説明

温度勾配を小とした音響流体機械

【課題】 音響流体機械において、音響共振管の基部と先端部との間の温度勾配を小さくする。
【解決手段】 音響共振管2の大径の基端部内側に、加振装置3をもって、微小振幅で軸線方向に高速で往復運動させられるピストンを設け、このピストンの往復運動に伴う音響共振管2内の圧力変動により、音響共振管2の先端部に設けたバルブ手段4を介して、流体を音響共振管2内へ吸入し吐出させるようになっている音響流体機械1に、基端部に吐気孔7を有する導気筒9を、若干の間隙を設けて被せ、バルブ手段4から吐出する加圧気体を、導気筒9の先端部より、導気筒9内へ送入することにより、バルブ手段4部分を冷却させた後、導気筒9の基端部の吐気孔7より排出させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響共振管における加振装置が設けられている基部と、吸入吐出用のバルブ手段が設けられている先端部との間の温度勾配を極力小としうるようにした音響流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
音響共振によって管内波動を生起させうるようにした先細状の音響共振管の基部に、ピストンを備える加振装置を設け、かつ音響共振管の先端部に、その内部の圧力変動に伴って、流体を吸入し吐出させるバルブ手段を設けた音響流体機械は公知である(例えば特許文献1)。
【0003】
この音響流体機械においては、音響共振管の形状や寸度は、流体の温度が一定範囲にある時に、最適の共振周波数を発生するように設定されており、この最適の共振周波数によってのみ、流体の最適な吸入吐出が行われるようになっている。
従って、共振周波数が決められた一定範囲から外れると、圧縮比は小さくなって、所望の吐出圧力を得ることはできなくなる。
【0004】
この共振周波数は、共鳴管の温度が変化するのに伴って変化するので、その共振周波数を演算して、この共振周波数に合うように、ピストンの加振駆動装置の周波数を変更させて、所要の吸入吐出機能を発揮させるようにしている。
【0005】
そのためには、演算機器を使用して、ピストンの加振駆動装置を変更操作することが必要であり、構成が複雑となるとともにコスト高となる。
【0006】
また、音響流体機械の音響共振管内の温度は、通常は閉じられている先端部、すなわちバルブ手段側装置側では高く、かつ通常は開口されているピストンとその加振装置側では低くて、その温度勾配は大である。この音響共鳴管内の温度勾配をできるだけ小とすれば、設定した共振周波数はずれることなく(あるいはそのずれは小さくて)正常な圧縮領域内に収まることとなる。
【特許文献1】特開2004−116309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような観点から、音響共振管の基部と先端部との間の温度勾配をできるだけ小としうるようにした音響流体機械を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、〔特許請求の範囲〕の各請求項に、記載されている次の発明によって解決される。
(1)音響共振管の大径の基端部内側に、加振装置をもって、微小振幅で軸線方向に高速で往復運動させられるピストンを設け、このピストンの往復運動に伴う音響共振管内の圧力変動により、音響共振管の先端部に設けたバルブ手段を介して、流体を音響共振管内へ吸入し吐出させるようになっている音響流体機械に、基端部に吐気孔を有する導気筒を、若干の間隙を設けて被せ、前記バルブ手段から吐出する加圧気体を、導気筒の先端部より、導気筒内へ送入することにより、前部バルブ手段部分を冷却させた後、導気筒の基端部の前記吐気孔より排出させるようにする。
【0009】
(2)上記(1)項において、バルブ手段から吐出する加圧気体を、導気筒内へ送入するに先立って冷却する。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、バルブ手段から吐出する加圧気体の一部を分流させて、導気筒内へ送入するようにする。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、バルブ手段に接続された吐出管に調節分流弁を設け、この調節分流弁により、バルブ手段から吐出する加圧気体の導気筒の先端部への送入量を調節しうるようにする。
【0012】
(5)上記(3)または(4)項において、導気筒の先端部より送入されて、その基端部より吐出する加圧気体を、バルブ手段に接続されている吐出管に合流させるようにする。
【0013】
(6)上記(4)または(5)項において、分流弁による分流割合を、音響共振管の適所に設けた温度センサーをもって制御するようにする。
【発明の効果】
【0014】
各請求項に記載の発明の効果は、次のとおりである。
請求項1記載の発明:−主要構成要素である音響共振管、加振装置、ピストン、バルブ手段に対して、個々に冷却手段を設けなくても、バルブ手段から吐出する加圧気体により、これら全部を同時に冷却させることができる。しかも、導気筒の基端の吐気孔より排出する圧力気体を、本来の目的に使用することができる。
【0015】
冷却は、音響共振管の熱い先端側から、低い基端側に向かって行われるので、音響共振管内の加圧時の温度勾配は小となり、温度の影響による共振周波数のずれをなくすことができる。そのため、共振周波数の変化に伴い、再度計算してピストンの周波数を変更するために加振装置を制御することなく、ほぼ一定の圧縮比を得ることができる。
【0016】
また音響流体機械全体が、導気筒により覆われているので、騒音や熱の外部への放出は抑制される。
【0017】
請求項2記載の発明:−バルブ手段部分の冷却は、より良好に行われる。
【0018】
請求項3記載の発明:−バルブ手段から吐出する加熱気体の一部のみを、導気筒内の冷却用に使用するので、効率的である。
【0019】
請求項4記載の発明:−冷却を要する個所の温度に応じて、分流弁を操作することにより、加熱気体の導気筒内への送入量を調節して、適切な冷却を行わせることができる。
