温度測定用装置
【課題】温度センサ周辺の熱の過渡特性が実際の基板の熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を高い精度にて測定することができる温度測定用装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る温度測定用装置は、基板2と、基板2の一方の主面に配置された温度センサ3と、温度センサ3を用いて温度を検出する回路と温度センサ3との間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備える。温度センサ3の周囲における基板2の一方の主面には、基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されている。低熱容量帯は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3を取り囲むように、かつ、基板2の一方の主面から基板2の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されている。好ましくは、低熱容量帯は断面が凹状の溝である凹部8である。
【解決手段】本発明に係る温度測定用装置は、基板2と、基板2の一方の主面に配置された温度センサ3と、温度センサ3を用いて温度を検出する回路と温度センサ3との間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備える。温度センサ3の周囲における基板2の一方の主面には、基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されている。低熱容量帯は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3を取り囲むように、かつ、基板2の一方の主面から基板2の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されている。好ましくは、低熱容量帯は断面が凹状の溝である凹部8である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等における加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を測定する温度測定用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶ディスプレイなどの製品は、半導体基板を洗浄、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、層間絶縁膜の形成、加熱処理およびダイシング等の一連の諸処理を施すことにより製造されている。これらのうち加熱処理は、例えばパターンの露光後、層間絶縁膜の材料であるSOG(Spin On Glass)材の塗布後、または、フォトレジストの塗布後に行われる処理であり、半導体や液晶ディスプレイの製造プロセスに必須の重要な処理工程である。
【0003】
基板の加熱処理は、加熱処理ユニットにおいて行われる。この際、加熱処理ユニット内の温度管理は非常に重要である。温度管理が悪い場合、レジストの膜厚不良や現像不良を引き起こすからである。また、現像、エッチング、スパッタリングまたはCVD(Chemical Vapor Deposition)等による反応においても、基板の表面の温度を制御することが必要である。そのため、温度センサが埋め込まれたダミーの基板を用いて、加熱処理ユニット内の温度ではなく、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を測定する技術が用いられている。
【0004】
しかし、ダミーの基板に、熱伝導度や比熱といった熱物性が基板とは異なる材質からなる温度センサ等を埋め込むことにより、基板の実際の温度と、ダミーの基板により測定された温度とに誤差が生じる場合がある。そこで、基板の実際の温度を、なるべく正確に測定することができる温度測定用基板が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、表面に複数の凹部が形設された基板と、複数の凹部に嵌着され水晶振動子を有する複数の検温素子とを備える温度測定用基板について記載されている。また、特許文献2には、パラメータ(温度を含む)を測定するための装置について記載されている。特許文献2に記載されている温度を測定するための装置では、空洞中に電子処理部品等(集積回路等)を配置する際に、特定の熱特性を有する充填材料(ボンディング材料またはポッティング材料)を使用している。これにより、電子処理部品のない場合の基板と実質的に同じように、該装置が温度の変化を感知できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−139067号公報
【特許文献2】特表2007−536726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、温度測定装置には、RTD(Resistance Temperature Detector、測温抵抗体)、熱電対(サーモカップル)、CMOS温度センサあるいはサーミスタが、温度センサとしてよく使用されている。前述した特許文献1に記載の温度測定用基板では、検温素子に水晶振動子を用いて温度測定を行っている。しかし、検温素子を凹部に嵌着する際の接着剤および検温素子のパッケージの材質の熱容量や比熱といった熱物性によって、実際の基板の熱の過渡特性と比較して、検出素子周辺の熱の過渡特性が遅延することが想定される。
【0008】
特許文献2に記載されている温度を測定するための装置は、特定の熱特性を有するボンディング材料またはポッティング材料を用いることで、電子処理部品のない場合の基板と実質的に同じような温度の変化を感知できるよう構成されている。すなわち、実際の基板に近い熱の過渡特性を持たせ、感知される温度を実際の基板の温度と近づけている。ボンディング材料としては、熱伝導率が極めて高いものが好ましく、ダイアモンドの微粒子を充填したエポキシ材料が挙げられている。
【0009】
しかし、このような材料をボンディング材料として用いた場合、製造コストが高くかかってしまう。さらに、電子処理部品を構成する材質の熱容量によっても、該温度測定用基板での検出素子周辺の熱の過渡特性が、実際の基板の熱の過渡特性と比較して遅延する場合も想定される。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度センサ周辺の熱の過渡特性が実際の基板の熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を高い精度にて測定することができる温度測定用装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る温度測定用装置は、
基板と、
前記基板の一方の主面に配置された温度センサと、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と前記温度センサとの間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備え、
前記温度センサの周囲における前記基板の一方の主面には、前記基板を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されており、
前記低熱容量帯は、前記温度センサに所定の間隔をおき、前記温度センサを取り囲むように、前記基板の一方の主面から前記基板の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記低熱容量帯は、断面が凹状の溝であることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記低熱容量帯は、多孔質構造を有する物質で形成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記低熱容量帯は、ナノ結晶シリコンで形成されていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記基板の一方の主面には、前記温度センサが内部に埋め込まれるザグリ部が形成されており、
前記温度測定用装置は、前記温度センサを前記ザグリ部の内部に固着させる接合材と、内部に前記温度センサが固着された前記ザグリ部を封止する封止材とを備え、
前記低熱容量帯は、前記ザグリ部に所定の間隔をおき、前記温度センサおよび前記ザグリ部を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記温度測定用装置は、ウェーハ状の温度測定用装置であることを特徴とする。
【0017】
さらに好ましくは、前記温度センサは、RTDであることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記基板上に、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と、
前記回路で検出した温度のデータを記憶する記憶手段と、
前記回路に電力を供給する給電手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の温度測定用装置によれば、温度センサ周辺の熱の過渡特性が実際の基板の熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を高い精度にて測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す概略図である。
