説明

清浄装置

【課題】清浄装置の全体としての設置面積を縮小し得るとともに、被処理物に対する清浄媒体の吹付けの陰となる部分の少ない清浄装置を提供し、設置面の有効利用及び清浄もれの少ないより的確な清浄処理の実施を図る。
【解決手段】処理室1を挟んで両側に案内レール4上をそれぞれ往復移動可能な搬入側搬送台車5及び搬出側搬送台車6を配設するとともに、処理室1内に搬送台車上の被処理物8を持上げて支持する持上げ支持手段10を設け、被処理物8を搬入側搬送台車5にて処理室1内に搬入して持上げ支持手段10に受渡し、該搬入側搬送台車5を処理室1から退出させたうえで所期の清浄処理を実施し、その清浄処理済みの被処理物8を持上げ支持手段10から搬出側搬送台車6に受渡して処理室1から搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の台車等の大型のワークを清浄する場合に好適な清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の清浄装置に関する従来技術として、被処理物を一対のベルトコンベヤ上に直に搭載したり、載置台を渡してその上に搭載したり、あるいは一対のチェーンコンベヤに両側を取付けた支持板上に搭載して処理室を通過する間に清浄処理を施すように構成されたものが知られている(特許文献1)。しかしながら、この従来技術では、ベルトコンベヤやチェーンコンベヤが処理室を貫通して配設されることから、清浄時にそれらの搬送手段に清浄媒体が吹付けられて損傷しやすく、搬送動作のトラブルの原因になりやすいという問題があった。また、被処理物の下面に対する清浄の際には、それらの搬送手段や載置台が吹付けの邪魔になり、清浄もれが生じるという問題もあった。さらに、大型の被処理物を取扱う場合に好適な載置台を使用する場合には、清浄処理済みの被処理物を搬出した後の空の載置台を搬入側へ戻して再使用するための帰路用の設備やスペースが必要とされることから、その分設備が大がかりになり、設置面積も増大するという問題があった。
【特許文献1】特許第2965919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑み、装置全体としての設置面積を縮小し得るとともに、被処理物に対する清浄媒体の吹付けの陰となる部分の少ない清浄装置を提供し、設置面の有効利用及び清浄もれの少ないより的確な清浄処理を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、課題を解決するため、処理室内においてノズルから噴射される噴射流によって清浄処理を施す清浄装置において、前記処理室を挟んで両側に搬送路上をそれぞれ往復移動可能な搬入側搬送台車及び搬出側搬送台車を配設するとともに、前記処理室内に搬送台車上の被処理物を持上げて支持する持上げ支持手段を設け、被処理物を搬入側搬送台車にて前記処理室内に搬入して前記持上げ支持手段に受渡し、該搬入側搬送台車を処理室から退出させたうえで所期の清浄処理を実施し、その清浄処理済みの被処理物を前記持上げ支持手段から前記搬出側搬送台車に受渡して処理室から搬出するという技術手段を採用した。すなわち、被処理物の搬送手段を搬入側搬送台車と搬出側搬送台車に分け、清浄処理済みの被処理物を搬出した後の空の載置台を搬入側へ戻す必要を解消するとともに、前記持上げ支持手段によって被処理物を空中に持上げた状態で清浄処理を実施することにより、清浄もれの少ないより的確な清浄処理が行えるように改善した。前記持上げ支持手段により支持される被処理物の下面に指向するノズルを備えれば、その下面に対する清浄処理に関する作業性の向上に有効である。また、前記噴射流は研掃材を含む場合には、前記処理室の下部に貯まった使用済みの研掃材を回収して、異物の除去後に再使用するように構成することができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)本発明では、被処理物の清浄時には、搬送手段としての搬入側搬送台車及び搬出側搬送台車は処理室外にあり、処理室内に残るのは清浄媒体の吹付けによる損傷が殆ど問題とならない案内レールなどの搬送路だけであるから、従来のような搬送上のトラブルは確実に解消することができる。
