説明

減速比自動切換装置

【課題】往路の変位終端で高トルクを発生させた後、減速比を自動的に切り換えて復路に沿ってアクチュエータを高速で変位させることにある。
【解決手段】太陽歯車16、遊星歯車18及び内歯車20にはすば歯車を用いることにより、予め設定された所定トルクを超える負荷が内歯車20に付与された場合に、内歯車20が、前記太陽歯車16と異なる方向に回転しながら、入力軸方向又は出力軸方向に移動し、減速比を自動的に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定トルクを越える負荷が付与された際、遊星歯車機構を用いて出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えることが可能な減速比自動切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、減速比切換機構が適用されるものとして、建設機械等の機械システムがある。この機械システムでは、リンク機構を駆動する伸縮作動系のアクチュエータとして電動シリンダが用いられている。
【0003】
この種の電動シリンダは、ケーシング内において、回転軸が電動モータの入力部に連結され、この回転軸内にねじ軸が配置されている。ねじ軸は、ケーシング内に回転自在に支持されたナット部材に螺合し、回転軸とナット部材の間に減速比の異なる2組の遊星歯車機構が設けられている。各遊星歯車機構は、太陽歯車と、この各太陽歯車と筒状ケーシングの内側に設けた内歯車に噛み合って遊星運動する遊星歯車とからなり、それぞれの各太陽歯車は係合方向が正転方向と逆転方向に異なる一方向クラッチを介して回転軸に連結されている。そして、各遊星歯車機構の遊星歯車を回転自在に支持している遊星支持軸はナット部材に結合されている。
【0004】
この電動シリンダでは、電動モータが正転方向に回転駆動すると、回転軸も正転方向に回転し、減速比が小さい遊星歯車機構を介してナット部材が正転してねじ軸が伸長動される。一方、電動モータが逆転方向に回転駆動すると、回転軸も逆転方向に回転し、減速比が大きい遊星歯車機構を介してナット部材が逆転してねじ軸が短縮動される(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−184982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の電動シリンダでは、ねじ軸が伸長動作、短縮動作を行うために、2種類の減速比の異なる遊星歯車機構を用いる必要があり、部品点数が増え、電動シリンダ全体が大きくなってしまうという問題がある。また、上述の電動シリンダの遊星歯車機構では、電動シリンダにかかる負荷トルクの大小にかかわらず、伸長動作は低速、大推力であり、一方、短縮動作は、高速、小推力である。従って、伸長動作については、電動シリンダにかかる負荷トルクが小さい場合であっても、ねじ軸の移動速度を高速にすることができないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、アクチュエータを構成する変位部材の動作に対応して自動的に減速比を切り換え、これによって、トルクの制御、高速なトルクの伝達をすることができる減速比自動切換装置を提供することを目的とする。また、部品点数が減少し、装置全体を小さくすることができる減速比自動切換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、はすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構と、前記内歯車と前記遊星歯車との間でスラスト力を発生させる抵抗手段と、出力負荷の増減に従って前記内歯車を前記スラスト力により平行移動させ、前記内歯車の回転運動を制動させる制動手段とを備えることを特徴とする減速比自動切換装置によって達成される(請求項1に記載の発明)。
【0009】
本発明によれば、太陽歯車、遊星歯車及び内歯車にはすば歯車を用い、キャリア部に設けられたインナ部と内歯車との間に抵抗手段を設けることにより、予め設定されたトルクを超える負荷がキャリアに付与された場合に、内歯車とキャリアとの相対的回転速度差に基づいて内歯車が入力軸方向又は出力軸方向に平行移動し、キャリアに連結された出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えることができる。
【0010】
前記抵抗手段として、粘性抵抗体を用いることにより、予め設定されたトルクを超える負荷がキャリアに付与された場合に、減速比の切り換えを効果的に行うことができ、かつ効率的にトルクを伝達することができる(請求項2に記載の発明)。さらに、前記粘性抵抗体は、スラスト力を得るために前記内歯車に内挿された前記キャリアのインナ部及び前記遊星歯車と前記内歯車との間に設けられ、より効率的にトルクを伝達することができる(請求項3に記載の発明)。
【0011】
前記制動手段は、内歯車とキャリアとの相対的回転速度差に基づいて、粘性抵抗手段の粘性抵抗が変化することにより、前記内歯車を入力軸方向又は出力軸方向に平行移動させ、前記内歯車の回転運動を確実に制動させる(請求項4に記載の発明)。
【0012】
前記制動手段は、さらに遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と、前記内歯車の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段を有する(請求項5に記載の発明)。
【0013】
前記制動手段は、遊星歯車機構を収装するハウジングの一方に設けられたロック部と前記内歯車の一方の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする第1内歯車ロック手段と、前記ハウジングの他方に設けられたロック部と前記内歯車の他方の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする第2内歯車ロック手段とを有し、前記内歯車が入力軸方向に平行移動した際、前記第1内歯車ロック手段により前記内歯車の回転運動を制動させ、前記内歯車が出力軸方向に平行移動した際、前記第2内歯車ロック手段により前記内歯車の回転運動を制動させる(請求項6に記載の発明)。
【0014】
さらに、ハウジングにロック部を設け、内歯車の周縁部に第1内歯車ロック手段及び第2内歯車ロック手段を設け、内歯車が入力軸方向に平行移動した際は、第1内歯車ロック手段により内歯車の回転運動を制動させ、内歯車が出力軸方向に平行移動した際は、第2内歯車ロック手段により内歯車の回転運動を制動させることにより、減速比の切り換えを行うことができる。
【0015】
前記制動手段は、前記内歯車の周縁部に設けられた内歯車クラッチと、前記内歯車クラッチと噛合するために設けられたロック板が噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段を有する(請求項7に記載の発明)。また、前記ロック板は、前記ハウジングに固着されている(請求項8に記載の発明)。
【0016】
また、前記ハウジングと前記ロック板の間にはダンパ機構が設けられ、内歯車クラッチとロック板が噛合した後に、前記ダンパ機構により、前記内歯車の回転を停止させることが可能となる(請求項9に記載の発明)。このダンパ機構によって、内歯車とロック板の接触によって生じる摩耗や発生する音を低減することができる。
【0017】
前記キャリアには係止手段が設けられ、前記内歯車には前記係止手段と係合するための溝が設けられ、前記アクチュエータから予め設定されたトルク以下の負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与されている場合には、前記係止手段が前記溝に係合して、前記内歯車の前記入力軸方向又は前記出力軸方向への移動を防ぐことができる(請求項10に記載の発明)。前記係止手段を設けることによって、前記内歯車の前記入力軸方向又は前記出力軸方向への移動が阻止され、低負荷時における前記内歯車クラッチと前記ロック板との当接が回避されて当接音の発生を防止することができる。
【0018】
前記ロック板と前記内歯車の機械的強度を等しくするためにそれぞれ同一材料で形成することにより、ロック板と内歯車の係合による内歯車ロック受部やロック部の摩耗を防ぐことができる(請求項11に記載の発明)。
【0019】
また、本発明によれば、前記遊星歯車を軸支するピンと前記遊星歯車の間に粘性抵抗を設けることにより減速比の切り替えを効果的に行うことができる(請求項12に記載の発明)。
【0020】
さらに、前記粘性抵抗体が前記キャリアから流出するのを防ぐため、例えば、キャリアリング等からなる第1シール手段が前記キャリアに設けられている(請求項13に記載の発明)。さらにまた、前記太陽歯車と前記遊星歯車との間に設けられた粘性抵抗体が前記入力軸からから流出するのを防ぐため、例えば、入力軸リング等からなる第2シール手段が前記入力軸に設けられている(請求項13に記載の発明)。
【0021】
また、本発明によれば、前記遊星歯車を軸支するピンと前記遊星歯車の間に粘性抵抗を設けることにより減速比の切り替えを効果的に行うことができる(請求項14に記載の発明)。
【0022】
さらに、本発明の前記目的は、回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、はすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って前記出力軸と一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構を備え、前記内歯車は入力軸方向又は出力軸方向に平行移動可能であり、前記内歯車の周縁部には、遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と噛合するための内歯車クラッチが設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置によって達成される(請求項15に記載の発明)。
【0023】
この場合、前記減速比自動切換装置は、さらに、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記内歯車が前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段とを有すると好適である(請求項16に記載の発明)。
【0024】