【図2】図1のX部分における拡大図である。
【図3】図2のY−Y’線で切断した断面図である。
【図4A】実施の形態に係る温度測定用ウェーハにおいて基板に配線を形成する製造工程を示す断面図である。
【図4B】基板にザグリ部および凹部を形成する製造工程を示す断面図である。
【図4C】ザグリ部に温度センサを埋め込み、ワイヤにより配線と接続する製造工程を示す断面図である。
【図4D】ザグリ部に埋め込んだ温度センサを封止する製造工程を示す断面図である。
【図5】実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す断面図である。
【図6】実施の形態の変形例2に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す拡大図である。
【図7】本発明の具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す斜視図である。
【図8】具体例のModel1に係るウェーハの構成例を示す断面図である。
【図9】具体例のModel2に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。
【図10】具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。
【図11】具体例に係るModel1ないしModel3の0〜10(秒)のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】具体例に係るModel1ないしModel3の0〜60(秒)のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】具体例に係るModel2またはModel3のModel1との温度差(℃)のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す概略図である。図1に示す図では、温度測定用ウェーハ1は、基板2と、複数の温度センサ3と、配線4と、処理基板5と、電源基板6とから構成されている。各温度センサ3の周辺には、その他の温度測定用ウェーハ1を構成する部材等も存在するが、これらについては後に詳細に述べる。温度測定用ウェーハ1は、半導体製造プロセスにおいて用いられる加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を測定するための、実際の被処理基板と同一材質の基板である。
【0023】
基板2は、シリコンから構成される。また、その上面に保護膜としてSiO2層またはポリイミド層等が形成されていてもよい。その他、当該分野で公知の材料でも構わない。
【0024】
配線4は、導体材料から構成されていればよく、例えば、アルミニウム、銅、金、チタン、タングステン、モリブデン、または、これらの合金等から構成されている。配線4は、処理基板5と各温度センサ3とを電気的に接続するよう、図1に示すように、基板2の一方の主面上に延在している。図2は、図1のX部分における拡大図である。図2に示すように、温度センサ3と配線4とは、直接電気的に接続されているわけではなく、ワイヤ7を介在して接続されている。図1には詳細に示していないが、同様に、配線4と処理基板5とも、ワイヤ7を介在して接続されている。
【0025】
処理基板5は、各温度センサ3を用いて温度を検出する回路および検出した温度のデータを記憶する回路を有する。回路には、MPU(Micro Processing Unit)、A/D(Analog to Digital)コンバータ、メモリ、アナログスイッチ(SW)等が実装されている。例えば、処理基板5は、ワイヤボンド技術によってこれらの回路素子が基板に実装されたものであり、熱圧着により基板2に貼付される。基板2に貼付された処理基板5は、ワイヤ7を介在して配線4と電気的に接続される。
【0026】
電源基板6は、処理基板5とワイヤ7等の導電体により電気的に接続されており、温度測定用ウェーハ1に電源を供給する。電源基板6には、バッテリまたはDC電源、例えば、薄膜固体電解質型電池が実装されており、有線により充電される。
【0027】
温度センサ3は、基板の一方の主面に複数個配置されている。図3は、図2のY−Y’線で切断した断面図である。図2および図3に示すように、温度センサ3は、基板の一方の主面に形成されている略円形状のザグリ部9の内部に埋め込まれている。さらに、ザグリ部9の底部には、温度センサ3を固着させるための接合材10が封入されている。
【0028】
温度センサ3と配線4とは、ワイヤボンド技術によってワイヤ7で電気的接続がなされており、温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9は封止材11によりポッティングされている。温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9の周辺には、略円形状に断面が凹状の溝である凹部8が形成されている。凹部8は、ザグリ部9に所定の間隔をおき、温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲むように、かつ基板2の一方の主面から所定の深さを有するよう形成されている。凹部8の温度センサ3との間隔、深さおよび幅の詳細については後に述べる。
【0029】
接合材10の材料は、基板2を構成するシリコン等のように熱伝導度が大きい方が好ましいが、耐熱性を有するとともに、加熱昇温されてもガスをほとんど発生しないものを使用する必要がある。例えば、熱伝導性フィラーが配合されたシリコーン系ゴム等を使用する。封止材11の材料は、基板2を構成するシリコン等との熱膨張率の差を考慮して、弾力性を有する材質を使用する必要がある。例えば、接合材10同様熱伝導性フィラーが配合されたシリコーン系ゴム等を使用する。これらの材料は、その他当該分野で公知の材料を用いても構わない。なお、本実施の形態に係る温度センサ3はRTDである。好ましくは、Pt(白金)RTDである。
【0030】
以下、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1の製造方法について、図4Aないし図4Dを用いて簡単に説明する。なお、本発明は、温度測定用ウェーハ1の温度センサ3周辺の領域に係る発明であるため、その他の領域の製造方法については当該分野で公知の技術を用いて製造するものとする。
【0031】
図4Aは、実施の形態に係る温度測定用ウェーハにおいて基板に配線を形成する製造工程を示す断面図である。まず、温度測定用ウェーハ1の基板2を選定し、その一方の主面に、導電体からなる配線4をパターニングする。図4Bは、基板にザグリ部および凹部を形成する製造工程を示す断面図である。図4Bに示すように、サンドブラストまたはエッチングにより温度センサ3が埋め込まれるザグリ部9、および、凹部8を形成する。
【0032】
図4Cは、ザグリ部に温度センサを埋め込み、ワイヤにより配線と接続する製造工程を示す断面図である。まず、形成されたザグリ部9の内部に、接合材10を封入し、温度センサ3を固着させる。次に、ワイヤボンド技術により温度センサ3と配線4とをワイヤ7を介して電気的に接続させる。図4Dは、ザグリ部に埋め込んだ温度センサを封止する製造工程を示す断面図である。図4Dに示すように、温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9を封止材11でポッティングを行う。
【0033】
以下、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1の使用方法、すなわち、該温度測定用ウェーハ1を用いた加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度の測定方法の一例について簡単に説明する。
【0034】
まず、ウェーハ搬送アームを用いて、加熱処理ユニット内に温度測定用ウェーハ1が搬入される。その際、例えば、PCを用いて有線で、温度測定回数、測定周期等の測定条件を設定し、処理基板5に記憶させておく。加熱処理ユニット内で加熱されると、温度測定用ウェーハ1の各温度センサ3(RTD)の抵抗値が変化する。処理基板5は、各温度センサ3(RTD)の抵抗値の変化から温度(の変化)を検出し、検出した温度のデータを記憶していく。温度測定用ウェーハ1の電気回路への給電は、予め充電された電源基板6が行う。
【0035】
温度測定が終了すると、温度測定用ウェーハ1によるウェーハの温度測定のデータは、処理基板5から、温度のデジタルデータとしてPCに有線で取り出される。また、電源基板6にも有線で充電が行われる。なお、このような温度測定用ダミーウェーハの取り扱いの詳細については、特許第3583665号公報を参照されたい。
【0036】
このように取り出された温度のデータは、実際のプロセスにおいて加熱処理ユニット内で使用されるウェーハの温度に極めて近くなる。これは、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1には、各温度センサ3周辺に、凹部8が形成されているためである。すなわち、凹部8の内部は使用の際には空気が存在することになり、空気は基板2の構成材料であるシリコンよりも熱容量が小さく、凹部8は低熱容量帯として働く。このため、温度測定用ウェーハ1全体の熱容量は凹部8がないときに比べ小さくなり、同じ熱量が与えられたとき、ウェーハ全体の過渡特性が向上する。したがって、各温度センサ3周辺における熱の過渡特性も上昇し、温度センサ3部分の熱の過渡特性を、実際の温度センサ3がない場合のウェーハの熱の過渡特性に近づけることができる。
