(伸びの良さ、塗り心地など)を実現しながらも、経時的に安定で匂い劣化を引き起こさず、乳化型化粧料など種々の剤型に応用可能な液状組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】合成スチブンサイトと多価アルコールを配合した製剤に、高分子類としてカルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランを配合することを特徴とする液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スチブンサイトと多価アルコールを配合した液状組成物において、匂いの劣化を抑制し、経時安定性を向上させるためにカルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランを配合した液状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水膨潤性の粘土鉱物は(1)べたつきがなく滑らかでさわやかなフィーリング、(2)皮膚面上で伸びがよくフィルムを形成して接着する、(3)含水量を高める、(4)エマルジョンやサスペンションの安定、(5)油脂分を含んだローションのべたつきの解消、(6)水や石けんによる洗い落とし性の改善、(7)ポリマーを含んだペーストの曵糸性の減少、(8)粉体の加圧成形性の向上などの性質を有する(非特許文献1)。このため、粘土鉱物を含有する化粧料は、広く利用されている(特許文献1〜4)。
【0003】
しかし、上記特許文献に記載の粘土鉱物は天然由来の粘土鉱物であるため、水に分散した場合に着色していて、化粧料として使用する際には外観を損なう場合があり、使用量が制限されるという欠点があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、合成スチブンサイトを利用した化粧料が提示されている(特許文献5)。
【0005】
しかしながら、経時的に凝集などをおこさない安定した化粧料を得るためには、合成スチブンサイトに増粘剤として高分子類を併用するなどの工夫も必要であった。
【0006】
水溶性粘土鉱物を配合した化粧料において経時安定性を向上させるために一般的に併用する高分子類としては、キサンタンガム(特許文献6)や、カラギーナン(特許文献7)が挙げられる。さらには、使用感や保湿のためグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール等の多価アルコールを配合することが一般的である。
【0007】
しかしながら、合成スチブンサイトを配合した化粧料において、経時的に、特に高温条件下で匂い劣化(変臭)を起こすことがしばしばあった。原因を明らかにすべく鋭意検討を行った結果、キサンタンガムやカラギーナン等を配合すると、この匂いの劣化が起こることがわかった。さらに、グリセリン等の多価アルコールを配合すると、経時的な匂いの劣化が助長されることがわかった。化粧料において匂い劣化は大きな問題となり、併用する高分子類や多価アルコールの配合を制限することがしばしば生じた。また、必要に応じて賦香することなどにより、経時的な匂いの劣化に考慮してきたが、十分に満足するものは得られなかった。近年、消費者に無香料や微香性である化粧料が好まれるようになり、匂いの劣化現象がより大きな問題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−150007号公報
【特許文献2】特開昭57−228795号公報
【特許文献3】特開昭59−172409号公報
【特許文献4】特開平3−83909号公報
【特許文献5】特開平11−180848号公報
【特許文献6】特開平11−116440号公報
【特許文献7】特開2004−107306号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「粘土ハンドブック、第2版」日本粘土学会編、技報堂出版(1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、合成スチブンサイトと多価アルコールと特定の高分子類を配合することにより、経時的に匂いの劣化を引き起こさない、種々の化粧料に汎用可能な液状組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、合成スチブンサイトを配合した液状組成物において、経時安定性を向上させ、さらに使用感改善や保湿の目的でグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール等の多価アルコールを配合しても、経時的な匂いの劣化がない高分子類としてカルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランが良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、保湿効果、使用感、経時的安定性を保ち、匂い劣化の起こらない液状組成物を提供するものである。本発明における液状組成物は、種々の剤型の化粧料に応用可能であり、クリーム、乳液、化粧水等に用いることができるものであり、特に乳化型化粧料へ応用することができる。
