説明

減少した抗菌活性および神経保護作用の利点を有するテトラサイクリン誘導体

本開示は、テトラサイクリン骨格、好ましくはミノサイクリンの骨格を利用し、著しく抗菌活性を欠損している組成物および方法に関するものである。この化合物は、血液脳関門を浸透する薬物の性質を妨げることなく神経防護作用特性を有する。これらの化合物は、神経細胞周期進行のそれらの阻害のため、神経保護的活性を有する。この化合物は、位置9および10を結合する5つの環によって部分的に特徴付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性病の治療および/または予防する化合物の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定の態様が詳細な説明で参照する技術的特徴に関連する背景情報を、必ずしも詳細に記載しないが、下記に示す。以下の考察は、記載した材料の、特許請求の範囲に記載した発明または従来技術の効果に対する情報と関連する提案として構成したものではない。
【0003】
細胞分裂およびアルツハイマー病(“AD”)
Reisberg 米国特許出願公開第2004/0127471号明細書、7月1日公開“Methods of treating age associated memory impairment (AAMI), mild cognitive impairment (MCI), and dementias with cell cycle inhibitors”には、神経変性病によるものと考えられる数々のメカニズムを開示する。とりわけ、テトラサイクリンに基づく化合物が、初期の細胞周期期間のいずれか、または一般的に単独もしくは一つ以上の薬剤の組み合わせのいずれかで、神経細胞の細胞周期の進行を阻害することに加えて、分裂刺激を減少、および神経変性病を伴う患者に神経保護作用を与えることができることの提案である。
【0004】
Reisbergは、さらに正常の細胞分裂が、細胞周期として知られている分子生物工程から生じることを示唆した。細胞周期は、G1期、S期、G2期、M期およびG0期として知られている主要な段階からなる。細胞分裂のこれらの期間は、早期成長期、複製期、後期成長期、有糸分裂期、静止期に対応する。前記期間による成長は、活性剤および阻害剤を含む一連の酵素によって制御される。しかしながら、この本開示は、実際に考慮察された化合物が細胞周期成長を阻害することを開示していない。
【0005】
Wang et al.“Minocycline inhibits caspase−independent and −dependent mitochondrial cell death pathways in models of Huntington‘s disease,”Proc. Nat. Acad. Sci.,100(18)10483−10487(2003)には、ミノサイクリンがカスパーゼに独立または依存のミトコンドリア細胞死経路の両方を直接阻害する薬物であることを報告する。
【0006】
Yang et al.“Ectopic Cell Cycle Events Link Human Alzheimer’s Disease and Amyloid Precursor Protein Transgenic Mouse Models,”The Joural of Neuroscience,January18,2006,26(3):775−784には、家族性ADのいくつかのマウスモデルの神経細胞における細胞周期の工程の開始を立証した結果を開示する。神経細胞死が致死の細胞周期での再突入に関連のあるマウスにおける、ますます多くの状態がある。著者はさらに、いくつかのトランスジェニックマウスモデルを家族性ADに見られる遺伝子変異を再現するものを作り出したことを記載する。突然変異によるヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子を発現するトランスジェニックマウスは、加齢に関係のあるびまん性および老人斑の発症を示し、プラーク負担(burdens)はしばしばADの進行症例に見られるものに近い。これは、疾患治療の探査および計画において有益な手段であることを証明した。さらにADマウスはミクログリア活性化、星状細胞増加症、およびタウを含む神経細胞骨格タンパク質における変化を示した。多くの前記モデル生物は、また著しい記憶障害を有することを示した。しかしながら、これらはヒト疾患状態に類似しているにも関わらず、マウスモデルは依然典型的な神経細胞骨格の発達を全く示していない。ヒトとマウスの間の神経変性表現型が不一致である理由は不明確である。しかしながら、ADの神経細胞死および通常有糸分裂細胞周期の間にのみ生じる細胞過程の間で近い関連性を示した。細胞周期に関連のあるタンパク質が、ADにて“危険性”を有するが、年齢に一致した制御である神経細胞、または変性が一般的でないAD脳自身の部位で発現している。細胞周期マーカーの医所性再発現は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)に示すように機能的である。
【0007】
テトラサイクリン誘導体
多くの特許および公開物が、テトラサイクリン誘導体およびそれらの調製方法を開示し、例えば米国特許第7056902号明細書、名称“4−dedimethylamino tetracycline compounds”2006年6月6日刊行;米国特許第7094806号明細書、名称“7,8,9−substituted tetracycline compounds”2006年8月22日刊行;米国特許第7202235号明細書、名称“Tetracycline compounds for treatment of cryptosporidium parvum related disorders”2007年4月10日刊行;および米国特許第7208482号明細書、名称“9−aminoacyl tetracycline compounds and methods of use thereof”2007年4月24日刊行に開示する。Levy et al.による欧州特許第20020748169号明細書、2004年4月1日刊行、名称“Tetracycline compounds having target therapeutic activities”は、テトラサイクリン誘導体への様々な合成手段を開示する。米国特許出願公開第2007/0093455号明細書Abato et al.、名称“10−Substituted Tetracyclines and Methods of use thereof”2007年4月26日刊行は、9〜10環状の化合物、例えば9ページで開示することを意味する。例示的な化合物Qは細菌の優れた阻害を示す。
【0008】
ミノサイクリンの使用
Yansheng Du, et al.による米国特許第20030092683号明細書、2003年5月15日刊行、名称“Use of tetracyclines as neuro−protective agents and for the treatment of Parkinson’s disease and related disorders”には、テトラサイクリン、好ましくはミノサイクリンの使用を、パーキンソン病および関連の疾患、例えばアルツハイマー病から選択される疾患の治療または予防のための薬学的な組成物の製造に関して開示する。望ましい予防の作用のメカニズムは、提案されていなく、またミノサイクリンの選択肢はない。
【0009】
これは、以下の記載の本発明と対照的であり、とりわけミノサイクリンまたは他の既知のテトラサイクリン誘導体を使用せず、さらに抗菌活性を有さない化合物を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下の概要は、本発明の全ての特徴および態様を含むことを意図せず、本発明が本概要で提案した全ての特徴および態様であることを意図しない。
【0011】
化合物は一般式Aを有し:
【化1】

、R、R、X、Y、Y’およびZを以下に記載する:
【化2】

((a)式中、R、RおよびRは、H、C1−10アルキル、C1−10アルケニル、C1−10アルキニル、C5−10アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-、および-S-からなる群からそれぞれ独立して単独に選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在する場合、YおよびY’は、-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)(R1a1a)NR1a-、および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは、単結合または二重結合であり;、および
(e)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。)。
【0012】
一の実施形態において、上に規定する化合物は一般式A1を有する。
【化3】

【0013】
一般式A1は、一般式Aのサブセットであり、以下に記載の化合物3A、3Bおよび38を含有する。R4、R6およびR7を示すように規定する。X、Y、Y’およびZを以下に詳細に記載する。一般式Aおよび一般式A1の重要な態様は、それらが位置9(ミノサイクリンに非置換)および位置10(ミノサイクリンに置換されたヒドロキシル)の間に環を含むことである。この環は、抗菌活性および神経保護作用活性の欠如を与えることを見出した。この環は5から7員環(炭素数9および10)であり、炭素の代わりに1または2のヘテロ原子を含むことができる。ヘテロ原子は、O、SまたはNであることができる。さらに、付加的な環を形成する炭素は、O、SまたはN原子と置換することができる。本説明において、従来通り、括弧の群は左に原子と結合されたのみの群を示す。
【0014】
上記一般式の化合物は、またその互変異性体、塩、水和物およびプロドラッグを含有することができる。従来通り、本文の一般式は括弧を使用して、示した鎖へのペンダント基群、または特定の置換基を付着している部位を示す。例えば、化合物3bの場合にX-Y-Y’-Z環を、Yでカルボニル炭素に関してさらなる明確性のために-NH-C(=O)-O-と記載する。
【0015】
特定の態様において、本発明は、一般式AにおいてRおよびRは、さらにH、OH、およびR1−10アルキルからなる群から選択され、前記アルキルはアミン1−3またはヒドロキシ基と置換される化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、Xはアミノ、YはC=O、およびZはOである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、RはさらにHおよびC1−10アルキルからなる群から選択される化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aにおいて、-X〜Y-Y’〜Zは-N=CH-O-、-NH-C(=O)-O-および-NH-C(=O)-CH-O-からなる群から選択される一般式として規定される化合物および組成物を含む。特定の態様において、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、RはNR1a1aおよび/またはRは-NR1a1aである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、特定の立体異性体、例えばエピマーを分離し、Rで上向きのエピマーとして示すことができる化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、RはH、OHまたはC1−10アルキルである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、Rは-N-(CHである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は一般式Aまたは一般式Aのサブセットで、RはH、OHまたはC1−10アルキルである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、Xは-NH-、Yは-C(=O)-、およびZは-O-である化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、Xは-NH-、Y-Y’は-C(=O)-CH-、およびZは-O-である化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は、一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、RおよびRは-N(CH-、およびRはHである化合物および組成物を含む。特定の態様において、本発明は神経変性病の治療および/または改善する方法を含み、それの必要性がある対象に、一般式Aまたはその様々なサブセットに従った化合物の治療有効量を含有する組成物を投与する工程を含む。神経変性病は様々な神経変性病の一つであり、特定の態様において、脳の疾患、例えばアルツハイマー病であることができる。本発明の他の態様は、老年性記憶障害(AAMI)、無症候性脳梗塞(SCI)、軽度認知障害(MCI),アルツハイマー病(AD)、脳血管障害(CVD)および関連する変性の神経学的状態の予防的な治療を含む。前記治療は他の薬剤の投与を伴うことができる。本発明の方法に従って、これらは、アセチルサリチル酸、早期細胞周期の進行を阻害するいずれかのサリチル酸塩、シロリムス、初期細胞周期の進行を阻害することができるいずれかのシロリムス誘導体、フラボピリドール、シクロピロックス、パウロン、インデイルビン、ファスカプリシン、オロモウシン、ロスコビチン、アラグステロールA、バルプロエート、N−(3−クロロ−7−インドリル)−1,4−ベンゼンジスルファミド、ファルネシル転移阻害剤、例えばR115777、SCH66336およびBMS−214662、並びに酪酸ナトリウムからなる群から選択される一つ以上の第二の薬剤を含有することができる。(本明細書に規定するような)治療は、治療有効量である。他の態様において、本発明は、神経保護剤を同定する方法を含有し、一般式Aに従ったテトラサイクリン化合物を合成する工程を含む。特定の態様において、本発明は、下記一般式に従う一般式Aまたは一般式Aのサブセットにおいて、
【化4】