【0037】
なお、凹部8の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等は、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性になるべく近くなるように予め調整して形成しておくものとする。すなわち、凹部8の温度センサ3からの距離、幅および深さは、温度センサ3の種類(材質)および大きさ、接合材10の材料または基板2の厚さ等に合わせ、それぞれ適したものに調整しておく。凹部8の最適形状を見積もるには、温度測定用ウェーハ1を各構成部品に分けてそれぞれの熱容量から計算する。例えば、温度センサ3の熱容量をCsJ/K・m3、ボンディング材料の熱容量をCbJ/K・m3、凹部8の材料の熱容量をCzJ/K・m3、Siの熱容量をCsiJ/K・m3、その他電子処理部品等の熱容量をCcJ/K・m3と置き、実際のウェーハ(基板)の熱容量CvJ/K・m3がこれらの和に等しくなるように凹部8の幅、深さ等を調整する。
【0038】
本実施の形態の温度測定用ウェーハ1によれば、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハの熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。特に、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけることによって、温度測定用ダミーウェーハを用いた温度測定において、従来の温度測定用ウェーハと比較して、加熱(温度変化)開始直後の温度をより正確に測定することができる。
【0039】
(実施の形態の変形例1)
図5は、実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す断面図である。温度測定用ウェーハ1の構成の概略については、図1に示した実施の形態と同様である。温度測定用ウェーハ1の各構成要素である基板2、温度センサ3、配線4、処理基板5、電源基板6、ワイヤ7、ザグリ部9、接合材10および封止材11の詳細については、前述した実施の形態と同様である。
【0040】
実施の形態の変形例1では、凹部8に換えて、略円形状の多孔質帯12が、同様に略円形状のザグリ部9に所定の間隔をおき、温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲むように、かつ基板2の一方の主面から所定の深さを有するよう形成されている。図5に示す温度センサ3周辺の上方から見た多孔質帯12の形状は、図2および図3に示す凹部8と同様である。多孔質帯12は、多孔質シリコン、好ましくはナノ結晶シリコン等の物質から構成されている。
【0041】
本実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハ1の製造方法は、図4Aないし図4Dに示した実施の形態に係る製造方法とほぼ同様であるが、図4Bに示す段階で凹部8を形成しない点において異なる。前述したように、多孔質帯12は多孔質シリコン(ナノ結晶シリコンも含む)から構成されるため、例えば、基板2(シリコン)上の多孔質帯12となる部分を、フッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することで形成する。シリコンからの多孔質シリコンへのさらに詳細な形成方法については、特開2005−73197号公報を参照されたい。
【0042】
なお、多孔質帯12の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等は、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性になるべく近くなるように予め調整して形成しておくものとする。すなわち、多孔質帯12の温度センサ3からの距離、幅および深さは、温度センサ3の種類(材料)および大きさ、接合材10の材料または基板2の厚さ等に合わせ、それぞれ適したものに調整しておく。
【0043】
本実施の形態の変形例1の温度測定用ウェーハ1においても、温度センサ3の周辺に基板2の材料(シリコン)よりも熱容量が小さい材料(多孔質シリコン(ナノ結晶シリコンも含む))からなる多孔質帯12が形成されており、低熱容量帯として働く。そのため、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハの熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。
【0044】
(実施の形態の変形例2)
図6は、実施の形態の変形例2に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す拡大図である。温度測定用ウェーハ1の構成の概略については、図1に示した実施の形態と同様である。温度測定用ウェーハ1の各構成要素の詳細についても、前述した実施の形態と同様である。
【0045】
本実施の形態の変形例2では、凹部8が温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲んでいない点において、前述した実施の形態と異なる。すなわち、図6に示すように、略四角形状の凹部8は、配線4と温度センサ3とがワイヤ7を介在して接続される部分には形成されていない。
【0046】
しかし、このような凹部8が形成された温度測定用ウェーハ1であっても、温度センサ3をある程度取り囲むように低熱容量帯(凹部8)が形成されているため、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけることができる。そのため、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。また、凹部8は配線4と温度センサ3との接続部分には形成されていないため、配線4の延在配置についても従来どおりの設計が可能となる。
【0047】
このように、本発明に係る温度測定用装置では、低熱容量帯(多孔質帯12または凹部8等)は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3をある程度取り囲むように形成されていればよく、低熱容量帯は全周にわたって連続して形成されていなくてもよい。
【0048】
例えば、本実施の形態の変形例2の他に、連続した低熱容量帯ではなく、断片的な低熱容量帯が、温度センサ3をある程度取り囲むように形成されていてもよい。しかし、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を上昇させ、実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性に近くなるよう、低熱容量帯の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等を適宜調整しておく必要がある。
【0049】
前述した実施の形態(変形例1および2も含む)では、配線4およびワイヤ7によって温度センサ3と処理基板5とが接続されている場合について述べた。しかし、本発明に係る温度測定用装置は、温度センサ3と処理基板5とが電気的に接続されるよう、これらの間を導電体により接続されていればどのような構成でも構わない。
【0050】
さらには、実施の形態で述べた処理基板5および電源基板6についても一例であり、本発明に係る温度測定用装置は、温度センサ3を用いて温度を検出することができる当該分野において公知の技術、電子部品等を用いればよい。例えば、処理基板5が記憶手段を備えず直接有線によって温度データを取り出したり、電源基板6を備えず該温度測定用装置に直接給電するような構成をとっていたり、または、これらの電子部品を基板2上に備えなくとも構わない。
【0051】
前述した実施の形態(変形例1および2も含む)では、温度センサ3がRTD(測温抵抗体)の場合について述べた。しかし、温度センサ3の種類は、RTD(測温抵抗体)以外にも、熱電対またはサーミスタ等の公知の温度センサ3でも構わない。温度センサ3の数についても多数の方が好ましいが、図1に示す数に限られない。また、温度センサ3は前述した実施の形態(変形例1および2も含む)で記載したように、基板2に形成されたザグリ部9の内部に完全に埋め込まれた形で構成されている必要はない。
【0052】
図3等に示した温度センサ3周辺の構成は一例であり、例えば、温度センサ3の上半分が基板2上から突出していても、ザグリ部9の内壁ぎりぎりに温度センサ3が埋め込まれるよう構成しても、さらには、ザグリ部9を形成せずに基板2上に直接温度センサ3が接合されても構わない。この場合、低熱容量帯は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3のみを取り囲むように形成される。
【0053】
実施の形態(変形例1および2も含む)では、本発明に係る温度測定用装置がウェーハ状である場合について述べた。しかし、その他の加熱処理ユニットを用いて製造する液晶ディスプレイ等の温度測定用装置にも適用することができる。この場合には、ガラス基板等に、ガラス基板等より熱容量が小さい低熱容量帯として機能する凹部8または多孔質ガラス等を形成すればよい。
【0054】