本発明によれば、アクチュエータの変位部材が往路に沿って変位する際、太陽歯車と内歯車は、同一の回転方向に回転した状態にある。そこで、アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が、出力軸を介してキャリアに付与された際、太陽歯車と同一の回転方向に回転している内歯車が太陽歯車と異なる方向に回転することにより、内歯車の周縁部に設けられた内歯車クラッチとハウジングに設けられたロック部が噛合し、内歯車の回転が停止されてロックされる。内歯車がロック状態となることにより、出力軸を介して伝達される減速比が自動的に切り換わり、例えば、往路の変位終端位置においてアクチュエータの変位部材が高トルク、低速で変位する。一方、アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の電流の極性を逆転させ、太陽歯車を反転させて内歯車のロック状態を解除する。従って、出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比が自動的に切り換わり、アクチュエータの変位部材は、低トルク、高速で往路に沿って変位させることができる。
【0025】
ここで、前記減速比自動切換装置は、さらに、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記内歯車が前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、前記出力軸を介して前記内歯車に付与されたトルクが、予め設定されたトルク以下になった際、回転駆動源の駆動作用下に、前記内歯車が前記移動方向と反対方向に平行移動し、前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段とを有するとよい(請求項17に記載の発明)。
【0026】
前記の構成を採用することにより、予め設定されたトルクを超える負荷がキャリアに付与された後に、キャリアに付与された負荷が予め設定されたトルク以下になった場合に減速比を自動に切り換えることができる。
【0027】
前記内歯車の両周縁部に周方向に沿って延在し、回転軸方向に向かって突出する複数の突部である前記内歯車クラッチを設け、複数の前記内歯車クラッチに対応して逆向きに突出する複数の突部である前記ロック部を設けることにより、回転駆動源の回転駆動が時計方向又は反時計方向のいずれの方向に駆動しても、減速比を自動に切り換えることができる(請求項18に記載の発明)。
【0028】
前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動した際に、環状体と前記内歯車とによって挟持される弾性部材が前記内歯車の外周面に設けられている(請求項19に記載の発明)。
【0029】
前記内歯車に弾性部材を設けることにより、内歯車クラッチとロック部のロック状態の解除を速やかに行うことができる。
【0030】
本発明の前記目的は、また、回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、相互に噛合するはすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って前記出力軸と一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構を備え、前記遊星歯車と前記キャリアは入力軸方向又は出力軸方向に一体的に平行移動可能であり、前記キャリアの周縁部には、遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と噛合するためのキャリアクラッチが設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置によって達成される(請求項20に記載の発明)。
【0031】
この場合、前記減速比自動切換装置は、さらに、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記遊星歯車及び前記キャリアが前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記キャリアクラッチが噛合することにより前記キャリアの回転を停止させてロックするキャリアロック手段と、前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記キャリアのロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えるキャリアロック解除手段とを有すること好適である(請求項21に記載の発明)。
【0032】
本発明によれば、アクチュエータの変位部材が往路に沿って変位し、トルクを越える負荷が出力軸を介して内歯車に付与された際、太陽歯車と同一の回転方向に回転していたキャリアが太陽歯車と異なる方向に回転することにより、キャリアクラッチとロック部が噛合し、キャリアの回転が停止されてロックされる。キャリアがロック状態となることより、出力軸を介して伝達される減速比が自動的に切り換わり、例えば、往路の変位終端位置においてアクチュエータの変位部材が高トルク、低速で変位する。一方、アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の電流の極性を逆転させ、太陽歯車を反転させてキャリアのロック状態を解除する。従って、出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比が自動的に切り換わり、アクチュエータの変位部材は、低トルク、高速で往路に沿って変位させることができる。
【0033】
ここで、前記減速比自動切換装置は、さらに、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記遊星歯車及び前記キャリアが前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記キャリアクラッチが噛合することにより前記キャリアの回転を停止させてロックするキャリアロック手段と、前記出力軸を介して前記内歯車に付与されたトルクが、予め設定されたトルク以下になった際、回転駆動源の駆動作用下に、前記前記遊星歯車及び前記キャリアが前記移動方向と反対方向に平行移動し、前記キャリアのロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段とを有するとよい(請求項22に記載の発明)。前記の構成を採用することにより、予め設定されたトルクを超える負荷がキャリアに付与された後に、内歯車に付与された負荷が予め設定されたトルク以下になった場合に減速比を自動に切り換えることができる。
【0034】
また、前記内歯車の両周縁部に周方向に沿って延在し、回転軸方向に向かって突出する複数の突部である前記キャリアクラッチを設け、複数の前記内歯車クラッチに対応して逆向きに突出する複数の突部である前記ロック部を設けることにより、回転駆動源の回転駆動が時計方向又は反時計方向のいずれの方向に駆動しても、減速比を自動に切り換えることができる(請求項23に記載の発明)。
【0035】
しかも、本発明によれば、前記遊星歯車及び前記キャリアが入力軸方向又は出力軸方向に平行移動した場合に、前記キャリアに設けられている弾性部材が前記ハウジングと前記キャリアによって挟持される(請求項24に記載の発明)。
【0036】
このようにキャリアに弾性部材を設けることにより、キャリアクラッチとロック部のロック状態の解除を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、アクチュエータの変位部材の動作に対応して自動的に減速比を切り換え、これによって、トルクの制御、高速なトルクの伝達をすることができる。また、部品点数が減少し、装置全体を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明に係る減速比自動切換装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0039】
図1は、第1の実施形態に係る減速比自動切換装置の分解斜視図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る減速比自動切換装置10は、2分割されて構成されるハウジング12a、12b及び遊星歯車機構14を備える。
【0040】
ハウジング12aは断面矩形状であり、後述する内歯車20が入力軸26方向に平行移動した場合に、後述する内歯車ロック受部30a〜30dと係合するための円弧状突起であるロック部32a〜32dが内部に形成され、さらに、前記入力軸26を回転自在に軸支するための軸受部34aが設けられている。ハウジング12bは、ハウジング12aと同様に断面矩形状であり、後述するように内歯車20が出力軸28方向に平行移動した場合に、内歯車ロック受部31a〜31dと係合するための円弧状突起であるロック部33a〜33dが内部に形成され、さらに、出力軸28を回転自在に軸支するための軸受部34bが設けられている。
【0041】
遊星歯車機構14は、入力軸26と一体的に形成された太陽歯車16と、前記太陽歯車16の周方向に沿って約120度の角度で互いに離間して噛合し、公転及び自転する遊星歯車18a、18b、18cと、内歯車20及びキャリア22を備えている。前記キャリア22は、円筒状の大径なインナ部23とこのインナ部23から前記ハウジング12bに指向して突出する出力軸28を有する。前記インナ部23の内方に前記太陽歯車16が臨入する。前記インナ部23には、120度ずつ等角度で離間する窓部21が形成され、前記遊星歯車18a、18b、18cは、窓部21に臨む。前記遊星歯車18a、18b、18cは、この場合、ピン24を用いてキャリア22に回転自在に軸支され、ピン24には、図3A、図3Bに示されるようにその外周の一部を切り欠き形成した切欠部29a、29bが設けられている。前記切欠部29a、29bによって、遊星歯車18a、18b、18cとピン24の間にクリアランス25a、25bが設けられ、これらのクリアランス25a、25bにオイルやグリス等が充填される。前記オイル又はグリスは粘度の高い品質のものが好ましい。さらに、前記遊星歯車18a、18b、18cの外周側には、大径な内歯車20が嵌合し、前記内歯車20の内周に刻設された内歯と噛合する。前記太陽歯車16と一体的な入力軸26は、図示しない回転駆動源の回転駆動軸にカップリング部材(図示せず)を介して連結される。この場合、前記入力軸26と出力軸28とは、同軸上に設けられていることは図1から容易に諒解されよう。
【0042】
太陽歯車16、遊星歯車18a、18b、18c及び内歯車20は、はすば歯車で構成されている。この場合、遊星歯車18a、18b、18cとキャリア22のインナ部23との間及び遊星歯車18a、18b、18cと内歯車20の間には、粘性抵抗を得るために、粘度の高いオイルやグリス等が充填乃至塗布されている。なお、粘性抵抗を効果的に得るためには、インナ部23と内歯車20の歯先との間のクリアランス27が、0.1mm以下であることが好ましい(図4参照)。
【0043】