(式中、Yは低級アルキレンおよび低級ヘテロアルキレンからなる群から選択され;RはHおよびC1−6アルキルからなる群から独立して選択され;およびNおよびYの間の結合は単結合または二重結合であることができる);化合物および組成物、ならびにその塩およびエステルを含む。さらに上記一般式における特定の態様において、Xは低級アルキレンおよび低級ヘテロアルキレンからなる群から選択され、RaはH、C1−10アルキル、分岐したC1−10アルキル、および分岐したC1−10アルキルからなる群から独立して選択され;およびNおよびXの間の結合は単結合または二重結合であることができる。本発明の特定の態様において、化合物は薬学的に許容される賦形剤である。それらは経口製剤であることができる。
【0016】
細胞周期タンパク質の発現およびDNA複製の記録の両方によって、通常の分裂後の細胞は、特定の病状、例えばADのマウスモデルにおいて有糸分裂の細胞の分裂に非常に似ている工程を試みる。一の実施形態において、本発明は、標的治療活性を有するテトラサイクリン化合物で疾患を治療する方法に関連し、それは抗菌性および/または抗感染性の活性と異なるか、または抗菌性および/または抗感染性の活性に加えてであるが、特定の疾患の治療を生じる対象にテトラサイクリン化合物の活性を含有する。これは細胞周期タンパク質の発現およびDNA複製の記録の両方によって、正常な分裂後の細胞が、特定の病状、例えばADのマウスモデルにおいて、有糸分裂細胞の分裂に非常に似ている工程を試みるという発想に基づくものである。
【0017】
特定の態様において、本発明は、実質的に抗菌性がなく、神経細胞において細胞周期の進行を阻害するテトラサイクリン系の化合物の治療有効量を含有する神経保護の組成物を含む。テトラサイクリン化合物は、ミノサイクリン誘導体であることができる。本化合物は、以下の記載のように、様々な構造を持ち、既知の化合物の修飾に基づくものである。前記化合物を、ミノサイクリン誘導体、またはミノサイクリン類似で、血液脳関門を通る望ましい性質を有するいずれかのミノサイクリン系誘導体に関係するものである。
【0018】
本発明に従ったいくつかの典型的な化合物は以下である:
【化5】

【0019】
化合物3:Y=CHおよびN-Y結合は二重結合;またはY=C=O;またはY=C(=O)-CH-である。
【0020】
他の態様において、本発明は薬学的に許容されるキャリア、および本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
さらなる態様において、本発明はさらに、神経変性病(例えば、アルツハイマー病、レヴィー小体)であると識別されるか、または著しく危険がある対象における神経変性病の改善(即ち、治療、予防、または安定させる)方法を含有する。その方法は、その必要のある対象に、上記で参照した化合物の治療に効果のある量を含有する化合物を投与することを含む。本発明の一の態様において、化合物は、神経細胞が合成(S)期または初期成長(G1)期に入る前に、神経細胞の細胞周期進行を阻害することができる。後期の進行は好ましく、有糸分裂に関連する活性細胞のメカニズムを、予防すべき本明細書で追求される神経死において防止することに関わるためである。しかしながら、本発明はまた特定の治療の組み合わせを考慮して、本化合物ならびに細胞周期の後期に関わる化合物の組み合わせを含むことができる。特に、本化合物は、加齢関連性記憶障害(AAMI)、主観的認知障害(SCI)、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳血管性痴呆(CVD)および神経変性疾患の治療または予防に実用的である。
【0022】
特定の態様において、本発明は、神経保護剤を同定する方法を含有する。これらの化合物は、特に、中枢神経系の神経細胞、とりわけ脳の機能の死または欠失を予防するであろう。この方法は、
(a)テトラサイクリン化合物を合成する工程と;
(b)抗菌活性に関する前記化合物を試験する工程と;
(c)細胞周期阻害(主に以下のようなポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素の阻害で試験)に関する前記化合物を試験する工程と;
(d)前記化合物を実質的に抗菌活性がなく、細胞周期阻害活性を示す場合、神経損傷の動物モデルにおいて前記化合物を試験する工程を含む。
【0023】
特定の態様において、本発明は、テトラサイクリン誘導体で、実質的に抗菌性がなく、またポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼに対してアポトーシス誘導の測定として著しい阻害活性を有し、さらに血液脳関門脳を十分な程度に通過して、脳および周りの組織の細胞に影響を及ぼす化合物を含有する。上記方法は、基本的に、上記工程または抗菌活性、PARP阻害および血液脳関門脳透過率を試験する工程からなることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明に従った化合物の例を示す図である。
【図2】図2はまた本発明に従った化合物の例を示す図である。
【図3】図3は本発明の例示的な実施形態を実施した、化学発光法によるPARP阻害分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
他に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者よって一般的に理解される意味である。本明細書に記載したものに類似または均等ないずれかの方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。一般的に、細胞分子生物学および化学の技術に関連して利用される用語はよく知られたものであり、従来技術において一般的に使用されている。特定の実験技術を、特に規定しないが、当業者によく知られ、本明細書にわたって引用および考慮した様々な一般的で特定の参照により記載した従来の方法に従って実施した。明確にする目的で、次の用語を以下に定義する。
【0026】
本発明の化合物に関して、「抗菌活性」という用語は、本発明の化合物に関して、化合物がミノサイクリンの抗生物質に通常影響される細菌の成長に対して最小の効果であることを意味する。Connell et al.“Ribosomal Protection Proteins and Their Mechanism of Tetracycline Resistance,” Antimicrobial Agents and Chemotherapy, December 2003,p.3675−3681,Vol.47,No.12に記載されたように、テトラサイクリンを二つの群、非定型なテトラサイクリン(例えば、アンヒドロテトラサイクリンおよび6−チアテトラサイクリン)および典型的なテトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリンおよびチアテトラサイクリン)に分類することができる。非定型なテトラサイクリンは、細菌の膜を破壊することによって機能する。また典型的なテトラサイクリンは、リボソーム保護タンパク質(RPP)介在抵抗の対象であり、リボソームに結合し、タンパク質合成の伸長段階を阻害する。より詳細には、それらはリボソームのA部位へのアミノアシルtRNA(aa−tRNA)の適応を阻害し、従って伸長ポリペプチドに対する新しいアミノ酸の添加を回避する。本化合物は、抗菌活性を欠如して、この様な活性、即ち細菌リボソームへの最小の結合を最小にして、標準MIC分析で測定したように、関連のテトラサイクリン抗生物質抗菌活性の、50%未満、好ましくは10%未満であるだろう。MIC測定という用語の説明のため、例えば米国特許第6,140,069号明細書が参照となる。従って、“実質的に抗菌性がない”とは、培養した微生物、例えばE.coli、S.aureus等を使用した標準の抗菌感性の試験で測定したように、抗菌活性がほとんどまたは全く有さない化合物を意味する。実施例を以下に示す。
【0027】
“テトラサイクリン誘導体”という用語は、置換テトラサイクリン化合物またはテトラサイクリンに似た環構造の化合物を含有する。同様の4員環構造を含む他の誘導体および類似体をまた含有する(Rogalski,(1984)“Chemical Modification of the Tetracyclines,”In:The tetracyclines. Hlavka JJ,Boothe JH,editors.New York:Springer−Verlag Press,pp.179−309参照、これらの全ての内容を本明細書において参照として組み込むものとする)。特に、一つは図1の化合物2として示すような構造またはミノサイクリンで開始することができる。
【0028】
神経保護作用という用語は、神経性の傷害を減少、抑止または改善し、特に疑わしい神経性病の場合に神経性の傷害患った神経組織に対する保護、復活(resuscitation)または再生(revivative)することを意味する。それは、疾患、例えばAD、加齢関連性記憶障害、軽度認知障害、脳血管性痴呆等における神経死の減少または機能欠損を含むことができる。本用語は神経変性病と関連し、生体指標、PET画像等を含む既知の方法によって診断することができる。これらの神経変性病の存在および進行を定める例に関しては、Muller et al.“Evaluation of treatment effects in Alzheimer’s and other neurodegerative diseases by MRI and MRS,”NMR Biomed,2006 October,19(6):655−668を参照できる。前記に記載された通り、神経変性とは、脳の種々の解剖学および機能組織における、ゆっくり進行する神経細胞消失と関連する多くの臨床的且つ病理学的に異質の疾病単位とする。神経変性病は、認知、例えばアルツハイマー病(AD)、レヴィー小体による認知症および血管性認知症、もしくは運動器系の種々の態様、例えば筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病および運動失調にしばしば影響する。特に、本化合物および方法は、それらが血液脳関門を通るために、脳における神経細胞の保護で使用することが好ましい。
【0029】
本明細書において使用される“細胞周期の進行”という用語は、細胞の進行を上記細胞周期に渡って、好ましくはG0からG1またはG1からSまでを意味する。細胞周期の進行を阻害する化合物を、既知の分析によって決定することができる。G1期停止を生み出す化合物の同定は、Toogood et al.,“Cyclin−dependent kinase inhibitors for treating cancer,”Med Res Rev.,2001Nov;21(6):487−98に記載される。
【0030】
“アルキル”という用語は、それ自身または他の置換基の一部にて、他に記載がない場合、直鎖もしくは分岐鎖、環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、完全に飽和、モノまたはポリ不飽和であることができ、ジまたは多価のラジカルを含むことができ、示した炭素原子の数を有する(即ち、C−C10は炭素1〜10を意味する)。好ましくは、アルキル鎖は炭素原子1〜40を含有し、より好ましくは炭素原子1〜10、さらに好ましくは炭素原子1〜6を含有する。飽和炭化水素ラジカルの例は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルの基、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等のホモログおよび異性体を含有するが、これに限定されない。不飽和アルキル基は、一つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例は、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−ブタジエニル、2,4−エンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニルおよびより高いホモログおよび異性体を含有するが、これに限定されない。“アルキル”という用語は、他に記載がない場合、また以下により詳細に規定したこれらのアルキルの前記誘導体、例えば“ヘテロアルキル”を含有することを意味する。炭化水素基に限定されているアルキル基は“ホモアルキル”として称する。
【0031】
“置換アルキル”という用語は、上記に規定したアルキル基をいい、置換基1〜8、好ましくは置換基1〜5、より好ましくは置換基1〜3を有し、アルコキシル、置換アルコキシル、シクロアルキル、置換シククロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリロキシ、チオヘテロアリロキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環(“複素環アルキル”)、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、--SO-アルキル、--SO-置換アルキル、--SO-アリール、--SO-ヘテロアリール、--SO-アルキル、--SO-置換アルキル、--SO-アリール、--SOH、グアニド、および--SO-ヘテロアリールを含有する群から選択される。
【0032】
「アルキレン」という用語は、単独でまたは他の置換基の一部として、上記に規定するようなアルキル基から誘導される多価ラジカルを意味し、-CHCHCHCH-を例示するが、これらに限定されず、さらに以下に“ヘテロアルキレン”として記載される基のものを含有する。典型的には、アルキレン基は炭素原子1〜24であり、炭素原子10以下を有する基が本発明において好ましい。“低級アルキル”、“低級ヘテロアルキレン”または“低級アルキレン”とは、比較的短い鎖のアルキルまたはアルキレン基であり、一般的には炭素原子8以下、好ましくは炭素原子6以下、より好ましくは炭素原子3以下である。アルキレン基の例は、-C(=O)-、-CH-C(=O)-、-CH-CH-、-CH-=CH-、-C(SH)-、-CH-C(NH)-等である。低級ヘテロアルキルまたはヘテロアルキレンの場合、基の一部として数えられるヘテロ原子1〜2がある。
【0033】
本明細書において使用されるように、“アルケニル”という用語は、炭化水素2〜10、好ましくは炭素原子2〜6の直鎖状または分岐状で、少なくとも一つの二重結合を有するものとする。アルケニル基の例は、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、ペンテニルまたはヘキサジエニルを含有するが、これらに限定されない。前記基は、アルキル基と関連して記載したようなものに置換することができる。
【0034】
本明細書において使用されるように、“アルキニル”という用語は、炭化水素2〜10、好ましくは炭化水素2〜6の直鎖または分岐で、少なくとも三重結合を有するものとする。前記基は記載されたようにアルキル基と関連して記載したようなものに置換することができる。
【0035】
アルキニル基の例は、アセチレニル、プロピニルまたはブチニルを含有するが、これらに限定されない。
【0036】
“アルコキシ”、“アルキルアミノ”および“アルキルチオ”(またはチオアルコキシ)の用語を、それらの従来の意味として使用し、それぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子によって分子の残部に結合した前記アルキル基とする。
【0037】
“アシル”という用語は、酸素原子を取り除き、即ち-C(=O)Rとなるカルボン酸の残基である部位とし、前記Rは置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロサイクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
【0038】
“ヘテロアルキル”という用語は、単独でまたは他の置換基の一部として、他に記載がない場合、安定した直鎖状もしくは分岐状の鎖、環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、記載した数の炭素原子およびO、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子からなり、窒素および硫黄の原子は任意に酸価することができ、窒素は任意に4級化することができる。(複数の)ヘテロ原子O、N、SおよびSiを、ヘテロアルキル基のいずれかの内部またはアルキル基が分子残基に結合している部位に配置することができる。例は、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、および-CH=CH-N(CH)-CHを含有するが、これらに限定されない。最大2つのヘテロ原子は、連続的、例えば-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHであることができる。
【0039】
同様に、“ヘテロアルキレン”という用語は、単独でまたは他の置換基の一部として、上記に規定して例示するように、ヘテロアルキルから誘導される多価ラジカルを意味し、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-を含有するが、これらに限定されない。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子はまた鎖末端(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)のいずれかまたは両方を占めることができる。更に、アルキレンおよびヘテロアルキレンの結合基に関して、その結合基の配位は、一般式の結合基を記載した方向を意図する。例えば、一般式 -C(O)R’- は、-C(O)R’- および- R’C(O) -の両方を示す。
【0040】
“シクロアルキル”および“ヘテロシクロアルキル”という用語は、単独でまたは他の用語と組み合わせて、記載しない限り、それぞれ “アルキル”および“ヘテロアルキル”の環状状態を示す。さらに、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、複素環が分子の残基に結合する位置を占めることができる。シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチル等を含有するが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例は、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2ピペラジニル等を含有するが、これらに限定されない。
【0041】
“複素環式アルキル”という用語は、上記に規定するアルキル基を意味し、ヘテロ原子(ヘテロアルキル)を含有し、結合した環を形成する2位置で骨格(即ち、結合した環構造)に結合する。複素環式置換基の定義によって他に限定されない限り、このような複素環基は、置換基1〜5、好ましくは1〜3で任意に、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオキト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、複素環オキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、--SO-置換アルキル、--SO-アリール、--SO-ヘテロアリール、--SO-アルキル、--SO-置換アルキル、--SO-アリール、オキソ(=O)および--SO-ヘテロアリールからなる群から選択される複素環基と任意に置換することができる。このような複素環基は、単環または複数の縮合環を有することができる。好ましくは、複素環は、モルホリノ、ピペリジニル等を含有する。
【0042】
“アリール”という用語は、他に記載しない限り、ポリ不飽和、通常、芳香族、炭化水素置換基を意味し、共有結合、または一般的基、例えばメチレンまたはエチレン部位が結合で共に結合している単環または複数の環(最大三環)の縮合であることができる。一般的結合基はまたベンゾフェノンの場合、カルボニルである。芳香環は、置換または非置換のフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルメチルおよびベンゾフェノンを他の物間に含有することができる。特定の実施形態において、アリールは炭素原子1〜200、炭素原子1〜50または炭素原子1〜20を有する。
【0043】
簡潔に、“アリール”という用語を他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用したとき、上に規定した通り、アリールおよびヘテロアリール環を含有する。従って、“アリールアルキル”という用語は、これらのラジカルを含むものを意味し、前記ラジカルはアリール基がアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル等)にこれらのアルキル基を含んで付着するものであり、前記アルキル基は、炭素原子(例えばメチレン基)を、例えば、酸素原子(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピル等)によって置換したものである。
【0044】
“ヘテロアリール”という用語は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子0〜4を含有するアリール基(または環)であり、窒素および硫黄の原子は任意に酸化され、(複数の)窒素原子は任意に4級化である。ヘテロアリール基は、分子の残留基にヘテロ原子によって結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルを含有する。上記アリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載の許容可能な置換基の群から選択される。
【0045】
“置換アリール”という用語は、記述されているようなアリールをいい、一つ以上の官能基、例えば低級アルキル、アシル、ハロゲン、アルキルハロ(例えば、CF)、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、フォスフィド、アルコキシ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アシロキシ、メルカプト、並びに一般的基、例えばメチレンまたはエチレン部位に共有結合または結合して、芳香環に結合する飽和性および不飽和性の環状炭化水素の両方を含有する。結合基は、またカルボニル、例えばシクロヘキシルフェニルケトンであることができる。
【0046】
“ハロ”または“ハロゲン”という用語は、単独でまたは他の置換基の一部として、他に記載されない限り、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の原子を意味する。さらに、例えば“ハロアルキル”という用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含有することを意味する。例えば、“ハロ(C−C)アルキル”という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプリピル等を含有するが、これらに限定されないことを意味する。他の用語、例えば“ハロアルコキシ”とは、アルコキシ基を置換したハロゲンとする。
【0047】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルとすることが多いこれらの基を含む)に対する置換基は、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-COR’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’’’、-NR”C(O)R’、-NR-C(NR’R”R’’’)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、-NRSOR’、-CNおよび-NOから0から(2m’+1)の範囲内の数で選択される種々の基の一つ以上であることができるが、これらに限定されず、前記m’はこのようなラジカルにおける炭素原子の総数である。R’、R’’、R’’’およびR’’’’はそれぞれ好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基、もしくはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基とする。本発明の化合物は一を超えるR基を含有する場合、例えばそれぞれのR基は、一を超えるこれらの基が存在するとき、それぞれR’、R”およびR’’’基であるように独立して選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合しているとき、それらは窒素原子と組み合わせて5−、6−、または7−員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含有するが、これらに限定されないことを意味する。上述の置換基から、当業者は、“アルキル”という用語は、水素基以外の他の基、例えばハロアルキル(例えば、-CFおよび-CHCF)およびアシル(例えば、-C(O)CH、-C(O)CF、-C(O)CHOCH等)に結合する炭素原子を含有する基を含むことを意味することを解釈するであろう。
【0048】
アルキルラジカルに記載した置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基を変更して、例えば:ハロゲン、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’’’、-OC(O)R’、-C(O)R’、-COR’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’’’、-NR”C(O)R’、-NR-C(NR’R”)=NR’’’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、-NRSOR’、-CN、-NO、-R’、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C−C)アルコキシ、およびフルオロ(C−C)アルキルから、0から芳香環系の開放の原子価(open valence)の総数までの範囲の数で選択される。本発明の化合物が1を超えるR基であるとき、例えばそれぞれのR基は、一つを超える前記群が存在するとき、それぞれR’、R”、R’’’およびR””基であるように選択される。
【0049】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接した原子での二つの置換基を、任意に一般式-T-C(O)-(CRR’)-U-の置換基と置換することができ、前記TおよびUは独立して-NR-、-O-、-CRR’-または単結合であり、qは整数0〜3である。またアリールまたはヘテロアリール環に隣接した原子での二つの置換基を、一般式-A-(CH-B−の置換基と任意に置換することができ、前記AおよびBは独立して-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR’-または単結合であり、rは整数1〜4である。このように形成される新規な環の単結合の一つは、任意に二重結合と置換することができる。またアリールまたはヘテロアリール環に隣接した原子での二つの置換基を、任意に一般式-(CRR’)-X-(CR”R’’’)-の置換基と置換することができ、前記sおよびdは独立して整数0〜3であり、Xは-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)-または-S(O)NR’-である。置換基R、R’、R’’およびR’’’は、好ましくは、水素、置換または非置換の(C−C)アルキルから独立して選択される。
【0050】
本明細書において使用されるように、“ヘテロ原子”とは酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)を含有する。
【0051】
“部分”という用語は、他の部分に結合する分子のラジカルとする。
【0052】
“R”という記号は、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリール、および置換または非置換のヘテロ環基から選択される置換基を示す一般的な略称である。
【0053】
本明細書において使用されるような“反応性官能基”という用語は、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキサイド、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアン酸塩、イソシアン酸塩、チオシアン酸塩、イソチオシアン酸塩、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、アンハイドライド、スルフェート、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、サルファイト、エナミン、イナミン、尿素、プソイド尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバミン酸塩、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物およびニトロソ化合物を含有するが、これらに限定されない基とする。反応性官能基はまたバイオコンジュゲート、例えばN−ヒドロキシサクシイミドエステル、マレイミド等の調製に使用されるものを含有する。これらの官能基のそれぞれを調製する方法は、当業者によく知られ、特定の目的のためのそれらの応用または改良は、当業者の技術の範囲内である(例えば、Sandler and Karo, eds.ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS,Academic Press,San Diego,1989参照)。
【0054】
本明細書において使用されるように、“保護基”という用語は、特定の反応条件下に基づいて実質的に安定である官能基の一部とするが、異なった反応条件下に基づいて基質から切断される。保護基はまた本発明の化合物の、芳香環成分の直接的な酸化に関与するように選択することができる。実用的な保護基の例に関して、例えばGreene et al.,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley & Sons, New York,1991を参照する。
【0055】