また、凹部8または多孔質構造以外でも、基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3を取り囲むように、基板2の一方の主面から基板2の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていればどのような構造でも構わない。例えば、凹部8が基板2の裏側に形成されていてもよいし、図2および図3に示す凹部8の中に基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量の材質を埋め込んでもよいし、または、図2および図3に示す凹部8の表面をさらに断熱壁で覆うことで凹部8への熱を遮断しさらに温度測定用ウェーハ1全体の熱の過渡特性を向上させても構わない。
【0055】
発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されることはなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。例えば、耐熱性のある部品を使用してセンサを構成し、500〜1000℃のような高熱範囲において温度を測定する場合も同様に過渡特性を向上させることができるようにしても構わない。
【0056】
(具体例)
熱流体解析ソフトFluentを用いて、本発明の温度測定用ウェーハ1に関する熱伝導シミュレーションを行った結果を以下に示す。
【0057】
Model1は実際の半導体プロセスにおけるウェーハ、Model2は従来の温度測定用ウェーハ、Model3は本発明に係る温度測定用ウェーハ1として熱伝導シミュレーションを行った。Model3の本発明に係る温度測定用ウェーハ1では、実施の形態に記載した、温度センサ3周辺に凹部8を形成した温度測定用ウェーハ1についてシミュレーションを行った。
【0058】
図7は、本発明の具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す斜視図である。本シミュレーションのModel3では、図7に示すように、円形の温度測定用ウェーハ1の基板2の中心に温度センサ3を配置し、その周囲を凹部8が取り囲むような形状を想定して行った。Model2は、図7に示す温度センサ3の周囲を取り囲む凹部8が形成されていない状態の(従来の)温度測定用ウェーハを想定して行った。Model1は、円形のウェーハの基板2のみの状態のウェーハを想定して行った。
【0059】
図8は、具体例のModel1に係るウェーハの構成例を示す断面図である。図9は、具体例のModel2に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。図10は、具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。いずれの図も、図7に示す円形ウェーハの中心軸からの断面図を示している。
【0060】
図8に示すように、Model1に係る半導体プロセスにおけるウェーハは、Si基板13と、その上のSiO2層14と、さらにその上のポリイミド層15とから構成されている。該ウェーハはステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さaは0.775mm、Si基板13とステージ16との距離bは0.1mm、中心軸からのウェーハの端部までの距離(すなわち、ウェーハの半径)cは75mmとした。温度をシミュレーションするウェーハのMonitor Pointは、図8に示すウェーハの右端から0.1mmの場所とした。
【0061】
図9に示すように、Model2に係る従来の温度測定用ウェーハは、Si基板13と、基材となるAl2O3からなる温度センサ3と、保護膜となるSiO2層14と、温度センサ3を封止および接合するシリコーンからなる耐熱ペースト17とから構成されている。該ウェーハはステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さa、Si基板13とステージ16との距離b、中心軸からのウェーハの端部までの距離cはModel1と同様である。温度センサ3の高さdは、0.5mmとした。温度をシミュレーションするMonitor Pointは、図9に示すように、ウェーハの中心軸上における温度センサ3とSiO2層14との界面とした。
【0062】
図10に示すように、Model3に係る本発明の温度測定用ウェーハ1は、Model2と同様に、Si基板13と、温度センサ3と、SiO2層14と、耐熱ペースト17とから構成されている。しかし、図7に示したように、Si基板13上には温度センサ3の周囲を取り囲むように凹部8が形成されている。温度測定用ウェーハ1はステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さa、Si基板13とステージ16との距離b、中心軸からの温度測定用ウェーハ1の端部までの距離c、温度センサ3の高さdはModel1およびModel2と同様である。凹部8の耐熱ペースト17からの距離eは1.25mm、凹部8の幅fは1.25mm、凹部8の深さgは0.45mmとした。温度をシミュレーションするMonitor Pointは、Model2と同様である。
【0063】
熱伝導率は、Si基板13が148W/m・K、SiO2層14が0.90W/m・K、ポリイミド層15が0.29W/m・K、温度センサ3の基材のAl2O3が30W/m・K、温度センサ3の保護膜のSiO2が1.10W/m・K、耐熱ペースト17のシリコーンが0.70としてシミュレーションを行った。プロキシミティ・ギャップは空気とした。すなわち、Si基板13とステージ16との間の空間は空気とした。また、凹部8内部の空間も空気とし、凹部8の熱物性は空気の熱物性と同様である。
【0064】
図11は、具体例に係るModel1ないしModel3の0〜10(秒)のシミュレーション結果を示す図である。2秒の時点で温度が高い方からModel1、Model3、Model2の順に並んでいる。図12は、具体例に係るModel1ないしModel3の0〜60(秒)のシミュレーション結果を示す図である。5秒の時点で温度が高い方からModel1とModel3がほとんど重なっており、Model2は若干温度が低くなっている。図13は、具体例に係るModel2またはModel3のModel1との温度差(℃)のシミュレーション結果を示す図である。すなわち、各図中には、Model1ないしModel3の0〜10(秒)の時間経過におけるモニター温度、Model1ないしModel3の0〜60(秒)の時間経過におけるモニター温度、および、Model1のモニター温度とModel2またはModel3のモニター温度との温度差(Model1−Model2およびModel1−Model3)が示されている。
【0065】
図11ないし図13に示すように、Model3はModel1より過渡特性に劣るが、Model2と比較してModel3の方が、より早い時間経過の段階(10秒付近)においてModel1との温度差の値が小さくなっており、その後モニター温度も定常化している。これは、温度センサ3周辺にSi基板13よりも熱容量が小さい低熱容量帯となる凹部8を形成したため、Model3の温度センサ3周辺をマクロで見た場合の熱の過渡特性が、Model1の場合の熱の過渡特性により近くなったと考えられる。
【0066】
上述のシミュレーションの結果から、Model3に示した凹部8以外でも、温度センサ3の周辺に基板を形成する材料よりも熱容量が小さい材料からなる低熱容量帯を形成することによって、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけ得ることが想定される。これにより、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができ、また、従来の温度測定用ウェーハと比較して加熱(温度変化)開始直後の温度をより正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 温度測定用ウェーハ
2 基板
3 温度センサ
4 配線
5 処理基板
6 電源基板
7 ワイヤ
8 凹部
9 ザグリ部
10 接合材
11 封止材
12 多孔質帯
13 Si基板
14 SiO2層
15 ポリイミド層
16 ステージ
17 耐熱ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等における加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を測定する温度測定用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶ディスプレイなどの製品は、半導体基板を洗浄、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、層間絶縁膜の形成、加熱処理およびダイシング等の一連の諸処理を施すことにより製造されている。これらのうち加熱処理は、例えばパターンの露光後、層間絶縁膜の材料であるSOG(Spin On Glass)材の塗布後、または、フォトレジストの塗布後に行われる処理であり、半導体や液晶ディスプレイの製造プロセスに必須の重要な処理工程である。
【0003】
基板の加熱処理は、加熱処理ユニットにおいて行われる。この際、加熱処理ユニット内の温度管理は非常に重要である。温度管理が悪い場合、レジストの膜厚不良や現像不良を引き起こすからである。また、現像、エッチング、スパッタリングまたはCVD(Chemical Vapor Deposition)等による反応においても、基板の表面の温度を制御することが必要である。そのため、温度センサが埋め込まれたダミーの基板を用いて、加熱処理ユニット内の温度ではなく、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を測定する技術が用いられている。
