説明

混合研磨材の研磨用組成物及びその使用方法

【課題】基板の研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(i)(a)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(b)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(c)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む研磨材と、(ii)液体キャリヤーとを含む、研磨用組成物を提供する。本発明はまた、(i)上記の研磨用組成物を用意する工程、(ii)表面を有する基板を用意する工程、及び(iii)基板表面の少なくとも一部を研磨用組成物で削って基板を研磨する工程を含む、基板の研磨方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合研磨材を含有する化学機械研磨用組成物、及び基板、特にはニッケル含有基板を研磨するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面を平坦化又は研磨するための組成物及び方法が当技術分野で周知である。研磨用組成物(研磨用スラリーとしても知られる)は、典型的には水溶液中に研磨材を含有し、研磨用組成物で飽和した研磨パッドと表面を接触させることによって表面に適用される。典型的な研磨材としては、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び酸化スズがある。特許文献1は、例えば、水性媒体中に高純度の微細研磨粒子を含む研磨用組成物と表面を接触させることによって、金属層を化学機械研磨する方法を記載している。研磨用組成物は、典型的には研磨パッド(例えば、研磨布又はディスク)とともに使用される。好適な研磨パッドは、特許文献2〜4において記載されており、これらの明細書は、連続泡の多孔質網目構造を有する焼結ポリウレタン研磨パッドの使用を開示している。特許文献5は、ある表面組織又はパターンを有する固体研磨パッドの使用を開示している。あるいはまた、研磨材は研磨パッドに組み込むことができる。特許文献6は、固定砥粒研磨パッドを開示している。
【0003】
従来の研磨系及び研磨方法は、典型的には基板の平坦化、特にはメモリディスクの平坦化に関して完全に満足のいくものではない。とりわけ、このような研磨系及び研磨方法は、メモリディスク又は硬質ディスクに適用した場合に望ましいとは言えない研磨速度になり、表面の欠陥率も高くなる場合がある。メモリディスクなど多くの基板の性能はその表面の平坦性と直接関係しているので、高い研磨効率、選択性、均一性及び除去速度を与えかつ最小の表面欠陥で以って高品質の研磨をもたらす研磨系及び研磨方法を使用することが極めて重要である。
【0004】
研磨の際、研磨表面の欠陥を最小限に抑えながら、メモリディスク又は硬質ディスクの除去速度を改善しようとする多くの試みがなされている。例えば、特許文献7は、アルミナ研磨材を含む組成物と、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム又はそれらの混合物などの研磨促進剤とを用いて硬質ディスク上のニッケルめっき層を研磨する方法を開示している。特許文献8は、研磨材、酸化剤、及び多重酸化状態を有する触媒の分散液を含む研磨用組成物を用いて硬質ディスクを研磨する方法を開示している。特許文献9は、酸化ハロゲン化物とアミノ酸を含む研磨用組成物を用いてメモリディスク又は硬質ディスク基板を研磨する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,527,423号明細書
【特許文献2】米国特許第6,062,968号明細書
【特許文献3】米国特許第6,117,000号明細書
【特許文献4】米国特許第6,126,532号明細書
【特許文献5】米国特許第5,489,233号明細書
【特許文献6】米国特許第5,958,794号明細書
【特許文献7】米国特許第4,769,046号明細書
【特許文献8】米国特許第6,015,506号明細書
【特許文献9】国際公開第02/20214号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板、特にはメモリディスクの研磨及び平坦化の際、欠陥、例えば、表面欠陥並びに下地の構造及び形状に対する損傷を最小限に抑えながら、望ましい平坦化効率、選択性、均一性及び除去速度を示す研磨系及び研磨方法に対するニーズが依然としてある。
【0007】
本発明は、このような研磨用組成物及び研磨方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点並びに更なる本発明の特徴は、本明細書で与えられる本発明の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)(a)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(b)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(c)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む研磨材と、(ii)液体キャリヤーとを含む、研磨用組成物を提供する。本発明はまた、(i)上記の研磨用組成物を用意する工程、(ii)表面を有する基板を用意する工程、及び(iii)基板表面の少なくとも一部を研磨用組成物で削って基板を研磨する工程を含む、基板の研磨方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(i)研磨材と(ii)液体キャリヤーとを含む研磨用組成物を提供する。本研磨材は、(a)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(b)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(c)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む。