(2)被処理物の搬入には搬入側搬送台車を使用し、処理後の被処理物の搬出には搬出側搬送台車を使用するように構成したので、従来のように処理後の空の搬送手段を搬入側へ戻すための設備は不要になるとともに、その分設置面積を縮小することができる。
(3)清浄処理は、被処理物を持上げ支持手段により空中に持上げた状態で実施されることから、清浄媒体の吹付けの陰となる部分が少なく、清浄もれの少ないより的確な清浄処理が可能である。
(4)噴射流に含まれる研掃材を処理室の下部に貯めて回収するように構成したので、研掃材が搬送台車に付着したり堆積することなく殆ど回収され、研掃材の消費量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、鉄道車両の台車枠などの重量の大きい大型の被処理物に対する清浄処理に好適であるが、他の種々の被処理物の清浄処理にも広く適用することができる。清浄処理としては、適宜の研掃材を含んだ噴射流を使用するブラスト清浄処理や、適宜の清浄剤や薬液などを添加した清浄液からなる清浄媒体を使用する清浄形態、あるいは水を清浄媒体として使用する清浄形態など、種々の清浄処理に適用が可能である。さらに、所期の清浄処理を終了した後に同じ処理室内にてすすぎ清浄や乾燥処理を施すように構成してもよいことはいうまでもない。清浄用のノズルからの噴射流の形態は、断面が円形状の噴射流でも、偏平状の噴射流でもよい。また、清浄用のノズルの設置形態は、具体的な被処理物の大きさや形状及び清浄処理の形態などに応じて任意の選定が可能である。例えば、X−Y軸支持機構等に取付けてノズル側を縦横に動かすことによって吹付け位置を移動するように構成してもよいし、被処理物を支持した持上げ支持手段を介して被処理物側を動かすことによって吹付け位置を移動するように構成することも可能である。また、搬入側搬送台車及び搬出側搬送台車としては、その台車自体に備えた電動モータなどの駆動手段により駆動する自走式の台車が好適であるが、場合に応じて他部からの駆動力によって走行する他動式や手動式の台車を使用することも可能である。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の実施例に係る清浄装置全体の要部を示した概略正面図であり、図2はその概略平面図である。図中、1は処理室であり、この処理室1内に設置したノズルから噴射される噴射流を被処理物に吹付けて清浄処理を実施することになる。この処理室1には、搬入側の入口扉2と搬出側の出口扉3が開閉可能に設置されている。また、処理室1を貫通するように、搬送路としての案内レール4が設置されており、この案内レール4上を処理室1を挟んで両側から往復移動し得るように、搬入側搬送台車5と搬出側搬送台車6が配設されている。本実施例における搬入側搬送台車5の場合には、その中央に設けた支持部7に台車枠等の被処理物8を搭載して入口扉2から処理室1内の所定位置へ搬送するように構成されている。処理室1内の所定位置に搬入された搬入側搬送台車5の支持部7に支持された被処理物8は、その位置で図2に示したように両側に配設された持上げ支持手段9,10によって適宜の高さに持上げられる。しかる後、搬入側搬送台車5は案内レール4上を元の待機位置へ戻り、搬入側の入口扉2は閉鎖される。なお、この時点では、搬出側の出口扉3も閉鎖状態にあり、被処理物8は持上げ支持手段9,10によって適宜の高さで空中に支持された状態にあり、清浄処理の準備が完了する。
【0008】