【0004】
しかし、ダミーの基板に、熱伝導度や比熱といった熱物性が基板とは異なる材質からなる温度センサ等を埋め込むことにより、基板の実際の温度と、ダミーの基板により測定された温度とに誤差が生じる場合がある。そこで、基板の実際の温度を、なるべく正確に測定することができる温度測定用基板が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、表面に複数の凹部が形設された基板と、複数の凹部に嵌着され水晶振動子を有する複数の検温素子とを備える温度測定用基板について記載されている。また、特許文献2には、パラメータ(温度を含む)を測定するための装置について記載されている。特許文献2に記載されている温度を測定するための装置では、空洞中に電子処理部品等(集積回路等)を配置する際に、特定の熱特性を有する充填材料(ボンディング材料またはポッティング材料)を使用している。これにより、電子処理部品のない場合の基板と実質的に同じように、該装置が温度の変化を感知できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−139067号公報
【特許文献2】特表2007−536726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、温度測定装置には、RTD(Resistance Temperature Detector、測温抵抗体)、熱電対(サーモカップル)、CMOS温度センサあるいはサーミスタが、温度センサとしてよく使用されている。前述した特許文献1に記載の温度測定用基板では、検温素子に水晶振動子を用いて温度測定を行っている。しかし、検温素子を凹部に嵌着する際の接着剤および検温素子のパッケージの材質の熱容量や比熱といった熱物性によって、実際の基板の熱の過渡特性と比較して、検出素子周辺の熱の過渡特性が遅延することが想定される。
【0008】
特許文献2に記載されている温度を測定するための装置は、特定の熱特性を有するボンディング材料またはポッティング材料を用いることで、電子処理部品のない場合の基板と実質的に同じような温度の変化を感知できるよう構成されている。すなわち、実際の基板に近い熱の過渡特性を持たせ、感知される温度を実際の基板の温度と近づけている。ボンディング材料としては、熱伝導率が極めて高いものが好ましく、ダイアモンドの微粒子を充填したエポキシ材料が挙げられている。
【0009】
しかし、このような材料をボンディング材料として用いた場合、製造コストが高くかかってしまう。さらに、電子処理部品を構成する材質の熱容量によっても、該温度測定用基板での検出素子周辺の熱の過渡特性が、実際の基板の熱の過渡特性と比較して遅延する場合も想定される。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度センサ周辺の熱の過渡特性が実際の基板の熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を高い精度にて測定することができる温度測定用装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る温度測定用装置は、
基板と、
前記基板の一方の主面に配置された温度センサと、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と前記温度センサとの間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備え、
前記温度センサの周囲における前記基板の一方の主面には、前記基板を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されており、
前記低熱容量帯は、前記温度センサに所定の間隔をおき、前記温度センサを取り囲むように、前記基板の一方の主面から前記基板の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記低熱容量帯は、断面が凹状の溝であることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記低熱容量帯は、多孔質構造を有する物質で形成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記低熱容量帯は、ナノ結晶シリコンで形成されていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記基板の一方の主面には、前記温度センサが内部に埋め込まれるザグリ部が形成されており、
前記温度測定用装置は、前記温度センサを前記ザグリ部の内部に固着させる接合材と、内部に前記温度センサが固着された前記ザグリ部を封止する封止材とを備え、
前記低熱容量帯は、前記ザグリ部に所定の間隔をおき、前記温度センサおよび前記ザグリ部を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記温度測定用装置は、ウェーハ状の温度測定用装置であることを特徴とする。
【0017】
さらに好ましくは、前記温度センサは、RTDであることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記基板上に、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と、
前記回路で検出した温度のデータを記憶する記憶手段と、
前記回路に電力を供給する給電手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の温度測定用装置によれば、温度センサ周辺の熱の過渡特性が実際の基板の熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理される基板の実際の温度を高い精度にて測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す概略図である。
【図2】図1のX部分における拡大図である。
【図3】図2のY−Y’線で切断した断面図である。
【図4A】実施の形態に係る温度測定用ウェーハにおいて基板に配線を形成する製造工程を示す断面図である。
【図4B】基板にザグリ部および凹部を形成する製造工程を示す断面図である。
【図4C】ザグリ部に温度センサを埋め込み、ワイヤにより配線と接続する製造工程を示す断面図である。
【図4D】ザグリ部に埋め込んだ温度センサを封止する製造工程を示す断面図である。
【図5】実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す断面図である。
【図6】実施の形態の変形例2に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す拡大図である。
【図7】本発明の具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す斜視図である。
【図8】具体例のModel1に係るウェーハの構成例を示す断面図である。
【図9】具体例のModel2に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。
【図10】具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。
【図11】具体例に係るModel1ないしModel3の0〜10(秒)のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】具体例に係るModel1ないしModel3の0〜60(秒)のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】具体例に係るModel2またはModel3のModel1との温度差(℃)のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す概略図である。図1に示す図では、温度測定用ウェーハ1は、基板2と、複数の温度センサ3と、配線4と、処理基板5と、電源基板6とから構成されている。各温度センサ3の周辺には、その他の温度測定用ウェーハ1を構成する部材等も存在するが、これらについては後に詳細に述べる。温度測定用ウェーハ1は、半導体製造プロセスにおいて用いられる加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を測定するための、実際の被処理基板と同一材質の基板である。
【0023】
基板2は、シリコンから構成される。また、その上面に保護膜としてSiO2層またはポリイミド層等が形成されていてもよい。その他、当該分野で公知の材料でも構わない。
【0024】
配線4は、導体材料から構成されていればよく、例えば、アルミニウム、銅、金、チタン、タングステン、モリブデン、または、これらの合金等から構成されている。配線4は、処理基板5と各温度センサ3とを電気的に接続するよう、図1に示すように、基板2の一方の主面上に延在している。図2は、図1のX部分における拡大図である。図2に示すように、温度センサ3と配線4とは、直接電気的に接続されているわけではなく、ワイヤ7を介在して接続されている。図1には詳細に示していないが、同様に、配線4と処理基板5とも、ワイヤ7を介在して接続されている。