【0010】
上記のように、本発明に関連して用いられる第1の研磨粒子は、8以上のモース硬さを有する。好ましくは、第1の研磨粒子は、8.5以上、より好ましくは9以上のモース硬さを有する。本明細書で用いられる場合には、「モース硬さ」という用語は、物質(例えば、鉱物)の相対的な引掻硬さを比較するのに用いられる相対的な硬さの尺度を指す。モース硬さ尺度は、幾つかの共通の鉱物に対する硬さ値を与えることにより定められ、モース硬さ値は、対象材料の引掻硬さを標準物質の引掻硬さと比較することにより決定される。とりわけ、モース尺度は、滑石に硬さ値1、ダイヤモンドに硬さ値10を割り当てることにより定められる。
【0011】
第1の研磨粒子の硬さは、他の手段によって測定することもできる。例えば、第1の研磨粒子の硬さは、ヌープ硬さ尺度を用いて測定することができる。一般に、ヌープ硬さは、ピラミッド型のダイヤモンド圧子を固定荷重(例えば、100g)のもとで試験材料に押しつけることにより測定される。材料のヌープ硬さを決定するための好適な方法は、「Standard Test Method for Microindentation Hardness of Materials」と題した、米国材料試験協会(ASTM)規格E384−99elに説明されている。個々の研磨材のヌープ硬さ値は、ASTM規格E384−99elに説明されるヌープ硬さを決定する方法のいずれかによって決定された場合には、本明細書に記載される範囲にあるとみなされる。本発明で使用するのに好適な第1の研磨粒子は、15以上、より好ましくは17以上、最も好ましくは20以上のヌープ硬さ(kN/m2)を典型的に有する。
【0012】
本発明で使用するのに好適な第1の研磨粒子は、上記の硬さ特性を有する任意の好適な研磨粒子であることができる。好ましくは、第1の研磨粒子は、酸化アルミニウム(例えば、#−アルミナ)、炭化物、ダイヤモンド(天然及び合成)、窒化物、酸化ジルコニウム、それらの共形成粒子、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。最も好ましくは、第1の研磨粒子は#−アルミナ粒子である。
【0013】
第1の研磨粒子は、任意の好適なサイズを有することができる。典型的には、第1の研磨粒子は、1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下の平均粒子サイズを有する。
【0014】
第1の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて5〜45wt%の量で研磨材中に存在する。好ましくは、第1の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて10wt%以上、より好ましくは15wt%以上の量で研磨材中に存在する。さらに、第1の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて好ましくは40wt%以下、より好ましくは30wt%以下、最も好ましくは25wt%以下の量で研磨材中に存在する。
【0015】
本発明に関連して用いられる第2の研磨粒子は、より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する。より小さな一次粒子の凝集体粒子は、液状(例えば、水性)媒体に分散された場合でも一次粒子に分解されないような比較的強い凝集力によって互いに保持されている。その点で、凝集体粒子は凝集体とは異なる。本発明で使用するのに適した第2の研磨粒子としては、ヒュームド金属酸化物粒子が挙げられるがそれに限定されない。本明細書で用いられる場合には、「ヒュームド金属酸化物粒子」という用語は、金属酸化物前駆体の気相加水分解など、熱分解プロセスによって生成される金属酸化物粒子を指す。好ましくは、第2の研磨粒子は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ、及びそれらの混合物から成る群より選択される。より好ましくは、第2の研磨粒子はヒュームドアルミナ粒子である。
【0016】
本発明で用いられる第2の研磨粒子は、任意の好適なサイズを有することができる。好ましくは、第2の研磨粒子は、300nm以下、より好ましくは250nm以下、最も好ましくは200nm以下の平均凝集体粒子サイズを有する。さらに、第2の研磨粒子は、100nm以下、より好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下の平均一次粒子サイズを有する。
【0017】