【0056】
“薬学的に許容可能な塩”という用語は、比較的毒性のない酸または塩基と調製される活性化合物の塩を含有し、本明細書に記載した化合物で発見される特定の置換基に異存する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を有するとき、塩基添加塩をこのような化合物の中性の形態と十分な量の所望の塩基を、非水(neat)または適切な不活性の溶媒のいずれかにて接触させることによって得ることができる。薬学的に許容可能な塩基性添加塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、マグネシウム塩または類似の塩を含有する。本発明の化合物が比較的塩基の官能基を有する場合、酸性添加塩をこの様な化合物の中性の形態と十分な量の所望の酸を、非水または適切な不活性溶媒のいずれかにて接触させることによって得ることができる。薬学的に許容可能な酸性添加塩は、無機の酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭化酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸等、並びに比較的毒性のない有機塩、例えば酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、パルミチン酸等から誘導されるものを含有する。またアミノ酸の塩、例えばアルギン塩等、および有機酸の塩、例えばグルクロン酸またはガラクツロン酸等を含有する(例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1−19参照)。本発明の特定の化合物は、化合物が塩基性または酸性の添加塩のいずれか内で変換することを許容する塩基性および酸性の官能基を含有する。
【0057】
“薬学的に許容可能な”賦形剤とは、ヒトおよび/または動物の使用に適していて、適度な利点/危険性の比率で釣り合う過度な副作用(例えば、毒性、炎症、およびアレルギー性反応)もないものである。
【0058】
“安全且つ有効な量”とは、適度な利点/危険性の比率で釣り合う過度な副作用(例えば、毒性、炎症またはアレルギー性反応)なしに、所望の治療反応を得るために十分である成分の量とする。
【0059】
いくつかの実施形態において、“治療の有効量”とは、所望の治療反応を得るために十分な成分のための安全且つ有効な量で、例えば神経変性、記憶喪失、または痴呆の予防または治療(改善)するために効果的な量とする。
【0060】
特定の安全且つ有効量または治療の有効量は、処理される特定の状態、患者の体調、治療される哺乳類の種類、治療の継続、(もしあれば)併用療法の性質、使用される特定の処方、および化合物またはその誘導体の構造のような要素によって変化するであろう。
【0061】
“経口製剤”とは、化合物を口から摂取する処方である化合物の製剤である。
【0062】
本明細書に使用したように、“治療”という用語は、損傷、病状、状態、症状(例えば、認識機能)の治療または改善で、成功のいずれかの兆候をいい、いずれかの客観的または主観的なパラメーター、例えば寛解;緩解;症状の減少または症状、損傷、病状もしくは患者に比較的耐えられる状態の減弱;病状もしくは状態の頻度または持続を減少;いくつかの場合、病状または状態の発病の予防を含む。症状の改善は、例えば、健康診断の結果を含有するいずれかの客観的または主観的な要素に基づくことができる。
【0063】
概説
本発明は、化学修飾したテトラサイクリンコア化合物、例えばミノサイクリンに基づく化合物で、(a)血液脳関門の浸透、(b)低い抗菌活性、および(c)細胞周期進行、特に神経細胞の細胞周期進行を阻害することができるものの組み合わせを示すものを投与することにより、老年性記憶障害(AAMI)、無症候性脳梗塞(SCI)、軽度認知障害(MCI),アルツハイマー病(AD)、脳血管障害(CVD)および関連する変性の神経学的状態の治療的な処理または予防する組成物および方法に関する。これら化合物の全ては、経口投薬、プロドラッグ、注射、吸入可能な溶液、粉末マトリックスまたは一つ以上の薬剤の組み合わせのいずれかで投与されるとき、初期の細胞周期または一般的に単一もしくは一つ以上の分裂刺激することができる薬剤と組み合わせのいずれかで、神経細胞の細胞周期進行を阻害することができる。
【0064】
上記のように、提案を、ミノサイクリンを神経変性病で使用する技術で見出した。しかしながら、本発明は抗菌性化合物で患者に投与することは、短期または長期のいずれかの治療投与のために、患者に害をもたらすか、生み出すおそれがある好ましくない抗菌活性を与えるであろうという認識を含む。ミノサイクリンの9−ヒドロキシル化およびN−脱メチル化はヒトにおいて報告されたが、限定された範囲内のみであった(HJ Nelis, AP De Leenheer − Drug Metabolism and Disposition, 1982 − ncbi.nlm.nih.gov)。C4位置におけるエピマー化はまた、ほとんどのテトラサイクリン抗生物質で報告され、代謝経路よりはむしろ分解産物として一般的に考慮された(EG Remmers, GM Sieger, AP DoerschuK - Journal of Pharmaceutical Science, 1963 − J Pharm Sci. 1963 Aug;52:752−6. Some Observations On The Kinetics Of The C.4)。
【0065】
本発明は、化学修飾されたテトラサイクリン骨格、好ましくはミノサイクリンの骨格を利用し、抗菌活性を中和させるか十分に阻害するとともに、血液脳関門の通過する薬剤の性能を妨げることなく神経保護作用特性を保持するか向上させる。
【0066】
抗菌活性を欠失した化学修飾のテトラサイクリンコア化合物
本化合物は、ミノサイクリンより抗菌活性を有さず、即ち本質的に抗菌活性がないものである。しかしながら、それらは様々な構造のため、神経保護的活性を保持し、血液脳関門を通す能力を保持するため、ミノサイクリンと同様の物理化学特徴を有する。
【化6】