【0025】
処理基板5は、各温度センサ3を用いて温度を検出する回路および検出した温度のデータを記憶する回路を有する。回路には、MPU(Micro Processing Unit)、A/D(Analog to Digital)コンバータ、メモリ、アナログスイッチ(SW)等が実装されている。例えば、処理基板5は、ワイヤボンド技術によってこれらの回路素子が基板に実装されたものであり、熱圧着により基板2に貼付される。基板2に貼付された処理基板5は、ワイヤ7を介在して配線4と電気的に接続される。
【0026】
電源基板6は、処理基板5とワイヤ7等の導電体により電気的に接続されており、温度測定用ウェーハ1に電源を供給する。電源基板6には、バッテリまたはDC電源、例えば、薄膜固体電解質型電池が実装されており、有線により充電される。
【0027】
温度センサ3は、基板の一方の主面に複数個配置されている。図3は、図2のY−Y’線で切断した断面図である。図2および図3に示すように、温度センサ3は、基板の一方の主面に形成されている略円形状のザグリ部9の内部に埋め込まれている。さらに、ザグリ部9の底部には、温度センサ3を固着させるための接合材10が封入されている。
【0028】
温度センサ3と配線4とは、ワイヤボンド技術によってワイヤ7で電気的接続がなされており、温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9は封止材11によりポッティングされている。温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9の周辺には、略円形状に断面が凹状の溝である凹部8が形成されている。凹部8は、ザグリ部9に所定の間隔をおき、温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲むように、かつ基板2の一方の主面から所定の深さを有するよう形成されている。凹部8の温度センサ3との間隔、深さおよび幅の詳細については後に述べる。
【0029】
接合材10の材料は、基板2を構成するシリコン等のように熱伝導度が大きい方が好ましいが、耐熱性を有するとともに、加熱昇温されてもガスをほとんど発生しないものを使用する必要がある。例えば、熱伝導性フィラーが配合されたシリコーン系ゴム等を使用する。封止材11の材料は、基板2を構成するシリコン等との熱膨張率の差を考慮して、弾力性を有する材質を使用する必要がある。例えば、接合材10同様熱伝導性フィラーが配合されたシリコーン系ゴム等を使用する。これらの材料は、その他当該分野で公知の材料を用いても構わない。なお、本実施の形態に係る温度センサ3はRTDである。好ましくは、Pt(白金)RTDである。
【0030】
以下、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1の製造方法について、図4Aないし図4Dを用いて簡単に説明する。なお、本発明は、温度測定用ウェーハ1の温度センサ3周辺の領域に係る発明であるため、その他の領域の製造方法については当該分野で公知の技術を用いて製造するものとする。
【0031】
図4Aは、実施の形態に係る温度測定用ウェーハにおいて基板に配線を形成する製造工程を示す断面図である。まず、温度測定用ウェーハ1の基板2を選定し、その一方の主面に、導電体からなる配線4をパターニングする。図4Bは、基板にザグリ部および凹部を形成する製造工程を示す断面図である。図4Bに示すように、サンドブラストまたはエッチングにより温度センサ3が埋め込まれるザグリ部9、および、凹部8を形成する。
【0032】
図4Cは、ザグリ部に温度センサを埋め込み、ワイヤにより配線と接続する製造工程を示す断面図である。まず、形成されたザグリ部9の内部に、接合材10を封入し、温度センサ3を固着させる。次に、ワイヤボンド技術により温度センサ3と配線4とをワイヤ7を介して電気的に接続させる。図4Dは、ザグリ部に埋め込んだ温度センサを封止する製造工程を示す断面図である。図4Dに示すように、温度センサ3が埋め込まれたザグリ部9を封止材11でポッティングを行う。
【0033】
以下、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1の使用方法、すなわち、該温度測定用ウェーハ1を用いた加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度の測定方法の一例について簡単に説明する。
【0034】
まず、ウェーハ搬送アームを用いて、加熱処理ユニット内に温度測定用ウェーハ1が搬入される。その際、例えば、PCを用いて有線で、温度測定回数、測定周期等の測定条件を設定し、処理基板5に記憶させておく。加熱処理ユニット内で加熱されると、温度測定用ウェーハ1の各温度センサ3(RTD)の抵抗値が変化する。処理基板5は、各温度センサ3(RTD)の抵抗値の変化から温度(の変化)を検出し、検出した温度のデータを記憶していく。温度測定用ウェーハ1の電気回路への給電は、予め充電された電源基板6が行う。
【0035】
温度測定が終了すると、温度測定用ウェーハ1によるウェーハの温度測定のデータは、処理基板5から、温度のデジタルデータとしてPCに有線で取り出される。また、電源基板6にも有線で充電が行われる。なお、このような温度測定用ダミーウェーハの取り扱いの詳細については、特許第3583665号公報を参照されたい。
【0036】
このように取り出された温度のデータは、実際のプロセスにおいて加熱処理ユニット内で使用されるウェーハの温度に極めて近くなる。これは、本実施の形態に係る温度測定用ウェーハ1には、各温度センサ3周辺に、凹部8が形成されているためである。すなわち、凹部8の内部は使用の際には空気が存在することになり、空気は基板2の構成材料であるシリコンよりも熱容量が小さく、凹部8は低熱容量帯として働く。このため、温度測定用ウェーハ1全体の熱容量は凹部8がないときに比べ小さくなり、同じ熱量が与えられたとき、ウェーハ全体の過渡特性が向上する。したがって、各温度センサ3周辺における熱の過渡特性も上昇し、温度センサ3部分の熱の過渡特性を、実際の温度センサ3がない場合のウェーハの熱の過渡特性に近づけることができる。
【0037】
なお、凹部8の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等は、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性になるべく近くなるように予め調整して形成しておくものとする。すなわち、凹部8の温度センサ3からの距離、幅および深さは、温度センサ3の種類(材質)および大きさ、接合材10の材料または基板2の厚さ等に合わせ、それぞれ適したものに調整しておく。凹部8の最適形状を見積もるには、温度測定用ウェーハ1を各構成部品に分けてそれぞれの熱容量から計算する。例えば、温度センサ3の熱容量をCsJ/K・m3、ボンディング材料の熱容量をCbJ/K・m3、凹部8の材料の熱容量をCzJ/K・m3、Siの熱容量をCsiJ/K・m3、その他電子処理部品等の熱容量をCcJ/K・m3と置き、実際のウェーハ(基板)の熱容量CvJ/K・m3がこれらの和に等しくなるように凹部8の幅、深さ等を調整する。
【0038】
本実施の形態の温度測定用ウェーハ1によれば、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハの熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。特に、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけることによって、温度測定用ダミーウェーハを用いた温度測定において、従来の温度測定用ウェーハと比較して、加熱(温度変化)開始直後の温度をより正確に測定することができる。
【0039】
(実施の形態の変形例1)
図5は、実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す断面図である。温度測定用ウェーハ1の構成の概略については、図1に示した実施の形態と同様である。温度測定用ウェーハ1の各構成要素である基板2、温度センサ3、配線4、処理基板5、電源基板6、ワイヤ7、ザグリ部9、接合材10および封止材11の詳細については、前述した実施の形態と同様である。
【0040】
実施の形態の変形例1では、凹部8に換えて、略円形状の多孔質帯12が、同様に略円形状のザグリ部9に所定の間隔をおき、温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲むように、かつ基板2の一方の主面から所定の深さを有するよう形成されている。図5に示す温度センサ3周辺の上方から見た多孔質帯12の形状は、図2および図3に示す凹部8と同様である。多孔質帯12は、多孔質シリコン、好ましくはナノ結晶シリコン等の物質から構成されている。
【0041】
本実施の形態の変形例1に係る温度測定用ウェーハ1の製造方法は、図4Aないし図4Dに示した実施の形態に係る製造方法とほぼ同様であるが、図4Bに示す段階で凹部8を形成しない点において異なる。前述したように、多孔質帯12は多孔質シリコン(ナノ結晶シリコンも含む)から構成されるため、例えば、基板2(シリコン)上の多孔質帯12となる部分を、フッ化水素水溶液とエタノールとの混合液からなる電解液中で陽極酸化処理することで形成する。シリコンからの多孔質シリコンへのさらに詳細な形成方法については、特開2005−73197号公報を参照されたい。