太陽歯車16、遊星歯車18及び内歯車20を構成するはすば歯車のねじれ角は、特に限定されないが、約30°〜40°であることが好ましい。また、粘性抵抗体として用いられるオイルやグリス等の粘度は、特に限定されないが、約10000〜100000(cSt)であることが好ましい。さらに、粘性抵抗体の粘性抵抗は、上述した、クリアランスの幅、グリス等の粘度の他にせん断速度によっても変化させることができる。
【0044】
前記内歯車20の円筒状の端部にはそれぞれ湾曲して突出する複数の内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31dが形成されている。内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31dは、図14に示すようにロック部32a〜32d、33a〜33dに対応して周方向に曲線を描く突起形状である。内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31d及びロック部32a〜32d、33a〜33dは、内歯車ロック手段として機能する。
【0045】
前記のように構成される入力軸26、内歯車20及びキャリア22を組み立てるに際しては、先ず、入力軸26をハウジング12aの軸受部34aに挿入し、出力軸28をハウジング12bの軸受部34bに挿入し、前記キャリア22の外側に内歯車20を嵌合する。そして、入力軸26の太陽歯車16を遊星歯車18a、18b、18cに噛合するようにハウジング12aとハウジング12bとを接合し、ねじ止めすることにより、前記ハウジング12a、12bの内部に遊星歯車機構14が収装される(図5参照)。
【0046】
次に、前記減速比自動切換装置10の動作について説明する。先ず、図示しない回転駆動源を付勢して回転駆動源の回転駆動力を、入力軸26を介して太陽歯車16に伝達する。この回転駆動力は、入力軸26から出力軸28の方向(図2の矢印Z方向)に見て、入力軸26及び太陽歯車16を時計方向に回転させるものとする。
【0047】
入力軸26に低負荷の回転力が伝達されると、太陽歯車16、遊星歯車18a、18b、18c、インナ部23及び内歯車20間では粘性抵抗体が用いられているため、この粘性抵抗体の粘性抵抗によって静摩擦力が働くために、遊星歯車18a、18b、18cは自転することなく矢印方向に公転(これをクロスした矢印方向で示す。以下同様)し、内歯車20も矢印方向に公転(太字の矢印方向で示す。以下同様)し、キャリア22も一体となって時計方向に公転する(図6参照)。すなわち、図6において、太陽歯車16が矢印方向に回転(斜線の矢印方向で示す。以下同様)すると、低回転であるためにインナ部23と内歯車20との間の粘性抵抗体によって、静摩擦力が作用し、インナ部23と、内歯車20と、遊星歯車18a、18b、18cと、太陽歯車16が一体化して回転するに至る。
【0048】
次に、予め設定されたトルクを越える負荷が出力軸28を介してキャリア22に付与された場合、太陽歯車16が回転することにより、遊星歯車18は公転せずに太陽歯車16と反対方向である反時計方向に自転(白抜き矢印方向)し、遊星歯車18と噛合している内歯車20は反時計方向に回転することとなる(図7参照)。すなわち、出力軸28が付与される負荷によって回転速度が低下すると、前記出力軸28と一体的に形成されたキャリア22も回転速度が低下するに至る。しかしながら、内歯車20は従前のまま回転しようとするために、換言すれば、キャリア22の回転速度よりも内歯車20の回転速度が大であるために、前記内歯車20とキャリア22の間の粘性抵抗が増加する。この粘性抵抗の増大に伴い、遊星歯車18a、18b、18c及びそれらに噛合する内歯車20がはすば歯車であることから、その歯筋方向にスラスト力を生じ、図8に示すように、内歯車20が矢印方向Z1へと移動することになる。
【0049】
この結果、内歯車ロック受部31bとロック部33b、内歯車ロック受部31cとロック部33cが噛合し、内歯車20がロック状態になって、更なる移動が出来なくなる。前記内歯車20がロック状態になることにより、太陽歯車16の図6における斜線矢印方向の自転によって遊星歯車18a、18b、18cが反時計方向に自転しながら、キャリア22とともに時計方向に公転し(図9参照)、出力軸28に対し減速された回転速度と増大されたトルクとが伝達される。この場合、前記トルクは遊星歯車18a、18b、18cと内歯車20とのギア比に対応した力となる。
【0050】
次いで、内歯車20のロック状態を解除するために、回転駆動方向を反転させる。すなわち、入力軸26を介して太陽歯車16を反時計方向に回転させる。この結果、図10に示すように、太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが時計方向に自転しながら、キャリア22とともに反時計方向に公転する(図10参照)。太陽歯車16が反時計方向への回転を開始した直後は、内歯車20は、ロック状態、すなわち、停止した状態であるために、キャリア22と内歯車20の間には、相対的回転速度数の差が生じることにより、内歯車20とインナ部23間の粘性抵抗が増大する。この内歯車20とインナ部23間の粘性抵抗の増大並びに遊星歯車18a、18b、18c及び内歯車20がはすば歯車あることから、歯車円筒面に螺旋状に形成された歯筋の方向にスラスト力が生じる。このスラスト力によって、内歯車20がZ1方向と逆方向に平行移動することとなる。内歯車20がZ1方向と逆方向にかつ時計方向に回転しながら平行移動し、内歯車20の内歯車ロック受部30がハウジング12bのロック部32から離間し、内歯車20のロック状態が解除される。
【0051】
前記のように、内歯車20のロック状態が解除されると、太陽歯車16の反時計方向の回転に合わせて、遊星歯車18a、18b、18c、内歯車20及びキャリア22が再び一体となって、太陽歯車16の周りを反時計方向に公転し(図11参照)、図5に示す初期位置に復帰する。すなわち、内歯車20のロック状態が解除された後、太陽歯車16が反時計方向へと高速度で回転すると、遊星歯車18a、18b、18cはその自転をすることなく反時計方向へと回転し、内歯車20も反時計方向へと自転する。
【0052】
前記の場合は、入力軸26及び太陽歯車16を時計方向に回転させている状態を説明したが、これら入力軸26と太陽歯車16を反時計方向に回転させた場合も同様の動作及び効果が達成される。
【0053】
すなわち、入力軸26及び太陽歯車16を反時計方向に回転させ、この状態で、予め設定されたトルクを越える負荷が出力軸28を介してキャリア22に付与された場合には、図12に示すように、内歯車ロック受部30bとロック部32b、内歯車ロック受部30cとロック部32cが噛合し、内歯車20がロック状態になる。さらにまた、回転駆動力を反転し、入力軸26を介して太陽歯車16を時計方向に回転させることにより、内歯車20がロック状態から解除され、図5に示す初期位置に復帰する。
【0054】
一方、図8に示されるように内歯車20がロック状態にあるとき、出力軸28へ付与される負荷を減少させることにより、前記内歯車20のロック状態の解除を行うことができる。すなわち、出力軸28への負荷が減少した状態では、太陽歯車16の時計方向の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが反時計方向に自転しながら、キャリア22とともに時計方向に公転し、遊星歯車18a、18b、18cと噛合している内歯車20は時計方向に回転する(図13参照)。この状態において、内歯車20とインナ部23間の粘性抵抗体によって、内歯車20の回転速度がキャリア22の回転速度よりも小さくなり、前記キャリア22と内歯車20の間には、相対的回転速度数に差が生じ、その結果、内歯車20とインナ部23間の粘性抵抗が増大する。この内歯車20とインナ部23間の粘性抵抗体の増大並びに遊星歯車18と内歯車20がはすば歯車あることから、歯車円筒面に螺旋状に形成された歯すじの方向にスラスト力が生じる。
【0055】
さらに、図14に示すように、内歯車ロック受部31cとロック部33cは、周方向に曲線を描く形状となっているために、内歯車20が時計方向に回転することにより、Z1方向と逆方向に前記スラスト力とともに力が作用し、内歯車20が平行移動することとなる。すなわち、内歯車20がZ1方向と逆方向にかつ時計方向に回転しながら平行移動し、内歯車ロック受部31a〜31dがロック部33a〜33dから離間し、内歯車20のロック状態が解除される。
【0056】
第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10では、太陽歯車16、遊星歯車18及び内歯車20に、はすば歯車を用い、キャリア22に設けられたインナ部23と内歯車20との間に粘性抵抗体を設けることにより、予め設定されたトルクを超える負荷がキャリア22に付与された場合に、内歯車20とキャリア22との相対的回転速度差に基づいて、内歯車20が入力軸26方向又は出力軸28方向に平行移動し、出力軸28からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えることができる。また、アクチュエータの変位部材が往路で一旦停止した後に、再び、往路方向に変位する場合も容易に内歯車20のロック状態も解除し、減速比を自動に切り換えることが可能となりかつ、アクチュエータの変位部材を、低トルク、高速で往路に沿って変位させることができる。
【0057】
次に、本発明の第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10が組み込まれた押圧装置70(アクチュエータ)について、図15A〜図15Cを参照して説明する。
【0058】
押圧装置70(アクチュエータ)は、ワークWを必要に応じて押圧するための装置であり、基本的には、電動モータ72、自動減速機74、減速比固定減速機76、送りねじ軸78、移動体80、パイプ82及びガイド84から構成される。なお、移動体80及びパイプ82は、アクチュエータの変位部材として機能する。
【0059】
押圧装置70は、回転駆動源である電動モータ72の付勢作用下に自動減速機74及び減速比固定減速機76を介して、送りねじ軸78が回転され、移動体80のねじ溝を有する送りナット(図示せず)がガイド84に案内されて送りねじ軸78の軸線方向に沿って移動する。移動体80には、ワークWに当接し、先端部にワークWを押圧するための押圧部86を有するパイプ82が連結されている。前記パイプ82の内部は空洞であり、該空洞内部を送りねじ軸78が挿通される構造になっている。
【0060】
電動モータ72が駆動され、前記電動モータ72の低負荷の回転力は太陽歯車16を回転し、その結果、遊星歯車18、内歯車20及びキャリア22が一体となって太陽歯車16の周りを時計方向に公転する(図6参照)。これにより、入力軸26の回転数に対応する回転が出力軸28に伝達されて高速回転し、出力軸28から減速比固定減速機76を介して、送りねじ軸78が回転され、移動体80のねじ溝を有する送りナットがガイド84に案内されて送りねじ軸78の軸線方向に沿って移動する。このため、図15Aに示される初期位置から、押圧部86がワークW側に向かって高速に変位することとなる(図15B参照)。
