説明

混合装置

【課題】コスト低減を図る。
【解決手段】交互に投入された主剤(第1液剤)と希釈剤(第2液剤)は、共用流路30を通る間に混合し、その混合液剤の粘度は、主剤よりも低いものの、希釈剤よりは高い粘度、即ち、容積流量計35を通過する間にオーバルギヤ52(可動子)を押し動かすことが可能な比較的高い粘度となる。主剤と希釈剤の流量を1つの流量計35で計測できる。容積流量計35はコリオリ式流量計よりも安価である。よって、コリオリ式流量計を含む2つの流量計を用いる場合に比べて、コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの液剤を混合するための混合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、主剤と希釈剤を所定の割合で混合して得られた塗料を塗装ガン100に供給する装置を表している。主剤の供給源101aから混合点102に至る主剤用の供給路103aと、希釈剤の供給源101bから混合点102に至る供給路103bの双方には、開閉弁104a,104bと専用の流量計105a,105bが設けられ、流量計105a,105bよりも下流側で混合機106によって主剤と希釈剤を混合させるようになっている。主剤と希釈剤の流量は、流量計105a,105bからの信号に基づいて制御装置107で開閉弁104a,104bを制御することによって所定量に調整される。
【0003】
ところで、流量計の一例として比較的安価な容積流量計(例えば、ギヤ式、ルーツ式、ピストン式など)が知られているが、この容積流量計は、ギヤ等の可動子をケース内に収容したものであって、計測対象の液剤がその粘性によって可動子を押し動かすようになっていることから、比較的粘度の高い主剤用の流量計として用いるのに好適である。
尚、容積流量計を用いて塗料の流量の計測を行う混合装置としては、特許文献1に開示されているものがある。
【0004】
一方、希釈剤は主剤に比べて粘度が低いため、上記のような容積流量計では、希釈剤が、可動子を押し動かさずに、可動子同士の隙間や可動子とケースとの隙間を擦り抜けてリークしまうので、流量を計測できない。そのため、比較的高価であるものの、可動子の粘性を利用せずに計測することのできるコリオリ式質量流量計が用いられる。
尚、コリオリ式質量流量計を用いて塗料の流量の計測を行う混合装置としては、特許文献2に開示されているものがある。
【特許文献1】特開2003−344137公報
【特許文献2】特開平5−92155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、高粘度の主剤と低粘度の希釈剤の流量を粘度に応じて容積流量計とコリオリ式質量流量計を使い分けて計測する混合装置では、流量計が2つ必要となるだけでなく、低粘度用のコリオリ式質量流量計が高価であることから、混合装置が全体としてコストアップすることが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、少なくとも第1液剤と前記第1液剤よりも低粘度の第2液剤とを、所定の流量ずつ交互に共用流路の上流端に投入し、前記第1液剤と前記第2液剤が前記共用流路を通る間に混合することによって得られた塗料を塗装ガンに供給するようにした混合装置であって、前記共用流路の途中に、前記液剤の粘性により押し動かされる可動子をケース内に収容した形態の容積流量計が設けられているところに特徴を有する。
尚、本発明において、液剤とは、多液混合塗料の原材料である主剤、希釈剤、硬化剤等のような特定の性質を有する液体や特定の用途に用いられる液体を意味する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1液剤の供給源から前記共用流路の上流端に至る第1供給路と、前記第2液剤の供給源から前記共用流路の上流端に至る第2供給路のうち、少なくともいずれか一方の供給路には、その供給路における前記液剤の流れの有無を検出するフローセンサが設けられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記フローセンサが、弁口を開閉するように動く弁体を備えた逆止弁と、前記弁体の動きを検出するリードスイッチとを備えて構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