【0042】
なお、多孔質帯12の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等は、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性になるべく近くなるように予め調整して形成しておくものとする。すなわち、多孔質帯12の温度センサ3からの距離、幅および深さは、温度センサ3の種類(材料)および大きさ、接合材10の材料または基板2の厚さ等に合わせ、それぞれ適したものに調整しておく。
【0043】
本実施の形態の変形例1の温度測定用ウェーハ1においても、温度センサ3の周辺に基板2の材料(シリコン)よりも熱容量が小さい材料(多孔質シリコン(ナノ結晶シリコンも含む))からなる多孔質帯12が形成されており、低熱容量帯として働く。そのため、温度センサ3周辺の熱の過渡特性が実際のウェーハの熱の過渡特性に近く、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。
【0044】
(実施の形態の変形例2)
図6は、実施の形態の変形例2に係る温度測定用ウェーハの温度センサ周辺を示す拡大図である。温度測定用ウェーハ1の構成の概略については、図1に示した実施の形態と同様である。温度測定用ウェーハ1の各構成要素の詳細についても、前述した実施の形態と同様である。
【0045】
本実施の形態の変形例2では、凹部8が温度センサ3およびザグリ部9を完全に取り囲んでいない点において、前述した実施の形態と異なる。すなわち、図6に示すように、略四角形状の凹部8は、配線4と温度センサ3とがワイヤ7を介在して接続される部分には形成されていない。
【0046】
しかし、このような凹部8が形成された温度測定用ウェーハ1であっても、温度センサ3をある程度取り囲むように低熱容量帯(凹部8)が形成されているため、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけることができる。そのため、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができる。また、凹部8は配線4と温度センサ3との接続部分には形成されていないため、配線4の延在配置についても従来どおりの設計が可能となる。
【0047】
このように、本発明に係る温度測定用装置では、低熱容量帯(多孔質帯12または凹部8等)は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3をある程度取り囲むように形成されていればよく、低熱容量帯は全周にわたって連続して形成されていなくてもよい。
【0048】
例えば、本実施の形態の変形例2の他に、連続した低熱容量帯ではなく、断片的な低熱容量帯が、温度センサ3をある程度取り囲むように形成されていてもよい。しかし、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を上昇させ、実際のウェーハ(基板)の熱の過渡特性に近くなるよう、低熱容量帯の幅、深さおよび形成位置(温度センサ3との距離)等を適宜調整しておく必要がある。
【0049】
前述した実施の形態(変形例1および2も含む)では、配線4およびワイヤ7によって温度センサ3と処理基板5とが接続されている場合について述べた。しかし、本発明に係る温度測定用装置は、温度センサ3と処理基板5とが電気的に接続されるよう、これらの間を導電体により接続されていればどのような構成でも構わない。
【0050】
さらには、実施の形態で述べた処理基板5および電源基板6についても一例であり、本発明に係る温度測定用装置は、温度センサ3を用いて温度を検出することができる当該分野において公知の技術、電子部品等を用いればよい。例えば、処理基板5が記憶手段を備えず直接有線によって温度データを取り出したり、電源基板6を備えず該温度測定用装置に直接給電するような構成をとっていたり、または、これらの電子部品を基板2上に備えなくとも構わない。
【0051】
前述した実施の形態(変形例1および2も含む)では、温度センサ3がRTD(測温抵抗体)の場合について述べた。しかし、温度センサ3の種類は、RTD(測温抵抗体)以外にも、熱電対またはサーミスタ等の公知の温度センサ3でも構わない。温度センサ3の数についても多数の方が好ましいが、図1に示す数に限られない。また、温度センサ3は前述した実施の形態(変形例1および2も含む)で記載したように、基板2に形成されたザグリ部9の内部に完全に埋め込まれた形で構成されている必要はない。
【0052】
図3等に示した温度センサ3周辺の構成は一例であり、例えば、温度センサ3の上半分が基板2上から突出していても、ザグリ部9の内壁ぎりぎりに温度センサ3が埋め込まれるよう構成しても、さらには、ザグリ部9を形成せずに基板2上に直接温度センサ3が接合されても構わない。この場合、低熱容量帯は、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3のみを取り囲むように形成される。
【0053】
実施の形態(変形例1および2も含む)では、本発明に係る温度測定用装置がウェーハ状である場合について述べた。しかし、その他の加熱処理ユニットを用いて製造する液晶ディスプレイ等の温度測定用装置にも適用することができる。この場合には、ガラス基板等に、ガラス基板等より熱容量が小さい低熱容量帯として機能する凹部8または多孔質ガラス等を形成すればよい。
【0054】
また、凹部8または多孔質構造以外でも、基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が、温度センサ3に所定の間隔をおき、温度センサ3を取り囲むように、基板2の一方の主面から基板2の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていればどのような構造でも構わない。例えば、凹部8が基板2の裏側に形成されていてもよいし、図2および図3に示す凹部8の中に基板2を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量の材質を埋め込んでもよいし、または、図2および図3に示す凹部8の表面をさらに断熱壁で覆うことで凹部8への熱を遮断しさらに温度測定用ウェーハ1全体の熱の過渡特性を向上させても構わない。
【0055】
発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されることはなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。例えば、耐熱性のある部品を使用してセンサを構成し、500〜1000℃のような高熱範囲において温度を測定する場合も同様に過渡特性を向上させることができるようにしても構わない。
【0056】
(具体例)
熱流体解析ソフトFluentを用いて、本発明の温度測定用ウェーハ1に関する熱伝導シミュレーションを行った結果を以下に示す。
【0057】
Model1は実際の半導体プロセスにおけるウェーハ、Model2は従来の温度測定用ウェーハ、Model3は本発明に係る温度測定用ウェーハ1として熱伝導シミュレーションを行った。Model3の本発明に係る温度測定用ウェーハ1では、実施の形態に記載した、温度センサ3周辺に凹部8を形成した温度測定用ウェーハ1についてシミュレーションを行った。
【0058】
図7は、本発明の具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す斜視図である。本シミュレーションのModel3では、図7に示すように、円形の温度測定用ウェーハ1の基板2の中心に温度センサ3を配置し、その周囲を凹部8が取り囲むような形状を想定して行った。Model2は、図7に示す温度センサ3の周囲を取り囲む凹部8が形成されていない状態の(従来の)温度測定用ウェーハを想定して行った。Model1は、円形のウェーハの基板2のみの状態のウェーハを想定して行った。
【0059】
図8は、具体例のModel1に係るウェーハの構成例を示す断面図である。図9は、具体例のModel2に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。図10は、具体例のModel3に係る温度測定用ウェーハの構成例を示す断面図である。いずれの図も、図7に示す円形ウェーハの中心軸からの断面図を示している。
【0060】
図8に示すように、Model1に係る半導体プロセスにおけるウェーハは、Si基板13と、その上のSiO2層14と、さらにその上のポリイミド層15とから構成されている。該ウェーハはステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さaは0.775mm、Si基板13とステージ16との距離bは0.1mm、中心軸からのウェーハの端部までの距離(すなわち、ウェーハの半径)cは75mmとした。温度をシミュレーションするウェーハのMonitor Pointは、図8に示すウェーハの右端から0.1mmの場所とした。
【0061】
図9に示すように、Model2に係る従来の温度測定用ウェーハは、Si基板13と、基材となるAl2O3からなる温度センサ3と、保護膜となるSiO2層14と、温度センサ3を封止および接合するシリコーンからなる耐熱ペースト17とから構成されている。該ウェーハはステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さa、Si基板13とステージ16との距離b、中心軸からのウェーハの端部までの距離cはModel1と同様である。温度センサ3の高さdは、0.5mmとした。温度をシミュレーションするMonitor Pointは、図9に示すように、ウェーハの中心軸上における温度センサ3とSiO2層14との界面とした。