【0067】
−R10置換化合物
簡単な化学は、ミノサイクリンから、その9−ニトロ誘導体に変換して、それは低い抗菌活性を有することを予期する。還元はこれを9−アミノ類似体にすることができ、それは優れた抗菌活性であることを知られている。さらに環状誘導体に導くことができる修飾、例えば化合物3は、抗菌活性を位置10で重要なフェノールのOHをおおうことによって無効にすべきである。
【化7】

【0068】
化合物3は、Y=-CH-(化合物3として以下に称す)のとき、(6aR,7aS,8S,11aS)−5,8−ビス(ジメチルアミノ)−9,11a,12−トリヒドロキシ−11,13−ジオキソ−6,6a,7,7a,8,11,11a,13−オクタハイドロテトラアセノ〔2,1−d〕オキサゾール−10−カルボキサミドとして称し;Y=-C(=O)-(化合物3bとして以下に称す)のとき、(6aR,7aS,8S,11aS)−5,8−ビス(ジメチルアミノ)−9,11a,12−トリヒドロキシル−2,11,13−トリオキソ−2,3,6,6a,7,7a,8,11,11a,13−デカヒドロテトラセノ[2,1−d]オキサゾール−10−カルボキサミドとして称する。さらに、Y=-C(=O)−C-(以下に化合物38と称す)のとき、化合物を(6aR,7aS,8S,11aS)−5,8−ビス(ジメチルアミノ)−9,11a,12−トリヒドロキシ−2,11,13−トリオキソ−2,3,6,6a,7,7a,8,11,11a,13−デカヒドロテトラアセノ〔2,1−d〕モルホリン−10−カルボキサミドと称する。
【0069】
化合物3を一般式Aによってさらに示すことができる:
【化8】

【0070】
一般式Aのさらに評細な実施形態は、一般式3Bである。
【化9】

【0071】
上記両方の一般式に関して、
式中、(a)R、RおよびRは、H、C1−10アルキル、C1−10アルケニル、C1−10アルキニル、C5−10-アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OH、およびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-、および-S-からなる群からそれぞれ独立して選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在するとき、YおよびY’は、-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-,-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成することができ;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは単結合または二重結合であることができ;および
(e)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。
【0072】
同様の4員構造を含む様々な化合物および類似体をまた、本教示に従って調製することができる。概説として、W.Rogalski、“Chemical Modifications of Tetracyclines,”を参照し、全ての内容を本明細書において参照として組み込む。基本的なテトラサイクリン構造を構成することができるか、またはできない他の修飾を、Mitscher in The Chemistry of Tetracyclines,Chapter 6,Miarcel Dekker,Publishers,New York(1978)に概説した。Mitscherによると、テトラサイクリン環系の位置5〜9の置換基を、抗菌特性の完全な欠失もなく修飾することができる。しかしながら位置1〜4および10〜12で置換基の、基本的な環系または置換に対する変化は、一般的に実質的に抗菌活性がわずかまたは効果的に全くなくテトラサイクリンを合成することを導いた。例は、一般的に非抗菌性のテトラサイクリンである4−デジメチルアミノテトラサイクリンである(さらなる詳細は米国特許第6,914,057号明細書参照)。
【0073】
本発明の特定の化合物は、水和した形態を含有する非溶媒和形態並びに溶媒和形態で存在することができる。一般的に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の特定の化合物は、複数の結晶性または非結晶性の形態にて存在することができる。一般的に全ての物理的形状は、本発明によって考えられる使用と同等であり、本発明の範囲内であることを意図する。
【0074】
本発明の特定の化合物は、非対称な炭素原子(光学的中心)または二重結合を有し;ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は本発明の範囲内に包含する。
【0075】
本発明の化合物は、単一の異性体(例えば鏡像異性体、シス−トランス、位置、ジアステレオマー)、または異性体の混合物として調製することができる。好ましい実施形態において、化合物を実質的に単一の異性体として調製した。実質的に異性体的に純粋化合物の異性体を調製する方法が、当業者に既知である。例えば、鏡像異性的に富んだ混合物および純エナンチオマーの化合物を、キラル中心で立体化学を不変のままにするか、またはその完全な反転を生じるかのいずれかである反応と組み合わせて、鏡像異性的に純粋である合成中間体を使用して調製することができる。また最終生成物または合成経路による中間体を単一の立体異性体で決定することができる。反転または特定の立体中心を不変のままにする技術、および立体異性体の混合物を決定するものは当業者によく知られ、方法を選択し、適切にすることは当業者の能力の範囲内である。一般的に、Furniss et al. (eds.),VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 5TH-ED.,Longman Scientific and Technical Ltd.,Essex,1991,pp.809−816;and Heller,Acc.Chem.Res.23:128(1990)を参照する。
【0076】
本発明の化合物は、また原子同位体の不自然な比率を、そのような化合物を構成する一つ以上の原子において含有することができる。例えば、化合物を放射性同位体、例えば三重水素(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)等で放射性同位元素を使って識別することができる。本発明の化合物の全ての同位体の変化を、放射性があるまたはないにせよ、本発明の範囲内で包含することを意図する。
【0077】
合成
一般的な合成方法を以下に概略する。これらを図式11および図式12に例示する。他の合成方法は、比較的単純な化合物で開始して使用することができる。例えば、Charest et al.,“A convergent Enantioselective Route to Structurally Diverse 6−Deoxytetracycline Antibiotics,”Science 308:395398(2005)には、種々のD環の前駆体を使用した方法を記載する。この作業をまた米国特許出願公開第2005/0282787号明細書に記載する。この方法は、テトラサイクリンのモジュラー合成およびその様々な類似体を、高度に官能基化されたキラルのエノンによって提供し、それは、テトラサイクリンコアのD環となるであろう分子と、テトラサイクリンコアのAおよびB環になる。これら二つの中間体の結合は、C環の形成、好ましくはエナンチオ選択性の方法によって生じる。この手法はまた環系内にヘテロ環を組み合わせることを可能とする。特に、これら二つの断片の結合は、様々な求核付加反応およびエノンと付加環化反応を含有する。それらに記載の化合物は、優位な抗菌活性を有し、欠失させるために本教示に従って抗菌活性を修飾すべきであることを意図する。
【0078】
さらに、1998年11月10日にSuが発行した米国特許第5,834,450号明細書名称“9−(substituted amino)−alpha−6−deoxy−5−oxy tetracycline derivatives, their preparation and their use as antibiotics”は、本教示に従って適用することができる9−置換テトラサイクリン抗生物質の合成方法を開示する。
【0079】
本合成方法の例を、以下 “図式11”に記載し、図式11に示す化合物2から開始する。
【0080】
【化10】

【0081】
化合物2は一般的に図式1に示し、位置R7、R6およびR4で置換基を有し、一般式Aの用語を使用する。前記置換基に適切な基を置換することによって、一つは一般式Aに規定する化合物を得ることができる。9−10環を除くミノサイクリンの置換基を有する様々な化合物は、市販の9−アミノミノサイクリンから開始して、本明細書に記載されたように、調製することができる。
【0082】
図式11に示すように、化合物2をHSO、HNOで、1時間0℃で処理する。これを次にH、Pd/Cを40psi室温において処理する。化合物37から3bを形成するために、反応は、室温において5分間COCl、THFを使用する。化合物37から3aにおいて、反応は、室温でHCHO、NaBHおよびMeOHを10分間使用する。
【0083】
図式11において、化合物37を2(HSO、HNO、1時間、0℃)から得て、その後MeOHの置換アルデヒドで適切に処理し、続いて水素化ホウ素ナトリウムと室温で10分間の間にわたって添加し、クロマトグラフィー後に化合物3bを提供する。
【0084】
また、THF内でホスゲンとの室温で5分間の化合物37の処理は、化合物3aの精製後にもたらすであろう。
【0085】
【化11】

