説明

温度補償型発振回路の製造方法、温度補償型発振回路

【課題】温度補償型発振回路の製造方法、温度補償型発振回路を提供する。
【解決手段】圧電振動子12を発振させて発振信号48を出力する発振回路14と、前記
圧電振動子12の温度に対応した検出電圧56を出力する温度検出手段(温度センサー1
6)と、前記検出電圧56と前記発振信号48の周波数の温度特性に係る電圧温度情報5
2に基づいて前記発振信号48の周波数を温度補償するための温度補償電圧58を前記発
振回路14に出力する温度補償電圧発生回路18と、を有する温度補償型発振回路10の
製造方法であって、前記電圧温度情報52は、前記圧電振動子12の温度を上昇させたと
きの前記発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温度情報60と、前記圧電振動子12の温
度を下降させたときの前記発振周波数の温度補償を行う降温電圧温度情報64と、の中間
値として算出したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を発振させる温度補償型発振回路(TCXO)において、特に圧
電振動子のヒステリシス特性に対応した温度補償電圧を出力可能な温度補償型発振回路に
関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水晶振動子と増幅回路を組み合わせた水晶発振器において、温度対する発振周
波数の安定度が求められる場合には温度補償回路を付加した温度補償型水晶発振器(TC
XO)が用いられ、最近では携帯端末、携帯端末の基地局、GPS受信機等広く利用され
ている。
【0003】
図9に従来技術に係る温度補償型発振回路の回路図を示す。特許文献1においては、図
9に示すように、温度変化に対して1次関数的に出力が変化する温度検出回路102と、
入力された温度検出回路102の出力に基づいて近似3次曲線電圧を出力する近似3次曲
線発生回路104、近似3次曲線電圧の増幅率を調整して出力する第1のプログラマブル
ゲイン増幅器106、前記温度検出回路102から分岐して接続され、入力された温度検
出回路102の出力の増幅率を調整して出力する第2のプログラマブルゲイン増幅器10
8と、定電圧発生回路110と、入力された前記定電圧発生回路110からの出力の増幅
率を調整して出力する第3のプログラマブルゲイン増幅器112と、前記第1、第2、第
3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112を並列に接続し、前記第1、第
2、第3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112からの出力を加算して温
度補償電圧を出力する加算回路114と、入力された前記温度補償電圧により発振周波数
の温度補償を行う電圧制御型水晶発振回路116(VCXO)と、を有する温度補償型発
振回路100(TCXO)が開示されている。
【0004】
ここで第1のプログラマブルゲイン増幅器106は3次の温度補償電圧、第2のプログ
ラマブルゲイン増幅器108は1次の温度補償電圧、第3のプログラマブルゲイン増幅器
112は0次の温度補償電圧(オフセット電圧)を出力しており、電圧制御型水晶発振回
路116内のATカット水晶振動子の温度補償を温度変化に対して連続的に行うことがで
き、温度変化に対して安定した周波数特性を実現できる。ところで上述の第1、第2、第
3のプログラマブルゲイン増幅器106、108、112の増幅率は、製造検査工程時に
取得するものであり、製造時のスループットの観点から、温度上昇時、または温度下降時
のいずれか一方に温度変化した際に発振周波数数が基準周波数となるように調整されるの
が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−55624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水晶振動子の周波数温度特性は、ヒステリシス特性を有している。ヒステリ
シス特性を有するとは、温度上昇時と下降時において水晶振動子の温度依存性が異なるこ
とを意味する。この原因は、温度変化に対する水晶振動子の歪み応力の変化が実際の温度
変化に追従できないことや、発振器中の支持構造・接着剤・溶着合金・電極等の熱歪変化
等によるもので、水晶振動子を小型化するほど顕著に現れる。
【0007】
さらに、上述のGPS機能を搭載した携帯電話端末などの高精度の電子機器の分野にお
いては、周波数偏差(Δf/f)の許容範囲が非常に狭く、例えば、−30℃〜85℃
の温度範囲では周波数偏差(Δf/f)は±0.5ppm以内であることが要求される

【0008】
そのため、従来のように、温度上昇時、または温度下降時のどちらか一方に温度変化し
た際の増幅率を取得する方法では、増幅率を取得する際と同方向に温度が変化した場合に
は温度補償を良好におこなうことができるが、増幅率を取得する際と逆方向に温度が変化
した場合、システムとして周波数補正をかけてもヒステリシス特性に起因する発振周波数
の差分についてはそのまま補正誤差として残ることになる。したがって、これが原因とな
って、測位にかかる時間が長くなり、結果的に測位誤差が生じたり、GPS衛星との同調
が不調となる虞がある、といった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に着目し、圧電振動子の発振周波数のヒステリシス特性の
影響を小さくして、安定した発振周波数で発振可能な温度補償回路、温度補償型発振回路
、及びこれらの温度補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子を発振させて発振信号を出力する発振回路と、前記圧電振動子
の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記検出電圧と前記発振信号の周
波数の温度特性に係る電圧温度情報に基づいて前記発振信号の周波数を温度補償するため
の温度補償電圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、を有する温度補償型
発振回路の製造方法であって、前記電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度を上昇させた
ときの前記発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温度情報と、前記圧電振動子の温度を下
降させたときの前記発振周波数の温度補償を行う降温電圧温度情報と、の中間値として算
出したことを特徴とする温度補償型発振回路の製造方法。
【0011】
上記方法により、温度補償型発振回路においては、圧電振動子の発振周波数の温度を上
昇させた場合の昇温電圧温度情報と、温度を下降させた場合の降温電圧温度情報との中間
値となる電圧温度情報と検出電圧により温度補償電圧を生成し、これにより発振信号の温
度補償を行うことになる。よって、圧電振動子の温度が上昇している場合でも、下降して
いる場合でも圧電振動子のヒステリシス特性に起因する温度補償の誤差を一定の範囲に抑
制することができる。
【0012】
[適用例2]前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報に対応する第1の近似曲線情
報から係数群を抽出し、前記係数群を構成する2次以下の係数と前記昇温電圧温度情報と
前記降温電圧温度情報との基準温度における差分に基づいて算出される2次以下の係数と
の中間値を算出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次以下の係数として組み込んで
算出したことを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【0013】
昇温電圧温度情報と降温電圧温度情報との電圧成分の差分をとると基準温度領域におい