【0020】
請求項5記載の発明:−冷却用に使用された加圧気体は、本来の目的に使用されるので無駄がない。
【0021】
請求項6記載の発明:−音響共振管の所望の個所における温度に応じて、バルブ手段の吐出管から吐出される加圧気体の導気筒への送入量が、自動的に調節される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付図面は、各請求項に記載の諸発明の実施形態を略示する縦断面図である。
【0023】
各図において、(1)は、公知の適宜の音響流体機械で、音響共振管(2)の大径の基部の内側に、加振装置(3)をもって、微小振幅で軸線方向に高速で往復運動させられるピストン(図示せず)を設け、このピストンの往復運動に伴う音響共振管(2)内の圧力変動により、その先端部に設けたバルブ手段(4)を介して、吸気管(5)から、外気(その他の流体)を音響共振管(2)内へ吸入し、吐出管(6)から吐出させるようになっている。
【0024】
音響流体機械(1)は、基端部および先端部が閉じられ、基端部に出口孔(7)を有し、かつ先端部に入口孔(8)を有する導気筒(9)内へ、若干の間隙を設けて収容されている。
【0025】
以上の構成は、各請求項に記載の発明において共通であるので、以下、共通部分には同一の符号を付すにとどめ、各請求項における異なる部分のみについて説明する。
【0026】
図1は、請求項1および2記載の発明の実施形態を示し、バルブ手段(4)の吐出管(6)は、クーラー(9)を経て、前記流入口(8)へ接続されている。
【0027】
図2では、吐出管(6)をクーラー(9)へ通す代わりに、吐出管(6)に冷却フィン(10)を設けてある。
【0028】
図3は、請求項3記載の発明の実施形態を示し、バルブ手段(4)からの吐出管(6)に分流弁(12)を設け、吐出する加圧気体の一部を分流させて、導気筒(9)の流入孔(8)へ送るようにしている。
【0029】
図4は、請求項4および5に記載の発明の実施形態を示し、バルブ手段(4)からの吐出管(6)に、手動その他の調節分流弁(13)を設け、必要に応じ、吐出する加圧気体の所望量を分流させて導気筒(9)内へ導入するようになっている。また導気筒(9)の吐気孔(7)は、調節分流弁(13)の先方において吐出管(6)に接続され、導気筒(9)内の排気を、吐出管(6)へ合流させて、無駄なく利用できるようにしてある。圧力差等により、吐出管(6)への合流が適切に行われ難いときには、適宜逆止弁またはインジェクタ等が組み込まれる。
【0030】
図5は、請求項6に記載の発明の実施形態を示し、図4に示した調節分流弁(13)の開度、すなわち分流割合を、音響共振管(2)の適所に設けた温度センサー(14)の示す値により、制御装置(15)を介して制御するようにしてある。
【0031】
図1〜図4のいずれの場合にも、導気筒(9)音響共振管(2)の外面要所に、放熱フィン(16)を設けておくのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】請求項1および2記載の発明の実施形態を略示する縦断正面図である。
【図2】図1における吐出管冷却の別の例を示す図1と同様の図である。
【図3】請求項3記載の発明の実施形態を略示する縦断正面図である。
【図4】請求項4および5に記載の発明の実施形態を略示する縦断正面図である。
【図5】請求項6に記載の発明の実施形態を略示する縦断正面図である。
【符号の説明】
【0033】
(1)音響流体機械
(2)音響共振管
(3)加振装置
(4)バルブ手段
(5)吸気管
(6)吐出管
(7)吐気孔
(8)流入孔
(9)導気筒
(10)クーラー
(11)冷却フィン
(12)分流弁
(13)調節分流弁
(14)温度センサー
(15)制御装置
(16)放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響共振管の大径の基端部内側に、加振装置をもって、微小振幅で軸線方向に高速で往復運動させられるピストンを設け、このピストンの往復運動に伴う音響共振管内の圧力変動により、音響共振管の先端部に設けたバルブ手段を介して、流体を音響共振管内へ吸入し吐出させるようになっている音響流体機械に、基端部に吐気孔を有する導気筒を、若干の間隙を設けて被せ、前記バルブ手段から吐出する加圧気体を、導気筒の先端部より、導気筒内へ送入することにより、前部バルブ手段部分を冷却させた後、導気筒の基端部の前記吐気孔より排出させるようにしたことを特徴とする温度勾配を小とした音響流体機械。
【請求項2】
バルブ手段から吐出する加圧気体を、導気筒内へ導入するに先立って冷却するようにしたことを特徴とする請求項1記載の温度勾配を小とした音響流体機械。
【請求項3】
バルブ手段から吐出する加圧気体の一部を分流させて、導気筒内へ送入するようにした請求項1または2に記載の温度勾配を小とした音響流体機械。
【請求項4】
バルブ手段に接続された吐出管に調節分流弁を設け、この調節分流弁により、バルブ手段から吐出する加圧気体の導気筒の先端部への送入量を調節しうるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の温度勾配を小とした音響流体機械。
【請求項5】
導気筒の先端部より送入されて、その基端部より吐出する加圧気体を、バルブ手段に接続されている吐出管に合流させるようにしたことを特徴とする請求項3または4に記載の温度勾配を小とした音響流体機械。
【請求項6】
分流弁による分流割合を、音響共振管の適所に設けた温度センサーをもって制御するようにしたことを特徴とする請求項4または5に記載の温度勾配を小とした音響流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−77703(P2006−77703A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263655(P2004−263655)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】