説明

混合ガス供給装置及び混合ガス供給装置における組成変動調整方法

【課題】都市ガス等、燃料ガスの発熱量安定化に好適な混合ガス供給装置及びその組成変動調整方法を提供する。
【解決手段】2基の充填塔内には同一吸着材が充填されている。分岐配管L3の充填塔下流側配管L3aの配管延長S1は、配管L4aの配管延長S2と比較して長く形成されている。さらに配管L3a途中には複数の流出口10が設けられており、これにより配管延長S1を可変とするように構成されている。熱量計7の計測値に基づいて流量調節バルブV1、V2の開度及び/又は配管L3a配管延長S1を適宜調整して、負荷装置5に供給する燃料ガスの発熱量変動値を調整する。まず各充填塔内吸着材の作用により発熱量の抑制が行われる。さらに、分岐配管延長の相違による発熱量変動位相のずれにより、さらなる発熱量抑制が行われるが、流量比と配管延長S1を適当に設定することにより、発熱量変動最小とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス供給装置及びその組成変動調整方法に係り、特に、都市ガス等、燃料ガスの発熱量安定化に好適な混合ガス供給装置及びその組成変動調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大都市圏から離れた地方における都市ガス需要の増加に伴い、LNG(液化天然ガス)サテライト基地が多く建設されている。LNGサテライト基地は、LNG貯槽と気化器を備えた設備であり、沿岸のLNG受入基地からローリーでLNGを輸送し、LNG貯槽に一旦貯蔵した後に、LNGを気化して工業団地や住宅地などに都市ガスとして供給するためのものである。
【0003】
このようなLNGサテライト供給方式においては、気化器稼動開始時や負荷変動、気温変化等に伴う供給ガスの発熱量変動が問題となる場合があり、このため供給ガスの発熱量安定化のための種々の技術が開示されている。気化器自体の改良としては、LNG気化器の停止時にパージラインからLPGをパージする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
また、吸着材を用いた発熱量調整装置として、気化器下流側に活性炭を充填した吸着材充填塔を設けて、発熱量を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2)。図16は、このような吸着材充填塔を用いた従来の発熱量調整装置100を示す。従来の発熱量調整装置100は、LNG貯槽101、外気を加熱源とする気化器102、吸着材充填塔103を主要構成とする。吸着材充填塔103内には細孔直径2.0〜3.0nmの活性炭が充填されている。このような構成により、タンクローリ105、ライン106を介して供給されるLNGをLNG貯槽101に一旦貯蔵し、気化器102で気化して天然ガスとし、さらに吸着材充填塔103を通過させる。これにより、気化器出側において高沸点(重質炭化水素)成分の組成比が高くガス発熱量が高いときには、高沸点成分を吸着材で吸着し、また低沸点成分であるメタンの組成比が高くガス発熱量が低いときには、吸着した高沸点成分を脱着させて発熱量を抑制する。
【0004】
【特許文献1】特開平7−109476号公報
【特許文献2】特開2005-273753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吸着材による発熱量調整方法においては、吸着材の吸着量に限界があるため、充填塔の単位体積当たりガス処理量が制限される。従って、都市ガス供給のような高度の発熱量安定化が必要とされる場合には、吸着材充填量を増やすことが必要となり、充填塔容積の大型化、建設作業や設置作業の煩雑化が避けられないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、吸着材を用いた混合ガス供給装置において、充填塔の吸着材充填量を増やすことなく、組成変動を一定範囲に抑えてガス供給を可能とする混合ガス供給装置を提供するものである。本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、
【0007】
請求項1の発明は、ガス組成が経時的に変動する混合ガスを供給する供給ラインと、供給ライン経路中に複数の分岐配管を備えた並列配管部と、一以上の分岐配管経路中に設けた吸着材充填塔と、一部の分岐配管を通過する混合ガスの組成変動の位相を、他の分岐配管の組成変動の位相に対して変化させる位相差調整手段と、を備えて成ることを特徴とする混合ガス供給装置である。