交互に投入された第1液剤と第2液剤は、共用流路を通る間に混合し、その混合液剤の粘度は、第1液剤よりも低いものの、第2液剤よりは高い粘度、即ち、容積流量計を通過する間に可動子を押し動かすことが可能な比較的高い粘度となる。本発明では、2つの液剤の流量を1つの流量計で計測できるので、2つの液剤を専用の流量計を用いて計測するものと比較すると、コストを低減できる。また、容積流量計はコリオリ式流量計よりも安価であるので、コリオリ式流量計を用いる場合に比べてコストを低減できる。
【0010】
<請求項2の発明>
フローセンサの検出結果に基づき、第1液剤と第2液剤が交互に投入されているか否かを検知することができる。
【0011】
<請求項3の発明>
弁体が移動するのに伴い、リードスイッチが閉成又は開成して検出信号を出力するので、この出力信号に基づいて、第1液剤と第2液剤が交互に投入されているか否かを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の混合装置は、主剤(本発明の構成要件である第1液剤)と、希釈剤(本発明の構成要件である第2液剤)とを混合し、その混合液体に硬化剤を混合することによって得られた塗料を塗装ガン10に供給するものである。
【0013】
主剤供給源11は、主剤が貯留されたタンク(図示せず)と、タンク内の主剤を吸引するポンプ(図示せず)とを備えて構成されている。主剤供給源11には主剤供給路12(本発明の構成要件である第1供給路)の上流端が接続され、主剤供給路12の下流端には3つのポートを有する第1継手13(第1混合点)が接続されている。また、主剤供給路12の途中には、主剤用開閉弁14と、主剤用開閉弁14よりも下流側に位置する主剤用フローセンサ15と、主剤用フローセンサ15よりも下流側であって主剤供給路12の下流端の近くに位置するチェックバルブ16とが設けられている。
【0014】
希釈剤供給源21は、希釈剤が貯留されたタンク(図示せず)と、タンク内の希釈剤を吸引するポンプ(図示せず)とを備えて構成されている。希釈剤供給源21には希釈剤供給路22(本発明の構成要件である第2供給路)の上流端が接続され、希釈剤供給路22の下流端は上記した第1継手13に接続されている。つまり、上記の主剤供給路12の下流端と希釈剤供給路22の下流端とは第1継手13において合流している。また、希釈剤供給路22の途中には、希釈剤用開閉弁24と、希釈剤用開閉弁24よりも下流側に位置する希釈剤用フローセンサ25と、希釈剤用フローセンサ25よりも下流側であって希釈剤供給路22の下流端の近くに位置するチェックバルブ26とが設けられている。
【0015】
第1継手13には、第1共用流路30の上流端が接続されている。この第1共用流路30の途中には、所定長さのホースやスタティックミキサ等からなる第1混合機31と、第1混合機31よりも下流側に位置する第1容積流量計35と、第1容積流量計35よりも下流側に位置する混合液剤用開閉弁36と、混合液剤用開閉弁36よりも下流側であって第1共用流路30の下流端の近くに位置するチェックバルブ37とが設けられている。また、第1共用流路30の下流端には、3つのポートを有する第2継手38(第2混合点)が接続され、この第2継手38には、第2共用流路39の上流端が接続されている。第2共用流路39の下流端には塗装ガン10が接続され、第2共用流路39の途中には、所定長さのホースやスタティックミキサ等からなる第2混合機40が設けられている。
【0016】
硬化剤供給源41は、硬化剤が貯留されたタンク(図示せず)と、タンク内の硬化剤を吸引するポンプ(図示せず)とを備えて構成されている。硬化剤供給源41には硬化剤供給路42の上流端が接続され、硬化剤供給路42の下流端は上記第2継手38(第2混合点)に接続されている。また、硬化剤供給路42の途中には、硬化剤用開閉弁44と、硬化剤用開閉弁44よりも下流側に位置する第2容積流量計と、第2容積流量計45よりも下流側であって硬化剤供給路42の下流端の近くに位置するチェックバルブ47とが設けられている。
【0017】
第1容積流量計35と第2容積流量計45は、同じ形態のものであって、図4に示すように、ケース50内に計量室51を形成するとともに、計量室51内に2つのオーバルギヤ52(本発明の構成要件である可動子)を収容したギヤ式のものである。計量室51内に液体(主剤と希釈剤の混合液)が流入すると、その液体が、その粘度により両オーバルギヤ52の隙間を通過するときにこの両オーバルギヤ52を押して回転させるようになっている。このオーバルギヤ52の回転数は光学的にカウントされ、これが計測信号として出力されるようになっている。
【0018】