て差分が最も大きくなり、基準温度から離れるほど小さくなる。よって電圧温度情報は、
昇温電圧温度情報と、圧電振動子の温度を基準温度領域に下降させて測定した温度と電圧
の情報と、を用いて近似的に算出することができる。したがって、温度下降時の温度と電
圧との情報は基準温度領域のみ取得すればよく、基準温度より低い低温領域まで温度を測
定する工程が不要になる。したがって降温電圧温度情報の取得時間を短縮することができ
るため、作業負担を削減してコストを抑制することができる。
【0014】
[適用例3]前記電圧温度情報は、前記降温電圧温度情報に対応する第2の近似曲線情
報から係数群を抽出し、前記係数群を構成する2次以下の係数と前記昇温電圧温度情報と
前記降温電圧温度情報との基準温度における差分に基づいて算出される2次以下の係数と
の中間値を算出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次以下の係数として組み込んで
算出したことを特徴とする適用例1に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【0015】
適用例2と同様の理由により、電圧温度情報は降温電圧温度情報と圧電振動子の温度を
基準温度領域に上昇させて測定した温度と電圧の情報とを用いて近似的に算出することが
できる。さらに温度上昇時は基準温度領域を測定すればよく、基準温度より高い高温領域
を測定する工程が不要となる。したがって昇温電圧温度情報の取得時間を短縮することが
できるため、作業負担を削減してコストを抑制することができる。
【0016】
[適用例4]前記温度補償電圧発生回路には、基準温度において基準周波数で発振可能
な電圧温度情報の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数とし
たべき級数の近似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、前記昇温電
圧温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報と、前記発振
周波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加する理想補償電圧の情報と、
によりそれぞれ算出し、前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温
度情報に基づいて算出し、前記圧電振動子の温度を基準温度に上昇させたときの前記温度
補償電圧を用いた前記発振回路の発振周波数と、前記圧電振動子の温度を基準温度に下降
させたときの前記温度補償電圧を用いた前記発振回路の発振周波数と、の差分に基づいて
前記電圧温度情報のオフセット量の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路に前記電
圧温度情報を入力することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の温度補償
型発振回路の製造方法。
【0017】
外部から理想補償電圧を印加する電圧発生回路と、温度補償電圧を発生させる温度補償
電圧発生回路との出力インピーダンスが互いに異なる場合には、同一温度であっても、外
部からの理想補償電圧を基づいて生成された電圧温度情報から得られる温度補償電圧は、
電圧温度情報を生成時の理想補償電圧と一致しないことになる。また理想補償電圧の印加
時における設定電圧の誤差や測定誤差、及び電圧温度情報の算出方法によっても同一温度
における理想補償電圧と温度補償電圧とは互いに一致しないことになる。しかし電圧温度
情報が獲得した圧電振動子の発振周波数の温度特性そのものに誤差はほとんど生じていな
い。よって上記方法により温度補償電圧を印加した発振回路の温度上昇時の発振周波数と
温度下降時の発振周波数の差分(ヒステリシス量)に基づいて電圧温度情報のオフセット
量の情報を算出して両者の電圧の不一致を是正して高精度な温度補償を行うことができる

【0018】
[適用例5]前記温度補償電圧発生回路には、基準温度において基準周波数で発振可能
な電圧温度情報の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数とし
たべき級数の近似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、前記昇温電
圧温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報と、前記発振
周波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加する理想補償電圧の情報と、
によりそれぞれ算出し、前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温
度情報に基づいて算出し、基準周波数と、前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のい
ずれか一方における基準温度において前記発振回路を基準周波数で発振させる理想補償電
圧を前記上昇時及び下降時の他方の基準温度において前記発振回路に印加したときの発振
周波数と、の差分に基づいて前記電圧温度情報のオフセット量の情報を算出して、前記温
度補償電圧発生回路に前記電圧温度情報を入力することを特徴とする適用例1乃至3のい
ずれか1例に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
上記方法により、電圧温度情報の生成時に温度補償電圧を発振回路に印加する必要はな
いので、電圧温度情報を生成する工程を簡略化してコストを抑制することができる。
【0019】
[適用例6]前記温度補償電圧発生回路には基準温度において基準周波数で発振可能な
電圧温度情報の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数とした
べき級数の近似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、前記昇温電圧
温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報と、前記発振周
波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加した理想補償電圧の情報と、に
よりそれぞれ算出し、前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度
情報に基づいて算出し、前記圧電振動子の温度を基準温度に上昇させたときに前記発振回
路を基準周波数で発振させる理想補償電圧と、前記圧電振動子の温度を基準温度に下降さ
せたときに前記発振回路を基準周波数で発振させる理想補償電圧と、の差分に基づいて前
記電圧温度情報のオフセット量の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路に前記電圧
温度情報を入力することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の温度補償型
発振回路の製造方法。
【0020】
上記方法により、圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方における基準温
度において発振回路を基準周波数で発振させる理想補償電圧を、前記温度上昇時及び下降
時の他方の基準温度において前記発振回路に印加する工程が不要となるので、適用例5の
場合よりも工程を簡略化してコストを抑制することができる。
【0021】
[適用例7]圧電振動子と、前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度
検出手段と、前記検出電圧と前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に係る電圧温度情報
