説明

減圧弁

【課題】 厳密な寸法管理などを不要にしながら、リリーフ弁のシール性を向上させ、二次圧を安定化できる減圧弁を提供すること。
【解決手段】 一次側ポート4、二次側ポート5、及びリリーフポート6を形成したボディ1内に、二次側ポート5の二次圧を制御するための弁部材8,10と、上記弁部材10に対して作用する二次圧に対抗する押圧力を、弁部材10に作用させるコイルバネ12とを備え、上記弁部材10とともに移動するリリーフ弁16をコイルバネ12の内側に設ける。リリーフ弁16は、シート部17を開閉するボール18を備えるとともに、上記ボール18を、ボールサポート部材19を介してリリーフ用バネ21で上記シート部17の閉じ方向へ押圧し、二次圧が設定圧を超えたとき、上記ボール18がリリーフ用バネ21の押圧力に抗してシート部17を開口して、二次側ポート5とリリーフポー6とを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体供給源から供給される一次圧を減圧して、一定の二次圧を保持するための減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高圧の一次圧を所定の圧力まで減圧して二次側へ排出する減圧弁が知られている。上記減圧弁は、一次側ポートと二次側ポートの間の通路にシート部を設けるとともに、このシート部の開度を制御する弁部材を設けて、この弁部材の移動によって二次圧を制御するようにしている。
このような減圧弁を用いた装置で、何らかの原因によって二次側の圧力が、異常に上昇した場合には、その高圧をタンクへ逃がすためのリリーフ弁が必要である。このようなリリーフ弁を減圧弁ボディの外部通路に設けたのでは減圧弁装置全体が大型化してしまうので、この問題を解決するものとして、ボディ内にリリーフ弁を設けた減圧弁が知られていた(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の従来の減圧弁は、一次圧を減圧した二次圧を保つための減圧機構として、コイルバネのバネ力と流体圧によってバランスするポペット弁を備え、このポペット弁の位置によって、一次圧側である高圧側ポートと、二次圧側である低圧側ポート間の連通路を開閉するようにしている。
また、上記ポペット弁には軸方向に貫通する内部通路を形成し、この内部通路の一方の端部であり、ポペット弁を押圧するコイルバネのバネ室側にシート部を設け、このシート部を開閉するリリーフ用ポペットを備えている。
なお、上記バネ室は、タンク通路に連通するリリーフポートに常時連通している。
【0004】
そして、上記リリーフ用ポペットには、バネ受け部を形成し、このバネ受け部で、リリーフ用バネの一端を受けるようにしている。
一方、バネ室の端部には、上記リリーフ用バネの他端を受けるバネ受け部を設け、このバネ室側のバネ受け部とリリーフ用ポペットのバネ受け部との間に、リリーフ用バネを介在させ、上記リリーフ用ポペットを、上記内部通路のシート部を閉じる方向に押圧するようにしている。
また、上記ポペット弁には、コイルバネを受けるバネ受けを設け、その内側に円筒状の案内部を形成し、この案内部内にリリーフ用ポペットを設けている。そして、リリーフ用ポペットが、上記案内部の内壁に沿って移動するようにしている。
【0005】
このような減圧弁において、低圧ポート側の圧力(二次圧)は、上記ポペット弁に形成した内部通路を介してリリーフ用ポペットに作用するが、その圧力が設定圧力よりも上昇し、リリーフ用バネの押圧力に打ち勝った場合には、リリーフ用ポペットがシート部を開口し、内部通路が上記バネ室を介してリリーフポートと連通して、高圧を逃がすようにしている。
【特許文献1】特開平6−161564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の減圧弁内に設けたリリーフ弁は、リリーフ用ポペットによってシート部を開閉する構成にしているが、このようなポペットによってシート部を確実にシートするためには、シート部の中心と、ポペットの中心と、ポペットの案内部の中心とが一致する必要がある。これらの中心が一致していなければ、上記ポペットがシート部からずれてしまいシート部を確実に閉じることができなくなってしまう。このように、リリーフ弁のシート部が確実にシートできなければ、上記内部通路を介して圧力流体がリリーフポートへ漏れてしまうことになって、二次圧も不安定になってしまう。