本来、吸着材の充填量によりガス組成変動幅の抑制量は定まるが、本発明により各充填塔出口におけるガス組成変動に位相差を生じさせることにより、その限度を超えた変動幅抑制が可能となる。
本発明において、「組成変動」は周期的な変動に限定されず、非周期的変動をも含み、また連続的な変動のみならず、単発的な変動も含む。また「位相」とは、周期的あるいは非周期的な組成変動が起きたときに、下流側にその結果が現れるまでの時間及びタイミングを意味する概念である。さらに「位相差」とは、位相のずれを意味する概念である。
本発明において、「混合ガス」は、化学工業における原料ガス、副生ガス、排気ガス、バイオマスによる生成ガス等を含む概念である。
また、本発明に用いる「吸着材」としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、メソポーラスシリカ、活性アルミナ、有機金属錯体などを用いることができる。また、活性炭としては、石炭原料活性炭、ヤシガラ活性炭、木炭、石油原料活性炭、竹炭、フェノール樹脂活性炭、レーヨン由来活性炭、アクロニトリル由来活性炭、草炭、おがくず炭、泥炭などがある。
【0008】
上記発明において、並列配管部に、各分岐配管を通過する混合ガスの流量比を調整する手段を加えた装置とすることもできる(請求項2)。
上記各発明において、「位相差調整手段」として、充填される吸着材の材料の相違(請求項3及び4)、又は各充填塔のアスペクト比の相違(請求項5)とすることができる。
充填容器のアスペクト比(容器長/内径)を異ならしめることによって、位相差を生じさせることができる。アスペクト比が大きい充填容器では、流入ガスの吐出が遅れるため変動周期が遅れる。逆に、アスペクト比が小さい充填容器では、変動周期の遅れは小さくなる。
さらに、「位相差調整手段」として、各充填塔に充填される吸着材の形状の相違(請求項6)とすることもできる。例えば、吸着材の粒径が小さくなれば容器中のガスの拡散が遅れて位相が遅れ、粒径が大きくなれば位相遅れは小さくなる。
【0009】
「位相差調整手段」として、並列配管部の配管延長の相違とすることもでき(請求項7)、さらに、配管延長を任意に調整可能とすることもできる(請求項8)。
例えば、充填塔の下流側配管の延長を長くすることで、当該充填塔を通過する混合ガスの位相に遅れを生じさせることができる。
さらに、上記「位相差調整手段」を2以上組み合わせた装置とすることもできる(請求項9)。2以上組み合わせることにより、位相差を調整する上で相乗的効果が期待できる。
上記各発明において、「混合ガス」として燃料ガスを用いることができ(請求項10)、また、メタンを主成分とする都市ガスとすることができる(請求項11)。
【0010】
請求項12の発明は、請求項10又は11に記載の混合ガス供給装置を備え、さらに前記並列配管部通過後の燃料ガス又は都市ガスの発熱量を所定の範囲内に調整可能に構成したことを特徴とする発熱量調整装置である。
燃料ガスに組成変動が生じると、これに伴い発熱量も変動する。本発明は、燃料ガスの組成変動に伴う発熱量変動を抑制するため、上記混合ガス供給装置を用いて発熱量調整を行うものである。
現在、全国の都市ガスはウオッベ指数及び燃焼速度指数に基づいて14種類のガスグループに分類され、都市ガス事業者は特定したガス種の都市ガスを供給域内の需要家に対して供給することが、ガス事業法により義務付けられている。例えば、メタンを主成分とする13A都市ガスについては、52.7≦WI≦57.8、35≦MCP≦47と定められている。ここにウオッベ指数(WI)は、ガスの発熱量H(MJ/m3)をガスの空気に対する比重sの平方根で割った数値、
WI=H/√s
で表され、ガス機器の完全燃焼性の指標となるものである。
また、燃焼速度指数(MCP)は、次式で表される。
【数1】

上式において、Si、fiはそれぞれ都市ガス中の各可燃性ガスの燃焼速度及び係数、Aiは都市ガス中の各可燃性ガスの含有率(体積百分率)、Kは減衰係数である。各係数の具体的数値についてはガス事業法に示されているため、ここでは省略する。
従って、本発明による混合ガス供給装置通過後の混合ガスのWI及びMCPを、例えば13A都市ガスの範囲に制御することにより、供給域内で都市ガス13A用機器を良好に燃焼させることができる。
【0011】