【0061】
図15Cに示すように、変位する押圧部86がワークWに当接し、押圧装置70から予め設定されたトルクを超える負荷が出力軸28を介してキャリア22に付与された場合、太陽歯車16が回転することにより、遊星歯車18a、18b、18cは公転せずに、太陽歯車16と反対方向である反時計方向に自転し、前記遊星歯車18a、18b、18cと噛合している内歯車20は反時計方向に回転することとなる(図7参照)。この結果、内歯車20にスラスト力が作用し、内歯車20がZ1方向に平行移動することとなる。
【0062】
内歯車20がZ1方向に平行移動する結果、図8に示すように、内歯車ロック受部31bとロック部33b、内歯車ロック受部31cとロック部33cが噛合し、内歯車20がロック状態になる。内歯車20がロック状態になることにより、太陽歯車16の回転によって遊星歯車18が反時計方向に自転しながら、キャリア22とともに時計方向に公転し(図9参照)、出力軸28を介して増大されたトルクが押圧装置70の押圧部86に伝達されることにより押圧部86によってワークWが押圧される(図15C参照)。これによって、ワークWの押圧加工や該ワークWの位置の移動動作が行われる。
【0063】
なお、内歯車20がロックされた状態における減速比は、太陽歯車16の歯数Z(A)、内歯車20の歯数Z(C)とすると、1/(1+Z(C)/Z(A))と表され、出力軸28から導出される出力トルクは、入力軸26から導入される入力トルクの(1+Z(C)/Z(A))倍となる。例えば、太陽歯車16の歯数を12歯とし、内歯車20の歯数を66歯とした場合、6.5倍の高トルクが得られる。
【0064】
前記のように、ワークWを押圧部86によって押圧した後、電動モータ72に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸26を介して太陽歯車16が反時計方向に回転させられる。前記太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが時計方向に自転しながら、キャリア22とともに反時計方向に公転する(図10参照)。この結果、内歯車20にスラスト力が作用し、内歯車20がZ1方向と逆方向に、かつ時計方向に回転しながら平行移動し、内歯車20の内歯車ロック受部30がハウジング12bのロック部32から離間し、内歯車20のロック状態が解除される。
【0065】
内歯車20のロック状態が解除されると、太陽歯車16の反時計方向の回転に合わせて、遊星歯車18a、18b、18c、内歯車20及びキャリア22が再び一体となって、太陽歯車16の周りを反時計方向に公転する(図11参照)。この結果、出力軸28には入力軸26に対応する回転速度が直接伝達されて高速回転し、押圧部86がワークW側から離間する方向にガイド84に導かれながら高速に移動させられ、図15Aの初期位置に復帰させることができる。
【0066】
第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10によれば、アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が、出力軸28を介してキャリア22に付与された際、太陽歯車16と同一の回転方向に回転している内歯車20が太陽歯車16と異なる方向に回転することにより、内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31dとロック部32a〜32d、33a〜33dが噛合し、内歯車20の回転が停止されてロックされる。内歯車20がロック状態となることより、出力軸28を介して伝達される減速比が自動的に切り換わり、アクチュエータの変位部材が高トルク、低速で変位する。一方、前記変位部材が往路から復路に変位方向を変更するには、回転駆動源の電流の極性を逆転させれば前記のように、太陽歯車16を反転させて内歯車20のロック状態が解除される。従って、出力軸28からアクチュエータを構成する変位部材に伝達される減速比が自動的に切り換わり、前記変位部材は、低トルク、高速で復路に沿って変位させることができる。
【0067】
なお、前記の第1の実施形態では、電動モータ72と移動体80との間を送りねじ軸78によって連結し、前記電動モータ72の回転力を伝達しているが、前記のように送りねじ軸78に限定されるものではない。例えば、特願2003−316656号に示すように、ベルト140によって移動体80を変位させてもよい(図16参照)。
【0068】
また、図17、18に示すように、電動クランプ装置(特開2001−105332号公報、特開2002−219625号公報等参照)の如く、電動モータ72と送りねじ軸78とが並設されたもの、油圧シリンダ142に並設されたもの(特開2005−54862号公報等参照)のような構造のものにも利用できる(図19参照)。
【0069】
なお、第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10において、出力軸28の回転数が入力軸26の回転数より小さくなり、入力軸26の回転数と出力軸28の回転数の差が大きくなった場合であっても、出力軸28に効率的に回転速度及びトルクを伝達するために、出力軸28とキャリア22間に内部抵抗として機能するビスカスカップリング部36を設けてもよい。これを第2の実施形態に係る減速比自動切換装置10Aとして図20に示す。この第2の実施形態においてはキャリア22側にビスカスカップリング部36を設けている。前記ビスカスカップリング部36は、出力軸28に中心部に孔を有する複数の円板38が相互に所定間隔離間して積層され、この複数の離間する円板38間にキャリア22と一体的に設けられた円板39が介装される。また、複数の円板38、39間には、粘度の高いオイルやグリス等が充填されている。
【0070】
また、図21に示すように、出力軸28側にある一方の円板39を調整ねじ150を螺回させて押圧することにより流体抵抗を増減させて回転駆動源の回転力の調整を図ることができる。
【0071】
入力軸26から出力軸28に効率的に回転速度及びトルクを伝達するためには、入力軸26と出力軸28との間にパウダークラッチ152を介装してもよい(図22A参照)。また、入力軸26と出力軸28との間にあってロータ162に対し磁石160を設け、ハウジング12bの内側に、アルミニウム又は銅の板体164を取り付け、この板体164を調整ねじ166で進退動作させて前記磁石160の磁束を変化させ回転抵抗を可変としてもよい(図22B参照)。さらに、ロータ162の周囲にコイル168を取り付け、前記コイル168に対して抵抗170の抵抗を変化させてロータ162の回転を制御させてもよい(図22C参照)。さらにまた、単純にロータ162をブレーキ172で締め付けて、該ロータ162の回転をオン・オフ制御してもよい(図22D参照)。
【0072】
次に、本発明の第3の実施形態に係る減速比自動切換装置10Bを図23に示す。この第3の実施形態に係る減速比自動切換装置10Bは、第2の実施形態に係る減速比自動切換装置10Aに対して、内歯車20Aの外周端面に内歯車ロック解除機構40が設けられている。
【0073】
図24にも示すように、内歯車ロック解除機構40は、ばね取付部42、ばね44a、44b及び内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31dを備える。内歯車20Aの外周面には、軸方向の略中央の位置に円環状に設けられているばね取付部42を挟んで溝が形成され、この溝に螺旋状にばね44a、44bが巻回されている。さらに、前記内歯車20Aの円筒状の両周縁部には、該内歯車20Aと別個に形成され、内歯車ロック受部30a〜30d、31a〜31dをそれぞれ有する第1環状体46a及び第2環状体46bが該内歯車20Aの環状係合溝48に沿って入力軸26方向又は出力軸28方向に平行移動可能に設けられる。前記内歯車20Aが前記入力軸26方向又は前記出力軸28方向に平行移動した際、前記ばね44a、44bが前記第1環状体46a(又は第2環状体46b)と前記内歯車20Aのばね取付部42との間で挟持され、前記内歯車ロック受部31a〜31d(30a〜30d)とロック部33a〜33d(32a〜32d)とが係合してロック状態となった後、該ばね44a、44bの弾性力によって平行移動方向と反対方向に押圧されて前記ロック状態が速やかに解除される。なお、本実施形態では、ばね44a、44bを用いているが、弾性体であればばね部材に限定されず、例えばゴム等を用いることもできる。また、弾性体の弾性力と同等の機能を確保すべく、内歯車ロック解除機構40として磁石を用いてもよい。
【0074】
そこで、この第3の実施形態に係る減速比自動切換装置10Bを図15A〜図15Cに示す押圧装置70に組み込むと、図15Bに示される状態で、押圧部86がワークWに向かって所定距離変位してワークWに当接し、押圧装置70から予め設定されたトルクを超える負荷が出力軸28を介してキャリア22に付与された場合、太陽歯車16が回転することにより、遊星歯車18a、18b、18cは公転せずに、太陽歯車16と反対方向である反時計方向に自転し、遊星歯車18と噛合している内歯車20Aは反時計方向に回転することとなる(図7参照)。この結果、内歯車20Aにスラスト力が作用し、内歯車20AがZ1方向に平行移動することとなる。
【0075】
内歯車20AがZ1方向に平行移動し、図8に示すように、内歯車ロック受部31とロック部33が噛合し内歯車20Aがロック状態になる。内歯車20Aがロック状態になることにより、太陽歯車16の回転によって遊星歯車18が反時計方向に自転しながら、キャリア22とともに時計方向に公転し(図9参照)、出力軸28を介して増大されたトルクが押圧装置70の押圧部86に伝達されることにより押圧部86によってワークWが押圧される(図15C参照)。
【0076】
次いで、ワークWを押圧部86によって押圧した後、電動モータ72に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸26を介して太陽歯車16が反時計方向に回転させられる。太陽歯車16の回転によって遊星歯車18が時計方向に自転しながら、キャリア22とともに反時計方向に公転する(図10参照)。この結果、内歯車20Aにスラスト力が作用し、内歯車20AがZ1方向と逆方向にかつ、時計方向に回転しながら平行移動し、内歯車20Aの内歯車ロック受部31がハウジング12bのロック部33から離間し、内歯車20Aのロック状態が解除される。
【0077】
第3の実施形態に係る減速比自動切換装置10Bによれば、内歯車20Aに内歯車ロック解除機構40を設けることにより、内歯車ロック受部30、内歯車ロック受部31とロック部32、ロック部33のロック状態の解除を速やかに行うことができる。