第2の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて1〜45wt%の量で研磨材中に存在する。好ましくは、第2の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて40wt%以下(例えば、15〜40wt%)、より好ましくは30wt%以下、さらにより好ましくは20wt%以下、最も好ましくは10wt%以下(例えば、1〜10wt%)の量で研磨材中に存在する。
【0018】
本発明に関連して用いられる第3の研磨粒子は、任意の好適なシリカを含むことができる。好適なシリカとしては、沈殿シリカ、縮合重合シリカ、コロイド状シリカ、及びそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、シリカはコロイド状シリカである。本明細書で用いられる場合には、「コロイド状シリカ」という用語は、その小さな粒子サイズ(例えば、1μm以下又は500nm以下)のために水中で安定な分散体を形成することができる(即ち、粒子が凝集して縣濁した状態から落ちることがない)シリカ粒子を指す。一般に、コロイド状シリカ粒子は、内部表面積のない離散的で実質的に球状のシリカ粒子である。コロイド状シリカは、典型的には、湿式化学プロセス、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩含有溶液の酸性化によって生成される。第3の研磨粒子は、任意の好適なサイズを有することができる。好ましくは、第3の研磨粒子は、200nm以下、より好ましくは150nm以下、最も好ましくは130nm以下の平均粒子サイズを有する。
【0019】
第3の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて10〜90wt%の量で研磨材中に存在する。好ましくは、第3の研磨粒子は、20wt%以上の量で研磨材中に存在する。さらに、第3の研磨粒子は、研磨材の総質量に基づいて好ましくは85wt%以下、より好ましくは80wt%以下(例えば、70〜80wt%)、最も好ましくは70wt%以下(例えば、20〜70wt%)の量で研磨材中に存在する。
【0020】
研磨材は、任意の好適な量で研磨用組成物中に存在することができる。研磨用組成物中に存在する研磨材の総量は、研磨用組成物の総質量に基づいて典型的には0.1wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上、最も好ましくは1wt%以上である。典型的には、研磨用組成物中に存在する研磨材の総量は、研磨用組成物の総質量に基づいて20wt%以下、より好ましくは10wt%以下、最も好ましくは6wt%以下である。
【0021】
あるいはまた、研磨用組成物は、より多量の研磨材と他の任意選択の成分を含有する前駆体組成物として調製することもできる。この実施態様においては、研磨用組成物中に存在する研磨材の総量は、典型的には80wt%以下、より好ましくは50wt%以下、最も好ましくは30wt%以下である。
【0022】
液体キャリヤーは、任意の好適なキャリヤー(例えば、溶媒)であることができる。好適な液体キャリヤーとしては、例えば、水性キャリヤー(例えば、水)及び非水性キャリヤーがある。好ましくは、水性キャリヤーは水であり、より好ましくは脱イオン水である。
【0023】
研磨用組成物は、酸をさらに含むことができる。幾つかの実施態様においては、酸は無機酸である。好ましくは、無機酸は、硝酸、リン酸、硫酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。酸はまた有機酸であることもできる。好ましくは、有機酸は、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、フタル酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0024】
研磨用組成物は、任意の好適なpHを有することができる。典型的には、研磨用組成物は、0以上、好ましくは1以上のpHを有する。研磨用組成物のpHは、典型的には7以下、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。好ましい実施態様においては、研磨用組成物は、1〜4(例えば、2〜3又は2〜2.5)のpHを有する。
【0025】
研磨用組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。好適な界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化界面活性剤、及びそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
【0026】
研磨用組成物は、化学酸化剤をさらに含むことができる。化学酸化剤は、任意の好適な酸化剤であることができる。好適な酸化剤としては、無機及び有機の過化合物、臭素酸塩、硝酸塩、塩素酸塩、クロム酸塩、ヨウ素酸塩、鉄及び銅の塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、EDTA及びクエン酸塩)、希土類及び遷移元素の研磨材(例えば、四酸化オスミウム)、フェリシアン化カリウム、重クロム酸カリウム、ヨウ素酸などがある。(Hawley’s Condensed Chemical Dictionaryで定義される)過化合物とは、少なくとも1つのペルオキシ基(−O−O−)を含有する化合物であるか、又はその最も高い酸化状態の元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例としては、過酸化水素及びその付加物、例えば、過酸化尿素及び過炭酸塩;有機過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酢酸、及びジ−tert−ブチルペルオキシド;モノ過硫酸塩(SO52-);ジ過硫酸塩(S282-);並びに過酸化ナトリウムが挙げられるがそれらに限定されない。その最も高い酸化状態の元素を含有する化合物の例としては、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過ホウ酸、過ホウ酸塩、及び過マンガン酸塩が挙げられるがそれらに限定されない。酸化剤は好ましくは過酸化水素である。