【0013】
(a)合成スチブンサイト、(b)多価アルコールとしてグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール等から選ばれる1種または2種以上、並びに(c)高分子類としてカルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランを用いることで、保湿効果、使用感、経時的安定性を保ち、匂い劣化の起こらない液状組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、保湿効果や使用感に優れ、経時的に安定で匂い劣化を引き起こさず、無香料や微香性の各種化粧料に配合可能な優れた液状組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
【0016】
本発明に用いられる合成スチブンサイトは、スメクタイトに属するケイ酸マグネシウム水和物であり、その特徴として、層内のアルカリ金属部分がマグネシウムとナトリウムであることが挙げられる。化粧料の表示名称はケイ酸(Na/Mg)である。そのような合成スチブンサイトとしては、例えばイオナイト(水澤化学工業社製)などがあり、市販されているものを用いてもよい。合成スチブンサイトの液状組成物中の配合量は特に限定されないが、通常は0.01〜10.0重量%配合するのがよく、好ましくは0.05〜5.0重量%である。0.01%未満では増粘効果が十分でない場合があり、また10%を超えると粘性が高くなり過ぎ、分散性が悪くなり、経時安定性も悪くなる場合がある。
【0017】
本発明に用いられる多価アルコールはグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール等であり、安全性が高く古くから化粧料の原料として広く利用されてきた。液状組成物中の配合量に特に制限はなく、通常化粧料に使用される配合量であれば問題はない。ただし、配合量が少なすぎると保湿効果が発揮されず、著しく過剰に配合した場合はべたつきなどの問題を生じる。
【0018】
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースは、アルカリセルロースにモノクロロ酢酸ナトリウムを反応後精製して得られるものである。その様なカルボキシメチルセルロースとしては、例えば、CMC1330(ダイセル化学工業社製)、セロゲンMP−120(第一工業製薬社製)などがあり、市販されているものを用いてもよい。カルボキシメチルセルロースの液状組成物中の配合量は特に限定されないが、通常は0.05〜5.0重量%配合するのがよい。0.05重量%未満では増粘効果が十分でない場合があり、また5.0重量%を超えると粘性が高くなり過ぎ、分散性が悪くなり、経時安定性が悪くなる場合がある。
【0019】
本発明に用いられるプルランは、3個のグルコースがα(1→4)結合したマルトトリオース単位が、α(1→6)結合した多糖類である。その分子量は特に限定されないが、化粧料に用いられるプルランは分子量が10万〜30万のものである。このようなプルランとしては、プルランPI−20(健食用)(林原社製)などがあり、市販されているものを用いてもよい。プルランの液状組成物中の配合量は特に限定されないが、通常は0.05〜10.0重量%配合するのがよい。0.05重量%未満では増粘効果が十分でない場合があり、また10.0重量%を超えると粘性が高くなり過ぎ、分散性が悪くなり、経時安定性が悪くなる場合がある。
【0020】
本発明の液状組成物は、種々の剤型の化粧料に応用可能であり、化粧水、乳液、クリーム、乳化型ファンデーション等に用いることができるものであり、特に乳化型化粧料へ応用することができる。
【0021】
本発明の液状組成物は、使用目的に応じて、各種成分、例えば、エタノール、多価アルコールなどのアルコール類、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などの両親媒性物質、酸化チタン、マイカ、酸化鉄などの顔料、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸などの高分子類、色素、ビタミン類、紫外線吸収剤、ホルモン剤、香料、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤などを適宜配合することができる。
【0022】
本発明の方法により、化粧料の匂い劣化を防ぐことができるため、従来試みられていたような香料によるマスキング等を必要とせず、香料の配合量を低減する、または香料を無添加とすることができる。これは、皮膚安全性の観点からも好ましいものである。
【0023】
次に以下に実施例を挙げてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例1〜20および比較例1〜7に示す組成に従って液状組成物および化粧料を調製した。尚、数値の単位は重量%であり、また、精製水により合計量を100重量%とした。
【実施例】
【0024】
<評価方法>