【0086】
図式12において、化合物38は、化合物37(9−アミノサイクリン、市販または化合物2から図式11に示したように得られる)からCHClにおいてブロモ酢酸クロリドおよびDIEAで化合物37を処理することによって得られる。HPLCによる生じた粗化合物38の精製はTFA塩を生じ、その後そのHCl塩に、1MHCl/ジオキサン、続いて親油性化に溶解することによって変換する。これは化合物38をHCl塩として得る。
【0087】
化合物2は、一般的に、位置R7、R6およびR4の置換基を有し、一般式Aの用語を使用して、図式1で示す。前記置換基に適切な基を置換することによって、一つは一般式Aに規定した化合物Aを得ることができる。
【0088】
体外スクリーニング
上記の様に設計および調製した候補化合物を、最初に体外において試験して、(a)抗菌効果および(b)細胞周期進行の阻害を決定することができる。抗菌効果のように、この試験は、比較的容易であり、化合物に対する様々な微生物の感度を、抗菌性があると知られる参照ミノサイクリン化合物と比較することを含む。上記のように、ミノサイクリン化合物の細菌効果は既知であり、細菌増殖の阻害の簡単な観測に加えて明確に測定することができる。即ち、一つは、アミノアシルtRNAのリボソーム受容体(A)部位への結合を防止する際に、候補化合物の効果を測定することができる。ひとつはまた相互作用を設計する計算法を使用することができる。抗菌作用(および抗感染薬)の効果を除外するために、一つは以下の生物:グラム陰性菌(淋菌、インフルエンザ菌、赤痢菌属、ペスト菌、ブルセラ属、コレラ菌);グラム陽性菌(肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌);マイコプラズマ(肺炎マイコプラズマ、マイコプラズマファーメンタンス〔インコグニタス株を含む〕、マイコプラズマペネトランス);その他(炭疽菌〔アンスラックス〕、クロストリジウム、クラミジア属、アクチノマイセス属、エントアメーバ属、梅毒トレポネーマ〔梅毒〕、熱帯熱マラリア原虫〔マラリア〕、およびボレリア属〔ライム〕種)に対して検査することができる。
【0089】
細胞周期進行のように、体外および体内の試験を、例えば“DRF 3188 a novel semi−synthetic analog of andrographolide: cellular response to MCF 7 breast cancer cells,” BMC Cancer, 2004; 4: 26に記載する。前述の様に、蛍光関連細胞選別分析を、候補化合物(5μM)または参照化合物(5μM)で24時間処理したMCF7細胞で実施した。Beckman Coulterは、細胞周期進行を測定する際に蛍光活性化細胞選別分析用の取り扱い説明書を、名称“Cell Cycle Analysis with Dual Measurement of Cyclin A2 Expression and DNA Content”でまた発行する。MAPキナーゼ活性の測定を使用することができ、即ち候補化合物は神経細胞周期の進行を阻害するためにMAPキナーゼを阻害すべきである。この様な分析を、Yang et al.,“MAP Kinase-Independent Signaling in Angiotensin II Regulation of Neuromodulation in SHR Neurons,”Hypertension,1998;32:473−481に記載する。記載されるように、神経細胞溶解物を溶解緩衝液にて調製し、溶解物をアガロースに結合した抗ERK2抗体と免疫沈降した。免疫沈降を電気泳動させ、P32摂取に対して分析した。さらに実験プロトコルは、Alessi DR, Cuenda A,Cohen P,Dudley DT,Saltiel AR.“PD98059 is a specific inhibitor of the activation of mitogen−activated protein kinase in vitro and in vivo”.J Biol Chem.,1995;270:27489−27494から入手することができる。
【0090】
本化合物を評価するために使用することができる他の体外分析は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)の阻害である。PARP−1分析を、本明細書において細胞周期に影響するパラメーターの測定の例として使用することができる。J. Biol. Chem,10,1074(2002)に報告されるように、核内に配置されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)は、DNA鎖切断によって、遺伝毒性ストレス反応に間に活性化され、受容体タンパク質のポリADPリボシル化活性を触媒する。前記受容体タンパク質は、染色体構造の修飾、DNA合成、DNA修復、転写および細胞周期制御で関連するものを含有する。PARP−1の酵素活性が、ミトコンドリア酵素で、部分的に媒介した細胞酸化ストレスの介在によって誘導し、PARP−1はミノサイクリンおよび他のテトラサイクリン誘導体によって直接阻害することがまた知られる。前記薬剤は、皮質の神経細胞の培養を使用することによって評価し、PARP−1活性を遺伝毒性物質N‐メチル‐N′‐ニトロ‐N‐ニトロソグアニジン(MNNG)または3−モルホリノシドノンイミン(SIN−1)によって誘導する。Alano et al.,“Minocycline inhibits poly(ADP−ribose) polymerase−1 at nanomolar concentrations,”Proc Natl Acad Sci U S A.2006June20;103(25):9685−9690を参照する。酸化および/または遺伝毒性ストレスから生じるような広範囲のPARP−1活性は、さらにNAD+減少に結合したメカニズムによる神経細胞の死、およびミトコンドリアからのアポトーシス誘導因子の放出を導く。正常なミトコンドリアのエネルギー代謝の回復は、多くの神経系疾患の発症に重要である可能性があるさらなる最近の証拠がある。Castaldo et al, “Role of the mitochondrial sodium/calcium exchanger in neuronal physiology and in the pathogenesis of neurological diseases, Prog Neurobiol 2009 Jan 12; 87 (1):58−79を参照。またPARP−1の阻害は、神経細胞のエネルギー代謝、ミトコンドリアのカルシウム循環、計画された細胞周期、およびアポトーシスを維持するために観測され、従って多少の神経細胞の損傷を減少するために重要であるらしい。Klaidman et al,“Recent developments in the role of mitochondria in poly (ADP ribose) polymerase inhibition”Curr Med Chem,2003Dec10(24):2669−78を参照。最後に、PARP−1分析用の数々の分析が知られていて、このような分析用の成分が市販されている。例えば、Trevigenは、“標準”PARP精製を50%純度で、95%を超える精製した高比活性(HSA)酵素を提供する。標準PARP酵素は、リボシル化されたタンパク質のウェスタンブロット分析およびPARP活性分析で陽性対照として実用的である。市販のPARP分析キットは、96ウェルプレート内においてヒストンタンパク質へのビオチニル化されたポリADPリボースの結合を測定する。この分析は、PARP阻害剤のスクリーニング、細胞および組織の抽出物からPARP活性の測定、およびアポトーシスを受ける細胞におけるPARP活性の欠失を可能とした。Trevigen’s Universal 96−well PARP Assay Kitsは、ヒストンタンパク質へのビオチニル化されたポリADPリボースの結合を96ウェルストリップ形式において測定した。前記分析は、細胞抽出物における、PARP阻害剤のスクリーニングおよびPARPの活性の測定に理想的である。比色分析形式(4677−096−K、4676−096−K)は、PARPの活性の10m単位/ウェルまで感度までを測定する一方、化学発光法形式(4676−096−K、4675−096−K)は、PARPの活性の2.5m単位/ウェルまで感度を測定する。一つはPARP切断の阻害を測定して、本化合物を試験することができる。
【0091】
細胞分析
本化合物は、さらに数々の細胞に基づく分析によって特徴付けることができる。以下に記載の分析を、また使用して、候補化合物の初期効果を決定することができる。
【0092】
グルタミン酸塩の問題
グルタミン酸塩誘導の神経毒性は、慢性神経系疾患および急性神経損傷において重要な要因である。これらの疾患において、神経学的結果に著しく起因するグルタミン酸塩の異常な放出がある。放出されたグルタミン酸塩は、NMDAサブタイプのグルタミンサン受容体の過度な活性の原因となり、Ca2+の異常な流入、その後の神経細胞の死を導く。いくつかのキナーゼ経路は、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびp38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の経路を主に含有し、グルタミン酸塩誘導のアポトーシスで関連し、過重負担細胞内Ca2+の下流シグナルの原因であることを示した。分析は、Li et al.“Novel Dimeric Acetylcholinesterase Inhibitor Bis(7)−tacrine, but Not Donepezil, Prevents Glutamate−induced Neuronal Apoptosis by Blocking N−Methyl−D−aspartate Receptors,”J. Biol. Chem.,280(18)(2005)に記載された様に実施し、候補化合物をそれらの能力がアポトーシスを誘導されるグルタミン酸塩を阻害することを評価することができる。
【0093】
ミクログリア増殖
分析は、Mander et al.,“Microglia Proliferation Is Regulated by Hydrogen Peroxide from NADPH Oxidase,”The Journal of Immunology,2006,176:1046−1052に記載されたように実施することができる。IL−1およびTNF−αは、様々なCNAの病状において感染、外傷または神経細胞の損害に対応するミクログリアによって放出される二つのサイトカインである。IL−1およびTNFがミクログリアの増殖を活性化することができることを以前報告した。本分析において、候補化合物が好ましくない炎症活性の原因でないこと、刺激の存在下において炎症活性を防止することを、ミクログリア増殖の欠失によって示すことができる。
【0094】
酸化ストレス
分析を、Block et al.,“Potent regulation of microglia−derived oxidative stress and dopaminergic neuron survival: substance P vs. dynorphin,”The FASEB Journal.2006;20:251−258に記載される様に実施することができる。前記分析において、候補化合物を、それらの性能が、黒質(SN)におけるドーパミン系(DA)神経細胞の選択的な変性の阻害または上昇しないことを試験した。多くの証拠は、DA神経変性に寄与する主な炎症源および酸化ストレスとしてミクログリアを同定した。疾患、例えばパーキンソン病において、病状にて、ミクログリアが過度に活性化され、制御されて、DA神経毒性の開始またはDA細胞死の増幅のいずれかを、反応性ミクログロリアスを介して生じることが既知である。簡潔には、ミクログリアからの細胞外スーパーオキシド(O2−)産出は、2−(4−ロドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−二硫酸フェニル)−2H−テトラゾリウム、モノナトリウム塩、WST−1の還元を阻害することができるスーパーオキシドディスミューターゼ(SOD)によって決定される。本化合物はスーパーオキシドの最小の産出の原因になるかに基づいて選択される。
【0095】
神経保護分析:虚血性脳梗塞;脊髄損傷
細胞障害をかたどる数々の細胞に基づく分析をまた実施することができる。Widenfalk et al.,“Neurotrophic Factors and Receptors in the Immature and Adult Spinal Cord after Mechanical Injury or Kainic Acid,”The Journal of Neuroscience, May 15,2001,21(10):3457−3475は、本化合物を試験することで使用できる分析を記載する。彼らの研究において、損傷を、体重低下、横断面および興奮毒性カイニン酸輸送を含有する成体ラットで負わせ;新生ラットにおいて、部分的な横断面を実施した。成体脊髄における発現パターンの調節を、そのPNS(中枢神経系)および新生仔の骨髄のものと比較した。成体ラットの骨髄の機械的損傷後、NGFおよびGDNFのmRNAの上方調節が、損傷に隣接した髄膜細胞において発症していた。BDNFおよびp75のmRNAが、神経細胞において上昇していて、GDNFmRNAは、損傷に隣接した星状膠細胞において上昇していて、GFR−1および不完全なTrkBmRNAが変性した白質の星状膠細胞において上昇していた。従って、一つは、本化合物の一つの効果を、負傷後上方調節して示した因子の一つを上方調節で測定するか、または単純に負傷した細胞への化合物の効果を、Blesch A, Uy HS,Grill RJ,Cheng JG,Patterson PH,Tuszynski MH (1999)“Leukemia inhibitory factor augments neurotrophin expression and corticospinal axon growth after adult CNS injury”.J Neurosci,19:3556−3566の様に測定することができる。
【0096】
虚血性脳梗塞において、神経保護作用を提供する本化合物の分析を実施することができる。Gladstone et al.,“Toward wisdom from failure: lessons from neuroprotective stroke trials and new therapeutic directions,”Stroke,2002Aug;33(8):2123−36に記載される様に、前臨床試験における治療の効果の評価する好ましい分析が、梗塞面積に加えて、運動、感覚または認知症害の機能測定における利点の実証を必要とすべきである。適切な分析の状態を、Hara H,Friedlander RM,Gagliardini V,Ayata C,Fink K, Huang Z,Shimizu−Sasamata M,Yuan J,Moskowitz MA.“Inhibition of interleukin 1beta converting enzyme family proteases reduces ischemic and excitotoxic neuronal damage,”Proc Natl Acad Sci U S A,1997;94:2007-2012に記載する。本化合物を、神経保護剤として発作に使用したとき、血栓溶解剤と同時に投与することができることを予測した。
【0097】
生体内テスト
好ましくは、候補化合物が、実質的に抗菌活性を全く有さないことを検出して、細胞周期進行の阻害を有する(細胞内のDNA変化の実際の測定、または生化学事象を誘導する細胞周期の測定のいずれかによって)、(例えば、それは進行から次の有糸分裂期に連絡する細胞の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%を防止する)および/または上記細胞検出において良好な性能を有すると、それを動物モデルにおいて試験した。
【0098】
血液脳関門の侵入を、以下の実施例6に記載した分析を使用して評価することができ;従来技術において既知の他の方法がまた適している。
【0099】
神経損傷を、従来技術において既知の神経損傷の動物モデルの数々のいずれかを使用することによって試験することができる。例えば、Shen et al.,“The presenilin hypothesis of Alzheimer’s disease: Evidence for a loss−of−function pathogenic mechanism,”Proc. Nat. Acad. Sci.,January9,2007,vol.104,no.2,pp:403−409は、プレセニリン(PSs)が成体大脳皮質にて選択的に不活性化するコンディショナルノックアウトマウスを記載する。前記マウスは、シナプス欠失、神経細胞死、星細胞腫およびタウの過剰リン酸化を含有するAD神経病理学の特質によって特徴付けられ、加齢に関連して、進行した神経変性を発症する(Shen et al., ibidの図2を参照)。前記コンディショナル変異マウスにおいて、PS発現の不活性化は4週齢に起こり、神経変性は4ヶ月齢に明確になる。9ヶ月齢までに、皮質の神経細胞24%、皮質体積35%を消失する。神経変性は、記憶喪失、シナプス可塑性障害、NMDA受容体媒介シナプス反応の減少、およびcAMP応答因子(CRE)に依存した遺伝子発現(例えば、BDNF、c−fos)の減少が先に起こり、前記分子消失がその後の神経変性を媒介することを示唆する。ADのマウスモデルにおいて、コンディショナルPSノックアウトマウスは、ADの主な性質、すなわち神経変性および認知症を再現するAD遺伝子の遺伝子操作から誘導される唯一の変異マウスである。