【0027】
酸化剤は、任意の好適な量で研磨用組成物中に存在することができる。酸化剤は、研磨用組成物の総質量に基づいて好ましくは0.01wt%以上、より好ましくは0.3wt%以上、最も好ましくは0.5wt%以上の量で研磨用組成物中に存在する。さらに、酸化剤は、研磨用組成物の総質量に基づいて好ましくは30wt%以下、より好ましくは20wt%以下、最も好ましくは10wt%以下の量で研磨用組成物中に存在する。
【0028】
研磨用組成物は、キレート化剤又は錯化剤をさらに含むことができる。錯化剤は、除去される基板層の除去速度を高める任意の好適な化学添加剤であることができる。好適なキレート化剤又は錯化剤としては、例えば、カルボニル化合物(例えば、アセチルアセトネートなど)、簡単なカルボン酸塩(例えば、酢酸塩、アリールカルボン酸塩など)、1つ又は複数のヒドロキシル基を含有するカルボン酸塩(例えば、グリコール酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、没食子酸、及びそれらの塩など)、ジ−、トリ−及びポリ−カルボン酸塩(例えば、シュウ酸塩、フタル酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、エデト酸塩(例えば、二カリウムEDTA)、ポリアクリル酸塩、それらの混合物など)、1つ又は複数のスルホン基及び/又はホスホン基を含有するカルボン酸塩などを挙げることができる。好適なキレート化剤又は錯化剤としては、さらに、例えば、ジ−、トリ−又はポリアルコール(例えば、エチレングリコール、ピロカテコール、ピロガロール、タンニン酸など)及びアミン含有化合物(例えば、アンモニア、アミノ酸、アミノアルコール、ジ−、トリ−及びポリアミンなど)を挙げることができる。錯化剤は、好ましくはカルボン酸塩、より好ましくはシュウ酸塩である。キレート化剤又は錯化剤の選択は、除去される基板層のタイプに依存している。
【0029】
キレート化剤又は錯化剤は、任意の好適な量で研磨用組成物中に存在することができる。キレート化剤又は錯化剤は、研磨用組成物の総質量に基づいて好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上、最も好ましくは1wt%以上の量で研磨用組成物中に存在する。さらに、キレート化剤又は錯化剤は、研磨用組成物の総質量に基づいて好ましくは20wt%以下、より好ましくは15wt%以下、最も好ましくは10wt%以下の量で研磨用組成物中に存在する。
【0030】
本発明の研磨用組成物は、任意の好適な方法によって調製することができる。一般的には、研磨用組成物は、(i)適量の液体キャリヤーを用意し、(ii)任意選択で好適な量の酸、界面活性剤、酸化剤、キレート化剤若しくは錯化剤、又はそれらの組み合わせ、を添加し、(iii)結果として得られた混合物に所望の量の第1の研磨粒子、第2の研磨粒子、及び第3の研磨粒子を分散させることによって調製される。第1の研磨粒子、第2の研磨粒子、及び第3の研磨粒子は、任意の好適な装置(例えば、高せん断ミキサー)を用いて液体キャリヤーに分散させることができる。上記の方法はまた、研磨用組成物が前駆体組成物として処方される場合も研磨用組成物を調製するのに使用することができる。典型的には、このような前駆体組成物は、基板を研磨するのに使用される前に適量の好適な液体キャリヤーで希釈される(例えば、前駆体組成物1に対し脱イオン水3)。
【0031】
本発明は、本明細書で記載される研磨用組成物を用いた基板の研磨方法を提供する。とりわけ、本発明は、(i)研磨用組成物を用意する工程であって、(a)(I)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(II)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(III)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む研磨材と、(b)液体キャリヤーとを含む研磨用組成物を用意する工程、(ii)表面を有する基板を用意する工程、及び(iii)基板表面の少なくとも一部を研磨用組成物で削って基板を研磨する工程を含む、基板の研磨方法を提供する。
【0032】
研磨用組成物及び研磨方法は、任意の好適な基板を研磨するのに使用することができる。好ましくは、基板は、少なくとも1つの金属層を含む。好適な基板としては、集積回路、メモリディスク又は硬質ディスク、金属、層間絶縁膜(ILD)デバイス、半導体、微小電子機械システム、強誘電体、及び磁気ヘッドが挙げられるがそれらに限定されない。金属層は、任意の好適な金属を含むことができる。例えば、金属層は、銅、タンタル、チタン、アルミニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、イリジウム、又はロジウムを含むことができる。基板は、少なくとも1つの絶縁層をさらに含むことができる。絶縁層は、研磨材、多孔質研磨材、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、又は他の任意の好適な高又は低k−絶縁層であることができる。好ましくは、基板は、ニッケル−リン層を有する(例えば、メモリディスク又は硬質ディスク)。
