説明

温度ヒューズ用素子、温度ヒューズおよびそれを用いた電池

温度ヒューズは一対の金属端子を取り付けた第1の絶縁フィルムと、第1の絶縁フィルムの上方に位置して一対の金属端子の先端部間に接続された可溶合金と、この可溶合金の上方に位置し、かつ第1の絶縁フィルムとの間に空間を形成するように第1の絶縁フィルムに取り付けられる第2の絶縁フィルムとを備える。可溶合金はSnを20重量%以上39.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下含有するSn−Bi−In合金で構成される。この可溶合金はPbやCdを含有しないので、廃棄後でもPbやCdが溶出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、温度ヒューズ用素子、その素子を備えた温度ヒューズおよびその温度ヒューズを用いた電池に関する。
【背景技術】
近年、電子機器に用いられているCd、Pbが自然環境中に溶出することが問題になり、電子機器に対してもCdフリー、Pbフリーの要求が高まっている。このため、電子機器を保護するために使用される温度ヒューズにおいてもPb、Cdを含まないものが望まれている。
特に、携帯電話などに用られるパック電池では、スポット溶接で電池と温度ヒューズとを接続し、さらに、電池の充放電を制御する保護回路においてもPbフリーはんだが用いられているので、Pb、Cdを含まない温度ヒューズが強く要求されている。
これらのパック電池は、小形化によりその熱容量が小さくなるため、発熱時における昇温速度が大きい。したがって、温度ヒューズは、異常時に早く電流を遮断させるために、溶断温度が85〜95℃という低い温度ヒューズが要求されている。
図7は従来の温度ヒューズの断面図である。従来の温度ヒューズは、両端に開口部を有する円筒状の絶縁ケース1と、絶縁ケース1内に配設された略円柱状あるいは略角柱状の可溶合金2と、一対のリード導体3と、可溶合金2に塗布されたフラックス(図示せず)と、絶縁ケース1の両端開口部を封口する封口体4とを備える。一対のリード導体3は可溶合金2の両端部にそれぞれの一端部が接続され、かつ他端部が絶縁ケース1の開口部より絶縁ケース1外に導出される。85〜95℃で溶断する温度ヒューズは、可溶合金2としてSn−Cd−In共晶合金(融点93℃)、Sn−Bi−Pb共晶合金(融点95℃)を用いている。
PbやCdを含有する可溶合金を備えた温度ヒューズは特開2000−90792号公報に開示されている。
従来の温度ヒューズにおいては、可溶合金2がPb、Cdを含有するので、この温度ヒューズを用いた電子機器が廃棄されると、Pb、Cdが溶出する。
【発明の開示】
温度ヒューズに用いられる可溶素子はSnを20重量%以上39.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下含有する合金よりなる。
この可溶素子を用いた温度ヒューズは廃棄してもPbやCdが溶出しない。
【図面の簡単な説明】
図1Aは本発明の実施の形態1における温度ヒューズの上面図である。
図1Bは図1Aに示す実施の形態1における温度ヒューズの1B−1B線における断面図である。
図1Cは実施の形態1における温度ヒューズの拡大断面図である。
図2は実施の形態1における温度ヒューズの可溶合金を構成するSn−Bi−In三元合金の配合を示す
図3Aは本発明の実施の形態2における温度ヒューズの上面図である。
図3Bは図3Aに示す実施の形態2における温度ヒューズの3B−3B線における断面図である。
図4は本発明の実施の形態3における電池の斜視図である。
図5は本発明の実施の形態4におけるラジアル形温度ヒューズの断面図である。
図6は本発明の実施の形態5におけるアキシャル形温度ヒューズの断面図である。
図7は従来の温度ヒューズの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(実施の形態1)
図1Aは本発明の実施の形態1における薄形温度ヒューズの上面図である。図1Bは図1Aに示す温度ヒューズの1B−1B線における断面図である。単層シートの第1の絶縁フィルム11には、第1の絶縁フィルム11より幅が狭い一対の金属端子12が取り付けられている。可溶合金13は第1の絶縁フィルム11の上方に位置して一対の金属端子12の先端部間に接続された温度ヒューズ用可溶素子を構成する。可溶合金13の周囲には主成分がロジンからなる樹脂により構成されているフラックス(図示せず)が塗布されている。単層シートの第2の絶縁フィルム14は可溶合金13の上方に位置し、かつ第1の絶縁フィルム11との間に空間を形成するように第1の絶縁フィルム11に封止により取り付けられる。このように可溶合金13を覆う第1の絶縁フィルム11の外周部と第2の絶縁フィルム14の外周部を封止によって固着することにより可溶合金13が密閉され、可溶合金13の劣化を防止している。絶縁フィルム11、14は可溶合金13を収納する絶縁収納体を構成する。