とに基づいて温度補償電圧を出力する温度補償電圧発生回路と、前記圧電振動子を発振さ
せて発振信号を出力する発振回路と、前記電圧温度情報を記憶し、前記温度補償電圧発生
回路に出力する記憶回路と、を有する温度補償型発振回路であって、前記電圧温度情報は
、前記圧電振動子の温度を上昇させたときの前記発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温
度情報と、前記圧電振動子の温度を下降させたときの前記発振周波数の温度補償を行う降
温電圧温度情報と、の中間値として算出したものであることを特徴とする温度補償型発振
回路。
【0022】
上記構成により、温度補償型発振回路においては、圧電振動子の発振周波数の温度を上
昇させた場合の昇温電圧温度情報と、温度を下降させた場合の降温電圧温度情報との中間
値となる電圧温度情報により、圧電振動子の発振周波数の温度特性に対応した近似曲線を
生成し、前記近似曲線と検出電圧により温度補償電圧を生成し、これにより発振信号の温
度補償を行うことになる。よって、圧電振動子の温度が上昇している場合でも、下降して
いる場合でも圧電振動子のヒステリシス特性に起因する温度補償の誤差を一定の範囲に抑
制することが可能な温度補償型発振回路となる。
【0023】
[適用例8]前記発振回路と前記温度補償電圧発生回路との間には、前記発振回路の発
振周波数を基準周波数に調整する理想補償電圧が入力される端子と、前記温度補償電圧発
生回路と、の前記発振回路への接続を相互に切り替え可能な切替回路が介装され、前記記
憶回路は、前記電圧温度情報の上書き入力が可能であることを特徴とする適用例7に記載
の温度補償型発振回路。
【0024】
温度補償電圧は温度変化によってのみその値を変化させることができるため、温度変化
に関わらず任意の電圧を発振回路に印加することはできない。よって切替回路により理想
補償電圧を発振回路に印加することにより、温度補償電圧を生成するための電圧温度情報
の生成を容易に行うことができ、また新たに生成された電圧温度情報を記憶回路に上書き
入力することにより温度補償を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の温度補償型発振回路のブロック図である。
【図2】昇温電圧温度情報と降温電圧温度情報との差分を示す図である。
【図3】電圧温度情報を算出するための第1の算出工程のフロー図である。
【図4】電圧温度情報を算出するための第2の算出工程のフロー図である。
【図5】電圧温度情報を算出するための第3の算出工程のフロー図である。
【図6】圧電振動子のヒステリシス特性を示す図である。
【図7】圧電振動子のヒステリシス特性の一方の温度特性を有する電圧温度情報を用いて温度補償を行った場合の周波数偏差を示す図である。
【図8】本実施形態の電圧温度情報を示す図である。
【図9】従来技術に係る温度補償型発振回路の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0027】
図1に本実施形態に係る温度補償型発振回路の回路図を示す。本実施形態に係る温度補
償型発振回路10は、圧電振動子12と、前記圧電振動子12の温度に対応した検出電圧
56を出力する温度検出手段(温度センサー16)と、前記検出電圧56と前記圧電振動
子12の発振周波数の温度特性に係る電圧温度情報52とに基づいて温度補償電圧58を
出力する温度補償電圧発生回路18と、前記圧電振動子12を発振させて発振信号48を
出力するとともに、前記温度補償電圧58により前記発振信号48の発振周波数の温度補
償を行う発振回路14と、前記電圧温度情報52を記憶し、前記温度補償電圧発生回路1
8に出力する記憶回路32と、を有する温度補償型発振回路10であって、前記電圧温度
情報52は、前記圧電振動子12の温度を上昇させたときの前記発振周波数の温度補償を
行う昇温電圧温度情報60と、前記圧電振動子12の温度を下降させたときの前記発振周
波数の温度補償を行う降温電圧温度情報64と、の中間値として算出したものである。
【0028】
また、前記発振回路14と前記温度補償電圧発生回路18との間には、前記発振回路1
4の発振周波数を基準周波数に調整する理想補償電圧50が入力される端子(電圧)入力
端子44(第1の端子、SW1)と、前記温度補償電圧発生回路18(第2の端子、SW
2)と、の前記発振回路14(第3の端子、SW3)への接続を相互に切り替え可能な切
替回路34が介装され、更に前記記憶回路32は、前記電圧温度情報52の上書き入力が
可能であるものである。
【0029】
したがって本実施形態の温度補償型発振回路10の製造方法は、圧電振動子12を発振
させて発振信号48を出力する発振回路14と、前記圧電振動子12の温度に対応した検
出電圧56を出力する温度検出手段(温度センサー16)と、前記検出電圧56と前記発
振信号48の周波数の温度特性に係る電圧温度情報52に基づいて前記発振信号48の周
波数を温度補償するための温度補償電圧58を前記発振回路14に出力する温度補償電圧
発生回路18と、を有する温度補償型発振回路10の製造方法であって、前記電圧温度情
報52は、前記圧電振動子12の温度を上昇させたときの前記発振周波数の温度補償を行
う昇温電圧温度情報60と、前記圧電振動子12の温度を下降させたときの前記発振周波
数の温度補償を行う降温電圧温度情報64と、の中間値として算出したものである。
【0030】
また、前記温度補償電圧発生回路には、基準温度において基準周波数で発振可能な電圧
温度情報52の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路18は前記初期値を係数と
したべき級数の近似曲線の情報と前記検出電圧56から前記温度補償電圧58を出力し、
前記昇温電圧温度情報60及び前記降温電圧温度情報64は、前記圧電振動子12の温度
に係る情報と、前記発振周波数の温度補償を行うために前記発振回路14に外部から印加
する理想補償電圧50の情報と、によりそれぞれ算出し、前記電圧温度情報52は、前記
昇温電圧温度情報60及び前記降温電圧温度情報64に基づいて算出し、前記圧電振動子
12の温度を基準温度に上昇させたときの前記温度補償電圧58を用いた前記発振回路1
4の発振周波数と、前記圧電振動子12の温度を基準温度に下降させたときの前記温度補
償電圧58を用いた前記発振回路14の発振周波数と、の差分に基づいて前記電圧温度情
報52のオフセット量(Vc’)の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路18に
前記電圧温度情報52を入力するものである。
【0031】
図1に示すように温度補償型発振回路10は、半導体基板(不図示)上にパターニング
により、発振回路14、温度検出手段でなる温度センサー16、温度補償電圧発生回路1
8、記憶回路32、切替回路34、シリアルインターフェース回路36、電源端子38、
グランド端子40等の各端子が形成された半導体回路基板を備え、発振回路14と圧電振
動子12が接続された構造を有している。
【0032】
圧電振動子12は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料から形
成され、水晶であれば周波数温度特性に優れるATカット振動子が望ましい。このような
ATカット水晶振動子は、発振回路14から交流電圧を受けて、厚みすべり振動により所
定の発振周波数で発振することができる。このATカットによる厚みすべり振動を用いた
圧電振動子の発振周波数は、基準温度(25℃近辺)を中心として3次曲線となる温度特
性を有している。
【0033】
発振回路14は、圧電振動子12を発振源とする例えばコルピッツ型の発振回路である
とともに、発振回路14には可変容量素子が内蔵され、この可変容量素子に印加する温度
補償電圧58または外部からの理想補償電圧50を入力して圧電振動子12の発振周波数
の温度補償を行い、発振信号48を発振信号出力端子42に出力する。ここで温度補償電
