説明

混合弁装置及びその混合弁装置を用いた給湯機

【課題】給水、給湯回路の差異により発生する湯水混合弁の温度制御の不安定性を抑制し、最小限のスペースで給湯機に搭載できる安価な湯水混合弁を提供する。
【解決手段】第1流体が流入される第1流入路3Aを第1流路31及び第2流路32に分ける第1分岐部41、第2流体が流入される第2流入路3Bを第3流路33及び第4流路34に分ける第2分岐部42、上記第1流路及び第3流路に連通されこれら第1流路及び第3流路から受入れた流体を混合して第1流出路6Aに流出させ得るように設けられた第1弁座部51、並びに上記第2流路及び第4流路に連通されこれら第2流路及び第4流路から受入れた流体を混合して第2流出路6Bに流出させ得るように設けられた第2弁座部52を有するハウジング部材2と、上記第1弁座部に設けられた第1混合弁7Aと、上記第2弁座部に設けられた第2混合弁7Bとを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばリモコン等により外部から設定された所望温度の温水を安定して給湯するための湯水混合弁などとして好ましく用いることができる混合弁装置及びその混合弁装置を用いた給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の混合弁として、出湯管の端部に連続してシリンダ状に形成された混合室内に、軸線周りに回転自在に筒状の可動弁が嵌装され、給水管と給湯管は、混合室の側面に互いの位置をずらして、給湯管を出湯管寄りに位置させて接続されているものがある。給水管から混合室への水側開口の形状は軸線と平行方向の細いスリット状であり、給湯管から混合室への湯側開口は幅のある長方形状に形成されている。可動弁の周壁には、回転位置によって水側開口及び湯側開口と対向する位置に横向きの二等辺三角形状の水側流調孔と長方形状の孔から両側方に先細りのスリットが突出形成された形状の湯側流調孔とが穿設されている。水側流調孔と湯側流調孔が形成された可動弁から外部に突出した軸部は、モータアクチュエータに連結されていて、可動弁の回転方向の位置制御が行われる。可動弁の周壁に設けられた水側流調孔と湯側流調孔は可動弁の回動によりそれぞれの流路面積が変化し、これにより水側開口から水側流調孔を通り供給される水の流量と、湯側開口から湯側流調孔を通り供給される湯の流量が変化することにより、出湯管から供給される湯の温度ならびに流量が変化する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−179715号公報(第2頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、給湯機の高機能化により温度設定値が異なる湯を風呂と台所あるいは洗面所の蛇口といった異なる配管系へ同時に給湯する機種が主流となっている。設定温度が異なるお湯を同時に複数箇所へ給湯するためには、給湯機に温度調節の機能を有する湯水混合弁を複数個搭載することになる。給湯機に複数の湯水混合弁を搭載する際、それぞれの湯水混合弁への給湯、給水流路について、配管径や配管長、配管の曲がりの数などが異なり通水経路に非対称性が存在すると、流体圧力のアンバランスが生じ特定の通水経路に対して水もしくは湯が流れ易くなり、温度制御が不安定になる。上記のような従来の混合弁を用いた場合、それぞれの混合弁への給水、給湯経路に対称性をもたせるという設計上の制約が発生するが、実際には設置スペースの問題で、完全対称となる部品レイアウトを実現することは困難であり、極力このような部品レイアウトを実現するにしても、新たな追加部品が必要となるなど、製造コストを上昇させる要因になるという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、複数の給湯箇所に給湯しても流体圧力のアンバランスを抑制して、温度制御を安定して行なうことができ、しかも省スペースで追加部品も不要な混合弁を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る混合弁装置は、第1流体が流入される第1流入路を第1流路及び第2流路に分ける第1分岐部、第2流体が流入される第2流入路を第3流路及び第4流路に分ける第2分岐部、上記第1流路及び第3流路に連通されこれら第1流路及び第3流路から受入れた流体を混合して第1流出路に流出させ得るように設けられた第1弁座部、並びに上記第2流路及び第4流路に連通されこれら第2及び第4流路から受入れた流体を混合して第2流出路に流出させ得るように設けられた第2弁座部を有するハウジング部材と、上記第1弁座部に設けられた第1混合弁と、上記第2弁座部に設けられた第2混合弁とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、第1弁座部と第1混合弁、及び第2弁座部と第2混合弁からなる2個の弁に対して、第1流体及び第2流体の流入路、ならびに第1流出路及び第2流出路を対称的に構成することができるので、2個の弁のバランスが良好となり、例えば複数箇所へ同時給湯を行なうときの温度制御の不安定性が解消され、部品配置の設計自由度が向上する。