金属端子12は、帯状あるいは線状で、主材料がニッケルの金属または銅ニッケルなどのニッケル合金、またはニッケル単体またはニッケル合金に他の元素を添加したものなどからなる。ニッケルを98%以上含有する金属端子12は電気抵抗率が6.8×10−8〜12×10−8Ω・mと低いので、耐腐食性などの信頼性を飛躍的に向上できる。金属端子12自体の厚みは0.15mm以下である。厚みが0.15mmを超えると、温度ヒューズが厚くなる。ヤング率が3×1010〜8×1010Paで、引張り強さが4×10〜6×10Paである材料による金属端子12は、取扱い時あるいは輸送時に誤って曲がらず、かつ容易に曲げ加工でき、しかも曲げ加工で断線などが生じない。金属端子12のヤング率が3×1010Pa以下であると、容易に曲がるので、曲げてはいけない部分(例えば金属端子12の端部の電気的接続部分)が凹凸になりやすい。これにより、可溶合金13との溶接による電気的接続が困難になる。一方、ヤング率が8×1010Pa以上であると、金属端子12は曲げにくく、あるいは折れて断線する。また、金属端子12の引張り強さが4×108Pa以下であると、曲がりやすく、引張り強さが6×10Pa以上であると、曲げにくく、あるいは折れて断線する。
図1Cに示すように、金属端子12はその先端部の上面に、可溶合金13に対して濡れ性がよいSnやCu等からなる金属層12Aを含んでもよく、金属層12Aと可溶合金13が接続される。金属層12Aを構成するSnやCuの可溶合金13に対する濡れ性が、金属端子12を構成するニッケルの濡れ性より良いため、溶断後の可溶合金13の金属層12Aへの移動が促進され、この結果、速やかに可溶合金13が分断される。
金属層12Aの材料としては、Cu、Sn、Bi、Inの金属単体もしくはこれらの合金が用いられる。金属層12Aの厚さは15μm以下が好ましい。厚さが15μm以上であると、金属層12Aを構成する金属の可溶合金13への拡散量が多いので、可溶合金13の融点が変動し、温度ヒューズの溶断温度がばらつく。金属層12Aの材料として可溶合金13と同じ組成の合金を用いれば、金属層12Aを構成する金属が可溶合金13へ拡散してもその拡散量は少量であるため、可溶合金13の融点は変動しない。
可溶合金13はSn−Bi−In合金で構成されており、Snを20重量%以上39.5重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%含有する。これにより、PbやCdを含まない溶断温度95℃以下の温度ヒューズを提供できる。
可溶合金13を構成するSn−Bi−In合金において、Snの配合比が20重量%より少ないと、InはSnに比べて柔らかく、またBiはSnに比べてもろいので、可溶合金13の強度が不十分となり、その結果、製造工程における取り扱いが困難となる。またSnの配合比を20重量%以上であるSn−Bi−In合金では、Inの配合比が49重量%より少ないとSnが過多な状態となり、Inの配合比が55重量%より多いとInが過多な状態となる。Snは単体の融点が232℃とIn単体の融点156℃に比べて高い。Snが過多な可溶合金13の融点はSnの配合比に強く依存するので、配合比のばらつきによる融点のばらつきが大きくなって、温度ヒューズの溶断温度のばらつきが大きくなる。このため、Inの配合比は49重量%以上必要であり、好ましくはSnとInのバランスがよい49〜55重量%が好ましい。またSnが20重量%、Inが49重量%であるSn−Bi−In合金では、Biが11.5重量%以下であると、可溶合金13の融点が95℃を超える。このため、電池の保護用として用いる溶断温度が95℃以下の温度ヒューズではBiが11.5重量%以上のものを用いる必要がある。図2は可溶合金13を構成するSn−Bi−In三元合金の配合を示す。可溶合金13の上記の配合は図2の線15で囲まれた領域に相当し、そしてInの配合比は斜線ハッチングされた領域16である49〜55重量%が特に好ましい。
可溶合金13は断面円形のダイス引き加工、ダイス押し出し加工等により線状に加工される。そして線状の合金13は圧潰加工され、断面形状が矩形または楕円形で厚さ0.1mm以下の線状に加工される。そしてこれが適当な長さに切断され作成される。可溶合金13は第1の絶縁フィルム11の上面の中央部において一対の金属端子12の先端部間に設けられている。金属端子12と可溶合金13は、レーザー溶接、熱溶接、超音波溶接などを用いて接続される。レーザー溶接では、発熱する部分を小さくできるので、可溶合金13は溶接される部分以外を損傷することなく金属端子12に接続できる。