主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25は、同じ構造のものであり、図2及び図3に示すように、第1〜第3の3つの取付孔61A,61B,61Cを有する本体部60と、第1及び第2の2つの筒体62A,62Bと、リードスイッチ63とを備えて構成されている。3つの取付孔61A,61B,61Cは、円形断面をなしていて、内周に雌ネジ部が形成されている。第1取付孔61Aと第3取付孔61Cは本体部60の外面において互いに正反対の向きに開口し、第2取付孔61Bは、本体部60の外面において第1取付孔61A及び第3取付孔61Cに対して直角な方向に開口している。また、本体部60内には、第1取付孔61Aの奥端(図2における下端)を同軸状に穿孔した形態の円形断面の弁室64が形成されているとともに、第2取付孔61Bの奥端(図2における右端)を同軸状に穿孔した形態の円形断面の流出室65が形成され、流出室65の奥端が弁室64の内周面に開口されている。第1取付孔61Aには、円筒状をなす第1筒体62Aがねじ込みにより取り付けられ、この第1筒体62Aの開口端には、主剤供給路12又は希釈剤供給路22における上流側の流路が接続されている。第2取付孔61Bには、円筒状をなす第2筒体62Bがねじ込みにより取り付けられ、この第2筒体62Bの開口端には、主剤供給路12又は希釈剤供給路22における下流側の流路が接続されている。
【0019】
第1筒体62Aの奥端部(図2における下端部)の開口部は弁口66となっており、弁口66には、リング状をなす弁シート67が取り付けられている。また、弁室64内には、円柱形をなす弁体68が、第1継手13及び弁室64と同軸方向への移動を可能に収容されている。弁体68は、磁石69を有底筒状のガイド部材70で包囲した形態であり、ガイド部材70の外周には、その軸線方向における略中央部分を周方向に突出させた形態の拡径部71が形成されている。ガイド部材70の外周面のうち拡径部71よりも第1筒体62A側の領域と、拡径部71における第1筒体62A側と対向するリング状の外面は、弁シート67の内周面及び弁シート67における弁室64との対向面に対して液密状に密着可能なシート面となっている。また、弁室64内には、弁体68に対して弁シート67側(第1筒体62A側)へ弾性的に押圧するための圧縮コイルバネ72が、一端を弁室64の奥端面(図2における下端面)に当接させるとともに他端を拡径部71に当接させた状態で収容されている。圧縮コイルバネ72の第1筒体62A側の部分はガイド部材70の外周に外嵌されている。上述のように、第1筒体62Aと弁室64と弁体68と圧縮コイルバネ72は、逆止弁73を構成している。即ち、常には、弁体68が圧縮コイルバネ72の付勢力(弾力)によって弁シート67に密着することで弁口66が閉塞された閉弁状態に保持され、第1筒体62A内の圧力が所定圧以上に上昇すると、弁体68が圧縮コイルバネ72の付勢に抗して弁シート67から離間する方向へ移動して弁口66が開放された開弁状態となる。閉弁状態では、弁口66を通過する液剤(主剤又は希釈剤)の流れが阻止され、開弁状態では、弁口66を通過する液剤(主剤又は希釈剤)の流れが許容される。
【0020】
また、第3取付孔61Cには、リードスイッチ63がねじ込みにより取り付けられている。第3取付孔61Cの奥端部(図2における上端部)は、薄い隔壁74を介して弁室64の奥端部に接近して位置している。リードスイッチ63の弁室64に最も接近している先端部(図2における上端部)には、弁体68が弁口66を開放させる開弁位置まで移動(リードスイッチ63に接近)したときには磁石69の磁力によって閉成状態(ON状態)となり、弁体68が弁口66を閉塞させる閉弁位置にあって磁石69がリードスイッチ63から遠ざかっているときには開成状態(OFF状態)となる接点(図示せず)が配置されている。つまり、液剤(主剤又は希釈剤)が第1筒体62Aから弁口66と弁室64を通過して第2筒体62B側へ流れているときには、リードスイッチ63がON状態となり、第1筒体62Aから第2筒体62Bへの液剤の流れが停止しているときには、リードスイッチ63がOFF状態となる。そして、このリードスイッチ63のON・OFFの切り替わりは検出信号として出力されるようになっている。
【0021】