【0033】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に適している。典型的には、この装置は、使用時に動きかつ軌道、直線又は円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンに接触しかつプラテンが動いているときにそれとともに動く研磨パッドと、研磨パッドの表面に接触しその表面に対して動くことにより研磨されるべき基板を保持するキャリヤーとを備える。基板の研磨は、基板を研磨パッド及び本発明の研磨用組成物に接触させて配置し、次いで、基板に対して研磨パッドを動かすことにより行われ、基板の少なくとも一部を削って基板を研磨するようにする。
【0034】
CMP装置は、その場で研磨の終点を検出するシステムをさらに備えることが望ましく、その多くは当技術分野で公知である。ワークピースの表面から反射された光又は他の放射線を分析することにより研磨プロセスを点検及びモニターする技術が当技術分野で公知である。このような方法は、例えば、米国特許第5,196,353号明細書、同第5,433,651号明細書、同第5,609,511号明細書、同第5,643,046号明細書、同第5,658,183号明細書、同第5,730,642号明細書、同第5,838,447号明細書、同第5,872,633号明細書、同第5,893,796号明細書、同第5,949,927号明細書、及び同第5,964,643号明細書に記載されている。研磨されているワークピースに関する研磨プロセスの進行の点検又はモニタリングは、研磨終点の決定、即ち、特定のワークピースに関して研磨プロセスをいつ終了すべきかの決定を可能とすることが望ましい。
【0035】
本発明の研磨方法は、メモリディスク又は硬質ディスクを研磨するために設計された研磨装置とともに使用するのにも同様によく適している。典型的には、この装置は、1対のプラテン(即ち、上方プラテンと下方プラテン)と1対の研磨パッド(即ち、上方プラテンに取り付けられた上方研磨パッドと下方プラテンに取り付けられた下方研磨パッド)を備える。上方プラテンと上方研磨パッドには一連の孔又はチャンネルが形成されており、研磨用組成物又はスラリーが上方プラテンと上方研磨パッドを通って研磨される硬質ディスクの表面に達するようになっている。下方プラテンは、一連の内部及び外部歯車をさらに有し、それを用いて1つ又は複数のディスクキャリヤーを回転させる。キャリヤーは1つ又は複数の硬質ディスクを保持し、硬質ディスクの各主表面(即ち、上面と下面)が上方及び下方研磨パッドと接触できるようになっている。使用時には、硬質ディスクの表面は、研磨パッド及び研磨用組成物又はスラリーと接触するようにされ、上方及び下方プラテンは、共通軸の周りで独立して回転する。下方プラテンの歯車も駆動され、キャリヤーが上方及び下方プラテン及び/又は上方及び下方研磨パッドの表面内の1つ又は複数の軸の周りで回転するようにする。結果として得られる(プラテンと研磨パッドの回転による)円運動と(キャリヤーの回転による)軌道運動の組み合わせにより、硬質ディスクの上面及び下面が均一に研磨される。
【0036】
CMP装置は、基板を酸化する手段をさらに含むことができる。電気化学研磨系においては、基板を酸化する手段は、基板に時間変動電位(例えば、陽極電位)を印加する装置(例えば、電子ポテンショスタット)を含むことが好ましい。基板に時間変動電位を印加する装置は、任意の好適なこのような装置であることができる。基板を酸化する手段は、好ましくは、研磨の初期段階の際に第1の電位(例えば、強い酸化電位)を印加し、研磨の後の段階で又はその間に第2の電位(例えば、弱い酸化電位)を印加する装置、又は研磨の中間段階の間に第1の電位を第2の電位に変更する装置、例えば、中間段階の間に連続的に電位を下げるか又は第1のより高い酸化電位で所定の間隔の後、第1のより高い酸化電位から第2のより低い酸化電位まで電位を急速に下げる装置を含む。例えば、研磨の1つ又は複数の初期段階の際に、比較的高い酸化電位を基板に印加して基板の比較的高速の酸化/溶解/除去を促進させる。研磨が後の段階なると、例えば、下地のバリヤー層に近くなると、基板の酸化/溶解/除去速度が相当に低いか又は無視できるレベルまで印加電位を下げ、それによりディッシング、コロージョン及びエロージョンをなくすか又は実質的に低減する。時間変動電気化学電位は、制御可能な可変DC電源、例えば、電子ポテンショスタットを用いて印加されることが好ましい。米国特許第6,379,223号明細書は、電位の印加により基板を酸化する手段をさらに記載している。
【実施例】
【0037】
この例は、本発明をさらに説明するものであるが、当然ながら、少しもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。とりわけ、この例は、本発明による基板の研磨方法を例証するものである。
【0038】