表1〜4に示す処方の液状組成物を以下の製法に従って調製し、匂い評価試験、使用試験および経時安定性試験を実施した。なお、実施例及び比較例の液状組成物は、室温、40℃、50℃、60℃の4か所で1か月保存した後、匂い評価、経時安定性評価を行った。
【0025】
<匂い評価試験>
上記温度で1か月保存した液状組成物について匂いの評価を行った。専門のパネラー5名によって、以下の評価点にて評価を行い、評価点の平均を算出して以下の基準で評価した。
評価点
3点:匂いの劣化がない
2点:匂いの劣化をかすかに感じる
1点:匂いの劣化を感じる
0点:匂いの劣化を強く感じる
とし、専門パネラー5名の平均値を評価値とした。
(評価)
評価値によって◎、○、△、×にて評価した。
◎:2.0以上
○:1.5以上2.0未満
△:1.0以上1.5未満
×:1.0未満
【0026】
<使用試験>
使用試験として、肌へののび、なじみ、塗布した後のしっとり感の項目について、専門のパネラー5名によって以下の基準で評価した。
評価点
5点:肌へののび、なじみ、しっとり感に優れていると感じる。
4点:肌へののび、なじみ、しっとり感にやや優れていると感じる。
3点:どちらともいえない。
2点:肌へののび、なじみ、しっとり感にやや劣っていると感じる。
1点:肌へののび、なじみ、しっとり感に劣っていると感じる。
とし、専門パネラー5名の平均値を評価値とした。
(評価)
評価値によって○、△、×にて評価した。
○:3.5以上
△:2.0以上3.5未満
×:2.0未満
【0027】
<経時安定性試験>
経時安定性は、上記温度で1か月保存した液状組成物について、目視で判断し、40℃以上で離水、沈殿物などを生じたものを×、40℃、50℃では外観上変化がないものの60℃で離水を生じたものを△、各温度条件下で外観上変化がなかったものを○とした。
【0028】
<製法>
成分10〜12を溶解した溶液に成分1を添加し、70℃に加温して30分間分散後、成分2〜9を添加し、液状組成物を調製した。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から明らかなように合成スチブンサイトおよびグリセリンを配合した液状組成物において、カルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランを配合した実施例1〜3では匂い評価試験、使用試験、安定性試験においてすべての項目で良好である結果が得られた。一方、カルボキシメチルセルロース、プルラン以外の高分子類を配合した比較例1〜7では、匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験において本発明の効果を得ることができなかった。
【0031】
合成スチブンサイトの配合量について、表2に示すような配合組成の液状組成物を調製し評価を行った。
【0032】
<製法>
成分3〜5を溶解した溶液に成分1を添加し、70℃に加温して30分間分散後、成分2を添加し、液状組成物を調製した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2から明らかなように合成スチブンサイト、ブチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースを配合した液状組成物において、合成スチブンサイトを一定範囲内で配合した実施例4〜8では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験においてすべての項目で良好である結果が得られた。特に合成スチブンサイトを0.5〜5.0重量%の範囲内で配合した実施例5〜7では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験において極めて良好である結果が得られた。本発明において合成スチブンサイトのより好ましい配合量は0.5〜5.0重量%であることが明らかになった。
【0035】
カルボキシメチルセルロースの配合量について、表3に示すような配合組成の液状組成物を調製し評価を行った。
【0036】
<製法>
成分3〜5を溶解した溶液に成分1を添加し、70℃に加温して30分間分散後、成分2を添加分散し、液状組成物を調製した。
【0037】
【表3】

【0038】
表3から明らかなように合成スチブンサイトおよびグリセリンを配合した液状組成物において、カルボキシメチルセルロースを一定範囲内で配合した実施例9〜13では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験においてすべての項目で良好である結果が得られた。特にカルボキシメチルセルロースを0.05〜5.0重量%の範囲内で配合した実施例10〜12では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験において極めて良好である結果が得られた。本発明においてカルボキシメチルセルロースのより好ましい配合量は、0.05〜5.0重量%であることが明らかになった。
【0039】
プルランの配合量について、表4に示すような配合組成の液状組成物を調製し評価を行った。
【0040】
<製法>
成分3〜5を溶解した溶液に成分1を添加し、70℃に加温して30分間分散後、成分2を添加分散し、液状組成物を調製した。