上記した第1容積流量計35及び第2容積流量計45からの計測信号と、主剤用フローセンサ15及び希釈剤用フローセンサ25からの検出信号は、いずれも、制御装置80に入力されるようになっている。制御装置80では、第1容積流量計35及び第2容積流量計45からの計測信号に基づいて、第1共用流路30における主剤と希釈剤の混合液剤の流量及び硬化剤供給路42における硬化剤の流量を演算し、この演算結果に基づいて、主剤用開閉弁14、希釈剤用開閉弁24及び混合液剤用開閉弁36の開閉動作を制御するための制御信号を出力する。同じく制御装置80においては、主剤用フローセンサ15及び希釈剤用フローセンサ25からの検出信号に基づき、主剤が主剤供給路12を流れているか否かを経時的に検出するとともに、希釈剤が希釈剤供給路22を流れているか否かを経時的に検出する。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。
塗装を行う際には、主剤と希釈剤を所定の比率で混合して得た混合液剤を、硬化剤と所定の比率で混合することによって得られた塗料を、塗装ガン10に供給する。以下、各液剤を混合していく過程を説明する。
【0023】
まず、主剤供給源11から所定量の主剤を第1共用流路30側へ送り出す。このとき、希釈剤用開閉弁24と硬化剤用開閉弁44を閉弁した状態で、主剤用開閉弁14と混合液剤用開閉弁36を開弁して主剤の供給を開始するとともに、主剤用開閉弁14と混合液剤用開閉弁36を開弁している状態において第1容量流量計を通過する混合液剤の流量を計測する。主剤と希釈剤は、いずれも非圧縮性の液体であるから、この第1容積流量計35で計測される値が、主剤供給路12から第1共用流路30への主剤の供給量となる。
【0024】
また、主剤の供給が行われている間、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号をチェックする。このとき、主剤用フローセンサ15からの検出信号がON状態(即ち、主剤供給路12に主剤が流れている状態)であり、且つ希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がOFF状態(即ち、希釈剤供給路22に希釈剤が流れていない状態)であれば、正常である(即ち、第1共用流路30には主剤のみが送り込まれ、希釈剤は送り込まれていない)と判断される。もし、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がこれ以外のON・OFFの組み合わせである場合は、異常事態であるから、直ちに塗装を中止する。
【0025】
そして、第1容積流量計35における計測値(主剤の供給量)が所定値に達すると、混合液剤用開閉弁36は開弁したままで主剤用開閉弁14を閉弁状態に切り替えて主剤の供給を一旦停止し、その直後に、希釈剤用開閉弁24を開弁状態に切り替えて希釈剤の供給を開始するとともに、希釈剤用開閉弁24と混合液剤用開閉弁36が開弁している状態において第1容積流量計35を通過する混合液剤の流量を計測する。この第1容積流量計35で計測される値は、希釈剤供給路22から第1共用流路30への希釈剤の供給量となる。
【0026】
また、希釈剤の供給が行われている間、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号をチェックする。このとき、主剤用フローセンサ15からの検出信号がOFF状態(即ち、主剤供給路12に主剤が流れていない状態)であり、且つ希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がON状態(即ち、希釈剤供給路22に希釈剤が流れている状態)であれば、正常である(即ち、第1共用流路30には希釈剤のみが送り込まれ、主剤は送り込まれていない)と判断される。もし、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がこれ以外のON・OFFの組み合わせである場合は、異常事態であるから、直ちに塗装を中止する。
【0027】
そして、第1容積流量計35における計測値(希釈剤の供給量)が所定値に達すると、主剤用開閉弁14は閉弁状態のままで混合液剤用開閉弁36と希釈剤用開閉弁24を閉弁状態に切り替えて希釈剤の供給(主剤の供給も)を一旦停止し、その直後に、硬化剤用開閉弁44を開弁状態に切り替えて硬化剤の供給を開始するとともに、硬化剤用開閉弁44を開弁している状態において第2容量流量計を通過する液剤の流量を計測する。この第2容積流量計45で計測される値は、硬化剤供給路42から第2共用流路39への硬化剤の供給量となる。
【0028】