請求項13の発明は、請求項1乃至11に記載の混合ガス供給装置において、各分岐配管を通過する混合ガスの組成変動サイクルの周期が同一のときに、一部の分岐配管を通過する混合ガスの組成変動サイクルの位相を、他の分岐配管の位相に対してπラジアン遅らせるように調整することを特徴とする混合ガス供給装置における組成変動調整方法である。
並列配管部の下流側合流部における組成変動の波形は、各分岐配管を通過する混合ガスの組成変動波形を合成したものとなる。この場合、その組成変動周期が同一であるときは、位相差がπラジアンのときに変動幅は最小になる。従って、そのように調整することにより、組成変動の抑制を効果的に行うことができる。
【0012】
請求項14の発明は、請求項10又は11に記載の混合ガス供給装置において、ガス組成が経時的に変化する燃料ガス又は都市ガスの発熱量を所定の範囲内に調整するように、前記位相差又は流量比の一方又は両方を制御することを特徴とする混合ガス供給装置における発熱量調整方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、充填塔の吸着材充填量を増やすことなく、組成変動を一定範囲に抑えてガス供給を可能とする混合ガス供給装置が可能となる。
また、混合ガスとして燃料ガスを用いる発明にあっては、供給元から発熱量変動を伴うガスが供給された場合であっても、発熱量変動を一定範囲に抑制して需要家に供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至15を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複記載を回避するため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
(第一の実施形態)
本実施形態は、「混合ガス」として組成が経時的に変動する燃料ガス(LNG原料)を用い、かつ「位相差調整手段」として配管延長の相違を用いることにより、組成変動(発熱量変動)の抑制を図るものである。
図1は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置1の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置1は、LNG貯槽4と、気化器3と、分岐配管L3、L4の経路中に並列に設けられた2塔の吸着材充填塔2a、2bと、供給ライン末端側に負荷装置5(例えばガスエンジン)を備えている。LNG貯槽4には、不図示のタンクローリ等により運ばれるLNGが貯蔵されている。これら装置間は配管L1乃至L5により接続されている。2基の充填塔内には同一吸着材(例えば石炭原料活性炭、ヤシガラ原料活性炭等)が充填されている。分岐配管L3、L4の充填塔上流側には、それぞれ流量調節バルブV1、V2が配設されている。配管L5経路中には熱量計7が配設されている。分岐配管L3の充填塔下流側配管L3aの配管延長S1は、配管L4aの配管延長S2と比較して長く形成されている。さらに配管L3a途中には複数の流出口10が設けられており、これにより配管延長S1を可変とするように構成されている。
燃料ガス供給装置1は制御部8を備えており、熱量計7の計測値に基づいて流量調節バルブV1、V2の開度及び/又は配管L3a配管延長S1を適宜調整して、負荷装置5に供給する燃料ガスの発熱量変動値を調整できるように構成されている。
【0015】
以上の構成により、燃料ガス供給装置1はLNG貯槽4内のLNGを気化器3で気化して天然ガスとし、吸着材充填塔2a、2bを通過させた後に供給ラインL5を経由して負荷装置5に供給する。この場合、まず各充填塔内吸着材の作用により発熱量の抑制が行われる。さらに、分岐配管延長の相違による発熱量変動位相のずれにより、さらなる発熱量抑制が行われるが、上述のように流量比と配管延長S1を適当に設定することにより、発熱量変動最小とすることができる。なお、配管の長さと位相のずれの関係は、以下の式で表すことができる。
【数2】

【0016】
なお、本実施形態では、分岐配管L3aの配管延長及び流量比を適宜選択する構成としたが、予め発熱量変動が最小となるような配管延長、流量比を知り、その値に固定しておく形態とすることもできる。
また、両分岐配管経路中に吸着材充填塔を配置する形態としたが、一方の分岐配管のみ充填塔を配置して、他方の分岐配管には充填塔を配置せず配管延長を長くする形態としてもよい。また、この配管延長の長さを可変としてもよい。
また、2基の吸着材充填塔を並列に配置する形態を示したが、3基以上の充填塔を並列に配置し、それぞれの配管延長、流量比を可変とする形態としてもよい。