【0100】
Van Der Puttenによる米国特許第6,504,080号明細書、1月7日2003年刊行、名称“Transgenic animal model for neurodegenerative disorders”は、神経変性障害、特にレヴィー病状と関連のある障害の治療用の可能性のある治療薬を試験する動物モデルを記載する。前記方法は、(マウス)Thy−1調節塩基配列の制御に基づき、ヒトα−シヌクレインA53Tおよびヒトα−シヌクレインの野生型トランス遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを使用する。
【0101】
処方
本処方の化合物、即ち本来塩基性である一般式A、3Aおよび3Bは、様々な無機および有機の酸と様々な塩を形成することができる。本来塩基性である一般式A、3Aおよび3Bのこれら化合物の薬学的に許容される酸添加塩の調製に使用することができる酸は、毒性の無い酸添加塩、即ち薬学的に許容される陰イオンを含有する塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、琥珀酸塩、マレイン酸塩、ゲンチアニン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼン・スルホン酸塩、p-トルエンスルホ酸塩、および、パモ酸[すなわち1,1'-メチレン-ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]塩類を形成するものである。前記塩は哺乳類への投与に薬学的に許容される必要があるが、一般式A、3Aおよび3Bの化合物を、薬学的に許容されない塩として反応混合物から最初に単離して、アルカリ性試薬と処理によって最終物を元の遊離塩基化合物に後者を簡単に変換し、その後後者の遊離塩基を薬学的に許容される塩に変換することが実施においてしばしば望ましい。本発明の塩基化合物の酸添加塩は、実質的に等量の選択される無機または有機の酸と塩基化合物を、水性溶媒媒体または適切な有機溶媒、例えばメタノールまたはエタノールの存在下において処理することによって容易に調製することができる。慎重に溶剤を蒸発させることによって、所望の固体塩を容易に得た。
【0102】
本来酸性である一般式A、3Aおよび3Bの化合物は、様々な塩基性塩を形成することができる。本来酸性である一般式A、3Aおよび3Bのそれら化合物の薬学的に許容される塩基性塩を調製するための試薬として使用することができる化学塩基は、非毒性の塩基性塩とこのような化合物を形成するものである。この様な非毒性の塩基性塩は、前記薬学的に許容される陽イオン、例えばアルカリ金属陽イオン(例えば、カリウムおよびナトリウム)、アルカリ土類金属陽イオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)、アンモニウムまたは水溶性のアミン添加塩、例えばN−メチルグルカミン−(メグルミニン)および低級アルカノアンモニウムおよび薬学的に許容な有機アミンの塩基性塩を含有するが、これらに限定されない。本来酸性である一般式A、3Aおよび3Bの化合物の薬学的に許容な塩基添加塩を、薬学的に許容な陽イオンと従来の方法によって形成することができる。従って、前記塩を一般式A、3Aおよび3Bの化合物と、好ましい薬学的に許容される陽イオンの水性溶液を処理し、生じた溶液を蒸発乾燥、好ましくは減圧下で蒸発させることによって容易に調製することができる。また、一般式A,3Aおよび3Bの化合物の低級アルキルアルコール溶液を、好ましい金属のアルコキシドと混合して、その後溶液を蒸発乾燥することができる。
【0103】
化合物の中性の形態を、塩基もしくは酸を、塩と接触させ、親化合物を従来の方法によって分離することによって再生することが好ましい。化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば極性溶媒における溶解度において様々な塩形態が異なるが、他の点では塩は本発明の目的のために化合物の親形態において同等である。
【0104】
投与
本化合物を、様々な方法によって送達することができる。いくつかの実施形態において、化合物を経口によって与える。他の実施形態において、化合物を経口処方によって与える。さらなる実施形態において、化合物は経口浸透性の薬物送達装置または経皮的にパッチによって送達する。経皮的な送達および処方は、Gale, et al.による米国特許4,904,475号明細書、2月27日1990年刊行、名称“Solubility parameter based drug delivery system and method for altering drug saturation concentration.”に記載されたように実施することができる。従って、本化合物は、経口、静脈、経皮的、吸入、鼻腔内および他の経路からの投与が、技術において既知である。
【0105】
一の実施形態において、本明細書に開示の化合物を、(例えば、一般式A、3Aまたは3B)に記載のような化合物に基づくミノサイクリンを1から600mg/日の投与する工程を含む処方計画における神経変性障害の治療として使用することができ、前記組成物は単独または薬学的に許容なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて、上述の経路のいずれかによって投与することができ、投与は単独または複数の服用物として実施することができる。この薬剤をミノサイクリン骨格から誘導することが好ましいが、テトラサイクリン系の化合物を含む全化合物の骨格から生成することができる。この薬剤は抗菌活性をほとんどまたは全く有さなく、血液脳関門を通過し、抗炎症性であるだろう。それは神経細胞周期の進行を阻害するであろう。
【0106】
本発明の新規な治療薬剤は、様々な異なった服用形態で有利に投与することができ、即ちそれらを様々な薬学的に許容な不活性キャリアと錠剤、カプセル、皮膚パッチ、ロズンジ、トローチ、ハードキャンディー、粉剤、スプレー、クリーム、塗剤、坐薬、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射可能な溶液、エリキシル剤、シロップ等の形態で組み合わせることができる。前記キャリアは、固形希釈剤もしくは充填剤、無菌の水性媒体および様々な非毒性の有機溶媒等を含有する。さらに、経口の医薬組成物は、適度に甘くしおよび/または風味をつけることや、または長時間(放出時間)にわたって生体利用効率を延長させるように製造することができる。一般的に、本発明の治療に効果的な化合物は、例えば約5.0重量%から約70重量%までの範囲の濃度レベルで、前記服用形態で形成する。
【0107】
経口投与に関しては、様々な賦形剤、例えば微結晶性セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ジカルシウムおよびグリシンを、様々な崩壊剤、例えば澱粉(好ましくは、とうもろこし、ジャガイモまたはタピオカ澱粉)、アルギン酸および特定の複合ケイ酸塩と、粒状性結合剤、例えばポリビニルピロリドン、蔗糖、ゼラチンおよびアカシアと共に使用することができる。さらに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクは、錠剤化の目的にしばしば非常に有効的である。類似の種類の固形組成物をまたゼラチンカプセルの充填剤として使用することができ;この点について、好ましい材料は、ラクトースまたは乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールを含有する。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤が経口投与に望ましいとき、活性原料を様々な甘味料または香味料、着色剤または染料、および所望であればエマルジョン剤および/または懸濁剤ならびに、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよび様々なそれらの組合せのような希釈剤と共に組み合わせることができる。化合物をまた酸添加塩、例えば第四級アンモニウム塩として処方することができる。この塩は一般的に化合物と無機または有機の酸と接触させることによって形成する。化合物を経口によって与えるとき、それらが投与服用量の約15%を超、より好ましくは約20%を超える生体利用効率を有することが一般的に好ましい。
【0108】
非経口投与(腹膜内、皮下、静脈、経皮、皮内または筋肉注射を含有)に関して、ゴマもしくはピーナッツオイルまたは水性のプロピレングリコールのいずれか内の本発明の療法化合物の溶液を使用することができる。水溶液を必要であれば適切に中和し(好ましくはpH8未満または3.5〜7.5)、液体希釈剤を最初に等張状態にすべきである。これらの水性溶液は、静脈注射の目的に適切である。油性溶液は、関節内、筋肉内および皮下の注射の目的に適切である。無菌状態に基づくこれら全ての溶液の調製は、当業者によく知られる通常の製薬技術によって容易に達成される。非経口の適応に関して、適切な調製の例は、溶液、好ましくは油性または水性の溶液並びに懸濁液、エマルジョンまたは坐薬を含むインプラントを含有する。医薬化合物は、無菌の形態において、複数または単独の服用形式、例えば流動体キャリアに分散されたもの、例えば注射可能薬物で一般的に使用される無菌の生理的食塩水または5%食塩ブドウ糖溶液等を処方することができる。好ましくは、化合物は高い親油性を有しているため、血液脳関門を通過することができる。
【0109】
臨床適用
多くの神経系疾患および網膜疾患の共通の性質は、アポトーシスとして、またはプログラム細胞死としても知られている細胞自殺工程の不適切な活性である工程を生じる神経変性である。神経細胞アポトーシスは、神経系の成長の本質的特長であり、成長時に生成される全神経細胞の半分が成熟前に死亡し、成熟した神経細胞の生存率はそれらの使用および電気的活性に依存しているためである。
【0110】
適切に制御されたアポトーシスが、正常な神経系の成長および機能の基本的特徴であるとともに、数々の研究がまた神経変性疾患、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷を含有する多種多様な神経病学的疾患にて、化学的または生物学的な毒素にさらした後に発生することを示した。網膜神経疾患は、またこれら様々な要因によって影響する。
【0111】
現在のデータは、神経変性疾患に関連する分子構造が、正常な神経細胞アポトーシスを成長時に制御するものと同様であることを示した。正常および病態の両方におけるアポトーシスの調節は、カスパーゼ、Bcl−2タンパク質、アポトーシス誘発因子、エンドヌクレアーゼG、p38および他の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ、JNK、サイクリン依存性キナーゼ、p53およびその関連タンパク質、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびに誘導性の酸化窒素シンターゼを含有する多数の分子によって調節される。
【0112】
特定される多くのプロアポトーシス分子があると同時に、特定される数々の抗アポトーシス分子およびシグナル伝達経路、即ち神経細胞生存を促進する分子および経路があった。神経細胞のアポトーシスの阻害、神経細胞の生存の促進は、数々の内因性の神経細胞タンパク質によるものである。神経細胞のアポトーシスは、また神経細胞の電気的活性によって阻害される。
【0113】
PI−3K/Akt経路は、これらの生存促進性経路において最も研究されているが、Raf−MEK−ERK経路もまた研究され、重要な神経細胞生存経路として特徴付けられている。神経成長因子、インスリン様成長因子−1、脳由来神経栄養因子の生存促進性効果は、PI−3K/AKT経路の活性に依存していることを中枢および抹消のニューロンの両方で示した。PI−3K/Aktの生存促進経路は、前記および他の分子によって活性化すると、Bcl−2およびJNK等を含有する生存促進性タンパク質を直接標的化および不活性化するとともに、他の生存促進タンパク質を他の間接的な方法によって不活性化する。PI−3K/Aktの様に、Raf−MEK−ERK経路もまた、神経細胞生存率を生存促進因子の直接的な不活性化を含有する複数のメカニズムによって促進する。
【0114】
従って、多くの神経系疾患および網膜疾患に関与する最終の共通経路が存在し、前記最終の共通経路は、生存促進性の誘導によって減衰や、排除することができる多くの証拠が存在する。さらに前記最終の共通経路が最初のニューロン障害に関係なく、即ち生存促進経路が開始するかいなかに関係ない多くの証拠が存在し、低酸素または無酸素(虚血性脳卒中、塞栓、脈管痴呆、冠動脈バイパスグラフト認知低下)、機械的ストレス(外傷性脳損傷、脊髄損傷)、異常なタンパク質発現(ハンチントン病)、自己免疫(多発性硬化症)、酸化ストレス(アルツハイマー病)、眼圧(緑内障)、グルコース毒性およびインスリン欠乏等のためである。
【0115】
本発明の化合物は、神経保護作用および網膜保護作用に、とても広範囲の疾患において、生存促進経路の活性化、およびアポトーシス促進性経路の減弱または排除によって影響を及ぼすことが知られている分子と構造的に関連する。この分子のクラスをYong et al “The Promise of Minocycline in Neurology” in the journal Lancet Neur. issue #204, Vol. 3, pp. 764−51の一部に要約し、虚血性および出血性の脳卒中、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症脊髄粉砕損傷ならびに筋萎縮性側索硬化症の、生体外および動物モデルの両方において神経作用があることを示す。臨床研究からのデータは、前記クラスの分子がアルツハイマー病および急性脳卒中において保護作用があることを、刊行物Loeb et alによる“A Randomized Controlled trial of Doxycycline and Rifampin for Patient’s with Alzheimer’s Disease”;The American Geriatrics Soc.,2004;2:381−387およびLampl et alによる“Minocycline treatment in acute stroke: an open−label evaluator−blinded study”American Academy of Neurology;2007;69;pp.1404−1410に要約して示した。Chong et al(Activating Akt and the Brain’s Resources to Drive Cellular Survival and Prevent Inflammatory Injury;Histol Histopathol.,2005;20(1)pp.299−315)に記載するように、分子的研究は、神経保護作用分子の前記クラスが、カスパーゼ、p38MAPキナーゼおよび誘導型一酸化窒素シンターゼの産出および生存促進効果を他の分子の間で阻害し、強い生存促進効果をPI−38/akt経路の誘導によって促進することを示す。
【0116】
前記分子が、正常および病態の両方において作用することが知られるメカニズムによって、疾患のこの様な広範囲なアレイで効果的なことが、神経学で現れる二つの基本的な考えを支持し、即ちa)最終の共通生存促進経路が、神経病理学で生じる幅広い疾患、および神経細胞の細胞周期と密接な関係がある神経変性で存在し、b)これらの疾患に対する新規治療方法は、病理傷害の開始に関係なく、神経細胞の細胞周期の阻害による前記病理学的作用に部分的に対処する生存促進神経保護作用経路を活性化することによって達成することができる。
【0117】
本化合物が、既知の臨床研究技術から生体内の有効性をヒトにおいて有することを決定することができる。臨床研究を生体指標、例えばapoE4欠損アルツハイマー患者に限定する試験と組み合わせることができる。典型的な臨床試験設計を、clinical trials.govに概説した。例えば、軽度から中度のアルツハイマー病の患者を伴う患者におけるbapineuzumabの現在の研究は、抗体治療(βアミロイドに対する抗体)と流通している小分子との間の違いを十分に考慮して、本発明に従った化合物の研究で修正することができる。本化合物がβアミロイドの形成を防止するであろうということが期待されている。
【実施例】
【0118】
本発明の化合物を、有機合成の当業者に知られた数々の方法によって調製することができる。本発明の化合物を、以下に記載の方法を使用して、合成有機化学の従来技術において知られる合成方法とともに、または当業者に認識されるようなそれの変形によって合成することができる。好ましい方法は、以下に記載されたものを含むが、これに限定されない。この反応を、実施される変換で使用および適切な試薬ならびに材料に、適切な溶媒において実施する。
【0119】
実施例1:化合物38の合成
【化12】