ニッケル−リン層を有する同様の基板を、6つの研磨用組成物(研磨用組成物A、B、C、D、E及びF)で研磨した。各研磨用組成物は、酒石酸を0.8wt%、過酸化水素を1wt%含有し、同じ研磨装置及び同じ研磨パッドとともに用いた。研磨用組成物A(比較例)は、8以上のモース硬さを有する#−アルミナ粒子(平均粒子サイズ250nm)を研磨用組成物の総質量に基づいて0.8wt%含有していた。研磨用組成物B(比較例)は、より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有するヒュームドアルミナ粒子を研磨用組成物の総質量に基づいて0.2wt%含有していた。研磨用組成物C(比較例)は、コロイド状シリカ粒子を研磨用組成物の総質量に基づいて3wt%含有していた。研磨用組成物D(比較例)は、研磨用組成物の総質量に基づいて#−アルミナ粒子(平均粒子サイズ250nm)を0.8wt%と、ヒュームドアルミナ粒子を0.2wt%含有していた。研磨用組成物E(本発明)は、研磨用組成物の総質量に基づいて#−アルミナ粒子(平均粒子サイズ250nm)を0.8wt%と、ヒュームドアルミナ粒子を0.2wt%と、コロイド状シリカ粒子を3wt%含有していた。研磨用組成物F(本発明)は、研磨用組成物の総質量に基づいて#−アルミナ粒子(平均粒子サイズ350nm)を0.8wt%と、ヒュームドアルミナ粒子を0.2wt%と、コロイド状シリカ粒子を3wt%含有していた。
【0039】
各研磨用組成物に関する除去速度、並びに研磨後の基板の表面粗さ及び全表面のうねり(5mmカットオフ)を測定した。研磨された各基板の表面粗さは、Schmitt Measurement Systemsから入手可能なTMS 2000 Texture Measurement System(39μm)を用いて決定し、全表面のうねりは、Phase Shift Technologyから入手可能なOptiflatシステムを用いて測定した。各研磨用組成物に関する結果を表にまとめる。
【0040】
【表1】

【0041】
この結果から確認できるように、本発明による研磨用組成物は、他の研磨用組成物に比べてより高い除去速度、より低い表面粗さ、及びより低い全表面のうねりを示している。とりわけ、研磨用組成物E(本発明)及びF(本発明)は、比較例の各研磨用組成物よりも低い全表面のうねりと、研磨用組成物D(比較例)を除く比較例の各研磨用組成物よりも高い除去速度を示した。しかしながら、研磨用組成物Dの表面粗さと全表面のうねりは、研磨用組成物E及びFを用いて得られるものよりも非常に大きい。研磨用組成物C(比較例)は比較的低い表面粗さの値を示したが、除去速度は、研磨用組成物E及びFの除去速度の半分より小さく、全表面のうねりもまた、研磨用組成物E及びFを用いて得られるものよりも大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(b)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(c)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む研磨材と、
(ii)液体キャリヤーと
を含む、研磨用組成物。
【請求項2】
前記第1の研磨粒子が#−アルミナ粒子である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記第2の研磨粒子がヒュームドアルミナ粒子である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記シリカがコロイド状シリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記液体キャリヤーが水を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記研磨材が、前記研磨用組成物の総質量に基づいて0.5〜20wt%の量で存在する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記研磨材が、前記研磨用組成物の総質量に基づいて1〜6wt%の量で存在する、請求項6に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記研磨材が、(a)前記第1の研磨粒子を15〜40wt%、(b)前記第2の研磨粒子を15〜40wt%、及び(c)前記第3の研磨粒子を20〜70wt%含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記研磨材が、(a)前記第1の研磨粒子を15〜25wt%、(b)前記第2の研磨粒子を1〜10wt%、及び(c)前記第3の研磨粒子を70〜80wt%含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
前記第1の研磨粒子が、1μm以下の平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
前記第1の研磨粒子が、400nm以下の平均粒子サイズを有する、請求項10に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
前記第2の研磨粒子が、200nm以下の平均凝集体粒子サイズを有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項13】
前記第3の研磨粒子が、150nm以下の平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項14】
前記研磨用組成物が酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項15】