圧58及び理想補償電圧50は発振回路14の発振周波数の変化がリニアに応答する範囲
(線形応答する範囲)で用いるものとする。
【0034】
温度センサー16は、ダイオード構造を有しており、順方向電流を流し、温度によって
変化するダイオードの端子間電位であるアナログの検出電圧56を温度補償電圧発生回路
18に出力することができる。また温度センサー16は電源電圧が供給される限り常時検
出電圧56を出力するものとする。ここで検出電圧56は温度上昇とともに1次関数的に
減少し、出力される検出電圧56は測定される温度に対応したものとなっている。なお、
温度センサー16は圧電振動子12に隣接して配置することが望ましい。これにより圧電
振動子12の温度を測定誤差を抑制して測定することができ、温度補償電圧58の出力誤
差を抑制することができる。
【0035】
温度補償電圧発生回路18は、4次電圧発生回路20、3次電圧発生回路22、2次電
圧発生回路24、1次電圧発生回路26、0次電圧発生回路28、加算回路30により構
成されている。
【0036】
本実施形態のように圧電振動子がATカット水晶振動子である場合、圧電振動子12の
発振周波数の温度特性Δf/fは以下の温度Tに関する4次の近似曲線より表わすこと
ができる。
【数1】

【0037】
ここでfは基準温度(25℃)における発振周波数(基準周波数)、Tは基準温度
、Aは4次の温度係数、Bは3次の温度係数、Cは2次の温度係数、Dは1次の温度係数
、Eは0次の温度係数(オフセット係数)である。よってこのような温度特性を有する発
振回路14(圧電振動子12)の温度補償を行うために、温度補償電圧(理想補償電圧)
Vhは、以下のような温度Tに関する4次の近似曲線で表わした温度特性を有する必要が
ある。
【数2】

ここで、Vc、Vc、Vc、Vc、Vcは、それぞれ数式1の−A、−B、
−C、−D、−Eに対応する。
【0038】
記憶回路32は、EEPROM等で形成され、シリアルインターフェース回路36を介
して入力される電圧温度情報52を記憶するとともに、電圧温度情報52を温度補償電圧
発生回路18に出力するものである。電圧温度情報52は、圧電振動子12の所定の温度
点において、発振回路の発振周波数が基準周波数となるにように印加された理想補償電圧
50の情報と、前記理想補償電圧50を印加時の圧電振動子12の温度の情報(検出電圧
56)を用いて数式2に代入して、その係数(Vc、Vc、Vc、Vc、Vc
)を算出したものである。よって記憶回路32は、係数(Vc)の情報を4次電圧発生
回路20に出力し、係数(Vc)の情報を3次電圧発生回路22に出力し、係数(Vc
)の情報を2次電圧発生回路24に出力し、係数(Vc)の情報を1次電圧発生回路
26に出力し、係数(Vc)(オフセット量)の情報を0次電圧発生回路28に出力す
る。これらの係数、すなわち電圧温度情報52は後述のPC76において算出される。
【0039】
これにより4次電圧発生回路20は、圧電振動子12の温度(検出電圧56と基準温度
における検出電圧との差分)の4乗と係数(Vc)の情報との積に対応する電圧を出力
し、3次電圧発生回路22は、圧電振動子12の温度の3乗と係数(Vc)の情報の積
に対応する電圧を出力し、2次電圧発生回路24は圧電振動子12の温度の2乗と係数(
Vc)の積に対応する電圧を出力し、1次電圧発生回路26は、圧電振動子12の温度
と係数(Vc)の積を出力し、0次電圧発生回路28は、係数(Vc)の値に対応す
る電圧を出力する。さらにこれらの電圧は加算回路30において加算され温度補償電圧V
hが生成される。なお記憶回路32は新たな電圧温度情報52が入力されるとその電圧温
度情報52に上書きする形で記憶するとともに、新たな電圧温度情報52を温度補償電圧
発生回路18に出力する。
【0040】
ここで、本実施形態における電圧温度情報52は、後述のように圧電振動子12の温度
を上昇させたときの発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温度情報60と、圧電振動子1
2の温度を下降させたときの発振周波数の温度補償を行う降温電圧温度情報64と、の中
間値として算出したものである。仮に電圧温度情報52として、数式2に昇温電圧温度情
報60を代入して算出した第1の近似曲線情報62(図6参照)から抽出した係数を記憶
回路32に入力した場合は、温度補償電圧発生回路18において昇温電圧温度情報60に
対応した温度補償電圧を出力し、数式2に降温電圧温度情報64を代入して算出した第2
の近似曲線情報66(図6参照)から抽出した係数を記憶回路32に入力した場合は、温
度補償電圧発生回路18において降温電圧温度情報64に対応した温度補償電圧を出力す
ることになる。
【0041】
切替回路34は、温度補償電圧発生回路18と発振回路14との間に介装されている。
切替回路34は、第3の端子(SW3)が発振回路14に接続され、第2の端子(SW2
)が温度補償電圧発生回路18に接続され、第1の端子(SW1)が電圧入力端子44に
接続されている。切替回路34はシリアルインターフェース回路36から入力される切替
信号54により、第3の端子(SW3)を温度補償電圧発生回路18側(第2の端子側=
SW2側)或いは電圧入力端子44側(第1の端子側=SW1側)に切替接続することが
できる。
【0042】
シリアルインターフェース回路36は、信号入力端子46に接続され、外部からのシリ
アルデータ(電圧温度情報52、切替信号54)をデコードし、デコードした情報が電圧
温度情報52である場合は、電圧温度情報52を記憶回路32に出力し、デコードした情
報が切替信号54の情報である場合は切替信号54を切替回路34に出力する。
【0043】
本実施形態における電圧温度情報52の算出過程においては、温度補償型発振回路10
を測定器68に接続する。測定器68は、周波数カウンター70、電圧発生回路72、電
圧マルチメーター74、PC76(パーソナルコンピューター)により構成されている。
周波数カウンター70は、発振信号出力端子42に接続され、発振回路14から出力され
る発振信号48の発振周波数の情報を所定時間ごとに測定してPC76に出力するもので
ある。電圧発生回路72は電圧入力端子44に接続され、任意に電圧値を調整可能な理想
補償電圧50を、切替回路34を介して発振回路14に出力するものである。電圧マルチ
メーター74は、電圧発生回路72が出力する理想補償電圧50の電圧値を測定し、理想
補償電圧50の情報をPC76に出力するものである。PC76は信号入力端子46に接
続され、切替信号54の情報、及び上述の工程により電圧温度情報52を算出するととも
に、これらの情報をシリアルデータ化してシリアルインターフェース回路36に出力する
ものである。
【0044】
理想補償電圧50の電圧値の調整は、例えば作業者がPC76のディスプレイ上に表示
される発振周波数の値を見ながら手動で調整し、PC76のキー操作により理想補償電圧
50の電圧値の情報と圧電振動子の温度に係る情報(例えば、周囲温度の情報)を入力し
てもよい。また電圧発生回路72をPC76に接続し、PC76にインストールされたプ
ログラム等にしたがって発振周波数が基準周波数となるように電圧発生回路72の出力を
調整し、理想補償電圧50の情報と圧電振動子12の温度の情報を入力する構成としても
よい。いずれの場合でもPC76においては、温度の情報を温度センサーから出力される
検出電圧56に換算する構成を有するものとする。
【0045】
本実施形態における電圧温度情報52の算出工程について説明する。まず、第1の算出
工程について説明する。本実施形態においては温度補償型発振回路10を測定器68に接
続した状態で温度調整が可能なチャンバー(不図示)内に収めた後、圧電振動子12の温
度を設定最低温度(−30℃)から設定最高温度(+85℃)まで上昇させつつ、各温度
点において発振回路14から出力される発振信号48の発振周波数が基準周波数(F
となるように理想補償電圧の値Vhを調整する。そして本実施形態においては第1温度点
(−30℃、設定最低温度)、第2温度点(0℃)、第3温度点(+25℃、基準温度)
、第4温度点(+55℃)、第5温度点(+85℃、設定最高温度)において発振周波数
が基準周波数となるように理想補償電圧の値Vhを調整する。ここでチャンバー(不図示
)の温度設定は高精度に行なわれていることを前提とし、PC76には各温度点における
温度の情報が記憶されているものとする。よって各温度点における温度の情報と、理想補
償電圧50(Vh)の情報により数式2に従って昇温電圧情報60または降温温度情報6
4を生成することができる。
【0046】
図2に昇温電圧温度情報と降温電圧温度情報との差分を示す。図2(a)は、7つの温
度点における理想補償電圧のヒステリシス量をプロットしたものであり、実線はこれら7
つのプロットを通るように温度Tの2次関数で近似したものである。図2(b)は設定最
低温度(−30℃)と設定最高温度(+85℃)において差分をゼロとした2つのプロッ
ト(78)と、低温から基準温度(+25℃)に上昇させた場合の理想補償電圧と高温か
ら基準温度(+25℃)に下降させた場合の理想補償電圧との差分のプロット(80)と
を示し、実線82はこれら3点のプロットを通るように温度Tの2次関数で近似したもの
である。
【0047】
本実施形態において、電圧温度情報52は、圧電振動子12の温度を上昇させた場合の
所定の温度点における理想補償電圧50の情報と、その温度点の温度の情報からなる昇温
電圧温度情報60と、圧電振動子12の温度を下降させた場合の所定の温度点における理
想補償電圧50の情報と、その温度点の温度の情報からなる降温電圧温度情報64と、を
生成し、これらの中間値として算出する必要がある。しかし昇温電圧温度情報60を数式
2に代入して生成した第1の近似曲線情報62(図6参照)と、降温電圧温度情報64を
数式2に代入して生成した第2の近似曲線情報66(図6参照)との差分をとると、2次
関数的な曲線を有しており、差分は基準温度において最も大きくなり、設定最低温度(−
30℃)及び設定最高温度(+85℃)においてほぼゼロとなっていることが分かった。
【0048】
よって、電圧温度情報52は、昇温電圧温度情報60に対応する第1の近似曲線情報6
2から係数群(Vc、Vc、Vc、Vc、Vc)を抽出し、前記係数群を構成
する0次の係数(Vc)、1次の係数(Vc)、2次の係数(Vc)のそれぞれと
、昇温電圧温度情報60と降温電圧温度情報64との基準温度における差分に基づいて算
出される0次の係数、1次の係数、2次の係数のそれぞれの中間値(Vc’、Vc
、Vc’)を算出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次の係数として組み込んで
算出することができる。すなわち、圧電振動子12の温度を上昇させた場合の設定最低温
度(−30℃)と設定最高温度(+85℃)において差分をゼロとしたプロット78と、
基準温度(+25℃)に上昇させた場合の理想補償電圧50(Vh)と基準温度に下降さ
せた場合の理想補償電圧50との差分のプロット80による3点を2次関数の曲線82に
より近似して0次の係数、1次の係数、2次の係数を算出する。そしてこの0次の係数、
1次の係数、2次の係数のそれぞれと第1の近似曲線情報62の0次の係数、1次の係数
、2次の係数のそれぞれとの加算平均を取って2次の係数Vc’を算出し、加算平均さ
れた0次の係数Vc’、1次の係数Vc’、2次の係数Vc’と、第1の近似曲線
情報62の4次と3次の係数Vc、Vcを組み合わせることにより電圧温度情報62
を生成することができる。以上の演算はPC76で行なうことができる。このような演算
によっても電圧温度情報52が得られるため降温電圧温度情報64(の一部)を生成する
際に、圧電振動子12の温度を基準温度以下の温度領域に下降させる工程を省略すること
ができる。
【0049】
ところで、温度補償電圧発生回路18と電圧発生回路72は出力インピーダンスが互い
に異なる等の理由により、算出された電圧温度情報52に従って生成された温度補償電圧
58が、電圧温度情報52の生成時の同一温度における理想補償電圧50と一致しない場
合がある。しかし電圧温度情報52が獲得した発振信号48の発振周波数の温度特性に誤
差は殆どなく、もっぱら温度補償電圧58のオフセット量を調整すれば足りることを本願
発明者は見出している。そこで温度補償電圧発生回路18には、基準温度において発振回
路14がほぼ基準周波数(F)で発振する温度補償電圧58を生成する電圧温度情報5
2の初期値を予め入力しておく。ここで基準温度において数式1はE、数式2はVc
なるので高次の項の影響を受けず、さらに上述のように発振回路14の発振周波数は温度
補償電圧58に対して線形応答する。したがって、圧電振動子12の温度を基準温度に上
昇させたときに温度補償電圧58の初期値を印加した場合の発振周波数F1と、基準温度
に下降させたときに温度補償電圧の初期値を印加した場合の発振周波数F2とすると、中
間値となる周波数Fは、
【数3】

と表わすことができるが、更にこの中間値となる周波数Fが基準周波数Fとなるように
オフセット量(Vc’)を調整する。すなわち、周波数Fを発振回路14の温度補償電
圧58に対する線形応答に係る感度で割ることによりオフセット量(Vc’)を容易に
算出することができる。したがってPC76はこれら2つの発振周波数の情報を取得して
電圧温度情報52のオフセット量(Vc’)を算出し、調整後の電圧温度情報52(V
、Vc、Vc’、Vc’、Vc’)を記憶回路32に上書きすればよい。
【0050】
図3に電圧温度情報を算出するための第1の算出工程のフロー図を示す。以上を踏まえ
て、図3のフローにしたがって電圧温度情報52を記憶回路32に記憶するまでの流れを
説明すると、まずPC76は切替回路34を電圧入力端子44側(SW1)に接続する切
替信号54を出力する。そしてチャンバー(不図示)が第1温度点(設定最低温度、−3
0℃)になったところで理想補償電圧50を発振回路に印加し、発振回路14の発振周波
数が基準周波数(F)となるように理想補償電圧50を調整したのち、調整後の理想補
償電圧50の値Vh1の情報を取得する(調整ステップ1)。
【0051】
第2温度点(0℃)になったところで、発振回路14の発振周波数が基準周波数となる
ように理想補償電圧50を調整したのち、調整後の理想補償電圧50の値Vh2の情報を
取得し(調整ステップ2)、第3温度点(基準温度、+25℃)になったところで、発振
回路14の発振周波数が基準周波数となるように理想補償電圧50を調整したのち、調整
後の理想補償電圧50の値Vh3の情報を取得する(調整ステップ3)。
【0052】
次にPC76は、切替回路34を温度補償電圧発生回路18側(SW2)に接続する切
替信号54を出力し、予め入力された電圧温度情報52の初期値に基づいて生成された温
度補償電圧58を発振回路14に印加し、そのときの周波数F1の情報を取得する(調整
ステップ4)。
【0053】
そしてPC76は切替回路34を電圧入力端子44側(SW1)に接続する切替信号5
4を出力し、第4温度点(+55℃)となったところで、上述同様に理想補償電圧50の
値Vh4の情報を取得し(調整ステップ5)、第5温度点(設定最高温度、+85℃)と
なったところで、そのときの理想補償電圧50の値Vh5の情報を取得する(調整ステッ
プ6)。
【0054】
次に第5温度点から基準温度(第3温度点)に下降させ、そのときの理想補償電圧の値
Vh3’の情報を取得する(調整ステップ7)。さらにPC76は切替回路34をSW2
側に接続する切替信号54を出力し、予め入力された電圧温度情報52の初期値に基づい
て生成された温度補償電圧58を発振回路14に印加し、そのときの周波数F2の情報を
取得する(調整ステップ8)。
【0055】
この段階でPC76は、数式2に従ってVh1、Vh2、Vh3、Vh4、Vh5を用
いて係数(Vc、Vc、Vc、Vc、Vc)を算出し、Vh1、Vh3、Vh
5、Vh3’を用い上述の方法に基づいてVc’、Vc’、Vc’を算出する(調