また、2つの充填塔に同一吸着材を充填する形態としたが、異なる吸着材を充填する形態としてもよい。また、同一吸着材で異なる形状のものを用いる形態とすることもできる。
【0017】
(第二の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置20の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置20が上述の燃料ガス供給装置1と異なる点は、2つの充填塔21a、21bのアスペクト比(容器長/内径)が異なることである。すなわち、充填塔21aのアスペクト比AR1=X1/D1であるのに対して、充填塔21bのアスペクト比AR2=X2/D2とし、さらにAR1>AR2となるように構成されている。また、延長配管部及び流量調節バルブV1、V2を備えていない点が異なる。その他の構成は燃料ガス供給装置1と同一であるので、重複説明を省略する。
燃料ガス供給装置20においては、アスペクト比の大きい充填塔21a側に流入したガスの吐出が遅れるため、充填塔21b側と比べて発熱量変動の位相が遅れる。これにより同一アスペクト比の充填塔を有する同種の燃料供給装置と比較して、発熱量変動幅を小さくすることが可能となる。
なお、本実施形態においても延長配管部及び流量調節バルブV1、V2を備えた形態として、さらなる発熱量変動幅の調整を行うことも可能である。
【0018】
(第三の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る燃料ガス供給装置30の全体構成を示す図である。燃料ガス供給装置30が上述の燃料ガス供給装置10と異なる点は、分岐配管L9、L10のいずれの経路中にも充填塔を有さず、位相差調整手段として分岐配管L9の配管延長をL10に対して長くしていることである。その他の構成は燃料ガス供給装置1と同一である。
以上の構成により、熱量計7の計測値に基づいて流量比を調整して、合流点P1における分岐配管L9側の変動周期の位相をπラジアン遅らせることにより、発熱量変動幅を小さくすることが可能となる。
なお、本実施形態においても、分岐配管L9の配管延長及び流量比を位相がπラジアン遅らせるような値に固定しておく形態とすることもできる。
【実施例1】
【0019】
本発明による発熱量抑制効果を確認するため、以下の試験を行った。
(供試吸着材)
石炭原料活性炭及びヤシガラ原料活性炭の2種類の吸着材を用いた(以下、石炭原料活性炭を活性炭A、ヤシガラ原料活性炭を活性炭Bと略称することがある)。活性炭A,Bの物性を表1に、細孔径分布(窒素吸着DFT法による)を図4(a)に示す。また、活性炭A、Bのメタン、プロパンに対する圧力−吸着量特性を図4(b)に示す。
【0020】
【表1】

(試験ガス)
2分間、LNG気化ガス(組成:CH4:90.8%、C2H6:5.0%、C3H8:3.0%、i-C4H10:0.6%、n-C4H10:0.6%)を流し、その後1分間、このガスに添加用ガス(プロパン:ブタン=1:1)を添加するサイクルを繰り返すことにより、周期的に組成(発熱量)が変動するガスを調製した。試験ガスの発熱量変動は、最小44.8MJ/m3、最大50.8MJ/m3であり、ΔH=2.85MJ/m3であった。ここにΔHは、ΔH=(Hmax−Hmin)/2、すなわち発熱量最大値Hmaxと最小値Hminの差の1/2であり、発熱量変動幅比較の指標となる数値である。
【0021】
(試験装置)
並列に配置した2個の充填容器(内容積合計30cc)に、吸着材を充填した試験装置を用いた。この場合、第一の実施形態に準じて、一方の充填容器(容器1)の下流側の配管延長を他方の充填容器(容器2)のそれより長くして、発熱量変動サイクルに所定の位相差が生じるようにした。容器出口における発熱量変動周期は、容器1、容器2ともに1周期(2πラジアン)=180secで同一であった。参考のため、位相差のラジアン表示と時間表示の対応を表2に示す。
【表2】

【0022】
(試験方法)
各充填容器に表3のNo.1〜No.3の組み合わせで吸着材を充填し、容器2個全体として空塔速度2000h−1、温度25℃の流入条件で試験ガスを流して、装置出口におけるガスの発熱量を熱量計(Advantica社製、製品名:GasPT)で測定した。測定は、位相差をパラメータとして流量比変化と発熱量変動の関係を調べた。
【0023】
【表3】

(測定結果)