尚、硬化剤の供給が行われている間、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号をチェックする。このとき、主剤用フローセンサ15からの検出信号と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がいずれもOFF状態(即ち、主剤と希釈剤の双方が第1共用流路30に流れ込んでいない状態)であれば、正常であると判断される。もし、主剤用フローセンサ15と希釈剤用フローセンサ25からの検出信号がこれ以外のON・OFFの組み合わせである場合は、異常事態であるから、直ちに塗装を中止する。
【0029】
上記した主剤の供給と希釈剤の供給と硬化剤の供給が順次に繰り返されることにより、第1共用流路30には主剤と希釈剤が所定量ずつ交互に投入され、この主剤と希釈剤が第1共用流路30を流れる間に第1混合機31により撹拌されて混合液剤となる。また、この混合液剤と硬化剤は、交互に第2共用流路39内に投入され、この第2共用流路39を流れる間に第2混合機40により撹拌されて塗料となり、塗装ガン10に供給される。
【0030】
さて、本実施形態では、液剤の流量を計測する手段として液剤の粘性により押し動かされるオーバルギヤ52をケース50内に収容した形態の容積流量計35,45を用いているため、計測対象の液剤にはある程度、例えば、20mPa・s以上の粘度が必要である。本実施形態の主剤は、材料がウレタン樹脂であって、その粘度は70mPa・s以上であるため、第1容積流量計35に主剤を通過させて流量計測することは可能である。また、硬化剤についても、材料がポリイソシアネートであって、その粘度は20mPa・s以上であるため、第2容積流量計45に硬化剤を通過させて流量計測することが可能である。これに対し、希釈剤は、材料が有機溶剤であって、その粘度は15mPa・s以下であるため、この容積流量計35,45に希釈剤を通過させることによってその流量を高い精度で計測することはできない。
【0031】
しかしながら本実施形態では、主剤と希釈剤がいずれも非圧縮性の液体であることに着目し、主剤と希釈剤を、例えば(10:2)の比率で混合することにより、希釈剤よりも高い粘度(約40mPa・s)として第1容積流量計35による計測が可能な混合液剤を作り、この混合液剤を第1容積流量計35で計測することにしている。このように本実施形態では、主剤と希釈剤の流量を1つの第1容積流量計35で計測できるので、主剤と希釈剤を専用の流量計を用いて計測するものと比較すると、コストを低減できる。また、一般に、容積流量計35,45はコリオリ式流量計よりも安価であるので、コリオリ式流量計を用いる場合に比べてコストを低減できる。
【0032】
また、主剤供給源11から第1共用流路30の上流端に至る主剤供給路12と、希釈剤供給源21から第1共用流路30の上流端に至る希釈剤供給路22には、夫々、主剤または希釈剤が流れているか否かを検出するフローセンサ15,25が設けられているので、これらのフローセンサ15,25の検出結果に基づいて、主剤と希釈剤が交互に投入(供給)されているか否かを検知することができる。
【0033】
尚、本実施形態において主剤、希釈剤、混合液剤、硬化剤、及び塗料の流路を洗浄する際には、まず、これらの流路に、夫々、材質に合わせた好適な洗浄液を流し、その後で、洗浄液とは異なる硬化抑制剤を、上記流路内に充填するようになっている。色替えにおいて洗浄が完了してから別の色の塗料用の液剤を流路に充填するまでの間のインターバルが長い場合は、塗料用の液剤を充填するまでの間、硬化抑制剤を各流路内に充填したままにしておく。また、塗装が一旦終了してから次回の塗装が開始するまでに長い時間が経過する場合においても、色替えのときと同様に、塗料用の液剤が流路に充填されるまでの間、硬化抑制剤を流路に充填したままにしておく。
【0034】
一般に、流路の内壁面では流体の流速がゼロに近くなることから、流路内に洗浄液を流しても、流路の内壁面に付着している液剤を完全に除去することはできず、薄膜が残ることは避けられない。特に、流路内に形成されている凹部においては、液剤の薄膜の残留が顕著である。主剤の硬化剤が混合された塗料が流れる第2共用流路においては、この塗料の薄膜が、空気に触れると硬化し、塗装の際に、硬化物の一部が内壁面から剥がれて塗料中に混入し、塗装不良を来す原因となる。
【0035】
その点、本実施形態では、流路内に塗料が硬化することを抑制する機能を有する硬化抑制剤を充填し、第2共用流路の内壁面に残留している塗料の薄膜が空気に触れないようにしている。つまり、塗料の薄膜を空気との接触から保護する作用と、塗料に応じて選択した硬化抑制剤による化学的な硬化抑制作用とにより、塗料の薄膜の硬化が確実に防止されている。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)第1混合機31は第1容積流量計35より下流側に設けてもよい。