整ステップ9)。
【0056】
最後に数式3に従って周波数F1、F2の差分(F1−F2)と、発振回路14の温度
補償電圧58に対する感度を用いてオフセット量(Vc’)を算出して電圧温度情報5
2(Vc、Vc、Vc’、Vc’、Vc’’)を生成し、得られた電圧温度情
報52をシリアルデータ化してシリアルインターフェース回路36を介して記憶回路32
に上書きする(調整ステップ10)。
【0057】
ここで、Vc’、Vc’’との差が極わずかであり、Vc’’を算出する必要が
ない場合には、上記調整ステップのうち調整ステップ4、調整ステップ8を省略し、調整
ステップ10においては電圧温度情報52(Vc、Vc、Vc’、Vc’、Vc
’)を生成し、得られた電圧温度情報52をシリアルデータ化してシリアルインターフ
ェース回路36を介して記憶回路32に上書きすることになる。
【0058】
図4に電圧温度情報を算出するための第2の算出工程のフロー図を示す。電圧温度情報
52の第2の算出工程は、基本的には第1の算出工程と類似するが、電圧温度情報52の
オフセット量は、基準周波数と、圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方(
本実施形態で上昇時)における基準温度において発振回路14を基準周波数で発振させる
理想補償電圧50と同じ電圧を前記上昇時及び下降時の他方(本実施形態では下降時)の
基準温度において発振回路14に印加したときの発振周波数(F2’)と、の差分に基づ
いて算出するものである。
【0059】
具体的には、調整ステップ7の後に電圧発生回路72により調整ステップ3で得られた
理想補償電圧50(Vh3)を発振回路に印加し、PC76はそのときの発振周波数F2
’の情報を取得する(調整ステップ8’)。このとき、中間値となる周波数Fは、
【数4】

となるが、さらにこの中間値となる周波数Fが基準周波数Fとなるようにオフセット量
(Vc’’’)を調整する。すなわち、調整ステップ8’の後、得られた周波数Fを感
度で割ることによりVc’’’を算出し、電圧温度情報52(Vc、Vc、Vc
’、Vc’、Vc’’’)を生成し、得られた電圧温度情報52をシリアルデータ化
してシリアルインターフェース回路36を介して記憶回路32に上書きする(調整ステッ
プ10’)。
【0060】
図5に電圧温度情報を算出するための第3の算出工程のフロー図を示す。電圧温度情報
52の第3の算出工程は、基本的には、第1の算出工程と類似するが、圧電振動子12の
温度を基準温度に上昇させたときに発振回路14を基準周波数で発振させる理想補償電圧
50(Vh3)と、圧電振動子12の温度を基準温度に下降させたときに発振回路14を
基準周波数で発振させる理想補償電圧50(Vh3’)と、の差分に基づいて電圧温度情
報のオフセット量の情報を算出するものである。
【0061】
具体的には、調整ステップ4及び調整ステップ8を不要とするとともに、調整ステップ
3で得られたVh3と、調整ステップ7で得られたVh3’との差分に発振回路14の感
度を掛け、周波数方向のヒステリシス量ΔFを算出する。すると中間値となる周波数Fは

【数5】

となるが、更にこの中間値となる周波数Fが基準周波数Fとなるようにオフセット量(
Vc’’’’)を調整する。すなわち、この周波数Fを発振回路14の感度で割ること
によりオフセット量Vc’’’’を算出することができる。よってこれにより電圧温度
情報52(Vc、Vc、Vc’、Vc’、Vc’’’’)を生成し、得られた
電圧温度情報52をシリアルデータ化してシリアルインターフェース回路32を介して記
憶回路32に上書きする(調整ステップ10’’)。
【0062】
第2の算出工程、第3の算出工程においては、PC76側で切替回路34をSW2側に
切り替える工程(調整ステップ4、調整ステップ8)が不要となるため作業効率が向上す
る。しかし電圧発生回路72からの理想補償電圧50と、理想補償電圧50をもとに温度
補償電圧発生回路18において算出された温度補償電圧58と、を直接的に比較するわけ
ではないので、第1の算出工程のほうがオフセット量の算出精度は高いものとなっている

【0063】
本実施形態では、調整ステップ1から調整ステップ5に示すように、設定最低温度(−
30℃)から設定最高温度(+85℃)に圧電振動子12の温度を上昇させて昇温電圧温
度情報60を生成していたが、逆に設定最高温度から設定最低温度に圧電振動子12の温
度を下降させて(調整ステップ1から調整ステップ5への順番を逆転させて)降温電圧温
度情報64を生成してもよい。このとき電圧温度情報52は、降温電圧温度情報64に対
応する第2の近似曲線情報66から係数群を抽出し、係数群を構成する2次以下の係数と
昇温電圧温度情報60と降温電圧温度情報64との基準温度における差分に基づいて算出
される2次以下の係数との中間値を算出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次の係
数として組み込んで算出することができる。このような演算によっても電圧温度情報52
が得られるため昇温電圧温度情報60(の一部)を生成する際に、圧電振動子12の温度
を基準温度以上の温度領域に上昇させる工程を省略することができる。
【0064】
なお、本実施形態にあっては、昇温時における各温度点の理想補償電圧と、降温時にお
ける前記各温度点と同じ温度点での理想補償電圧との中間値の電圧を算出して、算出した
中間値の電圧から温度Tに関する4次の近似曲線を計算しこの近似曲線の係数群を抽出す
ると共に、これを電圧温度情報52として記憶回路32に記憶するようにしてもよい。
【0065】
或いは、前記第1の近似曲線情報62から抽出した係数群(0次〜4次)と、前記第2
の近似曲線情報66から抽出した係数群(0次〜4次)との中間値を算出し、これら係数
群の中間値を電圧温度情報52として記憶回路32に記憶するようにしてもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係る温度補償型発振回路10の作用効果について述べる。図6は圧
電振動子のヒステリシス特性を示し、図6(a)はヒステリシス特性の全体図、図6(b
)は図6(a)の部分拡大図を示す。図7は圧電振動子のヒステリシス特性の一方の温度
特性を有する電圧温度情報を用いて温度補償を行った場合の周波数偏差を示し、図7(a
)に温度上昇時の昇温電圧温度情報60を用いて温度補償電圧を算出し、これにより温度
補償を行った場合の発振回路14から出力される発振信号48の周波数偏差(温度上昇時
、温度下降時)、図7(b)に温度下降時の降温電圧温度情報64を用いて温度補償電圧
を算出し、これにより温度補償を行った場合の発振回路14から出力される発振信号48
の周波数偏差(温度上昇時、温度下降時)を示す。図8は本実施形態の電圧温度情報52
を示す図であり、図8(a)は本実施形態の電圧温度情報52の全体図、図8(b)は図
8(a)の部分拡大図、図8(c)は本実施形態の電圧温度情報52を用いて温度補償を
行った場合の発振回路14から出力される発振信号48の周波数偏差を示す。
【0067】
圧電振動子12には図6に示すように温度上昇時、温度下降時において同一の周波数温
度特性を有さずヒステリシス特性を有している。そこで、図6(a)、(b)に示すよう
に温度上昇時の昇温電圧温度情報60を用いた温度補償電圧(第1の近似曲線情報62)
を算出し、これに基づいて温度補償を行うと、図7(a)に示すように、圧電振動子12
の温度を上昇させたときの温度補償は良好に行われているが、逆に温度を下降させたとき
の温度補償は良好には行われず周波数偏差が0.5ppmを超えたものとなっている。
【0068】
また図6(a)、(b)に示すように、温度下降時の降温電圧温度情報64を用いて温
度補償電圧(第2の近似曲線情報66)を算出し、これに基づいて温度補償を行うと、図
7(b)に示すように、圧電振動子12の温度を下降させたときの温度補償は良好に行わ
れているが、逆に温度を上昇させたときの温度補償は良好には行われず周波数偏差が0.
