説明

渦流式圧縮機及び渦流式圧縮機の製造方法

【課題】インペラーと回転軸との組付精度を向上し、インペラーとケーシングのクリアランスの縮小均一化を図り効率のよい渦流式圧縮機を提供する。
【解決手段】ケーシング1内に設けられた軸受部4、5間にインペラー7が組み付けられ、該ケーシング1より外方へ延設された回転軸6に回転子16が一体に組み付けられ、固定子18が組み付けられたモータハウジング17が当該固定子18と回転子16が対向するようにケーシング1を基準にして一体に組み付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体(空気、ガスなどの気体、液体など)を圧送りする渦流式圧縮機及び渦流式圧縮機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば渦流式圧縮機の場合、回転羽根が回転すると吸込み口付近でケーシング凹溝が拡大する部位から流体を吸い込んで、回転羽根の回転が進むにつれて外周方向へ平面視で渦を巻くように流体が移動しながら加速加圧され、吐出口付近でケーシング凹溝が遮断される部位から回転軸と直交する向き(径方向外側)に吐出されるようになっている。
【0003】
渦流式圧縮機の一例として、図4のブロワーの構成について説明する。ブロワー51はモータ52と回転羽根(インペラー)53を具備している。モータ52には、例えばインナーロータ型のブラシレスモータが用いられる。モータケース54aとモータケース54bに固定子コア55やモータ基板56が挟み込まれて一体に組み付けられている。回転軸57はモータケース54a、54bに軸受(ベアリング)58a、58bを介して回転可能に支持されている。回転軸57には、ロータマグネット59が固定子コア55に対向して設けられている。
【0004】
モータ52の回転軸57はモータケース54bよりインペラー53側へ延設されている。この回転軸57にカラー60を嵌め込んで軸方向の位置を調節してインペラー53が組み付けられる。インペラー53は、ケーシング61a、61b内に収納されている。ケーシング61aはモータケース54bにねじ止め固定されている。
【0005】
図5において、インペラー53は円板状をしており、円板外周側の両面に放射状に形成されたインペラー側凹部62と仕切り壁63とが周方向に交互に形成されている。また、ケーシング61の内壁面にもインペラー側凹部62に対向してケース側凹部64が周方向に矢印Pで示す範囲で設けられている。インペラー53が矢印Q方向に回転すると、インペラー側凹部62とケース側凹部64が対向する矢印位置Rで圧力が低下するため吸込み口65より流体を吸引し、インペラー側凹部62が対向するケース側凹部64が遮断される矢印位置Sで吐出口66より高圧の流体が吐出されるようになっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−291149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した渦流式圧縮機においては、モータ52の組立誤差、即ちモータケース54a、54bと固定子コア55の組立誤差の累積により回転軸57のモータケース54bの取付面に対する直角度が出し難くなる。一方、モータケース54bの取付面とケーシング61a、61bの平行度は各々の取付面を加工すれば所定の精度を出すことは可能である。しかしながら、モータケース54bの取付面に対する回転軸57の直角度がモータ52の組立誤差から精度が出し難いため、インペラー53とケーシング61a、61bとの平行度が低下するという課題がある。よって、少なくともインペラー53とケーシング61a、61bの干渉を回避するためには、ケーシング61a、61bとのクリアランスを大きくとる(例えば0.2mm程度設ける)必要がある。また、インペラー53とケーシング61a、61bとの隙間が大きくなれば、流体の漏れや逆流が発生しやすく圧力損失が大きくなり効率が低下する。
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、インペラーと回転軸との組付精度を向上し、インペラーとケーシングのクリアランスの縮小均一化を図り効率のよい渦流式圧縮機及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
外周側に放射状に設けられた羽根溝が全周にわたって形成されたインペラーが、当該羽根溝に対向する部位に凹溝が形成されたケーシングに収容されてモータ回転子軸に一体に組み付けられ、インペラーが回転して羽根溝とケーシング凹溝が対向する吸込み口から流体を吸い込み、羽根溝とケーシング凹溝がケーシングにより遮断される吐出口より吐出される渦流式圧縮機であって、ケーシング内に設けられたモータ回転子軸を支持する軸受部間にインペラーが組み付けられ、該ケーシングより外方へ延設されたモータ回転子軸に回転子が一体に組み付けられ、固定子が組み付けられたモータハウジングが当該固定子と回転子が対向するようにケーシングを基準にして一体に組み付けられていることを特徴とする。
また、モータ側に臨むケーシング側面に筒体部及び凹部が形成され、該凹部にモータ基板が収納され該筒体部と固定子が軸方向にオーバーラップさせて組み付けられていることを特徴とする。