【0078】
次に、本発明の第4の実施形態に係る減速比自動切換装置10Cを図25に示す。図示されるように、本発明の実施形態に係る減速比自動切換装置10Cは、ハウジング12a、12b及び遊星歯車機構14Bを備える。一体的に組み付けられるハウジング12a、12bの内部には、遊星歯車機構14Bが収装される。
【0079】
ハウジング12aには、キャリア22Bが入力軸26方向に平行移動した場合に、後述するキャリアロック受部52と係合するための突起状のロック部54が内部に形成されている。また、ハウジング12bには、キャリア22Bが出力軸28B方向に平行移動した場合に、後述するキャリアロック受部53と係合するための突起状のロック部55が内部に形成されている。ロック部54、55は、周方向に曲線を描く突起状である。また、内歯車20Bを回転自在に軸支するための軸受部34cが設けられている。
【0080】
前記遊星歯車機構14Bは、入力軸26と一体的に形成された太陽歯車16と、前記太陽歯車16の周方向に沿って約120度の角度で互いに離間して噛合し、公転及び自転する遊星歯車18a、18b、18cと、内歯車20B及びキャリア22Bを備えている。前記キャリア22Bは、円筒状の大径なインナ部23Bとこのインナ部23Bと同方向に突出する入力軸26を有し、前記インナ部23Bに小径の太陽歯車16が挿入され、前記遊星歯車18a、18b、18cは、前記キャリア22Bに設けられている窓部21に臨む。さらに、前記遊星歯車18a、18b、18cの外周側には、出力軸28Bが一体的に設けられた大径な内歯車20Bが設けられて、前記内歯車20Bの内周に刻設された内歯とも噛合する。
【0081】
前記キャリア22Bには、前記内歯車20Bの円筒状の端部に向かってそれぞれ突出した複数のキャリアロック受部52、53が形成されている。キャリアロック受部52、53は、ロック部54、55に対応して周方向に曲線を描く突起状の形状である。キャリアロック受部52、53及びロック部54、55は、キャリアロック手段として機能する。
【0082】
次に、前記減速比自動切換装置10Cの動作について説明する。電動モータ72が駆動され、前記電動モータ72の低負荷な回転力は、太陽歯車16を回転し、その結果、遊星歯車18、内歯車20B及びキャリア22Bが一体となって、太陽歯車16の周りを時計方向に公転する(図6参照)。この結果、入力軸26の回転数に対応する回転数が出力軸28Bに伝達されて高速回転し、出力軸28Bから減速比固定減速機76を介して送りねじ軸78が回転され、移動体80のねじ溝を有する送りナットがガイド84に案内されて送りねじ軸78の軸線方向に沿って移動する。このため、図15Aに示される初期位置から、押圧部86がワークW側に向かって接近する方向に高速に変位することとなる(図15B参照)。
【0083】
図15Cに示すように、押圧部86がワークWに当接し、押圧装置70から予め設定されたトルクを超える負荷が出力軸28Bを介して内歯車20Bに付与された場合、太陽歯車16が回転することにより、遊星歯車18a、18b、18cは公転せずに、太陽歯車16と反対方向である反時計方向に自転し、遊星歯車18a、18b、18cと噛合している内歯車20Bは反時計方向に回転することとなる(図7参照)。この結果、キャリア22Bにスラスト力が作用し、キャリア22BがZ方向に平行移動することとなる。
【0084】
キャリア22BがZ方向に平行移動しキャリアロック受部53とロック部55が噛合しロック状態になる。前記キャリア22Bがロック状態になることにより、太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが反時計方向に自転しながら、キャリア22Bとともに時計方向に公転し(図9参照)、出力軸28Bを介して増大されたトルクが押圧装置70の押圧部86に伝達されることにより押圧部86によってワークWが押圧される(図15C参照)。
【0085】
次いで、ワークWを押圧部86によって押圧した後、電動モータ72に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸26を介して太陽歯車16が反時計方向に回転させられる。太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが時計方向に自転しながら、キャリア22Bとともに反時計方向に公転する(図10参照)。この結果、キャリア22Bにスラスト力が作用し、キャリア22BがZ方向と逆方向にかつ、時計方向に回転しながら平行移動し、キャリア22Bのキャリアロック受部53がロック部55から離間し、キャリア22Bのロック状態が解除される。
【0086】
キャリア22Bのロック状態が解除されると、太陽歯車16の反時計方向の回転に合わせて、遊星歯車18a、18b、18c、内歯車20B及びキャリア22Bが再び一体となって、太陽歯車16の周りを反時計方向に公転する(図11参照)。この結果、出力軸28には入力軸26に対応する回転速度が直接出力軸28Bに伝達されて高速回転し、押圧部86がワークW側から離間する方向にガイド84に案内されながら高速に移動させられ、図15Aの初期位置に復帰させることができる。
【0087】
第4の実施形態に係る減速比自動切換装置10Cによれば、アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が出力軸28Bを介して内歯車20Bに付与された際、太陽歯車16と同一の回転方向に回転している遊星歯車18a、18b、18c及びキャリア22Bが太陽歯車16と異なる方向に回転することにより、キャリアロック受部52、53とロック部54、55が噛合し、キャリア22Bの回転が停止されてロックされる。キャリア22Bがロック状態となることより、内歯車20Bを介して伝達される減速比が自動的に切り換わり、往路の終端位置近傍においてアクチュエータを構成する変位部材が高トルク、低速で変位する。一方、前記変位部材が往路から復路側に変位する際、回転駆動源の電流の極性を逆転させ、太陽歯車16を反転させてキャリア22Bのロック状態が解除される。従って、出力軸28Bからアクチュエータの変位部材に伝達される減速比が自動的に切り換わり、アクチュエータを構成する変位部材は、低トルク、高速で復路に沿って変位させることができる。
【0088】
次に、本発明の第5の実施形態に係る減速比自動切換装置10Dを図26に示す。図26に示すように、減速比自動切換装置10Dは、第4の実施形態に係る減速比自動切換装置10Bに対して、キャリア22Cの周縁部に円環状の溝が設けられ、この溝の中に円環状のばね60a、60bが設けられている。
【0089】
そこで、この第5の実施形態に係る減速比自動切換装置10Dを前記押圧装置70に組み込むと、図15Bに示される状態で、押圧部86がワークWに向かって所定距離変位してワークWに当接する。そして、押圧装置70から予め設定されたトルクを超える負荷が出力軸28Cを介して内歯車20Cに付与された場合、太陽歯車16が回転することにより、遊星歯車18は公転せずに、太陽歯車16と反対方向である反時計方向に自転し、遊星歯車18a、18b、18cと噛合している内歯車20Cは反時計方向に回転することとなる(図7参照)。この結果、キャリア22Cにスラスト力が作用し、キャリア22CがZ方向に平行移動することとなる。
【0090】
キャリア22CがZ方向に平行移動し、キャリアロック受部53とロック部55が噛合しキャリア22Cがロック状態になる。キャリア22Cがロック状態になることにより、太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが反時計方向に自転しながら、キャリア22Cとともに時計方向に公転し(図9参照)、出力軸28Cを介して増大されたトルクが押圧装置70の押圧部86に伝達されることにより押圧部86によってワークWが押圧される(図15C参照)。
【0091】
次いで、ワークWを押圧部86によって押圧した後、電動モータ72に通電する電流の極性を反転させることにより、入力軸26を介して太陽歯車16が反時計方向に回転させられる。太陽歯車16の回転によって遊星歯車18a、18b、18cが時計方向に自転しながら、キャリア22Cとともに反時計方向に公転する(図10参照)。この結果、キャリア22Cにスラスト力が作用し、キャリア22CがZ方向と逆方向にかつ、時計方向に回転しながら平行移動し、キャリア22Cのキャリアロック受部53がロック部55から離間し、キャリア22Cのロック状態が解除される。キャリア22Cのキャリアロック受部53がハウジング12bのロック部55から離間し、キャリア22Cのロック状態が解除される。この際、ばね60bの弾性力によりキャリア22CがZ1方向と逆方向に平行移動され、キャリア22Cのロック状態が速やかに解除される。
【0092】
第5の実施形態に係る減速比自動切換装置10Dによれば、キャリア22Cにばね60a、60bを有することにより、キャリアロック受部52、53とロック部54、55のロック状態の解除を速やかに行うことができる。
【0093】
図27は、第6の実施形態に係る減速比自動切換装置10Eの分解斜視図である。減速比自動切換装置10Eは、第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10に対して、ハウジング12a、12bをハウジング212a、212b、212cで構成し、キャリア22をキャリア222a、222bで構成し、遊星歯車機構214内にキャリアリング240a、240b、入力軸リング242を有し、ハウジング12a内に形成されていたロック部32a〜32dをロック板244aにロック部232a〜232dとして設け、ハウジング12b内に形成されていたロック部33a〜33dをロック板244bにロック部233a〜233dとして設けた点で相違している。
【0094】
ハウジング212aは円環状であり、入力軸226を回転自在に軸支するための軸受部234aが設けられ、ハウジング212bは、ハウジング212aと同様に円環状であり、出力軸228を回転自在に軸支するための軸受部234bが設けられ、ハウジング212cは円筒状に形成されている。
【0095】
ロック板244aは円環状であり、後述する内歯車220が入力軸226方向に平行移動した場合に、後述する内歯車ロック受部230a〜230dと係合するための円弧状突起からなるロック部232a〜232dが相互に対向するように設けられている。
【0096】
ロック板244bは、ロック板244aと同様に円環状からなり、後述するように内歯車220が出力軸228方向に平行移動した場合に、内歯車ロック受部231a〜231dと係合するための円弧状突起からなるロック部233a〜233dが相互に対向するように設けられている。
【0097】