言い換えれば、上記従来の減圧弁では、内部に設けたリリーフ弁のシートを確実にして、二次圧を安定的に制御するために、各部の寸法精度や組み付け精度を厳密に管理しなければならないという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、厳密な寸法管理などを不要にしながら、リリーフ弁のシール性を向上させ、二次圧を安定化できる減圧弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ボディに、一次側ポートと、二次側ポートと、リリーフポートと、上記一次側ポートと二次側ポートの間に設け、二次側ポートの二次圧を制御する弁部材と、上記弁部材に対して作用する二次圧に対抗する押圧力を弁部材に作用させるコイルバネと、このコイルバネの内周側に設け、上記弁部材とともに移動するリリーフ弁とを備え、上記リリーフ弁は、上記弁部材に形成したシート部を開閉するボールと、一方側を上記ボールに接触させ、上記ボールとは別体にしたボールサポート部材と、このボールサポート部材を介して上記ボールを上記シート部の閉じ方向へ押圧するリリーフ用バネとを備え、上記二次側ポートの二次圧が設定圧を超えたとき、上記ボールがリリーフ用バネの押圧力に抗してシート部を開口し、二次側ポートとリリーフポートとを連通する構成にした点に特徴を有する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記シート部から所定の距離を保って、弁部材と一体的に移動するバネ受け部を設け、このバネ受け部と上記ボールサポート部材との間に上記リリーフ用バネを介在させた点に特徴を有する。
第3の発明は、第2の発明を前提とし、上記ボールサポート部材であって、上記ボールと反対側にガイド部を設けるとともに、上記バネ受け部にガイド孔を備え、上記ガイド部をガイド孔に摺動自在に貫通させた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
第1〜第3では、減圧弁のボディ内に組み込んだリリーフ弁にボールを用いているため、ポペットを用いる場合と比べて、簡単な構成でシート部のシール性を向上させることができる。その結果、二次圧も安定する。
しかも、リリーフ弁のボールと別体にしたボールサポート部材を介してバネ力を作用させているので、ボールが回転したり、移動したりして、その中心をシート部の中心と一致させ、シート部を確実にシールすることができる。
【0011】
第2の発明によれば、リリーフ用バネのバネ受け部が、弁体と一体的に移動するので、リリーフ弁の閉状態で、シート部とバネ受けとの間隔が一定となる。そのため、二次圧を一定に保つために弁体の位置が変化したとしても、その位置に係りなく、リリーフ用バネの撓み量が一定となり、バネ力を一定に保つことができる。すなわち、一次圧の影響を受けることなく、リリーフ設定圧を一定に保持できる。
第3の発明によれば、ボールサポート部材の移動をガイドすることによって、リリーフ用バネによるボールに作用する押圧力をより安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1にこの発明の実施形態を示す。
この実施形態は、円筒状の本体2及び基台3によって、ボディ1を構成するとともに、ボディ1内に弁部材を組み込み、その作用によって流体供給源から供給される圧力流体の一次圧を減圧してから流出させるための減圧弁である。
そして、上記基台3には、図示しない流体供給源から供給される高圧の一次流体をボディ1内の減圧機構に導く一次側ポート4を形成し、上記本体2には、上記減圧機構で減圧された流体を排出する二次側ポート5と、本体2側のバネ室2aを図示しないタンク通路へ連通させたリリーフポート6とを形成している。
【0013】
また、上記ボディ1において、一次側ポート4と二次側ポート5との間には、バネ室3aとシート部7を形成し、このシート部7を開閉する位置にポペット8を組み込んでいる。このポペット8は、上記バネ室3a側に位置するポペット部8aと、このポペット部8aの両側にポペット部8aと一体的に設けた第1ロッド部8bと第2ロッド部8cとを備えている。そして、上記基台3側の第1ロッド部8bの先端側を、基台3に形成した支持凹部3b内に摺動自在に挿入し、この第1ロッド部8bと反対側の第2ロッド部8cを上記シート部7から本体2側に向かって突出させている。また、上記バネ室3aでは、ポペット部8aと基台3との間にバネ9を介在させ、このバネ9によってポペット8にシート部7を閉じる方向の弾性力を作用させている。
【0014】
さらに、ボディ1内であって、上記ポペット8の第2ロッド部8cの先端側には、本体2の内周を摺動して軸方向に移動可能なピストン10を組み込み、このピストン10と本体2のバネ室2aの端面2b側に設けたバネ受け部材11と間にコイルバネ12を介在させている。そして、このコイルバネ12によって、ピストン10にポペット8方向への弾性力を作用させている。また、このピストン10の外周にはシール部材13を設け、ピストン10の外周からバネ室2aに圧力流体が流入しないようにしている。
