説明

混合弁

【課題】混合対象となる第1および第2の流体を、簡易な手段によって、従来よりも十分に混合させることが可能な混合弁を提供する。
【解決手段】ケーシング1内のうち、混合流体用の流出口11に臨む空間部50を挟むように設けられて、ケーシング1内に流入した第1および第2の流体を空間部50に進行させるための第1および第2の流通路42A,42Bと、空間部50において所定方向に往復動自在な弁体3A,3Bと、を備えている、混合弁Vであって、弁体3A,3Bの外面に突設され、かつケーシング1の内壁面12に先端部が接近している一対の鍔部7A,7Bを備え、空間部50のうち、一対の鍔部7A,7Bどうしの間の領域は、第1および第2の流体どうしが混合する混合室51とされ、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1は、流出口11の開口幅L2と略同一またはそれ以上の幅である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置において加熱された湯水と非加熱の湯水とを混合させて所定温度の湯水を生成するといった用途や、これ以外の流体の混合用途に用いられる混合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、混合弁の一例として、特許文献1に記載のものを先に提案しており、これを図10に示す。同図に示す混合弁Veは、ケーシング1内に、弁軸2に装着された第1および第2の弁体3A,3Bが設けられた構成を有している。ケーシング1には、第1および第2の流体を内部に流入させるための流入口10A,10B、ならびに混合流体用の流出口11が設けられている。また、ケーシング1内には、第1および第2の流通路42A,42Bを形成した弁座用壁部40A,40Bが設けられている。第1および第2の弁体3A,3Bは、弁軸2に装着されており、弁座用壁部40A,40Bどうしの間に形成された空間部50において弁軸2の長手方向に往復動自在である。第1および第2の弁体3A,3Bは、バネ6によって互いに離反する方向に付勢されている一方、所定幅以上には離間しないように規制部21a,21bによってその移動が規制されている。
【0003】
前記した混合弁Veにおいては、第1の流体は第1の流通路42Aを通過して空間部50に流入する一方、第2の流体は第2の流通路42Bを通過して空間部50に流入し、この空間部50において第1および第2の流体は混合する。この混合流体は、流出口11からケーシング1の外部に流出する。第1および第2の弁体3A,3Bが、図面左方に移動した際には、第1の流通路42A側の弁開度が小さくなり、これとは反対の同図右方に移動した際には第2の流通路42B側の弁開度が小さくなる。したがって、第1および第2の弁体3A,3Bを左右に移動させることにより、第1および第2の流体の混合割合を変更することが可能である。また、この混合弁Veにおいては、第1の弁体3Aを弁座用壁部40Aに当接させた際には、バネ6の弾発力に抗して第2の弁体3Bを第1の弁体3A寄りに移動させて、この第2の弁体3Bによって第1の弁体3Aを弁座用壁部40A側に押圧することが可能である。したがって、第1の弁体3Aと弁座用壁部40Aとの間の止水シール性能を良好にすることができる。これとは反対に、第2の弁体3Bを弁座用壁部40Bに当接させる際にも、第2の弁体3Bを第1の弁体3Aによって弁座用壁部40B側に押圧することができる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、一般的に、混合弁の性能として、第1および第2の流体が十分に混合された混合流体が得られるようにすることが強く要請される。これに対し、前記した混合弁Veにおいては、第1および第2の流通路42A,42Bを通過した第1および第2の流体が空間部50において衝突して混合される構成に過ぎない。このため、第1および第2の流体の混合が十分に図られるとは断言できず、この点において改善すべき余地があった。とくに、前記した混合弁Veにおいては、第1および第2の流通路42A,42Bを全閉状態とする際の止水シール性を高める手段として、第1および第2の弁体3A,3Bを用いており、これら第1および第2の弁体3A,3Bの全体のサイズは比較的大きく、第1および第2の流通路42A,42Bどうしの間隔L20も比較的大きくなる。したがって、第1および第2の流通路42A,42Bを通過した第1および第2の流体は、流速が低下した状態で衝突することとなり、このことが混合促進を図る上で不利となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−31986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、混合対象となる第1および第2の流体を、簡易な手段によって、従来よりも十分に混合させることが可能な混合弁を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される混合弁は、第1および第2の流体を内部に個別に流入させるための一対の流入口、ならびに混合流体用の流出口が設けられているケーシングと、このケーシング内のうち、前記流出口が臨む空間部を挟むようにして設けられ、かつ前記ケーシング内に流入した第1および第2の流体を前記空間部に進行させるための第1および第2の流通路と、これら第1および第2の流通路の流体通過量を変更することが可能に前記空間部に位置して所定方向に往復動自在な弁体と、を備えている、混合弁であって、前記所定方向に間隔を隔てるようにして前記弁体の外面に突設され、かつ前記ケーシングのうち、前記空間部を囲む内壁面に先端部が接近している一対の鍔部を備え、前記空間部のうち、前記一対の鍔部どうしの間の領域は、前記一対の鍔部の先端部と前記内壁面との隙間を通過してきた第1および第2の流体どうしが混合する混合室とされており、前記所定方向において、前記一対の鍔部の外幅は、前記混合流体用の流出口の開口幅と略同一またはそれ以上の幅に形成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、第1および第2の流体が、第1および第2の流通路を通過して混合室に流入する際に、一対の鍔部とケーシングの内壁面との間に形成された微小な幅の隙間を通過することにより、その流速が速くなる作用が得られる。したがって、混合室においては、第1および第2の流体を流速が速い状態で衝突させて、これらの混合を促進することが可能となり、混合が十分に図られた混合流体が得られる。さらに重要な効果として、本発明によれば、一対の鍔部の外幅が、混合流体用の流出口の開口幅と略同一またはそれ以上の広幅であるために、第1および第2の流体を混合させる際においては、一対の鍔部の少なくとも一方の流出口寄り部分を、ケーシングの内壁面に常に接近させておくことができ、混合室のうちの流出口に対面する箇所においても第1および第2の流体の少なくとも一方の流速を高速の状態に維持することが可能である(詳細は、後述する実施形態の図2〜図5の説明を参照)。その結果、第1および第2の流体の混合比率を問わず、これらの流体の混合を促進するのに一層好ましいものとなる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記弁体として、前記第1および第2の流通路にそれぞれ対応する第1および第2の弁体を有しており、これら第1および第2の弁体は、バネによって互いに離反する方向に付勢されているとともに、所定幅以上には離反しないように規制され、前記第1および第2の流通路のいずれか一方を閉塞する際には、前記バネの弾発力に抗して前記第1および第2の弁体が接近し、前記第1および第2の流通路のいずれかに対応して設けられている弁座に対して、前記第1および第2の弁体の一方を他方によって押し付けることが可能とされており、前記一対の鍔部は、前記バネの両端部を支持するためのバネ受け部として構成されている。
【0012】
このような構成によれば、第1および第2の弁体のいずれか一方によって、第1および第2の流通路の一方を全閉状態とする際に、第1および第2の弁体の一方によって他方を
所定の弁座に押し付けることが可能となり、優れた止水シール性能を得ることができる。バネは、第1および第2の流通路の一方を全閉とする状態が解除された際に、第1および第2の弁体を元の状態に復帰させる役割を果たす。一対の鍔部は、前記バネの両端部を支持するバネ受け部を兼用しているために、その構成は合理的であり、構造の複雑化などを回避するのに好ましいものとなる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記混合流体用の流出口内には、この流出口内の流路面積を部分的に狭めた箇所が設けられている。
【0014】
このような構成によれば、混合室において混合された第1および第2の流体が流出口に流れ込み、この流出口の流路面積が部分的に狭められた箇所を通過する際に、前記第1および第2の流体の流速が速くなる。したがって、このことによって第1および第2の流体の混合がさらに促進される効果が期待できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記一対の鍔部には、前記第1および第2の流通路を通過してきた第1および第2の流体を前記混合室に通過させるための切欠き状または非切欠き状の孔が少なくとも1以上設けられている。
【0016】
このような構成によれば、第1および第2の流通路を通過してきた第1および第2の流体は、一対の鍔部とケーシングの内壁面との間に形成されている隙間を通過するだけではなく、一対の鍔部に設けられた孔をも通過して混合室に流入することとなる。このため、混合室に流入する流体のトータルの流量を多くすることができる。したがって、PQ特性をよくし、低圧力で多くの流量を確保するのに好適となる。また、第1および第2の流体が、前記した隙間に加えて前記の孔をも通過すれば、混合室において乱流が生じ易くなり、第1および第2の流体の混合がより促進される。