なお、内歯車ロック受部230a〜230dとロック部232a〜232d又は内歯車ロック受部230a〜230dとロック部232a〜232dが係合する場合には衝撃力が作用し、内歯車ロック受部230、ロック部232は摩耗しやすくなる。
【0098】
この摩耗を防ぐためには、内歯車ロック受部230、ロック部232の円弧状突起部同士の接触面積を大きくし、又は内歯車ロック受部230、ロック部232に多くの円弧状突起部を設けると好ましい。
【0099】
また、摩耗を防ぐための他の方法としては、内歯車220とロック板244a、244bの機械的強度を高める方法を採用することもできる。機械的強度を高める場合には、内歯車220とロック板244a、244bのロックウエル硬度(HRC)を50以上にすることが好ましい。さらに、摩耗を防ぐための他の方法としては、内歯車220とロック板244a、244bの材料を同じにして機械的強度を同等にする方法がある。
【0100】
内歯車220とロック板244a、244bの材料は同じものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアセタールを用いて内歯車220とロック板244a、244bを形成することができる。ポリアセタール等の樹脂系の材料を用いた場合には、内歯車220とロック板244a、244bの自重を軽くすることができるために、内歯車220とロック板244a、244bが接触するときに発生する音を低減することができる。
【0101】
遊星歯車機構214は、入力軸226と一体的に形成された太陽歯車216と、前記太陽歯車216の周方向に沿って約120度の角度で互いに離間して噛合し、公転及び自転する遊星歯車218a、218b、218cと、内歯車220、キャリア222a、222b、キャリアリング240a、240b及び入力軸リング242を備えている。
【0102】
前記キャリア222bは、周方向に沿って複数個に分割形成されたインナ部223とこのインナ部223から前記ハウジング212bに指向して突出する出力軸228を有する。前記インナ部223の内径部に前記太陽歯車216が臨入する。前記インナ部223には、120度ずつ等角度で離間する窓部221が形成され、前記遊星歯車218a、218b、218cは、前記窓部221に臨むように設けられる。前記遊星歯車218a、218b、218cは、この場合、ピン224を用いて一方のキャリア222aと他方のキャリア222bとの間に回転自在に軸支される。
【0103】
また、前記遊星歯車218a、218b、218cの外周側には、円筒状で内周に内歯246が刻設された大径な内歯車220が嵌合し、前記内歯246と噛合する。また、前記キャリア222bの側周面には、鋼球248とばね250から構成される係止手段252を取り付けるための穴254が設けられ、内歯車220の内周面の前記係止手段252に対応する位置に環状の溝256が設けられている。
【0104】
例えば、アクチュエータとして無負荷又は低負荷で駆動しても入力軸26と出力軸28との間に回転数のずれが発生する場合があり、前記回転数のずれによって内歯車20が軸方向に移動するおそれがある。これに対し減速比自動切換装置10Eでは、無負荷又は低負荷で駆動され入力軸226と出力軸228との間で回転数のずれが発生しようとする場合であっても、内歯車220が入力軸226方向又は出力軸228方向に移動するのを阻止して無負荷又は低負荷時における入力軸226と出力軸228との回転数のずれを防止する前記係止手段252が設けられている。従って、前記係止手段252を設けることにより、内歯車220が入力軸226方向又は出力軸228方向に移動することが阻止され(図29A参照)、無負荷又は低負荷時における内歯車220とロック板258a、258bとの当接が回避されて当接音の発生を防止することができる。逆説的にいうと、前記係止手段252を設けない場合には、無負荷又は低負荷時において、内歯車220が入力軸226方向又は出力軸228方向に移動し内歯車220とロック板258a、258bとが当接して当接音が発生する。例えば、前記内歯車220が出力軸228方向に移動したとき、前記内歯車220は入力軸226側からみて時計回り方向に回転しているため、内歯車ロック受部231aとロック板244bのロック部233bとが噛み合うことがなく当接し、当接音が発生する。
【0105】
太陽歯車216、遊星歯車218a、218b、218c及び内歯車220は、第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10と同様に、はすば歯車で構成されている。この場合、遊星歯車218a、218b、218cとキャリア222bのインナ部223との間及び遊星歯車218a、218b、218cと内歯246の間には、粘性抵抗を得るために、粘度の高いオイルやグリス等が充填乃至塗布されている。また、前記オイルやグリス等が前記内歯車220から漏出することを防止するために、前記内歯車220とキャリア222aとの間にキャリアリング240aが設けられると共に、前記内歯車220とキャリア222bとの間にキャリアリング240bが設けられている。
【0106】
なお、前記一対のキャリアリング240a、240bは、それぞれ、第1シール手段として機能するものであり、例えば、NBR等のゴム製材料によって形成されるとよい。
【0107】
さらに、遊星歯車218a、218b、218cと噛合する太陽歯車216から入力軸226側へ漏出するオイルやグリス等を防ぐために入力軸リング242が環状溝を介して入力軸226に装着されている。なお、前記入力軸リング242は、第2シール手段として機能するものであり、例えば、潤滑性を有するシリコーンゴム等のゴム製材料によって形成されるとよい。
【0108】
前記キャリアリング240a、キャリアリング240b、入力軸リング242の形状は、特に限定されないが、キャリアリング240a、キャリアリング240bの断面形状が略長円状であることが好ましく、また、入力軸リング242の断面形状は略X状であることが好ましい。
【0109】
前記内歯車220の円筒状の両端部にはそれぞれ周方向に湾曲し且つ軸線方向に所定長だけ突出する複数の内歯車ロック受部230a〜230d、231a〜231dが形成されている。内歯車ロック受部230a〜230d、231a〜231dは、図27に示すようにロック部232a〜232d、233a〜233dに対応して周方向に沿って曲線状で且つ突起形状に形成される。なお、内歯車ロック受部230a〜230d、231a〜231d及びロック部232a〜232d、233a〜233dは、内歯車ロック手段として機能するものである。
【0110】
ハウジング212a、212b、212c及びロック板244a、244bには、入力軸226、内歯車220及びキャリア222a、222bを組み立てるためのねじ258を挿入するための組立穴260が各々に設けられている。
【0111】
第6の実施形態に係る減速比自動切換装置10Eは、第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10と基本的には同様な動作を行う。但し、減速比自動切換装置10Eでは、減速比自動切換装置10と比較して係止手段252を有するため、無負荷又は低負荷で駆動している場合、前記係止手段252の鋼球248が、ばね250のばね力によって内歯車220の溝256側に押圧されて保持されることにより、内歯車220の出力軸228方向又は入力軸226方向への移動を防ぐことができる(図29A参照)。
【0112】
出力軸228に予め設定されたトルクを越える負荷が出力軸228に付与された場合には、鋼球248がばね250のばね力に打ち勝って僅かにばね250側に変位し、前記鋼球248が溝256を乗り越えて該溝256から離脱して保持状態が解除されることにより、内歯車220が出力軸228方向又は入力軸226方向に移動する(図29B、29C参照)。
【0113】
図30は、第7の実施形態に係る減速比自動切換装置10Fの軸線方向に沿った縦断面図である。減速比自動切換装置10Fは、第6の実施形態に係る減速比自動切換装置10Eの内歯車220とロック板244a、244bが係合する部分にダンパ機構270が設けられている。
【0114】
前記ダンパ機構270は、ハウジング212aに対向する面側であって、例えば、合成樹脂、ゴム等の弾性体からなりロック板258aに一体的に設けられた断面がくさび形であるダンパ突起部260aと、前記ダンパ突起部260aに対応するようにハウジング212aに形成されたダンパ溝262aと、ハウジング212bに対向する面側であって、例えば、合成樹脂、ゴム等の弾性体からなりロック板258bに一体的に設けられた断面がくさび形であるダンパ突起部260bと、前記ダンパ突起部260bに対応するようにハウジング212bに形成されたダンパ溝262bから構成される(図31、32参照)。
【0115】
ダンパ突起部260aとダンパ溝262a、ダンパ突起部260bとダンパ溝262bとの間に形成される隙間には、ダンパ機構270として機能する粘性抵抗を得るために、粘度の高いオイルやグリス等の粘性体272が充填乃至塗布されている。
【0116】
このダンパ機構270を設けることによって、内歯車220とロック板258a、258bの当接によって生じる摩耗や当接するときに発生する音を低減することができる。
【0117】
すなわち、内歯車220が入力軸226方向(又は出力軸228方向)に移動した際、前記内歯車220の内歯車ロック受部230a〜230d(231a〜231d)と前記ダンパ機構270のロック板258a(258b)とが当接して噛合することにより、前記ロック板258a(258b)は内歯車220と一体的に回転するようになる。
【0118】
この場合、ロック板258a(258b)に一体的に設けられたダンパ突起部260a(260b)がハウジング212a(212b)側に形成されたダンパ溝262a(262b)に沿って摺動する際、粘度の高い粘性体272が設けられているため、前記粘性体272の粘性抵抗によって制動作用が営まれ、内歯車220とロック板258a、258bとが当接するときの衝撃が緩衝(吸収)される。この結果、内歯車220とロック板258a、258bとが当接することによって生じる摩耗や当接するときに発生する音を好適に抑制することができる。
【0119】
なお、ダンパ突起部260aとダンパ溝262a、ダンパ突起部260bとダンパ溝262bとの間に形成される隙間は、ダンパ機構270としての効率を高めるためには極力狭い方が好ましい。
【0120】
なお、前記第1の実施形態に係る減速比自動切換装置10を減速比固定減速機76と組み合わせて用いることにより、広範囲の減速比を得られることになる。例えば、自動減速機74の減速比が1:4で、減速比固定減速機76の減速比が1:4の場合は、遊星歯車94からの入力に対して、1:4から1:16の範囲内で減速比を変化させることができる。図33は、自動減速機74と減速比固定減速機76とが連結された状態を示す縦断面図である。
【0121】