図5に、No.1条件における各位相差での発熱量変動の流量比依存性結果を示す。同図において縦軸ΔHは、ΔH=(Hmax−Hmin)/2、すなわち発熱量最大値Hmaxと最小値Hminの差の1/2であり、発熱量変動幅比較の指標である。ここに、横軸においてF1、F2はそれぞれ容器1、容器2の流量であり、F1/(F1+F2)は全体流量に対する容器1の比率である。なお、従来技術の容器1個を用いる場合(図16参照)は、F1=1、F2=0であるから、ΔHは図5において横軸F1/(F1+F2)=1における値となる。
【0024】
同図より、この材料では流量比50:50、かつ位相差π(90秒)のときに変動抑制効果最大となるが、他の流量比、位相差条件のときも、容器なし又は容器1個の条件と比較して抑制効果が高いことが分かる。
図6は、流量比50:50、位相差π(90秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
図7、8は、No.2条件における同上測定結果である。また、図9、10はNo.3条件における同上測定結果である。
【実施例2】
【0025】
(試験装置)
図15に示すように、並列配管部の一方の分岐配管のみ吸着材充填容器3(内容積30cc)を配置し、他方は容器を配置せずバイパス配管のみとする試験装置を用いた。そして、充填容器側の配管延長部をバイパス配管側より長くして、発熱量変動に所定の位相差が生じるようにした。例えば位相遅れは、配管内径4.35mm、配管延長20.1mのときにπ/5ラジアン(18秒長さ)となる。
(試験方法)
表3のNo.4、5の条件により、容器3に吸着材を充填し、実施例1と同様の測定を行った。
(測定結果)
図11は、No.4(活性炭A)条件における各位相差での発熱量変動の流量比依存性測定結果を示す図である。また、図12は(1)流量比=81:19、位相差0、及び(2)流量比=81:19、位相差π/5(18秒)のときの発熱量変動時間推移データを示す図である。
(1)におけるΔH=0.58(MJ/m3)、(2)におけるΔH=0.42であり、容器1個で配管延長なしのときの値、ΔH=0.73(実施例1参照)と比較して発熱量変動抑制効果が高いことが分かる。
【0026】
図13は、No.5(活性炭B)条件における各位相差での発熱量変動の流量比依存性測定結果を示す図である。また、図14は(1)流量比=93:7、位相差0、及び(2)流量比=83:17、位相差π/4(22秒)のときの発熱量変動時間推移データを示す図である。活性炭B(ヤシガラ原料活性炭)の場合も、活性炭A(石炭原料活性炭)と同様の発熱量変動抑制特性を示すことが分かる。
以上、No.1〜No.5のいずれの条件においても、本発明による発熱量変動抑制効果が実証された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、燃料ガスの発熱量抑制に限らず、化学工業における原料ガス、副生ガス、排気ガス、バイオマスによる生成ガス等、組成変動する複数のガス成分からなる混合ガスの組成抑制に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第一の実施形態に係る燃料ガス供給装置1の構成を示す図である。
【図2】第二の実施形態に係る燃料ガス供給装置20の構成を示す図である。
【図3】第三の実施形態に係る燃料ガス供給装置30の構成を示す図である。
【図4(a)】供試吸着材である活性炭A、Bの細孔径分布を示す図である。
【図4(b)】活性炭A、Bのメタン、プロパンに対する圧力−吸着量特性を示す図である。
【図5】No.1条件における発熱量変動の流量依存性結果を示す。
【図6】No.1条件における流量比50:50、位相差π(90秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
【図7】No.2条件における発熱量変動の流量依存性結果を示す図である。
【図8】No.2条件における流量比50:50、位相差π(90秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
【図9】No.3条件における発熱量変動の流量依存性結果を示す図である。
【図10】No.3条件における流量比50:50、位相差π(90秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
【図11】No.4条件における発熱量変動の流量依存性結果を示す図である。
【図12】No.4条件における(1)流量比=81:19、位相差0、及び(2)流量比=81:19、位相差π/5(18秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