(2)第1共用流路30の上流端から第1容積流量計35までの供給経路が十分に長くて、特に撹拌機構などを用いなくても混合される場合は、第1混合機を設けなくてもよい。
(3)1つの容積流量計の計測対象は、3種類以上の液剤を混合した塗料であってもよい。
(4)容積流量計34,45の可動子としてオーバルギヤを用いたものとしたが、これに替えて、円形のギヤを用いたものとしてもよい。
(5)容積流量計34,45としては、ギヤ式に限らず、ルーツ式やピストン式などのタイプの容積流量計を用いることができる。
(6)フローセンサは、開閉弁よりも上流側に配置してもよい。
(7)フローセンサは、逆止弁の弁体の動き(弁の開閉状態)をリードスイッチで検出するタイプのものでなく、流量計をフローセンサとして利用してもよい。
(8)上記実施形態では主剤と希釈剤を混合する場合について説明したが、本発明は、これ以外の液剤を混合する場合にも適用できる。
(9)上記実施形態では主剤供給路12と希釈剤供給路22の双方にフローセンサ15,25を設けたが、フローセンサは主剤供給路12と希釈剤供給路22のうちいずれか一方のみに設けてもよい。この場合でも、フローセンサの検出結果と第1容積流量計35の計測結果に基づいて、主剤と希釈剤の双方の流れの状態(即ち、主剤と希釈剤が交互に供給されているか否か)を検出できる。
(10)混合液剤用開閉弁36は第1容積流量計35よりも上流側に設けてもよく、また混合液剤用開閉弁36を用いない形態としてもよい。
(11)フローセンサの可動子(オーバルギヤ)の回転数をカウントする手段としては、電波や磁力を用いることもできる。
(12)上記実施形態ではフローセンサのリードスイッチ63を第1筒体62Aと対向するように配置したが、これに替えて、リードスイッチを、弁室64及び流出室65を挟んで第2筒体62Bと対向するように配置してもよい。この場合、リードスイッチは、図2において閉弁位置の弁体68よりも低い位置に配置しておき、開弁状態で弁体68がリードスイッチと同じ高さとなるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態1の混合装置の構成をあらわす概略図
【図2】フローセンサの逆止弁が閉弁している状態をあらわす断面図
【図3】フローセンサの逆止弁が開弁している状態をあらわす断面図
【図4】容積流量計の内部構造をあらわす平面図
【図5】従来例の混合装置の構成をあらわす概略図
【符号の説明】
【0038】
10…塗装ガン
12…主剤供給路(第1供給路)
15…主剤用フローセンサ
22…希釈剤供給路(第2供給路)
25…希釈剤用フローセンサ
30…第1共用流路
35,45…容積流量計
50…ケース
52…オーバルギヤ(可動子)
63…リードスイッチ
66…弁口
68…弁体
73…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1液剤と前記第1液剤よりも低粘度の第2液剤とを、所定の流量ずつ交互に共用流路の上流端に投入し、前記第1液剤と前記第2液剤が前記共用流路を通る間に混合することによって得られた塗料を塗装ガンに供給するようにした混合装置であって、
前記共用流路の途中に、前記液剤の粘性により押し動かされる可動子をケース内に収容した形態の容積流量計が設けられていることを特徴とする混合装置。
【請求項2】
前記第1液剤の供給源から前記共用流路の上流端に至る第1供給路と、前記第2液剤の供給源から前記共用流路の上流端に至る第2供給路のうち、少なくともいずれか一方の供給路には、その供給路における前記液剤の流れの有無を検出するフローセンサが設けられていることを特徴とする請求項1記載の混合装置。
【請求項3】
前記フローセンサが、弁口を開閉するように動く弁体を備えた逆止弁と、前記弁体の動きを検出するリードスイッチとを備えて構成されていることを特徴とする請求項2記載の混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−275844(P2007−275844A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108969(P2006−108969)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】