【0041】
【表4】

【0042】
表4から明らかなように合成スチブンサイトおよびグリセリンを配合した液状組成物において、プルランを一定範囲内で配合した実施例14〜18では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験においてすべての項目で良好である結果が得られた。特にプルランを0.05〜10.0重量%の範囲内で配合した実施例15〜17では匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験において極めて良好である結果が得られた。本発明においてプルランのより好ましい配合量は0.05〜10.0重量%であることが明らかになった。
【0043】
以下、本発明の液状組成物を応用した種々の化粧料を例示する。いずれの実施例も匂い劣化などの現象を生じず、使用性に優れ、また、経時安定性も良好であった。なお、これらの実施例における化粧料の製造方法は、一般的に用いられている方法に従った。
【0044】
実施例19 水中油型クリーム
成分 配合量(重量%)
(1) モノステアリン酸グリセリル 2.0
(2) オレイン酸ソルビタン 2.0
(3) 流動パラフィン 25.0
(4) トリエチルヘキサノイン 15.0
(5) セチルアルコール 3.0
(6) ステアリルアルコール 2.0
(7) 合成スチブンサイト※1 3.0
(8) カルボキシメチルセルロース※2 0.1
(9) グリセリン※3 5.0
(10)メタリン酸 0.05
(11)精製水 残余
合計 100.0
※1商品名:イオナイト(水澤化学工業社製)
※2商品名:CMC−1330(ダイセル化学工業社製)
※3商品名:グリセリン RG・コ・P(日本油脂社製)
【0045】
<製法>
成分9〜11を溶解した溶液に成分7を添加し、70℃に加温して30分間分散した。その後、成分8を添加し、本発明の液状組成物を調製し、80℃まで加温した。別に成分1〜6を80℃で加温溶解し、成分7〜11の液状組成物を添加して乳化し、撹拌しながら30℃まで冷却し調製した。
【0046】
実施例20 水中油型ファンデーション
成分 配合量(重量%)
(1) モノステアリン酸グリセリル 1.0
(2) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
(3) スクワラン 4.0
(4) メチルフェニルポリシロキサン 10.0
(5) ステアリン酸 3.0
(6) ベヘニルアルコール 1.0
(7) セタノール 0.5
(8) 合成スチブンサイト※1 0.6
(9) プルラン※2 0.5
(10)タルク 4.0
(11)黄酸化鉄 1.7
(12)黒酸化鉄 0.3
(13)ベンガラ 0.8
(14)酸化チタン 3.0
(15)パラオキシ安息香酸エステル 0.5
(16)グリセリン※3 4.0
(17)ジグリセリン※4 0.2
(18)精製水 残余
合計 100.0
※1商品名:イオナイト(水澤化学工業社製)
※2商品名:プルランPI−20(健食用)(林原社製)
※3商品名:グリセリン RG・コ・P(日本油脂社製)
※4商品名:ジグリセリン801(阪本薬品社製)
【0047】
<製法>
成分17、18を溶解した溶液に成分8を添加し、70℃に加温して30分間分散した。その後、成分9を添加し、本発明の液状組成物を調製した。さらに、成分10〜16を添加し、80℃まで加温した。別に成分1〜7を80℃で加温溶解し、成分8〜18の組成物を添加して乳化し、撹拌しながら30℃まで冷却し調製した。
【0048】
実施例19、20はいずれも、匂い評価試験、使用試験、経時安定性試験においてすべての項目で良好であり、優れた化粧料が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、保湿効果や使用感に優れ、経時的に安定で匂い劣化を引き起こさず、無香料や微香性の製剤も可能な、優れた液状組成物を提供することができる。さらに乳化型化粧料等の種々の化粧料へ応用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)合成スチブンサイト、(b)多価アルコール、並びに(c)カルボキシメチルセルロースまたは/およびプルランを配合することを特徴とする液状組成物。
【請求項2】
合成スチブンサイトの配合量が0.5〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
カルボキシメチルセルロースの配合量が0.05〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の液状組成物。
【請求項4】
プルランの配合量が0.05〜10.0重量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液状組成物。









【公開番号】特開2011−213698(P2011−213698A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86097(P2010−86097)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】