5ppmとなっている。本実施形態が想定するGPS機能を有する機器にこのような周波
数偏差が生じると、従来技術で述べたように測位性能に悪影響を及ぼすことになる。
【0069】
一方、図8(a)、(b)に示すように、本実施形態の電圧温度情報52は、昇温電圧
温度情報60と降温電圧温度情報64の中間値に対応して算出したものであり、温度補償
電圧58は、昇温電圧温度情報60に対応して算出した第1の近似曲線情報62と、降温
電圧温度情報64に対応して算出した第2の近似曲線情報66の中間値として算出したも
のである。よって、圧電振動子12の温度が上昇している場合でも、下降している場合で
も圧電振動子12のヒステリシス特性に起因する補正誤差を一定の範囲に抑制することが
できる。そして図8(c)に示すように、本実施形態においては、温度上昇時、温度下降
時共に周波数偏差を0.3ppm程度に抑えることができ、ヒステリシス特性を有する圧
電振動子12に対して良好な温度補償を行うことができることがわかる。
【0070】
以上述べたように本実施形態に係る温度補償型発振回路10の製造方法によれば、第1
には、温度補償型発振回路10においては、圧電振動子12の発振周波数の温度を上昇さ
せた場合の昇温電圧温度情報60と、温度を下降させた場合の降温電圧温度情報64との
中間値となる電圧温度情報52と検出電圧56により温度補償電圧58を生成し、これに
より発振信号48の温度補償を行うことになる。よって、圧電振動子12の温度が上昇し
ている場合でも、下降している場合でも圧電振動子12のヒステリシス特性に起因する温
度補償の誤差を一定の範囲に抑制することができる。
【0071】
第2には、電圧温度情報52は、昇温電圧温度情報60に対応する第1の近似曲線情報
62から係数群を抽出し、前記係数群を構成する2次以下(0次、1次、2次)の係数と
昇温電圧温度情報60と降温電圧温度情報64との基準温度における差分に基づいて算出
される2次以下(0次、1次、2次)の係数との中間値を算出し、前記中間値を前記係数
群を構成する2次の係数として組み込んで算出することとした。
【0072】
昇温電圧温度情報60と降温電圧温度情報64との電圧成分の差分をとると基準温度領
域において差分が最も大きくなり、基準温度から離れるほど小さくなる。よって電圧温度
情報52は、昇温電圧温度情報60と、降温電圧温度情報64の一部となる圧電振動子1
2の温度を基準温度領域に下降させて測定した温度及び温度の情報に対応する電圧の情報
と、を用いて近似的に算出することができる。したがって、温度下降時の温度と電圧との
情報は基準温度領域のみ取得すればよく、基準温度より低い低温領域まで温度を測定する
工程が不要になる。したがって降温電圧温度情報64の取得時間を短縮することができる
ため、作業負担を削減してコストを抑制することができる。
【0073】
第3には、電圧温度情報52は、降温電圧温度情報64と、昇温電圧温度情報60の一
部となる圧電振動子12の温度を基準温度に上昇させたときの温度の情報及び温度の情報
に対応する電圧の情報と、により近似的に算出することとした。上述同様の理由により、
電圧温度情報52は降温電圧温度情報64と圧電振動子12の温度を基準温度領域に上昇
させて測定した温度と電圧の情報(昇温電圧温度情報60の一部)とを用いて近似的に算
出することができる。さらに温度上昇時は基準温度領域を測定すればよく、基準温度より
高い高温領域を測定する工程が不要となる。したがって昇温電圧温度情報60の取得時間
を短縮することができるため、作業負担を削減してコストを抑制することができる。
【0074】
第4には、温度補償電圧発生回路18には、基準温度において基準周波数で発振可能な
電圧温度情報52の初期値が入力され、温度補償電圧発生回路18は前記初期値を係数と
したべき級数の近似曲線の情報と前記検出電圧から温度補償電圧58を出力し、昇温電圧
温度情報60及び降温電圧温度情報64は、圧電振動子12の温度の情報と、発振周波数
の温度補償を行うように発振回路14に外部から印加する理想補償電圧50の情報と、に
よりそれぞれ算出し、電圧温度情報52は、昇温電圧温度情報60及び前記降温電圧温度
情報64に基づいて算出し、圧電振動子12の温度を基準温度に上昇させたときの温度補
償電圧58を用いた発振回路14の発振周波数と、圧電振動子12の温度を基準温度に下
降させたときの温度補償電圧58を用いた発振回路14の発振周波数と、の差分に基づい
て電圧温度情報52のオフセット量(Vc’)の情報を算出して、温度補償電圧発生回
路18に電圧温度情報52を入力することとした。
【0075】
外部から理想補償電圧50を印加する電圧発生回路72と、温度補償電圧58を発生さ
せる温度補償電圧発生回路18との出力インピーダンスが互いに異なる場合には、同一温
度であっても、外部からの理想補償電圧50を基づいて生成された電圧温度情報52から
得られる温度補償電圧58は、電圧温度情報52を生成時の理想補償電圧50と一致しな
いことになる。また理想補償電圧50の印加時における設定電圧の誤差や測定誤差、及び
電圧温度情報52の算出方法によっても同一温度における理想補償電圧50と温度補償電
圧58とは互いに一致しないことになる。しかし電圧温度情報52が獲得した圧電振動子
12の発振周波数の温度特性そのものに誤差はほとんど生じていない。よって上記方法に
より温度補償電圧58を印加した発振回路14の温度上昇時の発振周波数と温度下降時の
発振周波数の差分(ヒステリシス量)に基づいて電圧温度情報52のオフセット量の情報
を算出して両者の電圧の不一致を是正して高精度な温度補償を行うことができる。
【0076】
第5には、電圧温度情報52を第2の算出工程により算出することにより、電圧温度情
報52の生成時に温度補償電圧58を発振回路に印加する工程が不用となるので、電圧温
度情報52を生成する工程を簡略化してコストを抑制することができる。
【0077】
第6には、電圧温度情報を第3の算出工程により算出することにより、圧電振動子12
の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方における基準温度において発振回路14を基準
周波数で発振させる理想補償電圧50を、前記温度の上昇時及び下降時の他方の基準温度
において発振回路14に印加する工程が不要となるので、上述の場合よりも工程を簡略化
してコストを抑制することができる。
【0078】
また本実施形態に係る温度補償型発振回路10によれば、第1には、温度補償型発振回
路10においては、圧電振動子12の発振周波数の温度を上昇させた場合の昇温電圧温度
情報60と、圧電振動子12の温度を下降させた場合の降温電圧温度情報64との中間値
となる電圧温度情報52により、圧電振動子12の発振周波数の温度特性に対応した近似
曲線の情報を生成し、前記近似曲線の情報と検出電圧56により温度補償電圧58を生成
し、これにより発振信号48の温度補償を行うことになる。よって、圧電振動子12の温
度が上昇している場合でも、下降している場合でも圧電振動子12のヒステリシス特性に
起因する温度補償の誤差を一定の範囲に抑制することが可能な温度補償型発振回路10と
なる。
【0079】
第2には、発振回路14と温度補償電圧発生回路18との間には、発振回路14の発振
周波数を基準周波数に調整する理想補償電圧50が入力される端子(電圧入力端子44)
と、温度補償電圧発生回路18と、の発振回路14への接続を相互に切り替え可能な切替
回路34が介装され、さらに記憶回路32は、電圧温度情報52の上書き入力を可能とし
た。
【0080】
温度補償電圧58は温度変化によってのみその値を変化させることができるため、温度
変化に関わらず任意の電圧を発振回路14に印加することはできない。よって切替回路3
4により理想補償電圧50を発振回路14に印加することにより、温度補償電圧58を生
成するための電圧温度情報52の生成を容易に行うことができ、また新たに生成された電
圧温度情報52を記憶回路32に上書き入力することにより温度補償を高精度に行うこと
ができる。
【符号の説明】
【0081】
10………温度補償型発振回路、12………圧電振動子、14………発振回路、16……
…温度センサー、18………温度補償電圧発生回路、20………4次電圧発生回路、22
………3次電圧発生回路、24………2次電圧発生回路、26………1次電圧発生回路、
28………0次電圧発生回路、30………加算回路、32………記憶回路、34………切
替回路、36………シリアルインターフェース回路、38………電源端子、40………グ
ランド端子、42………発振信号出力端子、44………電圧入力端子、46………信号入