以上の清浄処理の準備が完了した場合には、次に本実施例では縦横に移動可能に配設された上部ノズル11と縦横に移動可能に配設された下部ノズル12を用いて被処理物8を上下から清浄処理することになる。この場合、被処理物8と上部ノズル11あるいは下部ノズル12との間の吹付け距離に関する調整は、持上げ支持手段9,10による持上げ高さの調整によって可能であるが、必要に応じてノズル側も上下移動可能に構成すれば、よりきめの細かい調整が可能である。すなわち、被処理物8と上部ノズル11あるいは下部ノズル12との間の吹付け距離に関する調整は、必要に応じて、持上げ支持手段9,10による高さ調整によってもよいし、上部ノズル11あるいは下部ノズル12の高さ調整によってもよいし、それらの双方の高さ調整を組合わせてもよい。因みに、それらの上部ノズル11や下部ノズル12の位置や高さ、噴射角度などに関する動作制御、あるいは持上げ支持手段9,10に関する動作制御は、被処理物8の外形等に基づいて自動制御するように構成することが効率的であるが、手動によることも可能である。そして、処理室1内には、ノズルからの噴射流が直接吹付けられる領域には、損傷のおそれの殆どない案内レール4が存在するだけで、従来のようにベルトコンベヤやチェーンコンベヤなどの搬送手段が存在しないことから、清浄媒体の吹付けによる損傷の問題は大幅に減少される。また、被処理物8の表面のうちで、清浄媒体の吹付けが困難になる陰の部分は、持上げ支持手段9,10によって支持される小さな部分だけであることから、殆ど支障のない的確な清浄処理が可能である。なお、以上の清浄処理が終了した場合には、必要に応じてそのまま処理室1内ですすぎ処理や乾燥処理などが行われることになる。
【0009】
以上の処理室1内における清浄処理等の所期の作業が完了した場合には、搬出側の出口扉3を開いて案内レール4上を搬出側の方向から空の搬出側搬送台車6を処理室1の所定位置へ移動させる。そして、持上げ支持手段9,10を下降させて、それらの支持手段9,10によって支持された処理済みの被処理物8を搬出側搬送台車6の支持部13上へ受渡す。しかる後、搬出側搬送台車6にて被処理物8を処理室1から搬出して出口扉3を閉鎖することにより、次の被処理物8に対する処理が可能となり、順次、以上の処理工程が繰返されることになる。そして、搬出側搬送台車6に搭載して搬出された処理済みの被処理物8は、その後適宜の目的工程へ搬送されることになる。なお、図示のように、本実施例における搬入側搬送台車5と搬出側搬送台車6はそれぞれ駆動手段14,15を備え、自走可能に構成されている。また、処理室1の下部には回収部16が形成され、処理によって生じた研掃材や剥離屑などが回収されるように構成されている。この回収部16により回収された研掃材や剥離屑などは、回収管17を経てサイクロン18内へ流入して分離処理される。そして、再使用可能な研掃材は、研掃材の定量供給部19に補充され、ブロア20からの空気によって新しい研掃材と共に処理室1内の上部ノズル11と下部ノズル12へ供給され、清浄媒体として再使用されることになる。また、不要な剥離屑や極微細の研掃材などは、集塵機21に吸引されて廃棄処分されることになる。
【0010】
図3は処理室1の内部を拡大して示した図1の部分拡大図であり、図4はそのA−A断面図である。図4に示したように、処理室1内の両側に配設された前記持上げ支持手段9,10は、それぞれ案内支柱22,23と、それらの案内支柱22,23に沿って上下方向に案内されながら昇降可能に構成されたボックス状の昇降スライド部材24,25と、それらの昇降部材24,25に回動可能に配設された伸縮可能なそれぞれ一対からなる支持用アーム26,27により構成される。図5は持上げ支持手段9の要部を拡大して示した要部拡大平面図であり、図6はその要部拡大正面図である。以下では一方の持上げ支持手段9の要部に関して説明するが、他方の持上げ支持手段10に関しても、設置方向が対向した向きになるだけで、その構成において基本的に異なるところはなく、同様の機能を奏する。
【0011】
図5に示したように、一方の持上げ支持手段9を構成する前記昇降スライド部材24には、支軸28,29を介して一対の支持用アーム26a,26bが回動可能に配設されており、それぞれ油圧シリンダ30,31によって別個に適宜の角度に回動することにより、他方の持上げ支持手段10の一対の支持用アーム27と共に、被処理物8の適宜部分を支持して適宜の高さに持上げられるように構成されている。また、昇降スライド部材24の背面側には軸部32を介して掛止板33が設けられており、案内支柱22の昇降スライド部材24との接触面に形成した上下方向のスリットの端部から前記軸部32を挿通して、図示のように掛止板33を案内支柱22の内面にスライド可能に掛止させることにより、昇降スライド部材24を案内支柱22に沿って昇降し得るように構成している。さらに、図6に示したように、昇降スライド部材24の下方には油圧シリンダ34が配設されており、この油圧シリンダ34により昇降スライド部材24を介して支持用アーム26a,26bを昇降し得るように構成している。