また、簡便な配管構成により一体化されていることにより追加部品も不要にできるのでコストの上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図4は本発明の実施の形態1に係る混合弁装置を説明するもので、図1は斜視図、図2は図1に示されたハウジング部材を示す斜視図、図3は図1に示された混合弁装置を構成する混合弁を示す斜視図、図4は図1に示された流入口の中心軸を含む面で図の水平方向に切断したときの図の下側から見た流路構成と弁座部及び混合弁の概要構造を示す断面図(図5のIV−IV線における矢視断面図に相当)、図5は図4に示された弁座部と該弁座部に配設された混合弁の周辺部の詳細を示す断面図(図4のV−V線における矢視断面図に相当)、図6〜図7は動作を説明する図である。なお、各図を通じて同一符号は同一または相当部分を示している。図において、混合弁装置1は、この例では1本の円筒に対しその中心軸の両外側に2本の円筒を上記中心軸方向に位置をずらして配設し、かつ該中心軸方向に直交する方向に互いに平行に結合させた如き外観を呈しているハウジング部材2と、その内部に設けられた2つの混合弁7(第1混合弁7A、第2混合弁7B)と、第1及び第2混合弁7A、7Bを互いに独立して駆動し得るステッピングモータを用いた2つの駆動装置9から構成されている。
【0009】
上記ハウジング部材2は、第1流入路3Aに例えば水道水などの第1流体を流入する第1流入口21、第1流入路3Aに連通されている第2流入路3Bに例えば高温水などの第2流体を流入する第2流入口22、上記第1流入路3Aに設けられ該第1流入路3Aを第1流路31及び第2流路32に分ける第1分岐部41、上記第2流入路3Bに設けられ該第2流入路3Bを上記第1流路31に連通する第3流路33及び上記第2流路32に連通する第4流路34に分ける第2分岐部42、上記第1流路31及び第3流路33に連通されこれら第1流路31及び第3流路33から受入れた流体を混合して第1流出路6Aに流出させ得るように設けられた第1弁座部51、上記第2流路32及び第4流路34に連通されこれら第2流路32及び第4流路34から受入れた流体を混合して第2流出路6Bに流出させ得るように設けられた第2弁座部52、第1流出路6Aの端部に設けられた第1流出口23、第2流出路6Bの端部に設けられた第2流出口24、各駆動装置9に対する接続部25、26などが設けられており、金属鋳物、あるいは樹脂の射出成形等で一体的に形成されている。なお、第1流入口21から第2流入口22までの長さ、及び第1分岐部41から第2分岐部42までの長さは任意であり、これらは例えば使用する給湯機の部品レイアウトのスペースや分流特性等により決定される設計事項である。
【0010】
上記第1流入路3A及び第2流入路3Bは共通の円筒状体の内部に形成され、第1流入口21及び第2流入口22と共に略同一中心軸上に形成されている。上記第1流出路6A及び第2流出路6Bは上記第1流入路3A及び第2流入路3Bの中心軸とは直交する方向に形成され、該中心軸方向に位置をずらし、かつ該中心軸の両側部に上記円筒状体の略半径分程度両外側にずらして対称的に設けられている。また、上記第1分岐部41及び第2分岐部42は、上記円筒状体によって形成されている第1流入路3A及び第2流入路3Bを独立した複数(この例では約2等分)の流路に分ける一続きの板状の仕切部材4の一端部及び他端部を用いて構成され、何れも流路上流側の先端部が流線形に形成されている。なお、仕切部材4はハウジング部材2と一体で構成されていることが望ましい。
【0011】
また、第1弁座部51は円筒状に形成され、図4の左側に第1流路31に連通する開口部51a、右側に第3流路33に連通する開口部51bが設けられ、これら開口部51a、51bからそれぞれ第1流体または第2流体が流入される。また、第2弁座部52は第1弁座部51と互いに線対称に形成され、図4の左側に第2流路32に連通する開口部52a、右側に第4流路34に連通する開口部52bが設けられ、これら開口部52a、52bからそれぞれ同様に第1流体または第2流体が流入される。なお、この例では、第1流路31は開口部51aと略同一部分に形成され、第4流路34は開口部52bと略同一部分に形成されている。
【0012】