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る混合弁の一例を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2に示す状態から第1および第2の弁体が若干量だけ左方に移動した状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】図2に示す状態から第1および第2の弁体が若干量だけ右方に移動した状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明に係る混合弁の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明に係る混合弁の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明に係る混合弁の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図8】(a)は、本発明に係る混合弁の他の例を示す要部拡大断面図であり、(b)は、(a)のVIII−VIII断面図である。
【図9】(a),(b)は、本発明に係る混合弁の他の例を示す要部断面図である。
【図10】従来技術の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜図4は、本発明が適用された混合弁の一例を示している。本実施形態の混合弁Vは、後に詳述する一部の構成を除き、その基本的な構成は、図10に示した混合弁Veと共通する。したがって、本実施形態において、図10に示した混合弁Veと同一または類
似の要素には、図10と同一の符号を用いることとし、その説明も比較的簡単なものとする。
【0021】
図1によく表われているように、本実施形態の混合弁Vは、ケーシング1、モータM、弁軸2、第1および第2の弁体3A,3B、一対の鍔部7A,7B、ならびに第1および第2の流通路42A,42Bを形成する弁座用壁部40A,40Bを具備している。
【0022】
ケーシング1は、第1および第2の流体をケーシング1内に個別に流入させるための一対の流入口10A,10B、および混合流体用の流出口11を有している。弁軸2は、ケーシング1内に配されて図1の左右方向に延びており、ケーシング1内に配された第1および第2の支持部材4A,4Bに支持されている。弁軸2は、モータMにより回転可能であり、この弁軸2の外面および第2の支持部材4Bの内面には、送りネジ機構を構成するネジ部20,49が形成されている。この送りネジ機構により、モータMを駆動させると、弁軸2は正回転または逆回転しつつ、その長手方向に移動(往復動)する。
【0023】
弁座用壁部40A,40Bは、弁軸2の長手方向に間隔を隔てるようにしてケーシング1内に設けられており、互いに対向する面には、弁座41a,41bが形成されている。混合流体用の流出口11は、弁座用壁部40A,40Bどうしの間に形成された空間部50に臨むように設けられており、これら流出口11と空間部50とは直接繋がっている。第1および第2の流通路42A,42Bは、弁座用壁部40A,40Bに開口して設けられており、流入口10A,10Bからケーシング1内に流入した第1および第2の流体を空間部50に向けて進行させるための部分である。図面においては、弁座用壁部40Bが第2の支持部材4Bにより構成され、かつ弁座用壁部40Aがケーシング1に一体的に形成されているが、これに限定されない。たとえば、弁座用壁部40Aをケーシング1とは別体の部材を用いて構成することもできる。
【0024】
第1および第2の弁体3A,3Bは、第1および第2の流通路42A,42Bの流体流通量を変更するためのであり、空間部50内に配され、かつ弁軸2の移動に伴って弁軸2の長手方向に往復動自在である。第1および第2の弁体3A,3Bが、図1の左方に移動したときには、第1の流通路42A側の弁開度が小さくなり、空間部50への第1の流体の流入量が減少する。これとは反対に、第1および第2の弁体3A,3Bが図1の右方に移動したときには、第2の流通路42B側の弁開度が小さくなり、空間部50への第2の流体の流入量が減少する。
【0025】
第1および第2の弁体3A,3Bは、バネ6によって互いに離反する方向に付勢されている一方、所定幅以上には離反しないようにEリングなどの係止部材21a,21bを用いて位置規制が図られている。図示説明は省略するが、この混合弁Vにおいては、たとえば第1および第2の弁体3A,3Bが左方に移動して、第1の流通路42Aを全閉状態とする場合、第2の弁体3Bを係止部材21bによって左方に押動することが可能である。このことにより、第2の弁体3Bによって第1の弁体3Aを左方に押圧し、第1の弁体3Aと弁座41aとを大きな力で当接させて、この部分の止水シール性を良好なものとすることが可能である。このような状態を解除した際には、バネ6の弾発力によって第1および第2の弁体3A,3Bどうしを元の所定幅に復帰させることが可能である。前記とは反対に、第1および第2の弁体3A,3Bを右方に移動させて、第2の流通路42Bを全閉状態とする際にも、この第2の弁体3Bを第1の弁体3Aによって右方に押圧し、やはり第2の弁体3Bと弁座41bとを大きな力で当接させることが可能である。
【0026】
第1および第2の弁体3A,3Bと弁軸2との間には、第1および第2の弁体3A,3Bの支持を安定させるための補助部材9が設けられている。第1および第2の弁体3A,3Bには、これらの相対回転を阻止するための係合部38a,38bも設けられている。