そこで、押圧装置70において、電動モータ72の回転運動は、減速比自動切換装置10によって、出力軸28より減速比固定減速機76に伝達される。図33に示すように、減速比固定減速機76では、出力軸28と係合する太陽歯車90が回転し、ピン92に軸支され太陽歯車90と噛合している遊星歯車94及び前記遊星歯車94と噛合している内歯車96が回転する。内歯車96に伝達された回転速度は、出力軸98及びカップリング100を経て出力軸102に伝達される。なお、カップリング100と出力軸102はビスカスカップリング部108で接続され、出力軸102はねじ104によって軸106にねじ止めされている。
【0122】
この場合、出力軸28に連結されるアクチュエータとしては、押圧装置70に限定されるものではなく、ピストンロッド(変位部材)が往復動作する図示しない流体圧シリンダ、スライダ(変位部材)が往復動作するリニアアクチュエータ、ロータリーアクチュエータ、クランプアーム(変位部材)が往復動作するクランプ装置等のように直線状または回転状に往復動作する機構が含まれることは勿論であり、なお、これらに限定されない。
【0123】
図34は、クランプ装置の一種としてチャック装置110を示している。電動モータ112からの回転駆動力は、減速比自動切換装置10が組み込まれている自動減速機114及び減速比固定減速機116を介して、出力軸118に伝達される。出力軸118が回転することにより、ねじ120でねじ止めされているカップリング122及びねじ124でねじ止めされている送りナット126が回転する。送りナット126が回転することにより、送りナット126に螺合している送りねじ軸128が軸線方向に沿って移動する。送りねじ軸128が移動することにより、アーム130を介して把持部132がワークWを把持することができる。
【0124】
この場合、回転駆動源としては、ブラシ付き又はブラシレスモータ及び多相誘導電動機等を用いることができる。これらの回転駆動源の中で、鉄心をケイ素剛板で形成し、2次抵抗を大きくするために、ロータをアルミニウムで形成された円筒形にし、さらに冷却手段を有するACサーボモータ又はステッピングモータで構成された多相誘導電動機を用いることが好ましい。ここで、図35は、通常の誘導電動機と上述した多相誘導電動機の速度に対するトルクの特性図である。この図35からわかるように、減速比自動切換装置10に対して、上述した多相誘導電動機を回転駆動源として用いることにより、通常の誘導電動機よりも速度に対するトルクの制御を容易に行うことができる。また、コストの面で、上述の多相誘導電動機は、通常の誘導電動機よりも安価に製造することができる。さらに、エンコーダを付加することにより、通常のサーボモータのように位置決め制御やトルク制御も行うことができる。
【0125】
また、この発明は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る減速比自動切換装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る減速比自動切換装置の軸線方向に沿った縦断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す減速比自動切換装置を構成する遊星歯車の縦断面図であり、図3Bは、図3AのIIIB−IIIB線に沿った横断面図である。
【図4】遊星歯車と内歯車の噛合部分の部分拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置の一部切り欠き斜視図である。
【図6】高速回転している状態における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を示す図である。
【図7】予め設定されたトルクを越える負荷がキャリアに付与された場合における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置におけるロック状態を示した一部切り欠き斜視図である。
【図9】ロック状態における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を示す図である。
【図10】太陽歯車が反転した直後における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車を示す図である。
【図11】太陽歯車が反転し、高速回転している状態における太陽歯車、遊星歯車及び内歯車が示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置におけるロック状態を示した一部切り欠き斜視図である。
【図13】図8において出力軸への負荷が減少した状態における太陽歯車と遊星歯車と内歯車の回転方向を示す説明図である。
【図14】図8において、内歯車クラッチとロック部が噛合する部分の拡大図である。
【図15】図15Aは、アクチュエータの変位部材が初期位置にある場合を示す図であり、図15Bは、アクチュエータの変位部材がワークに向かって変位している状態を示す図であり、図15Cは、アクチュエータの変位部材がワークに当接した状態を示す図である。
【図16】ベルトによって移動体を変位させる状態を示す断面図である。
【図17】電動クランプ装置の一部破断側面図である。
【図18】電動クランプ装置の軸線方向に沿った縦断面図である。
【図19】油圧シリンダが併設された状態を示す一部破断側面図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置にビスカスカップリング部を設けた装置の縦断面図である。
【図21】図20に示される前記減速比自動切替装置の変形例を示す断面図である。
【図22】図22A〜図22Dは、それぞれ、第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置において、入力軸と出力軸との間に種々の機構を設けた状態を示す断面図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図24】内歯車ロック解除機構の斜視図である。
【図25】本発明の第4の実施の形態に係る減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態に係る減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図27】本発明の第6の実施形態に係る減速比自動切換装置の分解斜視図である。
【図28】本発明の第6の実施の形態に係る減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図29】図29Aは、係止手段により内歯車が保持されている状態を示す図であり、図29B、図29Cは、それぞれ、内歯車が係止手段からはずれて出力軸方向又は入力軸方向に水平移動した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【図30】第7の実施形態に係る減速比自動切換装置の縦断面図である。
【図31】ダンパ突起部が設けられたロック板の斜視図である。
【図32】ダンパ機構の部分拡大縦断面図である。
【図33】自動減速機と減速比固定減速機とが連結された状態を示す縦断面図である。
【図34】本発明の第1の実施の形態に係る減速比自動切換装置が適用されたチャック装置である。
【図35】通常の誘導電動機と上述した多相誘導電動機の速度に対するトルクの特性を示した図である。
【符号の説明】
【0127】
10、10A〜10F…減速比自動切換装置
12a、12b、212a〜212c…ハウジング
14、14B、214…遊星歯車機構
16、90、216…太陽歯車
18、18a〜18c、94、218、218a〜218c…遊星歯車
20、20A〜20C、96、220…内歯車
21、221…窓部
22、22B、22C、222a、222b…キャリア
23、23B、223…インナ部
24、92、224…ピン 25a、25b、27…クリアランス
26、226…入力軸
28、28B、28C、98、102、118、228…出力軸
29a、29b…切欠部
30、30a〜30d、31、31a〜31d、230、230a〜230d、231a〜231d…内歯車ロック受部
32、32a〜32d、33、33a〜33d、54、55、232、232a〜232d、233a〜233d…ロック部
34a〜34c、234a、234b…軸受部
36、108…ビスカスカップリング部
38、39…円板 40…内歯車ロック解除機構
42…ばね取付部
44a、44b、60a、60b、250…ばね
52、53…キャリアロック受部 70…押圧装置
72、112…電動モータ 74、114…自動減速機
76、116…減速比固定減速機 78、128…送りねじ軸
80…移動体 82…パイプ
84…ガイド 86…押圧部
100、122…カップリング 104、120、124、258…ねじ
106…軸 110…チャック装置
126…送りナット 130…アーム
132…把持部 140…ベルト
142…油圧シリンダ 150、166…調整ねじ
152…パウダークラッチ 160…磁石
162…ロータ 164…板体
168…コイル 170…抵抗
172…ブレーキ 240a、240b…キャリアリング
242…入力軸リング
244a、244b、258a、258b…ロック板
246…内歯 248…鋼球
252…係止手段 254…穴
256…溝 260…組立穴
260a、260b…ダンパ突起部 262a、262b…ダンパ溝
270…ダンパ機構 272…粘性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、
前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、はすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記内歯車と前記遊星歯車との間でスラスト力を発生させる抵抗手段と、
出力負荷の増減に従って前記内歯車を前記スラスト力により移動させ、前記内歯車の回転運動を制動させる制動手段とを備えることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項2】
請求項1記載の減速比自動切換装置において、
前記抵抗手段は、粘性抵抗体であることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項3】
請求項2記載の減速比自動切換装置において、
前記粘性抵抗体は、前記内歯車に内挿された前記キャリアのインナ部と前記遊星歯車と前記内歯車との間に設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項4】
請求項1記載の減速比自動切換装置において、