【0012】
なお、前記上部ノズル11と下部ノズル12は、図3及び図4に示したように、それぞれX−Y軸支持機構により直交する2軸に沿って縦横に移動可能に支持されている。すなわち、上部ノズル11は直交する案内手段35,36からなるX−Y軸支持機構により支持され、下部ノズル12は直交する案内手段37,38からなるX−Y軸支持機構により支持され、それぞれ縦横に移動し得るように構成されている。また、それらの上部ノズル11と下部ノズル12は揺動可能に設置され、清浄媒体の噴射方向を変えられるように構成されている。そして、清浄に際しては、被処理物8の外形等に基づいて、それらの上部ノズル11及び下部ノズル12に対して、それぞれのX−Y軸支持機構を介して位置制御を実行したり、噴射角度の制御を実行しながら所期の清浄処理が行われることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る清浄装置全体の要部を示した概略正面図である。
【図2】同実施例に係る清浄装置全体の要部を示した概略平面図である。
【図3】処理室の内部を拡大して示した図1の部分拡大図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】持上げ支持手段の要部を拡大して示した要部拡大平面図である。
【図6】同持上げ支持手段の要部を拡大して示した要部拡大正面図である。
【符号の説明】
【0014】
1…処理室、2…入口扉、3…出口扉、4…案内レール、5…搬入側搬送台車、6…搬出側搬送台車、7…支持部、8…被処理物、9,10…持上げ支持手段、11…上部ノズル、12…下部ノズル、13…支持部、14,15…駆動手段、16…回収部、17…回収管、18…サイクロン、19…定量供給部、20…ブロア、21…集塵機、22,23…案内支柱、24,25…昇降部材、26,27…支持用アーム、28,29…支軸、30,31…油圧シリンダ、32…軸部、33…掛止板、34…油圧シリンダ、35〜38…案内手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内においてノズルから噴射される噴射流によって清浄処理を施す清浄装置において、前記処理室を挟んで両側に搬送路上をそれぞれ往復移動可能な搬入側搬送台車及び搬出側搬送台車を配設するとともに、前記処理室内に搬送台車上の被処理物を持上げて支持する持上げ支持手段を設け、被処理物を搬入側搬送台車にて前記処理室内に搬入して前記持上げ支持手段に受渡し、該搬入側搬送台車を処理室から退出させたうえで所期の清浄処理を実施し、その清浄処理済みの被処理物を前記持上げ支持手段から前記搬出側搬送台車に受渡して処理室から搬出するように構成したことを特徴とする清浄装置。
【請求項2】
前記持上げ支持手段により支持される被処理物の下面に指向するノズルを備えた請求項1に記載の清浄装置。
【請求項3】
前記噴射流は研掃材を含み、前記処理室の下部に貯まった使用済みの研掃材を回収して、異物の除去後に再使用するように構成した請求項1又は2に記載の清浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−144327(P2007−144327A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343614(P2005−343614)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【出願人】(594034832)東北交通機械株式会社 (7)
【Fターム(参考)】