第1混合弁7Aと第2混合弁7Bは全く同一に構成されており、以下区別の必要がある場合を除いて単に混合弁7という。混合弁7はハウジング部材2と同様に金属鋳物、あるいは樹脂の射出成形等で形成され、図3に示すように円筒状の弁体71と、該弁体71を回動させるための上方に突出形成された軸部72からなる。弁体71の周壁部における開口部51a、51b、または開口部52a、52bと対向する部分には第1流体または第2流体を通流するための開口71aが設けられ、下端部には開口71aから流入した流体を第1または第2流出路6A、6Bに通流するための流出口71bが設けられている。開口71aは周方向の中心部で最大開口面積となり周方向両端部に行くにつれて開口面積が減少するような形状を有する。該混合弁7は第1または第2弁座部51、52の内部に外周面が接するか、わずかな隙間を有して回動可能に嵌合される。なお、開口71aの付近では流路断面積が第1流入口21及び第2流入口22の概ね半分となる。
【0013】
混合弁7の軸部72はハウジング部材2の上部に設けられた接続部25、26から外部に突出し、図1に示す駆動装置9と係合され、これにより回動される。軸部72は、図5に示すように接続部25、26とスペーサ81を介してパッキング82及び83により水密状態が保たれる。スペーサ81はネジ84によって接続部25、26に取り付けられた蓋体85により挟まれ、漏水することがないよう構成されている。なお、第1または第2弁座部51、52の内側上面及びスペーサ81の下面と弁体71の軸方向の当接部には、ポリアセタールやフッ素系樹脂をはじめとする摺動性に優れた材質で形成されたリング状の潤滑部材86及び87が配置され、混合弁7の回動をスムーズにさせている。また、第1流入口21、第2流入口22、第1流出口23、及び第2流出口24の外周部には、図示していない他の配管と接続するためにフランジ状に形成されている。
【0014】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について、図6〜図7を参照して説明する。なお、一例として混合弁装置1は湯水混合弁として用いられ、第1流入口21には第1流体としての水道水が供給され、第2流入口22には第2流体としての給湯機からの高温水が供給され、第1流出口23は風呂場の蛇口やシャワーへの給湯配管、第2流出口24は台所や洗面所の蛇口への給湯配管に接続されているものとする。先ず、図6(a)の状態では、第1混合弁7A、及び第2混合弁7Bは、第2流体が流入される第2流入口22側に対して何れも閉成状態にあり、第1流体が流入する第1流入口21側に対して何れも開成状態となっているため、第1流出口23及び第2流出口24からは第1流体(水道水)のみが流出される。
【0015】
図6(b)は、図6(a)の状態から第1混合弁7Aのみが反時計まわりに約45°回動し、分岐された第1流路31と第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流入路と、分岐された第3流路33と第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流入路の面積が略等しい状態を示したものである。この状態では、第1流出口23から、第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。一方、第2混合弁7Bについては、図6と同一状態のままであるので、第2流出口24からは第1流体(水道水)のみが流出する。
図6(c)は、図6(b)の状態から第1混合弁7Aのみがさらに反時計まわりに約45°回動し、第1流路31の流入口(開口部51a)と第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流路が閉ざされ、第3流路33の流入口(開口部51b)と第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流路が略全開の状態を示したものである。この状態では、第1流出口23からは、第2流体のみが流出することになるので高温水が風呂に給湯される。例えば実際の運転モードにおける高温差し湯の状態に相当する。一方、第2混合弁7Bについては、図6(a)の状態のままであるので、第2流出口24からは第1流体のみが流出する。
【0016】
このように、第1混合弁7Aの回動によって、第1流出口23から流出する混合流体の流量に占める第1流体と第2流体の流量比を変化させることができる。なお、ここでは第1混合弁7Aの代表的な回動位置における動作を示したが、混合弁7はステッピングモータを用いた駆動装置9により図示省略している制御回路によって所望の任意の角度に回動し得るものであり、回動角度に応じて、第1流体と第2流体の流入流量比を連続的に変化させることができるため、第1流出口23から流出する混合流体の温度は、第1流体の温度から第2流体の温度まで連続的に変化させることができる。
【0017】