第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は厚さ0.15mm以下である。厚さが0.15mmを超えると、温度ヒューズが厚くなって薄形の温度ヒューズには不向きとなる。第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノリル、塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、PPS樹脂、ポリアセタール、フッ素系樹脂、ポリエスターのいずれかを主成分とする樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂よりなる。
実施の形態1においては、第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は単層であるが、積層された複数の異なる材料のシートからなっていてもよい。例えば、PETのフィルムと、PENのフィルムとを積層した第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は強度が大きい。これにより、温度ヒューズの機械的強度を向上できる。また、ともに積層されたフィルムによる第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は、上記材料の組み合わせ以外に耐熱性が低い材料と耐熱性が高い材料を組み合わせて作製してもよい。
実施の形態1において、図1A、図1Bに示す、第1の絶縁フィルム11と第2の絶縁フィルム14と可溶合金13とからなる温度ヒューズの本体部の長さLaが2.0mm以下の場合は、金属端子12の作製時に発生するバリなどの突起により温度ヒューズの溶断後の一対の金属端子12間の絶縁距離を十分確保できない場合があり、温度ヒューズとしては実用的ではない。長さLaが5.0mm以上であると、その設置に必要な面積が大きくなるので、小形の電池に温度ヒューズとしては実用的ではない。したがって温度ヒューズ本体部の長さLaは2.0〜5.0mmの範囲が好ましい。
そしてまた、図1Bに示す第1の絶縁フィルム11の下面から第2の絶縁フィルム14の上面までの厚さLbが0.3mm以下の場合は、可溶合金13を収納する空間が確保できないため、温度ヒューズを作製することは困難である。Lbが0.7mm以上であると温度ヒューズが厚くなる。例えば、この温度ヒューズを、電極等の0.5〜0.7mm程度の高さの突起を有する小形の電池に設置した場合、温度ヒューズとその電池との接続体は大きくなり実用的ではない。したがって、第1の絶縁フィルム11の下面から第2の絶縁フィルム14の上面までの厚さLbは0.3〜0.7mmの範囲が好ましい。
次に、実施の形態1に基づき、所定の組成を有する可溶合金で試験を行った。
【実施例1】
可溶合金13は、Sn37%、Bi12%、In51%の組成を有する合金をダイス引き加工により直径0.5mmの円形断面を有する線状に加工し、次にこれを圧潰加工して厚さ0.1mm、幅1.95mmの矩形断面を有する線状に加工し、そしてこれを長さ3mmに切断して作製した。第1の絶縁フィルム11および第2の絶縁フィルム14は長さ5mm、幅3mm、厚さ0.1mmのPETフィルムを用いた。金属端子12は長さ10mm、幅3mm、厚さ0.1mmのニッケル板の先端部に10μm厚のSnめっき層12Aを施して作成した。フラックス(図示せず)はロジンを主成分とするものを用いた。
【実施例2】
可溶合金13は、Sn32%、Bi18%、In50%の組成を有する合金を用いた。第1の絶縁フィルム11、金属端子12、第2の絶縁フィルム14、フラックスは実施例1と同じものを用いた。
(比較例1)
可溶合金13は、Sn40%、Bi15%、In45%の組成を有する合金を用いた。第1の絶縁フィルム11、金属端子12、第2の絶縁フィルム14、フラックスは実施例1と同じものを用いた。
(比較例2)
可溶合金13は、Sn42%、Bi8%、In50%の組成を有する合金を用いた。第1の絶縁フィルム11、金属端子12、第2の絶縁フィルム14、フラックスは実施例1と同じものを作成した。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の可溶合金13を用い、実施の形態1による温度ヒューズをそれぞれ20個ずつ作成した。温度ヒューズの厚さは0.55〜0.70mmであり、非常に薄い。作成した温度ヒューズを、1℃/分で温度が上昇するエアオーブンに投入し、この温度ヒューズが溶断する温度を測定した。