前記酸化剤が過酸化水素を含む、請求項14に記載の研磨用組成物。
【請求項16】
前記研磨用組成物が酸をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項17】
前記酸が有機酸である、請求項16に記載の研磨用組成物。
【請求項18】
前記有機酸が、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、フタル酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項17に記載の研磨用組成物。
【請求項19】
前記研磨用組成物が1〜4のpHを有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項20】
(i)研磨用組成物を用意する工程であって、
(a)(I)8以上のモース硬さを有する第1の研磨粒子を5〜45wt%、(II)より小さな一次粒子の凝集体を含む三次元構造を有する第2の研磨粒子を1〜45wt%、及び(III)シリカを含む第3の研磨粒子を10〜90wt%含む研磨材と、
(b)液体キャリヤーと
を含む研磨用組成物を用意する工程、
(ii)表面を有する基板を用意する工程、及び
(iii)基板表面の少なくとも一部を研磨用組成物で削って基板を研磨する工程
を含む、基板の研磨方法。
【請求項21】
前記第1の研磨粒子が#−アルミナ粒子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の研磨粒子がヒュームドアルミナ粒子である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記シリカがコロイド状シリカである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記液体キャリヤーが水を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記研磨材が、前記研磨用組成物の総質量に基づいて0.5〜20wt%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記研磨材が、前記研磨用組成物の総質量に基づいて1〜6wt%の量で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記研磨材が、(a)前記第1の研磨粒子を15〜40wt%、(b)前記第2の研磨粒子を15〜40wt%、及び(c)前記第3の研磨粒子を20〜70wt%含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記研磨材が、(a)前記第1の研磨粒子を15〜25wt%、(b)前記第2の研磨粒子を1〜10wt%、及び(c)前記第3の研磨粒子を70〜80wt%含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の研磨粒子が、1μm以下の平均粒子サイズを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の研磨粒子が、500nm以下の平均粒子サイズを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の研磨粒子が、200nm以下の平均凝集体粒子サイズを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記第3の研磨粒子が、150nm以下の平均粒子サイズを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記研磨用組成物が酸化剤をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記酸化剤が過酸化水素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記研磨用組成物が酸をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記酸が有機酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記有機酸が、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、フタル酸、安息香酸、クエン酸、コハク酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記研磨用組成物が1〜4のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項39】
前記基板がニッケル−リン層を有する、請求項20に記載の方法。

【公開番号】特開2011−126010(P2011−126010A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−27371(P2011−27371)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2006−503285(P2006−503285)の分割
【原出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【出願人】(500397411)キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】