【図13】No.5条件における発熱量変動の流量依存性結果を示す図である。
【図14】No.5条件における(1)流量比=93:7、位相差0、及び(2)流量比=83:17、位相差π/4(22秒)のときの発熱量変動時間推移を示す図である。
【図15】実施例2の試験装置を示す図である。
【図16】従来の発熱量調整装置100の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1、20、30・・・・燃料ガス供給装置
2a、2b、21a、21b・・・・吸着材充填塔
3・・・・気化器
4・・・・LNG貯槽
5・・・・負荷装置
7・・・・熱量計
L1〜L10・・・・供給ライン
V1、V2・・・・流量調節バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス組成が経時的に変動する混合ガスを供給する供給ラインと、
供給ライン経路中に複数の分岐配管を備えた並列配管部と、
一以上の分岐配管経路中に設けた吸着材充填塔と、
一部の分岐配管を通過する混合ガスの組成変動の位相を、他の分岐配管の組成変動の位相に対して変化させる位相差調整手段と、
を備えて成ることを特徴とする混合ガス供給装置。
【請求項2】
前記並列配管部は、各分岐配管を通過する混合ガスの流量比を調整する手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項3】
前記位相差調整手段が、前記充填塔に充填される吸着材の材料の相違を含んで成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項4】
前記吸着材が、石炭原料活性炭とヤシガラ原料活性炭とを含むことを特徴とする請求項3に記載の混合ガス供給装置。
【請求項5】
前記位相差調整手段が、各充填塔のアスペクト比の相違を含んで成ることを特徴とする請求項1乃至4に記載の混合ガス供給装置。
【請求項6】
前記位相差調整手段が、各充填塔に充填される吸着材の形状の相違を含んで成ることを特徴とする請求項1乃至5に記載の混合ガス供給装置。
【請求項7】
前記位相差調整手段が、並列配管部の配管延長の相違を含んで成ることを特徴とする請求項1乃至6に記載の混合ガス供給装置。
【請求項8】
一部の分岐配管の配管延長を任意に調整可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項7に記載の混合ガス供給装置。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の位相差調整手段を二以上組み合わせて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項10】
前記混合ガスが、燃料ガスであることを特徴とする請求項1乃至9に記載の混合ガス供給装置。
【請求項11】
前記燃料ガスが、メタンを主成分とする都市ガスであることを特徴とする請求項10に記載の混合ガス供給装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の混合ガス供給装置を備え、さらに前記並列配管部通過後の燃料ガス又は都市ガスの発熱量を所定の範囲内に調整可能に構成したことを特徴とする発熱量調整装置。
【請求項13】
請求項1乃至11に記載の混合ガス供給装置において、各分岐配管を通過する混合ガスの組成変動サイクルの周期が同一のときに、
一部の分岐配管を通過する混合ガスの組成変動サイクルの位相を、他の分岐配管の位相に対してπラジアン遅らせるように調整することを特徴とする混合ガス供給装置における組成変動調整方法。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の混合ガス供給装置において、
ガス組成が経時的に変化する燃料ガス又は都市ガスの発熱量を所定の範囲内に調整するように、前記位相差又は流量比の一方又は両方を制御することを特徴とする混合ガス供給装置における発熱量調整方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−214565(P2008−214565A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56869(P2007−56869)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】