表1に実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の温度ヒューズの溶断温度の測定結果を示す。

表1に示すように、実施例1および実施例2の温度ヒューズは、溶断温度の最高値と最低値との差が3℃以下である。したがって、溶断温度のばらつきが小さい温度ヒューズが得られる。比較例1の温度ヒューズは、Snが過多な合金を用いたので、溶断温度のばらつきが大きく、かつ溶断温度の最高値と最低値との差が4℃を超えている。すなわち、比較例1の温度ヒューズは、溶断温度のバラツキが通常の温度ヒューズに要求される溶断温度の幅である4℃を超えているので、この可溶合金は温度ヒューズには用いることができない。比較例2の温度ヒューズでは、Biが8%と少量なので、溶断温度が95℃を超えた。
実施の形態1においては、可溶合金13をSn−Bi−In合金で構成しているが、この合金の中にZn、Ag、Cu等の不可避的不純物が混入していてもよい。混入が不可避な不純物が0.5重量%以上混入していると、溶断温度がばらつくおそれがあるので、この不純物の混入量は0.5重量%以下が望ましい。
(実施の形態2)
図3Aは本発明の実施の形態2における薄形温度ヒューズの上面図である。図3Bは図3Aに示す温度ヒューズの3B−3B線における断面図である。
図3A、図3Bに示す実施の形態2における温度ヒューズは、図1A、図1Bに示す実施の形態1における温度ヒューズと同じ構成部品からなる。実施の形態2による温度ヒューズは、実施の形態1と異なり、図3Bに示すように、一対の金属端子112の各端部の一部が第1の絶縁フィルム111の下面から上面に表出している。その他の構成部品については、上記した実施の形態1における温度ヒューズの構成部品と同じものを使用している。
したがって、実施の形態2における薄形温度ヒューズにおいても、第1の絶縁フィルム111の上方に位置して一対の金属端子112の先端部間に接続された温度ヒューズ用可溶素子を構成する可溶合金113は、Snを20重量%以上、Biを11.5重量%以上、Inを49重量%以上含有するSn−Bi−In合金で構成されている。したがって、可溶合金113の中にPbおよびCdを含有せず、その結果、PbやCdが溶出しない。
実施の形態2において、図3A、図3Bに示す、第1の絶縁フィルム111と第2の絶縁フィルム114と可溶合金113とからなる温度ヒューズの本体部の長さLcが2.0mm以下の場合は、金属端子112の作製時に発生するバリなどの突起により温度ヒューズの溶断後の一対の金属端子112間の絶縁距離を十分確保できない場合があり、温度ヒューズとしては実用的ではない。長さLcが5.0mm以上であると、その設置に必要な面積が大きくなるので、小形の電池に温度ヒューズとしては実用的ではない。したがって温度ヒューズ本体部の長さLcは2.0〜5.0mmの範囲が好ましい。
そしてまた、図3Bに示す第1の絶縁フィルム111の下面から第2の絶縁フィルム114の上面までの厚さLdが0.3mm以下の場合は、可溶合金113を収納する空間が確保できないため、温度ヒューズを作製することは困難である。長さLdが0.7mm以上であると温度ヒューズが厚くなる。例えば、この温度ヒューズを、電極等の0.5〜0.7mm程度の高さの突起を有する小形の電池に設置した場合、温度ヒューズとその電池との接続体は大きくなり実用的ではない。したがって、第1の絶縁フィルム111の下面から第2の絶縁フィルム114の上面までの厚さLdは0.3〜0.7mmの範囲が好ましい。
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3における電池の斜視図である。その電池は電池本体21と、温度ヒューズ22と、電池本体21の外部電極23と、電池本体21と電気的に接続された保護回路24とを備える。温度ヒューズ22として、図1A〜図3Bに示す実施の形態1または2における薄形温度ヒューズのいずれかが用いられる。温度ヒューズ22の端子25と外部電極23とは接続部26においてスポット溶接等により電気的に接続されている。温度ヒューズ22の電極27と保護回路24とは接続部28においてスポット溶接等により電気的に接続されている。保護回路24を構成する部品はSnAg系やSnCu系などのPbフリーはんだにより保護回路24に装着されている。温度ヒューズ22は電池本体21から発生する熱が所定以上生ずると電池本体21からの電流を遮断する。