なお、上記ピストン10側のコイルバネ12の弾性力を、ポペット8側のバネ9より大きくし、ポペット8及びピストン10に流体圧が作用していないとき、ポペット8が、シート部7より、図1の下方へ移動し、シート部7を全開状態にするようにしている。但し、上記コイルバネ12の弾性力を、ボディ1の端面に設けたバネ調節ネジ14及びバネ受け部材11によって調整可能にしている。
【0015】
このように構成した減圧弁の作用は次のとおりである。
上記ポペット8とピストン10とには、図1において上方に向かう力として、ポペット8側のバネ9の弾性力、一次側ポート4から導入される一次圧及び二次側ポート5の二次圧が作用し、図中下方に向かう力として、ピストン10側のコイルバネ12の弾性力が作用する。従って、これらの力のバランスによって、上記ポペット8及びピストン10が上下方向に移動してシート部7の開度を調整する。
【0016】
例えば、一次圧が大きい場合、ポペット8の上向きの力、すなわちシート部7の開度を小さくする方向の力が大きくなる。また、シート部7の開口から二次側ポート5へ流体が流れているとき、二次側ポート5の二次圧が、ピストン10に対して上向きの力として作用する。そこで、上記二次圧が高くなって、上向きの力がコイルバネ12の弾性力より大きくなると、上記ピストン10がコイルバネ12を撓ませて上方へ移動する。
【0017】
一方、上記両バネ9,12の弾性力は対向する方向に作用するとともに、この減圧弁の作動中には、ポペット8に上向きの力として作用する一次圧の方が上記二次圧よりも高いため、ポペット8の第2ロッド部8cの先端はピストン10に押し付けられ、ポペット8はピストン10と一体的に移動するようになっている。そこで、上記のように、二次圧が高くなってピストン10が上昇すると、ポペット8もピストン10に追従して上昇することになる。ポペット8が上昇すれば、シート部7の開度が小さくなるので、二次圧の上昇を抑えることになる。
反対に、二次圧が低くなって、ピストン10に作用する上向きの力が小さくなれば、上記コイルバネ12の弾性力の作用によってピストン10が押し下げられる。このとき、ポペット8はピストン10によって押し下げられるので、ポペット部8aがシート部7から離れて開度を大きくし、二次圧の低下を抑える。
【0018】
このように、ポペット8及びピストン10に作用する力のバランスで、ポペット8が上下することによってシート部7の開度を調整し、二次圧を一定の圧力に保つことができる。つまり、上記ポペット8とピストン10とによって、この発明の弁部材を構成し、この弁部材とシート部7によって減圧機構を構成している。
【0019】
上記のような減圧弁の作用は、従来の減圧弁と同様であるが、この実施形態の減圧弁は、上記ピストン10に通路15形成し、この通路15を開閉するリリーフ弁16を設けた点を特徴とする。
すなわち、上記ピストン10には、二次側ポート5とバネ室2aとを連通可能な通路15を設け、この通路15のバネ室2a側の開口にシート部17を形成している。そして、シート部17には、このシート部17を開閉するボール18を設けるとともに、このボール18にはボールサポート部材19を接触させている。
【0020】
このボールサポート部材19は、ボール18に直接接触する押さえ部19aと、ボール18と反対側に設けたガイド棒19bとからなるとともに、押さえ部19aには窪みを形成し、この窪みによってボール18を保持するようにしている。
また、上記ピストン10には筒状のバネ受け部材20を固定し、その側面には開口20aを形成している。そして、上記ボール18がシート部17を開口したとき、この開口20aを介して上記通路15とバネ室2aとを連通させるようにしている。
さらに、バネ受け部材20の底面20bにはガイド孔20cを形成し、このガイド孔20cに上記ガイド棒19bを摺動可能に貫通させている。
【0021】
そして、上記底面20bと上記ボールサポート部材19の押さえ部19aとの間には、リリーフ用バネ21を設け、このリリーフ用バネ21がボール18に対して上記シート部17を閉じる方向の押圧力を作用させている。つまり、バネ受け部材20の底面20bが、リリーフ用バネ21のバネ受け部であって、この発明の弁部材と一体的に移動するバネ受け部である。
【0022】
このような減圧弁では、二次側ポート5の圧力は、ピストン10に形成した通路15を介してボール18に作用しているが、この圧力がリリーフ用バネ21のバネ力に打ち勝ったとき、リリーフ用バネ21を撓ませてボール18がシート部17から離れる。ボール18がシート部17から離れてシート部17が開口すると、二次側ポート5が、通路15及びバネ室2aを介してリリーフポート6に連通し、二次側の異常な高圧を下げることができる。