9−アミノミノサイクリンHCl(37、509mg、1mmol、1.0eq)を混合物CHCl(12mL、安定したアミレン)で溶解し、生じた溶液をDIEA(0.524mL、3.0mmol、3.0eq)で処理し、氷浴内で冷却した。ブロモアセチルクロリド(0.91mL、1.1mol、1.1eq)を一滴ずつ加え、生じた反応混合物を4時間、室温で撹拌した。LC−MS分析は、多少の不純物を有する主要な生産物として化合物2を示した。反応混合物をCHCl(50mL)で希釈し、HO(2×50mL)で洗浄し、無水NaSOによって乾燥した。CHClおよび水相の両方のLC−MS分析は、化合物38への主な変換を示した。CHCl層を濃縮し、生じた残留物を4mLのDMSO内に溶解した。HPLCによる粗生成物の精製は、標的生成物72mgを黄色固体(TFA塩)として提供した。生成物をそのHCL塩に、1MHCl/ジオキサンに溶解して変換した、次に凍結乾燥して、HCl塩として38を提供する。LC/MS分析m/z513.2[M+H]+。
【0120】
実施例2:化合物3bの合成
【化13】

100mL丸底フラスコに9−アミノサイクリンHCl(37.2g、254nmでHPLCによって80%純粋)、次にジクロロメタン(40mL)を加えた。生じた懸濁液をDMSO4mL内のCDI(500mg、1.0eq)で1時間処理した。生じた暗褐色反応混合物のLC−MS分析は、3bの予想質量により出発原料および主な生成物の消失を示した。反応混合物を減圧乾燥して、蒸発乾固し、それを4mLDMSOに溶解し、その後逆相予備HPLC(0.1%TFAバッファー/アセトニトリル、60分間以上50mL/分)によって精製した茶色がかった/黒いオイルを得た。3bを含有する得られた混合物の留分を、凍結乾燥して、逆相HPLC(0.1%ギ酸バッファー、60分間以上50mL/分によって再度クロマトグラフィーを行った。精製した留分を組み合わせて、凍結乾燥した後、280mgの精製3b>95%をギ酸塩として得た。その結果として、成分を1M HClジオキサン5mLに溶解し、その後凍結乾燥して、白でない固体(230g)として3bHCl塩を生じた。LC/MS分析m/z499.1[M+H]
【0121】
実施例3:化合物3aの合成
【化14】

50mL丸底フラスコに9−アミノサイクリンHCl(37,230mg)を加え、次にMeOH(20mL)およびオルトギ酸トリエチル(80eq)を添加した。生じた反応混合物を50℃まで加熱した。1時間後、LC−MS分析は出発原料を完全に消費を示し、主要なピークが生成物の予想質量に一致した。溶媒を減圧で乾燥させ、DMSO3mLに溶解し、逆相HPLC(0.1%TFAバッファー/アセトニトリル、50mL/分60分間以上)によって精製した黄色いオイルを生じた。精製した留分を組み合わせて凍結乾燥して、3aのTFA塩を白でない固体を生じた。その物質を1M HCl/ジオキサン5mLに溶解し凍結乾燥して、その後白でない固体(76mg)として3aのHCl塩を生じた。LC/MS分析m/z482.1[M+H]
【0122】
実施例4:抗菌感受性の試験
抗菌感受性(阻害ゾーン)試験を、外部の分析研究所によって実施した。抗菌活性を評価するKirby−Bauerまたはディスク拡散法は、確立された文献からの方法であり、標準のプロトコールにいくつかの修正をして使用した:1)黄色ブドウ球菌および大腸菌をミューラーヒントン培養液内で成長させ、30〜35℃で18〜24時間培養し、2)試料を注射用蒸留水または精製水で希釈して、30μg/mLの濃度を達成し、3倍で播種し、および3)テストプレートは、ミューラーヒントン寒天を使用して調製し、30〜35℃で約24時間インキュベートしてから使用した。
【0123】
テスト試料の周りの阻害ゾーンの直径(存在する場合)を、目盛りつきのキャリパーを使用して測定した。表1に示すように、化合物3bおよび38は、抗菌活性をこの分析にて示した(即ち、実質的に抗菌性がない)。3aは、多少の活性を黄色ブドウ球菌に対して有する(平均的ゾーン24.45mm)。
【0124】
【表1】