上記の電池の薄形温度ヒューズ22は、例えば図1Aに示すように、第1の絶縁フィルム11の上方に位置する、一対の金属端子12の先端部間に接続された温度ヒューズ用可溶素子を構成する可溶合金13を備える。可溶合金13は、Snを20重量%以上、Biを11.5重量%以上、Inを49重量%以上含有するSn−Bi−In合金で構成されている。したがって、可溶合金13はPbおよびCdを含有せず、その結果、電池を廃棄してもPbやCdが溶出しない。
(実施の形態4)
図5は本発明の実施の形態4におけるラジアル形温度ヒューズの断面図である。その温度ヒューズは開口部を有する有底円筒状あるいは有底角筒状の絶縁ケース31は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂、セラミック、ガラス等のいずれかにより構成されている。絶縁ケース31内に配設された略円柱状あるいは略角柱状の可溶合金32は、Sn−Bi−In合金で構成されている。その合金はSnを20重量%以上39.5重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下含有する。これにより、PbやCdを含まない溶断温度95℃以下のラジアル形温度ヒューズが得られる。
可溶合金32を構成するSn−Bi−In合金において、Snの配合比が20重量%より少ないと、InはSnに比べて柔らかくBiはSnに比べてもろいので、可溶合金32の強度が不十分となり、その結果、製造工程における取り扱いが困難となる。またSnを20重量%以上含有するSn−Bi−In合金においては、Inの配合比が49重量%より少ないとSnが過多な状態となり、Inの配合比が55重量%より多いとInが過多な状態となる。Snは単体の融点が232℃とIn単体の融点156℃に比べて高い。したがってSnが過多な状態では、可溶合金32の融点はSnの配合比に強く依存するので、配合比のばらつきによる融点のばらつきが大きくなり、温度ヒューズの溶断温度のばらつきが大きくなる。Inの配合比は49重量%以上必要であり、SnとInのバランスがよい49〜55重量%が好ましい。Snを20重量%、Inを49重量%含むSn−Bi−In合金においては、Biが11.5重量%以下であると、可溶合金32の融点が95℃を超える。したがって、電池の保護用として用いる溶断温度が95℃以下のラジアル形温度ヒューズではBiが11.5重量%以上の可溶合金を用いる必要がある。
リード導体33は可溶合金32の両端部に一端部が接続され、かつ他端部を前記絶縁ケース31の開口部より絶縁ケース31外に導出させている。リード導体33はCu、Fe、Ni等の単一の金属あるいはそれらの合金で線状に構成され、かつその表面にはSn、Zn、Bi、In、Ag、Cuのいずれか1つの金属あるいはこれらを有する合金からなる金属めっきが施されている。可溶合金32にはフラックス(図示せず)が塗布されており、このフラックスは周囲温度が上昇した時溶融し、可溶合金32の酸化膜を除去する。
絶縁ケース31の開口部を封口する封口体34はエポキシ、シリコン等の硬化性樹脂により構成されている。可溶合金32と一対のリード導体33とは溶接や超音波溶着により接続される。あるいはリード導体33は通電により可溶合金32を溶融させて接続してもよい。
実施の形態4におけるラジアル形温度ヒューズにおいては、Snを20重量%以上、Biを11.5重量%以上、Inを49重量%以上含有するSn−Bi−In合金による可溶合金32を用いているのでPbおよびCdは含有されない。したがって可溶合金32からPbやCdは溶出しない。可溶合金32に一端部が接続された一対のリード導体33は、他端部が絶縁ケース31の開口部より絶縁ケース31外に同一方向となるように導出されているので、このラジアル形温度ヒューズを電池等へ取り付ける方向の自由度が向上する。
(実施の形態5)
図6は本発明の実施の形態5におけるアキシャル形温度ヒューズの断面図である。両端に開口部を有する円筒状の絶縁ケース41は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂、セラミック、ガラス等のいずれかにより構成されている。絶縁ケース41内に配設された略円柱状あるいは略角柱状の可溶合金42はSn−Bi−In合金で構成されている。この合金はSnを20重量%以上39.5重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下含有する。これにより、実施の形態1と同様に、PbやCdを含まない溶断温度95℃以下のアキシャル形温度ヒューズが得られる。