力端子、48………発振信号、50………理想補償電圧、52………電圧温度情報、54
………切替信号、56………検出電圧、58………温度補償電圧、60………昇温電圧温
度情報、62………第1の近似曲線情報、64………降温電圧温度情報、66………第2
の近似曲線情報、68………測定器、70………周波数カウンター、72………電圧発生
回路、74………電圧マルチメーター、76………PC、78………プロット、80……
…プロット、82………曲線、100………温度補償型発振回路、102………温度検出
回路、104………近似3次曲線発生回路、106………第1のプログラマブルゲイン増
幅器、108………第2のプログラマブルゲイン増幅器、110………定電圧発生回路、
112………第3のプログラマブルゲイン増幅器、114………加算回路、116………
電圧制御型水晶発振回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を発振させて発振信号を出力する発振回路と、前記圧電振動子の温度に対応
した検出電圧を出力する温度検出手段と、前記検出電圧と前記発振信号の周波数の温度特
性に係る電圧温度情報に基づいて前記発振信号の周波数を温度補償するための温度補償電
圧を前記発振回路に出力する温度補償電圧発生回路と、を有する温度補償型発振回路の製
造方法であって、
前記電圧温度情報は、
前記圧電振動子の温度を上昇させたときの前記発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温
度情報と、
前記圧電振動子の温度を下降させたときの前記発振周波数の温度補償を行う降温電圧温
度情報と、の中間値として算出したことを特徴とする温度補償型発振回路の製造方法。
【請求項2】
前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報に対応する第1の近似曲線情報から係数群
を抽出し、前記係数群を構成する2次以下の係数と前記昇温電圧温度情報と前記降温電圧
温度情報との基準温度における差分に基づいて算出される2次以下の係数との中間値を算
出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次以下の係数として組み込んで算出したこと
を特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【請求項3】
前記電圧温度情報は、前記降温電圧温度情報に対応する第2の近似曲線情報から係数群
を抽出し、前記係数群を構成する2次以下の係数と前記昇温電圧温度情報と前記降温電圧
温度情報との基準温度における差分に基づいて算出される2次以下の係数との中間値を算
出し、前記中間値を前記係数群を構成する2次以下の係数として組み込んで算出したこと
を特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【請求項4】
前記温度補償電圧発生回路には、基準温度において基準周波数で発振可能な電圧温度情
報の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数としたべき級数の
近似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、
前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報
と、前記発振周波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加する理想補償電
圧の情報と、によりそれぞれ算出し、
前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報に基づいて算出
し、
前記圧電振動子の温度を基準温度に上昇させたときの前記温度補償電圧を用いた前記発
振回路の発振周波数と、前記圧電振動子の温度を基準温度に下降させたときの前記温度補
償電圧を用いた前記発振回路の発振周波数と、の差分に基づいて前記電圧温度情報のオフ
セット量の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路に前記電圧温度情報を入力するこ
とを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【請求項5】
前記温度補償電圧発生回路には、基準温度において基準周波数で発振可能な電圧温度情
報の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数としたべき級数の
近似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、
前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報
と、前記発振周波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加する理想補償電
圧の情報と、によりそれぞれ算出し、
前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報に基づいて算出
し、
基準周波数と、前記圧電振動子の温度の上昇時及び下降時のいずれか一方における基準
温度において前記発振回路を基準周波数で発振させる理想補償電圧を前記上昇時及び下降
時の他方の基準温度において前記発振回路に印加したときの発振周波数と、の差分に基づ
いて前記電圧温度情報のオフセット量の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路に前
記電圧温度情報を入力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度
補償型発振回路の製造方法。
【請求項6】
前記温度補償電圧発生回路には基準温度において基準周波数で発振可能な電圧温度情報
の初期値が入力され、前記温度補償電圧発生回路は前記初期値を係数としたべき級数の近
似曲線の情報と前記検出電圧から前記温度補償電圧を出力し、
前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報は、前記圧電振動子の温度に係る情報
と、前記発振周波数の温度補償を行うために前記発振回路に外部から印加した理想補償電
圧の情報と、によりそれぞれ算出し、
前記電圧温度情報は、前記昇温電圧温度情報及び前記降温電圧温度情報に基づいて算出
し、
前記圧電振動子の温度を基準温度に上昇させたときに前記発振回路を基準周波数で発振
させる理想補償電圧と、前記圧電振動子の温度を基準温度に下降させたときに前記発振回
路を基準周波数で発振させる理想補償電圧と、の差分に基づいて前記電圧温度情報のオフ
セット量の情報を算出して、前記温度補償電圧発生回路に前記電圧温度情報を入力するこ
とを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度補償型発振回路の製造方法。
【請求項7】
圧電振動子と、
前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段と、
前記検出電圧と前記圧電振動子の発振周波数の温度特性に係る電圧温度情報とに基づい
て温度補償電圧を出力する温度補償電圧発生回路と、
前記圧電振動子を発振させて発振信号を出力する発振回路と、
前記電圧温度情報を記憶し、前記温度補償電圧発生回路に出力する記憶回路と、を有す
る温度補償型発振回路であって、
前記電圧温度情報は、
前記圧電振動子の温度を上昇させたときの前記発振周波数の温度補償を行う昇温電圧温
度情報と、
前記圧電振動子の温度を下降させたときの前記発振周波数の温度補償を行う降温電圧温
度情報と、の中間値として算出したものであることを特徴とする温度補償型発振回路。
【請求項8】
前記発振回路と前記温度補償電圧発生回路との間には、前記発振回路の発振周波数を基
準周波数に調整する理想補償電圧が入力される端子と、前記温度補償電圧発生回路と、の
前記発振回路への接続を相互に切り替え可能な切替回路が介装され、
前記記憶回路は、前記電圧温度情報の上書き入力が可能であることを特徴とする請求項
7に記載の温度補償型発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−160038(P2011−160038A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17904(P2010−17904)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】