図7(a)は、図6(a)の状態から第2混合弁7Bのみが図の時計まわりに約45°回動し、分岐された第2流路32に対する開口部52aと第2混合弁7Bの開口71aとにより形成される流路と、分岐された第4流路34に対する開口部52bと第2混合弁7Bの開口71aとにより形成される流路の面積が略等しい状態を示したものである。この状態では、第2流出口24から、第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。一方、第1混合弁7Aについては、図6(a)の状態のままであるので、第1流出口23からは第1流体のみが流出する。
【0018】
図7(b)は、図7(a)の状態から第1混合弁7Aのみが反時計まわりに約45°回動し、第1流路31に対する開口部51aと第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流路と、第3流路33に対する開口部51bと第1混合弁7Aの開口71aにより形成される流路の面積が略等しい状態を示したものである。この状態では、第1流出口23から、第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。一方、第2混合弁7Bについては、図7(a)の状態のままであるので、第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。即ち、何れの流出口からも第1流体と第2流体の中間温度の湯が給湯される状態である。
【0019】
図7(c)は、図7(b)の状態から第1混合弁7Aのみがさらに反時計まわりに約45°回動し、第1流路31に対する流路が閉成され、第3流路33に対する流路が略全開の状態を示したものである。この状態では、第1流出口23からは、第2流体のみが流出することになるので高温水が風呂に給湯される。一方、第2混合弁7Bについては、図7(b)の状態のままであるので、第2流出口24からは第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。
図7(d)は、図7(a)の状態から第2混合弁7Bのみが時計まわりにさらに約45°回動し、第2流路32に対する流路が閉成され、第4流路34に対する流路が略全開の状態を示したものである。この状態では、第2流出口24からは第2流体のみが流出する。一方、第1混合弁7Aについては、図7(a)の状態のままであるので、第1流出口23からは第1流体のみが流出する。
【0020】
図7(e)は、図7(d)の状態から第1混合弁7Aのみが反時計まわりに約45°回動し、第1流路31に対する流路と、第3流路33に対する流路の面積が略等しい状態を示したものである。この状態では、第1流出口23から、第1流体と第2流体が略等しい流量で混合された中間温度の混合流体が流出する。一方、第2混合弁7Bについては、図7(d)の状態のままであるので、第2流出口24からは第2流体のみが流出する。
図7(f)は、図7(e)の状態から第1混合弁7Aのみがさらに反時計まわりに約45°回動し、第1流路31に対する流路が閉成され、第3流路33に対する流路が略全開の状態を示したものである。この状態では、第1流出口23からは、第2流体のみが流出することになるので高温水が風呂に給湯される。一方、第2混合弁7Bについては、図7(d)の状態のままであるので、第2流出口24からは第2流体のみが流出する。
なお、上記図6〜図7は第1混合弁7Aと第2混合弁7Bの代表的な回動位置における混合弁の動作の組合せを説明するもので、これらの他、例えば第1混合弁7Aの開口71aが図4の上方を向く位置に回動されたときは、第1流路31及び第3流路33の双方に対して閉成され、第1流体及び第2流体の双方を閉止することができる。
【0021】
上記のように、この実施の形態1は、第1混合弁7Aと第2混合弁7Bの2個の混合弁をそれぞれの給湯回路及び給水回路を含めて一体化し、それらの配管径や曲がり数を全ての経路に対して共通化して、混合弁7への通水回路を対称的に形成して同一にするよう構成したものである。このため、第1流出口23と第2流出口24の何れについてもそれぞれの第1混合弁7Aと第2混合弁7Bの回動に応じて第1流体(高温水)と第2流体(水道水)が任意の割合で混合された液体(水)を互いに独立して流出させることができる。このため、例えば給湯機貯湯槽を有し、沸きあげた温水を風呂場の蛇口とキッチンの蛇口等、複数箇所に同時給湯する給湯機において、温度制御の不安定性が解消され、リモコン等により外部から設定された所望温度の温水を安定して給湯することができる。また、簡便な配管構成で必要な部品類が一体化されているので、部品配置の設計自由度が向上すると共に、別途追加部品を用意する必要もなく、コストの上昇を抑制することができる。また、混合弁7は、開口71aの形状が周方向の端部にいくにつれて開口面積が略線形的に減少するように構成されていることで、弁体71の回動角度に応じて、第1流体と第2流体の流入流量比を直線的に任意に変化させることができるものであるため、温度制御性に優れた湯水混合弁を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2による混合弁装置を示す斜視図である。この実施の形態2においては、第1混合弁7Aに対する第2混合弁7Bの取付方向を軸方向に対して正反対となるようにした外は実施の形態1に示した混合弁装置と全く同様に構成したものであり、同一もしくは同等の部材については図1〜図5と同一符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、第2流出口24も第1流出口23とは反対側に設けられている。
上記実施の形態1の混合弁装置では、第1混合弁7Aと第2混合弁7Bが同一の方向に取り付けられており、第1混合弁7A及び第2混合弁7Bの何れについても図4の左側に第1流体の流入口が、右側に第2流体の流入口が存在する。この場合、例えば第1流体の流量を減少させるために、第1混合弁7Aでは弁体71を同図における反時計回りに回動させるのに対し、第2混合弁7Bでは、逆方向の時計回りに回動させる必要がある。すなわち、同じ構成の湯水混合弁を用いても、第1流体と第2流体の流量制御に対する弁体71の回動方向が逆になる。
【0023】
これに対し、上記のように構成された実施の形態2に係る混合弁装置では、上記実施の形態1と同様の各種効果に加えて、第1混合弁7Aと第2混合弁7Bの挿入方向を逆に形成したので、第1流体と第2流体の流量制御に対する第1混合弁7Aと第2混合弁7Bの回動方向を同一にすることができ、同じ流量制御特性を有する2個の湯水混合弁として扱うことができ、制御が簡易になるという更なる効果を有する。
【0024】
なお、上記実施の形態1、2では、第1流路31と第2流路32が同一の中心軸上に形成され、第1流出路23及び第2流出路24が該中心軸に対して直交されかつ中心軸方向に位置をずらして設けた例を示したが、必ずしもこのような形状に限定されるものではなく、例えば第1流路31と第2流路32を結ぶ流路をS字状に形成し、第1流入口21と第2流入口22から第1弁座部51と第2弁座部52の入口までの距離が全て等しくなるように構成することもできる。また、仕切部材7を例えば円形状にして、その外周部に第1〜第4流路を設け、第1流入口21と第2流入口22に対して第1混合弁7Aと第2混合弁7Bを完全に対称位置に設けるようにしてもよい。その他、駆動装置9のステッピングモータを他のアクチュエータに変更し、あるいは流入路を3つに分流して混合弁を3つ設ける等この発明の範囲内で各種の変形や変更が可能であることはいうまでもない。さらに、この発明を給湯機の湯水混合弁として用いた場合について説明したが、この発明の用途は特に湯水混合弁に限定されないことは当然である。
【0025】
実施の形態3.
図9は本発明で開示した混合弁装置を備えた給湯機の概略回路構成を示す図である。図9で、給湯機は、水源圧力を所定の圧力に設定して給水するための減圧弁100、混合弁装置1を構成する第1もしくは第2の混合弁のいずれかに接続され、リモコンにより浴槽への給湯指令が発せられた際に回路を開いて給湯し、給湯中止の指令が発せられた時に回路を閉じて給湯を中止する電磁弁101、貯湯タンク102、沸き上げ時に体積膨張した水を逃がして貯湯タンク内部の圧力を設定上限圧力以下に保持するための逃がし弁103、室外に設置された図示しない熱源機から送出される高温の冷媒(たとえばCO)とタンクの水とを熱交換させて、タンクの水を沸き上げるための熱交換器104、タンク内の水を循環させるためのポンプ105を備えている。
【0026】
上記のとおり構成された給湯機では、実施の形態1ならびに実施の形態2で示した湯水混合弁装置を給湯温度調整に使用するため、沸きあげた温水を風呂場の蛇口とキッチンの蛇口等、複数箇所に同時給湯する場合においても、温度制御の不安定性が解消され、リモコン等により外部から設定された所望温度の温水を安定して給湯することができる。また、簡便な配管構成で必要な部品類が一体化されているので、部品配置の設計自由度が向上すると共に、別途追加部品を用意する必要もなく、コストの上昇を抑制することができる。
【0027】
本実施の形態3で示した給湯機は、沸き上げ用の熱源としてCOをはじめとする自然冷媒の熱を熱交換器を介して熱交換するいわゆるヒートポンプ式給湯機を例にして示したが、図10に示すようなタンク内に設置したヒータ106に通電し、ヒータの発熱を利用して沸き上げるヒータ式給湯機に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1による混合弁装置を示す斜視図。