【0023】
この実施形態では、上記ボール18で、シート部17を開閉する構成にしているので、ポペットを用いたリリーフ弁を用いた従来の減圧弁と比べて、シート部17を確実にシートすることができる。なぜなら、球形のボール18は、シート部17方向へのリリーフ用バネ21の押圧力が作用すれば、ボール18の中心がピストン10に形成したシート部17の中心と一致するように転がりながら移動するからである。そのため、シート部17や、ボールサポート部材19及びバネ受け部材20の位置を厳密に管理しなくても、ボール18の中心がシート部17の中心と自然に一致して、シート部17を確実にシールすることができるのである。
【0024】
また、上記実施形態では、ボールサポート部材19のガイド棒19bをバネ受け部材20のガイド孔20cに摺動自在に挿入しているので、ボールサポート部材19の軸方向の移動が安定化する。
そのため、ボールサポート部材19の押さえ部19aで押さえられるボール18の動きも安定して、シート部17に対する押圧力がより安定化するとともに、シート部17から離れる方向の動きもスムーズになる。
【0025】
さらに、上記実施形態の減圧弁では、リリーフ用バネ21をボールサポート部材19の押さえ部19aと、バネ受け部材20の底面20bとの間に設けているが、上記したように、バネ受け部材20はピストン10と一体的に移動する部材なので、上記底面20bとピストン10に形成したシート部17との距離は一定である。そのため、上記リリーフ弁16が閉状態では、リリーフ用バネ21の撓み量を一定に保ち、バネ力が一定に保たれる。例えば、一次側の圧力に応じて、ポペット8及びピストン10が移動した場合にも、上記底面20bとシート部17との距離が変化しないため、リリーフ用バネ21のバネ力が変化せず、リリーフ圧を一定に保つことができる。
【0026】
これに対し、例えば、リリーフ用バネ21の他端を、バネ室2aに固定されたバネ受け部材11などで受けるようにした場合には、ピストン10の位置によってリリーフ用バネ21の撓み量が変化し、リリーフ設定圧が変わることになる。
但し、リリーフ用バネ21の長さに比べて、ピストン10の移動量が相対的に僅かな場合には、バネ力の変化、すなわちリリーフ設定圧の変化はそれほど問題にならないので、バネ受け部をピストン10と一体的に移動する構成にしなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ボディ
4 一次側ポート
5 二次側ポート
6 リリーフポート
7 シート部
8 ポペット
10 ピストン
12 コイルバネ
15 通路
16 リリーフ弁
17 シート部
19 ボールサポート部材
19a 押さえ部
19b ガイド棒
20 バネ受け部材
20b 底面
20c ガイド孔
21 リリーフ用バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディに、一次側ポートと、二次側ポートと、リリーフポートと、上記一次側ポートと二次側ポートの間に設け、二次側ポートの二次圧を制御する弁部材と、上記弁部材に対して作用する二次圧に対抗する押圧力を弁部材に作用させるコイルバネと、このコイルバネの内周側に設け、上記弁部材とともに移動するリリーフ弁とを備え、上記リリーフ弁は、上記弁部材に形成したシート部を開閉するボールと、一方側を上記ボールに接触させ、上記ボールとは別体にしたボールサポート部材と、このボールサポート部材を介して上記ボールを上記シート部の閉じ方向へ押圧するリリーフ用バネとを備え、上記二次側ポートの二次圧が設定圧を超えたとき、上記ボールがリリーフ用バネの押圧力に抗してシート部を開口し、二次側ポートとリリーフポートとを連通する構成にした減圧弁。
【請求項2】
上記シート部から所定の距離を保って、弁部材と一体的に移動するバネ受け部を設け、このバネ受け部と上記ボールサポート部材との間に上記リリーフ用バネを介在させた請求項2に記載の減圧弁。
【請求項3】
上記ボールサポート部材であって、上記ボールと反対側にガイド部を設けるとともに、上記バネ受け部にガイド孔を備え、上記ガイド部をガイド孔に摺動自在に貫通させた請求項2に記載の減圧弁。

【図1】
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【公開番号】特開2009−265893(P2009−265893A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113980(P2008−113980)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】