また、インペラーを収容するケーシングがモータを収容するモータハウジングを兼用していることを特徴する。
一方、渦流式圧縮機の製造方法においては、ケーシング内に設けられた軸受部間に回転子軸を中心にインペラーを回転可能に収容する工程と、ケーシングより外方へ延設された回転子軸に回転子を一体に組み付ける工程と、固定子が組み付けられたモータハウジングが当該固定子と回転子が対向するようにケーシングを基準にして一体に組み付ける工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上述した、渦流式圧縮機及びその製造方法を用いれば、ケーシング内に設けられた軸受部間にインペラーが組み付けられ、該ケーシングより外方へ延設された回転子軸に回転子が一体に組み付けられ、固定子が組み付けられたモータハウジングが当該固定子と回転子が対向するようにケーシングを基準にして一体に組み付けられているので、ケーシングと回転軸との直角度が高く、インペラーとケーシングの平行度も高くなり、インペラーとケーシングのクリアランスが縮小かつ均一化し、効率のよい渦流式圧縮機を提供することができる。
また、モータ側に臨むケーシング側面に筒体部及び凹部が形成され、該凹部にモータ基板が収納され該筒体部と固定子が軸方向にオーバーラップさせて組み付けられていると、ケーシングの一部をモータハウジングと兼用することで、部品点数を減らして組立性が向上し、圧縮機を軸方向に大型化せずに、組立誤差、加工誤差の累積を抑え、軸受けスパンを大きく取ることができるので回転振れを抑えることができる。
特に、ケーシング内に設けられた軸受部間に回転子軸を中心にインペラーを回転可能に収容してから、回転軸に回転子が組み付けられ、モータハウジングがケーシングを基準にして一体に組み付けられるので、インペラーと回転軸との組み付け精度が高く、組立性もよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る渦流式圧縮機及びその製造方法について最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下では、渦流式圧縮機の一例として、ブロワーについて説明するものとする。ブロワーは、モータの回転子軸に外周側に放射状の羽根に仕切られた羽根溝が周方向に形成されたインペラーが羽根溝に対向する部位にケーシング凹溝が形成されたケーシングに収容されている。インペラーが回転して羽根溝とケーシング凹溝が対向する外周側吸込み口から流体を吸い込み、羽根溝とケーシング凹溝がケーシングにより遮断される外周側吐出口より吐出されるようになっている。モータとしては、DCブラシ付モータ、DCブラシレスモータなどが用いられ、インナーロータ型、アウターロータ型のいずれのタイプでも適用できる。
【0011】
渦流式圧縮機の概略構成について図1及び図2を参照して説明する。
図1において、ケーシング1は、第1ケース2及び第2ケース3を掌合してねじ止めされている。このケーシング1内には第1ケース2に軸受部(ベアリング)4が、第2ケース3に軸受部(ベアリング)5が各々組み込まれている。このベアリング4、5に回転軸6が回転可能に支持されている。回転軸6には、インペラー7がベアリング4、5に軸方向位置が規定されて組み付けられている。
【0012】
図2において、インペラー7は円板状をしており、外周側の両面に放射状に形成された羽根溝(インペラー側凹部)8と仕切り壁9とが全周にわたって交互に形成されている。また、図1において、第1ケース2及び第2ケース3の内壁面にもインペラー側凹部8に対向してケース側凹部10が周方向に矢印Pで示す範囲で設けられている。インペラー7が矢印Q方向に回転すると、インペラー側凹部8とケース側凹部10が対向する矢印位置Rで圧力が低下するため吸込み口11より流体を吸引し、インペラー側凹部8が対向するケース側凹部10が遮断される矢印位置Sでケーシング1に設けられる吐出口12より高圧の流体が吐出されるようになっている。
インペラー7の中心線Mにおける断面を展開した模式図を図3に示す。インペラー7が矢印Q方向に回転すると、インペラー側凹部8とケース側凹部10が対向する位置でスペースが広がるため圧力低下が起こる。このため、吸込み口11からインペラー7内へ流体の吸引が行なわれる。また、インペラー7が回転するにしたがって高圧になった流体は、ケース側凹部10が遮断されるケーシング壁面21に突き当たって吐出口12へ導かれる。
【0013】
図1において、回転軸6は第2ケース3より外方へ延設されている。この回転軸6に回転子(ロータマグネット)16が一体に組み付けられている。第2ケース3のモータ側側面には中心部に筒体部13が突設されその周囲に凹部14が形成されている。筒体部13の内壁側にはベアリング5が保持されている。また、筒体部13の外周側には、モータ基板15が嵌め込まれて凹部14に収納されている。該凹部14にモータ基板15が収納され筒体部13と固定子18が軸方向にオーバーラップさせて組み付けられている。
【0014】