【図2】図1に示されたハウジング部材を示す斜視図。
【図3】図1に示された混合弁装置を構成する混合弁を示す斜視図。
【図4】図1に示された流入口の中心軸を含む面で図の水平方向に切断したときの図の下側から見た流路構成と弁座部及び混合弁の概要構造を示す断面図。
【図5】図4に示された弁座部と該弁座部に配設された混合弁の周辺部の詳細を示す断面図。
【図6】図1に示された混合弁装置の動作を説明する断面図。
【図7】図1に示された混合弁装置の動作を説明する断面図。
【図8】本発明の実施の形態2による混合弁装置を示す斜視図。
【図9】本発明の混合弁装置を用いた給湯機の回路構成を示す図である。
【図10】本発明の混合弁装置を用いた別の給湯機の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 混合弁装置、 2 ハウジング部材、 21 第1流入口、 22 第2流入口、 23 第1流出口、 24 第2流出口、 25、26 接続部、 3A 第1流入路、 3B 第2流入路、 31 第1流路、 32 第2流路、 33 第3流路、 34 第4流路、 4 仕切部材、 41 第1分岐部、 42 第2分岐部、 51 第1弁座部、 52 第2弁座部、 6A 第1流出路、 6B 第2流出路、 7 混合弁、 7A 第1混合弁、 7B 第2混合弁、 71 弁体、 71a 開口、 71b 流出口、 72 軸部、 81 スペーサ、 86、87 潤滑部材、 9 駆動装置、 100 減圧弁、 101 電磁弁、 102 貯湯タンク、 103 逃がし弁、 104 熱交換器、 105 ポンプ、 106 ヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流入される第1流入路を第1流路及び第2流路に分ける第1分岐部、第2流体が流入される第2流入路を第3流路及び第4流路に分ける第2分岐部、上記第1流路及び第3流路に連通されこれら第1流路及び第3流路から受入れた流体を混合して第1流出路に流出させ得るように設けられた第1弁座部、並びに上記第2流路及び第4流路に連通されこれら第2流路及び第4流路から受入れた流体を混合して第2流出路に流出させ得るように設けられた第2弁座部を有するハウジング部材と、上記第1弁座部に設けられた第1混合弁と、上記第2弁座部に設けられた第2混合弁とを備えたことを特徴とする混合弁装置。
【請求項2】
上記第1分岐部及び上記第2分岐部は、上記第1流入路及び上記第2流入路を複数に分ける一続きの仕切部材の一端部及び他端部を用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の混合弁装置。
【請求項3】
上記第1流路と上記第2流路、及び上記第3流路と上記第4流路は、上記仕切部材によって区分されていることを特徴とする請求項2に記載の混合弁装置。
【請求項4】
上記仕切部材の一端部及び他端部は流線形状に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の混合弁装置。
【請求項5】
上記第1流入路及び第2流入路は、同一の中心軸上に設けられ、かつ、上記第1流出路及び上記第2流出路は、上記軸線に対して直交する方向に互いに平行に対称的に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の混合弁装置。
【請求項6】
上記第1混合弁及び上記第2混合弁は、何れも回動角度に応じて上記第1流体及び上記第2流体を任意の割合で混合し得ると共に、上記第1流体及び上記第2流体の双方に対して閉止し得るものであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の混合弁装置。
【請求項7】
上記第1混合弁及び上記第2混合弁は、何れもステッピングモータにより駆動されるものであることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の混合弁装置。
【請求項8】
水を加熱昇温する加熱手段を有し、水源圧力を所望圧力に設定する減圧弁と、沸き上げた温水を貯める貯湯タンクと、温水を流路の開閉により給湯する電磁弁と、沸き上げ時に体積膨張した水を排出するための逃がし弁とを備え、前記電磁弁が、上記請求項1から請求項7の何れか1項に記載の混合弁装置に接続されていることを特徴とする給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−121496(P2009−121496A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292771(P2007−292771)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】