第1および第2の弁体3A,3Bが相対回転したのではバネ6に捩じり力が作用する不具合を生じる。係合部38a,38bは、そのような捩じり力が発生することを防止するのに役立つ。これらの係合部38a,38bについては、先に挙げた特許文献1に詳しく記載されているため、これ以上の説明は省略する
【0027】
一対の鍔部7A,7Bは、第1および第2の弁体3A,3Bの外面に突設された略円板状であり、バネ6の両端部を支持するバネ受け部としての役割を果たす。ただし、これら一対の鍔部7A,7Bは、第1および第2の流体の混合を促進する役割をも果たす。このような役割を果たすための構成として、一対の鍔部7A,7Bの先端部は、ケーシング1のうち、空間部50を囲む内壁面12に接近し、それらの間に微小な幅(たとえば0.3mm程度の幅)の隙間52a,52bが形成されるようになっている。空間部50のうち、一対の鍔部7A,7Bどうしの間の領域は、隙間52a,52bを通過してきた第1および第2の流体どうしが混合する混合室51である。さらに、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1は、混合流体用の流出口11の開口幅L2と略同一とされている(図2も参照)。ここで、外幅L1および開口幅L2は、ともに弁軸2の長手方向の幅であるが、鍔部7A,7Bの外幅L1は、第1および第2の流体の混合が行なわれる状態においての鍔部7A,7Bの外幅L1であり、第1および第2の弁体3A,3Bがバネ6を圧縮させて互いに接近したときの幅ではない。また、前記した開口幅L2とは、流出口11の各部の開口幅(内径)のうち、空間部50との境界部分における開口幅である。
【0028】
次に、前記した混合弁Vの作用について説明する。
【0029】
まず、この混合弁Vは、たとえば給湯装置に組み込まれて、加熱された湯水(第1の流体の一例)と、非加熱の湯水(第2の流体の一例)とを混合させて所望温度の湯水を生成するといった用途に用いられる。この混合弁Vにおいては、前述した特許文献1に記載された混合弁と同様に、モータMを駆動させて、第1および第2の弁体3A,3Bを左右に移動させることにより、第1および第2の流通路42A,42Bの開口度を変更し、第1および第2の湯水を所望の比率で混合させることができる。また、既述したように、第1および第2の流通路42A,42Bを個々に全閉状態とする場合に、第1および第2の弁体3A,3Bの一方を他方により押圧して第1の弁体3Aと弁座41aとの当接、または第2の弁体3Bと弁座41bとの当接を、強固に行なわせることができる点といった効果も得られる。
【0030】
前記した効果に加え、この混合弁Vにおいては、次のように、第1および第2の流体の混合が促進される特有の効果が得られる。
【0031】
まず、第1の流体が第1の流通路42Aを通過して混合室51に流入する際には、鍔部7Aの先端部とケーシング1の内壁面12との間に形成された微小幅の隙間52aを通過する。このため、この隙間52aを通過した第1の流体は、その流速が速められて混合室51に流入することとなる。同様に、第2の流体についても、第2の流通路42Bを通過して混合室51に流入する際には、鍔部7Bの先端部と内壁面12との間に形成された微小幅の隙間52bを通過するため、その流速が速められて混合室51に流入する。したがって、混合室51においては、第1および第2の流体を、流速が速い状態で衝突させて混合させることが可能となり、それらの混合が促進される。
【0032】
混合流体用の流出口11が開口している箇所においては、図1および図2に示すように、一対の鍔部7A,7Bの先端部がケーシング1の内壁面12に直接対面しない場合がある。ところが、本実施形態においては、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1が流出口11の開口幅L2と略同一であるために、一対の鍔部7A,7Bの少なくとも一方の先端部を、ケーシング1の内壁面12に常に接近させておくことが可能である。すなわち、図2に示
す状態においては、一対の鍔部7A,7Bのうち、流出口11寄りの部分7A’,7B’は、ともにケーシング1の内壁面12に直接対面していないものの、それらの部分7A’,7B’を内壁面12に接近させることが可能であり、これらの箇所に形成される隙間52a’,52b’の幅を小さくすることができる。したがって、やはり隙間52a’,52b’を通過する流体の流速を速くすることが可能である。
【0033】
