説明

温度補償型圧電発振器

【課題】
本発明の目的は、圧電振動素子の周囲の温度と温度センサ素子が感知する温度に差が無く精度の高い温度補償が可能な温度補償型圧電発振器を提供すること。
【解決手段】
上記目的を達成する為本発明は、基板体とこの基板体の一方の主面に一体で設けられ第一の凹部を形成する第一の枠体と、基板体の他方の主面に一体で設けられ第二の凹部を形成する第二の枠体とからなる容器体と、第一の凹部内に搭載される圧電振動素子と、第一の集積回路素子と、第二の凹部内に搭載される第二の集積回路素子と、第一の凹部を気密封止する蓋体とを備え、第一の集積回路素子が温度センサと発振回路とを備え、第二の集積回路素子が温度補償回路を備えて構成されたことを特徴とし、又、前記第一の凹部内であって前記基板体に設けられる段差部を備え、前記第一の集積回路素子を前記段差部内に搭載したことを特徴として課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる温度補償型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から携帯用通信機器等の電子機器に温度補償型圧電発振器119が用いられている。従来の温度補償型圧電発振器119は、例えば図3に示されるように、基板体102上に圧電振動素子111が、基板体102の下面には集積回路素子116が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。容器体101の一構成部分であるセラミックから成る基板体102の上面には枠状の第一の枠体103が形成されており、第一の枠体103の内部で基板体102の上面には圧電振動素子111が配置されている。圧電振動素子111は、基板体102の一方面に形成された配線パターンに導電性接着剤13を介して固着されて、電気的、機械的に保持されている。また、第一の枠体103上面には蓋体104がシーム溶接等により接合され、圧電振動素子111を気密封止している。また、セラミックの第二の枠体105に囲まれ、基板体102の下面には部品搭載パッド(不図示、以下同じ)が設けられ、発振用の集積回路素子116が部品搭載パッド115上に搭載されている。さらに、第二の枠体105の下面4隅部には4つの外部端子電極106が形成されている。この外部端子電極106は、例えば、集積回路素子116からセラミック内部で引出配線114を介して接続された入出力端子として用いられる。
【特許文献1】特開2003−46251号公報
【0003】
なお、前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するには至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の温度補償型圧電発振器では、容器体内で基板により分断された第一の凹部内に圧電素子、第二の凹部内に温度センサ素子が備えられた集積回路が備えられている為、この温度差により精度が高い温度補償が出来なくなるおそれがある。即ち、同一の密閉された容器体内に圧電振動素子と集積回路素子の両方が配置されていない為に圧電振動素子周囲の温度と、圧電振動素子が配置された空間と異なる空間に配置された集積回路素子内部に設けられた温度センサで感知する温度とに差が生じる。その結果、温度補償型圧電発振器の温度補償精度を改善することが困難であるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、圧電振動素子の周囲の温度と温度センサ素子が感知する温度に差が無く、精度の高い温度補償が可能な温度補償型圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度補償型圧電発振器は、基板体と、この基板体の一方の主面に一体で設けられて第一の凹部を形成する第一の枠体と、前記基板体の他方の主面に一体で設けられて第二の凹部を形成する第二の枠体とからなる容器体と、前記第一の凹部内に搭載される圧電振動素子と、第一の集積回路素子と、前記第二の凹部内に搭載される第二の集積回路素子と、前記第一の凹部を気密封止する蓋体とを備え、前記第一の集積回路素子が温度センサと発振回路とを備え、前記第二の集積回路素子が温度補償回路を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の温度補償型圧電発振器は、前記第一の凹部内であって前記基板体に設けられる段差部を備え、前記第一の集積回路素子を前記段差部内に搭載した構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の温度補償型圧電発振器によれば、温度センサ素子と発振回路が内部に設けられた第一の集積回路素子が圧電振動素子と同じ密閉凹部内容器体内に収容され、温度補償回路が設けられた第二の集積回路は圧電振動素子が収容された凹部とは別の凹部に搭載される為に、圧電振動素子の温度と、集積回路素子内部に設けられる温度センサが感知する温度差を小さくすることが出来、また、第二の集積回路内の温度補償回路やメモリ素子からの発熱を圧電振動素子が収容された空間と別の空間とすることで水晶の温度変化を少なくすることが出来、その結果、温度補償精度が改善された温度補償型圧電発振器の構造を得ることが出来る。
【0009】
また、本発明の温度補償型圧電発振器によれば、温度補償精度が改善され、圧電振動素子と第一の集積回路を同じ空間内に空間的に重ねた配置とした小型の温度補償型圧電発振器の構造を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器19の概略の断面図であり、図2はその温度補償型圧電発振器19の下面図である。図1に図示する温度補償型圧電発振器19は主に、容器体1と、圧電振動素子11と第一の集積回路素子12と、第二の集積回路素子16、樹脂17から構成されている。図1に図示する温度補償型圧電発振器19は、第一の凹部7内に圧電振動素子11と第一の集積回路素子12が収容される。第一の凹部7内には基板体2に設けられた段差部8が備えられ、第一の集積回路素子12が段差部8の下段側平面に搭載され、圧電振動素子11が段差部8の上段側平面上に搭載されている。また、容器体1の第二の凹部18内に第二の集積回路素子16が収容される。図2に図示するように第二の枠体5の下面の四隅部と第二の枠体5の長辺中央部に外部端子電極6が配置されている。また、第二の枠体5で囲まれる基板体2の下面に、第二の集積回路素子16を搭載した構造であり、第二の集積回路素子16と第二の枠体5内部は樹脂17で被われている。また、外部端子電極6のうち四隅部の外部端子電極6は温度補償型圧電発振器19の発振機能の動作端子として、また、第二の枠体5の長辺中央部に設けられた外部端子電極6は圧電振動素板の機能を動作端子に用いられる。
【0012】