図6において、可溶合金42の両端部には、他端部を絶縁ケース41の開口部より絶縁ケース41外に導出させた一対のリード導体43の一端部が接続される。絶縁ケース41の両端の開口部は封口体44により封口されている。
【産業上の利用可能性】
本発明による温度ヒューズ用可溶素子はPbおよびCdを含有せず、それを用いた温度ヒューズは廃棄後でもPbやCdが溶出しない。
参照番号の一覧
11 第1の絶縁フィルム
12 金属端子
12A 金属層
13 可溶合金
14 第2の絶縁フィルム
21 電池本体
22 温度ヒューズ
23 外部電極
24 保護回路
25 端子
26 接続部
27 電極
28 接続部
31 絶縁ケース
32 可溶合金
33 リード導体
34 封口体
41 絶縁ケース
42 可溶合金
43 リード導体
44 封口体
111 第1の絶縁フィルム
112 金属端子
113 可溶合金
114 第2の絶縁フィルム

【図2】


【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Snを20重量%以上39.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下含有する合金よりなる、温度ヒューズに用いられる可溶素子。
【請求項2】
前記合金はInを49〜55重量%含有する、請求の範囲第1項に記載の可溶素子。
【請求項3】
第1と第2の金属端子と、
前記第1と第2の金属端子の間に接続された、Snを20重量%以上39.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下含有する可溶合金と、
を備えた温度ヒューズ。
【請求項4】
前記可溶合金は、Inを49〜55重量%含有する、請求の範囲第3項に記載の温度ヒューズ。
【請求項5】
前記可溶合金を収納する絶縁収納体をさらに備えた、請求の範囲第3項に記載の温度ヒューズ。
【請求項6】
前記絶縁収納体は、
前記第1と第2の金属端子が取り付けられた第1の絶縁フィルムと、
前記第1の絶縁フィルムの第1面と前記可溶合金の上方に位置し、かつ前記第1の絶縁フィルムとの間に空間を形成する第2の絶縁フィルムと、
を備えた、請求の範囲第5項に記載の温度ヒューズ。
【請求項7】
前記第1と第2の金属端子は前記第1の絶縁フィルムの前記第1面上に位置する、請求の範囲第6項に記載の温度ヒューズ。
【請求項8】
前記第1と第2の金属端子の一部は前記第1の絶縁フィルムの前記第1面の上方に位置し、前記第1と第2の金属端子の他の一部は前記第1の絶縁フィルムの第2面の上方に位置し、前記可溶合金は前記第1と第2の金属端子の前記一部に接続される、請求の範囲第6項に記載の温度ヒューズ。
【請求項9】
前記第1の絶縁フィルムと前記第2の絶縁フィルムとは温度ヒューズ本体部を構成し、前記温度ヒューズ本体部の長さは2.0〜5.0mmである、請求の範囲第6項に記載の温度ヒューズ。
【請求項10】
前記絶縁収納体は、
開口部を有する有底筒状の絶縁ケースと、
前記絶縁ケースの開口部を封口する封口体と、
をさらに備え、前記第1と第2の金属端子は前記開口部から前記絶縁ケースの外に同一方向に導出される、請求の範囲第5項に記載の温度ヒューズ。
【請求項11】
前記絶縁収納体は、
両端に開口部を有する筒状の絶縁ケースと、
前記絶縁ケースの前記両端の前記開口部をそれぞれ封口する封口体と、
をさらに備え、前記第1と第2の金属端子は前記絶縁ケースの前記両端の前記開口部より前記絶縁ケースの外に導出される、請求の範囲第5項に記載の温度ヒューズ。
【請求項12】
電池本体と、
前記電池本体に結合する第1の金属端子と、
第2の金属端子と、
前記第1と第2の金属端子の間に接続された、Snを20重量%以上39.5重量%以下、Biを11.5重量%以上31重量%以下、Inを49重量%以上68.5重量%以下含有する、前記電池本体からの熱により溶ける可溶合金と、
を有する、前記電池本体からの熱により溶断して前記電池本体からの電流を遮断する温度ヒューズと、
を備えた電池。
【請求項13】
前記可溶合金は、Inを49〜55重量%含有する、請求の範囲第12項に記載の電池。

【国際公開番号】WO2004/031426
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541293(P2004−541293)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012769
【国際出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】