また、モータハウジング17の内壁には、固定子18が組み付けられている。固定子18は固定子コアと該固定子コアにコイルが巻き付けられている。モータハウジング17は、固定子18と回転子16が対向するように位置合わせし、固定子18の外形を軸方向で第2ケース3とモータハウジング17で嵌め合わせたうえでねじ止め固定されている。第2ケース3とモータハウジング17でモータを形成するようになっている。モータ基板15に接続するリード線19は、第2ケース3とモータハウジング17の開口部20から引き出される。このようにケーシング1の一部をモータハウジング17と兼用することで部品点数を減らして組立性を向上させることができる。また、筒体部13に固定子18の一部をオーバーラップさせて収納するようにすると、ブロワーを軸方向に大型化せず、軸受けスパンを大きくすることができ回転振れを抑えることができる。
【0015】
次に、渦流式圧縮機の製造方法について説明すると、ケーシング1を構成する第1のケース2と第2のケース3を掌合して形成される空間部にインペラー7が収容される。
第1、第2ケース2、3に設けられた軸受部4、5間に回転子軸6を挿入し、該第1、第2ケース2、3がねじ止めされて回転軸6を中心にインペラー7が回転可能にケーシング1内に収容される。
【0016】
また、ケーシング1より外方へ延設された回転軸6に回転子16が一体に組み付けられる。第2ケース3に形成された凹部14には、モータ基板15が筒体部13の外周側に組み付けられる。固定子18が組み付けられたモータハウジング17が当該固定子17と回転子16が対向するように位置合わせし、固定子18の外形を軸方向で第2ケース3とモータハウジング17で嵌め合わせたうえでねじ止め固定されている。
【0017】
このように、ケーシング1内に軸受部4、5間に支持された回転子軸6を中心にインペラー7を収容してから、回転軸6に回転子16が組み付けられ、モータハウジング17がケーシング1を基準にして一体に組み付けられるので、ケーシング1と回転子軸6との直角度が高く、インペラー7とケーシング1の平行度も高くなり、インペラー7とケーシング1のクリアランスが縮小かつ均一化することができる。一例をあげると、インペラー7とケーシング1(第1ケース2及び第2ケース3)とのクリアランスが通常0.1mm〜0.15mmのところを0.1mm以下に縮小することができる。よって、流体の漏れや逆流が生じない、圧力損失が少ない効率のよい渦流式圧縮機を提供することができる。
【0018】
上記実施例は、ブロワーについて説明したが、これに限定されるものではなく、流体を圧送りする電動ポンプなど他の装置にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】渦流式圧縮機の断面図である。
【図2】インペラーの平面図である。
【図3】インペラーの断面展開図である。
【図4】従来の渦流式圧縮機の断面図である。
【図5】従来のインペラーの平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ケーシング
2 第1ケース
3 第2ケース
4、5 ベアリング
6 回転軸
7 インペラー
8 インペラー側凹部
9 仕切り壁
10 ケース側凹部
11 吸込み口
12 吐出口
13 筒体部
14 凹部
15 モータ基板
16 回転子
17 モータハウジング
18 固定子
19 リード線
20 開口部
21 ケーシング壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側に放射状に設けられた羽根溝が全周にわたって形成されたインペラーが、当該羽根溝に対向する部位に凹溝が形成されたケーシングに収容されてモータ回転子軸に一体に組み付けられ、インペラーが回転して羽根溝とケーシング凹溝が対向する吸込み口から流体を吸い込み、羽根溝とケーシング凹溝がケーシングにより遮断される吐出口より吐出される渦流式圧縮機であって、
ケーシング内に設けられたモータ回転子軸を支持する軸受部間にインペラーが組み付けられ、該ケーシングより外方へ延設されたモータ回転子軸に回転子が一体に組み付けられ、固定子が組み付けられたモータハウジングが当該固定子と回転子が対向するようにケーシングを基準にして一体に組み付けられていることを特徴とする渦流式圧縮機。
【請求項2】
モータ側に臨むケーシング側面に筒体部及び凹部が形成され、該凹部にモータ基板が収納され該筒体部と固定子が軸方向にオーバーラップさせて組み付けられていることを特徴とする請求項1記載の渦流式圧縮機。
【請求項3】
インペラーを収容するケーシングがモータを収容するモータハウジングを兼用していることを特徴する請求項1記載の渦流式圧縮機。
【請求項4】
ケーシング内に設けられた軸受部間に回転子軸を中心にインペラーを回転可能に収容する工程と、
ケーシングより外方へ延設された回転子軸に回転子を一体に組み付ける工程と、
固定子が組み付けられたモータハウジングが当該固定子と回転子が対向するようにケーシングを基準にして一体に組み付ける工程を含むことを特徴とする渦流式圧縮機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−31889(P2008−31889A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204523(P2006−204523)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】