前記容器体1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板体2と、基板体2と同様のセラミック材料から成る第一の枠体3及び第二の枠体5からなる。第一の枠体3上には、42アロイやコバール、リン青銅等からなる蓋体4がシーム溶接等により接合されている。前記基板体2の上面に第一の枠体3を、下面に第二の枠体5を取着させ、第一の枠体3の上面に蓋体4を載置して固定させることによって容器体1が構成される。第一の枠体3の内側に位置する基板体2の上面に導電性接着剤13を介して圧電振動素子11と、第一の集積回路素子12が実装される。前記容器体1はその内部に、具体的には、基板体2の上面と、第一の枠体3の内面と、蓋体4の下面とで囲まれる第一の凹部7内に圧電振動素子11と、第一の集積回路素子12を収容して気密封止されている。
【0013】
一方、容器体1の第一の凹部7内に収容される圧電振動素子11は、所定の結晶軸でカットした圧電片の両主面に一対の振動電極を被着・形成して出来ており、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して圧電振動素子11に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こすようになっている。
【0014】
また一方で図1、図2に図示するように、上述した基板体2の下面には、第二の枠体5が被着・形成されており、第二の枠体5内部の基板体2の下面には、矩形状のフリップチップ型の第二の集積回路素子16が搭載されている。第二の集積回路素子16は導電性接着剤13を介して基板体2に接続されている。また、第二の集積回路素子16と第二の枠体5内部は樹脂17で覆われており、樹脂17により第二の集積回路素子16を保護する構造となっている。
【0015】
第一の集積回路素子12はその回路形成面に、周囲の温度状態を検知する温度センサと発振回路を備えている。また、第二の集積回路素子16には圧電振動素子11の温度特性を補償する温度補償データが記憶され、この温度補償データに基づいて前記圧電振動素子11の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路等が備えられている。第一の集積回路素子12の発振回路で生成された発振出力は、温度補償型圧電発振器19外部に出力された後、例えばクロック信号等の基準信号として利用される。ここで圧電振動素子11と、第一の集積回路素子12と、第二の集積回路素子16は図1に図示する基板体2の内層に設けられた引出配線14により接続されている。
【0016】
本発明の特徴部分は図1に図示するように、圧電振動素子11が収容される第一の凹部7内には温度センサや発振回路の機能を有する第一の集積回路素子12を配置し、第二の凹部18内には温度補償回路やメモリ素子等を備えた第二の集積回路素子16を固着・収納し、第一の凹部7と第二の凹部18を基板体2の上下にそれぞれの凹部開口面が反対方向を向いて一体構造としたことにある。このように、温度センサ機能を有する第一の集積回路素子12を圧電振動素子11と近接して密閉された第一の凹部7内に配置することで圧電振動素子11と、温度センサが感知する温度の温度差を小さく出来るため、精度の高い温度補償が可能となり、温度補償精度が改善された温度補償型圧電発振器19を得ることが出来る。
【0017】
また、本発明の温度補償型圧電発振器19によれば、第一の凹部7内に段差部8を設け、圧電振動素子11と、第一の集積回路素子12を上下方向に空間的に重なるように立体的に配置したことから、仮に圧電振動素子11と、第一の集積回路素子12を同一平面に並設した場合と比較して、温度補償型圧電発振器19の実装基板への実装面積を縮小することが可能となる。
【0018】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば上述の実施形態においては、図1に示すように、基板体2の上に圧電振動素子11と第一の集積回路素子12を搭載し、基板体2の下に第二の集積回路素子16を搭載する構造としているが、圧電振動素子11と第一の集積回路素子12を搭載する容器体と第二の集積回路素子16を搭載する容器体を重ねた構造とすることが出来る。
【0019】
また、上述の実施形態においては、第一の凹部7内に圧電振動素子11と第一の集積回路素子12のみを収容しているが、さらに第一の集積回路素子12の機能を分けた、例えば、発振回路機能と温度センサ機能に関連しないコンデンサや抵抗といった定数を集積させた保護回路といった第三の集積回路素子を収容しても構わない。また、同様に第二の凹部18内にはひとつの第二の集積回路素子16のみを搭載しているが、さらに別の第二の集積回路素子16の機能を分けた集積回路素子を収容することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の概略の断面図である。
【図2】本発明の温度補償型圧電発振器の概略の下面図である。
【図3】従来の温度補償型圧電発振器の概略の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・容器体
2・・・基板体
3・・・第一の枠体
4・・・蓋体
5・・・第二の枠体
6・・・外部端子電極
7・・・第一の凹部
8・・・段差部
11・・・圧電振動素子
12・・・第一の集積回路素子
13・・・導電性接着剤
14・・・引出配線
16・・・第二の集積回路素子
17・・・樹脂
18・・・第二の凹部
19・・・温度補償型圧電発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板体とこの基板体の一方の主面に一体で設けられて第一の凹部を形成する第一の枠体と、前記基板体の他方の主面に一体で設けられて第二の凹部を形成する第二の枠体とからなる容器体と、
前記第一の凹部内に搭載される圧電振動素子と第一の集積回路素子と、
前記第二の凹部内に搭載される第二の集積回路素子と、
前記第一の凹部を気密封止する蓋体とを備え、
前記第一の集積回路素子が温度センサと発振回路とを備え、
前記第二の集積回路素子が温度補償回路を備えて構成されていることを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
前記第一の凹部内であって前記基板体に設けられる段差部を備え、
前記第一の集積回路素子を前記段差部内に搭載した構成であることを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−263564(P2008−263564A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106676(P2007−106676)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】