【0062】
図10に示すように、Model3に係る本発明の温度測定用ウェーハ1は、Model2と同様に、Si基板13と、温度センサ3と、SiO2層14と、耐熱ペースト17とから構成されている。しかし、図7に示したように、Si基板13上には温度センサ3の周囲を取り囲むように凹部8が形成されている。温度測定用ウェーハ1はステージ16(130度に固定)によって加熱される。Si基板13の厚さa、Si基板13とステージ16との距離b、中心軸からの温度測定用ウェーハ1の端部までの距離c、温度センサ3の高さdはModel1およびModel2と同様である。凹部8の耐熱ペースト17からの距離eは1.25mm、凹部8の幅fは1.25mm、凹部8の深さgは0.45mmとした。温度をシミュレーションするMonitor Pointは、Model2と同様である。
【0063】
熱伝導率は、Si基板13が148W/m・K、SiO2層14が0.90W/m・K、ポリイミド層15が0.29W/m・K、温度センサ3の基材のAl2O3が30W/m・K、温度センサ3の保護膜のSiO2が1.10W/m・K、耐熱ペースト17のシリコーンが0.70としてシミュレーションを行った。プロキシミティ・ギャップは空気とした。すなわち、Si基板13とステージ16との間の空間は空気とした。また、凹部8内部の空間も空気とし、凹部8の熱物性は空気の熱物性と同様である。
【0064】
図11は、具体例に係るModel1ないしModel3の0〜10(秒)のシミュレーション結果を示す図である。2秒の時点で温度が高い方からModel1、Model3、Model2の順に並んでいる。図12は、具体例に係るModel1ないしModel3の0〜60(秒)のシミュレーション結果を示す図である。5秒の時点で温度が高い方からModel1とModel3がほとんど重なっており、Model2は若干温度が低くなっている。図13は、具体例に係るModel2またはModel3のModel1との温度差(℃)のシミュレーション結果を示す図である。すなわち、各図中には、Model1ないしModel3の0〜10(秒)の時間経過におけるモニター温度、Model1ないしModel3の0〜60(秒)の時間経過におけるモニター温度、および、Model1のモニター温度とModel2またはModel3のモニター温度との温度差(Model1−Model2およびModel1−Model3)が示されている。
【0065】
図11ないし図13に示すように、Model3はModel1より過渡特性に劣るが、Model2と比較してModel3の方が、より早い時間経過の段階(10秒付近)においてModel1との温度差の値が小さくなっており、その後モニター温度も定常化している。これは、温度センサ3周辺にSi基板13よりも熱容量が小さい低熱容量帯となる凹部8を形成したため、Model3の温度センサ3周辺をマクロで見た場合の熱の過渡特性が、Model1の場合の熱の過渡特性により近くなったと考えられる。
【0066】
上述のシミュレーションの結果から、Model3に示した凹部8以外でも、温度センサ3の周辺に基板を形成する材料よりも熱容量が小さい材料からなる低熱容量帯を形成することによって、温度センサ3周辺の熱の過渡特性を実際のウェーハの熱の過渡特性に近づけ得ることが想定される。これにより、加熱処理ユニット内で処理されるウェーハの実際の温度を高い精度にて測定することができ、また、従来の温度測定用ウェーハと比較して加熱(温度変化)開始直後の温度をより正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 温度測定用ウェーハ
2 基板
3 温度センサ
4 配線
5 処理基板
6 電源基板
7 ワイヤ
8 凹部
9 ザグリ部
10 接合材
11 封止材
12 多孔質帯
13 Si基板
14 SiO2層
15 ポリイミド層
16 ステージ
17 耐熱ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面に配置された温度センサと、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と前記温度センサとの間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備え、
前記温度センサの周囲における前記基板の一方の主面には、前記基板を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されており、
前記低熱容量帯は、前記温度センサに所定の間隔をおき、前記温度センサを取り囲むように、前記基板の一方の主面から前記基板の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていることを特徴とする温度測定用装置。
【請求項2】
前記低熱容量帯は、断面が凹状の溝であることを特徴とする請求項1に記載の温度測定用装置。
【請求項3】
前記低熱容量帯は、多孔質構造を有する物質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の温度測定用装置。
【請求項4】
前記低熱容量帯は、ナノ結晶シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1または3に記載の温度測定用装置。
【請求項5】
前記基板の一方の主面には、前記温度センサが内部に埋め込まれるザグリ部が形成されており、
前記温度測定用装置は、前記温度センサを前記ザグリ部の内部に固着させる接合材と、内部に前記温度センサが固着された前記ザグリ部を封止する封止材とを備え、
前記低熱容量帯は、前記ザグリ部に所定の間隔をおき、前記温度センサおよび前記ザグリ部を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項6】
前記温度測定用装置は、ウェーハ状の温度測定用装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項7】
前記温度センサは、RTDであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項8】
前記基板上に、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と、
前記回路で検出した温度のデータを記憶する記憶手段と、
前記回路に電力を供給する給電手段と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面に配置された温度センサと、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と前記温度センサとの間を電気的に接続するよう配置された導電体とを備え、
前記温度センサの周囲における前記基板の一方の主面には、前記基板を形成する物質よりも熱容量が小さい低熱容量帯が形成されており、
前記低熱容量帯は、前記温度センサに所定の間隔をおき、前記温度センサを取り囲むように、前記基板の一方の主面から前記基板の内部方向に向かって所定の深さを有するように形成されていることを特徴とする温度測定用装置。
【請求項2】
前記低熱容量帯は、断面が凹状の溝であることを特徴とする請求項1に記載の温度測定用装置。
【請求項3】
前記低熱容量帯は、多孔質構造を有する物質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の温度測定用装置。
【請求項4】
前記低熱容量帯は、ナノ結晶シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1または3に記載の温度測定用装置。
【請求項5】
前記基板の一方の主面には、前記温度センサが内部に埋め込まれるザグリ部が形成されており、
前記温度測定用装置は、前記温度センサを前記ザグリ部の内部に固着させる接合材と、内部に前記温度センサが固着された前記ザグリ部を封止する封止材とを備え、
前記低熱容量帯は、前記ザグリ部に所定の間隔をおき、前記温度センサおよび前記ザグリ部を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項6】
前記温度測定用装置は、ウェーハ状の温度測定用装置であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項7】
前記温度センサは、RTDであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【請求項8】
前記基板上に、
前記温度センサを用いて温度を検出する回路と、
前記回路で検出した温度のデータを記憶する記憶手段と、
前記回路に電力を供給する給電手段と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の温度測定用装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−128081(P2011−128081A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288410(P2009−288410)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]