【0125】
実施例5:ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害の分析
本発明の典型的な化合物は、PARP分析を使用して細胞周期進行で阻害活性を分析した。この分析を、通常の化学発光法PARP阻害プロトコールを使用する外部の分析研究所によって行った。本分析において利用した通常のコントロールに加えて、ミノサイクリン30μgの通常溶液を、テスト化合物で内在陽性のコントロールとして使用し、コントロールサンプルは3倍で播種した。
【0126】
図3に示すように、化合物3aおよび38は、ミノサイクリンと同様にPARP阻害剤活性を示した。図3は、ミノサイクリン、3b(NSN1885)および38(NSN19203)に対して、10,100および1000μMの阻害剤濃度で、PARP阻害のデータを示す。データを、TrevigenからのHT Universal Chemiliuminescent PARP AssayキットとHistone−coated Strip Wellsを使用して得た。
【0127】
実施例6:静脈の血液脳関門(BBB)透過性分析
プロトコール
マウスにおける化合物38および3bの静脈血液脳関門(BBB)透過性分析を、外部の分析研究所によって通常のプロトコールを使用して評価した。CD−1マウスを38または3b(1mg/kg、n=3)で尾静脈注射して、血漿および脳のサンプルを30、60、180分の時間間隔で収集した。脳(ng/g組織)、血漿における38および3bの濃度、および各々の時点での脳の濃度の比率を、HPLC−MS/MS分析に従うサンプルから、テスト化合物のアセトニトリル沈殿によって決定した。
【0128】
テスト化合物で動物を処理後、血漿試料を心穿刺によって収集した。血液アリコート(300〜400μL)をリチウムヘパリンコートされたチューブで収集し、その後氷上で保持し、2,500×g、15分間、4℃、収集の1時間以内に遠心した。その後血漿を採取し、さらに処理するまで−20℃で氷冷して保持した。
【0129】
血液のサンプリング後すぐに、マウスの首を切り、全脳を素早く取り除き、冷たい生理食塩水(0.9%NaCL、g/mL)で濯ぎ、表面脈管構造を切り、乾燥ガーゼでふき取ったものを秤量し、収集の1時間以内に更に処理するまで氷上にて保持した。それぞれの脳を、冷たいリン酸緩衝生理食塩水1.5mL、pH7.4、10秒間氷上で、POWERGEN125ホモジナイザーを使用して均一化にした。その後それぞれの試料を、さらなる処理を行うまで−20℃で保存した。
【0130】
上記のように収集した脳均等質を、等量の冷却した26%(g/mL)中性デキストラン(Sigma、カタログ番号D−1390から、平均MW65,000〜85,000)溶液を加えて処理し、最終デキストラン濃度13%を得た。均等質を、5400×g、15分間、4℃で遠心した。その後上清を、アセトニトリル沈殿を使用して処理し、HPLC−MSによって分析した。脳の較正曲線を、特定の濃度でのテスト化合物を伴う対象動物から内標準法の薬物がない脳均等質によって生成した。内標準法の脳均等質試料を、同じ方法を使用して未知のものとともに処理した。処理した脳試料を、LC−MS/MS分析まで氷結(−20℃)にて保管した。
【0131】
上記のように収集した血漿試料を、上記の脳均等質の上清として処理して、分析した。
【0132】
処理後、全サンプルを、HPLC−MS/MS分析を使用して分析した。HPLC分析は、Synergi Max−RP 80 HPLCカラム(2×50mm、4μm、Phenomenex Part No.00B−4337−B0)を用い、第一の移動層は13.3mMギ酸アンモニウム/水中の6.7mMギ酸、第二の移動層は6mMギ酸アンモニウム/水中の3mMギ酸/CHCN(1/9、v/v)を使用した。MS/MS分析を、選択された反応モニタリング、陽イオンモード、毛細血管温度325℃および毛細血管電圧4.0kVを使用して、TSQ QUANTUMで実施した。ピーク面積を記録し、未知の脳サンプルにおいてテスト化合物の濃度を、それぞれの較正曲線を使用して決定した。
【0133】
結果
脳における30、60および180分後の化合物3bの濃度は、6.7ng/g(SE0.2)、5.8ng/g(SE0.5)および“計量の限界未満”に一致する。30、60および180分での血漿濃度は、97ng/mL(SE10)、27ng/mL(SE2)および4ng/mL(SE1)に一致する。30、60および180分後の、3bの脳と血漿の濃度の算出した比率は、0.07(SE0.01)、022(SE=0.02)およびNC(算出不可能)と一致する。
【0134】
従って、化合物3bが許容可能な血液脳関門の透過を生体内にて示すことを明らかにした。
【0135】
実施例7:安定性試験
本発明の化合物は、溶液および/または粉末の形態において安定である。安定性を種々の溶液(例えば、脱イオン水、KHPOでpH7.4に調整された脱イオン水、NaOHでpH9に調整された脱イオン水、食塩水またはPBS)において試験した。化合物を種々の時間および種々の温度にて分解に関して試験した。一例として、化合物3bが脱イオン水、食塩水およびPBSにおいて、pH約3から7.5で安定性があることを見出した。
【0136】
結論
上記明細書は、発明を例証および例示することを意味し、発明の範囲を制限するとして解釈されるべきではなく、添付した請求項の厳密および均等の範囲によって規定される。本明細書に記載のあらゆる特許文献または刊行物は、特許文献または刊行物がその日付と関連する当業者のレベルの指標であり、正確に記載できないがその分野の研究者によって理解されるであろう発明の詳細を伝えることを意図する。前記特許文献または刊行物を、それぞれを詳細および個々に引用するような同じ範囲を、必要に応じて引用した方法または材料を記載し、可能にするような目的で本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に抗菌性がない化合物の治療有効量を含有する神経保護作用組成物において、前記化合物は下記の一般式である神経保護作用組成物:
【化1】

(式中、(a)R、RおよびRは、H、C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、C1−10アルキニル基、C5−10アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、-CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-および-S-からなる群からそれぞれ単独に選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在するとき、YおよびY’は、-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは単結合または二重結合であることができ;
(e)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。)。
【請求項2】
、RおよびRは、さらにH、OHおよびC1−10アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル基は0−3のアミン基またはヒドロキシル基と置換される、請求項1に記載の神経保護作用組成物。
【請求項3】
Xはアミノ、YはC=O、ZはOである、請求項1に記載の神経保護作用組成物。
【請求項4】
はさらにHおよびC1−10アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の神経保護作用組成物。
【請求項5】
-X〜Y-Y’〜Z-は、-N=CH-O-、-NH-C(=O)-O-および-NH-C(=O)-CH-O-からなる群から選択される一般式によって規定される、請求項1に記載の神経保護作用組成物。
【請求項6】
は-NR1a1aである、請求項5に記載の神経保護作用組成物。
【請求項7】
は-NR1a1aである、請求項5に記載の神経保護作用組成物。
【請求項8】
化合物はRでエピマーである、請求項6に記載の神経保護作用組成物。
【請求項9】
はH、OHおよびC1−10アルキル基である、請求項8に記載の神経保護作用組成物。
【請求項10】
はH、OHおよびC1−10アルキル基である、請求項5に記載の神経保護作用組成物。
【請求項11】
は-NR1a1aである、請求項2に記載の神経保護作用組成物。
【請求項12】
は-N-(CHである、請求項11に記載の神経保護作用組成物。
【請求項13】
Xは-N=、Yは-CH-およびZは-O-である、請求項11に記載の神経保護作用組成物。
【請求項14】
Xは-NH-、Yは-C(=O)-およびZは-O-である、請求項11に記載の神経保護作用組成物。
【請求項15】
Xは-NH-、Y-Y’は-C(=O)-CHおよびZは-O-である、請求項11に記載の神経保護作用組成物。
【請求項16】
およびRは-N(CH-およびRはHである、請求項1に記載の神経保護作用組成物。
【請求項17】
神経変性疾患を改善する方法において、それを必要とする対象に、一般式Aに記載の化合物の治療有効量を含有する組成物を投与する工程を含む方法:
【化2】

(式中、(a)R、RおよびRは、H、C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、C1−10アルキニル基、C5−10アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、-CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-および-S-からなる群からそれぞれ単独に選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在するとき、YおよびY’は、-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは、単結合または二重結合であることができ;そして
(e)R1aはHおよびC1−10アルキル基からなる群から独立して選択される。)。
【請求項18】
神経変性疾患を改善する方法において、それを必要とする対象に、請求項17に記載の化合物の治療有効量を含有する組成物を投与する工程を含有し、R、RおよびRは、さらにH、OHおよびC1−10アルキル基からなる群から選択され、前記アルキル基は0−3のアミン基またはヒドロキシル基と置換される方法。
【請求項19】
Xは-NH-、Y-Y’は-C(=O)-CH-およびZは-O-である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
およびRは-N-(CHおよびRはHである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
神経変性疾患は、脳の疾患である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
神経変性疾患は、アルツハイマー病である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アセチルサルチル酸、初期の相細胞周期の進行を阻害するあらゆるサリチル酸塩、シロリムス、初期の細胞周期の進行を阻害するあらゆるシロリムス誘導体、フラボピリドール、シクロピロックス、パウロン、インデイルビン、ファスカプリシン、オロモウシン、ロスコビチン、アラグステロールA、バルプロエート、N(3−クロロ7−インドリル)−1,4−ベンゼンスルホンアミド、ファルネシル転移酵素抑制剤、例えばR115777、SCH66336およびBMS−214662、ならびにナトリウム酪酸塩からなる群から選択される第二の薬剤の投与をさらに含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
老年性記憶障害(AAMI)、無症候性脳梗塞(SCI)、軽度認知障害(MCI),アルツハイマー病(AD)、脳血管障害(CVD)および関連する変性の神経学的状態を治療または予防する方法において、
(i)以下に規定するような、一般式Aに規定する化合物の治療有効量と、
(ii)細胞周期の進行を、細胞周期の一つ以上のいずれかの期間にて阻害することができる少なくとも一つの第二の薬剤との投与を含む方法:
【化3】

(式中、(a)R、RおよびRは、H、C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、C1−10アルキニル、C5−10アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、-CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-および-S-からなる群からそれぞれ単独に選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在するとき、YおよびY’は-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは単結合または二重結合であることができ;
(e)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。)。
【請求項25】
以下に規定する一般式Aに記載の化合物と、活性化したPARP−1酵素との接触を含有するPARP−1毒性を阻害する方法:
【化4】

(式中、(a)R、RおよびRは、H、C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、C1−10アルキニル基、C5−10アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a、-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(b)X、YおよびZは、-CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-および-S-からなる群からそれぞれ独立して選択され;
(c)Y’は任意に存在し、Y’が存在するとき、YおよびY’は-C(R1a1a)C(R1a1a)--C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し;
(d)結合X-Y、Y-Y’およびY-Zは単結合または二重結合であることができ;そして
(e)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。)。
【請求項26】
神経保護剤の識別方法において、
(a)以下の一般式に記載のテトラサイクリン化合物の合成工程と、
【化5】

(式中、(i)R、RおよびRはH、C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、C1−10アルキニル、C5−10−アルキル環、C5−10アリール環、-C(=O)R1a-NR1a1a、-SR1a1a、OHおよびOR1a1aからなる群から選択され;
(ii)X、YおよびZはそれぞれ単独に、-CR1a1a-、-CR1a(OH)-、-C(=O)-、-O-、-NR1a-および-S-からなる群から選択され;
(iii)Y’は任意に存在し、Y’が存在する場合、YおよびY’は-C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)C(R1a1a)-、-C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)N(R1a)-、-C(R1a1a)S-、-C(R1a1a)C(=O)C(R1a1a)-、-C(R1a1a)C(R1a1a)O-、-C(R1a1a)C(R1a1a)NR1a-および-C(R1a1a)C(R1a1a)S-からなる群から選択される構造を共に形成し、
(iv)結合X-Y、Y-Y’、Y-Zは単結合または二重結合であることができ、
(v)R1aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択される。)、
(b)前記化合物の抗菌活性に関する試験工程と、
(c)前記化合物の細胞周期阻害に関する試験工程と、
(d)前記化合物が実質的に抗菌活性を示さず、細胞周期阻害活性を示す場合、神経損傷の動物モデルにおける前記化合物の試験工程と
を含有する方法。
【請求項27】
一般式に記載の非抗菌性化合物、その塩およびエステル:
【化6】

Yは低級アルキレン基および低級ヘテロアルキレン基からなる群から選択され;
aはHおよびC1−10アルキルからなる群から独立して選択され;
NおよびYの間の結合は、単結合または二重結合であることができる。
【請求項28】
薬学的に許容される賦形剤である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
請求項27に記載の化合物の経口処方を含有する組成物。
【請求項30】
神経変性疾患を改善する方法において、それを必要とする対象に、一般式Aに記載の化合物の治療有効量を含有する組成物を投与する工程を含む方法:
【化7】

Xは低級アルキレン基および低級ヘテロアルキレン基からなる群から独立して選択され、RaはH、C1−10アルキル基、分岐したC1−10アルキル基および分岐したC1−10アルキル基からなる群から独立して選択され、NおよびXの間の結合は単結合または二重結合であることができる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527708(P2011−527708A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517664(P2011−517664)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050296
【国際公開番号】WO2010/006292
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511008285)
【氏名又は名称原語表記】NEUMEDICS
【Fターム(参考)】