図3に示すように、第1および第2の弁体3A,3Bが、図2に示す位置よりも図面左方に移動した場合には、鍔部7Bの流出口寄り部分7B’と内壁面12の縁との距離L3は大きくなるものの、鍔部7Aの流出口寄り部分7A’と内壁面12との間には、微小幅の隙間52aが確保される。したがって、この隙間52aを通過する第1の流体の流速を速くし、第1および第2の流体の混合を促進することが可能である。第1および第2の流体の双方の流速が遅い場合には、これらの混合が不十分となり易いが、第1および第2の流体のうち、いずれか一方の流体の流速を速くすれば、それらの混合を促進する効果が得られるのである。図4に示すように、第1および第2の弁体3A,3Bが、図2に示す位置よりも図面右方に移動した場合には、鍔部7Aの流出口寄り部分7A’と内壁面12の縁との距離L4が大きくなるものの、鍔部7Bの流出口寄り部分7B’と内壁面12との間には、微小幅の隙間52bが確保されるために、やはり第2の流体の流速を速くし、第1および第2の流体の混合を促進する効果が得られる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、後述する図5に示す実施形態と比較して、次に述べるような効果も得られる。すなわち、隙間52a,52bを通過して流速が速くなった第1および第2の流体を効率良く混合させるには、隙間52a,52bどうしの距離(一対の鍔部7A,7Bの外幅L1)が余り長くない方がよい。隙間52a,52bどうしの距離が長いほど、第1および第2の流体が混合される前にそれらの流速が徐々に低下していくからである。これに対し、本実施形態では、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1が流出口11の開口幅L2と略同一とされ、図5に示す実施形態の場合よりも隙間52a,52bどうしの距離を短くし、第1および第2の流体の流速を低下し難くすることができる。したがって、第1および第2の流体を高速で衝突させて混合させるのに、より好ましいものとなる。
【0035】
図5〜図8は、本発明に係る混合弁の他の例を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0036】
図5に示す実施形態においては、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1を、混合流体用の流出口11の開口幅L2よりも大きくしている。このような構成によれば、同図に示すように、一対の鍔部7A,7Bのうち、流出口寄り部分7A’,7B’を、ともに内壁面12に対面させて接近させることが可能である。また、第1および第2の弁体3A,3Bが、同図に示す位置から左方または右方に移動した際においては、前記の部分7A’,7B’の少なくとも一方を、内壁面12に対面させて接近させておくことが可能である。したがって、本実施形態においても、本発明が意図する作用が適切に得られる。
【0037】
図6に示す実施形態においては、混合流体用の流出口11の内部に、ケーシング1の主要部を構成する部材とは別体のリング状部材8が嵌入されている。このリング状部材8の内径D1は、流出口11の他の部分の内径D2よりも小径である。したがって、流出口11内の流路面積は、リング状部材8が設けられた箇所において部分的に狭められている。本実施形態によれば、混合室51において混合された第1および第2の流体が、リング状部材8内を通過する際に、その流速が速くなる。したがって、その部分において第1および第2の流体の混合がさらに促進される効果が期待できる。
【0038】
図7に示す実施形態においては、混合流体用の流出口11内に嵌入されたリング状部材
8Aによって、流出口11の開口幅L2(空間部50との境界部分における開口幅)が規定されている。このような構成によっても、一対の鍔部7A,7Bの外幅L1が開口幅L2と略同一、またはそれ以上であれば、本発明が意図する作用が得られる。本実施形態から理解されるように、流出口11の開口幅L2は、ケーシング1の主要部を構成する部材とは、別体の部材を用いて規定されていてもよい。
【0039】
図8に示す実施形態においては、一対の鍔部7A,7Bに複数の孔37が貫通して設けられている。より具体的には、同図(b)に示すように、一方の鍔部7Aの外周縁寄りの位置には、一部切欠き状のスリットの形態をもつ複数の孔37が設けられている。各孔37の幅L30は、隙間52aの幅L31と略同一であり、たとえば0.3mm程度である。他方の鍔部7Bについても、同様な構成である。好ましくは、鍔部7A,7Bにそれぞれ設けられている孔37どうしは、互いに向かい合う配置とされている。
【0040】
本実施形態によれば、第1および第2の流通路42A,42Bを通過した第1および第2の流体は、鍔部7A,7Bとケーシング1の内壁面12との間に形成された隙間52a,52bに加えて、複数の孔37をも通過して混合室51に流入する。このため、混合室51への流体流入が促進され、PQ特性をよくすることができる。また、第1および第2の流体が、隙間52a,52bに加えて、各孔37をも通過すれば、混合室51において乱流が生じ易くなり、このことによって第1および第2の流体の混合がより促進される効果も期待できる。さらに、各孔37の幅L30は、隙間52a,52bの幅L31と略同一であるため、各孔37を通過した流体と、隙間52a,52bを通過した流体とを、略同一の流速に揃えることができ、それらの流速に大きな偏りを生じないようにすることができる。したがって、第1および第2の流体を混合室51の各所において満遍なく混合させて、混合促進効果をより高めることが可能となる。
【0041】
図9(a)に示す実施形態においては、鍔部7Aに設けられた孔37aが、非切欠き状のスリットである。同図(b)に示す実施形態においては、鍔部7Aに設けられた孔37bが、円形状などの非スリット状の孔である。これらの実施形態から理解されるように、鍔部に設けられる孔は、流体を通過させる機能を有すればよく、その具体的な形状などは限定されない。鍔部に設けられる孔は、この孔を通過した流体が乱流となるように、屈曲または湾曲した通路をもつような形態とすることも可能である。