前記制動手段は、前記内歯車を入力軸方向又は出力軸方向に平行移動させ、前記内歯車の回転運動を制動させることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記制動手段は、遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と、前記内歯車の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記制動手段は、遊星歯車機構を収装するハウジングの一方に設けられたロック部と前記内歯車の一方の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする第1内歯車ロック手段と、
前記ハウジングの他方に設けられたロック部と前記内歯車の他方の周縁部に設けられた内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする第2内歯車ロック手段とを有し、
前記内歯車が入力軸方向に平行移動した際、前記第1内歯車ロック手段により前記内歯車の回転運動を制動させ、前記内歯車が出力軸方向に平行移動した際、前記第2内歯車ロック手段により前記内歯車の回転運動を制動させることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記制動手段は、前記内歯車の周縁部に設けられた内歯車クラッチと、前記内歯車クラッチと噛合するために設けられたロック板が噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項8】
請求項7記載の減速比自動切換装置において、
前記ロック板は、前記ハウジングに固着されていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項9】
請求項7記載の減速比自動切換装置において、
前記ハウジングと前記ロック板の間にはダンパ機構が設けられ、内歯車クラッチとロック板が噛合した後に、前記ダンパ機構により、前記内歯車の回転を停止させることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記キャリアには係止手段が設けられ、前記内歯車には前記係止手段と係合する溝が設けられ、
前記アクチュエータから予め設定されたトルク以下の負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与されている場合、前記係止手段が前記溝に係合して、前記内歯車は前記入力軸方向又は前記出力軸方向への移動が阻止されていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記ロック板及び前記内歯車は、機械的強度を等しくするために同一材料で形成されていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記遊星歯車を軸支するピンと前記遊星歯車との間に粘性抵抗体が設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記粘性抵抗体が前記キャリアから流出するのを防ぐための第1シール手段が前記キャリアに設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記太陽歯車と前記遊星歯車との間に設けられた粘性抵抗体が前記入力軸からから流出するのを防ぐための第2シール手段が前記入力軸に設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項15】
回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、
前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、はすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って前記出力軸と一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構を備え、
前記内歯車は、入力軸方向又は出力軸方向に平行移動可能であり、前記内歯車の周縁部には、遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と噛合するための内歯車クラッチが設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項16】
請求項15記載の減速比自動切換装置において、
前記減速比自動切換装置は、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記内歯車が前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、
前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段と、
を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項17】
請求項15記載の減速比自動切換装置において、
前記減速比自動切換装置は、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記キャリアに付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記内歯車が前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記内歯車クラッチが噛合することにより前記内歯車の回転を停止させてロックする内歯車ロック手段と、
前記出力軸を介して前記内歯車に付与されたトルクが、予め設定されたトルク以下になった際、回転駆動源の駆動作用下に、前記内歯車が前記移動方向と反対方向に平行移動し、前記内歯車のロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段と、
を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記内歯車クラッチは、前記内歯車の両周縁部に周方向に沿って延在し、回転軸方向に向かって突出する複数の突部であり、
前記ロック部は、複数の前記内歯車クラッチに対応して逆向きに突出する複数の突部であることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記内歯車と別個に形成された前記内歯車クラッチを有する環状体が該内歯車の周縁部に入力軸方向又は出力軸方向に平行移動可能に設けられ、前記内歯車が前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動した際、前記環状体と前記内歯車との間に挟持される弾性部材が前記内歯車の外周面に設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項20】
回転駆動源とアクチュエータとの間に配設され、前記回転駆動源の回転駆動力によって動作する変位部材の減速比を自動的に切り換える装置であって、
前記回転駆動源に連結される入力軸と、前記アクチュエータに連結される出力軸と、はすば歯車である太陽歯車と遊星歯車と内歯車と、前記遊星歯車を回転自在に軸支するとともに、前記遊星歯車の公転に伴って前記出力軸と一体的に回転するキャリアとを含む遊星歯車機構を備え、
前記遊星歯車と前記キャリアは、入力軸方向又は出力軸方向に一体的に平行移動可能であり、前記キャリアの周縁部には、遊星歯車機構を収装するハウジングに設けられたロック部と噛合するためのキャリアクラッチが設けられていることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項21】
請求項20記載の減速比自動切換装置において、
前記減速比自動切換装置は、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記遊星歯車及び前記キャリアが前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記キャリアクラッチが噛合することにより前記キャリアの回転を停止させてロックするキャリアロック手段と、
前記アクチュエータの変位部材が往路から復路に変位した際、回転駆動源の駆動作用下に前記太陽歯車を反転させて前記キャリアのロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換えるキャリアロック解除手段と、
を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項22】
請求項20記載の減速比自動切換装置において、
前記減速比自動切換装置は、さらに、前記アクチュエータから予め設定されたトルクを超える負荷が前記出力軸を介して前記内歯車に付与された際、前記太陽歯車と同一の回転方向に回転している前記遊星歯車及び前記キャリアが前記太陽歯車と異なる方向に回転しながら、前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動し、前記ロック部と前記キャリアクラッチが噛合することにより前記キャリアの回転を停止させてロックするキャリアロック手段と、
前記出力軸を介して前記内歯車に付与されたトルクが、予め設定されたトルク以下になった際、回転駆動源の駆動作用下に、前記前記遊星歯車及び前記キャリアが前記移動方向と反対方向に平行移動し、前記キャリアのロック状態を解除することにより、前記出力軸からアクチュエータの変位部材に伝達される減速比を自動的に切り換える内歯車ロック解除手段と、
を有することを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項23】
請求項20乃至22のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記キャリアクラッチは、前記内歯車の両周縁部に周方向に沿って延在し、回転軸方向に向かって突出する複数の突部であり、
前記ロック部は、複数の前記キャリアクラッチに対応して逆向きに突出する複数の突部であることを特徴とする減速比自動切換装置。
【請求項24】
請求項20乃至23のいずれか1項に記載の減速比自動切換装置において、
前記遊星歯車及び前記キャリアが前記入力軸方向又は前記出力軸方向に平行移動した場合に、前記キャリアに設けられている弾性部材が前記ハウジングと前記キャリアによって挟持されることを特徴とする減速比自動切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2006−22950(P2006−22950A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141123(P2005−141123)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】