【0042】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る混合弁の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0043】
本発明でいう一対の鍔部は、バネ受け部を兼用するものでなくてもよい。また、本発明においては、弁体に少なくとも一対の鍔部が設けられていればよく、一対以上(2つ以上)の鍔部が設けられている場合も、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0044】
上述した実施形態においては、弁体として、第1および第2の弁体を有し、かつこれら第1および第2の弁体を利用して、第1および第2の流通路を全閉する際に、一方の弁体によって他方の弁体を所定方向に押圧できるようにしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、第1および第2の流通路を全閉する際に、一方の弁体によって他方の弁体を押圧する機能を有しないタイプの混合弁、あるいは第1および第2の流通路のそれぞれを、全閉状態にする機能を有しないタイプの混合弁として構成されていてもかまわない。さらに、弁体として、1つの弁体のみが用いられて、この弁体が所定方向に往復動することにより、第1および第2の流体の混合割合を変更するように構成されたタイプの混合弁についても、本発明を適用することが可能である。
【0045】
本発明でいう第1および第2の流体の具体的な種類や成分も限定されない。本発明に係
る混合弁は、様々な流体の混合用途に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
V 混合弁
L1 一対の鍔部の外幅
L2 混合流体用の流出口の開口幅
1 ケーシング
2 弁軸
3A,3B 第1および第2の弁体(弁体)
6 バネ
7A,7B 一対の鍔部
10A,10B 第1および第2の流体の流入口
11 混合流体用の流出口
12 内壁面
37,37a,37b 孔
41a,41b 弁座
42A,42B 第1および第2の流通路
50 空間部
51 混合室
52a,52b 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の流体を内部に個別に流入させるための一対の流入口、ならびに混合流体用の流出口が設けられているケーシングと、
このケーシング内のうち、前記流出口が臨む空間部を挟むようにして設けられ、かつ前記ケーシング内に流入した第1および第2の流体を前記空間部に進行させるための第1および第2の流通路と、
これら第1および第2の流通路の流体通過量を変更することが可能に前記空間部に位置して所定方向に往復動自在な弁体と、
を備えている、混合弁であって、
前記所定方向に間隔を隔てるようにして前記弁体の外面に突設され、かつ前記ケーシングのうち、前記空間部を囲む内壁面に先端部が接近している一対の鍔部を備え、
前記空間部のうち、前記一対の鍔部どうしの間の領域は、前記一対の鍔部の先端部と前記内壁面との隙間を通過してきた第1および第2の流体どうしが混合する混合室とされており、
前記所定方向において、前記一対の鍔部の外幅は、前記混合流体用の流出口の開口幅と略同一またはそれ以上の幅に形成されていることを特徴とする、混合弁。
【請求項2】
前記弁体として、前記第1および第2の流通路にそれぞれ対応する第1および第2の弁体を有しており、
これら第1および第2の弁体は、バネによって互いに離反する方向に付勢されているとともに、所定幅以上には離反しないように規制され、前記第1および第2の流通路のいずれか一方を閉塞する際には、前記バネの弾発力に抗して前記第1および第2の弁体が接近し、前記第1および第2の流通路のいずれかに対応して設けられている弁座に対して、前記第1および第2の弁体の一方を他方によって押し付けることが可能とされており、
前記一対の鍔部は、前記バネの両端部を支持するためのバネ受け部として構成されている、請求項1に記載の混合弁。
【請求項3】
前記混合流体用の流出口内には、この流出口内の流路面積を部分的に狭めた箇所が設けられている、請求項1または2に記載の混合弁。
【請求項4】
前記一対の鍔部には、前記第1および第2の流通路を通過してきた第1および第2の流体を前記混合室に通過させるための切欠き状または非切欠き状の孔が少なくとも1以上設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の混合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−252517(P2011−252517A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125399(P2010−125399)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】